2008年10月22日
Dr. John Gammon
上級講師・アダルトナーシングスタディーズセンター長
ウェールズ大学
イギリス
今回のコラムは、重要なトピックである新型インフルエンザパンデミックの第二段である(第一段は2008年4月発表)。第一段では新型インフルエンザの臨床兆候、危険性、政府機関の計画、医療従事者向けの感染管理ガイダンスについて考察した。今回は地域ケアサービスのための感染管理ガイダンスについて考察したい。
世界保健機構(WHO)及びその他の専門家らは、20世紀に3回発生した最後の大流行が起こった1968年以来のインフルエンザパンデミックが、近い将来発生するのではないかと懸念している。WHOは6段階の警報フェーズを定め(Part1を参照)、その脅威の深刻さとより緻密な事前対策・計画を段階的に立ち上げていく必要性を世界に知らしめる情報発信システムとしている。
現在のフェーズ状況はフェーズ3、つまり新しい亜型(サブタイプ)のヒト感染があるが、密接な接触でのヒト-ヒト感染はない(もしくはまれである)、ではあるが、WHOが実際に"パンデミック"を宣言するのは、フェーズ6に至ってからである。
新型インフルエンザパンデミックに対する国家対策の主要目的を以下に挙げる。
地域及び社会においては、以下に挙げる機能が重要となる。
新型インフルエンザに対する対策を計画する全ての組織にとってのキーとなる課題は、ウイルスが出現するまでその性質及び影響が不明という点である。地域社会が上記目的を達成するためには、パンデミックウイルスの性質及びその考え得る影響についての理解に基づき、政府が一連の対応政策について助言する必要がある。
地域におけるヘルスケア提供の場は多岐に渡るため、新型インフルエンザに対する事前計画は必要不可欠である。本コラムでは、地域のクリニック、歯科医院、救急車、学校、あるいはより広く一般へ向けての感染管理実践のためのガイダンスについて考察する。
地域ケアサービスの一般的な感染管理方策
地域の医療従事者も病院で導入されているような標準的な感染管理の実践を行うべきである。基本的にはPart1で紹介した標準・飛沫予防策である。 手指衛生 は地域における新型インフルエンザの効果的な管理において非常に重要な意味を持つ。地域の医療従事者、患者、そして一般大衆には手洗い、更に医療従事者にはケアの現場でのアルコール手指衛生剤の使用を推奨する。
| キーポイント:: |
| 窶「 全ての地域医療の場では、インフルエンザ患者は非インフルエンザ患者から隔離すべきである |
| 窶「 上記には収容方法及びスタッフの配置に対する十分な配慮と柔軟性が必要である |
各施設の専用の独立エリアは、可能な限りインフルエンザ患者の治療とケアに使用する。理想的にはこのようなエリアとは以下である。:
全体を管理するには、パンデミックインフルエンザ専用エリアであるという警告を表示しなければならない。
地域の医療機関によってはこのような対応が難しい場合もあるため、上記原則を取り入れた革新的解決策、例えばインフルエンザ患者と非インフルエンザ患者が混在するようなクリニックの禁止など、が求められる。
パンデミックが一旦発生すると、感染拡大を最小限に抑えつつ同時に多数のインフルエンザ患者の対応という二重の目的に取り組むため、初期段階から隔離の原則を導入する必要がある。
クリニック/地域の外来診療:可能であれば、パンデミック期間中は一部を専用エリアとする。
一時的にケアをする場: 新型インフルエンザ対策は、非常に多くの患者が病院から地域へと放出されるということを考慮に入れ計画すべきである。専用の中間看護施設(例:指定老人ホーム)への患者の収容計画も推奨される。新型インフルエンザの発生は地域毎に増加するため、一時的にケアをする施設の開設が必要となる可能性もある。臨床ケアを提供する場として設計されていない、もしくは最適ではない施設(例:体育館、学校、市役所)でも、そのような目的で開設しなくてはならない可能性もある。
電話相談: インフルエンザの症状はあるが、重篤ではない患者には地域医療や医療サービス、もしくは一般医への電話相談を推奨する。これは受付の混雑を緩和し、交差感染の可能性を最小限に止めるためである。
受付手順:これは可能であれば、一般医療機関の隔離された専用エリアのみでインフルエンザ患者の受付を行う。スタッフは患者のケア及びサポートに必要最小限の人数に制限する。専用のエリアで働くスタッフを記録する。入り口にはスタッフに向け、予防措置が必要であることを示す警告(患者に対する守秘義務を侵害しない)を表示する。
感染管理予防策: 標準及び飛沫予防策はクリニック及び往診の場合も徹底する。
患者用の器具: 患者間には清潔で消毒された再使用可能な器具(例:心電図計、聴診器)を使用する。
清掃: 相談室、処置室及び待合室は最低でも毎日、またインフルエンザ対応で使用後は必ず清掃する。
歯科医院
歯科においても、標準及び飛沫予防策を維持しなくてはならない。
患者の来院: パンデミック期間中は、歯科での定期的な診察はキャンセルするのが賢明である。最低でも診察室内へ入る前には全ての患者のスクリーニングを能動的に行うべきである。インフルエンザの症状のある患者は、緊急の場合以外は診察をすべきではない。
インフルエンザ患者への処置手順: 緊急を要する患者の処置は、他の患者が全て帰宅した後に、診察時間の最後に行う。スタッフの数は必要最低限に止め、全員が必ずエアロゾルを誘発する処置に必要なPPEを着用する。
| キーポイント:: |
| ・各シフトの間は、インフルエンザ患者専用の救急車を差し支えのない範囲で準備する |
| ・殆どの状況下では標準及び飛沫予防策が適用される |
| ・万が一重篤な患者にエアロゾルを誘発するような処置(例:挿管、鼻咽頭吸引)が必要な場合は、スタッフはFFP3レスピレーター(N95)を着用する |
| ・必要最低限の器具類のみを携帯する |
カートや患者用の器具といった近接した環境は、必ず患者の処置毎に汚染除去をする。インフルエンザ患者の搬送(例:シフトの最後など)終了後、次回の使用前に車両の清掃及び洗剤と熱湯を用いた汚染除去を徹底する。ディスポーザブル器具等は全て医療廃棄物として廃棄する。廃棄物袋は密閉しラベルを付け、焼却処分として回収へ出す。
咳及びくしゃみをしている患者は可能な限り単独で搬送するべきではあるが、困難な場合はインフルエンザの症状のある患者2人を同時に搬送することも可能ではある。呼吸分泌物の封じ込めるため、症状のある患者にはサージカルマスクを着用させ救急車内の環境汚染を軽減させる。
学校及びその他の教育機関向けのヒトインフルエンザ対策ガイダンスは、殆どの政府及び専門機関より発行されている。これは政府の共同努力の一部であり、全地域を対象に十分な新型インフルエンザパンデミック対策計画の立案を推奨している。
ガイダンスでは、学校、保育機関やその他の児童サービスの計画立案をサポートしている。大学やその他の高等教育機関向けのガイダンス、また保護者向けの簡単な情報なども入手可能である。
全てのガイダンスにおいてキーとなるのは、ヒトインフルエンザパンデミックの際に、子供や若者への感染を減らすため、政府は学校、大学、保育機関をパンデミック期間中一時的に、あるいは全面的に閉鎖することを推奨する場合があるということである。これら教育サービスの閉鎖は、あらゆる分野で仕事を持つ保護者、つまり従業者に影響を及ぼす。そのため全ての機関の緊急時対策と関連することとなる。
殆どの政府は一般向け及び医療従事者向けにヒトインフルエンザパンデミックの危険性についての一連の情報及び政策を公開している。そのような情報は一般的に専門機関や世界保健機構やCDCといった国際機関からも発表されており、インフルエンザ患者に対するアドバイス及び予防方法が主な内容である。
パンデミック中の公衆衛生のキーは以下である。
インフルエンザに感染したら医療従者、保健機関、一般大衆がそれぞれの計画立案するために、殆どの政府は追加的な一連の追加情報を提供している。以下に例を挙げる。
レイアウト/構造
スタッフの配置
感染管理の課題
PPE
環境清掃
教育とトレーニング
記録
患者及び一般への情報
Jg/2008
(翻訳:栗山千果)
ギャモン博士は、多くの看護師および医療従事者に感染管理を指導。主な研究内容は「コミュニティおよび病院における手洗い」「隔離の実施とその心理学的影響」「病院内の感染管理教育」などがある。