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【クロストリジウムディフィシル】~感染管理従事者及び医療従事者が直面する問題各国の研究エビデンスの紹介~

2006年12月01日
Dr. John Gammon
上級講師・アダルトナーシングスタディーズセンター長
ウェールズ大学
イギリス

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感染管理の重要性に対する意識が高まり、感染管理のポリシー及びプログラムの継続的な改善が導入されているにも関わらず、医療関連感染は頻繁に発生している。医療関連感染の起因菌となるクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)は患者の下痢の一般的な原因の一つである。日本国内でも問題が頻発しつつあり、それは抗生物質を投与されていて現在無症状である患者の30%あまりが重大な問題に直面している可能性を示唆している。(Modenaほか、2005)。 Worsleyはクロストリジウムディフィシルがどのように軽度の下痢から生死に関わるような偽膜性大腸炎を伴う重度の下痢に至る経過において、一連の患者の苦痛の原因となっていることを説明しており、また抗生物質の使用との関連性を説明している。(1998)この症例の発生数の増加は入院期間の長期化と費用の支出増加を招き、患者は治療後でも感染の再発に苦しむという大問題を抱えているのである。

任意のサーベイランススキーム(組織)は2004年にイングランド、ウェールズ、北アイルランド全域のクロストリジウムディフィシル症例数を43,672件と報告(Health Protection Agency、2005)しており、この数字は2001年に報告されている合計22,008件の約2倍である。(Choudhari、2005)。この数字の増加は一部ラボ検査と報告実務が改善されたことによるものであると言えるが、症例数の著しい増加は任意のサーベイランスが多くの国で義務的な報告体制に変更されたことによるところが大きい。

クロストリジウムディフィシル症例数の増加はとりもなおさず、病院がその発生率を絶対に減少させなければならないということを意味しており、以下に掲げる代表的な研究テーマを紹介することで、その発生率減少のための参考になればと考えている。

抗生物質の使用とクロストリジウムディフィシルの関連性、クロストリジウムディフィシルの予防及び治療におけるプロバイオティクス使用の有効性研究、感染発生に対する感染管理対策の効果分析

背景

GouldとBrookerはクロストリジウムディフィシルを悪条件(adverse condition)で芽胞を形成するグラム陽性嫌気性細菌と表現した。(2000)。これらの芽胞は乾燥と熱に対する耐性があり、それ故長期間環境に生存することができ、また成長に適した環境に戻った際に成長する。(Gould & Brooker、2000)。これらの芽胞を破壊するのに効果的な洗浄製品は限定されているため、効果的な感染感染管理が困難になる。(Wilcoxほか、2003)。クロストリジウムディフィシル(通常大腸に少数発見される)は腸内に生存する‘良性’バクテリアに抑制されている。(DH、2006)。しかし共生細菌が破壊された、あるいは数が抑制された際(抗生物質治療を受けている患者に生じる)には、クロストリジウムディフィシルは腸上皮細胞を損傷させ、患者に激しい水様性下痢を引き起こすトキシンAとBを産生しながら増殖する。(Gammon、1995)。感染患者の排泄物に有機体が排出され、また周りの環境からは多数の細菌芽胞が検出されるため、感染拡大を防止するための効果的な管理対策維持は困難になっている。(Worsley、1998)。感染は経口(糞口経路)、あるいは汚染された器具(例:結腸鏡)を通しての腸管からの直接接種であり、(Worsley、1998)、また一般的に病院では看護スタッフの手、あるいは感染患者との直接接触もしくは汚染された環境に直接接触したことから感染が発生する。(Zafarほか、1998)。感染は排泄物内からの特定のトキシンAとBの検出によって診断される。(Healthcare Commission、2005)。

文献検索で分析された研究の中で、クロストリジウムディフィシルの危険要因を特定した研究は全て(21文献中17文献)事前の抗生物質使用が発生に関係しているという点で一致している。(Ludlamほか、1999;Worsley、1998;Zafarほか、1998など)。いくつかの研究は実際にリスク増加の原因となる具体的な抗生物質について言及している。例:アミノペニシリン(aminopenicillins)、セファロスポリン(cephalasporins)、 クリンダマイシン(clindamycin)(D'Souzaほか、2002;Barbut & Meynard、2002;Impallomeniほか、1995)。また全ての研究において、最も感染の影響を受ける人口は高齢者であることも一致している。いくつかの研究が触れている危険要因には重度の基礎疾患(Zafarほか、1998;Madeoほか、1999)、手術を受ける予定の患者(HPA、2005)、あるいは集中治療室に入院中の患者(D'Souzaほか 2000;Barbut & Meynard、2002)が含まれる。この結果を支持する英国クロストリジウムディフィシル基準グループ(National Clostridium Difficile Standards Group)(DH、2003a)は、危険要因を事前の抗生物質曝露や特定の‘宿主免疫’としており、また65歳以上の患者のみの下痢のサンプル検査によるサーベイランスを推奨している。

抗生物質の使用とクロストリジウムディフィシルとの関連性

抗生物質の予防投与がクロストリジウムディフィシル発症の危険要因であることは既に明確化しており、特にこの関連性をより詳細に分析している研究を詳しく調べることが重要である。全24文献の研究の中で5文献はこのテーマに分類することが可能であり、抗生物質の使用とクロストリジウムディフィシル発生の関連性を何らかの方法で証明することを目的としている。3文献では院内感染と特定の抗生物質、セファロスポリン(Cephalosporins)(Ludlamほか、1999)、セフォタキシム(Cefotaxime)(Impallomeniほか、1995)、キノロン(Quinolone)(Yipほか、2002)など、の使用との関連性を分析している。Harbarthほかの研究(2001)では、長期間にわたる予防投与がクロストリジウム関連腸炎(CDAD)の増加に繋がるとの仮説を検証することを目的としており、その他の研究では抗生物質を投与している患者といない患者との臨床的特長を比較している。(Modenaほか、2005)。研究は様々な国で実施されており、イギリスから2文献、アメリカから2文献、そしてカナダで1文献。それ故に結果を分析する際には、実質的に地域的な相違点が存在する可能性を考慮すべきである。尤も抗生物質投与を制限された大集団(Impallomeniほか、1995;患者1037人の調査、Harbarthほか、2001;2641人、Ludlamほか、1999;2157人など)を11ヶ月(Modenaほか、2005)から4年間(Harbarthほか、2001)という長期に渡り調査した大多数の研究が、それらの関連性を裏付けている。それは年齢、性別、入院日及び入院期間が同じである抗生物質投与が制限されている集団と、制限されていない集団における患者をマッチさせる研究により明確化している。(Yipほか、2002;Ludlamほか、1999;Modenaほか、2005)。Impallomeniほかの研究(1995)でもクロストリジウムディフィシル発生率と抗生物質消費について比較してはいるが、結果を比較する標準患者グループがないため、説得力に欠けている。このことは、症例と関連性があるのか、あるいは冬期に増加する症例は通常の死亡の季節的増加かどうかといった不確実因子の存在において理解できる。これらの交絡因子を考慮し重要な変数のみから結論を導き出すことが、変数分析(Modenaほか、2005;Yipほか、2002;Harbarthほか、2001を含む)における重要なポイントとなる。

クロストリジウムディフィシル発生率と抗生物質使用の関連性は、全ての研究において証明されている。Ludlamほか(1999)の研究によると症例が増加した比較標準グループとは対照的に、セファロスポリンの使用を制限すると症例が98から45へ減少した。またHarbarthほか(2001)の研究においてもセファロスポリン及びβラクタム系抗生物質の使用が発生に大きく起因している。更にYipほか(2002)はCDADの重要な変数としてシプロフロキサシン(Ciprofloxacin)とセファロスポリンの予防投与を挙げており、Impallomeniほか(1995)はセフォタキシム(Cefotaxime)を投与している患者5人のうち1人にクロストリジウムディフィシル発症を確認した。

また、入院期間の長期化もクロストリジウムディフィシルの危険要因もしくは結果として5文献の結果のうち4文献で指摘されている。このことは、長期間入院している患者は感染の可能性が高く、またクロストリジウムディフィシルを保菌している患者は長期化治療のためにより長く入院するという意味である。長期化された入院期間は抗生物質の投与を制御された症例の19日間から21日間(それぞれ)と比較すると、39.5日(Ludlamほか、1999)から62日間(lmpallomeniほか、1995)と様々であった。現在実施している無秩序な抗生物質の使用によるコスト増加(£8,062)と抗生物質投与を制御することで実際にクロストリジウムディフィシルの患者が53人少なくなることで節約できるコスト(£212,000)を比較すると(抗生物質投与を抑制していない他の集団と比較して53人CD患者を抑制することができたことで見積もられたコスト抑制効果)、Ludlamほかが実施した介入研究の結果(1999)を実践において容易に結びつけることができる。

他方Modenaほか(2005)は狭スペクトラムあるいは広スペクトラムのβラクタム系抗生物質が必ずしもクロストリジウムディフィシルのリスク増加の原因であるとは立証できていないという幾つかの研究結果報告もある。このことは、同じ抗生物質の投与がCDADの重要な予測因子としたHarbarthほか(2001)の研究とは対照的である。クロストリジウムディフィシル発生が抗生物質の使用と関連性がある場合、長期的な抗生物質の予防投与が発生増加に繋がると推測することは当然であるが、リスク増加を示す結果はなく、むしろ非常に短期間の抗生物質の投与でも、患者がクロストリジウムディフィシルに感染し易くなることを十分証明している。(Harbarthほか、2001)。抗生物質の使用とクロストリジウムディフィシル発生率との関連性を立証し、より慎重な抗生物質の使用は必要ではあるが(Worsley、1998)、完全には避けられないことを認識しつつ、CDADを予防あるいは管理するためにどのような対策を講じるかを見出すことが重要である。

そのような対策の一つとして文献調査の中で明らかになっているものはプロバイオティクスの使用である。

クロストリジウムディフィシルの予防及び治療におけるプロバイオティクス使用

プロバイオティクスの使用について分析した研究は選択された24文献の内、6文献である。これらのうち3文献はプロバイオティクスの使用がクロストリジウムディフィシルの予防と治療に関して効果的かどうかを分析しており、また文献調査(McFarland、2005)、メタ分析結果についての評論(Bandolier、2002)、9つの研究のメタ分析(D'Souzaほか、2002)を包括している。又、ある研究ではプロバイオティクス( 乳酸桿菌とビフィダム菌の効果をプレバイオティクス(pre-biotic)(フラクトオリゴ糖 (fructo-oligosaccharides-FOS))と比較している(Madeoほか、1999)。因みにBarbutとMeynard(2002)及びGagan(2003)の研究ではD’Souzaなどが行ったメタ分析(2002)を再調査しているため、特に新しい発見はなかった。

全ての調査研究は適切な方法を取っており、それは抗生物質と共にプロバイオティクスを投与したグループを、プラシーボ(placebo)と抗生物質を一緒に投与した標準グループと比較した無作為二十盲検対照試験で実施されている。Madeoほかもプロバイオティクスと抗生物質を投与した第3のグループを、他の2グループとその作用について比較分析している(1999)。実際に研究で使用されたプロバイオティック物質は試験ごとに異なっており、メタ分析(合計9回の試験を比較しているため単回の調査よりも有効である)には酵母菌のサッカロミセス-ボウラディ(Saccharomyces boulardii)を使用した4回の試験、乳酸菌(lactobacilli)を4回、そして乳酸をつくる腸球菌の菌株の1回がある。(D’Souzaほか、2002)。このバラツキが、研究の特徴についてのその他の相違点[異なった服用量が5日(Gotzほか、1979)から49日(McFarlandほか、1995:双方ともD’Souzaほか、2002にて引用)の期間投与され、患者の治療に用いられた抗生物質は異なる]と共に、研究結果の比較が困難な原因である。(Gagan、2003)。またサンプルのサイズが患者20人(Orrhageほか、D’Souza引用、2002)から388人(Adamほか、1977、D’Souzaほか引用、2002)と小規模であることも研究の不都合な点である。D’Souzaほか(2002)が実施したメタ分析結果及びBandolierによる調査(2002)は、広範囲におよぶ年齢層の患者(16研究中65歳以上は3研究のみ)を分析しているため、あまり効果的とは言えない。一方Madeoほかの研究(1999)は最も‘危険な’年齢、66歳から95歳とされている患者の分析であり、説得力がある。D’Souzaほか(2002)が行った各研究の結果は同一のポイントを測定しているという点で一貫性がある。同一のポイントとは、治療グループとプラシーボを服用しているグループとを比較した下痢を発症していない患者の割合である。反対にその他の研究は下痢を発症した患者に対する割合として結果を測定している。1研究を除きメタ分析試験の全てはプラシーボグループよりもアクティブグループ(active group)の方が下痢を発症した患者の割合が低かった(D’Souzaほか、2002)。しかし9回の試験では異なった抗生物質について研究されたため、患者が下痢になる危険性が変化し、プロバイオティクスに対する反応にも影響している可能性があるとも言える。平均的にプラシーボグループの患者の方がアクティブグループよりも下痢の発症が17%少なかった。結果の幅が最も大きかったのはOrrhageほかの研究で、比較標準グループ内で下痢を発症した患者が70%だったのに比べ、アクティブグループでは20%の患者に下痢の発症が見られた。この研究は興味深いことに、クロストリジウムディフィシル発生の危険性増加の原因として既に特定されていた抗生物質のひとつであるクリンダマイシン抗生物質での治療を受けた患者を分析している。プロバイオティクスはクロストリジウムディフィシルの治療に有効というエビデンスには乏しいが、D'Souzaほか(2002)は結果を基にしてプロバイオティクスは抗生物質関連下痢症(antibiotic-associated diarrhoea)の予防に使用することが効果的であり、またサッカロミセス-ボウラディ、乳酸菌も有効であるとの結論に至った。しかしこれらの結果は、乳酸桿菌とビフィダム菌の組み合わせが抗生物質関連下痢症(AAD)の発症を減少させるという見解を支持するようなエビデンスはなかったとするMadeoほか(1999)の研究結果と矛盾している。この試験結果では、プロバイオティクスを服用している患者の13%、プラシーボを服用している患者の11%と比較すると、FOSを服用している患者には下痢が見られなかった。プロバイオティクスグループにおいて十分な結果が得られなかったのは、投与量が不適切であったか、あるいはプロバイオティクスが特にこの組み合わせでは効果的でなかったか、もしくは3グループの患者はそれぞれ異なった抗生物質治療を受けていたため、結果の比較が困難になり、誤解を招く恐れのある結論に至った、とも考えられる。

全体的にプロバイオティクスの研究結果は、その使用が抗生物質関連下痢症の発症の減少に何らかの効果があることを実証している。しかしこの結果は、どのプロバイオティクスをどの抗生物質と組み合わせて服用するのかという点について統一した見解が全く見られないこと、(あったとしてもごく僅か)、プロバイオティクスを効果的にするための適切な投与量についても明確にされていないことから(Gagan、2003)まだまだ議論の余地が残っており、結果を実践に結び付けることは困難である。これらの研究の大半においては、プロバイオティクスが天然成分からできており、服用が容易であり、また抗生物質に比べクロストリジウムディフィシルの治療に関して費用効率が良く、比較的副作用が少ないという利点があるとしている。(Gagan、2003;McFarland、2005;D'Souza ほか、2002)。多くのプロバイオティクス製品はスーパーマーケットなどで、処方箋なしで(ヤクルトや、アクティメル(Actimel)のように)比較的安価に入手できるので、患者に抗生物質を処方する際にこれらの製品を毎日1本摂取させて、それがクロストリジウムディフィシルの発生を減少させることができるかどうかを記録・観察することができる。

またプロバイオティクスの使用はクロストリジウムディフィシルの予防のみに効果があると発見されており、効果的な院内感染対策が記載されている学術文献の調査分析も重要である。

クロストリジウムディフィシル発生に対する感染管理対策の効果

クロストリジウムディフィシル発生に対する感染管理対策の効果についての研究(計9研究)は方法が様々であり、感染管理従事者による記述的論文が4件(Hateley、1997;Gammon、1995;Worsley、1998;Millerほか、1998)、‘インビボ’(生体内試験)(‘in vivo’)研究が2件(Zafarほか、1998;Laiほか、1997)、そして洗浄用薬剤のクロストリジウムディフィシルの芽胞に対する作用を分析した調査研究が3件(Wilcoxほか、2002;Block 2004 & Wulltほか、2003)である。

記述的論文の検証によると、特定の感染管理対策が繰り返し推奨されている。この対策には直接もしくは間接的な接触によるクロストリジウムディフィシル伝播の予防対策が含まれている。その対策とは、クロストリジウムディフィシル保菌の疑いのある患者の早期隔離と腸管予防策(enteric precautions)の適用(Hateley、1997;Zafarほか、1998;Gammon、1995;Worsley、1998)、微生物減少のための厳密で頻繁な環境の清掃(Zafarほか、1998;Worsley、1998;Hateley、1997;Wilcox ほか、2003)、効果的な手指消毒が含まれており、これは“交差感染の最重要予防法”とされている(Hateley 1997: 576) [Gammon、1995;Zafarほか、1998;Worsley、1998]。感染管理における問題として手洗い遵守の欠如が事例証拠で実証されているにも拘らず、この点について認識している研究は僅か1文献である(Worsley、1998)。

クロストリジウムディフィシル予防について分析すると、研究の中には抗生物質の使用制限が必要だとする見解の一致も見られ、(Hateley、1997;Worsley、1998など)、Laiほか(1997)の研究結果[クロストリジウムディフィシル発生率が2.25%から1.32%に減少したにも関わらず、一連の感染管理対策を適用しても抗生物質使用の影響により数値をベースライン値(baseline level)まで引き下げることができなかった]はこの見解を支持しており、文献調査の中の他の研究でも以前に説明されている

クロストリジウムディフィシルの実際の治療について論じている2研究は以下の点で一致している。先ず抗生物質治療を原則中止し、より重症の患者には必要であれば口腔メトロニダゾール(Metronidazole)もしくは口腔バンコマイシン(Vancomycin)での治療を実施する。(Gammon、1995 & Hateley、1997)。このことは、バンコマイシンの使用はクロストリジウムディフィシル感染の再発患者のみに適用すべきである(Swansea NHS Trust、2002)という見解とは若干異なるが、それぞれの病院のポリシーについての調査の中では支持されている。

クロストリジウムディフィシル発生に対する感染管理対策のプラス効果を証明することを目的とした調査研究は非常に少ないが、専門家のコンセンサスを得た特定の対策がクロストリジウムディフィシル感染の伝播を減少させるのに効果的であると実証された場合、臨床試験の実施を優先して感染管理予防策を実施しないのでは倫理に悖る。一般的な感染管理(IC)対策について分析した調査研究はロバスト法(robust method)で行われているわけではないが、臨床分野における発生率を‐介入研究が1つ(Zafarほか、1998)とケースコントロール研究(case-control study)が1つ(Laiほか、1997)である。興味深いことに6年にわたって実施された大規模研究グループを対象にした介入研究においては、様々な感染管理対策により発生率が60%減少したことが実証された(Zafarほか、1998)。しかし何種類かの対策法(患者の隔離、手洗い教育プログラム、トリクロサン石鹸の使用、フェノール系消毒)が同時に導入されたため、効果的だったのはどの対策かという結論に至ることは不可能であった。また結果を比較する他の標準グループがなかったため、発生率の自然減少を除外することもできなかった。(Zafarほか、1998)。但し研究終了後しばらくして、対策が継続して遵守されているか、あるいは発生率が減少後の値を保っているかを評価するために研究を再び取り上げることも有益である。

また環境に対する異なる薬剤の効果について分析した3件のロバスト調査研究の結果がそれぞれの研究に使われているため、臨床目的の使用には特定の薬剤が適切であるという結論を総意から導き出すことはできない。Wulltほか(2003)は酸性化硝酸(acidified nitrate)などは効果的であり安全に使用できることを明らかにしており、Block (2004)はジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(sodium dichloroisocyanurate)よりペラセイフ(Perasafe)の方が活動的であることを発見し、Wilcoxほか(2003)は次亜塩素酸塩(hypochlorite)の使用を分析した。臨床の現場で見かけるステンレススチールや床仕上げ材といった典型的な表面に対する芽胞を有する細菌に有効な薬剤の作用を試験することにより、Block(2004)の研究は実践的であった。その結果として、特定の薬剤はクロストリジウムディフィシルの芽胞に対して効果があることが実証された。しかしこれはインビトロ(in vitro)研究であったため、臨床環境下におけるこの薬剤の効果を評価するための更なる調査が必要である。

また入手可能な文献調査においても、その文献の殆どにおいて、たとえそれがロバスト法のものであっても、小規模なサンプルグループ、短期間での試験、比較標準グループなし、などといういくつかの弱点があることが証明された。他方現在認められる研究はプロバイオティクスを分析したものである。但しプロバイオティクスは有効であることが実証されてはいるが、抗生物質関連下痢症の予防におけるプロバイオティクスの効果分析、特に最適な必要投与量とコストメリットを確認するための大規模な無作為試験の必要性をその研究者たち自身は認識している(D’Souzaほか、2002)。また筆者はプロバイオティクスが有益であると考えているが、この効果を臨床スタッフへ指導(認識)させるためにはより多くの研究が必要であり、また費用有効性の確立のためにはより規模の大きい更なる研究が必要であるとの結論に至った。将来プロバイオティクスはCDAD発症の“危険性が高い”とされる患者、例えば高齢者、抗生物質治療を受けている患者、重度の基礎疾患のある患者などを対象に使用される可能性がある。

抗生物質の使用とクロストリジウムディフィシルとの関連性については、その関連性においては全ての研究が証明しているが、一部の研究結果に矛盾が生じている。しかし抗生物質をより慎重に処方し、‘危険性が高い’ことが証明されている抗生物質の使用を避けることで院内感染クロストリジウムディフィシルの発生を減少させることができるというのが文献調査全体を通しての総意である(Yipほか、2001;Worsley、1998など)。

驚くべきことに、感染管理対策の効果を証明することを目的としている研究はほとんど存在しなかった。それは感染管理の専門家がこのテーマについてのエビデンスを提供しており、繰り返し実施された研究を通してそのエビデンスが裏付けられているからである。これらの対策を効果的に実施するためには、十分な看護師配置基準と、日々の細部にわたる清掃を実施するための十分且つ適切な人材を確保するための契約が必要であり、そのための財政的支援は論を待たない。感染管理対策を考慮する際に認識しておかなければならないもう一つの問題はそのコンプライアンス(遵守)である。文献調査においては患者の早期隔離の重要性についてのエビデンスが繰り返し提示されているが(Zafarほか、1998;Hateley、1997;Worsley、1998;Gammon、1995)、イングランドのヘルスケアトラストにおける全国調査の中間報告では、スタッフが感染管理対策の重要性を認識している一方で、トラストの40%では患者の隔離が日常的に行われていないことが明らかになっている。(Healthcare Commission、2005)。このことの概略は文献の中で説明されているが、患者及びスタッフに対してクロストリジウムディフィシルが及ぼす深刻な影響と感染管理実施のコンプライアンスが極めて重要であることを継続的に教育する必要を意味する。(Zafarほか、1998;Hateley、1997;Worsley、1998)。筆者はスタッフの教育目的、また各感染管理予防策がエビデンスベースであるか、あるいはそれがクロストリジウムディフィシル発生の更なる増加を防ぐために最適水準で実施されているかを確認するために、文献調査の結果を臨床業務に応用することもできると考える。(翻訳:栗山千果)

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