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外科用機器の蛋白質コンタミネーションの高感度迅速検出法

Rapid method for the sensitive detection of protein contamination on surgical instruments

I.P. Lipscomb*, A.K. Sihota, M. Botham, K.L. Harris, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 141-148


現在、病院滅菌サービス部門(sterile service department;SSD)では、外科用機器の洗浄効果の評価については清浄度の単純な目視に頼っている。外科用機器の低レベルの感染性あるいは蛋白性のコンタミネーションの監視は本来困難であるため、危険度が高く耐性が強い生物学的因子が、標準的な洗浄・滅菌処理後も検出されずに感染性を保つ可能性がある。本論文では、機器表面の400 pg/mm2 以下の脳組織蛋白質を、落射型微分干渉顕微鏡(episcopic differential interference contrast microscope)と蛍光試薬SYPRO Rubyにより迅速に検出する、新たな顕微鏡技術の開発について述べる。本法によるボランティア50%の最小検出レベルは85 pg/mm2 (95%信頼区間67~112 pg/mm2 )であった。複数のSSDから得た機器の定量的評価により、機器表面の蛋白質および非蛋白質沈着に関する“汚染指数”を確立することができた。この新しい表面汚染評価法は一般に利用可能であり、病院やその他の医療環境における機器汚染の定量的評価が促進されるであろう。

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監訳者コメント:
プリオン蛋白質は日常的な高圧蒸気滅菌でも不活化させにくいことから、付着蛋白質による汚染を監視し、より安全な外科用器材の再生を行うための方法論の確立が課題となる。本論文はこうした付着蛋白質による汚染を監視するための評価方法に関する提案である。

過酸化水素エアロゾル消毒薬による室内、医療器具、救急車のコンタミネーションの除去

Decontamination of rooms, medical equipment and ambulances using an aerosol of hydrogen peroxide disinfectant

B.M. Andersen*, M. Rasch, K. Hochlin, F.-H. Jensen, P. Wismar, J.-E. Fredriksen
*Ulleval University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 149-155


5%過酸化水素(H2O2)消毒薬の乾燥ガスを発生させるプログラム制御装置(Sterinis、Gloster Sante Europe社)による室内、救急車、および様々なタイプの医療器具のコンタミネーションの除去について試験を行った。部屋および車庫の容積に合わせて、既定の濃度を設定した。接触時間を徐々に増加させながら、3サイクル実施した。Bacillus atrophaeus(以前はBacillus subtilisRaven 1162282の芽胞を用いて実験を反復し、コンタミネーションの除去効果をコントロールした。サンプリング計画に基づいて芽胞試験紙(spore strips)を室内と救急車内の様々な位置、医療器具の内部および外部に置いた。3サイクル実施した場合にコンタミネーションの除去が有効であったのは、閉鎖した被検室で146芽胞検査中87%、手術室で48芽胞検査中100%であった。1または2サイクルでは効果は認められなかった。医療器具の内部での殺芽胞効果はわずか62.3%(220検査)であった。コンタミネーションの除去中に装置を作動させ通気していた場合、室内に置いた芽胞試験紙の100%(57/57)でコンタミネーションの除去が確認された。救急車の中では、器具、装置、グローブボックス、アンダーマットレス、および運転席へのH2O2の浸透は3サイクルの場合100%(60/60)であったが、1または2サイクルの場合、効果は低かった。結論として、H2O2乾燥燻蒸消毒システムを室内、救急車、通気中の器具の外部および内部で3サイクル作動させると、良好な殺芽胞効果が得られるようである。H2O2の濃度、接触時間、およびサイクル数に関してさらなる研究が望まれる。このことは、コンタミネーションの除去の工程で通気できない医療機器の内部については、特に重要である。

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集中治療室患者におけるカテーテルへの細菌定着およびカテーテル由来血流感染に対する消毒薬含浸カテーテルの有効性

Efficacy of antiseptic-impregnated catheters on catheter colonization and catheter-related bloodstream infections in patients in an intensive care unit

S. Osma*, ナ・F. Kahveci, F.N. Kaya, H. Akalトアn, C. Ozakトアn, E. Yトアlmaz, O. Kutlay
*Uludag University, Turkey

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 156-162


本研究は、重症患者におけるカテーテルへの細菌定着およびカテーテル由来血流感染の発生率に対して、クロルヘキシジンおよびスルファジアジン銀を含浸する中心静脈カテーテルが与える影響を評価するために実施した。中心静脈栄養を必要とする患者133例を、消毒薬を含浸するトリプルルーメン・カテーテル(64例)または標準的なトリプルルーメン・カテーテル(69例)にランダムに割り付けた。カテーテル留置平均日数および標準偏差は、消毒薬含浸カテーテル11.7(5.8)日(中央値10、範囲3~29)、標準的カテーテル8.9(4.6)日(中央値8.0、範囲3~20)であった(P=0.006)。消毒薬含浸カテーテルの14例(21.9%)と標準的カテーテルの14例(20.3%)で、抜去時に細菌定着が認められた(P=0.834)。カテーテル由来血流感染は、消毒薬含浸カテーテル4例(6.3%)、標準的カテーテル1例(1.4%)で発生した(P=0.195)。カテーテルへの細菌定着率は、消毒薬含浸カテーテル群で18.7/1,000カテーテル・挿入日、標準的カテーテル群で22.6/1,000カテーテル・挿入日であった(P=0.640)。カテーテル由来血流感染の発生率は、消毒薬含浸カテーテル群5.3/1,000カテーテル・挿入日、標準的カテーテル群1.6/1,000カテーテル・日であった(P=0.452)。結論として、著者らの結果は、重症患者における消毒薬含浸中心静脈カテーテルの使用は、カテーテルへの細菌定着率とカテーテル由来血流感染のいずれの発生にも影響を与えなかったことを示唆している。

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隔離予防策の実施:目的を絞った情報リーフレットの役割

Implementation of isolation precautions: role of a targeted information flyer

J. Robert*, L. Renard, K. Grenet, E. Galerne, A. Dal Farra, M. Aussant, V. Jarlier
*Hopital de la Pitie-Salpetrière et Faculte de Medecine Pierre et Marie Curie, France

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 163-165


ほとんどの国では、多剤耐性菌の保菌者に対する隔離予防策が推奨されている。著者らは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)患者の隔離予防策の実施に対して、目的を絞った情報リーフレットが及ぼす影響を評価した。微生物検査の専門家が、MRSAが検出された場合に実施すべき手順のクイックリファレンスを記載したリーフレットを、MRSA陽性の培養検査結果に添付して送付した。感染制御担当職員が、リーフレット送付以前の第一期(対照期間)と送付後(介入期間)の第二期の、各3カ月間における隔離予防策を比較した。対照期間と比較して、介入期間では隔離予防策のコンプライアンスが有意に向上した。集中治療室の扉に標識が置かれた患者は、対照期間は38例中31例(82%)、介入期間は34例中33例(97%)であった(P=0.06)。ガウンの使用は82%から100%に増加し(P=0.01)、専用物品の使用は84%から100%に増加した(P=0.03)。また、擦式アルコール製剤の設置は82%から94%に増加し(P=0.10)、個室に入室しているMRSA患者の割合が71%から91%へ増加した(P=0.07)。結論として、隔離予防策のコンプライアンスは、すべてのMRSA陽性の培養検査結果にリーフレットの添付を開始した後に増加した。

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監訳者注:
インストラクションカードのこと。

オランダの病院における血液および体液への職業曝露を防止するためのプロトコールの有効性

Effectiveness of protocols for preventing occupational exposure to blood and body fluids in Dutch hospitals

J. van Gemert-Pijnen*, M.G.R. Hendrix, J. Van der Palen, P.J. Schellens
*University of Twente, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 166-173


異なる職種の医療従事者(看護師、医師、臨床検査技師、清掃作業員)において、血液および体液への職業曝露を防止するためのプロトコールに対するコンプライアンスを調査した。アンケートを使用して、リスク認知、プロトコールの精通度、遵守の意欲、および実際の行動を評価した。また、業務におけるプロトコールの実践の状況を調べた。業務に関する調査では、アンケートよりも信頼性の高いデータが得られた。医療従事者は、自身の知識および技術を過大評価しており、コンプライアンスはリスク認知度に影響されていた。医療従事者は、プロトコールの理解、受容、および適用において、特に曝露後の予防策に関して問題があった。プロトコールは、知識、リスク認知、および職種別に必要な行動の相違に適合していないが、これは、プロトコール作成に医療従事者がほとんど関与しておらず、適用性よりも法的配慮によって決められていたためと考えられる。大部分の医療従事者は、コンプライアンスを向上させるための組織的支援が不足していると感じていた。コンプライアンスを改善させるためには、病院スタッフおよび患者の安全に対する各人の責任とリスク管理に関する情報および訓練、プロトコール作成への医療従事者の参加、および従来の習慣的行動への後戻りを避けるための管理の支援が推奨される。

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整形外科的なインプラント手術における術中細菌汚染を減少させる対策の評価

Evaluation of measures to decrease intra-operative bacterial contamination in orthopaedic implant surgery

B.A.S. Knobben*, J.R. van Horn, H.C. van der Mei, H.J. Busscher
*University of Groningen, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 174-180


本研究の目的は、処置手順や総合的な対策により、人工股関節全置換術または人工膝関節全置換術の術中汚染が減少するかどうかを評価することである。また、18カ月の追跡調査期間中に、これらの対策後の創部滲出液の遷延、表在性手術部位感染、および深部人工関節周囲感染も調査した。207回の手術の開始時と終了時に手術器械から4カ所のスワブを採取した。さらに、除去した骨片(股関節の場合には寛骨臼および大腿骨、膝関節の場合には大腿骨および脛骨)の汚染の有無を検査した。最初に、従来の対照条件下での手術を70回実施した。まず行動上の対策(例えば、プレナムのより適切な使用)を導入し、67回の手術中に培養検体を採取した(第1群)。続いて、作業訓練による対策および層流システム設置を行い、この第二の介入後に70回の手術をモニターした(第2群)。術中汚染が認められた症例は、対照群32.9%(23/70)、第1群34.3%(23/67)、第2群8.6%(6/70)であった。第2群では、創部滲出液の遷延および表在性手術部位感染は、深部人工関節周囲感染の発生率とともに著明な減少を示したが、深部人工関節周囲感染には統計学的有意差は認められなかった。本研究は、手術室において総合的な対策と作業訓練による対策を組み合わせることにより、術中の細菌汚染、その後の創部滲出液の遷延、および表在性手術部位感染の発生が著明に減少することを示した。また、18カ月の追跡後には、深部の人工関節周囲感染の減少も認められた。

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監訳者注:
プレナム:空気清浄ユニット。

集中治療室における院内感染起因病原体の遺伝的多様性と生存期間の相関

Correlation between the genetic diversity of nosocomial pathogens and their survival time in intensive care units

P. Gastmeier*, F. Schwab, S. Barwolff, H. Ruden, H. Grundmann
*Institute of Medical Microbiology and Hospital Epidemiology, Germany

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 181-186


ヒト宿主の外側である病院環境の中では、細菌の生存能力に相違がある。生存しながら感染性を維持する菌種は、伝達の機会がより多くなり、病院内での適応性に優れている。この適応性の格差は、病院内の細菌集団における遺伝子構成を変化させ、数種の繁栄するクローンの相対的優位をもたらすと考えられる。この研究の目的は、集中治療室で前向きに分離された様々な菌種について、頑強さ(環境生存能力)と遺伝的多様性によるクローンの優位性との潜在的な相関関係を調べることにある。文献検索を行い、集中治療室で最も重要な病原体(黄色ブドウ球菌、Enterococcus属、Acetinobacter baumannii、緑膿菌、Enterobacter属、大腸菌、Klebsiella pneumonia、およびStenotrophomonas maltophilia)についての平均環境生存期間を同定した。これらの集中治療室内の病原体における遺伝子的多様性を決定するために、中等度の院内感染率をもつ5カ所の集中治療室で、18カ月の前向き研究を実施した。すべての臨床分離株を集め、高い識別能力をもつDNAフィンガープリンティング法を用いて特定のクローンの同定を行った。それぞれの菌種における多様性指数は、識別可能な遺伝子タイプの型数を菌株数で除して算出した。生存期間とそれぞれの病原体の多様性指数との相関は、ノンパラメトリック法により検定した。文献検索によって21報の研究を特定したが、関連性が認められたものは、わずか2報のみであった。これらの研究では、生存期間中央値の範囲は1.5日(緑膿菌)から60.0日(Enterococcus faecium)であった。集中治療室における前向き研究の期間に、1,264株の病原体を調査したところ、単純多様性指数の範囲は、49.1(Enterococcus faecalis)から89.9(大腸菌)であった。生存期間とそれぞれの病原体の多様性指数には、相関が認められた(相関係数0.821、P=0.024)。環境中の生存能力は、集中治療室における院内病原体の生物学的適応性に寄与する重要な因子であろう。感染対策では、今回の知見を考慮すべきである。

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監訳者コメント:
医療環境における環境表面における病原体の生存期間と菌種別にその多様性とからめて評価したユニークな論文である。本論文には病原体(細菌)別の平均生存日数が一覧で示されており、資料として有益である。

隔離室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の環境的リザーバ:患者分離株との関係と病院衛生に対する意義  ★★

Environmental reservoirs of methicillin-resistant Staphylococcus aureus in isolation rooms: correlation with patient isolates and implications for hospital hygiene

T. Sexton*, P. Clarke, E. O’Neill, T. Dillane, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 187-194


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の蔓延を管理・予防するための戦略には、スクリーニングによる陽性患者の早期発見、患者の隔離、手指消毒、鼻腔と皮膚のコンタミネーション除去、臨床現場の適切な清掃とコンタミネーション除去などが含まれる。しかし、各国の多数のガイドラインには環境のコンタミネーション除去法に関する記述が少ないが、その一因として、MRSAの蔓延において環境が果たす役割が明らかではないことが挙げられる。著者らは、病院のプロトコールに従って日常の定期的な清掃を継続する一方、MRSA患者25例の隔離室の環境において、水平な環境表面、エアーサンプラーを用いた空気の検体、ならびに静置培地による検体採取を行い、4週間にわたって前向きに調査した。その後、菌株の類似性を評価するために、20の患者分離株およびそれらに対応する環境分離株(35株)のタイピングを行ったところ、検体中のMRSA陽性検出率は、環境表面の検体269/502(53.6%)、空気の検体70/250(28%)、静置培地の検体102/251(40.6%)と高率であった。ベッドおよびマットレスから採取した表面からの検体の半数以上がMRSA陽性であった。患者14例(70%)において、患者とその患者の環境から同一菌株または密接に関連する菌株が回収されたことから、隔離室の環境汚染の可能性が示唆されたが、このことはMRSAの地域的流行につながる可能性がある。MRSAおよびその他の病院感染病原体を根絶するための新しい技術を検討し、清掃とコンタミネーション除去への現行の取り組みをさらに効果的かつ厳重に行うことが必要である。

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監訳者コメント:
MRSAの環境要因に関する興味深い知見。環境管理の重要性を示唆する優れた論文である

医療従事者における重症急性呼吸器症候群(SARS)の院内感染を最小限にするための集団発生制御における統合的感染制御戦略の利用

Using an integrated infection control strategy during outbreak control to minimize nosocomial infection of severe acute respiratory syndrome among healthcare workers

M.-Y. Yen*, Y.E. Lin, I.-J. Su, F.-Y. Huang, F.-Y. Huang, M.-S. Ho, S.-C. Chang, K.-H. Tan, K.-T. Chen, H. Chang, Y.-C. Liu, C.-H. Loh, L.-S. Wang, C.-H Lee
*Kaohsiung Veterans General Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 195-199


重症急性呼吸器症候群(SARS)患者をケアする際に、医療従事者はSARS罹患リスクにさらされる。個人防御用器材および陰圧隔離室では、医療従事者を完全に保護することはできない。著者らは、バリアを用いた患者のトリアージ、危険ゾーンの設定、手袋着用で手指擦式消毒するためのアルコールディスペンサーの広範囲にわたる設置からなる、革新的な統合的感染制御戦略を紹介する。この統合的感染制御法は、陰圧隔離室のないSARS指定病院(研究病院)で実施された。この研究病院でSARSに罹患した医療従事者の数を、統合的感染制御戦略を採用しない台湾の86病院でSARSに罹患した医療従事者の数と比較した。同時期の3週間の期間中に、研究病院では医療従事者2名がSARSに罹患したが(1床あたり0.03症例)、他の病院では93名であった(1床あたり0.13症例)。著者らの戦略は医療従事者のSARS罹患発生率減少に効果的と考えられる。有利性として、陰圧隔離室を用いない迅速な処置、患者の移動に対する柔軟性、医療従事者による感染制御戦略遵守の強化(特に手洗い)などが挙げられる。特にリスクにさらされる人口が多く財源に乏しい国々においては、その有効性と低コストは大きな利点である。

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教育病院における抗生物質使用と環境微生物の耐性の関連

Antibiotic use is associated with resistance of environmental organisms in a teaching hospital

S.J. Dancer*, M. Coyne, C. Robertson, A. Thomson, A. Guleri, S. Alcock
*Health Protection Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 200-206


標準化した4カ月の環境スクリーニングプログラムを、集中治療室(ICU)、急性期脳卒中治療室、および内科日帰り治療室で実施した。これらの病室由来の環境微生物を調査し、抗菌薬の使用に関連した細菌の耐性を比較することを目的とした。市販のディップスライドを用いて、手指の接触のある場所や、その他の場所のスクリーニングを行い、職員には指先の培養を提出するように依頼した。患者の血液試料は研究期間を通して保存した。抗菌薬感受性試験などにより、微生物を量的・質的に評価した。抗生物質使用量に関する1,000患者・日あたりの1日規定量の前年分のデータを、各治療室から入手した。ブドウ球菌属276例とグラム陰性桿菌67例を分離した。ブドウ球菌属(P<0.0001)と大腸菌群(P=0.04)の抗生物質耐性は治療室の種類と有意な関連があり、少数ではあったがその他のグラム陰性菌でもその傾向が認められた(P=0.06)。ICUでの抗生物質使用量は、急性期脳卒中治療室および内科日帰り治療室の6倍であった。特定の抗生物質群の使用量と、それらに対するブドウ球菌属およびグラム陰性桿菌の耐性の間には関連が認められた。それぞれの病室由来の環境細菌における唯一の有意な相違は抗菌薬耐性であったが、これは処方による圧力の反映であると考えられた。病室の目視検査からは、病院環境における多剤耐性微生物の有無や潜在的な感染リスクに関する的確な指標は得られないと考えられる。これらの知見は、部署レベルでの抗生物質の使用方針・感染制御・清掃計画に意義を有するものである。

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監訳者注:
ディップスライド:環境表面をワイプしたり液体に浸漬し簡単に培養検査ができるように工夫されたコンテナに収容可能な培地(http://www.arbrown.com/product/food_inspection/dip_slide/index.html参照のこと)。

サウジアラビアの小児集中治療室におけるカテーテル由来血流感染の発生率、リスク因子、および転帰  ★★

Rate, risk factors and outcomes of catheter-related bloodstream infection in a paediatric intensive care unit in Saudi Arabia

M.A. Almuneef*, Z.A. Memish, H.H. Balkhy, O. Hijazi, G. Cunningham, C. Francis
*King Abdulaziz Medical City/King Fahad National Guard Hospital, Saudi Arabia

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 207-213


本研究の目的は、小児集中治療室(PICU)患者のカテーテル由来血流感染(CRBSI)の発生率、リスク因子、および転帰を明らかにすることである。10床の内科外科共用PICUを備える大学/三次医療センターであるKing Abdulaziz Medical City(650床、サウジアラビア、リヤド)で、前向きコホート研究を実施した。2000年7月~2003年2月にPICUに入室した中心静脈カテーテル留置患者すべてを対象に、挿入時から抜去後48時間まで、血流感染の発生を監視した。患者446例で2,493中心静脈カテーテル・日が記録された。男児273例(55%)、平均年齢2.6歳であった。446例のうち278例(56%)に先天性心疾患、108例(22%)に遺伝性疾患と先天性奇形のどちらかあるいは両方、55例(11%)に呼吸器疾患、42例(8%)に外傷が認められた。CRBSIは患者46例で50件認められ、発生率は1,000中心静脈カテーテル・日あたり20.06、器具利用率(device utilization)は57%であった。これら50件のうち、複数菌感染24件(48%)、グラム陰性菌感染16件(32%)、グラム陽性菌感染5件(10%)で、残り5件(10%)は真菌感染であった。分離数が多い菌はKlebsiella pneumoniae(12例、16%)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(10例、14%)、緑膿菌(8例、11%)であった。平均カテーテル留置日数は、CRBSI患者11.8日、血流感染非発生患者4.22日であった(P<0.0001)。平均PICU滞在日数は、CRBSI患者30.20日、血流感染非発生患者6.35日であった(P<0.0001)。血流感染の発生率は、手術室での挿入に比べてPICUでの挿入で高く、頸部または鎖骨下静脈からの挿入に比べて大腿静脈からの挿入で高かった(P<0.001)。リスク因子の多重ロジスティック回帰分析によると、CRBSI患者では複数の中心静脈ラインを挿入されていた確率が高く[オッズ比(OR)9.19、95%信頼区間(CI)3.76~22.43]、そのラインは完全静脈栄養に利用される確率が高く(OR 8.69、95%CI 3.5~21.4)、そのラインに沿ってガイドワイヤー交換が実施される率が高かった。CRBSIと死亡率に関連はなかった。著者らの病院におけるCRBSIの発生率は、米国院内感染サーベイランス(National Nosocomial Infection Surveillance)システムの報告に比べて高い。本研究により、将来の比較のためのベンチマークが確立された。全国的比較と予防策の開発のためには、サウジアラビアにおけるさらなる研究が必要である。

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監訳者コメント:
小児集中治療室における確固たる血流感染サーベイランス。データの表現も明晰であり、リスク因子も解析されていて大変参考になる論文である。

大学教育病院における多剤耐性グラム陰性菌とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に関連する経済的負担の比較

Economic burden associated with multi-resistant Gram-negative organisms compared with that for methicillin-resistant Staphylococcus aureus in a university teaching hospital

F. Daxboeck*, T. Budic, O. Assadian, M. Reich, W. Koller
*Medical University Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 214-218


本研究の目的は、オーストリアの出来高払い(performance related)の病院資金制度(LKF)を利用して、多剤耐性グラム陰性桿菌(MR-GNB)とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染患者の入院費用を比較検討することである。研究は、2,160床の大学教育病院であるVienna General Hospitalにおいて、2002年1月から6月に後向きに実施した。患者はMR-GNB群99例(年齢中央値58歳)、MRSA群74例(年齢中央値60歳)であった。MR-GNB群(59例、60%)は、MRSA群(25例、34%)より集中治療室で治療を受けた患者が多かった(P<0.01)。2群における入院期間中央値(MR-GNB群42日、MRSA群37日)と死亡数(それぞれ18例、9例)は同等であった。MR-GNB群患者の総入院費用[2,605,327ポンド(中央値18,115ポンド)≒4,915,712 LKF credit point(中央値34,180)]は、MRSA群患者[1,093,906ポンド(中央値6,624ポンド)≒2,088,904 LKF credit point(中央値12,650)]より高額であった(P<0.01)。本研究は後向きであり、また請求に基づく費用計算であるという限界がある。しかし本研究は、MR-GNB感染患者の入院費用は多額で、おそらくMRSA感染患者よりも高額であることを示唆している。

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インドネシアの病院における医療関連感染のサーベイランス

Surveillance of healthcare-associated infections in Indonesian hospitals

D.O. Duerink*, D. Roeshadi, H. Wahjono, E.S. Lestari, U. Hadi, J.C. Wille, R.M. De Jong, N.J.D. Nagelkerke, P.J. Van den Broek, on behalf of the Study Group ‘Antimicrobial Resistance in Indonesia: Prevalence and Prevention’ (AMRIN)
*Leiden University Medical Centre, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 219-229


インドネシアの2カ所の教育病院(病院A、病院B)において、医療関連感染およびリスク因子への曝露に関する横断的サーベイランスを実施した。内科、外科、産婦人科、小児科などの診療科部門、および集中治療室の患者を対象とした。患者の人口統計学的特性、抗生物質の使用、培養検査結果、医療関連感染(静脈炎、手術部位感染、尿路感染、敗血症)の発現、およびリスク因子を記録した。観察者によるばらつきを調べるため、検証研究を病院Bで実施した。病院A、病院Bからそれぞれ1,334例、888例の患者がサーベイされた。侵襲性器具の使用または手術の実施は59%であった。病院Aでは、全患者のうち2.8%で静脈炎、1.7%で手術部位感染、0.9%で尿路感染、0.8%で敗血症を認めた。病院Bでは、3.8%で静脈炎、1.8%で手術部位感染、1.1%で尿路感染、0.8%で敗血症を認めた。検証研究では、第1チームが記録した罹患率は静脈炎2.6%、手術部位感染1.8%、尿路感染0.9%、敗血症0であった。第2チームが記録した罹患率は静脈炎2.2%、手術部位感染2.6%、尿路感染3.5%、敗血症0.9%であった。本研究はインドネシアで初めての医療関連感染に関する報告である。罹患率は他国のものと同等である。検証研究では罹患率に大きな差が認められたため、サーベイランスの信頼性は不十分である。サーベイランスに用いた方法は、医療関連感染レベルを推定して感染予防策を改善するための医療資源が限られている国々の病院においても実行可能なものである。サーベイランスの対象を侵襲的治療を受ける患者に限定することによって、有効性を向上させることができる。これにより、わずか60%の患者をスクリーニングすることで、すべての感染の90%を検出することができる。

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監訳者コメント:
発展途上国からの院内感染サーベイランスの報告。これからサーベイランスを開始しようとしている施設には参考になる論文である。

院内感染菌血症患者505例を対象に1997年と2002年に実施した全病院規模の前向き研究

Prospective hospital-wide studies of 505 patients with nosocomial bacteraemia in 1997 and 2002

Z. Jerassy*, A.M. Yinnon, S. Mazouz-Cohen, S. Benenson, Y. Schlesinger, B. Rudensky, D. Raveh
*Shaare Zedek Medical Centre, Israel

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 230-236


院内感染菌血症の発生率、感染源、および転帰に関する調査を1997年と2002年に実施した。血液培養の結果を連日検討した。入院後48時間以降に採取した血液の培養結果が陽性であった患者すべてを研究対象とし、医療記録を検討した。感染源は、事前に定義した臨床的基準と微生物学的基準の両方または一方により判定した。患者は退院または死亡まで追跡した。コンタミネーションを除外した患者由来の菌血症の診断は1997年に851例、2002年に857例であった。そのうち228例(27%)と277例(32%)が院内感染であった(P<0.05)。全体の発生率は1,000入院あたり7.5から7.0に低下した(P<0.001)。菌血症の原因は、1997年と2002年でそれぞれ、血管内留置カテーテル36%と27%(P<0.05)、尿路感染8%と15%(P<0.05)、気道感染5%と13%(P<0.01)、手術部位感染14%と4%(P<0.001)であった。患者の3分の1で菌血症の感染源を特定できなかった。患者の生存退院例はそれぞれ52%と54%のみであった(有意差なし)。1997年に最も多かった分離菌は黄色ブドウ球菌(26%)で、次いでコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(13%)、Klebsiella pneumoniae(11%)であった。2002年には黄色ブドウ球菌の頻度は11%に低下し(P<0.001)、Acinetobacter属が単独では最多の分離菌となった(6%から17%に増加)(P<0.001)。Acinetobacter属による菌血症に関連する病院内での死亡率(57%)は、他の病原菌による死亡率(31~43%)と比べて有意に高かった(P<0.05)。
結論として、院内感染菌血症の前向きサーベイランスによって有益な情報が得られ、有効な介入を追跡することが容易になった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
血流感染サーベイランスのデータをどのように活用するかという点でよい見本である。

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