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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

病院の新規建設:英国の感染制御の展望

Building new hospitals: a UK infection control perspective

J.M. Stockley*, C.E. Constantine, K.E. Orr, The Association of Medical Microbiologists' New Hospital Developments Project Group
*Worcestershire Royal Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 285-299


感染制御対策を導入することは、新しい病院プロジェクトの計画・設計・建設の各段階において極めて重要であり、さらに運営開始(および終了)のプロセス、評価時、および施設ですべての臨床業務を開始する際にも継続する必要がある。多くの病院では、新しい施設の使用を開始してから数カ月から数年間は、問題が繰り返し発生するが、プロジェクトの初期に感染制御対策を導入することにより、一部の問題は回避できる可能性がある。進捗を監督する病院トラスト(hospital trust)の最高責任者およびプロジェクトチームは、感染制御の重要性を認識しなければならない。また、臨床スタッフおよび建設業者も、感染制御の問題について意識する必要がある。感染制御チーム(ICT)とこれらの関係者との間で良好な人間関係を築くことが不可欠である。ICTはこの過程に関与する権限をもつことが必要である。そのためにはPrivate Finance Initiative National Unit、保健省、またはその他の関係当局が明確に認識することが必要と考えられる。ICTは、設計プランを理解する方法や効果的な仕様書を作成する方法、および本人が不慣れであると思われる分野の訓練が必要である。文書作成および記録保存が最重要である。外部または独立機関がプロセス、特に開院のプロセスを検証できるようにすべきである。感染制御に関連する建築設計は国が厳格に管理する必要があり、そうすることでICTは施設に固有の問題に注力することができる。建築設計と感染率の関係に関するエビデンスを得るためには、さらに調査が必要である。

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監訳者コメント:
英国の医療システムは基盤からその運営方法が日本とは異なる。本論文が述べたいことは、感染制御の知識をもった人材が、病院建築の際に終始関与することの重要性である。


監訳者注:
トラスト:英国保健省本体から一定の独立性を保ち公益事業を運営する団体で、日本では公益法人と意味合いが近い。ちなみにNHS trustは、英国内のほとんどの病院を傘下にもち、病院サービスを提供している欧州最大の公益事業団体である。
Private Finance Initiative:社会資本整備や医療など、民営化や完全な外注化が困難な公共事業に対する費用対効果を上げるため、事業に投資した民間金融機関を積極的に事業参加させ、効率化を促すコンセプトである。1992年のメイジャー政権時代に導入が開始された。公共事業の効率性の指標として、Value for Money(VFM)が用いられている。

英国の病院における医療廃棄物管理基準

Standards of clinical waste management in UK hospitals

J.I. Blenkharn*
*London, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 300窶・03


大量の医療廃棄物の取り扱い方法を英国の26の病院で観察した。一般の人が自由に近づくことができる区域に廃棄物用カートが保管されている状態、および個々のカートに鍵が掛けられていない状態がまれではなかった。多数の医療廃棄物用カートとカート保管区域が補修不足の状態にあった。病院における医療廃棄管理の根本的な改善が、以下の理由で必要である。(1)不正かつ不適切な医療廃棄物への接触による感染の可能性の低減、および廃棄した医薬品との接触による有害作用の最小化。(2)英国の保健安全法で課せられた注意義務の遵守。(3)病院衛生の一般的な水準に関する懸念の払拭。

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監訳者コメント:
医療廃棄物のトレーサビリティの問題提議である。わが国においては、地方自治体や医師会により医療廃棄物の取り扱いが一様でない。わが国にこそ、こうした実態調査が必要ではなかろうか?

集中治療室での手指衛生に必要な時間:医療従事者と集中治療患者との接触回数に関する熟練観察者による前向き研究

How much time is needed for hand hygiene in intensive care? A prospective trained observer study of rates of contact between healthcare workers and intensive care patients

F.I. McArdle*, R.J. Lee, A.P. Gibb, T.S. Walsh
*Edinburgh Royal Infirmary, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 304-310


医療従事者と集中治療室(ICU)の患者との接触(直接接触)回数および医療従事者と患者の周辺環境との接触(間接接触)回数、または手指衛生遵守が100%に到達するために要する時間の推定値を評価したデータはほとんどない。内科および外科患者の入室数が年間600例を超える英国の12床の成人用一般ICUにおいて、熟練観察者による前向き研究でこれらの評価を実施した。全12床を、1日のうちで同じ時間観察するように設定した計画に基づいて、調査者1名がICUのベッドスペースの医療従事者を1回1時間ずつ観察した。医療従事者とICU患者との直接接触回数および間接接触回数の1日の平均値を算出した。また、接触を認めた後の手指衛生遵守を評価した。接触前の手指衛生の有無別にみた1日の接触回数、および手指衛生遵守100%に要する1日あたりの時間の推定値を算出した。平均して、各患者の直接接触は159回/日[95%信頼区間(CI)144~178]、間接接触は191回/日(95%CI 174~210)であった。接触後の手指衛生率は、直接接触43%、間接接触12%であった。患者間で感染を伝播するリスクが高い、日常のケアの最中に複数の患者に接触した職員においては、患者1例あたりの適切な手指衛生なしでの平均接触回数は、直接接触22回/日、間接接触107回/日であった。全医療従事者が手指衛生遵守100%に到達するためには、約230分/患者/日(直接接触100分、間接接触130分)が必要と考えられた。

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監訳者コメント:
根気のいる研究である。それにしても、医療従事者が100%を達成するには手指衛生に230分とは驚愕である。アルコールベースの擦り込み式手指衛生剤を用いた場合、毎回処置前のみの手指衛生で患者1人当たり1日で40分、前後にするとその倍の80分必要であると本文に併記されている。

地中海地方での手指衛生の設備および実践に関する多施設試験:NosoMedネットワークの結果

Multicentre study on hand hygiene facilities and practice in the Mediterranean area: results from the NosoMed Network

K. Amazian*, T. Abdelmoumene, S. Sekkat, S. Terzaki, M. Njah, L. Dhidah, E. Caillat-Vallet, M. Saadatian-Elahi, J. Fabry, Members of the NosoMed Network
*Universite Claude Bernard, France

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 311-318


南地中海地方における手指衛生に関する文献はまれである。基準値を明らかにするため、地中海の4カ国で試験を実施した。22病院の77病棟を登録し、手指衛生実践および設備に関する情報を収集した。全遵守率は極めて低値であり(27.6%)、リスク知覚が高度の場合には遵守率が有意に高かった。集中治療室では、遵守のレベルが最も高かった。国別の分析では、アルジェリア(18.6%)およびモロッコ(16.9%)と比較して、エジプト(52.8%)およびチュニジア(32.3%)で遵守率が高かった。手指衛生の設備、特に消耗品の不足が認められた。現状を改善するためには、手指衛生実践に関する各国の公式な勧告、教育、および定期的評価からなる多面的な取り組みが必要である。

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整形外科手術における患者側危険因子の変量効果モデル:オランダの院内感染サーベイランスネットワーク「PREZIES」の結果

Random effect modelling of patient-related risk factors in orthopaedic procedures: results from the Dutch nosocomial infection surveillance network ‘PREZIES’

J. Muilwijk*, G.H.I.M. Walenkamp, A. Voss, J.C. Wille, S. van den Hof
*National Institute of Public Health and the Environment, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 319-326


手術部位感染に関するオランダのサーベイランスで、1996~2003年に手術部位感染1,895例を含む整形外科手術70,277例のデータを収集した。本研究の目的は、(1)グラム陽性およびグラム陰性細菌による手術部位感染の傾向を分析し、(2)すべての整形外科手術後の深在性および表在性手術部位感染の患者側危険因子(リスクファクター)を、特に初回人工股関節置換手術に焦点をあてて推定し、(3)感染リスクの病院間に特有の相違を分析することである。変量効果モデルを使用して、手術部位感染発症の患者側危険因子のオッズ比を推定し、さらに各病院で最も一般的な手術部位感染の原因菌種の分布を明らかにした。ブドウ球菌を主としたグラム陽性菌が、整形外科手術後の深在性手術部位感染(84.0%)および表在性手術部位感染(69.1%)の主要な原因であった。人工股関節置換手術後のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による手術部位感染の発生率はサーベイランス期間を通して減少したが、黄色ブドウ球菌の関与は増加した。最も一般的な病原菌種による感染の発生は一時的に増加した。全米病院感染サーベイランスシステム(National Nosocomial Infections Surveillance System)のリスク指標や年齢などの患者側因子は、変量効果モデルの予測力に対してほとんど影響を及ぼさなかった。本研究は、手術部位感染の危険因子に関する多施設試験において、病院間のランダム変動のリスク推定値を補正する変量効果モデルが有用であることを強く示した。

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監訳者コメント:
オランダはMRSA制圧に成功した国として有名である。彼らの戦略は、本論文にみられるように、感染症をデータから科学することである。国家プロジェクトとして、危険因子を見いだし、国策としての感染制御に役立てるという、一研究者では到底遂行できないあっぱれな戦略である。

ルーチンの鼻腔内ムピロシン周術期予防投与導入後のムピロシン耐性のサーベイランス

Surveillance for mupirocin resistance following introduction of routine peri-operative prophylaxis with nasal mupirocin

W.N. Fawley*, P. Parnell, J. Hall, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals and University of Leeds, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 327-332


著者らは以前、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染予防に、5日間の鼻腔内ムピロシンおよび局所的トリクロサン周術期予防投与(peri-operative prophylaxis regimen using nasal mupirocin and topical triclosan;PPNMTT)が奏効することを報告した。本論文では、ムピロシン耐性出現の有無を明らかにするため、鼻腔内ムピロシンのルーチンの周術期短期予防投与を実施する外科部門における点有病率に関する4年間の反復的サーベイランスの結果を報告する。PPNMTT開始前と開始後4年間の6カ月ごとに、整形外科病棟5カ所、血管外科病棟1カ所、および対照として老年病科病棟1カ所の全患者の鼻腔内における黄色ブドウ球菌の保菌について、点有病率サーベイランスを実施した。黄色ブドウ球菌のスクリーニングと臨床分離株採取(手術患者)を実施し、ムピロシン軽度耐性[最小発育阻止濃度(MIC)8~128 mg/L]および高度耐性(MIC>128 mg/L)を調べた。ムピロシン耐性株クローンが拡散したというエビデンスを判定するため、全分離株のファージ型別を行った。治療開始後に採取した患者の鼻腔内スクリーニングのスワブは、整形外科593件、血管外科139件、対照206件で、黄色ブドウ球菌分離株が検出されたのはそれぞれ28%、24%、48%(整形外科・血管外科対老年病科、P<0.001)、MRSA陽性は12%、11%、30%であった(P<0.001)。整形外科・血管外科の患者と対照患者由来の鼻腔内スクリーニングによる黄色ブドウ球菌分離株のうち、ムピロシン軽度耐性はそれぞれ5%と4%であった(P>0.1)。治療開始後に検出された黄色ブドウ球菌の臨床分離株286件(整形外科・血管外科)と68件(老年病科)のうち、ムピロシン軽度耐性はそれぞれ7%と9%であった(P>0.1)。ムピロシン高度耐性分離株は、ムピロシン使用病棟(整形外科・血管外科)の患者、および対照の老年病病棟患者のいずれからも分離されなかった。4年間の研究期間に、ムピロシン軽度耐性の罹患率が増加する傾向はみられなかった。ファージ型別の結果は耐性株クローンが拡散していることを裏づけるものではなかった。長期の追跡により、PPNMTTは整形外科および血管外科の患者の黄色ブドウ球菌とMRSAの鼻腔内保菌率低下に対して有効であることが確認された。4年間のPPNMTTにもかかわらず、ムピロシン耐性の持続的出現あるいは拡散を示すエビデンスはみられなかった。

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監訳者コメント:
Wilcox MHら(J Hosp Infect 2003;54:196-201)の報告によると、ルーチンのムピロシンによる術前除菌の実施によりムピロシン耐性菌が検出されたとする論文もあることから、こうしたルーチンの抗菌薬の予防的処置に関しては慎重であるべきと考える。さらなる症例の積み重ねによるエビデンスが必要であろう。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:認知度と認識

Methicillin-resistant Staphylococcus aureus: awareness and perceptions

J. Gill*, R. Kumar, J. Todd, C. Wiskin
*University of Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 333-337


本研究の目的は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染に対する英国保健医療サービス(National Health Service;NHS)の患者・来訪者、および職員の認知度とリスク認識を調査することである。また、特にMRSAの情報源について、両コホートの相違を調べた。2005年3月に、予備的な質問票を患者・来訪者50名およびNHS職員100名(医師25名、看護師25名、清掃職員25名、運搬職員25名)に配布した。運搬職員からの回答はなかったが、全体の回答率は67%であった。MRSAの認知度は、患者・来訪者(94%)とNHS職員(100%)のいずれも高かった。患者・来訪者の情報源としては一般向けメディアが最も多かった(68%)が、NHS職員では24%であった(P<0.01)。MRSA感染のリスク認識は、患者・来訪者とNHS職員でほぼ同等であった(34%対35%、P>0.10)。感染のリスクがあると感じている医師は52%、清掃職員は13%であった。結論として、本研究により一般市民と医療従事者の認知度は同様に高いことが示された。

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隔離室におけるウイルスの拡散

Virus diffusion in isolation rooms

P.H. Kao*, R.J. Yang
*National Cheng Kung University, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 338-345


病院内でウイルスの拡散と感染伝播を抑制するためには、ドアを閉めた状態で使用している隔離室の換気空調が不可欠である。隔離室内の換気装置の配置に応じた気流の動きを調べるためには、コンピューター流体力学を用いた工学シミュレーションが有用な手段となる。換気システム装置の配置に応じた隔離室内でのウイルス拡散の数値シミュレーションを実施するために、咳モデルを考案した。また、換気装置の配置ごとに、隔離室内で飛沫が降下した場所の解析、および咳で吐き出された空気で拡散するウイルスの希釈時間の解析を行った。本研究で示した数値の結果から、ウイルス飛沫を含有する気流を制御するには、並行する方向の気流パターンが最も効果的であることが示された。さらに、ベッド頭部側の後方の壁にある排気口の位置に対して、部屋の反対側であるドア側の吸気口をずらして設置することにより、感染拡大の制御および抑制を効果的に行うことができた。これらの結果は、隔離室で医療処置を行う場合には、換気装置を特定の配置にすることによって職員の安全性が増大することを示唆している。

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監訳者コメント:
台湾國立成功大学・工学部からの論文である。空気感染予防策には陰圧空調管理が必要であり、周囲に対して陰圧で1時間あたり6~12回は室内気が入れ替わるように求められている。病室内の空気は外部へ排出されるのが適当であるが、HEPAフィルタを使用していれば再循環させてもよい。この論文では換気装置の配置方法によってより安全かつ効率的な空気感染対策が実践できることを示している。

床の清掃方法の比較 ★★

Comparison of floor sanitation methods

S. De Lorenzi*, G. Finzi, R. Parmiggiani, P. Cugini, P. Cacciari, G. Salvatorelli
Universita di Ferrara, Italy

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 346-348


乾拭き後の湿性洗浄および湿性洗浄後の乾拭きの2つの清掃方法を、ワックスを塗ったポリ塩化ビニル製および磁器タイル製の2種類の病室の床で比較し、それぞれの汚染除去能力を判定した。乾拭き後の湿性洗浄の場合、平均微生物量に有意な減少は認められなかった。しかし、湿性洗浄後の乾拭きの方法では、どちらのタイプの床でも微生物量が減少し、その差は統計学的に有意であった。

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監訳者コメント:
非常にシンプルなメッセージであるが、日常的な行為に対する影響力が大きい論文である。おばあちゃんは言っていた・・・、「水拭きしてから乾拭きするのが当たり前だ」。

新生児集中治療室におけるSerratia marcescensの集団発生中の定着を検出するための最適なスクリーニング方法は何か ★★

What is the best screening method to detect Serratia marcescens colonization during an outbreak in a neonatal intensive care nursery?

M. Giles*, H-M. Harwood, D.A. Gosling, D. Hennessy, C.T. Pearce, A.J. Daley
*The Royal Women’s Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 349-352


新生児集中治療室(NICU)でセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)が集団発生することがある。しかし、保菌新生児患者の最適なスクリーニング方法は確立していない。地理的に離れた2カ所のNICUで、S. marcescensの集団発生中の新生児の気道および消化管における保菌をスクリーニングした。9カ月の調査期間で合計58例の新生児にS. marcescensの定着(47例)または感染(11例)が認められた。定着を認めた新生児の44例では気道と消化管の両方から試料を採取しており、そのうち消化管由来試料のみ陽性は39%、気道由来試料のみ陽性は22%で、両方の試料で菌が増殖した新生児は39%であった。固形培地への接種前に増菌を実施すると、気道保菌者の検出力が増強した。S. marcescensの集団発生中に、菌が定着した新生児を最大限に検出するためには、気道と消化器の両試料を採取すべきである。ブロス培地での増菌を行うと結果判定が1日遅延するが、気道由来試料の陽性率が高くなる。

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監訳者コメント:
MRSAなどの耐性菌対策として能動的監視培養(active surveillance culture;ASC)を実施すべきか、盛んな議論の対象となっているが、スクリーニング目的であればどのような検体を採取すべきか、対象菌ごとに検討する必要がある。

閉鎖式ルアー接続デバイス関連の感染リスク

Infection risk associated with a closed luer access device

D. Adams*, T. Karpanen, T. Worthington, P. Lambert, T.S.J. Elliott
*The Queen Elizabeth Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 353-357


最近開発された針なし閉鎖式ルアー接続デバイス(closed luer access device;CLAD)(Q-SyteTM;Becton Dickinson社、Sandy、UT、USA)の微生物汚染の可能性をin vitroで評価した。50回使用したQ-Syteデバイスの圧縮シールに25%(v/v)ヒト血液中の表皮ブドウ球菌NCTC 9865株を接種し、70%(v/v)イソプロピルアルコールで消毒後に0.9%(w/v)滅菌生理食塩液で洗い流した。最大70回まで使用したデバイスを通過した洗い流した生理食塩液50回分のうち48回分(96%)が無菌状態であった。さらに、あらかじめ0.9%(w/v)生理食塩液をシリンジに充填し、デバイスへの接続前に外側のルアーチップに表皮ブドウ球菌NCTC9865を接種して、複数回使用した25個のQ-Syte CLADを詳しく調べた。接種した菌が使用後のシリンジチップとコンタミネーション除去前の圧縮シールの両方で検出されたにもかかわらず、最大70回使用したデバイスで菌を通過したものはなかった。これらの結果は、Q-SyteCLADを最大70回まで使用しても、溶液の経路内の微生物汚染リスクは増加しない可能性を示唆している。さらにこのデバイスは、微生物で汚染した外側シリンジチップ表面からの汚染も防御する可能性がある。

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監訳者コメント:
三方活栓に代わる接続デバイスとして様々な閉鎖式接続が考案されており、最近では職業感染対策の観点から針を用いないニードルレス・システムが増加しているが、このようなニードルレス・システムが実際に臨床の現場で血管内留置カテーテル関連血流感染症を減少させることができるのかは、今後の課題である。

小児血液腫瘍患者における埋め込み式ポートおよびヒックマン・カテーテルによる感染性合併症

Infectious complications of implantable ports and Hickman catheters in paediatric haematology窶登ncology patients

A. Adler*, I. Yaniv, R. Steinberg, E. Solter, Z. Samra, J. Stein, I. Levy
*Tel Aviv University, Israel

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 358-365


本研究の目的は、小児におけるヒックマン・カテーテルおよび埋め込み式ポートに関連する感染性および非感染性合併症を比較検討することである。研究は、イスラエルSchneider子ども医療センターの血液腫瘍科で3年間にわたって実施した。中心静脈カテーテルを必要とする全患者を本研究の対象とした。カテーテル関連血流感染症の各エピソードについて、人口統計学的、臨床的、および微生物学的データを記録した。試験期間に、419の皮下トンネル型中心静脈カテーテル(埋め込み式ポート246およびヒックマン・カテーテル173)を281例の患者に挿入した。ヒックマン・カテーテルは埋め込み式ポートと比較して血流感染症発生率が有意に高く(1,000カテーテル・日あたり4.656エピソード対1.451エピソード)、初回感染症発生までの期間が短く(52.31日対108.82日、P<0.001)、カテーテル留置期間が短く(140.75日対277.28日、P<0.001)、機械的合併症による抜去率が高かった(P<0.005)。グラム陽性細菌感染症は埋め込み式ポート群のほうが多いのに対し(63.6%対41.6%)、グラム陰性桿菌、複数菌感染症、および抗酸菌感染症はヒックマン・カテーテル群のほうが多かった(それぞれ31.4%対50.9%、17%対36%、および0%対4.4%;すべてP<0.05)。造血幹細胞移植は感染症発生[オッズ比(OR)1.68、P=0.005]および合併症によるカテーテル抜去(OR 2.0、P<0.001)の独立した危険因子(リスクファクター)であることが示された。埋め込み式ポートは、ほとんどの腫瘍患児および幹細胞移植患児にとって好適な器材であると考えられる。

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監訳者コメント:
海外では長期的な中心静脈カテーテル管理が必要と考えられる場合はカフ付きの皮下トンネル型が使用されることが多く、ヒックマン・カテーテルはその代表的なデバイスである。この論文では皮下トンネル型中心静脈カテーテルとしての埋め込み式ポートとヒックマン・カテーテルの両者について感染率を比較し、埋め込み式ポートの優位性を報告している。末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally-inserted central venous catheter;PICC)など、わが国の中心静脈カテーテル管理に取り入れるべき器材は少なくない。

院内感染の有病率調査における外因性危険因子への曝露:方法論的アプローチ

Exposure to extrinsic risk factors in prevalence surveys of hospital-acquired infections: a methodological approach

J. Rossello-Urgell*, J. Vaque-Rafart, J.I. Villate-Navarro, J. Sanchez-Paya, X. Martinez-Gomez, J.L. Arribas-Llorente, J.R. Saenz-Dominguez, the EPINE Working Group
*Hospital Universitario Vall d’Hebron and Universitat Autonoma de Barcelona, Spain

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 366-371


病院感染症の有病率調査において外因性危険因子(リスクファクター)の存在を調べる際には、様々な困難に直面するために複数の方法論によるアプローチを利用しなければならない。本研究では、病院感染症に関する外因性の危険因子への曝露に関するデータを収集する方法として、後向きアプローチの有効性を評価した。1990年にデータ収集されたEPINE(Study of the Prevalence of Nosocomial Infections in Spain;スペイン病院感染症発生動向調査)データベースからシミュレーションモデルを作成した。評価したすべてのアプローチにおいて、危険因子と感染症の関連性の程度は異なっていた。調査実施日における危険因子への曝露率、調査実施前の曝露率、および全曝露率は、曝露の有無および暴露期間と有意に関連していた。曝露期間が4日未満の場合、調査前の週に曝露があった患者の有病率は、調査の日に曝露があった患者よりも高かった。危険因子への曝露を後向きに調査したところ、実際に曝露があった日より以前の日数を何日間、研究に組み入れるべきかを決定すべき根拠を見いだすことはできなかった。病院感染症が原因でデバイスを抜去する頻度は感染部位によって異なるが、そのような頻度は本研究ではあまり高くなかった。過去の曝露を調べずに、調査日のみに危険因子の存在に関するデータを記録するという制限下においても、調査当日の点有病率調査における外因性危険因子の負荷を適切に推計することができる。

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監訳者コメント:
この論文はかなり難解でありサマリーの邦訳のみでは理解しづらいが、結論として、血流感染症については中心静脈カテーテル、末梢挿入型中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテルによる非経口的栄養管理、尿路感染症については開放式または閉鎖式の尿道留置カテーテル、肺炎については気管切開と人工呼吸器管理がそれぞれ外因性危険因子として調査されており、これらの器具使用の状況について、調査当日のみのポイント調査でも、病院感染症の発生率を評価するための分母として用いてよいことを主張している。本来的には医療関連感染症サーベイランスは前向きに実施されるべきであるが、1日調査のみでも、ある程度の発生率は把握できるであろうとする主張に正当性があることが示された。

外科における抗生物質の予防的投与の改善:オーダーメイドの抗生物質キットの使用の前向き評価

Improvement of surgical antibiotic prophylaxis: a prospective evaluation of personalized antibiotic kits

M. Carles*, S. Gindre, N. Aknouch, B. Goubaux, A. Mousnier, M. Raucoules-Aime
*University Hospital of Nice, France

Journal of Hospital Infection (2006) 62, 372-375


今回の前向き研究では、オーダーメイドの外科用抗生物質予防的投与キット(surgical antibiotic prophylaxis kit;SAPK)と、医師の裁量で処方された抗生物質とを比較した。SAPKの使用によって、外科領域における抗生物質の予防的使用に関する国のガイドラインの採用率が有意に増加し(82%対41%、P<0.001)、結果として抗生物質の選択(3%対28%、P<0.001)、投与時期(12%対24%、P=0.003)、投与期間(1.5%対22%、P<0.001)に関するミスが減少した。したがって、SAPKは有効であることが証明された。

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監訳者コメント:
外科手術部位感染症(SSI)の予防において予防的抗菌療法は非常に有用な位置を占めるが、ガイドラインで推奨された投与方法を現場のプラクティスとして遵守させるには、パスのようなソフトの運用だけでなく、実際にキットを作製して物品(ハード)の運用からアプローチすることもできることを示した論文である。この論文では触れられていないが、物品管理まで含めたアプローチは、経済効率よく医療の質保証に寄与する場合が多い。

監訳者注:
Surgical antibiotic prophylaxis kit:患者名を記入したプラスチックのバッグに、投与する抗生物質と、投与量・投与回数・術後抗生物質投与期間を記載した投薬指示書を入れたもの。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.