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2004ロウベリーレクチャー(2004 Lowbury Lecture):西オーストラリア州でのバンコマイシン耐性腸球菌流行の経験-集団発生から継続的制御へ ★★

2004 Lowbury Lecture: the Western Australian experience with vancomycin-resistant enterococci 窶・from disaster to ongoing control

J.W. Pearman*
*Royal Perth Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 14-26


2001年7月、西オーストラリア州(WA)で初のバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の病院内集団発生がロイヤル・パース病院で始まり、初期には集中治療室および腎臓内科および血液透析部門が発生の舞台となった。集団発生の病原菌はvanB型のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VREF)であった。分離菌株のパルスフィールドゲル電気泳動およびプラスミド解析から単一菌株による集団発生であることが示された。保菌者の隔離およびVREの制御に推奨されているあらゆる予防策の追加的な導入にもかかわらず、VREFは急速に拡大した。初発患者の発見から2カ月後には、この流行菌株は22カ所の病棟および部門、および1カ所の外来部門(サテライト透析施設)に広がった。4例の患者が感染症を発症し、64例が保菌していた。
 この集団発生を根絶して、この流行菌株が病院の常在株になることを防ぐため、院長、臨床部長、および看護部長を含む院内VRE実行委員会を結成した。下記に挙げた高い費用を要する高度な感染制御策を当病院が実行できるよう、西オーストラリア州保健省は高額な臨時の財政支援に応じた。
 1.すべての陽性患者および病棟内接触患者を、それぞれ別の病棟にまとめ、各コホートには専任の看護師を配置。
 2.VREF保菌者の総数を特定するために、全入院患者(既知の曝露のない病棟内接触者)のスクリーニングを1週間の間に行った。これまで知られていなかった39例の保菌者が見つかった。
 3.集団発生期間中のVRE検出病棟専任の清掃サービスの確立。
 4.保菌者が退院した後の最終的な清掃の有効性を点検するための、最終清掃・消毒後の環境培養。
 5.VREF保菌者および病棟内接触者のカルテへの電子標識の貼付。
 6.退院後の病棟内接触者のスクリーニング。
 7.高齢のVREF保菌者および病棟内接触者の退院時における居住型介護施設への特別手配。
 VREの同定は、従来の検査方法では4~5日を要するため感染制御には限界があり、保菌者が発見および隔離される前に環境のコンタミネーション発生や院内伝播が起こる可能性があった。選択的24時間増菌培養液を直接用いてvanAおよびvanB遺伝子のPCRを行うことにより、30~48時間以内にVREの暫定的な迅速同定を行う検査法が開発された。
 90%を超える保菌者を検出するためには、異なる日に集めた平均4回の直腸スワブが必要であった。
 合計1,977名の病棟内接触者を退院後にスクリーニングし、54名(2.73%)がVREFを保菌していることが明らかになった。病棟内接触者のカルテへの電子標識の貼付および能動的な追跡調査の結果、著しい数の保菌者が発見された。もし彼らが再入院した場合、病院でさらに集団発生が生じる危険性があった。
 5カ月後に集団発生は終息し、高度な感染制御の実施に要した費用は2,700,000オーストラリアドル(1,000,000ポンド)であった。
 対象を絞った能動的監視培養によって継続的制御が促進されている。監視培養は、ハイリスク部門(集中治療室、熱傷病等、腎臓内科、血液科、骨髄移植室)への入院時および集中治療室からその他の院内部門への転室時に実施したほか、透析室への定期的通院患者に対する月1回のスクリーニングおよびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)培養および毒素検出用に提出された入院患者の大便サンプルの任意検査スクリーニングであった。
 パースの地域社会にはVREF流行株が依然として認められ、警戒を維持する必要がある。最初に集団発生した病棟内接触者が2つの病院で小規模の集団発生を引き起こし、最初の集団発生から毎年7~19名の新たな保菌者が散発的に発見されている。
 VRE制御プログラムの主要な要素は以下のとおりである。
 1.病院の高リスク部門の患者に対する対象を絞った能動的監視培養。
 2.選択的24時間増菌培養液を直接用いる多重PCRによるVREの暫定的な迅速同定。
 3.既知の保菌者およびスクリーニングを受けていない病棟内接触者の、集団発生時の接触隔離。
 4.既知の保菌者およびスクリーニングを受けていない病棟内接触者の、集団発生時のカルテへの電子標識貼付。
 5.高度な感染制御の施行による病院での単一株(流行株)の集団発生の根絶。
 6.流行株を同定し、その疫学を追跡するための、西オーストラリア州での新たな全保菌者に由来するVRE分離株型別のサーベイランス。
 今日までこのプログラムは西オーストラリア州の全病院でVREの定着を防止している。


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監訳者コメント:
Lowbury LectureはEdmund Joseph Lister Lowbury教授の感染制御に関する長年にわたる顕著な功績を記念して英国病院感染学会(HIS)が1980年に設立した。この講演は2004年11月24日に感染症関連連合学会(Federation of Infection Societies)第11回年次集会で発表された。アウトブレイク制圧の具体的な道筋が解説されている。

監訳者注:
2,700,000オーストラリアドル(1,000,000ポンド)は約2億円。

新生児室におけるSerratia marcescensの集団発生:2種類のクローンの事例

An outbreak of Serratia marcescens on the neonatal unit: a tale of two clones

M.D. David*, T.M.A. Weller, P. Lambert, A.P. Fraise
*City Hospital, Sandwell and West Birmingham Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 27-33


セラチア(Serratia)属菌はハイリスク施設における病院感染と集団発生の重大な起因菌である。2001年から2002年の9カ月間、ある新生児室では患者21例が感染あるいは保菌していた。採取した22分離株に対して抗生物質感受性、β-ラクタマーゼ産生、および遺伝子型の検査を行った。Random-amplified polymorphic DNA-PCR(RAPD-PCR)法とパルスフィールドゲル電気泳動法により、2種類のクローンの存在が明らかとなった。第一のクローンは新生児4例の臨床的な侵襲性感染症の原因となり、その後は非侵襲性クローンと交代して新生児14例が感染した。表現型も、2種類の菌株はプロジギオシンの産生の点で異なっていた。第一の菌株は無色であったが、第二の菌株はピンクレッドの色素産生を示した。臨床的特徴から病原性の相違が示唆された。環境中の感染源は見いだされなかった。感染制御対策の遵守を強化し、抗生物質の投与方針を変更した後、集団発生は終息した。S. marcescensは追跡調査の5カ月間にしばしば分離されたが、これらは異なる遺伝子型をもつ散発性の分離株であった。

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監訳者コメント:
毒をもって毒を制す。プロジギオシンはセラチア菌のコロニーが赤くみえる原因となる物質である。わが国の病院で分離される多くのセラチア菌は最近、このプロジギオンを産生しない。

理学療法リハビリテーション室におけるACC-1産生性Klebsiella pneumoniae集団発生の制御

Control of an ACC-1-producing Klebsiella pneumoniae outbreak in a physical medicine and rehabilitation unit

S. Ohana*, P. Denys, D. Guillemot, S. Lortat-Jacob, E. Ronco, M. Rottman, B. Bussel, J.-L. Gaillard, C. Lawrence
*Hopitaux de Paris, France

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 34-38


この論文では、ACC-1産生性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)により40例の患者が感染した集団発生を報告する。これらの患者は主に脊髄損傷のある40歳未満の男性で、理学療法リハビリテーション室に在室していた。主要な危険因子(リスクファクター)は長期の入院期間、多床室、気管切開のケア、および排便の補助であった。集団発生は、厳格な患者の配置(すなわち、個室への配置または同じ部屋への集団収容など)のみによって制御し得たが、その場合も患者は種々の医療サービス(理学療法、作業療法など)や再教育のために必要な生活空間へ自由に出入り可能であった。

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監訳者コメント:
プラスミドにより接合伝達されるACC-1タイプのAmpC β-ラクタマーゼ産生の多剤耐性菌のアウトブレイク事例である。

成人集中治療室における院内感染起因病原体の交差伝播:発生率と危険因子

Cross-transmission of nosocomial pathogens in an adult intensive care unit: incidence and risk factors

M. Halwani*, M. Solaymani-Dodaran, H. Grundmann, C. Coupland, R. Slack
*University of Nottingham, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 39-46


成人集中治療室における交差伝播の発生率と決定因子を、通常の状況下で検討した。患者430例を延べ3,947患者・日にわたり追跡した。交差伝播した病原体は遺伝子型別により同定した。交差伝播エピソードの定義は、区別不可能な分離株を2例以上の患者が保菌し、7日以下の間隔でICUで治療を受けていた場合とした。原因病原体が被感染者の入院前に感染源患者から分離された場合には交差伝播の方向が確認されたものとした。それ以外の場合は両方の患者が感染源または被感染者でありえるとして、これらの患者は危険因子(リスクファクター)の解析から除外した。病原体の被感染者を交差伝播を受けなかった患者と比較した。調査した22,056の標本から275の分離株が型別され、40例の交差伝播エピソードが認められた。交差伝播の全発生率は、1,000患者・日あたり10.7[95%信頼区間(CI)7.6~14.5]であった。多変量解析では、入院期間を通して、職員不足の環境で看護されていた患者[オッズ比(OR)3.3、95%CI 1.4~7.8]、経鼻胃チューブ(OR 2.9、95%CI 1.1~7.8)、および人工呼吸器(OR 2.5、95%CI 1.1~6.0)を使用していた患者は、そのような期間がなかったか入院期間の一部であった患者と比較して、交差伝播リスクが増加した。反復的な気管支鏡検査(OR 5.1、95%CI 1.04~25)は検査を実施しない場合と比べてリスクが高く、また免疫抑制(OR 3.9、95%CI 1.2~12.5)もリスクを増加させた。本研究により、集中治療室における院内感染起因病原体の交差伝播は職員不足、免疫抑制、および結果的に職員・患者間の様々な接触をもたらす因子と関連することが明らかとなり、したがって手指消毒の重要性が強調される。

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監訳者コメント:
スタッフ数は重要である。

携帯用HEPAフィルター装置によるMRSA環境汚染の低減

Reduction in MRSA environmental contamination with a portable HEPA-filtration unit

T.C. Boswell*, P.C. Fox
*Nottingham City Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 47-54


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やその他の院内感染病原体による交差感染の潜在的に重要な因子として、病院環境が新たな関心を集めている。本研究の目的は、臨床現場でのMRSAによる環境表面汚染の低減に関する、携帯用HEPAフィルター装置(IQAir Cleanroom H13、Incen AG、Goldach、スイス)の有効性を検討することである。水平表面のMRSA汚染率を、高度のMRSA飛散者であった患者3例の両側の病室に設置した寒天静置培地を用いて評価した。数種類の空気濾過率(60~235 m3/時間)で汚染率を測定し、ポアソン回帰を用いてエアフィルターのない状態と比較した。エアフィルターを用いない場合、静置培地の80~100%がMRSA陽性であり、培地を10時間曝露した場合のMRSAコロニー形成単位(cfu)の平均値は4.1~27.7であった。空気濾過を140 m3/時間(患者1例)および235 m3/時間(患者2例)の濾過率で行った結果、エアフィルターを用いない場合と比較して汚染率に有意で大幅な減少が認められた(補正率比はそれぞれ0.037、0.099、0.248;いずれもP<0.001)。空気濾過率と培地を10時間曝露した場合のMRSAのcfuの平均値との間には強い関連があることが証明された(傾向検定のP<0.001)。結論として、携帯用HEPAフィルター装置によって、患者の隔離室内でMRSAの環境汚染が有意に減少する可能性があり、既存のMRSA感染制御対策に追加すれば有用であると考えられる。

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手術時手洗いの擦式法とスクラブ法の比較:有効性とコストの比較

Surgical hand rubbing compared with surgical hand scrubbing: comparison of efficacy and costs

M.P. Tavolacci*, I. Pitrou, V. Merle, S. Haghighat, D. Thillard, P. Czernichow
*Rouen University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 55-59


本研究の目的は、手術時手洗いの擦式法とスクラブ法の有効性を比較し、手術時の手消毒における両法のコストを算出することである。MEDLINEを利用して、擦式法とスクラブ法の有効性を比較した、文献報告された研究のレビューを行った。擦式法とスクラブ法のコストは標準的な病院での費用に基づき推定した。文献から、擦式法はスクラブ法と同様の即効性があるが、擦式法にはより持続的な効果のあることが示された。擦式法はコストを67%削減した。結論として、擦式法はスクラブ法に代わる費用効率の高い方法である。

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ペン型注射器による針刺しリスク ★★

Risk of needlestick injuries by injection pens

G. Pellissier*, B. Migueres, A. Tarantola, D. Abiteboul, I. Lolom, E. Bouvet, the GERES Group
*Groupe d'Etude sur le Risque d'Exposition des Soignants aux agents infectieux (GERES), France

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 60-64


ペン型注射器は、皮下への自己注射による薬物投与(インスリン、インターフェロン、アポモルフィンなど)で、患者が使用している。本研究の目的は、医療従事者のペン型注射器の使用率とそれに伴う針刺しリスクを評価して、ペン型注射器と皮下注射器の針刺し発生率を記録、比較することとした。
 フランスの24の拠点公立病院で1年間の後向き研究を実施した。1999年10月から2000年9月の間に、医療従事者が所属の診療科に自発的に報告した皮下注射処置に関連するすべての針刺しを、標準化された質問票を用いて記録した。同期間に追加データ(報告された針刺し件数、購入された皮下注射器数)を収集した。
 皮下注射に伴う合計144件の針刺し事故が報告された。ペン型注射器での針刺し発生率は使い捨て注射器による発生率の6倍であった。ペン型注射器での針刺しは皮下注射に関連する針刺しの39%を占めた。全体では、ペン型注射器での針刺しの60%が器具の分解に関連していた。
ペン型注射器に伴う針刺しは注射針の6倍の頻度であった。それにもかかわらず、ペン型注射器は患者の治療の質を改善することが示されており、治療遵守を向上させると考えられる。本研究はペン型注射器安全器材の必要性を示している。

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監訳者コメント:
ペン型注射器は患者の自己注射のために利用されるが、医療従事者にとっては針刺しのリスクが高く、注意が必要である。著者も述べているように、医療従事者の針刺しのリスクを軽減するデバイスの開発・普及が待たれる。

毛細血管血糖測定器によるC型肝炎ウイルス伝播の可能性に曝露された患者の後向き研究 ★★

Retrospective investigation of patients exposed to possible transmission of hepatitis C virus by a capillary blood glucose meter

Z. Kadi*, P. Saint-Laurent, J.F. Cadranel, C. Joly, P. Dumouchel, S. Jeanne, V. Thiers, O. Ciurana, P. Astagneau
*Centre de Coordination de la Lutte contre les Infections Nosocomiales, France

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 65-69


C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対する既知の危険因子(リスクファクター)をもたない75歳の女性が入院し、HCVセロコンバージョンと診断された(HCVイムノブロット法およびウイルス定量陽性)。疫学的調査から、この女性は糖尿病と診断された過去の入院期間中に毛細血管血糖測定器(CBGM)Glucotrend®(Roche Diagnostics、フランス)をHCV陽性が判明していた別の糖尿病患者と共用していた。この器具の使用時に、衛生上の問題がある操作が行われていた。Glucotrend CBGMの購入以来、この感染源の疑いがある患者は8回入院しており、HCV抗体陽性が判明している別の糖尿病患者19例も同病院に通院していた。そのため、感染源の疑いがある患者と同時期に入院していた糖尿病患者35例およびGlucotrend CBGMを使用した患者1,305例が、血清中のB型肝炎ウイルス(HBV)抗体、HCV抗体、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体の検査を受けるよう要請された。35例の糖尿病患者中、検査を受けた24例に陽性患者はいなかった。その他の1,305例の患者中、995例が検査を受け、19例(2%)がHCV抗体陽性であった。この陽性率は一般のフランス人集団で報告されている陽性率よりも高いが、このリスク情報はCBGMの使用に起因するとは考えられない。さらに、分子的解析の結果、分離された2種類のHCV株は同一の系統発生群に属していなかった。しかし、このHCV感染を受けて、当該病院では血液媒介ウイルスの伝播を最小限にするための方策が実施した。French Agency for theSafety of Health Productsからの全国的な警告が、フランスの他の病院に通達された。

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監訳者コメント:
医療器材・器具を介した、血液媒介感染のリスクは重要な課題である。病院内で血糖測定を実施する際の器材・器具の汚染には十分注意が必要である。ことに糖尿病性腎不全で透析管理を受けている患者の場合、肝炎ウイルスに対し易感染性でもあることから注意が必要である。自己血糖測定器はあくまで個人単位での運用に限定するべきである。また、医療機関で使用する穿刺器具(穿刺補助具や穿刺針を含む)についても一体形成で完全使い捨てで安全機能のついている製品の作用が望まれる。

種々の過酢酸安定化製剤がバイオフィルムに及ぼす作用

Effect of different stabilized preparations of peracetic acid on biofilm

N. Henoun Loukili*, B. Granbastien, K. Faure, B. Guery, G. Beaucaire
*Centre Hospitalier Universitaire de Lille, France

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 70-72


界面活性剤含有または非含有の3種類の安定化過酢酸製剤(Bioxal M)が大腸菌バイオフィルムモデルに及ぼす作用を調べた。バイオフィルムをガラスチューブ内に形成させ、分光光度法で間接的に評価した。安定化過酢酸製剤のバイオフィルムの凝固能または除去能を洗浄活性により測定した。試験を行った製剤はどれもバイオフィルムを固定しなかった。Bioxal M-1のバイオフィルムに及ぼす作用は対照(滅菌水)と同等であった。Bioxal M-2およびBioxal M-3は洗浄活性弱陽性を示した。非イオン性界面活性剤により安定化過酢酸製剤の洗浄活性が向上した。安定化過酢酸製剤は製剤の種類によって異なる洗浄活性を示したが、殺菌能とは無関係であった。この基準は、バイオフィルムの凝固能が最も弱い製剤の選択に利用可能であると考えられる。したがって、利用者は医療器具の洗浄段階における効果を重視すべきである。安定化過酢酸製剤の選択には、抗菌活性に加え、バイオフィルムの除去能を考慮に入れる必要がある。

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監訳者コメント:
バイオフィルムとは、細菌が自身を外から防具するために放出するネバネバ物質のことである。これらが細菌を取り巻くことにより、抗菌薬や消毒薬の浸透性が低下し効果が減弱する。こうした現象と高水準消毒薬との関係を生体外で検討した実験である。

数種類の第三級アミン化合物と、オルトフタルアルデヒドまたはPerasafeによる微生物担体に対する殺菌効果の比較

Comparison of the microbicidal efficacy on germ carriers of several tertiary amine compounds with ortho-phthalaldehyde and Perasafe

R. Herruzo-Cabrera*, M.J. Vizcaino-Alcaide, J. Rodriguez
*La Paz Hospital, Spain

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 73-78


高レベルの消毒薬(HLD)として数種類の第三級アミン製剤が販売されている。本研究ではそれらの製剤と、HLDとして使用されている製品2種類[オルトフタルアルデヒド(OPA)とPerasafe]とを比較した。比較のため、金属製の微生物担体を使用した52株の微生物に対する殺菌効果の判定、市販の微生物担体(3M社の発売する芽胞)を使用した殺芽胞効果の判定、およびヒトの血液を付着させた外科用メスに対する腐食試験を行った。
 OPAとPerasafeは、検査を行ったすべての第三級アミン製剤よりも有意に効果が高く、接触時間10分以内で作用がみられたが、他の製剤では20分を要した。グラム陰性菌の場合は、Instrunet FAでの20分の時点と、OPAとPerasafeの10分の時点とを比較して有意な差は認められなかった。検査を行ったアミン類の中では、全体の殺菌効果に有意差はなかった。第三級アミン製剤とは異なり、OPAとPerasafeはマイコバクテリウム(Mycobacterium)属に対して効果があった(接触時間15分)が、殺芽胞効果はなかった。すべての薬剤(第三級アミン製剤1種類を除く)が、腐食試験に合格した。
 結論として、OPAとPerasafeはHLDであると判定することができる。しかし、15~20分の接触時間が必要であり、どちらの製剤にも欠点がある。


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監訳者コメント:
HLDはそれぞれ殺菌作用に特徴があるため、これらを理解した上で使用する必要がある。

長期にわたり経鼻胃チューブによる栄養補給を受ける高齢患者の胃内微生物叢

Gastric microbiota in elderly patients fed via nasogastric tubes for prolonged periods

R. Segal*, I. Pogoreliuk, M. Dan, Y. Baumoehl, A. Leibovitz
*Geriatric Medical Center, Israel

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 79-83


口腔咽頭内容物の吸入は、経鼻胃チューブによる栄養補給を受ける高齢患者にとって日常的脅威である。近年、これらの患者の口腔咽頭に病原微生物叢が定着すること、および栄養チューブ表面にバイオフィルム形成がみられることが報告されている。さらに、経鼻胃チューブの存在が胃食道括約筋の動きを妨げ、胃食道逆流につながる可能性がある。このようにして、病原性細菌の双方向への通過が促進される。本研究の目的は、経鼻胃チューブによる栄養補給を受ける高齢患者の胃液および口腔咽頭内の微生物叢を調査することである。一晩の絶食後に胃液試料を採取して細菌培養、およびpHの直接測定を実施した。同時に口腔咽頭からも培養用試料を得た。全体で、52例の被験者から107の胃および口腔咽頭培養を得た。病原微生物叢(グラム陰性細菌または黄色ブドウ球菌)が胃由来試料の74%、口腔咽頭由来試料の69%から分離された。胃液からはプロテウス(Proteus)属(26%)と大腸菌(22%)が最も多く分離され、口腔咽頭からはProteus属(24%)とシュードモナス(Pseudomonas)属(21%)が最も多く分離された。ほとんどの症例で、口腔咽頭と胃の細菌叢の組成が類似していることが観察された。胃液のpHは比較的高く(栄養注入の3時間後で4.57±0.65、12時間後で4.2±0.9)、病原性微生物の分離と高い相関が認められた(r=0.58、P<0.01)。これらの結果は、経鼻胃チューブによる栄養補給を受ける高齢患者では口腔咽頭だけでなく胃も、嚥下性肺炎のリスクに関連し得る病原菌のリザーバーとなるという見解を支持するものである。胃液のpHが高い理由と、病原性微生物との関連について、さらに研究が必要である。

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デイケア施設でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)集団発生の制御

Control of a methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) outbreak in a day-care institution

J.-U.S. Jensen*, E.T. Jensen, A.R. Larsen, M. Meyer, L. Junker, T. Ronne, R. Skov, O.B. Jepsen, L.P. Andersen
*Copenhagen University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 84-92


本論文では、コペンハーゲンの2つの重複障害児施設における、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の集団発生について報告する。本研究の目的は、高度の身体的接触があった重複障害児と職員という環境下で、MRSAの根絶が可能かどうかを判定することである。本研究は、2003年1月から2005年3月に行われた前向き介入非対照コホート研究である。2つの施設を頻繁に来訪した者または集団発生でのMRSA保菌者と密接に接触した者全員を本研究の対象とした。対象者は患児38例、職員60名、および保菌者の近親者12名であった。感染制御対策として、全員のスクリーニングを実施した。MRSAの感染または保菌が認められた場合は、MRSAの除菌を試み、職員の教育を実施し、伝播経路の特定を試みた。11例がMRSA陽性であった(10.0%)。すべての分離株は、パルスフィールドゲル電気泳動法で同一であることが示され、ブドウ球菌カセット染色体mecSCCmec)IV型を有していた。すべての保菌者と感染者は、一方の施設の1つの部屋と関係があった。すべての保菌者と感染者のMRSAを除菌した。本研究は、高度の身体的接触がある重複障害児施設におけるMRSAの集団発生を制御することが可能なことを示している。

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監訳者コメント:
市中感染型MRSAは人口密度が高かったり、皮膚どうしが擦れ合い切り傷を負うような環境下で皮膚軟部組織感染症を引き起こすことが知られている。本事例のような施設でも該当するリスクが整っており、施設内伝播したものと考えられる。基本は皮膚の衛生管理である。

新生児科領域におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌市中感染クラスターの制御 ★★

Control of a cluster of community-associated, methicillin-resistant Staphylococcus aureus in neonatology

H. Sax*, K. Posfay-Barbe, S. Harbarth, P. Francois, S. Touveneau, C.L. Pessoa-Silva, J. Schrenzel, S. Dharan, A. Gervaix, D. Pittet
*Uiversity of Geneva Hospital, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 93-100


新生児病棟における市中感染型MRSA(CA-MRSA)の集団発生を制御するために、新生児および親のスクリーニング、MRSA分離株の分子解析、および症例の長期追跡を含む調査を実施した。2000年夏の2カ月間で、Panton-Valentine型ロイコシジン(PVL)産生CA-MRSA(ST5-MRSA-IV株)を、新生児5例で検出した。初発症例の母親は乳腺炎および創傷感染の徴候を示し、初発症例はCA-MRSAの陽性反応の結果となった。PVL陰性MRSA株(ST228-MRSA-I)による小規模の地域流行クラスターが、同時に発生した。衛生対策の強化、防護的予防策、保菌者の局所的除菌、および新規入院患者のコホーティングにより、集団発生は終息した。集団発生の4カ月後、別の新生児の母親が流行CA-MRSA株による、せつ症を発症した。乳児1例でCA-MRSA保菌が持続し、集団感染の4年後に兄弟の皮膚感染症の原因となった。結論として、流行CA-MRSA株は初発症例の母親が端緒となった。これが新生児の間で拡散し、次いで母親および兄弟に伝播した。本稿は、欧州において制御に成功した、遺伝的に異なるPVL産生CA-MRSA菌株による新生児集団感染に関する最初の報告である。

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監訳者コメント:
米国でもEIDでCA-MRSAによるNICUアウトブレイクがすでに報告されており、幸い現時点では、わが国にはPVL産生CA-MRSAはほとんど小児の皮膚軟部組織感染症から分離されていないが、今後、わが国でも小児期のCA-MRSAに関する継続的な監視を行う必要があろう。Bratu S, Eramo A, Kopec R, et al. Community-associated methicillin-resistant Staphylococcus aureus in hospital nursery and maternity units. Emerg Infect Dis 2005;11:808-813.

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.