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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

集中治療室での血流感染の医療コスト ★★

Cost of intensive care unit-acquired bloodstream infections

K.B. Laupland*, H. Lee, D.B. Gregson, B.J. Manns
*University of Calgary, Canada

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 124-132


集中治療室での血流感染は、重病時の重大な合併症である。本研究の目的は、集中治療室血流感染による滞在期間の延長、死亡率、費用を算出することである。2000年5月1日から2003年4月30日にかけて、カルガリー保健区(Calgary Health Region)のすべての成人用集中治療室を対象として、マッチングによるコホート研究を実施した。集中治療室血流感染患者144例を集中治療室血流感染を合併しなかった患者とマッチングさせた(1:1)。集中治療室血流感染を合併している患者では合併していない患者に比べて、集中治療室滞在期間中央値{15.5日間[四分位範囲(IQR)8~26日]に対し12日間[IQR 7~18.5日]、P=0.003}および病院の治療費中央値[85,137ドル(IQR 45,740~131,412ドル)に対し67,879ドル(IQR 35,043~115,915ドル、P=0.02)]が有意に増加した。集中治療室滞在期間延長の中央値は2日間であり、集中治療室血流感染に起因する治療費の中央値は1例あたり12,321ドルであった。集中治療室血流感染群の60例(42%)が死亡したのに対し、対照群では37例(26%)であった[P=0.002、集中治療室血流感染に起因する死亡率16%、95%信頼区間(CI)5.9~26.0%]。集中治療室血流感染患者では、入院中の死亡リスクが増加した(オッズ比2.64、95%CI 1.40~5.29)。生存者同士でマッチングさせたペアでは、集中治療室血流感染発症に起因する集中治療室滞在期間および入院期間の延長の中央値はそれぞれ2日間と、13.5日間であり、集中治療室血流感染による費用は生存者1例あたり25,155ドルであった。集中治療室血流感染を発症した重病患者では罹患率と死亡率が非常に高く、医療費に有意な増加がみられた。これらのデータは、感染予防・制御プログラムに対する支出が必要であり、これらの感染の影響を減少させるためにはさらなる研究を要することを支持するものである。

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監訳者コメント:
マッチングによるケースコントロール研究という非常に手間ひまのかかる研究デザインで、十分に検討された論文である。症例数もこの形式の研究デザインでは多い方である。

近位大腿骨骨折後の深部創感染:転帰と費用

Deep wound infection after proximal femoral fracture: consequences and costs

T.C.B. Pollard*, J.E. Newman, N.J. Barlow, J.D. Price, K.M. Willett
*University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 133-139


本研究の目的は、近位大腿骨骨折手術後の深部創感染による患者の死亡率および社会的影響、およびNational Health Serviceへの経済的負担の影響を検討することである。6年間で、近位大腿骨骨折61例に深部手術創感染の合併症が起きた。これらの症例を、感染のない患者群122例と、これにマッチングさせた対照群と比較した。感染症例では入院期間が大幅に延長し(P<0.001)、生存退院率は4.5分の1に減少し(P=0.002)、たとえ生存しても元の住居への帰宅率は3分の1に減少した(P=0.05)。感染症例あたりの治療費総額は24,410ポンド、対照では7,210ポンドであった(P<0.001)。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染では、非MRSA感染と比較して入院期間と費用が増加した(P=0.02)。近位大腿骨骨折後の深部創感染は、患者および医療サービス提供者の両方にとって、甚大かつ不経済な合併症である。この社会的脆弱グループにおける感染リスクを最小限にするための適切な対策費用を確保し治療費を拠出するために、外傷部門へ予算を配分する場合には経済的影響まで考慮すべきである。

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監訳者コメント:
マッチングによるケースコントロール研究を用いた小規模な研究である。しかし統計学的なエビデンスが強く、明らかに病院感染症が社会的にも甚大な被害をもたらしているということを強く訴えかけるメッセージをもっている。

手術時の予防的抗生物質投与のコンプライアンス:オーストラリアのビクトリア州における全州的サーベイランスの報告

Compliance with surgical antibiotic prophylaxis - reporting from a statewide surveillance programme in Victoria, Australia

A.L. Bull*, P.L. Russo, N.D. Friedman, N.J. Bennett, C.J. Boardman, M.J. Richards
*VICNISS Co-ordinating Centre, Australia

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 140-147


オーストラリアのビクトリア州にある大規模な公立病院で、手術時の予防的抗生物質投与(surgical antibiotic prophylaxis;SAP)のガイドラインに対するコンプライアンスの全州的評価を実施した。本研究は、病院感染のためのサーベイランスシステムの一環として収集されたデータを利用して行った。研究対象は、ビクトリア州の100床以上の公立病院(27病院)で、21カ月間に心臓外科手術、股関節または膝関節形成術、胆嚢切除術、虫垂切除術、結腸手術、子宮摘出術を受けた患者である。オーストラリアのガイドラインでは、本研究に組み入れた10,643例の外科的処置すべてに対してSAPを推奨している。すべての処置のうち87%がSAPを受け、抗生物質の選択は53.3%の処置でガイドラインに準拠し、23.9%の処置で「適切であるがガイドラインに準拠しない」と判断された。18.9%の処置ではSAPが不適切とみなされた。心臓および整形外科手術に対しては、多数の抗生物質レジメンが使用されていた。投与のタイミングは、半数以上の処置で記載されていなかった。投与時期の記録のある処置のうち76.4%がガイドラインに準拠していた。予防的抗生物質の選択は、全般的に心臓および整形外科手術が他の手術よりもガイドラインに準拠していた。しかし、これら診療科におけるSAPでも、死亡率が高い病院では、SAPが不適切な場合があった。病院感染のサーベイランス時に収集されたデータを用いて、SAPのコンプライアンスに関する定期的な報告を行うことは可能である。これにより、コンプライアンスおよび診療記録の改善がもたらされると考えられる。

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監訳者コメント:
SAPについてのマニュアル履行率についての調査である。SAPについては、どの薬剤を選ぶかというよりも、どのタイミングで投与をされたかの方が感染率に大きな影響をもたらすことを知っておく必要がある。その上で、投与のタイミングが記載されていないということが、どういう意味をもっているかは、読者が理解しなければならない。

タイで実施された外科医を対象とした手術部位感染率のフィードバックの影響

Impact of surgeon-specific feedback on surgical site infection rates in Thailand

N. Kasatpibal*, S. Jamulitrat, V. Chongsuvivatwong, M. Norgaard, H.T. Sorensen, on behalf of the Surgical Site Infection Study Group
*Prince of Songkla University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 148-155


タイでは現在、外科医別の手術部位感染率のフィードバックに関するデータは入手できない。外科医へのフィードバックシステムにより手術部位感染率が低下するかを検討するため、著者らはタイの7カ所の病院で外科手術を受けた患者の前後比較試験を行った。6カ月のサーベイランス期間後、外科医に本人の手術部位感染率および標準化感染比(standardized infection ratios;SIRs)を通知した。手術部位感染率は全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムの基準を用いて算出し、標準化感染比に関するNNISの報告と比較した。介入前後の標準化感染比を比較するために標準化感染比の比を算出し、外科医個別へのフィードバックの相対的な影響を評価するために、患者の性別、年齢、創汚染の程度、米国麻酔学会スコア(ASAスコア)、手術所要時間、手術の種類、予防的抗生物質投与の使用と期間、および術前入院期間で補正したロジスティック回帰分析を行った。外科医へ非公開のフィードバックを6カ月間実施した後、手術部位感染率と標準化感染比に変化はなかった。介入前の期間の手術部位感染率は、手術100例につき感染が1.7例であり、対応する標準化感染比は0.8であった[95%信頼区間(CI)0.6~0.9]。介入後の期間の手術部位感染率は手術100例につき感染が1.8例であり、対応する標準化感染比は0.8であった(95%CI 0.7~0.9)。標準化感染比の比は1.0であった。外科医へのフィードバック後の手術部位感染の相対リスクから、この介入には効果がなかったことが示唆された(補正相対リスク1.02、95%CI 0.77~1.35)。タイにおいて、外科医への本人の手術部位感染率に関するフィードバックにより、手術部位感染率は減少しなかった。

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監訳者コメント:
減少しなかった理由として、観察期間内ではサンプルサイズが小さすぎたこと、および外科医へのフィードバックに時間がかかったことが挙げられている。これらを解決すれば、あるいは感染率の低下がみられるかもしれない。本邦でも多くの病院でclinical governanceの向上のために、外科医自身が中心となって同様の研究がされるようになることを期待している。

病院の隔離室の定員の前向き評価

Prospective evaluation of hospital isolation room capacity

N. Wigglesworth*, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals & University of Leeds, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 156-161


個室への隔離の必要性を判定するためにリスク評価が使用されるが、隔離室に限りがあることや運用上の必要性により、リスク評価で妥協をすることがある。本稿では、1,100床の教育病院において、感染制御を目的とするすべての隔離要請について観察した、12カ月間の前向き研究の結果を報告する。さらに、個室使用について4点での隔離実施率調査を行った。病棟ごとの新たなメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)臨床分離株の発生率についてデータを集め、それらとMRSA症例の隔離不履行率との相関を調べた。患者隔離の要請は845件あり、そのうち185件(22%)は実施されなかった(隔離不履行)。要請の4分の3はMRSAまたはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)によるものであった。隔離の不履行率はほとんどの微生物や疾患で同一であったが、診療科ごとに大きく異なっていた(0~57%)。隔離不履行の理由は、個室がない、すべての個室/隔離室が使用中(隔離のため、または感染制御以外の理由)、男女混合病棟における個室使用の制限、および患者個別の理由である。使用できる個室のうち、感染制御の理由で使われていたのはごく少数であった(12~19%)。隔離不履行とMRSA発生率には、統計学的に有意な相関があった[Spearmanの順位相関係数(ρ)0.596、P<0.001)]。病床数の30%以上が個室である唯一の病棟では、隔離不履行例が1例あった。結論として、病原体を伝播させる可能性がある患者を隔離するための個室数が不十分なことが多く、感染制御上の要請に妥協がもたらされることがある。隔離室の定員を増やすか、隔離要請が利用可能数を上回る状況に対するエビデンスに基づくリスク評価を行うべきである。隔離不履行の影響について、さらなる情報が必要である。

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監訳者コメント:
隔離をする必要があるのに十分な個室のキャパシティがないことは、我々の実地でもよく経験することである。これがもたらす様々な影響として、MRSAの分離率を指標として挙げているが、これは容易に想像できよう。ただし実際にエビデンスベースのリスクアセスメントをどのように変えたら、これが改善したかというステップには到達していない。さらなる発展的研究が望まれる。

集中治療室看護師の過重労働が原因のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の伝播

Propagation of methicillin-resistant Staphylococcus aureus due to the overloading of medical nurses in intensive care units

J. Blatnik*, G. Leナ。niト溝r
*General Hospital Celje, Slovenia

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 162-166


病院感染の罹患率および死亡率は増加を続けている。感染制御の有効性は、費用削減に寄与するだけでなく、病院における医療の質の重要な指標となっている。今回の3年間の前向き研究の目的は、看護師の日常的労働負荷を調査し、外科集中治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染の拡大と相関があるかを、治療スコアリングシステム(Therapeutic Intervention Scoring System;TISS)を用いて調べることである。対象とした外科集中治療室は継続教育に強い配慮を行っているが、MRSA発生率は依然として高い。TISSによって、外科集中治療室の看護師は平均57%の過重労働であると推定された。MRSA感染は、看護師の過重労働が平均25%を超えていた期間中に発生した。研究期間中、47例のMRSA感染が新たに検出された。
 これらの結果から、特に外科集中治療室の看護職員について、適切な人的資源の管理が感染制御に寄与し得ることが示唆される。

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監訳者コメント:
看護師の過重労働は、手洗いコンプライアンスの低下とコホーティングの実施率低下をもたらすリスクが高まるため、常に過重労働を避けるような人員配置が必要である。英国では、各部署への人員配置については、病院の特性に合わせて、フレキシブルに病院の予算内で決定している。

血圧計のカフ:敵か味方か?

Blood pressure cuffs: friend or foe?

N. Walker*, R. Gupta, J. Cheesbrough
* Lancashire Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 167-169


病棟で使用中の血圧計のカフの細菌汚染濃度を評価する研究を実施した。試料とした24個のカフすべてから生菌が採取され、濃度は100 cm2あたり1,000~25,000コロニー形成単位以上であった。病原菌となる可能性のあるものは14個(58%)のカフから分離された。11個のカフからは単一の病原菌が、3個のカフからは複数の病原菌が培養され、合計18の分離株を得た。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌が8個(33%)のカフから、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が2個(8%)のカフから、およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)が8個(33%)のカフから分離された。本研究は、病棟で患者から患者への伝播を媒介するのは手だけではないこと、および血圧計のカフによるリスクの低下の対策を講じるべきであることを認識させるものである。

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監訳者コメント:
血圧計のカフは、MRSAなど隔離が必要な患者では専用使用としているが、カフの汚染についての認識が低いために、再使用前に除菌するプロセスについての運用が乏しい。ディスポーザブルが理想的であるが、現実的なのはランドリーによるカフ布の除菌である。この問題を病棟スタッフに認識させる根拠としては、覚えておくと便利な論文である。

Irish-1およびIrish-2:英国で流行中の北アイルランドに関係するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株

Irish-1 and Irish-2: UK epidemic meticillin-resistant Staphylococcus aureus strains associated with Northern Ireland

H.M. Aucken*, G. O'Neill, M. Ganner, N. Dinerstein, M. Ali, S. Murchan
*Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 170-178


1998年以降、北アイルランドから著者らの研究所へ照会されるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)分離株で、2つの特徴的なファージ型のどちらかに該当するものが増加している。これらの菌株を「Irish-1」および「Irish-2」と命名した。Irish-1またはIrish-2に分類された委託分離株956株の解析によると、前者の97%、および後者の95%が北アイルランドからのものであった。イングランドからのものは、それぞれ0.2%、3%のみであった。11株のIrish-2分離株は、もともと1994年に西オーストラリアで分離された流行株の典型例として、その地域から照会されてきたものであった。多くの病院から得たIrish-1ファージ型の分離株90株およびIrish-2ファージ型の分離株91株で、制限酵素SmaI消化によるパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による泳動パターン、毒素遺伝子の有無、および抗生物質感受性を調べた。PFGEでは、各サンプルのうちの数株は無関係な菌株であったが、大多数は最も主流のDNAプロファイルとの相違が6バンド以内であった。Irish-1分離株の半数は同一(homogeneous)パターンで、残りは22のDNAプロファイルを有していた。Irish-2分離株には2つの一般的なプロファイルであるD1とD2があり、分離株の3分の1のうち半々がいずれかのパターンを示したが、両者は互いに2本のバンドが異なっていた。Irish-2分離株の残りには31のDNAプロファイルがあった。クラスター解析によりIrish-1株とIrish-2株のDNAプロファイルに一部重複がみられたが、他のMRSA流行菌株とは明らかに異なっていた。PFGEプロファイルと、抗生物質耐性パターンまたは毒素遺伝子保有のいずれかとの間に、明確な相関はなかった。Irish-1分離株は3株を除いてすべてが、ブドウ球菌エンテロトキシンA(sea)遺伝子のみを保有していたが、Irish-2分離株のほとんどすべては、12のエンテロトキシン遺伝子すべてが陰性であった。Irish-2分離株の69%が、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、およびストレプトマイシン耐性であり、一方Irish-1分離株の90%は、これらすべてに加え、ゲンタマイシンとムピロシンに耐性があった。すべての分離株はキヌプリスチン・ダルホプリスチン合剤、テイコプラニン、およびバンコマイシンに対して感受性であった。ウレアーゼ産生は両株で陰性であった。今回の結果から、Irish-1およびIrish-2は互いに異なる流行菌株で、ファージ型、DNAプロファイル、抗生物質耐性、および毒素遺伝子保有により識別可能であることを示唆している。

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監訳者コメント:
北アイルランドで流行しているIrish-1とIrish-2の株は、イングランドとウェールズ、あるいはスコットランドのepidemic MRSA(EMRSA)と異なっていることの報告である。MRSAがどのように拡大しているかの疫学に有益な情報である。


監訳者注:
北アイルランド:一般にイギリスと大雑把にくくっているが、歴史的にイングランドとウェールズは2つの王国が大昔に併合したので、1つの行政府として存在している。またスコットランドもかつては王国であったが、現在は独自の議会をもち独立した行政府である。これに北アイルランド王国が独立した行政府として存在している。これら4つの王国が連合して、連合王国(United Kingdom)を形成している。よって、英国には3つの行政府が存在し、それぞれに流行株の定義がある。それぞれの国の流行株は、同一の株を違うように命名しているわけではないことに注意する。
MRSA流行菌株:Epidemic MRSA strains(MRSA流行菌株)は、英国を中心として用いられている流行株についての総称で、発見された順にEMRSA-1から始まり現在はEMRSA-17まで分類されている。現在はEMRSA-15と-16が主要な流行株で、EMRSA-3が続いている。EMRSA-17は、テイコプラニンの感受性が低下している株で、グリコペプチド中間黄色ブドウ球菌(glycopeptide intermediate Staphylococcus aureus;GISA)にあたる。

日本の集中治療室における院内感染発生率評価のための実用的手段:日本の院内感染対策サーベイランスシステム

A practical tool to assess the incidence of nosocomial infection in Japanese intensive care units: the Japanese Nosocomial Infection Surveillance System

M. Suka*, K. Yoshida, J. Takezawa
*St. Marianna University School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 179-184


感染制御専門家は病院内の感染率を算出する手段はあるが、これらを評価する手段がない。このため、観察された感染率と外部標準との比較をするための実用的手段が必要である。日本の院内感染対策サーベイランス(JANIS)システムの集中治療室部門から得られたデータを基に、リスク補正した指標として標準化感染率を算出するための表計算プログラムを開発した。多変量解析で院内感染の発症に関連することが示された因子から、層別化のためにAPACHE IIスコア(0~10、11~12、21以上)、手術(あり、なし)、および人工呼吸器の使用(使用者、非使用者)という3つの因子を選択した。2001年の感染率を算出して(1,000患者・日あたり)、3つの因子ごとに層別化し、ベンチマークとした。日本の感染率ベンチマークに基づいて標準化感染率を算出できるように、Microsoft Excelソフトウェアで表計算プログラムを設計した。表計算プログラムの使用者は、観察された院内感染数および患者・日の数値をAPACHE IIスコア、手術の有無、および人工呼吸器の使用ごとに入力することになる。日本の8カ所の集中治療室に適用したところ、この表計算プログラムは、各集中治療室の院内感染発生率には相対的な相違および経時的変化がみられることが明らかになった。

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監訳者コメント:
JANISは厚生労働省事業として行われている。

外科患者および器具に超清浄空気を送るTOUL可動式システムのさらなる細菌学的評価

Further bacteriological evaluation of the TOUL mobile system delivering ultra-clean air over surgical patients and instruments

M. Thore*, L.G. Burman
*County Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 185-192


可動式スクリーンを通して指数曲線状超清浄気流(EUA)を生産する2種類の可動式TOUL-400ユニット(1型および2型)を評価した(床からスクリーンの中心までの最大高:1型1.4 m、2型1.6 m)。TOUL-400 1型ユニットにより細菌付着率は、テーブル上の1.7 m(長さ)×1.0 m(幅)部分で60%を超えて減少し(P=0.001)、スクリーンから1.0 mでの平均の空中浮遊細菌数は、1時間あたりの換気回数(ACH)が6回の部屋での実験で、23コロニー形成単位(CFU)/m3から1.6 CFU/m3に減少した。16 ACHの手術室での減少は、対照実験での細菌汚染レベルが高いために2~3倍高かった。1カ所の14 cm静置培地で、劇的であるが局所的な付着率の減少が記録されたが(手術室のスクリーンから0.8 mの位置で2,376倍を超える減少)、これは明らかにEUAのあたる中心であったことが原因であった。TOUL-400ユニットの影響は、同じ試料採取場所で並行して記録した空気細菌数による評価では、ほぼ100倍に過小評価された(26.5倍の減少)。6 ACHの室内で疑似冠動脈造影および疑似股関節形成を施行中には、EUAが阻害されない場合にはTOUL-400 2型ユニットによって超清浄空気(<10 CFU/m3)が切開部位全域で得られた(スクリーンと術創の最大距離1.7 m)。実際の冠動脈造影(6 ACH室、スクリーンと術創の距離2.0~2.3 m)および手術室での様々な手術(スクリーンと術創の距離1.4~1.8 m)では、超清浄空気が18例のうちの3例の術創で得られたが、この場合の特徴は気流の阻害がないこと、および最大距離が1.8 mであることであった。一方の端にTOUL-400ユニットと同じEUAユニットを装備した、新しく開発されたTOUL-300手術器具台(1.3~1.7×0.6 m)を、6 ACHの室内および16 ACHの手術室で評価した。本ユニットは、0.8 mの位置で超清浄空気を供給し(1.9 CFU/m3、96%減少、P=0.01)、台の大部分の表面上で付着率が60%を超えて減少した。スクリーンの位置決定の単純化または到達距離の延長、さらに術創へ気流を正確に到達させるためのメカニズムによって、TOUL EUAシステムの臨床的有用性が向上すると思われる。

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監訳者コメント:
TOUL Meditech社(http://www.toul.se/)の可動式ultra-clean air発生装置に関する検討の論文である。空気清浄野を可動式装置モニター上でコントロールする発想がユニークである。

プラスチック付着微生物のエタノール消毒 ★★

Ethanol disinfection of plastic-adherent micro-organisms

S.T. Chambers*, B. Peddie, A. Pithie
*University of Otago, New Zealand

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 193-196


本研究は、ライン感染の原因となることが多いプラスチック付着菌に対するエタノール/水(70:30 vol:vol)の殺菌効果を調査した。実験はポリカーボネート製ウェルで実施し、培養はすべて37℃で行った。ブロス中の細菌をウェルに接種して培養後(16、40、および72時間)、洗浄して非付着菌を除去し、エタノール/水に曝露した。次に、ウェルにブロスを加え再培養し、生存細菌を検出した。16時間培養したすべての菌は、70%エタノールに1時間曝露することによって死滅した。40時間の培養後、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の2つの菌株を死滅させるためには、エタノール曝露が4時間必要だった。同様に、72時間培養した肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および緑膿菌それぞれの3種のうちの1種が、70%エタノールへの1時間の曝露後に増殖を示したが、4時間の曝露後には増殖は認められなかった。これらの結果は、エタノール/水の溶液によって数秒で死滅する対数期の細菌とは対照的に、プラスチック付着菌はエタノールの殺菌作用に対して高い耐性をもつことを示唆している。

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監訳者コメント:
プラスチック付着菌のエタノール耐性は今まで知られていなかった知見であり、非常に興味深い論文である。

建築の粉塵に関連した眼科手術後の深在性細菌感染の集団発生

A cluster of deep bacterial infections following eye surgery associated with construction dust

A.P. Gibb*, B.W. Fleck, L. Kempton-Smith
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 197-200


3例の重篤な眼感染症[眼内炎2例、眼窩蜂巣炎1例(2例は黄色ブドウ球菌、1例はビリダンス連鎖球菌群が原因)]が、手術(白内障2例、網膜剥離修復1例)2週間以内の短期間で発症した。同時期に手術室に隣接して建設工事が行われており、水平面上で微細な粉塵が検出された。以降の手術は中止されたが、建設工事が終了し、手術室を清掃して手術を再開した後は、感染はみられなかった。眼内炎の病因に関与する可能性がある因子の調査後、これらの症例の感染のメカニズムは、しばしば手術中に眼房水で発見される少数の細菌の病原性を高める、異物の存在による可能性があると提唱されている。この仮説は、眼内炎の実験モデルで検証することが可能である。

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監訳者コメント:
手術室の改装工事に警鐘を鳴らす興味深い論文。一読の価値あり。

スウェーデンの医療従事者のB型肝炎ワクチン接種率

Coverage of hepatitis B vaccination in Swedish healthcare workers

E. Dannetun*, A. Tegnell, A. Torner, J. Giesecke
*Landstinget i Ostergotland, Sweden

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 201-204


本研究の目的は、血液曝露リスクのある医療従事者が、B型肝炎ワクチン接種に関するガイドラインをどの程度実践しているかを評価することである。スウェーデンの大学病院の6部門、すなわち救急治療室、集中治療室、術後室、手術室、麻酔部門、および血液化学検査室で、点接種率の調査を実施した。本調査の24時間で、これらの部門で勤務した全医療従事者に、質問票のすべての項目に記入するよう依頼した。合計369件の質問票を解析した。医療従事者の79%(293/369)が最低1回のワクチン接種を受けていたが、接種必要回数すべてを受けたと報告したのは40%(147/369)のみで、21%(76/369)は全く受けていなかった。ワクチン非接種の医療従事者の大多数(72/76、95%)は、申し出があればワクチン接種に応じると回答した。ガイドラインのコンプライアンス向上の主な障壁は、従事者にワクチン接種が受け入れられていないことではなく、雇用主が方針の実践を確実に行っていないことである。

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監訳者コメント:
B型肝炎のワクチン接種はすべての医療従事者が受けるべきものであり、本研究の結果とその改善に向けた提案は日本でも参考になる。

カリシウイルスで人為的に汚染させた布地とカーペットの消毒:医療施設での妥当性

Disinfection of fabrics and carpets artificially contaminated with calicivirus: relevance in institutional and healthcare centres

Y.S. Malik*, P.B. Allwood, C.W. Hedberg, S.M. Goyal
*University of Minnesota, USA

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 205-210


布地とカーペットは医療施設で被覆や敷布として広く用いられており、ノロウイルスなどの感染病原体の汚染を受けやすい。これらの日常的なクリーニングには洗濯、水洗、および掃除機による吸引が適切であるとされているが、汚染時の標準的な消毒法はない。ノロウイルスはin vitroで培養できないので、ノロウイルスに対する消毒薬の有効性を試験することは難しい。そのため、消毒薬の有効性試験ではネコカリシウイルス(FCV)がノロウイルスの代替モデルとして認められている。本研究では、様々な布地やカーペットでFCVに対する5種類の消毒薬を評価した。FCVを布地またはカーペット上で乾燥させた後、所定の接触時間として1、5、または10分間、消毒薬で処理した。次にウイルス不活化測定のため、生存ウイルスを溶出し、Crandell-Reeseネコ腎細胞でウイルス力価を測定した。加えたウイルスの99%以上を不活性化した場合に、消毒薬は有効であるとした。活性化ジアルデヒドによる消毒薬である“Metricide”は、1~10分間で99.99%を超えるウイルスを不活性化し、あらゆるタイプの布地およびカーペットに対して最も有効な消毒薬であることが明らかになった。全般的に、消毒薬の有効性は曝露時間が1分間から10分間に増えるに従って増大した。カーペットの消毒は布地の消毒よりも困難であった。100%ポリエステルは最も消毒が難しかった。“Metricide”と“Microbac-II(フェノール化合物)”のみが、100%ポリエステルでFCVの99%を不活性化することができた。まとめとして、活性化ジアルデヒドは試験したあらゆるタイプの生地で、FCVに対して一様に有効性が高いことが示された。

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イタリアの長期ケア施設での病院感染の発生率:6カ月間の前向きサーベイランス

Incidence of hospital-acquired infections in Italian long-term-care facilities: a prospective six-month surveillance

S. Brusaferro*, L. Regattin, A. Silvestro, L. Vidotto
*University of Udine, Italy

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 211-215


本研究は、イタリアの4カ所の長期ケア施設で実施した、病院感染の6カ月間の前向きサーベイランスの結果である。859例の患者を組み入れ、21,503例・日の観察を行った。254件の病院感染が188例の患者で発生した。全感染率は1,000例・日あたり11.8であった。最も頻度の高い感染は、尿路感染(1,000例・日あたり3.2)、下気道感染(1,000例・日あたり2.7)、および皮膚感染(1,000例・日あたり2.5)であった。多変量回帰モデルによる病院感染に関連する危険因子(リスクファクター)は、在院期間28日以上[オッズ比(OR)3.5、95%信頼区間(CI)2.4~5.0]、医療機器の挿管(OR 2.0、95%CI 1.3~3.0)、Nortonスケール(褥瘡発生予測スケール)12未満(OR 1.8、95%CI 1.2~2.6)、および寝たきり状態(OR 1.7、95%CI 1.08~2.6)であった。病院感染の存在により、在院期間中央値が増加したが(31日対20日、P<0.01)、致死的な転帰には有意な影響がなかった(OR 1.4、95% CI 0.7~2.7)。

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監訳者注:
Nortonスケール:高齢者における褥瘡発生リスクを評価するための指標。全身状態、精神状態、活動性、移動能力、失禁の5つの評価項目をそれぞれ1~4点の4段階でスコア化し、14点以下の場合を「褥瘡発生のリスクあり」と見なす。

ドイツの3カ所のナーシングホーム居住者における黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌の危険因子

Risk factors for Staphylococcus aureus nasal carriage in residents of three nursing homes in Germany

G. Daeschlein*, O. Assadian, I. Rangous, A. Kramer
*Ernst-Moritz-Arndt-University, Germany

Journal of Hospital Infection (2006) 63, 216-220


3カ所のナーシングホーム(500名)での黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌率は36.6%であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は検出されなかった。黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌に対する有意な危険因子(リスクファクター)が以下のように特定された。血管性認知障害[オッズ比(OR)0.31]、糖尿病(OR 1.82)、高血圧(OR 0.30)、慢性閉塞性肺疾患(OR 1.86)、脳卒中(OR 3.31)、過去3カ月以内の抗生物質による治療(OR 2.10)、および要介護レベル2(定義は、日常生活動作の補助が1日あたり4時間まで必要とする高度の依存度)(OR 1.97)。他国に比べて、ドイツのナーシングホーム居住者のMRSAの鼻腔内保菌率は低い。

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