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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

ロウベリーレクチャー2005(Lowbury Lecture 2005):グローバルな観点からの感染制御

Lowbury Lecture 2005: infection control from a global perspective

A. Hambraeus*
*Vaxholm, Sweden

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 217-223


世界中の医療現場が医療関連感染の問題に直面している。感染率は国ごとに、および同一国内でも、医療資源、介護職員および医療従事者の関心、患者の社会経済的状態によって様々である。最近の研究発表によると、医療関連感染の10~70%は予防可能である。手指衛生、手袋およびガウンの着用、およびバリアナーシングに関するガイドラインの遵守不履行が問題であり、不必要な感染制御対策には費用がかかる。感染制御関連の国の法律や地域、国、および世界の基準やガイドラインは、直接関係のない国々に対しても影響力をもつ。これらは感染リスクの評価に基づくべきであり、不必要にコストを増加させてはならない。感染制御の専門家の教育の継続には、国際感染管理協会(International Federation of Infection Control;IFIC)と国レベルの感染制御関連学会が重要な役割を担っている。

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監訳者コメント:
Lowbury Lectureは、偉大な臨床微生物学者にして詩人としても著名なEd Lowbury先生を記念して、感染管理に顕著な業績を残したと認められるプロフェッショナルが病院感染学会(Hospital Infection Society)の年次集会で講演するプログラムである。IFICの役割が強調されている点が注目される。

主要な心臓手術後の術後感染と人工呼吸器関連肺炎の予防:欧州における1日の罹患率調査(ESGNI-008)

Postoperative infections after major heart surgery and prevention of ventilator-associated pneumonia: a one-day European prevalence study (ESGNI-008)

E. Bouza*, J. Hortal, P. Munoz, J. Pascau, M.J. Perez, M. Hiesmayr on behalf of the European Study Group on Nosocomial Infections and the European Workgroup of Cardiothoracic Intensivists
*Hospital General Universitario ‘Gregorio Maranon’, Spain

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 224-230


主要な心臓手術を受けた患者の術後感染率に関するデータは、ほとんど発表されていない。術後感染予防のための標準的対策が、どの程度遵守されているかも明らかではない。本研究では、欧州13カ国の42の医療機関で心臓手術を受けた患者における感染率、特に人工呼吸器関連肺炎の罹患率を評価した。調査当日の心臓手術後の患者は321例であり、そのうち164例(51%)が人工呼吸器で管理されていた。全体の感染率は26.8%であった。調査当日にみられた感染症全体のうち57%が下気道感染であった。他の感染症は、静脈留置カテーテル関連血流感染(2.8%)、手術部位感染(2.2%)、尿路感染(0.9%)、および術後縦隔炎(0.9%)などであった。人工呼吸器を使用していた患者のうち55例(33.5%)は半臥位で介護されておらず、36例(22%)は抗菌フィルターを装備していない熱・湿気交換器を使用し、78例(47.6%)ではカフ内圧がモニターされていなかった。持続的声門下吸引を行っていた患者は13例(8%)のみで、64例(39%)では定期的体位変換(postural oscillation)を実施しておらず、23例(14%)で胃過膨満に対する積極的な予防が実施されていなかった。結論として、欧州各地の集中治療室から得られたこれらのデータは、重要な患者集団における術後感染に関する情報を提供し、心臓手術を受けた患者の人工呼吸器関連肺炎の予防を目的とした積極的介入の必要性を強調するものである。

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監訳者コメント:
包括的な心臓手術後の感染率を提示したデータであり、ベンチマークとして参考となる。

監訳者注:
人工鼻。

ドイツの集中治療室2集団における抗菌薬の使用

Antibiotic use in two cohorts of German intensive care units

K. de With*, E. Meyer, M. Steib-Bauert, F. Schwab, F.D. Daschner, W.V. Kern
*University Hospital, Freiburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 231-237


ドイツの集中治療室(ICU)2集団における抗菌薬の使用を評価した。第1の集団は、抗菌薬使用および耐性菌のデータを四半期ごとに収集し、フィードバックを行うサーベイランスプログラムに参加しているICU(34カ所)。第2のICU集団は横断的研究として、ドイツ南西部の病院(58カ所)をサンプルとした。抗菌薬投与量については2種類の用量の定義を使用した。それは、世界保健機関(WHO)のATC分類(Anatomical Therapeutic Chemical Classification)2001年版の1日規定用量(DDD)の定義、および入院患者に処方されている非経口薬剤の用量をより正確に反映する1日推奨量(RDD)の定義である。データはのべ100患者・日あたりの1日規定量あるいは1日推奨量で示した。病院の規模、病院の所属、研究実施年、およびICUの種類が、抗菌薬全使用量に影響するかどうかを判定した。いずれの用量定義を用いても、2つのICU集団間で抗菌薬全使用量に差がみられた。抗菌薬の使用量が多いことは、主として病院の所属(大学病院対非大学病院)および病院の規模に関連していた。非大学病院のICUにおける抗菌薬全使用量の平均値は、病院の規模別カテゴリーによりのべ100患者・日あたりDDD 106~111(のべ100患者・日あたりRDD 59~67)の範囲であったのに対し、大学病院のICUではDDD 140(RDD 87)であった。結論としては、ICUのコホート間で抗菌薬の使用量を比較し経時的傾向を評価するためには、大学病院であるか否か、および病院の規模でデータを補正する必要がある。

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監訳者コメント:
抗菌薬使用量を評価する興味深い試みである。大学病院で抗菌薬使用量が多い傾向が認められた点も注目される。

ドイツの集中治療室におけるStenotrophomonas maltophiliaと抗菌薬使用:SARI(Surveillance of Antimicrobial Use and Antimicrobial Resistance in German Intensive Care Units)プロジェクトからのデータ

Stenotrophomonas maltophilia and antibiotic use in German intensive care units: data from Project SARI (Surveillance of Antimicrobial Use and Antimicrobial Resistance in German Intensive Care Units)

E. Meyer*, F. Schwab, P. Gastmeier, H. Rueden, F.D. Daschner, D. Jonas
*Freiburg University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 238-243


Stenotrophomonas maltophilia選択の危険因子(リスクファクター)について、抗菌薬使用および構造パラメータ(病院の種類など)と、S. maltophiliaの検出頻度および39カ所の集中治療室(ICU)から分離したS. maltophiliaの割合との相関により解析した。SARI(Surveillance of Antimicrobial Use and Antimicrobial Resistance in German Intensive Care Units)は診療科や研究室を拠点とする前向きサーベイランスシステムであり、病院感染の最も重要な13種の原因菌に関するデータを収集している。これらの細菌のうちのS. maltophiliaの割合、およびのべ1,000患者・日あたりのS. maltophilia検出数を算出した。次にこれらのデータと、のべ1,000患者・日あたりの1日規定用量(DDD)で算出した抗菌薬使用量および構造パラメータとの相関を調べた。データは合計28,266分離株、431,351 DDDに及んだ。抗菌薬使用量の範囲は427~2,218で、中央値は1,346であった。2年間の期間中、のべ1,000患者・日あたりのS. maltophilia検出数の中央値は1.4(範囲0~7.6)であった。抗菌薬使用量とのべ1,000患者・日あたりのS. maltophilia検出数を算出することにより、カルバペネム系薬、セフタジジム、グリコペプチド系薬、フルオロキノロン系薬の使用量および抗菌薬全使用量との有意な正の相関が示された。多重ロジスティック回帰分析では、カルバペネム使用および12床を超えるICUと、のべ1,000患者・日あたりのS. maltophilia検出数が多いこととの間に独立した正の相関があった。ICUにおけるS. maltophilia検出率のベンチマークデータから、S. maltophiliaの分離頻度はICUによってばらつきがあることが明らかになった。多施設のデータから、カルバペネム使用量と12床を超えるICUが、S. maltophilia分離の独立した危険因子であることが示された。

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監訳者コメント:
Stenotrophomonas maltophiliaはかつてPseudomonas maltophiliaあるいはXanthomonas maltophiliaと呼ばれたグルコース非発酵性グラム陰性桿菌であり、医療関連感染症の重要な起因菌であるとともに、難治性となることもあって注意が必要である。ベッド数の多いICUにおいて、カルバペネム投与によるいわゆる菌交代現象として検出されている状況が確認された。

市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:新生児室における病院感染

Community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus: nosocomial transmission in a neonatal unit

M.D. David*, A.M. Kearns, S. Gossain, M. Ganner, A. Holmes
*Birmingham Heartlands Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 244-250


市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)は新興病原菌であり、医療関連MRSA(HA-MRSA)獲得の古典的な危険因子(リスクファクター)がない患者で感染を生じているという報告が世界的に増加している。本報告では、英国の医療施設で初めて記録されたCA-MRSA伝播で、新生児室の新生児4例と職員1例が関与した例について記載する。分離菌の詳細な微生物学的特性の調査により、それらは単一クローンであり、multi-locus sequence type(MLST)1型、ブドウ球菌カセット染色体mec(SCCmec)タイプIVa、プロテインA(spa)t127型、agrグループ3、およびエンテロトキシンAとエンテロトキシンH遺伝子をコードしていた。Panton-Valentineロイコシジン(PVL)遺伝子は検出されなかった。CA-MRSA株は、英国で最も優勢なHA-MRSAである流行性MRSA-15の数個のサブタイプと同時に伝播していると考えられた。感染制御策を組み合わせることで集団発生は抑制された。本報告は英国のMRSAの疫学が変化していることを明らかにするとともに、CA-MRSAは市中のみならず医療施設でも発生し得るという事実に医療従事者が注目する必要を強調している。

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監訳者コメント:
市中型MRSAの拡大が注目されているが、特に米国ではSCCmec IV、PVL陽性かつパルスフィールド電気泳動でUS300型に分類される流行株が問題となっている。今後の世界的動向が注目されるところである。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌菌血症の高齢患者の死亡率増加

Increased mortality among elderly patients with meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia

E. Tacconelli*, A.E. Pop-Vicas, E.M.C. D'Agata
*Harvard Medical School, USA

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 251-256


高齢者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の保有率は高率であるにもかかわらず、この患者集団の院内MRSA血流感染の転帰は十分に調査されていない。本稿では症例対照研究を実施して、65歳以上の患者(症例群)と65歳未満の患者(対照群)の病院内MRSA血流感染の転帰を比較した。430床の第三次教育病院で、18歳以上の黄色ブドウ球菌血流感染入院患者100例を研究対象とした。測定項目は、共存疾患、来院時の疾患の重症度、抗菌薬治療、血行性合併症、および死亡率とした。全死亡率は症例群のほうが対照群よりも有意に高かった[36%対12%;オッズ比(OR)4.1、95%信頼区間(CI)1.4~14、P<0.01]。肺感染症は高齢患者群のほう若年対照群より高頻度に認められた(34%対16%;OR 2.7、95%CI 1.1~8.1、P=0.04)。ロジスティック回帰分析により、以下の変数が高齢患者のMRSA血流感染と独立した関連因子として認められた。内科病棟への入院(OR 3.1、95%CI 1.3~7.6、P=0.02)、中心静脈カテーテル以外に由来する血流感染(OR 3、95%CI 1.2~7.6、P=0.02)、および死亡(OR 3.7、95%CI 1.3~11、P=0.02)であった。バンコマイシン投与を受けた患者では、症例群のほうが対照群と比べて腎機能低下のためにバンコマイシンを減量して治療された患者が多かった(64%対31%;OR 4、95%CI 2~9、P=0.01)。これらのデータは、MRSA血流感染は、高齢患者の非常に高い死亡率と関連していることを示唆している。これらの患者集団のMRSA獲得を予防することが極めて重要である。

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監訳者コメント:
高齢者におけるMRSA血流感染症は、若年者と比較すると、カテーテル関連が少なく、医療関連肺炎との関連が強い傾向が認められた。いずれにせよ、MRSA感染対策が重要であることに変わりはない。

大学病院でのEMRSA-16の出現によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の疫学の変化

Changes in the epidemiology of meticillin-resistant Staphylococcus aureus associated with the emergence of EMRSA-16 at a university hospital

I. Montesinos*, T. Delgado, D. Riverol, E. Salido, M.A. Miguel, A. Jimenez, A. Sierra
*Hospital Universitario de Canarias, Spain

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 257-263


本研究では、University Hospital of the Canary Islandsにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の分子疫学を調べ、6年間にわたる疫学の変化を評価した。2000年5月から2003年12月に臨床データおよび疫学的データを収集し、分離株にパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)、MLST(multi-locus sequence typing)、SCCmecタイピング、およびspaタイピングを実施した。2000年以降、当病院のMRSA感染率が増加しているが、これと同時にEMRSA-16クローン(ST36-MRSA-II)の出現と伝播、およびイベリアのクローン(ST247-MRSA-I)からの置換が生じている。遺伝子型の変化は、疫学的プロファイルの変化と関連していた。患者の平均年齢および60歳を超える患者の割合(P=0.01)、および呼吸器感染率は有意に増加した(P=0.001)。EMRSA-16出現後にMRSA分離株のゲンタマイシンおよびテトラサイクリン感受性は増加した(P<0.001)。PFGE、SCCmec、およびMLSTを同時に調べることは、これらの変化を理解すること、および当病院の患者集団で伝播しているクローンを明らかにすることに有用であった。

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監訳者コメント:
EMRSAは英国におけるMRSA流行株のことであり、発見された順番に序数が付けられている。分子疫学的解析のマーカーには色々な方法があり、いずれも異なる遺伝子変異の特徴を捉えているためこれらを組み合わせて多様性を評価する試みが進んでいる。相互の多型性マーカーの変動をどのように評価すべきかにつては今後の知見が必要である。

異なる市販の機械的な噴霧による創傷洗浄剤の環境への影響についての研究

Study of the environmental effect of a commercial wound cleanser used with different mechanical forces

K. De Smet*, D. Van den Plas, C. Van Hoomissen, H. Jansens, P. Sollie
*Flen Pharma, Belgium

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 264-270


この10年間、創傷治療は大きく改善している。しかし、目的とした使用以外での、これらの影響についてのデータはほとんどない。本研究は、身近な環境の細菌汚染に対する創傷洗浄剤(wound cleanser)使用の影響を明らかにすることを目的とした。研究室または臨床環境において、創傷由来の細菌が創傷洗浄によって空中細菌になったという証拠はほとんど見いだされなかった。創傷周辺の細菌の拡散は、創傷洗浄ではなく病院職員の通常の活動によるものと考えられる。簡単な注意が払うことで、創傷清浄中の病院および診察室における職員および患者のリスクを最小化することができる。

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ケニアの医療従事者のB型肝炎に対する感受性:ワクチン接種促進のための新しい戦略

Susceptibility of healthcare workers in Kenya to hepatitis B: new strategies for facilitating vaccination uptake

R.M. Suckling*, M. Taegtmeyer, P.M. Nguku, S.S. Al-Abri, J. Kibaru, J.M. Chakaya, P.M. Tukei, C.F. Gilks
*Liverpool School of Tropical Medicine, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 271-277


B型肝炎ウイルス(HBV)感染は予防可能であるが、現在も医療資源の乏しい国の多くの医療従事者がリスクにさらされている。本研究の目的は、ケニアの一地域における医療従事者のHBV感染に対する感受性、および乳児を対象とした拡大予防接種計画(Extended Programme of Immunization;EPI)を医療従事者のB型肝炎ワクチン接種にまで拡大することの実現可能性について評価することであった。ケニアのティカ(Thika)地域の医療従業者を招聘し、予防接種状況および血液または体液への曝露について面接者記入式質問票に記入した。また、HBVに対する自然免疫またワクチンによる免疫を評価するために、参加者に血液検体の提供を依頼した。免疫のない全医療従業者にB型肝炎ワクチン接種を行った。前年に医療従事者の30%(168名/554名)が1件以上の針刺損傷の報告をしており、その年間発生率は医療従事者1名あたり0.97件であった。ワクチン接種歴のある医療従事者はわずか12.8%(71名/554名)であり、免疫またはHBs抗原のスクリーニングを受けた医療従事者はなかった。合計407名が血液検体を提供し、41%がHBc抗体陽性、4%が過去のワクチン接種によりHBs抗体陽性で、55%は免疫がなかった。222名が、EPIのインフラを通して供給されるワクチンの接種対象となった。自発的ワクチン接種を全コース実施した割合は、小規模の保健所92%、地域病院44%であった。本研究は、曝露率が高いと同時にワクチン接種率が低いアフリカの地域における医療従事者のB型肝炎ワクチン接種の重要性を実証している。医療従事者へワクチンを供給するために、小児の予防接種システムを使用することによって、高いワクチン接種率が達成できる可能性がある。

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監訳者コメント:
同じ医療従事者でも、経済状況により予防可能な血液媒介感染症を阻止できないでいる現況が地球上には存在する。わが国でも病院サービス部門は委託業務の場合、B型肝炎ウイルスワクチンに関する情報すら知り得ていない方もおり、改善が求められよう。

空気中のウイルス粒子からのスタッフの防護:レーザー手術用マスクのin vivoの効率★★

Protecting staff against airborne viral particles: in vivo efficiency of laser masks

J.L. Derrick*, P.T.Y. Li, S.P.Y. Tang, C.D. Gomersall
*Prince of Wales Hospital, Hong Kong

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 278-281


レーザー手術用マスク(laser mask)がレーザー手術中のウイルス粒子吸入の予防に用いられている。手術用マスクとレーザー手術用マスクの空気中塵埃粒子の濾過機能をFFP2規格に準拠した呼吸器防護具と比較するため、8名のボランティアでクロスオーバー試験を行った。手術用マスクとレーザー手術用マスクは、通常の方法で装着した場合とテープで顔に接着した場合を調査した。粒子の平均減少数は、テープ非接着時の手術用マスク3.0倍[95%信頼区間(CI)1.8~4.2]、テープ非接着時のレーザー手術用マスク3.8倍(95%CI 2.9~4.6)、テープ接着時の手術用マスク7.5倍(95%CI 6.5~8.5)、テープ接着時のレーザー手術用マスク15.6倍(95%CI 13.5~17.8)、FFP2半面体呼吸器防護具102.6倍(95%CI 41.2~164.1)であった。レーザー手術用マスクの防護率はFFP2呼吸器防護具より有意に低く(P=0.02)、手術用マスクよりごくわずかに高いだけであった。レーザー手術用マスクを呼吸器防護のために継続的に使用することには問題がある。マスクをテープで顔に接着することでは、防護率はわずかしか改善しなかった。

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監訳者コメント:
CDCの環境のガイドラインではサージカルスモークの危険性を指摘している。サージカルスモーク中にはパピローマウイルスなどが混入することが指摘されており、組織焼灼による燻煙を呼吸器曝露することは発癌性の観点も含めて避けるべきである。本論文は呼吸器防護具の防護性能をサージカルスモークに関して裏付けるものである。

監訳者注:
FFP2規格:FFP2は欧州の規格(EN143/EN149)で、米国のN95規格に相当する。

Klebsiella pneumoniaeによる菌血症と比較したAcinetobacter baumanniiによる菌血症の重要性:危険因子と転帰

The significance of Acinetobacter baumannii bacteraemia compared with Klebsiella pneumoniae bacteraemia: risk factors and outcomes

E. Robenshtok*, M. Paul, L. Leibovici, A. Fraser, S. Pitlik, I. Ostfeld, Z. Samra, S. Perez, B. Lev, M. Weinberger
*Rabin Medical Centre, Israel

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 282-287


2000年から2003年にイスラエルの単一の医療施設で、Acinetobacter baumanniiによる院内感染菌血症患者と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による院内感染菌血症患者について危険因子(リスクファクター)と転帰とを比較した。患者の診療録のレビューにより、データを後向きに収集した。A. baumanniiによる菌血症患者112例およびK. pneumoniaeによる菌血症患者90例を特定した。A. baumanniiによる菌血症は、不良な一般状態(performance status)、人工呼吸器の使用、デバイス(医療器具)の装着、カルバペネム系薬による治療歴、感染源としての肺炎、および不適切な経験的抗生物質治療と有意に関連していた。30日全原因死亡率は、A. baumanniiによる菌血症のほうがK. pneumoniaeによる菌血症よりも高かった(61.6%対38.9%、P=0.001)。単変量解析で死亡率と有意な関連があった因子(P<0.1)を、死亡率の多変量ロジスティック回帰モデルに組み入れた。A. baumanniiによる菌血症は、他のすべての危険因子で補正しても高い死亡率と有意に関連していた(オッズ比3.61、95%信頼区間1.55~8.39)。この結果は、重症度の低い症例、例えば人工呼吸器を使用していない患者や敗血症ショックのない患者のサブグループで再度分析を行っても変化しなかった。今回の結果は、A. baumanniiによる院内感染菌血症は高い死亡率と関連しているという見解を支持するものである。

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監訳者コメント:
欧米ではAcinetobacter baumanniiによる医療関連感染症が多く問題となっている。わが国における実態把握の報告は少なく、抗菌薬の消費動向に違いや医療の質の違いから、異なる可能性はあるが、今後わが国におけるA. baumannii感染症の実態を検討する必要がある。

医原性のプリオン伝播の予防のための外科用鋼製器具の蛋白質汚染の評価における承認されたニンヒドリン試験およびビウレット試験の感度

The sensitivity of approved Ninhydrin and Biuret tests in the assessment of protein contamination on surgical steel as an aid to prevent iatrogenic prion transmission

I.P. Lipscomb*, H.E. Pinchin, R. Collin, K. Harris, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2006) 64, 288-292


病院の滅菌サービス部門(sterile service department;SSD)の蛋白性物質、特にプリオンの除去における洗浄消毒器サイクルの有効性を確認するために、ガイドラインではニンヒドリン試験またはビウレット試験などの生化学試験をルーチンに行うことが推奨されている。これらの方法の有効性は、機器の効果的なサンプリングおよび用いる試験の感度の両方に依存する。2種類の市販の汚染評価試験の感度を、外科手術用鋼製器具表面のME7脳ホモジネートを対象として評価した。対照として、医療機器上の低レベルの汚染を迅速に視覚化・評価できることがすでに示されている落射型微分干渉/エピ蛍光(episcopic differential interference contrast/Epi-fluorecence;EDIC/EF)顕微鏡を、高感度の蛍光試薬SYPRO Rubyと組み合わせて視覚化する方法を行った。ニンヒドリン試験では、ボランティア75%の最小検出レベル(MLD75)は9.25 μg[95%信頼区間(CI)8.6~10.0 μg]であった。ビウレット試験のほうが高感度で、MLD75は6.7 μg(95%CI 5.4~8.2 μg)であった。しかし、EDIC/EF顕微鏡法では、はるかに低濃度の蛋白質汚染(pg単位)を視覚化することができた。今回の知見から、これらの2種類の承認された洗浄度に対する比色試験の感度は比較的低いことが明らかである。本研究は、多量(最大6.5 μg)の脳由来の蛋白質汚染が未検出であった可能性があり、これらの試験方法では機器は清浄と見なされていたことを示している。神経外科用機器などの「高リスク」機器でのプリオン病の医原性伝播リスクを低下させるために、より高感度の清浄度評価法を適用するべきである。

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監訳者コメント:
プリオンの完全な不活化は極めて困難であり、高額で繰り返し使用せざるを得ない器具の除染方法が課題である。適切な洗浄処理により物理的のプリオンコピー数を減少させることも重要なポイントである。このため、洗浄後の評価に適切な指標を置くことが求められる。さらなる検討が必要であろう。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.