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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

心臓手術後の創感染発生状況のモニタリング

Monitoring the occurrence of wound infections after cardiac surgery

C. Sherlaw-Johnson*, A.P.R. Wilson, B. Keogh, S. Gallivan
*University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 307-313


本研究の目的は、心臓手術後の手術創感染の発生状況をリアルタイムでモニタリングするために、画像技術を利用することである。この研究では、モニタリング中のケースミックスの変動の影響を滞りなく算入できるリスク・スコアシステムを開発し、導入した。我々は、ロンドンの教育病院からルーチンに収集したデータを解析した。このデータは、2000年4月から2004年3月の間に心臓手術を受け、地域のサーベイランスプログラムの一環として手術創の追跡を行った2,146例の記録である。ロジスティック回帰分析を用い、アウトカム指標を退院前の手術創感染の診断としたリスクモデルを開発した。このモデルに含まれる因子は、手術創の数、患者の年齢、冠動脈バイパス手術と心臓弁置換術を組み合わせた手術、腎疾患、および入院から手術までの日数であった。このモデルは個々のデータセットに記録された転帰を十分に予測し(χ2=3.81、P=0.58)、著者らはこのモデルを、転帰をモニタリングするための画像ツールに導入した。このリスクモデルおよび関連する画像モニタリング法は、感染管理を支援するための有益なツールと考えられた。これをリアルタイムで用いることで、ケア中の問題点を速やかに特定することができ、適切なタイミングで是正措置をとることが可能となる。

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監訳者注:
ケースミックス(case-mix):同じ病名でも症例によって行われる手術や検査や重症度によって差があるが、それらをひとくくりの群とすること。

新生児集中治療室の環境が新生児の病院感染発生率に及ぼす影響

Effect of neonatal intensive care unit environment on the incidence of hospital-acquired infection in neonates

D. Von Dolinger de Brito*, H. de Almeida Silva, E. Jose Oliveira, A. Arantes, V.O.S. Abdallah, M. Tannus Jorge, P.P. Gontijo Filho
*Universidade Federal de Uberlandia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 314-318


病院の非生物的環境および病院の設計が院内感染に及ぼす影響が、懸案事項となっている。本研究では、新生児集中治療室(NICU)の環境が病院感染のリスクに及ぼす影響を評価した。病院感染サーベイランスを4年間実施し、この間にNICUはまず老朽化した施設から仮設の施設へ、その後はよりよい設計の新施設に移転した。ベッドに対する洗面台の設置比率が低く、月間の入院率が高い仮設病棟への移転後は、病院感染率は12.8%から18.6%へ有意に上昇した(P<0.01)。対照的に、新NICUに移転後は、カテーテル関連ブドウ球菌菌血症発生率が有意に減少した(P<0.0001)。しかし、新病棟への移転と同時に末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)が導入されたため、このCVC関連ブドウ球菌菌血症の減少は、カテーテルの種類が関与している可能性がある。手指洗浄設備が少ない、入院数の多い仮設NICUへの移転により、病院感染率が上昇した。

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監訳者コメント:
中心静脈カテーテルの感染症発生率については、医療従事者の手指衛生の程度と密接な関連があることを示した論文である。結局のところ、患者周囲の環境から受ける感染症のリスクよりも、直接コンタクトによって病原菌を媒介するリスクのほうが、インパクトがかなり大きいということでもある。

全国的サーベイランスシステムへの参加による新生児の院内血流感染の減少

Reducing neonatal nosocomial bloodstream infections through participation in a national surveillance system

F. Schwab*, C. Geffers, S. Barwolff, H. Ruden, P. Gastmeier
Charite-University Medicine in Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 319-325


ドイツにおいて、新生児集中治療室(NICU)の極低出生体重患児を対象とした全国的院内感染サーベイランスシステム(NEO-KISS)が2000年に創設された。このプログラムには院内血流感染(BSI)と肺炎に焦点を当て、48カ所のNICUが参加した。このプログラムに3年以上参加したNICUのデータのみを採用し、年度毎の比較を行った。相対危険度とそれぞれの95%信頼区間(CI)を算出し、有意な危険因子を特定するためにロジスティック重回帰分析を行った。選択基準に合致した24カ所のNICUから、プログラム参加後3年間に、都合3,856例、152,437患者・日のデータを収集した。BSI発生率は、1年目の1,000患者・日当たり8.3例から3年目の6.4例へ有意に24%減少した。ロジスティック重回帰分析では、参加3年目のBSIは1年目より有意に減少した(オッズ比0.73、95%CI 0.60~0.89)。参加した初年度は、BSIの独立した危険因子であったが、肺炎では危険因子ではなかった。著者らのデータは、各集中治療室にデータのフィードバックを求める継続的なNICU院内感染サーベイランスへの参加により、BSI発生率が減少することを示唆している。

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監訳者コメント:
データの集中と同時に、フィードバックを継続的に行うことで、血流感染症の発生率が減少することを示した論文である。肺炎のデータの改善が見られにくいのは、現状推奨されている予防策がまだ十分ではないことを示唆しているのではないだろうか? わが国でも厚生労働省が行っている院内感染サーベイランス(JANIS)のNICU部門が設置されサーベイランス事業が展開されており注目される(http://www.nih-janis.jp/report/index.html)。

コンタミネーション除去の実験的プロトコールの相違は医療器具の洗浄に影響する:電子顕微鏡による予備的分析★★

Different experimental protocols for decontamination affect the cleaning of medical devices. A preliminary electron microscopy analysis

F. Tessarolo*, I. Caola, M. Fedel, A. Stacchiotti, P. Caciagli, G.M. Guarrera, A. Motta, G. Nollo
*University of Trento, Italy

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 326-333


本研究の目的は、心血管インターベンションに使用し、血液で汚染されたカテーテルに対する様々な除染・洗浄プロトコールの効果を調べることである。電気生理学的検査用およびアブレーション用の使い捨て器具を、細菌を添加したヒト血液で汚染させ、塩素発生剤、ポリフェノール乳剤、および酵素洗浄剤を用いた4種類の異なる滅菌前プロトコールを実施した。処理サンプルの検査を光学顕微鏡、走査電子顕微鏡、および透過型電子顕微鏡で行い、生物学的および無機残留物を特定し、その特徴を明らかにした。最初の処理に塩素を使用すると、血清蛋白質の変性により器具表面への血液成分の付着を招き、次の酵素洗浄剤による処理の洗浄効果が阻害された。逆に酵素から塩素処理するプロトコールは効果がより高いが、医療職員へのリスクも大きいと考えられた。ポリフェノール製剤による処理は生物学的負荷の除去に最も高いレベルの効果を示したが、このタイプの化学薬品と生体高分子との相互作用や吸収は、再使用時に毒性についての重大な懸念をもたらす可能性がある。適切な滅菌前洗浄は滅菌成功の基本であり、また分解能が高い電子顕微鏡により、血液汚染された器具を洗浄するための化学薬品の効果について重要で詳細な情報を得ることが可能である。

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監訳者コメント:
もはや常識的なことであるが、有機物の除去の前に塩素やアルコールなどの消毒剤に浸漬することは、蛋白質の固着をもたらし、その後の洗浄プロセスを困難にする。血液媒介ウイルスによる汚染があるので、はじめに消毒してから洗浄するというような誤った不見識は、早急に改めるべきである。

長期療養施設の入居者における医療関連感染:コホート研究およびコホート内症例対照研究

Healthcare-associated infection among residents of long-term care facilities: a cohort and nested case窶田ontrol study

H.M. Eriksen*, A.M. Koch, P. Elstrom, R.M. Nilsen, S. Harthug, P. Aavitsland
*Norwegian Institute of Public Health, Norway

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 334-340


ナーシングホームにおける感染制御策に関する情報は限られている。本研究の目的は、ノルウェーの長期療養施設における医療関連感染の発生率および潜在的な危険因子を検討することである。ノルウェーの2つの大都市の6カ所の長期療養施設で、2004年10月1日から2005年3月31日の期間に、医療関連感染の発生率を前向きに記録した。潜在的な危険因子を特定するために、コホート内症例対照研究として、感染を合併した各入居者に2例の対照を割り当てることを目標とした。感染発生率は入居者1,000名・日あたり5.2件であった。尿路および下気道感染症が最も多かった。寝たきり[オッズ比(OR)2.7]、入居期間28日未満(OR 1.5)、慢性心疾患(OR 1.3)、尿失禁(OR 1.5)、尿道留置カテーテル(OR 2.0)、または皮膚潰瘍(OR 1.8)の患者では、感染リスクがより高かった。年齢、性別、および2人部屋か1人部屋かは、有意な因子ではなかった。ノルウェーのナーシングホームにおける感染発生率は、他の国々の報告の範囲内である。本研究では、医療関連感染のいくつかの重要な危険因子が特定された。長期療養施設においては、サーベイランスを含む感染制御プログラムを実施することにより、感染を予防する必要がある。

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監訳者コメント:
本邦でも増えつつある介護付き有料老人ホームにおける感染症発生率は、今後の病院外医療の推進に従い、更に問題が拡大してくるものと予想される。

監訳者注:
コホート内症例対照研究(nested case-control study):特定のコホート内で、疾患が認められた患者を症例とし、それ以外を対照として同一コホートから選出して、その疾患の危険因子や原因などを検討する研究。

香港の大学医療センターにおける病院感染症有病率および抗菌薬の使用★★

Prevalence of hospital infection and antibiotic use at a University Medical Center in Hong Kong

M.K. Lee*, C.S. Chiu, V.C. Chow, R.K. Lam, R.W. Lai
*Prince of Wales Hospital, Hong Kong

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 341-347

1985年から1988年に香港の1,400床の大学医療センターで、病院感染の有病率調査を実施した。4種類の主要な病院感染(肺炎、症候性尿路感染、手術部位感染、および検査で確認された血流感染)の有病率を調べ、現在の分布および15年後の変化を明らかにすること目的とした。2005年9月7日に、1日の点有病率調査を実施した。入院患者全員の病院感染、市中感染、危険因子、分離病原体、および処方された抗菌薬を調べた。米国疾病対策センター(CDC)の判定基準に従って、感染の診断を行った。合計1,021例の患者を調査し、そのうちの41例に42件の病院感染が認められ(有病率4%)、389例(38%)が抗菌薬の投与を受けていた。最も多く認められた病院感染は肺炎(1.4%)で、次いで血流感染(0.9%)および症候性尿路感染(0.8%)であった。術後手術部位感染有病率は5.6%であった。院内有病率は集中治療室で最も高く、次いで小児・新生児集中治療室、小児癌センター・骨髄移植部門、および整形災害外科であった。最も多く認められた病原菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および緑膿菌であった。有病率は以前よりも有意に低く、重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイク後、利用可能な感染制御方法が増加したことを反映している。

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監訳者コメント:
病院感染の点有病率調査の論文報告は多数あるが、15年前の値と比較した報告は少ない。4種類の主要な病院感染がいずれも減少していることは大変喜ばしいことであり、またそれをデータで明らかにした論文は貴重である。

院内アウトブレイク中の診療部門の閉鎖:文献のシステマティック解析からのデータ

Closure of medical departments during nosocomial outbreaks: data from a systematic analysis of the literature

S. Hansen*, S. Stamm-Balderjahn, I. Zuschneid, M. Behnke, H. Ruden, R.-P. Vonberg, P. Gastmeier
*Charite-University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 348-353


感染が発生した診療部門の全面閉鎖は、院内アウトブレイクの調査中の感染制御対策としては最も費用のかかるものの1つである。しかし現在まで、閉鎖が必要と考えられるアウトブレイクに固有の特徴については、システマティック解析が行われていない。本稿では、過去40年間に医学文献に発表された、これらの院内流行の特徴に関するデータを示す。アウトブレイクデータベース(院内アウトブレイク1,561件がファイルされている)の検索により、最終的に何らかの病棟の閉鎖に至ったアウトブレイクが合計194件判明した(閉鎖期間中央値14日)。閉鎖率を算出し、診療部門、原因微生物、アウトブレイクの発生源、および推定伝播様式によって層別化した。次に、データを全データベースの全体的な平均閉鎖率である12.4%と比較した。老年科病棟は、閉鎖率が有意に高かったが(30.3%、P<0.001)、小児病棟は有意に低い閉鎖率を示した(6.1%、P=0.03)。最も閉鎖率が高い病原体は、ノロウイルス(44.1%、P<0.001)およびインフルエンザ/パラインフルエンザウイルス(38.5%、P<0.001)であった。患者がアウトブレイクの発生源である場合は、閉鎖率は有意に増加した(16.7%、P=0.03)。中枢神経系の感染は、病棟の閉鎖と最も高頻度に関連していた(24.2%、P=0.001)。院内アウトブレイクの体系的な評価は、アウトブレイクがない期間の職員教育の有益な手段となりうるが、病棟での急性アウトブレイク時の、大きな費用を要することが想定される意思決定において、より有用であると思われる。

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非アウトブレイク時の基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌の院内伝播減少のための感染制御対策の影響と費用

Impact and cost of infection control measures to reduce nosocomial transmission of extended-spectrum β-lactamase-producing organisms in a non-outbreak setting

L.O. Conterno*, J. Shymanski, K. Ramotar, B. Toye, R. Zvonar, V. Roth
*University of Ottawa, Canada

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 354-360


著者らは、非アウトブレイク時の基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌(ESBL)の院内伝播減少のための感染制御介入の影響を評価した。本研究は、カナダの1,200床の第三次病院で実施した。ESBL発生率は、回収された臨床分離株に基づいて1999年から2005年に前向きに評価した。この期間中に、発生率は入院1,000件あたり0.28件から0.67件へ有意に増加したが(P<0.001)、これは地域のESBL発生率の人口100,000名あたり1.32件から9.28件への増加(P<0.001)を反映していた。このような増加にもかかわらず、院内ESBL率の増加はわずかであり、このことは感染制御対策が院内伝播に影響を及ぼしたことを示唆している。感染制御対策は、全ESBL患者の隔離および伝播の高リスク患者に対する接触予防策の実施であった。これらの対策の費用は、138,046.00カナダドル/年および3,191.83カナダドル/入院患者であった。ESBL発生率を大幅に減少させるためには、積極的監視培養、すべての保菌または感染患者に対する接触予防策、抗菌薬管理などの制御対策を組み合わせることが必要である。

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監訳者コメント:
長い時間経過における耐性菌感染発生率をみた興味深いスタディである。様々な変数を多角的に解析し、感染制御対策が有効であることを示している。

人工呼吸器関連肺炎の不適切な治療:危険因子および転帰に及ぼす影響

Inadequate treatment of ventilator-associated pneumonia: risk factors and impact on outcomes

P.J.Z. Teixeira*, R. Seligman, F.T. Hertz, D.B. Cruz, J.M.G. Fachel
*Complexo Hospitalar Santa Casa, Brazil

Journal of Hospital Infection (2007) 65, 361-367


初回抗菌薬治療は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の臨床転帰の重要な決定因子である。いくつかの研究でこの問題は調査されているが、相反する結果が得られている。本研究では、VAPの臨床診断を受けた患者に対する不適切な経験的抗菌薬治療の危険因子、およびその転帰に及ぼす影響を調査した。主要評価項目は、抗菌薬治療の適切性とした。副次的評価項目は、人工呼吸器の使用期間、病院および集中治療室(ICU)への入院期間、およびVAPによる死亡率とした。平均年齢62.9±15.2歳、平均APACHE(Acute Physiological Assessment and Chronic Health Evaluation)IIスコア20.1±8.1、平均MODS(Multiple Organ Dysfunction Score)3.7±2.5であった。VAPの臨床診断を受けた151例中69例(45.7%)は、VAPに対する不適切な初回抗菌薬治療を受けていた。多剤耐性病原菌によるVAPは100件(66.2%)認められ、このうち56%の治療が不適切であった。一方、薬剤感受性病原菌によるVAPに対する抗菌薬治療が不適切な割合は25.5%であった(P<0.001)。多重ロジスティック回帰分析により、抗菌薬治療が不適切であるリスクは遅発性VAP患者で2倍以上高く[オッズ比(OR)2.93、95%信頼区間(CI)1.30~6.64、P=0.01]、多剤耐性病原菌によるVAP患者(OR 3.07、95%CI 1.29~7.30、P=0.01)または複数菌によるVAP患者(OR 3.67、95%CI 1.21~11.12、P=0.02)では3倍以上高いことが示された。不適切な抗菌薬治療は、VAP患者の高死亡率と関連していた。不適切な治療における3つの独立した危険因子のうちの2つは、菌の分離および同定に関連していた。

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監訳者コメント:
感染制御というよりは、感染症の初期治療が予後にどのような影響を与えるか、という論文。適切な抗菌薬治療により、予後が改善したことを明確に示している点が評価できる。ただ、臨床検体分離菌が得られていない段階で適切な抗菌薬を使用するのはなかなか難しい。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.