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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

ドイツにおけるPanton-Valentine型ロイコシジン陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の大規模な医療関連アウトブレイクの管理

Management of a large healthcare-associated outbreak of Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus in Germany

F.M.E. Wagenlehner*, K.G. Naber, E. Bambl, U. Raab, C. Wagenlehner, D. Kahlau, C. Holler, W. Witte, W. Weidner, N. Lehn, S. Harbarth, H.-J. Linde
*Hospital St Elisabeth, Germany

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 114-120


本稿では、欧州でのPanton-Valentine型ロイコシジン陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(PVL MRSA)の最大規模の医療関連アウトブレイクの記録を報告する。2004年、3カ所の長期ケア施設の初発患者6例が、ドイツの市中病院への入院時のスクリーニングでPVL MRSA陽性であった。この前向き研究の目的は、長期ケア施設の感染制御介入前後のPVL MRSA保菌率を報告することである。PVL MRSAおよびPVL MRSAのスクリーニングを3カ所すべての長期ケア施設で、2004年(入居者453名、医療従事者240名)および2005年(入居者440名、医療従事者192名)に実施した。外鼻孔および可能であれば創傷部位のスワブを採取した。保菌が認められた入居者および職員は、ムピロシン鼻腔用軟膏および局所消毒薬で治療し、職員には衛生教育を実施した。2004年の入居者および医療従事者の全MRSA保菌率は11.3%(PVL MRSA 9.1%、PVL MRSA 2.2%)であった。各長期ケア施設の保菌率は、入居者と医療従事者で同等であった。すべてのPVL MRSA分離株は、新規spa配列型t310を示す単一株(MLST 22)由来であった。2005年には、全MRSA保菌率(11.3%から5.5%)およびPVL MRSA(9.1%から3.3%)の低下が認められた。PVL MRSAの割合には変化がなかった。皮膚感染症の症状は入居者または医療従事者に認められなかった。今回のアウトブレイクにおいて、不十分なPVL MRSA制御の原因は、保菌者の検出と除菌の困難および遅延、制御策の遵守不徹底、および公衆衛生当局による施策の欠如によるものと推測された。

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監訳者コメント:
オランダや北欧諸国ほどではないものの、ドイツでもMRSAの保菌に対しては相当神経質である。本論文はその神経質さを伺えるものであると同時に、PVL陽性のMRSA(いわゆる市中感染型MRSA)の保菌者の広がりを示すデータとして興味深い。

小児および成人入院患者の便培養に対する改良型3日間ルール(three-day rule)の安全性および費用削減★★

Safety and cost savings of an improved three-day rule for stool culture in hospitalised children and adults

L. Seyler*, A. Lalvani, L. Collins, L. Goddard, I.C.J.W. Bowler
*John Radcliffe Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 121-126


入院3日後に患者から培養用に提出される便検体は、Clostridium difficileを除いては病原性腸内細菌の検出率が低く(<1%)、検体処理費用が高価となる。検体除外のための「3日間ルール」は、すでに成人で妥当性が確認されている。著者らは、1995年から2002年のすべての便培養の結果を後向きに調査することにより、小児の便検体に対する3日間ルールを評価した。C. difficileを除く病原性腸内細菌の検出率は、入院後3日以内に提出された検体で97/3,751(2.59%)、入院後4日以降に提出された検体では3/1,511(0.2%)であった。本ルールをこの3検体に適用すると、培養基準に適合していた。本ルールを2000年の2カ月間にわたって、小児および成人の両方に適用した場合の費用削減を前向きに推計した。費用削減は、小児よりも成人のほうが大きかった。小児由来490便検体中38検体(7.8%)および成人患者由来の206の便検体中64検体(31%)が培養基準に適合しなかった。著者らは、2003年3月1日から2006年3月31日まで、本ルールを実施した。合計14,439の便検体を、C. difficileを除く病原性腸内細菌の培養が必要な入院患者より得た。これらのうち5,744検体(39.8%)は、培養基準に適合していなかったため除外した。これにより、著者らのNHSトラスト施設の検査室では年間11,848ポンドの費用削減となると推計された。全NHSトラスト施設にあてはめると、年間約118万ポンドの費用削減になると考えられる。

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監訳者コメント:
細菌性腸管感染症は市中感染症であり、通常入院時にすでに発症している。その診断のための便培養検査が、入院後3日を超えて提出されることは考えにくい。そこから発生した「3日間ルール」を、成人だけでなく小児にも適用し、検査の無駄を省いたという非常にわかりやすい論文である。検査の無駄を省くことは、包括支払い制度のもとでは病院の収益につながり、日本の医療機関にとっても応用できるルールである。

監訳者注:
3日間ルールには4日目以降の便培養検体採取基準があり、この3検体はその基準にあてはまるので、取りのがすことはなかった、の意味。

フランス南東部における9年間の手術部位感染率の低下傾向(1995~2003年)

Nine-year downward trends in surgical site infection rate in southeast France (1995-2003)

C.M. Couris*, M. Rabilloud, R. Ecochard, M.H. Metzger, E. Caillat-Vallet, A. Savey, J. Fabry, P. Vanhems
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 127-134


本研究の目的は、フランス南東部の大規模な手術部位感染サーベイランスネットワークを用いて、1995年から2003年の手術部位感染の発生率の経時的傾向を推定することである。本ネットワークに2年以上参加した187の外科病棟のデータを解析した。手術部位感染率の経時的変化を、外科病棟内の患者集団の階層的ロジスティック回帰モデルを用いてモデル化した。対象患者200,207例中3,786例(1.9%)に手術部位感染が発生した。オッズ比0.95(95%信頼区間0.93~0.97)から推定した9年間の手術部位感染率の傾向は、1年あたり5%の手術部位感染率の低下と判定された。この低下は、研究期間を通して一定であり、ほぼすべての種類の外科手術(整形外科、消化器科、泌尿器科など)で認められた。全手術部位感染率は、9年間で45%低下した。この傾向は、外科病棟の多様性および患者の人口統計学的特性の経時的な相違を考慮しても同様であった。このことから、1年あたり5%の低下は、手術部位感染を減少させるために外科病棟が実施した予防対策の結果と解釈するのが妥当なものであると考えられる。

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監訳者注:
人口統計学的特性(demographics):年齢や性別など。

新生児集中治療室における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生Serratia marcescensおよびKlebsiella pneumoniae獲得の危険因子

Risk factors for extended-spectrum β-lactamase-producing Serratia marcescens and Klebsiella pneumoniae acquisition in a neonatal intensive care unit

V. Crivaro*, M. Bagattini, M.F. Salza, F. Raimondi, F. Rossano, M. Triassi, R. Zarrilli
*University ‘Federico II’, Italy

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 135-141


著者らは、イタリアのある大学病院の新生児集中治療室(NICU)におけるゲンタマイシン耐性基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生Klebsiella pneumoniaeおよびSerratia marcescensの分子疫学、およびこれらの獲得に関連する危険因子について調査した。研究期間中(2004年4月から11月)、S. marcescensによる感染は6件、保菌は31件、K. pneumoniaeによる感染は6件、保菌は103件が認められた。両菌が同時に分離された新生児は24例であった。分子型別により、研究期間中に分離されたS. marcescens株およびK. pneumoniae株に対するパルスフィールド・ゲル電気泳動の単一の主要パターンを同定した。blaSHV-12blaTEM-1およびaac(6’)-Ib遺伝子を含み、S. marcescensおよびK. pneumoniaeの両株から分離され、同一の制限酵素切断プロフィールを示す80 kbのプラスミドにより、第三世代セファロスポリンに対する耐性が、以前は感受性であった大腸菌に移行した。単変量解析により、出生時体重、在胎期間、および侵襲性デバイスの使用がS. marcescensおよびK. pneumoniae獲得と有意に関連し、一方、アンピシリンとゲンタマイシンによる経験的抗菌薬治療および入院期間のみが独立した危険因子であることが示された。結論として、プラスミド接合伝達、およびアンピシリンとゲンタマイシンによる経験的抗菌薬治療は、NICUにおけるゲンタマイシン耐性ESBL産生腸内細菌の選択および伝播に寄与した可能性がある。

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監訳者コメント:
NICUにおける耐性菌の集団発生としてはMRSAが最も多いと思われるが、ESBL産生S. marcescensK. pneumoniaeの集団発生も決して少なくない。本論文はその事例を分子疫学的手法も加えて詳細に分析している。データのしっかりした読み応えのある論文である。NICUの感染対策を担当する者は一読の価値がある。

新生児のEnterobacter属菌の保菌:予測因子、追跡、および感染制御との関連

Enterobacter colonisation in newborn infants: predictors, follow-up and implications for infection control

M.C. van Rossem*, W.J. de Waal, E.J. van Hannen, M.A. Verboon-Maciolek, H. van Wieringen, D.A.M. Van de Vijver, Y. van Dyk, S.F. Thijsen
*Diakonessenhuis Utrecht, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 142-148


新生児集中治療室(NICU)では、Enterobacter属菌のアウトブレイクが頻繁に報告されている。本研究では、新生児のEnterobacter属菌保菌、保菌の期間継続、および隔離策の打ち切りによる菌の蔓延について、それぞれを規定する因子を調べた。第三次病院のNICUから転院した新生児に対して、Enterobacter属菌の有無、および保菌の潜在的予測因子の記録のスクリーニングを行った。感染が認められた新生児は入院期間を通してモニターし、保菌が認められた新生児には6カ月間、毎月スクリーニングを実施した。感染制御予防策としての隔離を中止し、6カ月後と12カ月後に全新生児に対してEnterobacter属菌の有無のスクリーニングを行った。保菌新生児15例および保菌のない対照新生児33例を、本研究の対象とした。多変量解析により、3日間を超える抗菌薬治療および1分後のアプガースコア8点未満は、Enterobacter属菌保菌と独立して関連することが明らかとなった。単一酵素による増幅断片長多型(seAFLP)法による分子型別により、22種類の遺伝子型が判明した。新生児3例は、退院後も同じ遺伝子型のEnterobacter属菌を保菌していたが、大多数の新生児では菌株が消失するか、あるいは別の遺伝子型の保菌が認められた。新生児病棟でEnterobacter属菌を保菌する新生児を対象とした感染制御策を中止したことによる保菌率の増加はなく、新規に感染した乳児はなかった。Enterobacter属菌に感受性がある新生児の隔離の必要性は示されなかった。

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監訳者コメント:
耐性菌ではないEnterobacter属の集団発生を受けて、これらの監視培養と陽性新生児を接触予防策下に置くというのは、MRSAなどの耐性菌の保菌者に同様の措置を取っているオランダらしい手法である。結果的に、監視培養と陽性者の隔離の必要性が示されなかった。そもそもEnterobacter属は腸管内常在菌であり、それの感受性株の保菌者を隔離するという発想もオランダらしいが、やはり行き過ぎであろう。監視培養と陽性者の隔離による感染制御は、あくまで限定的に用いるべきだということを示すよい例だと思う。

4%クロルヘキシジンによる全身洗浄が内科系集中治療室の患者における多剤耐性Acinetobacter baumanniiの皮膚保菌に及ぼす影響★★

Impact of 4% chlorhexidine whole-body washing on multidrug-resistant Acinetobacter baumannii skin colonisation among patients in a medical intensive care unit

A. Borer*, J. Gilad, N. Porat, R. Megrelesvilli, L. Saidel-Odes, N. Peled, S. Eskira, F. Schlaeffer, Y. Almog
*Soroka University Medical Center, Israel

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 149-155


Acinetobacter baumannii血流感染が多発する医療施設で、内科系集中治療室(MICU)入室時のA. baumanni皮膚保菌率を調査した。また、患者のA. baumanni皮膚保菌に対する4%グルコン酸クロルヘキシジンによる全身洗浄の影響を判定した。2002年3月から2003年12月の間にMICUで前向きコホート試験を実施し、介入後に獲得したA. baumanni血流感染有病率と発生率を後向きに比較した。介入期間中、患者全員からA. baumanniの皮膚スクリーニングのためのスワブを入院時および退院まで定期的に採取した。初回培養実施直後に、患者に4%グルコン酸クロルヘキシジンによる全身の消毒を行った。消毒は、保菌状態にかかわりなく、退院まで原則として毎日実施した。病棟入院時の患者320例中55例(17%)がA. baumanniを保菌していた。MICUに滞在している患者のA. baumanni保菌率は、消毒実施24時間後は5.5%、48時間後は1%であった(P=0.002、オッズ比[OR]2.4)。2回目のスクリーニング後、保菌患者の80%で保菌が消失した。A. baumanni血流感染有病率は患者100例あたり4.6例から0.6例に減少し(P≦0.001、OR 7.6)、発生率は1,000患者・日あたり7.8例から1.25例に低下した(85%の低下)。著者らは、4%グルコン酸クロルヘキシジンによる全身消毒を毎日実施することにより、A. baumanni皮膚保菌が有意に減少すると結論する。多剤耐性A. baumanni血流感染が多発する医療施設では、周知の感染制御対策に加えて、この消毒法を考慮すべきことが示唆される。

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監訳者コメント:
4%グルコン酸クロルヘキシジンによる全身洗浄は、手術部位感染防止ガイドラインにおいて、手術部位感染(SSI)防止の有効性が示唆されている(アウトカムを伴うエビデンスはないが)。それに準じて考えれば、本論文のようにICU患者に対して皮膚通過菌であるA. baumanniの除菌を行うという発想は妥当である。そして期待通りの結果を得ている点を評価すべきであろう。日本では4%グルコン酸クロルヘキシジンを有効成分とする患者皮膚用の洗浄剤がないこともあり、すぐに応用できるものではないが、ICU患者などの清拭の際の水に薬効成分を加えることを考慮してもよいのかもしれない。

周術期抗菌薬予防投与の標準化プロトコールは投与時期の改善および費用削減と関連する

A standardized protocol for perioperative antibiotic prophylaxis is associated with improvement of timing and reduction of costs

I. Willemsen*, R. van den Broek, T. Bijsterveldt, P. van Hattum, M. Winters, G. Andriesse, J. Kluytmans
*Amphia Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 156-160


本研究の目的は、周術期抗生物質予防投与(PAP)の単一のガイドラインを実施し、PAPの投与時期と費用への影響を評価することである。ランダムに選択した処置について薬剤の選択と投与時期を、PAPの適用に関する新規ガイドラインの実施前後で比較することによって、ガイドライン実施の効果を評価した。介入前に、異なる診療科の処理153件を観察したところ、8種類の抗菌薬を様々な用量で使用しており、これらの処置の20%では切開後にPAPを投与していた。介入の2カ月後に147件の処置を観察したところ、投与した抗菌薬は3種類で、いずれも正しい用量で使用されていた。切開後のPAP投与は20%から7%に有意に減少した(P=0.002)。改定PAPプロトコールにより、質の改善に加え、1年間で正味112,000 USドル以上の費用節減がもたらされた。本研究は、単一で簡明なPAPプロトコールを実施することにより、用量と投与時期が改善することを示している。PAPの費用も削減された。

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監訳者コメント:
ランダムに投与されていた予防投与薬を、プロトコールを作成したら、用法用量が改善され、コストも削減になった、というシンプルな論文。これで感染率がどうかまで加えてあると、★がついたのですが・・・。

ブラジルにおける非結核性抗酸菌による乳房インプラント手術時感染のアウトブレイク

Outbreak of surgical infection caused by non-tuberculous mycobacteria in breast implants in Brazil

M.C. Padoveze*, C.M.C.B. Fortaleza, M.P. Freire, D. Brandao de Assis, G. Madalosso, A.C.G. Pellini, M.L.V. Cesar, V. Pisani Neto, M.M. Beltramelli, E. Chimara, L. Ferrazoli, M.A. da Silva Telles, J.L.M. Sampaio, S.C. Leao
*Centro de Vigilancia Epidemiologica, Brazil

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 161-167


ブラジルのCampinas市で発生した、乳房インプラント手術に関連する非結核性抗酸菌のアウトブレイクを、後向きコホート研究および分子疫学研究により調査した。12病院で乳房手術を受けた合計492例のカルテを評価した。12の分離株を、4種類の分子タイピング法により解析した。確定例が14例、可能性例が14例、ほぼ確実例が1例認められた。ほぼ確実例1例、可能性例9例、および確定例12例をコホート研究に組み入れた。これらの症例は8病院で発生し、このうち確定例は5病院で発生していた。単変量解析により、病院AおよびBで乳房再建手術を受けた患者は、非結核性抗酸菌に感染している可能性が高いことが示された。多変量モデルでは、非結核性抗酸菌感染と関連する独立危険因子は認められなかった。各病院の患者から得た分離株の分子パターンは、約1年間にわたり繰り返し同じ遺伝子型を示した病院Cの患者からの分離株を除き、異なるパターンを示していた。結論として、今回のアウトブレイクは、各施設で多クローン性の菌株が引き起こしたものであるが、1病院では特定の遺伝子型がほとんどの症例の原因となっていた。特異的な危険因子は確認できなかった。

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監訳者コメント:
結論が良くわからない論文である。だから、汚染源として何が考えられるのかをもう少し深くディスカッションして欲しかった。

インドの7都市の病院の集中治療室におけるデバイス関連院内感染率:International Nosocomial Infection Control Consortium(INICC)の知見

Device-associated nosocomial infection rates in intensive care units of seven Indian cities.
Findings of the International Nosocomial Infection Control Consortium (INICC)

A. Mehta*, V.D. Rosenthal, Y. Mehta, M. Chakravarthy, S.K. Todi, N. Sen, S. Sahu, R. Gopinath, C. Rodrigues, P. Kapoor, V. Jawali, P. Chakraborty, J.P. Raj, D. Bindhani, N. Ravindra, A. Hegde, M. Pawar, N. Venkatachalam, S. Chatterjee, N. Trehan, T. Singhal, N. Damani
*PD Hinduja National Hospital & Medical Research Centre, India

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 168-174


インドの7都市のInternational Infection Control Consortium(INICC)に所属する7病院の12の集中治療室(ICU)で、医療関連感染率、微生物学的プロファイル、細菌の耐性度、入院期間、および超過死亡率を調査した。2004年7月から2007年3月まで前向きサーベイランスを実施した。10,835例の患者が52,518日間入院し、476件の医療関連感染が発生、全感染率は4.4%、1,000 ICU・日あたりの医療関連感染発生率は9.06件であった。中心静脈カテーテル関連血流感染(CVC-BSI)発生率は1,000カテーテル・日あたり7.92件、人工呼吸器関連肺炎(VAP)発生率は1,000人工呼吸器・日あたり10.46件、カテーテル関連尿路感染(CAUTI)発生率は1,000カテーテル・日あたり1.41件であった。全体で、黄色ブドウ球菌による医療関連感染の87.5%がメチシリン耐性株によるものであり、腸内細菌科細菌の71.4%はセフトリアキソン耐性、26.1%はタゾバクタム・ピペラシリン耐性、緑膿菌株の28.6%はシプロフロキサシン耐性、64.9%はセフタジジム耐性、42.0%はイミペネム耐性であった。入院期間は、医療関連感染のない患者4.4日、CVC-BSI患者9.4日、VAP患者15.3日、CAUTI患者12.4日であった。超過死亡率は、VAP 19.0%[相対リスク(RR)3.87、P≦0.001]、CVC-BSI 4.0%(RR 1.60、P=0.0174)、CAUTI 11.6%(RR 2.74、P=0.0102)であった。データにはインドの診療環境が正しく反映されていない可能性があり、サーベイランス法の相違が医療関連感染率に影響を与えている可能性がある。医療関連感染率、入院期間、死亡率、および細菌の耐性発現率は高かった。サーベイランスおよび抗菌薬治療方針を含む感染制御計画が、インドにおける優先事項である。

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韓国の病院の医療従事者におけるA型急性肝炎のアウトブレイクの分子学的特性★★

Molecular characterization of an acute hepatitis A outbreak among healthcare workers at a Korean hospital

J.Y. Park*, J.B. Lee, S.Y. Jeong, S.H. Lee, M.A. Lee, H.J. Choi
*Ewha Womans University School of Medicine, Korea

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 175-181


韓国の若年成人のA型肝炎ウイルス(HAV)抗体保有率は低い。2005年の5月から7月の間に、病院の集中治療室(ICU)の医療従事者から17例のHAV感染が報告された。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇を示す内科・外科ICUの全患者について抗HAV IgM抗体の有無を調べ、初発症例の疑いのある2例と接触した全医療従事者でAST値とALT値のスクリーニングを実施した。アウトブレイクを確認後、医療従事者の血液中のHAVの分子亜型を調べた。初発症例および伝播経路を同定し、アウトブレイク制御のための介入策を実施した。医療従事者の17例は22~32歳の看護師13例と医師4例であり、いずれも研究期間中に急性HAV感染に罹患していた。HAVの伝播方法は、下痢のある長期臥床患者からの糞口感染経路が考えられた。医療従事者は全例が抗HAV IgM抗体陽性で、うち8例はHAV RNA陽性であった。各分離菌株のVP1-2A領域の解析から、5株が遺伝子型IA、その他の株では遺伝子型IAとIBの同時循環(co-circulation)であることが示された。今回のHAVアウトブレイクにより、病院内の標準的感染制御予防策の重要性が明確になった。患者の血液の分子学的検査は、病院でHAV感染のアウトブレイクが疑われる場合の疫学的解明に役立つと考えられる。

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監訳者コメント:
ウイルス性疾患のアウトブレイク調査についての貴重な論文である。

過酸化水素蒸気による汚染除去後の生物学的有効性および再汚染率の評価

Assessing the biological efficacy and rate of recontamination following hydrogen peroxide vapour decontamination

J.A. Otter*, M. Cummins, F. Ahmad, C. van Tonder, Y.J. Drabu
*BIOQUELL (UK) Ltd, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 182-188


病院内の無生物環境は、院内感染起因病原体により汚染される可能性がある。過酸化水素蒸気による汚染除去は、持続的な環境汚染の完全な除去に有効であることが示されている。著者らは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、およびゲンタマイシン耐性グラム陰性桿菌(GNR)の感染歴および保菌歴がある患者の個室で、MRSA、VRE、およびGNR汚染の程度を調査し、過酸化水素蒸気による汚染除去効果を検討した。病室内の事前に規定した15カ所からサンプルを採取し、選択増菌培養プロトコールでMRSA、VRE、およびGNRを培養した。実験は2回にわたって行い、それぞれ清掃前、清掃後、過酸化水素蒸気による汚染除去後、および汚染除去から19日目までの期間にサンプルを採取した。MRSA、GNR、VREによる環境汚染は、清掃前は検査箇所のそれぞれ60%、30%、6.7%で、清掃後はそれぞれ40%、10%、6.7%で認められた。過酸化水素蒸気による汚染除去後は、MRSA汚染が認められたのは1カ所(3.3%)のみであった。VRE再汚染は認められず、MRSAおよびGNR再汚染は過酸化水素蒸気による汚染除去後2日間は認められなかった。過酸化水素蒸気による汚染除去から約1週間後には大幅な再汚染が認められ、GNR汚染は清掃後のレベルに、MRSA汚染は清掃前のレベルに近づいていた。院内感染起因病原体を完全に除去するためには、通常の退院時清掃よりも過酸化水素蒸気が有効である。MRSAおよびGNR保菌患者の病室で、MRSAおよびGNRの急速な再汚染はなかったが、1週間以内に再汚染した。過酸化水素蒸気による汚染除去を院内で最適に実施するうえで、本研究の所見は重要な意味を有する。

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監訳者コメント:
おそらくは、過酸化水素蒸気を適切に使用すれば、環境中に残存しているMRSAなどを効率よく除去することが可能になると思われる。そうすれば、あまり一般的ではないが、汚染環境がリザーバーとなったMRSAアウトブレイクをコントロールすることが可能になるであろう。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.