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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性率と周辺地域のMRSA陽性率との時間的関係:時系列解析★★

Temporal relationship between prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) in one hospital and prevalence of MRSA in the surrounding community: a time-series analysis

F.M. MacKenzie*, J.M. Lopez-Lozano, D.L. Monnet, D. Stuart, A. Beyaert, R. Wilson, I.M. Gould
*Aberdeen Royal Infirmary, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 225-231


この研究はAberdeen王立病院のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性率と周辺地域(グラムピアン地域、住民数500,000人)のMRSA陽性率の関係を調査した。1996年1月から2002年2月まで毎月、病院と地域の%MRSAを算出した。各時系列間の関連を評価するため、動的回帰モデルによる補正を行った。地域の毎月の%MRSAは、病院で1カ月前に観察された毎月の%MRSAと強く関連していた(R2=90.8%)。地域での抗菌薬使用との関連を明らかにすることはできなかったが、著者らは以前に病院の抗菌薬使用歴とMRSA発生率との間の強い相関を報告している。時系列解析法により、病院のMRSA陽性率の変動に続いて、直ちに周辺地域で同様のMRSA陽性率の変動が生じることが示された。これらの結果は、地域のMRSA陽性率増加の理由が病院のMRSAアウトブレイクであったことを示唆している。地域におけるMRSA伝播を制御する新しい手段として、患者退院時スクリーニングを評価すべきである。

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監訳者コメント:
地域におけるMRSAの増加はやはり病院の責任であるのかもしれない。「持ち込まれた!」と責任回避するばかりでは感染管理にならない。地域医療圏とも密接に連携して、広域的な感染対策を心掛ける必要がある。

監訳者注:
%MRSA:メチシリン耐性を示す黄色ブドウ球菌株の割合。

新生児病棟におけるシプロフロキサシン感受性EMRSA-15アウトブレイクの同定と制圧

Identification and control of an outbreak of ciprofloxacin-susceptible EMRSA-15 on a neonatal unit

J.A. Otter*, J.L. Klein, T.L. Watts, A.M. Kearns, G.L. French
*St Thomas’ Hospital and King’s College London, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 232-239


この論文は、英国流行型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌-15(EMRSA-15)のシプロフロキサシン感受性株による新生児病棟におけるアウトブレイクの同定と制圧を報告している。入院時にシプロフロキサシン含有培地を使用してすべての乳児をスクリーニングしていたが、アウトブレイク株は検出されなかった。最初に判定された症例は、脛骨骨髄炎と多発性皮下膿瘍を伴うMRSA菌血症を発症した早産児であった。次に、臨床的感染症を認めなかった2例目の小児の鼻咽頭分泌物からアウトブレイク株が検出された。シプロフロキサシン非含有培地を使用した新生児病棟の全患児に対するスクリーニングから、新たに2例の保菌乳児が判定された。全4患児の分離株はEMRSA-15、spa型t022、SCCmec IVであり、Panton-Valentineロイコシジン(PVL)陰性、パルスフィールド・ゲル電気泳動法で同一パターンであり、検査したすべての非β-ラクタム系抗菌薬に感受性であった。共同搾乳室の48の環境部位の4カ所から、アウトブレイク株の培養を行った。搾乳室へ出入りする母親の非監視下の動きが、アウトブレイクに寄与していた可能性がある。感染対策として、患児の集団隔離、環境清掃の改善、手指消毒の徹底、および母親の教育を実施した。シプロフロキサシン感受性株(市中獲得型MRSAを含む)保有率が増加している環境でのMRSAスクリーニングでは、シプロフロキサシン含有培地の使用に注意が必要である。

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監訳者コメント:
欧米での増加が問題となっている市中獲得型MRSA(CA-MRSA)は、SCCmec IV、PVL陽性などの特徴があるが、非β-ラクタム系抗菌薬感受性である場合が多く、CA-MRSAが問題になるような環境にあっては監視培養検査においてもどのような選択培地を使用するか注意が必要である。積極的監視検査を実施する際も検査方法の限界を検討しておくべきである。わからないときは認定臨床微生物検査技師さんに教えてもらいましょう。

英国の大規模小児病院における医療関連ロタウイルス胃腸炎

Healthcare-associated rotavirus gastroenteritis in a large paediatric hospital in the UK

N.A. Cunliffe*, C. Allan, S.J. Lowe, W. Sopwith, A.J. Booth, O. Nakagomi, M. Regan, C.A. Hart
*University of Liverpool, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 240-244


ロタウイルスは乳児および幼児の市中感染胃腸炎の主要な原因である。しかし、医療関連感染症としての小児胃腸炎におけるロタウイルスの重要性は、ほとんど理解されていない。英国リバプールにある国民保健サービストラスト・ロイヤルリバプール小児病院(Royal Liverpool Children's NHS Trust)で前向き研究を実施した。2006年1月から5月に入院した急性胃腸炎の患児243例を登録した。酵素免疫測定法により糞便試料中のロタウイルスを検査した。医療関連急性胃腸炎91例中の17例(19%)、市中感染急性胃腸炎152例中の54例(36%)がこのウイルスによった。医療関連急性ロタウイルス胃腸炎の患児の16例が感染源隔離を必要として、8例では経静脈的輸液管理が実施された。ロタウイルスは大規模な小児病院の医療関連急性胃腸炎でも重要な原因であると結論する。ロタウイルスワクチンは大規模な小児病院における症候性ロタウイルス感染症の多くを予防できる公衆衛生上の手段である可能性がある。

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監訳者コメント:
一般的に下痢症の感染対策は難しく、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)やノロウイルスが問題となるが、小児診療領域においてはロタウイルスにも注意が必要である。ま、当たり前か。

オーストラリアの3病院におけるアシネトバクター属菌の経時的研究

A longitudinal study of Acinetobacter in three Australian hospitals

C. Marshall*, M. Richards, J. Black, V. Sinickas, C. Dendle, T. Korman, D. Spelman
*Royal Melbourne Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 245-252


アシネトバクター属菌は、特に抗菌薬耐性の増加により、近年では院内感染病原体として著しく増加している。この研究の目的は、メルボルンの3病院のアシネトバクター陽性率と抗菌薬感受性の変動を記述することである。著者らは5年間の微生物学検査記録を後向きにレビューした。四半期ごとに10,000退院あたりでアシネトバクター臨床分離株が新規に同定された患者数を算出した。その他に収集した情報は、抗菌薬感受性パターン、患者年齢、性別、入院日数、および病棟の種類[集中治療室(ICU)または非ICU]である。同定率は2病院で大幅に上昇したが、3番目の病院では大幅な上昇はみられなかった。1病院では、同定数の増加は抗菌薬耐性と関連していた。初回分離株のほとんどは、患者のICU在室中に同定されていた。呼吸器検体からの分離株が最多であったが、血液由来の比率も極めて高かった。この研究はメルボルンの2病院でアシネトバクター属菌が院内感染病原体として定着したことを述べるとともに、将来への警鐘を鳴らすものである。

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監訳者コメント:
わが国では多剤耐性緑膿菌(multi-drug-resistant P. aeruginosa;MDRP)が注目されているが、高度耐性アシネトバクターにも注意を払っておく必要がある。アシネトバクターも緑膿菌と同じくグルコース非発酵グラム陰性桿菌であり、容易に薬剤耐性を獲得するなど、共通点が少なくない。

尿路カテーテル留置期間の管理:カテーテル関連尿路感染への影響★★

Control of the duration of urinary catheterization: impact on catheter-associated urinary tract infection

J. Crouzet*, X. Bertrand, A.G. Venier, M. Badoz, C. Husson, D. Talon
*Centre Hospitalier Universitaire Jean Minjoz, France

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 253-257


カテーテル関連尿路感染は最も頻度が高い院内感染の1つである。カテーテル関連尿路感染の予防にとって、カテーテル留置期間の短縮は重要な介入であると考えられる。著者らの大学病院の5部署で前向き時系列・非無作為化介入研究を実施した。看護師から医師へ不必要な尿路カテーテルを抜去するようにカテーテル挿入4日目以降から毎日注意喚起することの影響を明らかにすることを目的とした。この介入により5部署中の2部署でカテーテル留置期間が有意に短縮した。全5部署のカテーテル留置患者の遅発性カテーテル関連尿路感染の発生頻度は患者100例あたり10.6例から1.1例に低下して(P=0.003)、発生率は延べ1,000カテーテル・日あたり12.3から1.8まで減少した(P=0.03)。ロジスティック回帰分析により、カテーテル留置期間およびカテーテル交換の繰り返しが遅発性カテーテル関連尿路感染と関連があることが示された。この研究では遅発性カテーテル関連尿路感染の発生頻度を簡単な方法で低下させることが可能であることを示している。

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監訳者コメント:
無駄なカテーテルは抜きましょう。それがみんなのためです。

高度な感染制御対策が蘇生後の臨床転帰に及ぼす影響

Impact of enhanced infection control procedures on clinical outcome following resuscitation attempts

H.-L. Chuang*, W.-S. Leung, Y.-T. Chung, Y.-T. Chang, W.-K. Chen
*Jen Ai Hospital, Taiwan, ROC

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 258-263


アウトブレイク発生中の救急蘇生に対する感染制御対策の影響は明らかではない。今回の後向き観察研究の目的は、感染制御対策実施後の救急蘇生の転帰を検討することである。2003年1月1日から7月4日までの期間に、台湾中部の1,732床の三次病院でデータを収集した。救急蘇生を必要とする非外傷患者を、厳格な感染制御対策の実施前(期間1)および実施後(期間2)の2群に分けた。解析対象とした変数は、患者の人口統計学的データ、蘇生を行った場所、蘇生に参加した人数、応答時間と蘇生時間、発熱、肺炎の状態、および蘇生の結果であった。期間1と期間2で応答時間に変化はなかったが、緊急挿管せずに患者蘇生を行った数、急速挿管を行った数、「蘇生をしない(do not resuscitation;DNR)」指示数は増加し、期間1ではそれぞれ88件(24.4%)、23件(6.4%)、16件(4.4%)であったのに対し、期間2では103件(33.0%)、32件(10.3%)、29件(9.3%)であった。蘇生失敗率は期間2で有意に高かった(オッズ比1.59、95%信頼区間1.17~2.16)。これらの2つの期間で、発熱または肺炎患者で救急蘇生を行った数に有意差は認められなかった。結論として、厳格な感染制御対策の実施は、救急蘇生の失敗率増加に寄与すると考えられた。感染性が高い疾患のアウトブレイクの次回発生時の救急蘇生処置中には、患者に標準的な医療を提供すること、および十分な医療従事者の適切な保護を図ることが最も重要と思われる。

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監訳者コメント:
医療従事者の曝露予防と患者の救命率という両天秤をどう解決するかが課題である。

無症状の医療従事者と関連のあったブドウ球菌性水疱性膿痂疹の産科病棟におけるアウトブレイク

Outbreak of staphylococcal bullous impetigo in a maternity ward linked to an asymptomatic healthcare worker

P. Occelli*, M. Blanie, R. Sanchez, D. Vigier, O. Dauwalder, A. Darwiche, B. Provenzano, C. Dumartin, P. Parneix, A.G. Venier
*Centre de Coordination de la Lutte contre les Infections Nosocomiales du Sud-Ouest, France

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 264-270


産科病棟で5カ月間にわたりブドウ球菌による水疱性膿痂疹のアウトブレイクが発生し、新生児7例の感染および2例の保菌が認められた。皮膚病変は、表皮剥脱性毒素(epidermolytic toxin A)産生性黄色ブドウ球菌によるものであった。感染制御対策を実施し、後向き症例対照研究を行った。水疱性膿痂疹症例の唯一の危険因子は、ある准看護師との接触であった(P<0.01)。この准看護師は7症例すべての看護にあたり、症状はなかったが流行株を鼻腔内に保菌していた。除菌治療を繰り返したが、保菌を根絶することはできなかった。最後の症例の9カ月後、別の新生児がさらに重度の水疱性膿痂疹を発現し、その准看護師は成人病棟へ転属となった。

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監訳者コメント:
新生児期は常在菌が定着する重要な期間であり、医療環境での滞在は医療従事者からの菌の移行が感染のリスクになりやすい。黄色ブドウ球菌の蔓延あるいはアウトブレイクしている場合には、疫学調査や菌の遺伝子型別により感染源を特定し、対策を講ずる必要がある。

衛生的な表面としての銅の可能性:汚染物質の蓄積と洗浄に関する問題

Potential use of copper as a hygienic surface; problems associated with cumulative soiling and cleaning

P. Airey*, J. Verran
*Manchester Metropolitan University, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 271-277


病院感染の発生を減少させる一助として、ステンレススチールの代わりに抗菌銅を使用することが提案されている。銅の抗菌活性は、細胞懸濁液と銅または銅合金との長時間の接触実験により明確に実証されている。本研究の目的は、一般的な乾燥環境中の銅の抗菌特性を評価し、ステンレススチールと比較することである。表面の仕上げが異なる3種類のステンレススチールおよび研磨した銅を、蛋白質(牛血清アルブミン)を主成分とした有機汚染物質中に懸濁した黄色ブドウ球菌で汚染し、直ちに乾燥後、24時間培養した。その後、英国国民保健サービス(NHS)のガイドラインで推奨されている2種類の洗浄剤による標準的拭き取り法で表面を拭き取った。この汚染と洗浄の手技を5日間連日実行した。洗浄の終了ごとに、残存汚染物質と生残細胞を直接落射蛍光顕微鏡法(direct epifluorescence microscopy)で評価した。初回汚染後は、汚染物質を容易に完全に洗浄することができたが、洗浄と拭き取りの過程を数回行った後は銅表面に細胞と汚染物質の蓄積が観察された。ステンレススチールは、完全な洗浄が可能である状態を維持していた。銅表面への汚染物質の蓄積は銅の高度な反応性によると推測され、それによって表面の状態が変動すると考えられる。この現象はその後の洗浄、審美的な特性、さらにおそらくは抗菌活性に影響する。表面の素材ごとに、適切な洗浄と消毒のプロトコールを選択することが重要である。

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監訳者コメント:
金属の抗菌作用は誰もが認めるところであるが、素材表面の性状の変化によりその特性が変化することについてはあまりコメントされていない。金属とは言え、手間をかけないと効果が減弱するということである。

新規の過酸化水素ガス滅菌法を用いたプリオンの不活化

Prion inactivation using a new gaseous hydrogen peroxide sterilisation process

G. Fichet*, K. Antloga, E. Comoy, J.P. Deslys, G. McDonnell
*STERIS/CEA/DSV/iMETI/SEPIA, France

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 278-286


プリオンのために汚染除去、特に手術器具を再使用する前の汚染除去が困難となっている。プリオンは標準的な汚染除去法に比較的強い耐性があり、プリオン病が判明している症例や疑われる症例に使用された器材は、高度な化学的または熱処理が必要である。本研究では、プリオンに対する代替的な低温滅菌法として、新規の過酸化水素ガス滅菌法の有効性について検討した。過酸化水素ガスには抗菌効果があることが知られているが、さらにin vitroおよびin vivoアッセイのいずれでもプリオンを不活化することが示されている。気体のものとは対照的に、液体の過酸化水素に効果はない。過酸化水素ガスの作用機序は、蛋白質のアンフォールディング、一部の蛋白質の断片化、および蛋白質分解への高度な感受性であることが示唆される。過酸化水素水は、ある程度の蛋白質凝集作用、およびプロテアーゼによる分解に対する完全な耐性を示した。標準的な低温滅菌法での過酸化水素ガスの使用は、プリオンを不活化するための有用な手段となる可能性がある。

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Reproduced from the Journal of Hospital Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.