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レーティング:[監訳者による格付け]
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英国住民の病院曝露と菌血症との関連性について

Hospital exposure in a UK population, and its association with bacteraemia

D.H. Wyllie*, A.S. Walker, T.E.A. Peto, D.W. Crook
*University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 301-307


医療関連感染症の重要性にもかかわらず、英国住民を対象とした重症感染症と病院曝露の関連を定量化した研究はほとんどない。我々の目的は、病院曝露の有無別の感染率とともに、最近入院した住民の割合を推計することである。2000年4月1日から2005年3月31日の間に、2カ所の病院で医療を受けた住民550,000名を対象に、重度感染症の指標として菌血症の調査を行った。病院曝露者(調査の前年に入院した者と定義)は、住民の8.3%であった。入院全体の55%、および内科、小児科、または外科部門への緊急入院の42%が病院曝露住民であった。年齢を補正すると、病院曝露群のほうが、入院時菌血症率がはるかに高かった。病院曝露のない患者に対して年齢を標準化した発生率比は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)43[95%信頼区間(CI)22~85]、MRSA以外の黄色ブドウ球菌20(15~27)、肺炎球菌7.3(5.2~10)、大腸菌14(11~18)であった。病院曝露があった入院患者のMRSA菌血症率は高く、特に救急部門の男性に顕著であり、入院時のMRSA菌血症率(31/10万人/年)と肺炎球菌菌血症率(33/10万人/年)は同等であった。今回の定量的分析により、入院歴が入院時の菌血症の主要な危険因子であることが確認されたが、院内での病原体感染、共存疾患、またはその他の因子により、このことを説明できるかどうかは不明である。

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監訳者コメント:
入院歴の有無が、そのままMRSA保菌の可能性の高低を反映しているものと考えると理解しやすい。逆の見方をすれば、それだけMRSAを院内で獲得する可能性が高いともいえる。さらなる統計解析が必要である。

集中治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の制御:10年間の解析★★

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus control in an intensive care unit: a 10 year analysis

E. Raineri*, L. Crema, A. De Silvestri, A. Acquarolo, F. Albertario, G. Carnevale, N. Latronico, N. Petrosillo, C. Tinelli, A. Zoncada, A. Pan
*Istituti Ospitalieri di Cremona, Italy

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 308-315


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を集中治療室(ICU)で制御するためのプログラムの有効性に関するデータは限られている。一般ICUでのMRSA制御を目的として、「前後比較」観察研究により、search-and-destroy(S&D)戦略をS&Dプラス隔離(isolation)(SDI)戦略と比較評価した。S&D戦略は能動的サーベイランス、接触予防策、および保菌者の除菌処置からなり、SDI隔離戦略では、さらに隔離とコホーティングを追加した。プログラム導入前の期間1(1996~1997年)、S&Dプログラムを実施した期間2(1998~2002年)、および新しいICUでSDIプログラムを実施した期間3(2003~2005年)の3段階を設定した。10年間の研究期間中に3,978例の患者を観察し、期間1=667例、期間2=1,995例、期間3=1,316例であった。MRSA感染患者数は期間1=19例、期間2=23例、期間3=6例であった。1,000患者・日あたりの感染率は期間1=3.5例、期間2=1.7例、期間3=0.7例であった。期間1から期間2(P=0.024)、および期間2から期間3(P=0.048)に有意な感染率の低下が観察されたが、セグメント化回帰分析では、後者の低下は確認されなかった。ICUで獲得されたMRSA感染の割合は、期間1=80%、期間2=77%、期間3=52%であった(トレンド検定P=0.0001)。黄色ブドウ球菌分離菌株におけるメチシリン耐性率は、期間1=51%、期間2=32%、期間3=23%であった(トレンド検定P<0.0001)。S&D戦略は、MRSA流行中のICUにおけるMRSA感染、感染症伝播率、およびメチシリン耐性株の比率の有意な低下に有効である。SDI戦略により、S&D戦略の有効性がさらに増加する可能性がある。

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監訳者コメント:
これは非常に素晴らしい論文である。MRSAが恒常的に分離されている状態(endemic situation)で、実際にMRSAに関連する感染対策の効果を評価していることが白眉である。また10年という長いスパンでの成果であるため、瞬間風速に終っていないことが、さらに価値を高めている。ただ惜しむらくは、MRSAの感染率を効果判定の指標としているために、実際にはMRSAの伝播を受けても発病しなかった人の割合が含まれていない可能性が考えられる。直接的な評価方法としては、ユニット内で伝達した実数と率を検討することがなお必要である。後は、これをユニット内だけではなく、病院全体で達成していくことが必要であろう。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:オーストリアの2カ所の急性期病院における新たなspaタイプの発生

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus: occurrence of a new spa type in two acute care
hospitals in Austria

W. Ruppitsch*, A. Stoger, O. Braun, B. Strommenger, U. Nubel , G. Wewalka, F. Allerberger
*Austrian Agency for Health and Food Safety, Austria

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 316-322


分子生物学的手法を用いた多剤耐性菌のタイピングは、国の公衆衛生局の最優先課題である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のルーチンのタイピングが2005年にオーストリアで開始され、プロテインA遺伝子の可変領域X(spa)のシークエンス解析、mec遺伝子群(SCCmec)の特性評価、およびPantone-Valentineロイコシジン(PVL)、エンテロトキシン、トキシックショック症候群毒素(TSST-1)、表皮剥離毒素遺伝子の検査を実施した。新規に同定されたt2023タイプを含む10種類の異なるspaタイプが、同一経営下の隣接する2病院由来の66株のMRSA臨床分離株から検出された。spaタイプt2023は、2005年12月に病院Aで最初に分離され、2006年には主流なspaタイプとなった(16分離株中9株)。病院Bでのt2023タイプの発生は依然として孤発的な事例であり、疫学的に病院Aからの転送患者と関連している可能性があった。spaタイプt2023は、spaタイプt001と極めて類似している。病院Aで分離されたspaタイプt001の菌株が示したエンテロトキシン遺伝子パターン、multilocus sequence type(MLST)法およびSmaIによるマクロ制限酵素(macrorestriction)パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンは、t2023のものと識別不能であった。疫学的相違から、感染制御策によりMRSAの交差伝播を防止できることが示唆された。病院Bのほうが病院Aよりも厳しいMRSA隔離策を導入しており、患者数に対する看護師数の比率が高く、感染制御に多くの医療予算を拠出していた。

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監訳者コメント:
MRSAのタイピングは、MRSAがどこから由来し、どのような進化をとげ、現在のように分布生息しているのかを探るために重要であるが、シークエンスタイピングは識別能力が低いものの、安定性の高さから、院内での疫学には向かず、経年的かつ地理的に広範囲をカバーする分子疫学には向いている。PFGEは識別能力が高いものの、安定性に課題があるため、比較的小規模なセッティング(ICUや病棟レベル)の疫学に適している。最後のメッセージである、「医療資源を投入しなければ、MRSAを制御することはむずかしい」という部分は、感染制御に携わるすべての人々にとって、実感するとことであろう。

1999年から2002年のアラブ首長国連邦の三次高次病院における英国のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)ガイドライン適用の経験:同一ガイドライン、異なる文化★★

Experience applying the UK meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) guidelines in a tertiary referral hospital in the United Arab Emirates 1999-2002: same guidelines, different cultures

P.A. Jumaa*, P.M. Hateley, S. Bacon, F.L. Salabsalo, R. Neringer
*UAE University, UAE

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 323-328


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、世界中にみられる重大な院内病原体である。アラブ首長国連邦(UAE)では、MRSAに関する報告がほとんどない。英国のMRSAガイドラインに準拠しているUAEの400床の三次高次病院のMRSAに関する経験を報告する。人口統計学的データおよび臨床データを含め、すべてのMRSA新規症例について以下のMRSAのデータを調査した。個室、シンク、トイレ、および浴室の数と清掃の頻度を含む病棟環境の調査、文化的相違の観察、および1床あたりの感染制御職員数。MRSAの検出率は高くはなかった。1999年から2002年にかけて、2件のクラスターを含む90例のMRSA新規症例が発生した。準拠した対処法は英国と同じであったが、英国と比較すると病院環境および患者の行動の文化的側面に相違がみられた。患者の70%以上は浴室付きの個室に入室していた。2例以上の患者がトイレまたは浴室を共有することはまれであった。病院の感染制御職員は推奨数より少なく、抗生物質の使用制限策はなかった。清掃職員は週あたり100時間以上病棟に滞在し、1日24時間迅速な対応が可能であった。MRSAの治療と管理に影響を及ぼす因子は、文化的行動や社会的行動など多数あると結論される。

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監訳者コメント:
感染制御学は、人々の考えの結集であることから、すべからく文化的な行動や社会的背景の影響を反映したものになっている。よって、英国のガイドラインを直輸入しても、有効である保証はない。同様のことがCDCやAPICが発行するガイドラインを日本に導入するプロセスでもいえるであろう。どのようにすぐれた手法であっても、実施する職員のコンプライアンスが低い場合には、期待した成果が得られない。これに対しては、コンプライアンスを徹底するために教育プログラムを強化する方法があるが、全く逆のアプローチとしては、大量の資金を投入し、そこそこのコンプライアンスであっても、フェイルセーフの考えを取り入れながらインフラやシステムの総合力で制御する方法もある。後者は豊かな産油国だから可能なアプローチであるが、医療財政の危機が叫ばれている我が国では、双方の良い部分を取り入れたマネージメントの構築が必要であろう。我が国の感染制御が、一刻も早くこのことに気付いて他国に追従する路線から、第3の道を模索しはじめることが期待される。

黄色ブドウ球菌に汚染された表面に対する消毒ワイプの有効性を判定するための新規3段階プロトコールの開発

The development of a new three-step protocol to determine the efficacy of disinfectant wipes on surfaces contaminated with Staphylococcus aureus

G.J. Williams*, S.P. Denyer, I.K. Hosein, D.W. Hill, J.-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 329-335


消毒ワイプの有効性、微生物を除去し表面からの伝播を防止する能力、および全体的な抗菌活性を定量化するための3段階のプロトコールを開発した。有機物負荷がある状態とない状態で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)(6~7 log10 cfu)をステンレススチールのディスクに接種した。試験用のグレープフルーツ抽出液含有ワイプと、医薬部外品の対照ワイプを用いた。第1段階では、ワイプをディスクの表面に当て、100±5 gの重量をかけながら機械的に60 rpmで10秒間回転させた。スチール製ディスクを中和剤に移して再度懸濁し、残存細菌数を算出することにより、細菌除去の評価を行った。第2段階では、ワイプを中和剤含有寒天プレートに機械を用いて連続8回圧着させ、ワイプ由来の微生物伝播を評価した。第3段階では、ワイプに10秒間、直接接種を行い、次に中和等の処置を施し、抗菌活性を評価した。試験ワイプは対照ワイプと比較して、すべての表面について細菌性細胞に対する有意に高い除去効果を示した(P<0.05)。しかし、ワイプの殺菌活性は低く(直接接種で<1 log10の減少)、処置後ワイプ上に細菌が残存したため、初期の汚染レベルが高い場合は微生物伝播が繰り返し生じた。MRSAとMSSAに、除去、伝播、または抗菌活性の差はみられなかった。この3段階の方法は、表面消毒用ワイプの性能の評価ガイドラインを開発するために有用なツールである。

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精神科入院患者のヒトメタニューモウイルス感染症アウトブレイク:院内アウトブレイクの予防に対する擦式アルコール製剤の直接観察下での使用の意義★★

Outbreak of human metapneumovirus infection in psychiatric inpatients: implications for directly observed use of alcohol hand rub in prevention of nosocomial outbreaks

V.C.C. Cheng*, A.K.L. Wu, C.H.Y. Cheung, S.K.P. Lau, P.C.Y. Woo, K.H. Chan, K.S.M. Li, I.K.S. Ip, E.L.W. Dunn, R.A. Lee, L.Y.C. Yam, K.Y. Yuen
*University of Hong Kong, Hong Kong, China

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 336-343


精神科施設内での感染症の院内アウトブレイクはまれではないが、しばしば感染予防策の実施が困難な場合がある。本稿では、2005年7月29日から8月20日の間に精神科病棟で31例が関与した急性呼吸器疾患のアウトブレイクを報告する。逆転写PCR(RT-PCR)および塩基配列シークエンスにより、患者7例(23%)からヒトメタニューモウイルスを検出した。アウトブレイクサーベイランスの記録を再確認したところ、2005年には院内アウトブレイクが6件発生し、そのうち4件(67%)で呼吸器系ウイルス感染症との関連が確定あるいは推定された。2005年12月の日中の4時間ごとに精神科患者全員に擦式アルコール製剤を配布し、直接観察を行った。翌年発生した呼吸器系ウイルスの院内アウトブレイクはわずか1件であった。呼吸器系ウイルス感染症によることが推定または証明された院内アウトブレイクに関与した患者数および職員数の合計は60名から6名へ有意に減少し(P<0.001)、全種類の院内アウトブレイクについても70名から24名に減少した(P=0.004)。擦式アルコール製剤は、多様な院内感染病原体に対して強力な殺菌および殺ウイルス活性を有することが判明した。擦式アルコール製剤による消毒を定期的に直接観察することにより、特に精神障害のある患者では、呼吸器系エンベロープウイルスによる院内アウトブレイクの発生率と規模が低下する可能性がある。

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監訳者コメント:
いわゆるアルコールゲルによる手指消毒の就業時訓練(on the job training)がアウトブレイク予防に及ぼす効果について調べた論文である。これは半ば強制的とはいえ、定期的にアルコールゲルの使用を促していくことで、スタッフの理解度と実践度の乖離を縮める教育的手法としては、大変よいアプローチであろうといえる。単に「手を洗いましょう」を大きなセミナー形式でレクチャーするだけでは、実施に行動に移せるようにはならない。

タイの医大病院における職業曝露に対するヒト免疫不全ウイルスの曝露後予防治療

Human immunodeficiency virus postexposure prophylaxis for occupational exposure in a medical school hospital in Thailand

N. Hiransuthikul*, P. Hiransuthikul, Y. Kanasuk
*Chulalongkorn University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 344-349


本研究は、タイ、バンコクのKing Chulalongkorn Memorial Hospital(KCMH)の医療従事者での、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する職業曝露およびその後の曝露後予防治療に関する後向き再調査である。2002年1月から2004年12月まで、事故報告、病院の感染症部門および救急科からデータを収集した。医療従事者306名の職業曝露の315件のエピソードの報告があった。最も曝露が多い医療従事者は看護師(34.0%)で、曝露の種類としては経皮的損傷(91.4%)が最も多かった。検査した感染源患者の3分の1は、HIVに感染していた。315件の曝露中200件(63.5%)は曝露後に曝露後予防治療を開始し、95%を超える症例は24時間以内に開始していた。最も多く処方された曝露後予防治療レジメンはジドブジン+ラミブジン+ネルフィナビルであった。曝露後予防治療を受けた医療従事者の56%が4週のコースを完了した。残りは副作用により、または感染源患者の陰性判明後、リスク再評価の結果の通知後、または自らの判断で、早期に曝露後予防治療を中止した。曝露した医療従事者の中に、研究期間中にHIVに感染した者はいなかった。医療従事者間での適切なカウンセリングおよび慎重なリスク評価が、有効なHIV曝露後予防治療を達成するうえで重要である。

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監訳者コメント:
3年間でのHIV職業曝露が315件は多いと感じるが、曝露後予防治療の体制が整っていること、および職員がすぐに曝露後予防治療を求めて職業曝露担当部署などに相談している様子がうかがえる。首都の病院とはいえ、発展途上国における体制の充実度合いは参考になる。

2003年から2004年の英国の内視鏡汚染除去事故

Endoscope decontamination incidents in England 2003-2004

H.P. Gamble*, G.J. Duckworth, G.L. Ridgway
*Health Protection Agency, London, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 350-354


2004年5月の内視鏡汚染除去事故の報告後に、内視鏡対策委員会(Endoscope Task Force)が設立された。対策委員会は、2003年から2004年の英国の内視鏡汚染除去事故を調査し、再発防止のための勧告を行った。19の国民健康サービス(NHS)トラストから21件の事故の報告があり、このうち18件が対策委員会の事故の定義に合致した。補助内視鏡チャンネルの汚染除去不成功が8件の事故にかかわっており、自動内視鏡洗浄装置の問題が7件の事故で浮き彫りになり、残る3件では英国消化器病学会(British Society of Gastroenterology)のガイドラインが推奨していない消毒方法がかかわっていた。血液媒介ウイルス伝播のリスク評価後に、対策委員会は遡及調査は不要との勧告を行った。事故の特性から、内視鏡汚染除去に対する役割と責任の明確化、職員の訓練、および内視鏡と洗浄装置との不適合性に関連する問題があることが示唆された。これに続いて、英国医薬品庁(Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency)は、内視鏡検査を実施しているすべてのNHSトラストに対して勧告を行った。

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監訳者コメント:
英国の内視鏡汚染除去事故の現状が把握できる。国としてのこのような対応は、個々の医療従事者レベルでは参考にならないかもしれないが、日本も国レベルで見習うべき方法なのかもしれない。

歯科用ファイルの洗浄に関する超音波洗浄器と洗浄消毒器の比較

Comparison of an ultrasonic cleaner and a washer disinfector in the cleaning of endodontic files

K. Perakaki*, A.C. Mellor, A.J.E. Qualtrough
*University of Manchester, UK

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 355-359


本研究の目的は、滅菌前に超音波槽または洗浄消毒器で洗浄した歯科用器具の有機残屑の量を比較することである。様々なサイズの合計90の歯科用ファイル(やすり)を、抜歯した歯の根管の洗浄および成形に使用し、その後、歯科用ファイルホルダーに置いた。試験群1(36ファイル)では超音波で10分間洗浄し、試験群2(36ファイル)では洗浄消毒器で洗浄した。対照群(18ファイル)は全く洗浄しなかった。滅菌後、すべてのファイルを光学顕微鏡下で視覚的に検査し、既存のスケールを用いてスコア化した。その結果、両試験群は対照群より残屑が有意に少ないことが示された。試験群での比較では、超音波で洗浄したファイルのほうが、洗浄消毒器で洗浄したファイルより有意に残屑が少なかった。器具ホルダーのデザインは、この結果にかかわる因子であった可能性がある。複雑な表面構造を有する小型歯科用器具の洗浄における洗浄消毒器の使用について、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント:
歯科器具における超音波洗浄機の有用性を示した論文と言える。歯科領域のみならず、脳神経外科や整形外科など、細かい器具を使用する領域にも応用可能である。

スペインの医療施設の水冷却システムおよび飲料水システムからのレジオネラ属菌/血清群の分離

Isolation of Legionella species/serogroups from water cooling systems compared with potable water systems in Spanish healthcare facilities

J.-M. Rivera*, L. Aguilar, J.J. Granizo, A. Vos-Arenilla, M.-J. Gimenez, J.-M. Aguiar, J. Prieto
*Universidad Complutense, Spain

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 360-366


2005年から2006年にスペインの入院医療施設44カ所で、病院給水システムのレジオネラ属菌のサーベイランスを実施した。冷却システム(冷却塔)から470および飲料水システムから1,871、合計2,341のサンプルを採取した。飲料水システムのサンプルの内訳は、冷水タンクから211、給湯タンクから260で中央貯水槽からの合計は471、またシャワーから136、フィルターがない蛇口から1,172、フィルター付きの蛇口から92で給水端末からの合計は1,400であった。温度と塩素濃度を測定し、レジオネラ属菌の有無を検査した。全サンプル中373(15.9%)にレジオネラ属菌が認められた。冷却塔(23.8%)からの分離率が冷水タンクおよび給湯タンク(約4.7%)と比較して有意に高かったが、これは血清群1陽性サンプルが有意に多いことによる(19.4%対0.9~3.5%)。飲料水システムでは、中央貯水槽とシャワーの間に差は認められなかったが、中央貯水槽とフィルターがない蛇口との間では、血清群1以外のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の相違により分離率に有意差が認められた(4.7%対19.6%)。フィルターにより血清群1以外の分離率は有意に低下した(11%対0%)。季節差がいくつか認められ、冷却システムのL. pneumophila血清群1および飲料水システムのL. pneumophila血清群2~14は、夏季の分離率が高かった。回帰モデルでは、冷却システムでは高温が定着と関連していたのに対し、飲料水では低い塩素濃度が定着と関連していた。

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ビル建設中の病院室内真菌汚染の前向き調査

Prospective survey of indoor fungal contamination in hospital during a period of building construction

M. Sautour*, N. Sixt, F. Dalle, C. L’Ollivier, C. Calinon, V. Fourquenet, C. Thibaut, H. Jury, I. Lafon, S. Aho, G. Couillault, O. Vagner, B. Cuisenier, J.-P. Besancenot, D. Caillot, A. Bonnin
*Hopital du Bocage, France

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 367-373


建設作業中の18カ月間にわたり、血液部門で室内真菌汚染調査を実施した。携帯型Air System Impactorで空気サンプルを採取し、接触用サブロー平板培地で表面サンプルを採取した。本調査期間中、空気中の平均生菌濃度は4.2 cfu/m3、表面では1.7 cfu/プレートであった。建設作業開始時に、当部門で空中浮遊真菌胞子の増加(3.0 cfu/m3から9.8 cfu/m3へ)がみられたが、18カ月間で濃度が10 cfu/m3を超えることはなかった。回収頻度が高い空中浮遊真菌はペニシリウム属菌(27~38%)、アスペルギルス属菌(25%)、および分子ツールを用いて同定した担子菌類ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)(7~12%)であった。不完全酵母菌綱の真菌が表面真菌叢の50%以上を占めた。新型空気処理システム(可動式PlasmairTMユニット)の効果を検討したところ、PlasmairTMで処理した室内の真菌汚染は有意な減少が認められ、建設作業中かどうかにかかわらず、これらの室内の真菌量は同程度であった。

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監訳者コメント:
建築作業中の真菌環境汚染に対する特定の空気清浄ユニットの有用性を示した論文。病院内の建設作業を控える施設にとって有用な論文かもしれない。

ベルギーの大学病院でギリシャからの患者転院後に発生した多剤耐性Acinetobacter baumanniiのアウトブレイク★★

Outbreak of multidrug-resistant Acinetobacter baumannii in a Belgian university hospital after transfer of patients from Greece

I. Wybo*, L. Blommaert, T. De Beer, O. Soetens, J. De Regt, P. Lacor, D. Pierard, S. Lauwers
*Universitair Ziekenhuis Brussel, Belgium

Journal of Hospital Infection (2007) 67, 374-380


多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は重要な院内感染病原体になりつつある。これらの菌は、病院環境で長期生存することが可能である。本研究の目的は、ベルギーの大学病院でギリシャから外傷患者2例の転院後に発生した多剤耐性A. baumanniiによるアウトブレイクの経過および制御について記述することである。両患者の創傷部位に多剤耐性A. baumanniiが定着していた。早期に接触予防策を実施したにもかかわらず、2004年9月から2005年7月までの11カ月間に、患者28例からカルバペネム非感受性A. baumannii(カルバペネム加水分解オキサシリナーゼOXA-58産生)が分離された。多剤耐性A. baumanniiは患者26例のルーチンの臨床診断サンプル、および患者2例のスクリーニングサンプルから検出された。患者20例(71.4%)は、集中治療室在室中に保菌または感染した。24例(85.7%)の呼吸器サンプルは多剤耐性A. baumannii陽性であった。気道関連の全処置を精査したが、共通の伝播経路は特定できなかった。アウトブレイク制御には、保菌患者および感染患者の接触隔離策、職員の作業の監視、無症候患者のスクリーニング、隔離病室の使用、および環境消毒の強化など複数の介入を必要とした。使い捨て人工呼吸器回路の導入を検討したが、実施前にアウトブレイクは制御された。

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監訳者コメント:
院内感染の起因菌としての多剤耐性菌として、MRSA、MDRP、VREについで注目を集めつつあるのが多剤耐性A. baumaniiである。日本でも今後集団発生の起因菌として問題になるポテンシャルを秘めており、要注意の病原体である。本事例はその意味で大いに参考になると思う。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.