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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

自然災害後の帰還患者の多剤耐性感染症:2004年のインド洋津波から得た病院感染管理のための教訓

Multi-resistant infections in repatriated patients after natural disasters: lessons learned from the 2004 tsunami for hospital infection control

I. Uckay*, H. Sax, S. Harbarth, L. Bernard, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 1-8


自然災害後は感染症が頻発する。帰還した被災者は、多発性骨折、肺炎、特別な感染管理対策を要する多剤耐性病原体による創感染などのために入院が必要となる場合がある。著者らの目的は、帰還患者に対する感染管理および診療に潜む落とし穴に対処するために、自然災害の生存者に発生するかもしれない多剤耐性に関する微生物学的知見を提供することである。2004年に起きたインド洋での津波災害に焦点をあて、1986年から2006年の医学文献を検討した。自然災害後は、外傷を通じた重度の曝露により複数の微生物による感染症が発生する可能性がある。多剤耐性グラム陰性菌のほうがグラム陽性菌よりも多い。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌の感染頻度が高いため、またそのほかに免疫が保たれているヒトでの難治性真菌感染症が多く、ルーチンの治療では対応できない場合もある。自然災害の生存者に対しては、航空搬送中は予防的な接触隔離策を実施し、すべての微生物培養の結果が得られるまで入院させることを推奨する。入院時には詳細な診断検査が必要であり、経験的抗菌薬投与は避けるべきである。入院から数週間後に感染症が顕在化することもある。生命を脅かす感染症の場合は、ブドウ糖非発酵性病原菌をも対象とした抗菌薬治療を行うべきである。

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監訳者コメント:
災害医療における感染対策を耐性菌の観点から検討した論文である。災害時の限られたリソースでどのように取り組むべきかを考える意味で横断的な文献検索によるレビューを読むことは意義深い。

2003年および2004年のベルギーの3病院における病院感染による菌血症の財政への影響

Financial consequences of hospital-acquired bacteraemia in three Belgian hospitals in 2003 and 2004

M. Pirson*, P. Leclercq, T. Jackson, M. Leclercq, M. Garrino, C. Sion
*Universite Libre de Bruxelles, Belgium

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 9-16


病院感染による財政的および人的コストは、多くの医療システムで認識が広まりつつある。本研究の目的は、2003年および2004年のベルギーの3つの総合病院における病院感染菌血症による超過支出を算出することである。病院感染菌血症患者を、All Patient Refined Diagnosis Related Group(APR-DRG;全患者を対象とした精密化した診断群分類)が同一であり病院感染菌血症を発症していない患者と比較した。患者レベルのコストをブリュッセル自由大学(Universite Libre de Bruxelles)が開発した病院費用計算システムで推計し、これらの3病院のDRGベースの医療報酬(funding)と比較した。病院感染菌血症の発生率は、3病院のうち2病院で全国発生率と一致していたが、1病院では全国発生率よりもかなり高かった。疾患の重症度および死亡率は病院感染菌血症群のほうが高かった。病院感染菌血症は、在院日数の30日の増加、および集中治療室在室日数の6.1日の増加と関連していた。DRGが同一である非感染患者と比較して、病院感染菌血症患者の治療には16,709ユーロの追加費用を要していた。現在の医療報酬率で、病院は、非感染患者からは平均446ユーロの利益を得ているが、病院感染菌血症患者については平均2,431ユーロの損失であった。本研究の所見から、APR-DRGシステムはこのような合併症に対して重症度を調整し、医療費を拠出する仕組みでありながらも、病院は病院感染菌血症の発生率を減少させることによって財政上の利益を得られることが示唆される。実績に応じた支払い(pay for performance;P4P)やその他の医療報酬算定法に対する関心が国際的に高まると、このような財政上のインセンティブにいっそう拍車がかかるであろう。

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監訳者コメント:
包括医療を行っている場合、医療関連感染による在院日数の伸びが経営収支を大きく左右する。米国のSENIC研究はこの分野の研究として有名であるが、自国のデータを検証することは極めて重要であろう。

ベルギーの大学病院におけるメチシリン耐性の危険因子および黄色ブドウ球菌血流感染症の転帰

Risk factors for meticillin resistance and outcome of Staphylococcus aureus bloodstream infection in a Belgian university hospital

M. Libert*, M. Elkholti, J. Massaut, R. Karmali, G. Mascart, S. Cherifi
*Brugmann University Hospital, Belgium

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 17-24


本研究の目的は、黄色ブドウ球菌血流感染におけるメチシリン耐性の施設特異的な危険因子の特定、およびメチシリン耐性が死亡率に及ぼす影響の評価である。2002年1月1日から2004年12月31日の間に、黄色ブドウ球菌血流感染の154エピソードを特定した。内訳は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)血流感染66件、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)血流感染88件であった。78エピソード(51%)が市中獲得型、76件(49%)が院内感染と考えられた。MRSA血流感染に関連する危険因子は、患者の自宅以外からの入院(P=0.001)、抗菌薬使用歴(P=0.002)、インスリン投与を必要とする糖尿病(P=0.028)、および院内血流感染(P=0.031)(特に入院12.5日以降)であった。血流感染関連死亡率と関連が認められた変数は、敗血症性ショック(P<0.001)、心内膜炎(P=0.002)、およびMRSA血流感染(P=0.021)であった。結論として、黄色ブドウ球菌血流感染は、特に敗血症性ショックまたは心内膜炎が発生した場合は重篤な病態であり、メチシリン耐性によって悪化する。著者らは、自宅以外から入院した患者、抗菌薬使用歴のある患者、インスリン投与を必要とする糖尿病患者、および/または院内血流感染患者に対する経験的治療法として、グリコペプチド系抗菌薬を推奨する。

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監訳者コメント:
MRSA感染症患者のリスク因子を評価し統計学的処理による有意な因子を見いだしている。これらの成果から、エンペリックな抗菌薬処方について推奨している。提供している医療の内容は国毎に異なることから、こうした検討はわが国でも必要である。

黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌により心臓大手術後の手術部位感染症のリスクが増加する

Nasal carriage of S. aureus increases the risk of surgical site infection after major heart surgery

P. Munoz*, J. Hortal, M. Giannella, J.M. Barrio, M. Rodriguez-Creixems, M.J. Perez, C. Rincon, E. Bouza
*Hospital General Universitario ‘Gregorio Maranon’, Spain

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 25-31


黄色ブドウ球菌は、心臓大手術後の手術部位感染の主要な原因菌であり、患者の微生物叢が主な感染源となる。しかし、心臓大手術後の手術部位感染発生に対する黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌の影響は明確にされておらず、米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインでは、除菌を肯定または否定する勧告はいずれも行っていない。著者らは、心臓大手術を受ける患者を対象として、術前に黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌のスクリーニングを行う1年間の観察研究を実施した。手術部位感染症例を記録し、手術部位感染がある患者およびない患者の危険因子を解析した。研究期間中に患者357例を本プロトコールに組み入れた。患者96例(27%)に黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌が認められ、このうち9例(9.4%)はメチシリン耐性菌(MRSA)株を有していた。手術部位感染の全発生率は6.4%で、このうち縦隔炎が4.2%、表在性手術部位感染が2.2%であった。黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌者は、非保菌者よりも手術部位感染発生率が有意に高かった(12.5%対5%、P=0.01)。MRSA保菌者の手術部位感染発生率は33%に達した(P<0.001)。黄色ブドウ球菌は手術部位感染の64%で原因菌となっていた。多変量解析より、手術部位感染の独立危険因子は、黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌[相対リスク(RR)3.1、95%信頼区間(CI)1.4~7.3、P=0.009]、再手術(RR 3.1、95%CI 1.8~19.2、P=0.04)、および糖尿病(RR 5.9、95%CI 1.8~19.2、P=0.003)であることが示された。黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌により、心臓大手術後の院内手術部位感染発生率が有意に増加することから、本集団に対して除菌対策を実施すべきである。

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監訳者コメント:
黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌により、心臓大手術後の院内手術部位感染発生率が有意に増加することを疫学調査から見いだしている。除菌方法や実施期間が争点となろう。

尿路感染症患者由来の黄色ブドウ球菌分離株が産生する病原因子

Virulence factors produced by strains of Staphylococcus aureus isolated from urinary tract infections

L. Baba-Moussa*, L. Anani, J.M. Scheftel, M. Couturier, P. Riegel, N. Haikou, F. Hounsou, H. Monteil, A. Sanni, G. Prevost
*Universite d’ Abomey-Calavi, Benin

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 32-38


黄色ブドウ球菌感染は西アフリカに広く蔓延し、尿路感染症と関連することが多い。このような感染症における黄色ブドウ球菌の病原因子に関する報告はほとんどない。本研究の目的は、原発性と推定される尿路感染症患者から分離した黄色ブドウ球菌由来の毒素および接着因子の陽性率を評価し、ベナン共和国のCotonou University Hospital(CUH)とフランスのStrasbourg University Hospital(SUH)で比較することであった。外来患者と入院患者の両者を試験に組み入れた。4カ月間で分離された黄色ブドウ球菌菌株はCHU 65株、SUH 35株であった。黄色ブドウ球菌菌株の病原因子の特性を免疫学的検出法または多重PCR法で調べ、メチシリン感受性を記録した。全分離株の約50%が、1種類以上のエンテロトキシンを産生していた。SUHの黄色ブドウ球菌分離株にPantone-Valentine型ロイコシジン(PVL)産生性のものはなかったが、CHUの黄色ブドウ球菌分離株の21.5%がPVL産生性であった(P<0.01)。PVL陽性分離株14株中6株(43%)がメチシリン耐性であった。SUHのMRSA率(57%)はCUH(14%)より有意に高かった(P<0.01)。地理的由来とは無関係に、ほぼすべての分離株(80%)にクランピング因子B、エラスチン結合蛋白、ラミニン結合蛋白をコードする遺伝子が検出された。エラスチン結合蛋白に関する結果は、その他の臨床部位由来分離株についての既存の研究データとは大きく異なっていた。ブドウ球菌の病原因子と接着因子は、尿路感染症の病態生理に重要であると考えられる。

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監訳者コメント:
尿路感染症患者由来の黄色ブドウ球菌のプロフィールを検討した論文である。一般的に外来における尿路感染症で黄色ブドウ球菌が問題になることは少なく、やや疑問が残る論文である。

集中治療室の環境清掃:新規評価法による16病院の評価

Intensive care unit environmental cleaning: an evaluation in sixteen hospitals using a novel assessment tool

P.C. Carling*, S. Von Beheren, P. Kim, C. Woods for the Healthcare Environmental Hygiene Study Group
*Carney Hospital and Boston University School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 39-44


隔離予防策の励行および手指消毒用品の使用の普及にもかかわらず、医療関連病原体の伝播は依然として重大な問題である。集中治療室(ICU)環境の微生物汚染が、患者の保菌および感染をもたらすことが、最近の研究で確認されている。病原微生物の蔓延を最小限にするために環境消毒薬が使用されるが、不十分な清掃はこれらの効果を制限する可能性がある。患者周辺の表面清掃の程度を評価するために、透明かつ清掃が容易で、環境中の安定性が高く、紫外線で蛍光を発する溶液を開発した。患者退院時の清掃後、患者の接触頻度が高いとして標準化されているICU内の部位を、この溶液でマーキングした。2例以上の患者が使用した病室を使用し、2回以上の最終清掃の完了後に、これらの部位の評価を行った。患者197例の区域内の2,320の部位を評価したところ、評価対象とした16のICUでは、患者の退院後、標準化されている部位の清掃の程度は57.1%であることが明らかになった。便座、シンク、トレイテーブルの清掃の程度は高かったが(>80%)、便器洗浄器、トイレ区域の取手、ドアノブ、および照明用スイッチなどの部位は一貫して清掃の程度が低く(30%以下)、院内感染病原体による汚染リスクが高いことが示された

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監訳者コメント:
院内クリーニングの指標を設定し、評価した論文である。高頻度接触部位でも、クリーニングの程度には差があることが指摘されている。

南アフリカ西ケープの医療施設で分離された病院内病原体やヒト型結核菌に対する銅および銅合金の抗菌活性:in vitroでの研究

The antimicrobial activity of copper and cooper alloys against nosocomial pathogens and Mycobacterium tuberculosis isolated from healthcare facilities in the Western Cape: an in-vitro study

S. Mehtar*, I. Wiid, S.D. Todorov
*University of Health Sciences, South Africa

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 45-51


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter baumannii)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の臨床分離株に対する銅および銅合金の抗菌活性を検査した。ステンレススチールおよびポリ塩化ビニルを対照として用いた。室温(24℃)および4℃において試験株の発育を阻害するのに必要な銅の含有量を測定した。室温では、銅、耐脱亜鉛腐食黄銅(DZR Brass)(銅62%、鉛2.5%、ヒ酸0.13%、亜鉛22.5%)、および70/30黄銅(Brass 70/30)(銅70%、亜鉛30%)はC. albicansおよびK. pneumoniaeの発育を 60 分で阻害し、ニッケル銀合金(NiAg)はC. albicansを60分、K. pneumoniaeを270分で阻害した。Brass 70/30およびNiAgは緑膿菌を180分で阻害し、銅およびDZRは270分で阻害した。銅およびDZRはA. baumanniiを180分で阻害したのに対し、その他の合金は360分で効果を示した。ステンレススチールおよびポリ塩化ビニルは、ほとんどあるいは全く阻害活性を示さなかった。M. tuberculosis 2株のうち、1株はイソニアジド耐性(R267)、もう1株は多剤耐性(R432)であり、これら2株に対して、銅はポリ塩化ビニルと比較してそれぞれ98%および88%の発育阻害を示した。その他の合金の阻害活性はこれより弱かった。陽性化までの時間は、R267に対しては銅15日以上、Brass 70/30は11日を超えていたが、その他の合金では11日であり、R432に対してはいずれも5日であった。病院内病原体およびM. tuberculosisに対する銅と銅合金の阻害効果は、銅の含有率が55%を上回る場合に最大となった。

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監訳者コメント:
銅とその合金の抗菌活性に関する論文。抗菌コートは汚れに強いのか?

滅菌サービス部門による外科手術器具の清浄度の目視検査と顕微鏡評価の比較

Comparison between visual analysis and microscope assessment of surgical instrument cleanliness from sterile service departments

I.P. Lipscomb*, A.K. Sihota, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 52-58


病院の滅菌サービス部門の現場は、洗浄器/消毒器による処理サイクル後の残存汚染の程度を評価するために、器具の目視検査をルーチンとしている。この研究の目的はこのような検査方法の有効性および信頼性を検証することである。「現場での」洗浄手順の有効性を評価するため、外科手術器具セットを英国国民保健サービス(NHS)プライマリケア施設の滅菌サービス部門9カ所から匿名で収集した。これらの器具をまず目視で検査し、次に落射型微分干渉顕微鏡と呼ばれる最新技術により検査した。顕微鏡検査では、医療器具の汚染度を迅速に視覚化して評価するため、高感度蛍光試薬SYPRO Rubyを併用した。表面上の蛋白質性および非蛋白質性の沈着物による汚染度指数(0~4)によって定量的に評価した。単純な器具については目視評価と顕微鏡評価の間に密接な相関が認められたが、より複雑な器具については2つの評価法の間に顕著な相違があり、目視困難または不可能な蛋白質性および非蛋白質性の結晶性汚染が顕微鏡検査により示された。洗浄の目視評価では誤認が多く起こり得る。この調査によって目視という従来の方法では大きな汚染が見過ごされることが示された。表面汚染の評価のための今回の新しい方法は、迅速で汎用性があり、器具洗浄度のルーチンの監視に広く使用できると考えられる。

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監訳者コメント:
器具洗浄度の確認に新しいテクノロジーを導入する試み。

内視鏡の乾燥・保管キャビネット:利点と効果

Endoscope drying/storage cabinet: interest and efficacy

L. Pineau*, E. Villard, D.L. Duc, B. Marchetti
*Biotech-Germande, France

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 59-65


内視鏡チャンネルの不十分な乾燥は、保管中の細菌増殖の原因となり得る。内視鏡チャンネルを乾燥させ、保管状態を管理する手法やプロセスにより、このリスクを低下させることが可能である。乾燥・保管キャビネット(Hysis Medical社)の効果を評価するため、大腸内視鏡(Olympus社)、十二指腸内視鏡(Fujinon社)、および小腸内視鏡(Pentax社)の3種類の内視鏡を緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)CIP 103467懸濁液で人工的に汚染させた。これらの内視鏡を乾燥キャビネットの内部または外部で12、24、48、72時間保管して、内部の残存汚染レベルの変化を比較した。乾燥・保管キャビネット内で保管した場合の内視鏡の細菌汚染レベルは、最初の細菌量より少なく、その後は大幅な低下がみられた。乾燥・保管キャビネット外で保管した内視鏡では、細菌数は一定または増加した。これらのデータから、このような内視鏡用乾燥・保管キャビネットに保管中の内視鏡チャンネル内部の細菌増殖リスクは抑制されるという利点が示され、再処理プロセスの終了時の消毒レベルが維持されることが確認された。

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監訳者コメント:
内視鏡キャビネットの有用性を評価。

新生児医療関連血流感染症の危険因子とサーベイランスのための発生率層別化に関する推奨★★

Risk factors and recommendations for rate stratification for surveillance of neonatal healthcare-associated bloodstream infection

A. Holmes*, C.J. Dore, A. Saraswatula, K.B. Bamford, M.S. Richards, R. Coello, N. Modi
*Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 66-72


新生児は医療関連感染症に最も罹患しやすい患者群であり、複数の内因性および外因性のリスクを有している。新生児の血流感染症(BSI)の発生率を解釈するためには、ケースミックスの層別化が必要である。ある単一の新生児治療室に入室した連続1,367例を34カ月にわたって評価した。ポアソン回帰分析により、4種類の内因性リスクと7種類の外因性リスクを単独および組み合わせで評価した。単変量解析では、対象とした11種類の危険因子中の9種類にBSIとの有意な関連が認められた。独立した有意の危険因子としては、中心ラインまたは末梢ラインによる非経口栄養法[発生率比(IRR)14.2、95%信頼区間(CI)8.8~22.9、P<0.001]および妊娠26週未満(IRR 2.5、95%CI 1.7~3.8、P<0.001)のみとなった。この両方の危険因子を有する新生児の1,000患者・日当たりのBSI発生率は、いずれの危険因子も有しない新生児の40倍以上であった。他の環境においても妥当性が検証されるならば、非経口栄養法と妊娠26週未満という2つの明確な危険因子を用いて新生児のBSI発生率の層別化を行うことは、病院内および病院間の比較を意味あるものとする容易な方法となる。

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監訳者コメント:
サーベイランスは継続的な医療質保証のための手段であるのが第一義であるが、他施設との比較やベンチマークとしての評価に使用するためにはリスクによる層別化が必要である。数字が独り歩きしてしまうと解釈を誤る。

VIM-2型メタロ酵素産生緑膿菌の院内感染アウトブレイクの長期展開

Long-term evolution of a nosocomial outbreak of Pseudomonas aeruginosa producing VIM-2 metallo-enzyme

S. Corvec*, L. Poirel, E. Espaze, C. Giraudeau, H. Drugeon, P. Nordmann
*Hopital de Bicetre, Assistance Publique/Hopitaux de Paris, France

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 73-82


1996年4月から2004年7月まで、メタロβ-ラクタマーゼ(MBL)陽性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のアウトブレイクがフランス・ナント大学病院の血液科病棟で発生した。患者 59例がVIM-2陽性株保菌者で、そのうち14例は感染症を発症していた(多くは尿路感染症および肺炎)。パルスフィールド・ゲル電気泳動によって、コリスチンを除く、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、フルオロキノロン系、ホスホマイシン、リファンピシンのすべてに耐性を示す関連した分離株が同定された。VIM-2型MBL陽性の原因遺伝子blaVIM-2はプラスミド由来ではなく、クラス1インテグロンの新型の一部である。VIM-2陽性株の多くは尿検体由来であった。臨床データから、治療ガイドラインがない現状で、MBL産生株による感染症の治療としてはピペラシリン/タゾバクタムまたはアズトレオナムが信頼できる選択肢である可能性が示唆される。

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監訳者コメント:
溺れると藁をつかまざるを得ない。溺れないように抗菌薬の適正使用と隔離予防策の徹底で高度耐性菌の蔓延を防止したい。

台湾の長期ケア施設におけるA型インフルエンザのアウトブレイク中のオセルタミビル使用

Use of oseltamivir during an outbreak of influenza A in a long-term care facility in Taiwan

Y.-M. Chang*, W.-C. Li, C.-T. Huang, C.-G. Huang, K.-C. Tsao, Y.-H. Cheng, S.-L. Chiang, S.-Y. Yang, C.-H. Chen, Y.-C. Huang
*Center for Disease Control, Taiwan, ROC

Journal of Hospital Infection (2008) 68, 83-87


ワクチン接種を受けた長期ケア施設の患者と職員に発生したA型インフルエンザアウトブレイクにおけるオセルタミビルの有効性を検討した。2004年1月下旬から2月8日までの14日間にわたり、職員14名中7名と入居者41名中14名がインフルエンザ様疾患またはその他の呼吸器症状を発症した。2月9日、インフルエンザ様疾患を発症した職員1名と入居者7名に対して発症48時間以内にオセルタミビル(75 mg、1日2回5日間)を治療投与した(治療群)。症状がないか呼吸器症状がインフルエンザ様疾患の診断基準に合致しない職員12名と入居者30名に対してオセルタミビル(75 mg、1日1回7日間)を予防投与した(予防群)。残りの入居者4名と職員1名は2日以上にわたってインフルエンザ様症状があったが(症状は消退)、オセルタミビル投与を受けなかった(非投与群)。予防群42名にインフルエンザ様疾患の発症者はなかった。A型インフルエンザウイルスの存在が24名で示され、その内訳は治療群8名中7名、予防群42名中12名、および非投与群の全5名であった。診断確定にはリアルタイムRT-PCR法のほうが抗原検出およびウイルス分離より感受性が高かった。即時のオセルタミビル治療投与と予防投与により、長期ケア施設におけるA型インフルエンザのアウトブレイク発生阻止が可能であった。

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監訳者コメント:
すでに知られていることではあるが、オセルタミビルはインフルエンザウイルスを駆逐する薬剤ではなく、予防群でもインフルエンザウイルス陽性となっている点に注目されたい。また、国内からの報告ではオセルタミビル耐性ウイルスは極端に感染力が弱くなるとされていたが、ヨーロッパなどからオセルタミビル耐性の流行株も報告されるようになっており、高病原性鳥インフルエンザやまだ見ぬ新型インフルエンザの出現も踏まえて、細心の注意が必要である。

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