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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

術後感染症の症例対照研究におけるマッチング基準

Matching criteria in case-control studies on postoperative infections

M.E. Falagas*, E.G. Mourtzoukou, F. Ntziora, G. Peppas, P.I. Rafailidis
*Alfa Institute of Biomedical Sciences (AIBS), Greece

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 101-113

症例対照研究では一般に、主要な交絡因子の影響を補正するためにマッチングを行う。本研究では、マッチングが行われる頻度、およびその特異的な因子を明らかにするために、術後感染症に関する症例対照研究に関する入手可能なエビデンスを評価した。2006年8月までの該当する症例対照研究をPubMedで検索し、さらに個々の症例と対照とのマッチングを実施している研究の評価を行った。該当する研究は42件であり、これらを評価した。年齢をマッチングの基準としていた症例対照研究は、42件中27件(64.3%)であった。2番目に多く使用されていた基準は特定の手術手技であり、42件中17件(40.5%)であった。性別は、症例と対照患者のマッチング基準として42件中14件(33.3%)の研究で使用された。手術部位感染および/または他の術後感染症の発症リスク期間、すなわち手術から感染の診断までの期間は42件中9件(21.4%)の研究で使用され、手術日と、症例および対照患者に手術が必要となった主診断についても同様であった。外科医または外科チームが同一であることが7件の研究に使用されており(16.7%)、全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムのリスクスコアに従ったマッチングは5件の研究で使用された(11.9%)。今回の解析の結果から、術後感染症の症例対照研究のマッチングでは様々な特性が使用されていることが示された。特定の手術手技によるマッチングをより多くの研究で使用することは、この臨床研究領域における症例対照研究の内的妥当性の向上に役立つ可能性がある。

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監訳者コメント:
手術部位感染のリスク評価を行う場合に、どのような因子をそろえ、どのような因子を比較の対象として考慮すればよいかを考える上で、助けになる論文である。結論としては、手術手技は最低でもそろえたほうがよいということであるが、外科学の観点からは比較的妥当である。

完全静脈栄養または化学療法のための抗菌薬処理済み中心静脈カテーテル:システマティックレビュー

Anti-infective-treated central venous catheters for total parenteral nutrition or chemotherapy: a systematic review

B.S. Niel-Weise*, T. Stijnen, P.J. van den Broek
*Dutch Working Party on Infection Prevention, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 114-123

本システマティックレビューでは、完全静脈栄養または化学療法のために中心静脈カテーテル(CVC)を留置した患者のカテーテル関連血流感染(CRBSI)に対する抗菌薬処理済みCVCの効果について評価した。MedlineおよびCochrane Libraryで2007年10月14日までの無作為化対照試験を検索した。2名の判定者が独立して研究の質および抽出データを評価した。必要に応じてCRBSIのデータをランダム効果モデルにより統合し、適用となる場合にはサブグループメタアナリシスを実施した。対照群における抗菌薬処理済みCVCの効果に対するCRBSIリスクの影響を、二変量メタアナリシスモデルに基づくメタ回帰を用いて検討した。9件の試験を本レビューの対象とした。1件の試験からは、抗菌薬処理済みCVCにより、約9週間の期間中に化学療法を実施したCVC留置外来患者のCRBSIリスクが減少したことが示された。8件の試験では、平均約2週間にわたりCVCを留置した患者に対して、消毒薬処理済みCVCを使用することが望ましいとする全体的な有意な有益性は認められなかった。ほぼすべての試験に重大な方法論的欠点が認められたものの、抗菌薬処理済みCVCの効果とCRBSIの潜在的リスクとの間の関連を確認することはできなかった。したがって、化学療法または完全静脈栄養を受けている患者に対する抗菌薬処理済みCVCを用いたCRBSI予防については、これを推奨する十分な科学的エビデンスを入手することはできなかった。結論として、十分な衛生対策を実践しているもかかわらずCRBSIリスクが高い場合は、抗菌薬または消毒薬含浸CVCを使用すべきという米国疾病対策センター(CDC)の勧告は、集中治療室または周術期の患者に限定すべきである。

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監訳者コメント:
評価に耐えうる検索方法により文献を抽出し、メタアナリシスによって導き出された本論文の結論は、信頼性が高いと言える。CRBSIの予防には多面的な対策が必要であり、抗菌薬あるいは消毒薬浸漬カテーテルはその一部分に過ぎず、その効果を過大評価しないことが肝要かと考える。これはCRBSIに限らずすべての感染対策に言えることではなかろうか。

心臓手術患者に対するリアルタイムPCR法によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の術前スクリーニングの効果★★

Impact of preoperative screening for meticillin-resistant Staphylococcus aureus by real-time polymerase chain reaction in patients undergoing cardiac surgery

S. Jog*, R. Cunningham, S. Cooper, M. Wallis, A. Marchbank, P. Vasco-Knight, P.J. Jenks
*Derriford Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 124-130

即日PCR検査を用いた術前スクリーニング導入後に心臓手術を実施した患者における、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による手術部位感染発生数の有意な減少を報告する。これは、英国南西部の1つの心臓外科部門で実施した観察的コホート研究である。著者らは、2004年10月から2006年9月までの期間に心臓手術のために入院した患者1,462例を研究対象とした。2005年10月から2006年9月までの期間に、患者765例に対してIDI MRSA PCR検査を用いて術前スクリーニングを実施した。保菌者であると判定された患者に対して、鼻腔内ムピロシン軟膏および局所トリクロサンによる治療を5日間実施し、周術期予防的抗菌薬としてフルクロキサシリンの代わりにテイコプラニンを単回投与した。この治療群の心臓手術後の手術部位感染発生率を、2004年10月から2005年9月までの期間にスクリーニングなしで手術を実施した患者697例と比較した。PCR法によるスクリーニング導入後は、全体の手術部位感染発生率は3.30%から2.22%に低下し、同時にMRSA感染率が有意に減少した(相対リスクの減少0.77、95%信頼区間0.056~0.95)。心臓手術時にPCR法によるスクリーニングと同時にMRSA抑制を図ることは、通常の臨床診療で実施すること可能であり、その後のMRSA手術部位感染の有意な減少と関連する。

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監訳者コメント:
MRSAの保菌者を同定する積極的監視培養(active surveillance culture)は、MRSA感染のハイリスク患者において費用対効果に優れていることが大まかなコンセンサスになっている。本研究もそのような患者集団において、しかもPCR法による即日検査結果同定という手法を用いて、術後のMRSA感染症を激減させている。費用対効果についても述べられており、1例の術後MRSA感染症を減らすために113人の患者をスクリーニングすることが必要であり、その検査費用は日本円で約60万円であった。この費用をどう見るか、誰が負担するかによっても積極的監視培養の有用性については評価が分かれるところであろう。

新生児室における百日咳アウトブレイク:感染源であることが疑われる医療従事者の特定

Pertussis outbreak on a neonatal unit: identification of a healthcare worker as the likely source

E.M. Alexander*, S. Travis, C. Booms, A. Kaiser, N.K. Fry, T.G. Harrison, B. Ganpot, J.L. Klein
*St Thomas' Hospital, London, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 131-134

新生児室における百日咳アウトブレイクの調査および制御について報告する。疑わしい症例に対しては、細菌培養、PCR法、および血清学的検査により確定診断を行った。新生児2例が百日咳症例であることを特定し、遷延性咳嗽を有する看護師を感染源の疑いがあるとして追跡した。実施した感染制御上の介入は、医療従事者および患者に対する予防的な集団化学療法、および咳嗽を有する医療従事者の勤務からの除外などであった。PCR法の使用により、アウトブレイクの程度の迅速評価が可能となった。今回のアウトブレイクにより、若年成人における百日咳菌伝播が引き起こす入院中の新生児へのリスクが明らかになり、またアウトブレイク程度の迅速評価に対するPCR法の有用性が示された。英国では、すべての青少年に対するワクチン接種または医療従事者に対する選択的ワクチン接種などの予防戦略を考慮すべきである。

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監訳者コメント:
百日咳は日本でも昨年から今年にかけて注目されている感染症である。市中の人々に対する公衆衛生的施策(ある年齢層に対する普遍的ワクチン接種など)はともかく、医療従事者は麻疹や風疹同様に百日咳に対する免疫状態を確認するか、ワクチン接種を行う時期に来ているのかもしれない。診断法としてのPCR検査にも注目である。

香港におけるノロウイルスによる院内アウトブレイクの臨床的特徴

Clinical characteristics of nosocomial norovirus outbreaks in Hong Kong

O.T.Y. Tsang*, A.T.Y. Wong, C.B. Chow, R.W.H. Yung, W.W.L. Lim, S.H. Liu
*Princess Margaret Hospital, Hong Kong

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 135-140

ノロウイルスのアウトブレイクは世界各国で毎年発生しており、発生頻度はここ数年で増加している。2006年5月から7月に香港で広範なアウトブレイクが発生した。著者らの目的は、2006年5月1日から2006年7月31日の院内アウトブレイクの後向き観察研究を報告することである。患者218例、合計38件のノロウイルスアウトブレイク確定事例を特定した。患者の多くは高齢者で、平均年齢74.5歳(範囲3カ月~97歳)であった。そのうち62%は日常生活動作に全面介助もしくは部分介助が必要であり、83.9%は慢性基礎疾患を有し、56%に自力移動に制限があった。全体で97.2%の患者が下痢を呈したが、嘔吐があったのはそのうち46.3%のみであった。下痢の持続期間中央値は3日で、最長は24日であった。嘔吐の持続期間中央値は1日で、最長は15日であった。全患者の3分の1に発熱が認められた。RT-PCR法では患者の72.6%がノロウイルス陽性であった。結論として、ノロウイルスによる院内感染は自力移動に制限のある虚弱な高齢患者での発生が多く、これらの患者では症状の持続期間が長くなる可能性がある。

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大学病院の給水システムで長期間の二酸化塩素処理後に分離されたLegionella pneumophila血清群1分離株の分子疫学

Molecular epidemiology of Legionella pneumophila serogroup 1 isolates following long-term chlorine dioxide treatment in a university hospital water system

B. Casini*, P. Valentini, A. Baggiani, F. Torracca, S. Frateschi, L. Ceccherini Nelli, G. Privitera
*Universitaria Pisana, Italy

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 141-147

本論文では、ピサ大学病院(イタリア)の給水システムに適用した5年間のモニタリングプログラムの結果を報告する。このプログラムの目的は、飲料水システムへのレジオネラ(Legionella)属菌の定着を制御するための総合的な給水安全プランの効果を評価することである。給水ネットワーク中のレジオネラ菌の生態に対する安全プランの効果の評価は、持続的な二酸化塩素処理の実施前と実施中に分離したレジオネラ菌株の遺伝子多様性および塩素感受性を調べることにより行った。水の超塩素処理(hyperchlorination)を45カ月間実施した後も、Legionella属菌は依然として存在していたが、陽性の給水箇所は79.4%減少した。103 cfu/Lを超えるサンプルは83.8%減少し、平均菌数は94.6%の減少を示した。分離株の多くはレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清群1であった(全体の陽性率161/423、38%)。空間的・時間的基準に基づいて選択した分離株61株(陽性サンプルの37.9%)の分子タイピングを行った。その結果、3種類のL. pneumophila Wadsworthの流行型が病院環境内で循環および持続していることが判明し、これらは特徴的な対立遺伝子および電気泳動プロファイルと、異なる塩素感受性を示した。この2種類のうち1種類は優勢で、衛生管理レジメン実施前から存在しており、別の1種は水処理開始から3年後に分離され、両種とも塩素耐性であった。二酸化塩素はL. pneumophila根絶には効果がなかったが、採用したリスク管理プランは院内レジオネラ症の症例のさらなる発生を予防したと考えられた。

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監訳者コメント:
異なる水質管理基準を用いている国の文献ではあるが、水道水の汚染に対する警鐘およびその管理方法に関する示唆を与えてくれる論文である。

イタリアの病院従事者における抗レジオネラ抗体保有率

Prevalence of anti-legionella antibodies among Italian hospital workers

P. Borella*, A. Bargellini, I. Marchesi, S. Rovesti, G. Stancanelli, S. Scaltriti, M. Moro, M.T. Montagna, D. Tato, C. Napoli, M. Triassi, S. Montegrosso, F. Pennino, C.M. Zotti, S. Ditommaso, M. Giacomuzzi
*University of Modena and Reggio Emilia, Italy

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 148-155

本研究では、長期にわたりレジオネラ汚染を認める病院の医療従事者の抗レジオネラ抗体保有率を評価した。病院はイタリア北部のミラノとトリノ、およびイタリア南部のナポリとバーリに位置する。医療従事者、医歯学生、および血液ドナーについて抗体保有率および抗体力価を評価した。全体で被験者の28.5%が抗体陽性であり、最も検出頻度が高かったのはレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清群7~14であった。被験者の地域が異なると、レジオネラ抗体の血清保有率および血清型に大きな差が認められた。ミラノでは医療従事者の抗体保有率が血液ドナーよりも有意に高かったが(35.4%対15.9%、P<0.001)、ナポリでは両群とも高い抗体保有率を示し(48.8%対44.0%)、L. pneumophila血清群1~6の抗体の割合が高かった。バーリでは歯科従事者のほうが事務職員よりも血清陽性率が高かったが、歯科部門の給水装置の汚染を避けるために毎日消毒処置を実施しているトリノではそのような傾向はなかった。抗体保有とレジオネラ症の危険因子の存在との間に関連は認められず、肺炎および/またはインフルエンザ様症状との間にも関連は認められなかった。結論として、レジオネラ抗体保有は病院環境中での職業暴露と関連すると考えられるが、疾患との関連を示すエビデンスは得られなかった。

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監訳者コメント:
気候の影響で、レジオネラ汚染が少ないイタリア北部との比較があれば、なお面白かったと思う。

病院の環境表面の清掃の評価のためのATPベンチマークの修正

A modified ATP benchmark for evaluating the cleaning of some hospital environmental surfaces

T. Lewis*, C. Griffith, M. Gallo, M. Weinbren
*University of Wales Institute, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 156-163

病院清掃は、患者、メディア、および世論の注目を集め続けている。英国では病院清掃の評価は依然として主に目視検査によって行われているが、この方法は判断を誤る可能性がある。このため、表面の清浄度を評価するためのより客観的な手法が求められている。病院清掃の管理を改善するため、アデノシン三リン酸(ATP)と微生物学的分析の併用が提唱されており、検査と装置の併用1回あたりの一般的なATPベンチマーク値は500相対発光量(RLU)とされている。本研究では、1,300床の教育病院でルーチンの清掃プロトコールおよび変更後の清掃プロトコールを実施した後に同様の併用検査を行い、清掃の効果を評価した。ATP検査の結果に基づいて、本研究で使用した種々の表面に対する合否判定のベンチマークを250 RLUへ強化することを提唱する。この値は修正した最良の清掃方法によってルーチンに達成することができた。また修正した清掃方法により表面細菌数の減少が認められ、例えば好気性細菌コロニー数は<100 cfu/緕から<2.5 cfu/緕に、黄色ブドウ球菌数は最大2.5 cfu/緕から<1 cfu/緕に減少した(それぞれ、サンプルの95%が到達した数値)。ベンチマーキングは質改善の促進につながり、本来の提唱値である500 RLUと修正値である250 RLUのいずれも、病院がベンチマーキングの過程の一環として使用できる。これらの値は国民保健サービス(NHS)での使用が見込まれるスチーム清掃やマイクロファイバークロスなどの新しい清掃方法の評価にも使用することができる。

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監訳者コメント:
このような精密検査は、各病院がルーチンに行う検査ではなく、quality controlの監査の一環として、年に1から2回程度実施するときに用いる。このほかには、隔離室やClostridium difficile感染症後の病室など、terminal cleaningの完了評価に用いるとよいであろう。このような詳細な検査が生まれる背景には、環境がリザーバーとなるC. difficileAcinetobacter baumannii感染症が欧州を中心に猛威を振るっていることが考えられる。

陽性反応的中率、陰性反応的中率、および有病率による感度と特異度の算出:病院感染サーベイランスシステムへの適用

Estimating sensitivity and specificity from positive predictive value, negative predictive value and prevalence: application to surveillance systems for hospital-acquired infections

H. Kelly*, A. Bull, P. Russo, E.S. McBryde
*Victorian Infectious Diseases Reference Laboratory, Australia

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 164-168

感度、特異度、陽性反応的中率(PPV)、および陰性反応的中率(NPV)は、通常は診断検査関連用語である。これらの概念は診断法からサーベイランスシステムにまで拡大されているが、サーベイランスシステムは診断検査と同様ではない。サーベイランスシステムの感度と特異度を算出する場合には、PPV、NPV、および有病率のみが判明しているという状況があり得る。本研究の目的は、PPV、NPV、および有病率により感度と特異度を算出する2種類の方法の同等性を示すことである。感度および特異度の公式は第一原理に基づいて算出し、標準的な分割表を用いた計算値と比較した。この方法について、冠動脈バイパス術後の手術部位感染症例の標本調査を例として説明する。標本から算出した有病率は母集団の有病率の算出値であり、この値は、PPV、NPV、および有病率の関数である感度と特異度の公式の中で用いた場合にのみ、分割表からの算出と一致する。この原理の一般的証明は本稿の付録に記載した。PPV、NPV、および有病率のみが判明している場合には、サーベイランスシステムの感度と特異度は、2種類の方法で同等の算出値を得ることが可能である。

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職員の認識と施設による報告:重症急性呼吸器症候群(SARS)アウトブレイクから3年後のブリティッシュコロンビア州およびオンタリオ州の感染管理遵守に関する2つの見解

Staff perception and institutional reporting: two views of infection control compliance in British Columbia and Ontario three years after an outbreak of severe acute respiratory syndrome

E. Bryce*, R. Copes, B. Gamage, K. Lockhart, A. Yassi
*University of British Columbia, Canada

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 169-176

安全な業務遂行の促進を目的とした感染管理および労働衛生のために利用可能なリソースの調査は、医療従事者の認識についての調査と比較すると、ほとんどない。本研究の目的は、重症急性呼吸器症候群(SARS)アウトブレイク後に、感染管理および労働衛生のために利用可能なリソースを特定し、これを医療従事者のリソースに対する認識と比較することである。感染管理および労働衛生のためのリソース調査と、医療従事者が記入した質問票を、施設内の観察調査の結果と比較した。医療従事者は、将来のSARSのような事例を防止するには防御計画が利用可能であると考えていたが、この調査により多くの施設では防御策が存在しないことが判明した。SARS後の労働衛生および感染管理のためのリソースはいずれも不十分であり、さらに労働衛生の専門家は特にブリティッシュコロンビア州で不足していた。医療従事者が認識している利用可能なリソースと、実際に施設で利用可能なリソースの間には乖離がみられる。感染管理および労働衛生の専門家は、コミュニケーションを重視する必要がある。

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監訳者コメント:
予算と人材の確保については、事前に監査を行い、有事に備えて準備を整えておく必要がある。

監訳者注:
リソース(resource):投入できる予算と人材のこと。

多剤耐性大腸菌による慢性創感染に対する簡便かつ効果的な治療法★★

A simple and effective approach for the treatment of chronic wound infections caused by multiple antibiotic resistant Escherichia coli

B.S. Nagoba*, B.J. Wadher, A.K. Rao, G.D. Kore, A.V. Gomashe, A.B. Ingle
*MIMSR Medical College, India

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 177-180

抗菌薬耐性は、今日の治療上の重要な問題となっている。広域抗菌スペクトルを有する新規抗菌薬が登場しているにもかかわらず、感染部位から多剤耐性病原体を除去することは困難である。本研究では、多剤耐性大腸菌(MAREC)による慢性創感染症の治療として、クエン酸を単独の抗菌薬として用いる方法を開発した。MARECが培養陽性である慢性創感染34症例を対象とした。MARECに対するクエン酸の抗菌効果をin vitroの液体希釈法で評価した。3%クエン酸ジェルを各創傷に1日1回、創傷が完全に治癒するまで塗布した。最小発育阻止濃度が1,500~2,000 μg/mLのクエン酸により、全34分離株の発育が阻止された。3%クエン酸を創傷部位に7~42回、局所的に塗布した結果、多剤耐性大腸菌は感染部位から除去され、全34例の創傷が治癒した。この治療法は簡便で信頼性が高く、毒性がなく、効果的である。したがって、多剤耐性大腸菌による創感染症の治療には費用対効果の高いクエン酸の使用が推奨される。

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監訳者コメント:
MARECのほかにも、例えばMDRPやESBL産生グラム陰性桿菌などでは同様の効果があるのか、今後の検討に期待したい。個人的には、大変好きなアプローチです。

手指消毒製品の2種類の皮膚忍容性の評価法を比較するフィールド試験

Field test comparison of two dermal tolerance assessment methods of hand hygiene products

R. Girard*, E. Carre, S. Pires-Cronenberger, M. Bertin-Mandy, M.C. Favier-Bulit, C. Coyault, S. Coudrais, M. Billard, A. Regard, A. Kerhoas, M.L. Valdeyron, B. Cracco, P. Misslin
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2008) 69, 181-185

本研究の目的は、フィールド試験に適した予備試験法を選択するために、手指消毒製品に対する2種類の皮膚忍容性の評価法の感度および作業負荷を比較することである。志願した病院の12部門で、観察者評価法と自己評価法を比較した(2005年から2006年の秋・冬)。2週間の休止期間を挟む3回の3週間の調査期間に、ルーチンで日常使用している製品を再導入した。観察者評価法では、乾燥と過敏性を4点スケールで採点した。自己評価法では、使用者が外観、無傷性、保湿性、および感覚を、ビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて10点の数値スケールに換算して評価した。11種類の製品(石けん)を調べた(観察者評価では250件中223件、自己評価では251件中131件で完全な報告が得られた)。忍容性は観察者評価では2種類の製品、自己評価では4種類の製品が、ルーチンで使用している製品よりも有意に低かった。製品を忍容性で分類したところ、2種類の評価法の結果に有意差は認められなかった(Fisher検定P=0.491)。両評価法に共通の症状(乾燥)は、2種類の評価法の間で強い相関が認められた(Spearmanの順位相関係数の検定P=0.032)。作業負荷は観察者評価法のほうが大きかった(作業時間は観察者288時間+予防チームおよび薬剤師122時間に対して、自己評価法では予防チームおよび薬剤師152時間)。結論として、自己評価法のほうが予備試験に適していると考えられたが、完全回答された自己評価票の回収率が低いため、回答者への啓発活動にさらに多くの時間を充当するべきである。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.