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★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

新生児集中治療室におけるリスク補正された病院感染サーベイランス:システマティックレビュー

Risk-adjusted surveillance of hospital-acquired infections in neonatal intensive care units: a systematic review

P. Phillips*, M. Cortina-Borja, M. Millar, R. Gilbert
*UCL Institute of Child Health, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 203-211

菌血症発生率を新生児集中治療室(NICU)間で比較することにより、効果的な感染制御が実施されている医療施設を特定し、その実践を他のNICUと共有することができる。公正な比較を行うには、乳児の感受性の差や感染症を引き起こす可能性のある侵襲的処置の強度の差異を施設間で調整して、感染症発生率をリスク補正する必要がある。NICU間の菌血症発生率比較のためのリスク補正法の調査を、発表文献のほかに、地域や国のNICU感染症モニタリングシステムについて実施した。1か所以上のNICUにおけるリスク補正した菌血症発生率の研究報告を特定するためPubMedとEMBASEを検索した。インターネット検索により西側先進国のNICU感染症モニタリングシステムを特定した。適格基準に合致した9件すべての研究において、リスク補正によりNICU間の菌血症発生率のばらつきは減少していたが、消失することはなかった。研究報告と地域モニタリングシステムのいずれも、乳児の感受性の補正については一般的に出生時の測定項目によって層別化されていた。NICU入室期間および侵襲的処置の補正には、延べ中心静脈カテーテル日数などの器材留置の日数に基づいた発生率の報告を使用していた。NICUにおける感染症モニタリングの方法にはばらつきがあった。出生時の測定項目の補正では乳児の感受性に関する入室期間の変動に対応することはできず、延べ器材留置日数の補正では当該器材を使用していない乳児のリスクが適切に反映されない。今後の研究では、NICU入室期間を通して、乳児全員のリスクのばらつきに対応すべきである。

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監訳者コメント:
サーベイランスの結果はそれぞれの施設における継続的な質改善のための指標としては極めて重要であるが、施設間で比較しようとするとリスク調整が難しく、不用意に複数施設の結果を並べると数字が一人歩きしてしまう危険性がある。

手術時の手洗い:われわれは手洗いによる二酸化炭素排出を減らすことができるか?

Surgical scrubbing: can we clean up our carbon footprints by washing our hands?

J.E.A. Somner*, N. Stone, A. Koukkoulli, K. M. Scott, A. R. Field, J. Zygmunt
*Gartnavel General Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 212-215

地球の気候は変動しており、その原因は人間の活動であるとする科学的コンセンサスが形成されつつある。したがって、われわれは各々に自らの生活が環境にどのような影響を及ぼしているのかを省察しなければならない。この研究の目的は、手術時の手洗いによる水の使用量の調査である。技術改革によって、より「環境にやさしい」手洗い方法がもたらされるかどうかを検討するために、2種類の給水システムを評価した。2か所の手術室で外科医、助手、手術室看護師などからなる10名以上を観察した。各手術室で25件ずつの手術時の手洗いを観察し、水道の使用時間を記録した。手術時手洗いにおける水道使用時間の平均は、ガートナベル総合病院で2分23秒[最長4分37秒、最短49秒、標準偏差(SD)55秒]、ストブヒル病院は1分7秒(最長2分25秒、最短19秒、SD 33秒)であった。「水道使用」平均時間(秒)は、ガートナベル総合病院のほうがストブヒル病院より有意に長かった[t(39.5)=P<0.001]。蛇口の構造の相違により、手術時手洗い1回につき、正味温水5.7 L、熱量約600 kJ、二酸化炭素80 gを節減することができた。手術時手洗いは医療環境の各所で日々実施される行為である。簡易な技術的解決策により、手洗い方法の修正と、それによる水およびエネルギー使用量の削減がもたらされるとともに、手術時の手洗いによる二酸化炭素排出が減少する。

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監訳者コメント:
なるほどエコなアプローチですが、やはり、その結果で患者さんにメリットがあったかどうかを知りたいように思います。環境に優しく患者に厳しい、とか、外部評価に優しく現場に厳しい、とかいうような感染対策は避けたいところです。もちろんエコは大事ですが。

モニタリング機能を有する装着式手指衛生機器の受容性

Acceptability of a wearable hand hygiene device with monitoring capabilities

V.M. Boscart*, K.S. McGilton, A. Levchenko, G. Hufton, P. Holliday, G.R. Fernie
*Toronto Rehabilitation Institute, Canada

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 216-222

医療施設内の感染伝播は患者および医療従事者にとって重大な脅威であり、その最も有効な予防法の1つは適切な手指衛生である。カナダ・オンタリオ州にあるトロント・リハビリテーション研究所の研究チームは、手洗いの頻度の増加を目的として、モニタリング機能を有する装着式手指衛生システムを開発した。今回の大規模試験は、手洗いのモニタリング機能と注意喚起機能を有する電子手指衛生機器が手指消毒のコンプライアンスを上昇させるという仮説に基づいており、本稿ではその第一期の知見を報告する。第一期の試験では、臨床現場における装着式電子手指洗浄機器の受容性と使い勝手に焦点を当てた。最初の試作品に対する医療従事者のフィードバックにより、研究チームはこの技術開発を継続すべきであるとするエビデンスを得た。

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監訳者コメント:
手指衛生の遵守率向上は感染対策にとって永遠の課題ですが、新しいテクノロジーを応用した管理方法というのは興味深いところです。テクノロジーの進歩により社会が引き摺られるのではなく、進むべき未来のために役立つテクノロジーの革新であってほしいと思います。

一般集中治療室の全死亡率に対する院内感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌菌血症の寄与

Contribution of acquired meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia to overall mortality in a general intensive care unit

D.S. Thompson*, R. Workman, M. Strutt
*Medway Maritime Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 223-227

11年間に患者77例が集中治療室(ICU)への入室5日目以降にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症を発症した。このうち10例にはMRSA陽性歴がなく、13例は入室時のスクリーニング結果が陽性であり、54例は血液培養が陽性となる以前にICUで実施した初回検査でMRSA陰性であった。この54例は、入室5日目以降にMRSAに感染した267例の20.2%[95%信頼区間(CI)15.6~25.0%]を占めた。MRSA菌血症患者77例の死亡率は57.1%(95%CI 46.0~68.2%)であった。この77例中19例には、血液中に他の病原体の増殖が認められた。MRSA菌血症のみの患者それぞれに対して、診断結果およびAcute Physiological and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIの初回スコアに基づいて、MRSA菌血症がない対照患者5例ずつをマッチさせた。死亡率は菌血症患者[53.6%(95%CI 40.5~66.7%)]のほうが対照患者[31.8%(95%CI 26.3~37.3%)]より高く[相対リスク(RR)1.69(95%CI 1.25~2.26)、P<0.01]、死亡率の差の絶対値は21.8%(95%CI 8.0~40.1%)であった。この推定値を77例全例に適用すると、ICUで感染したMRSA菌血症によって17例(95%CI 6~31例)が死亡し、全入室患者の院内死亡率30.1%に対する寄与は0.3%(95%CI 0.1~0.6%)であることが示唆される。MRSA菌血症発生率はICU在室期間の延長に従って上昇し、25日以上ICUに在室した198例の死亡率37.9%に対するMRSA菌血症の寄与は3.1%(95%CI 1.1~5.7%)と推定された。これらのデータから、長期在室している患者の初期のMRSA保菌/感染を予防することの重要性が強調される。

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監訳者コメント:
ICU長期在室がMRSA菌血症による死亡率を上昇させることが示された。ICUにおけるハイ・リスク群として認識する必要があるであろう。

ARMedプロジェクトに協力する地中海南東地域の病院による感染制御および抗菌薬管理業務の報告★★

Infection control and antibiotic stewardship practices reported by south-eastern Mediterranean hospitals collaborating in the ARMed project

M.A. Borg*, B.D. Cookson, D.Gur, S. Ben Redjeb, O. Rasslan, Z. Elnassar, M. Benbachir, D.P. Bagatzouni, K. Rahal, Z. Daoud
*Mater Dei Hospital, Malta

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 228-234

地中海南東地域の病院から報告された多剤耐性菌の保菌状況から、保菌に寄与すると考えられる因子を特定して制御対策の立案を推進する必要性が強調される。今回、地中海地域抗菌薬耐性サーベイランスおよび制圧(ARMed)プロジェクトに参加・協力している病院の感染制御および抗菌薬管理業務を評価するため、構造化質問票による調査を行った。合計45か所の病院(依頼した病院の78.9%)から質問票への回答を得た。60%の病院が、利用可能病床数が入院患者の受け入れに対応しきれない過密状態を経験したと回答しており、利用可能病床数の不足のために多剤耐性菌保菌患者の隔離が困難となる事態を生じるとの回答は62%であった。手指衛生として、主に非薬用石けんあるいは消毒用石けんによる手洗いを行っている病院が多かった。特定された問題点としては、固形石けん(28.9%)や布製タオル(37.8%)への依存のほか、シンクの位置が病床から離れていること(66.6%)などがあった。手指消毒剤として主に擦式アルコール製剤を使用していた病院は、わずか7%であった。適切な抗菌薬使用のためのプログラムは、一部の病院でしか実施されておらず、例えば抗菌薬処方に関するガイドラインがあるとの回答は33.3%、処方した医師に耐性菌発生率のフィードバックを行っている病院は53.3%であった。施設単位または病棟単位で抗菌薬使用量の監査を実施しているのは回答した病院の37.8%であった。南東地中海地域の病院では、多剤耐性菌保菌患者の隔離の改善、擦式アルコール製剤の使用拡大を図ることによる手指衛生の強化、および効果的な抗菌薬管理プログラムの導入を目的とした多面的アプローチを奨励すべきである。

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監訳者コメント:
地中海地域の病院ではアルコールによる手指衛生もまだ普及が遅れているようです。今日この時にもいろいろな国の現場でいろいろな努力がなされているのですね。世界の仲間とともに頑張ろうという、国際感染管理協会IFICを代表される Dr. Borgらしい報告だと思います。ちなみにマルタの基幹病院はSt. Luke HospitalからMater Dei Hospitalに変わったらしく、Dr. Borgも病院を移られたようです。

オスロのナーシングホームにおける感染制御とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌★★

Infection control and meticillin-resistant Staphylococcus aureus in nursing homes in Oslo

I. Sie*, M. Thorstad, B.M. Andersen
*Diakonova University College, Norway

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 235-240

医療関連感染減少のためには医療従事者の役割が重要であるが、依然として病原微生物に感染あるいは保菌している医療従事者が他者に伝播させている可能性がある。医療環境における感染制御に関するノルウェーの方針は、患者と医療従事者の両者を対象とした感染制御プログラムを重視している。この研究では、2006年から2007年の期間に、オスロのナーシングホーム55か所のうち42か所の医療従事者を対象として、感染制御プログラムの実施に関する調査を参加した。看護職員[准看護師(enrolled nurse)および看護補助員(assisting staff)]、病棟看護師(ward sister)、施設管理者のそれぞれを対象とした3種類の質問票を使用した。ナーシングホームの70%近くはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染・伝播に対する制御策を講じており、また約60%はMRSA感染の感染源を追跡するための方策を講じていた。病棟看護師の約80%は、創傷が治癒しないとき、患者が国外の病院から転院したとき、患者がMRSA感染患者と同室したとき、または患者にMRSA陽性歴がある場合に、患者のMRSA検査を行っていた。また病棟看護師の約40%は、慢性尿路感染症患者または他院からの転院患者にMRSA検査を行っていた。看護職員の約20%は、MRSA陽性患者を看護した経験があった。国外の医療施設での勤務経験のある職員は4%のみ、MRSAの検査を受けたことがある職員はごく少数であった。回答した看護職員の約20%が同時に複数の施設に勤務していた。

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監訳者コメント:
どのようなときにMRSA検査を実施するのか、MRSAが極めて少ないノルウェーからの報告である。わが国では黄色ブドウ球菌の多数が MRSAとなってしまっている日常であるが、ノルウェーを含む北ヨーロッパ諸国ではMRSAは“(日本などの)国外から持ち込まれる病原体”と認識されていることにも注意を払うべきである。

カテーテル留置中の血液悪性腫瘍患者における汚染されたクロルヘキシジンによるバークホルデリア・スタビリス(Burkholderia stabilis)菌血症の院内アウトブレイク

Hospital outbreak of Burkholderia stabilis bacteraemia related to contaminated chlorhexidine in haematological malignancy patients with indwelling catheters

S.T. Heo*, S.J. Kim, Y.G. Jeong, I.G. Bae, J.S. Jin, J.C. Lee
*Gyeongsang National University School of Medicine, Korea

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 241-245

バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)complexは日和見病原体であり、院内アウトブレイクの原因となることがある。本稿では、血液悪性腫瘍患者にみられた汚染グルコン酸クロルヘキシジン溶液に関連するB. cepacia complexによる菌血症のアウトブレイクを報告する。B. cepacia complex分離株8株が、韓国の癌センター病院の同一病棟の入院患者から分離された。さらに、この病棟で使用している0.5%グルコン酸クロルヘキシジンからB. cepacia complex分離株3株が分離された。これらの分離株はバークホルデアリア・スタビリス(Burkholderia stabilis)と同定され、パルスフィールド・ゲル電気泳動法で同一のパターンを示した。B. stabilis菌血症患者はすべて静脈カテーテルを留置しており、これらのカテーテルはクロルヘキシジンで消毒処理されていた。汚染源が特定された後、消毒薬の監視培養による厳格な管理強化が実施された。それ以降、当病院ではB. stabilis感染は認められていない。

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監訳者コメント:
消毒薬が汚染源になるという、あってはならない事態による感染アウトブレイクの事例である。国内でも過去にポビドンヨード製剤などの汚染事例があり、製品ならびに院内製剤においても常に留意する必要がある。

新生児集中治療室におけるRSウイルスのアウトブレイク予防のためのパリビズマブと感染制御対策との併用

Experience with the use of palivizumab together with infection control measures to prevent respiratory syncytial virus outbreaks in neonatal intensive care units

H. Kurz*, K. Herbich, O. Janata, W. Sterniste, K. Bauer
*SMZ Ost Danube Hospital, Austria

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 246-252

RSウイルスは一般小児病棟では院内アウトブレイクの原因となる頻度が高く、しばしば新生児集中治療室(NICU)でもアウトブレイクを引き起こす。従来の感染制御対策ではRSウイルスの拡散を予防できないことがあり、特に早産児や新生児に重大な疾患をもたらし得る。本稿では、早産児1例からのRSウイルス検出後に、NICUでのアウトブレイクを予防した経験について報告する。初発症例は34日齢の早産児で、感染症の臨床症状を呈し、臨床試料からRSウイルスが検出された。病棟には当時、当該症例を含めて11例の患児が入室していた。RSウイルス陽性患児を隔離し、病棟を閉鎖して感染制御対策を実施した。患児2例は他院に転院した。すべての患児にパリビズマブ15 mg/kgを筋肉内投与したところ、新規の発症はみられなかった。その後の鼻腔分泌液のRSウイルス検査はすべて陰性であった。従来の感染制御対策にパリビズマブを併用することにより、当NICUでのRSウイルス拡散を予防できたと考えられた。NICUでのRSウイルスによるアウトブレイク予防戦略はすべて、ルーチンの感染制御対策の強化を推奨している。パリビズマブの使用に関する推奨事項には、全リスク乳児に対する月1回の予防投与から特定症例のみに対する予防投与まで幅がある。現在、NICUでのパリビズマブの使用に関するガイドライン、またはRSウイルスによるアウトブレイク制御に関するガイドラインは存在しない。

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監訳者コメント:
パリビズマブはわが国の小児医療においても広く採用されている。投与は一定の条件を満たした乳幼児にのみ認められている。日本では2002年から承認・市販されている(商品名:シナジス)。在胎期間28週以下の早産で12か月齢以下の新生児・乳児、在胎期間29~35週の早産で6か月齢以下の新生児・乳児、および過去6か月以内に気管支肺異形成症(BPD:broncho-pulmonary dysplasia)の治療を受けた24か月齢以下の新生児・乳児・幼児に対して、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制のために用いられる。用法としては、RSウイルス流行期を通して月1回のペースで筋肉注射する。なお、2005年10月に効能・効果が追加され、24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児・乳児・幼児に対しても、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制のために用いられるようになっている。

小児血液・腫瘍内科における汚染水の供給によるマイコバクテリウム・ムコゲニカム(Mycobacterium mucogenicum)菌血症アウトブレイク

Outbreak of Mycobacterium mucogenicum bacteraemia due to contaminated water supply in a paediatric haematology-oncology department

G. Livni*, I. Yaniv, Z. Samra, L. Kaufman, E. Solter, S. Ashkenazi, I. Levy
*Schneider Children’s Medical Center of Israel, Israel

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 253-258

6か月間にわたり小児血液・腫瘍内科病棟の患児5例に発生したマイコバクテリウム・ムコゲニカム(Mycobacterium mucogenicum)による血流感染症のアウトブレイクについて報告する。病棟フロアの蛇口から採取した試料により、自動水栓が感染源と疑われることが示唆され、分子的手法により分離株の同一性が確認された。水中の塩素濃度が断続的に低下しており、これが細菌増殖に寄与した可能性がある。感染管理の実施状況を調査したところ、小児の中心静脈カテーテルの出口部が入浴中に適切に覆われておらず、そのため中心静脈カテーテルへの細菌の定着が促進されたことが判明した。汚染された蛇口を交換し、水の至適な塩素処理を行い、中心静脈カテーテルの出口部を不透水性ドレッシングで適切に覆うことにより、アウトブレイクは終息した。本研究により、水中の病原体によるアウトブレイクで調査すべき3つの因子、すなわち感染源、給水経路、および感染管理の実施状況の重要性が明らかになった。

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監訳者コメント:
非結核性抗酸菌の一種であるMycobacterium mucogenicumによる感染アウトブレイク事例の紹介である。内視鏡洗浄器や透析設備など、医療環境における非結核性抗酸菌の現況は十分に解明されているわけではない。今後さらなる検討が必要である。

病院敷地内のビル解体中の粒子状物質および真菌胞子の環境サンプリング調査

Environmental sampling of particulate matter and fungal spores during demolition of a building on a hospital area

D. Hansen*, B. Blahout, D. Benner, W. Popp
*University Hospital Essen, Germany

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 259-264

病院に隣接した解体作業や改築作業には真菌の空気感染のリスクがある。2005年11月から2006年3月に、エッセン大学病院の敷地内の3階建ての古い建物が解体された。塵埃曝露を予防するために、不透水性プラスチックホイルで建物を覆い、掘削機を用いて建造物を機械的に破砕した。水噴射により塵埃放出を最小限に抑えた。解体作業に伴う塵埃放出により患者に感染リスクが生じるかどうかを判定するために、解体前と解体中の空気中の粒子濃度と真菌濃度を測定した。建物周囲の7か所で空気サンプリングを行い、同時に気象状況を監視した。超微粒子、および0.3 μm以上、0.5 μm以上、1 μm以上の粒子の濃度は、解体中のほうが解体前よりも有意に高かったが、その倍率は低かった(超微粒子1.6倍、0.3 μm以上の粒子1.6倍、0.5 μm以上の粒子2.9倍、1 μm以上の粒子3.3倍)。37℃で培養可能なかび類の濃度は両期間で差はなかった(解体前の中央値66 cfu/m3、解体中の中央値80 cfu/m3)。22℃で増殖したかび類の濃度は、気温および湿度と有意な相関を示し、解体前(中央値510 cfu/m3)のほうが解体中(中央値210 cfu/m3)より有意に高かった。結論として、病院敷地内での解体作業中の真菌による患者の感染リスクは、防御策が実施されていれば上昇しない。

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監訳者コメント:
発生源での塵埃対策をするというまさに逆転の発想である。医療施設内での防護と合わせると最も効果的な予防策といえよう。

病院環境表面からの細菌除去:超極細繊維製布地と通常の布地の実験室での比較

Removing bacteria from hospital surfaces: a laboratory comparison of ultramicrofibre and standard cloths

M.W.D. Wren*, M.S.M. Rollins, A. Jeanes, T.J. Hall, P.G. Coen, V.A. Gant
*University College London Hospitals NHS Trust, UK


Journal of Hospital Infection (2008) 70, 265-271

超極細繊維(ultramicrofibre)製布地と通常の布地を水のみで湿らせて、病院環境の種々の表面から数種類の病院感染起因菌を除去する能力を比較した。著者らは、超極細繊維製布地の汚染除去能力は、あらゆる表面において通常の布地よりも一貫して優れていることを明らかにした。この結果は、実際の汚染をシミュレートするためにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)とウマ血清含有PBSのいずれを用いて細菌を各表面に塗布しても同様であった。布地が表面から細菌を除去する性能の評価は、接触培地法、コロニー形成、スワブ試料のATPバイオルミネッセンス法により行った。その結果、病院環境での超極細繊維製布地の使用可能性が示唆された。しかし、洗浄剤および殺生物剤を使用しないことを前提として開発されたこの布地が、病院環境でどの程度安全かつ有効に活用または再利用できるかを正確に判定するには、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント:
超極細繊維による院内清掃は現在注目を集めている分野である。ATPバイオルミネッセンス法による検証も興味深い。経済性と清浄効果のバランスがとれれば、十分に実用製品が市場に投入されるであろう。

高齢者施設での夏季インフルエンザアウトブレイク:予防策の適用

Summer influenza outbreak in a home for the elderly: application of preventive measures

J. Gaillat*, G. Dennetiere, E. Raffin-Bru, M. Valette, M.C. Blanc
*Annecy Central Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 272-277

ナーシングホームでは、ワクチン接種を行ってもインフルエンザのアウトブレイクが生じることがあるが、夏季の発生はまれである。2005年の酷暑の中で生じたインフルエンザアウトブレイクについて報告し、早期介入と適切な感染制御対策を進めるための迅速診断法の有用性について検討する。入居者81名(平均年齢88歳)および医療従事者48名のナーシングホームでアウトブレイクが発生し、7日間持続した。感染した入居者32例(39.5%)および医療従事者6例(12.5%)に、主要な症状として発熱、咳嗽、および喘鳴が認められた。インフルエンザが疑われ、4例の検体の迅速診断検査によりインフルエンザであることが暫定的に確認された。さらに、培養およびRT-PCR法により、入居者10名中7例のアウトブレイクが確認された。ウイルス株は、2004年から2005年の冬季の流行株であったH3N2A/New York/55/2004に類似していた。アウトブレイクが確認された時点で、地域の保健衛生当局およびナーシングホーム職員の代表者による危機管理チームが設立された。アウトブレイク制御のため、患者の隔離や、入居者・職員全員のサージカルマスク着用など一連の対策を実施した。症状を呈した入居者32例中19例および医療従事者6例中5例にオセルタミビルを治療投与し、入居者47名と残りの医療従事者42名には曝露後の予防投与を実施した。アウトブレイクは48時間以内に終息した。症状を呈した入居者の死亡率は15.6%であった。アウトブレイク前のインフルエンザワクチン接種率は、入居者で93.5%、医療従事者で41.7%であった。迅速診断検査により、速やかな対応が可能となり、感染制御対策が進められた。

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監訳者コメント:
迅速診断検査の活用の幅が広がり、多くの感染症で季節性の壁を越えた発生事例が報告され始めてきている。臓器別の網羅的なスクリーニング検査キットが将来的には望まれる。

Wilkins-Chalgren培養液中への同種移植組織の接種による静菌性試験

Bacteriostasis testing on allograft tissue inoculated in Wilkinse-Chalgren broth

V. Saegeman*, N. Ectors, D. Lismont, B. Verduyckt, J. Verhaegen
*UH-KU Leuven, Belgium

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 278-283

組織バンクでは、組織検体の抗菌薬による除菌後に、生菌がないことを確認するために培養検査を行う。そのため、除菌した組織に残留抗菌薬が付着し、濃縮培養液に混入する可能性がある。この場合、培養が阻害され、偽陰性となることがある。本研究の目的は、骨および腱の組織片を接種したWilkins-Chalgren培養液の静菌作用の測定である。組織処理の過程にある2種類の組織片を、ゲンタマイシン含有溶液に浸漬した。米国薬局方記載の静菌性試験法に従って、試験菌株としてゲンタマイシン感受性緑膿菌ATCC 15442株、黄色ブドウ球菌ATCC 6538株、枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC 6633株、対照菌株としてゲンタマイシン耐性カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 90029株を使用した。培養液中の残留ゲンタマイシン濃度を測定し、ブドウ球菌懸濁液を接種したミューラーヒントン寒天培地にゲンタマイシン浸漬組織を置床した。試験菌株では53~75%に静菌作用が認められた。静菌作用は腱組織片(85%)のほうが骨組織片(28%)よりも有意に高率に認められた。残留ゲンタマイシン濃度が最も高かったのは、腱組織片を接種した培養液であった。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.