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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

再発性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症のリスク因子の評価のためのメタアナリシス

Meta-analysis to assess risk factors for recurrent Clostridium difficile infection

K.W. Garey*, S. Sethi, Y. Yadav, H.L. DuPont
*University of Houston College of Pharmacy, USA

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 298-304


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症は、病院感染下痢症の原因として最も頻度が高い。患者の15~20%にC. difficile感染症が再発すると推計されている。C. difficile感染症再発のリスク因子に注目した研究はわずかである。C. difficile感染症再発のリスク因子を評価するために、観察研究および無作為化対照試験を対象としたメタアナリシスを実施した。PubMedデータベースを使用して、検索語「C. difficile関連下痢症(Clostridium difficile associated diarrhoea)」または「偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis)」により研究を特定した。観察研究と無作為化対照試験の両方を対象とした。合計1,215件の試験が特定され、このうち48件が採用基準に合致した。C. difficile感染患者1,382例を対象とした12件の試験が、適格性の要件をすべて満たした。オッズ比および研究の質に関する情報を、2名の研究者が個別に抽出した。3件以上の試験で評価されているリスク因子を解析対象とした。C. difficile感染症再発リスク増加と有意な関連が認められた因子は、C. difficile感染症診断後のC. difficileを標的としない抗菌薬の継続投与(OR 4.23、95%CI 2.10~8.55、P<0.001)、制酸薬の同時併用(OR 2.15、95%CI 1.13~4.08、P=0.019)、および高齢(OR 1.62、95%CI 1.11~2.36、P=0.0012)であった。有意なリスク因子をC. difficile感染症再発のリスク因子と見なした。C. difficile感染症再発を予防するためには、これらの患者に対して介入を追加または新規に実施する必要があると考えられる。

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監訳者コメント:
わが国ではいまだ大きなアウトブレイクの事例が少なく、CD毒素陽性の株も少ないが、いずれ問題になるであろうから、注目しておくべきである。

オーストラリアのクイーンズランド州における2000年から2006年のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の疫学的変化:感受性タイプの受動的サーベイランスの実施

Changing epidemiology of meticillin-resistant S. aureus in Queensland, Australia, 2000-2006: use of passive surveillance of susceptibility phenotypes

G.R. Nimmo*, J. Fong, D.L. Paterson, M.-L. McLaws
*Pathology Queensland Central Laboratory, Australia

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 305-313


近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染の疫学的特性は、市中感染症を引き起こす新たなMRSA菌株の出現により著しく変化している。今日ではこれらの菌株は医療関連感染症の原因となりつつある。臨床や公衆衛生活動に指針を与えるには、このような変化を追跡できる必要がある。本論文では、2000年から2006年のMRSA主要流行株に相当する表現型の菌の変化を追跡することを目的とした、クイーンズランド州の民間の臨床検査室の全感受性データの受動的サーベイランスについて報告する。入院患者のMRSA分離率は、膿・組織・体液検体および血液培養検体でそれぞれ26%、35%低下した。入院患者の膿・組織・体液および血液培養からのAUS-2/3様表現型(ST239-MRSA-IIIに相当)の分離率は、100万延べ患者・日あたり651件から242件に減少したが、非多剤耐性MRSA(市中MRSA株に相当)は71件から315件に増加した。外来患者の膿・組織・体液および血液培養からの全MRSA分離率は、それぞれ224%、31%増加した。外来患者の膿・組織・体液からのAUS-2/3様表現型の分離率は、100万外来診療機会あたり131件から60件に減少したが、非多剤耐性MRSAの分離率は52件から490件に増加した。ルーチンの感受性データから得られた表現型のサーベイランスは、広範な地理的領域でのMRSAの疫学的変化を追跡するうえで有用な手段である。

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監訳者コメント:
わが国ではいまだCA-MRSAの報告頻度は低いが、1990年代以来オーストラリアでCA-MRSAが増加し、その後は米国、次に欧州へと飛び火している。いずれはわが国でも問題になってくると予想されるので、同様のスタディはわが国においても実施されるべきであろう。

英国のウエスト・ミッドランド地域で検出された市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の疫学★★

Epidemiology of community-acquired meticillin-resistant Staphylococcus aureus obtained from the UK West Midlands region

J. Rollason*, L. Bastin, A.C. Hilton, D.G. Pillay, T. Worthington, C. McKeon, P.De, K. Burrows, P.A. Lambert
*University of Aston, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 314-320


2005年1月から12月の間に、皮膚・軟部組織感染症のために地域の一般開業医(通称GP)を受診した外来患者から、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の分離株199株が検出された。調査対象とした地域は、英国イングランド中部のリッチフィールド、タムワース、バーントウッド、およびバーミンガム北部・東部の3つのプライマリ・ケアトラストに属する57の診療所である。抗菌薬感受性試験、パルスフィールド・ゲル電気泳動法、Pantone-Valentine型ロイコシジン遺伝子の検出、およびSCCmecエレメントのマッピングの結果、分離株の95%は病院感染流行株EMRSA-15およびEMRSA-16と関連することが示された。分離株群の87%がSCCmec IVを、9%がSCCmec IIを有し、4%が新規のSCCmec IIIa-mecI型と同定された。患者の自宅の郵便番号の地理的分布を調べたところ、SCCmec IIおよびSCCmec IVを有する分離株は広範囲に分布していることが判明した。しかし、SCCmec IIIa-mecIを有する分離株の多くは、研究対象地域の北西部に居住する患者から検出され、局地的なクローン群である可能性が示された。本調査から示されたように、病院環境から周辺地域へのMRSAの伝播が生じた可能性があることから、標的患者のスクリーニングおよび臨床環境と市中環境の両方の除菌が必要であると考えられる。

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監訳者コメント:
もはや英国ではCA-MRSAとHA-MRSAの垣根がなくなりつつあるために、1年以内に入院患者すべてを対象としたアクティブサーベイランス培養を国策として導入する見込みとなっている。

監訳者注:
プライマリ・ケアトラスト(Primary Care Trust):英国のほとんどの病院はNational Health Service TrustというNGOが運営しているが、地域ごとに分割され、日本で言うところの医療圏を形成している。

英国Hospital Episode Statisticsの1996年から2006年のデータから抽出した医療関連感染症の記述的研究および義務的報告システムとの比較

Descriptive study of selected healthcare-associated infections using national data 1996-2006 and comparison with mandatory reporting systems

M.H. Jen*, A.H. Holmes, A. Bottle, P. Aylin
*Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 321-327


1996年から2006年の英国イングランドのHospital Episode Statistics(HES)のデータを用いて、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の記録を65歳以上の入院患者と4種類のいずれかの整形外科手術を受けた全患者と比較するために記述的研究を実施した。その結果、C. difficile感染率は上昇したが、整形外科手術による手術部位感染発生率は低下したことが示された。両患者の感染はいずれも、高齢女性および重度の併存疾患を有する患者に多くみられたが、地域間の感染率の差はほとんど認められず、社会経済状態のスコアにもばらつきがあった。2004年と2005年について、HESのデータを保健保護局(Health Protection Agency)の義務的報告システムのデータと比較した。その結果、C. difficile感染の記録は、HESのデータより健康保護局のデータのほうが多かった。対照的に、整形外科手術による手術部位感染については、4種類の整形外科手術すべてにおいて、HESのデータには保健保護局のデータよりも多くの手術部位感染と手術件数が記録されていたが、感染率自体はほぼ同等であった。これらの結果は、いずれの方法にも限界があることを反映しており、著者らは、このような重大な医療関連感染についてより完全な実像を把握するために、両方の情報源を個別に使用する、または個人のレベルで相互に関連づけて使用する可能性を提案したい。より優れたコード方法が進捗するか、HESのデータで優れたコード方法の使用が義務化されれば、整形外科手術による手術部位感染の有効なサーベイランスのために、現行の二重の記録システムは不要となるであろう。

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どれほど清潔にすれば清潔か? 病院清掃アセスメントに提案される方法

How clean is clean? Proposed methods for hospital cleaning assessment

A. Al-Hamad*, S. Maxwell
*University of Manchester, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 328-334


病院の感染率低下には、環境指標などの種々の因子が関与する。病院内の表面の衛生に関する微生物学的基準が提案されているが、環境サンプル採取の標準的な方法は論じられていない。本研究の目的は、清拭洗浄法による指標細菌検出およびディップスライドによる細菌数の定量的測定を用いた、重症管理室における清掃・消毒の有効性評価である。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の両方を対象として、臨床区域および非臨床区域で手の接触頻度が高い表面を微生物学的方法により調査した。好気性菌総数を測定するため、標的表面サブセットの定量的サンプル採取を行った。採取したサンプル130件中9件(6.9%)からMRSAが、15件(11.5%)からMSSAが分離された。非臨床区域から採取したサンプル81件中7件(8.6%)でMRSAの増殖が認められたのに対し、臨床区域で採取したサンプルでは49件中2件(4.1%)であった。好気性菌総数測定のスクリーニングを実施した116か所中9か所(7.7%)で、5 cfu/cm2を超える菌の増殖が認められた。総生菌数が多い表面は、ベッドのフレーム、電話器、コンピューターのキーボードなどであった。総生菌数とMRSA分離の結果に直接的な相関は認められなかった。しかし、両指標の併用により、清掃・消毒法の有効性を評価するためのより効果的な方法が得られるものと考えられる。特定の区域に必要とされる清掃の頻度を評価するために、あるいは使用されているプロトコールや資材を変更するために、これらの指標の評価・改善を目的としたさらなる研究が必要である。

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監訳者コメント:
清掃の指標が感染率とリンクしない原因の1つに、保菌をしても必ずしも発病しないというドグマがあり、環境清掃がアウトブレイクのリスクを減らすことはわかっているが、どの程度減らすことができるのかについては、依然として不明である。よって、アウトカムの評価を感染率に依存している現在では、タイトルの問いに正確に答えることは不可能である。

心臓外科手術を受けた小児における胸骨創感染のリスク因子:症例対照研究

Risk factors for sternal wound infection in children undergoing cardiac surgery: a case-control study

E. Ben-Ami*, I. Levy, J. Katz, O. Dagan, I. Shalit
*Tel-Aviv University, Israel

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 335-340


若年乳児および小児に対して、複雑で長時間の心血管手術を実施する機会が増えている。本研究の目的は、心臓手術を受けた乳児および小児の胸骨創感染の発生率、原因菌、およびリスク因子を明らかにすることである。1999年から2003年に三次小児医療センターで胸骨正中切開術による心臓手術を受け、術後胸骨創感染と診断された小児全員を試験群とした。術前、術中、術後の変数についてカルテレビューを行った。その結果を各症例の直前および直後に手術を受けた対照患者と比較し、ステップワイズ法によるロジスティック回帰モデルを用いて解析した。心臓手術を受けた小児1,821例中49例(2.69%)に胸骨創感染が発生し、このうち47例について完全なデータを入手することができた。29例(61.7%)が浅部創感染、18例(38.3%)が深部創感染であった。主な病原菌としては、黄色ブドウ球菌が14例(39%)、緑膿菌が12例(33%)にみられた。胸骨創感染の有意な独立リスク因子として、以下の3つの変数が明らかとなった。低年齢(オッズ比[OR]0.63、95%信頼区間[CI]0.47~0.85、1歳ごとにP<0.001)、チアノーゼ性心疾患(OR 4.93、95%CI 1.98~12.3、P<0.001)、および中心静脈カテーテル留置期間(OR 1.15、95%CI 1.06~1.24、1日ごとにP<0.001)。グラム陰性菌感染と、術前の酸素治療(P=0.007)および尿道カテーテル留置期間の延長(P=0.004)との間に有意に関連が認められた。本研究では低年齢が胸骨創感染のリスク因子であることが確認され、チアノーゼ性心疾患と中心静脈カテーテル留置期間が新たな独立したリスク因子として加えられた。グラム陰性菌感染の特異的なリスクが明らかとなり、このことは胸骨創感染の発生率と重症度の低下を目的とした新たな予防戦略の導入に役立つと思われる。

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監訳者コメント:
胸骨創感染は時に致命的となり、心臓血管手術後の重大な合併症である。これに対する予防戦略は必須であるが、胸骨創感染のリスクの高い集団を明らかにする本スタディによって、ハイリスク集団に重点的に予防対策を実施することが可能になる。有用な研究である。

重症患者に使用される動脈カテーテルの陽圧バルブコネクターの安全性

Safety of positive-pressure valve connectors in arterial catheters inserted into critically ill patients

J.C. Yebenes*, G. Sauca, M. Solsona, R. Martinez, M. Serra-Prat, P. Gil, F. Riera, X. Balanzo
*Hospital de Mataro, Spain

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 341-345


医療従事者の針刺し損傷を防ぐためにニードルレス・バルブコネクターが導入されたが、その微生物学的な安全性についてはいくらかの懸念がある。重症患者に使用される橈骨動脈カテーテルの陽圧バルブコネクター用のハブ(hub)の保菌状態を評価し、従来のキャップと比較するために、無作為化対照試験を実施した。患者を陽圧バルブコネクター(Smartsite Plus陽圧ボーラスバルブ)群または従来のキャップ群に無作為に割り付けた。24時間以上挿入されたカテーテルのみを分析対象とした。連続100例の動脈ラインのうち、24時間以上留置されたのは80例であり(平均留置期間5.8日間)、内訳は陽圧バルブコネクター群41例、従来のキャップ群39例であった。カテーテルハブに保菌がみられたのは対照群8例(20.5%)、陽圧バルブコネクター群1例(2.4%)であった。ハブの保菌はすべての症例においてコアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるものであった。この菌による菌血症は認められなかった。多変量解析では、ハブ保菌率が低いことと独立して関連する因子は、陽圧バルブコネクターの使用(オッズ比[OR]0.09、95%信頼区間[CI]0.1~0.79、P=0.03)および当該ラインを持続的血行動態モニタリングに使用すること(OR 0.16、95%CI 0.03~0.89、P=0.037)であった。

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監訳者コメント:
ニードルレス・バルブコネクタの微生物学的安全性については懸念があり、いくつかの先行研究がある。本研究は動脈ラインに対して行われた点が独自的であるが、これを中心(静脈)ラインに適用してよいか、若干の疑問が残る。動脈ラインでは通常ライン関連血流感染が問題となることがほとんどないため、本研究の結果の評価は困難と言える。

エンテロコッカス・ガリナラム(Enteroccocus gallinarum)の院内アウトブレイク:まれな腸球菌菌種の性状

Nosocomial outbreak of Enteroccocus gallinarum: untaming of rare species of enterococci

G.A. Contreras, C.A. DiazGranados, L. Cortes, J. Reyes, S. Vanegas, D. Panesso, S. Rincon, L. Diaz, G. Prada, B.E. Murray, C.A. Arias
Universidad El Bosque, Colombia

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 346-352


コロンビアの三次医療教育病院で2004年5月にバンコマイシン耐性エンテロコッカス・ガリナラム(Enteroccocus gallinarum)(VREG)感染の異常な増加が認められた。これを受けて、本菌による感染に関連するリスク因子を特定するために、症例対照研究が企画された。VREGの全分離株に対して、抗菌薬感受性試験、バンコマイシン耐性遺伝子検出、およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)タイピングを実施した。さらに、E. faecalisの獲得性pathogenicity islandに関連する遺伝子およびE. faeciumhyl様遺伝子の存在をハイブリダイゼーション法で評価した。2004年5月から6月に11例のVREG症例を特定した。VREGは血液(4例)、術中分泌物(4例)、副鼻腔分泌物(1例)、肺膿瘍(1例)、および尿(1例)から分離された。VREG感染は粘膜炎、血液内科病棟および外科治療室への入院、培養前の入院期間、および培養前30日以内の侵襲的処置と関連していた。ロジスティック回帰により、女性であることおよび外科治療室への入院が、VREG感染の独立したリスク因子であることが判明した。分離株はすべて、vanC1遺伝子を有し、PFGEで区別できない制限酵素切断パターンを示すE. gallinarumであった。病原性に関連する遺伝子は検出されなかった。本稿は、VREGの病院内アウトブレイクの初めての報告であり、まれな腸球菌菌種で院内伝播が起こりうることを明らかにしたものである。

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監訳者コメント:
いわゆるVRE、つまりバンコマイシン耐性E. faecalisE. faeciumと異なり、バンコマイシン耐性E. gallinarumのもつバンコマイシン耐性遺伝子・VanCはバンコマイシンに対して低度耐性を示し、また健常人からもしばしば分離される。このことから、バンコマイシン耐性E. gallinarumは医療関連感染集団発生の原因や対策の必要な菌として焦点があてられないことが多い。本事例および論文は、そういった常識に一石を投じるものであり、短期間に同じ菌による集団発生が起こった場合にはVREGであっても対策が必要であると言える。

監訳者注:
pathogenicity island:当該の菌に由来しない外来性の遺伝子群で、病原性の発揮に関与するもの。

フィンランドの急性期病院における医療関連感染患者および非医療関連感染患者の死亡のリスク因子

Risk factors for death in a cohort of patients with and without healthcare-associated infections in Finnish acute care hospitals

M. Kanerva*, J. Ollgren, M.J. Virtanen, O. Lyytikainen, on behalf of the Prevalence Survey Study Group
*National Finnish Hospital Infection Program (SIRO), Finland

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 353-360


死亡の予測を目的として、McCabe分類およびCharlson指標を使用し、医療関連感染を有する入院患者の死亡のリスク因子を評価した。本研究の対象コホートは、2005年のフィンランド全国有病率調査に参加した急性期病院における医療関連感染患者703例と非医療関連感染患者7,531例である。米国疾病対策センター(CDC)による医療関連感染の定義を使用し、併存疾患についてはMcCabe分類で記録した。有病率調査の日付および国民識別コード(national identity code)を用いて、Charlson指標スコア算出のための退院時診断(ICD-10コード)に関する全国病院退院登録(National Hospital Discharge Registry)のデータ、および全国国民情報システム(National Population Information System)の死亡日の情報を収集した。全入院患者のうち、425例(5.2%)は有病率調査日から28日以内に死亡した。死亡率は医療関連感染患者のほうが非医療関連感染患者より高かった(9.8%対4.7%、P<0.001)。多変量回帰解析では、年齢>65歳、集中治療室、McCabe分類・Charlson指標、消化器感染、および肺炎・その他の下気道感染が、死亡の独立予測因子であった。McCabe分類またはCharlson指標で補正した生存分析では、医療関連感染は重度の基礎疾患がない患者においてのみ生存率を低下させることが示された。特定の医療関連感染により死亡リスクが増加した。McCabe分類のほうが有病率調査からのデータ収集が容易なため、Charlson指標よりも死亡予測因子としての有用性が高かった。

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監訳者コメント:
医療関連感染による死亡のリスク因子の詳細な解析を行った論文である。結論のひとつであり、基礎疾患をもつ患者においては医療関連感染発生の有無による死亡リスクの差がないという点については、医療関連感染以外で死亡する人が多いため、差が出にくいという面もあるであろう。基礎疾患をもつ患者が医療関連感染のリスクが高い、さらに死亡のリスクが高いと感覚的には考えやすいが、疫学的にはこのような評価になるところが興味深い。

バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)バイオフィルムに対する消毒処理の有効性の評価

Evaluation of the efficacy of disinfection procedures against Burkholderia cenocepacia biofilms

E. Peeters*, H.J. Nelis, T. Coenye
*Ghent University, Belgium

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 361-368


本研究では、バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)の浮遊菌および定着菌を用いて、嚢胞性線維症患者の呼吸器具およびその他の器具の消毒に推奨されている種々の処理法の有効性を評価した。European Suspension Test変法により、浮遊菌に対する消毒処理の効果を評価した。96穴マイクロタイタープレートで培養・処理したバイオフィルムに対する2種類のレザズリン生存率測定法およびクリスタルバイオレット染色法により、各種処理法の定着菌殺滅能およびバイオフィルム量の減少能を評価した。B. cenocepacia定着菌の生存に対するクロルヘキシジンおよび過酸化水素の有効性は、浮遊菌に対する有効性と比較して著明に低かった。低濃度次亜塩素酸ナトリウム(0.05%、5分)および酢酸(1.25%、15分)で処理した場合でも、定着菌生存数の減少は不十分であった。消毒薬のバイオフィルム量減少能とバイオフィルム形成菌殺滅能との間に関連はなかった。結論として、本研究により、消毒薬の有効性の評価のためには、菌の生存に対する有効性に特に注意し、浮遊菌と定着菌の両方の検査を行う必要があることが示された。

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オグストンの球菌

Ogston’s coccus

S.W.B. Newsom*
*Journal of Hospital Infection, UK

Journal of Hospital Infection (2008) 70, 369-372


130年前、英国アバディーンの外科医であるアレクサンダー・オグストン(Alexander Ogston)は、膿瘍由来の膿の中に初めて微生物を発見し、後年、「ブドウ球菌(staphylococci)」と命名した。オグストンはアバディーンに「リスター法(Listerism)」を導入していたが、感染の原因についてさらに知りたいと望んでいた。一連の精巧な器具を用いて「動物の外傷性感染」に関するコッホの業績をヒトへと拡張した。膿瘍由来の膿を研究するために最新のドイツ製の顕微鏡とコッホの染色法を使用し、人工培養(鶏の卵)でブドウ球菌を初めて増殖させた。1878年から1883年の間、オグストンの庭の研究室が、英国の重要な細菌学研究所であった。最終的に、オグストンは外科学の欽定講座担当教授(Regius Professor)になり、「他者に研究を任せ」なければならなかった。

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監訳者注:
リスター法(Listerism):英国の外科医Joseph Lister(1827~1912)が外科処置後の化膿を防止するために考案した消毒法。


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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.