JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

患者と一般市民:医療関連感染に関する知識、情報源、および認識

Patients and the public: knowledge, sources of information and perceptions about healthcare-associated infection

D.J. Gould*, N.S. Drey, M. Millar, M. Wilks, M. Chamney
*City University, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 1-8


英国では、医療関連感染に関する情報は法定団体が提供している。情報は、国民保健サービストラストのウェブサイトでも閲覧することができる。世論調査では、医療関連感染の発生、とりわけメチシリン耐性黄色ブドウ球菌への危惧が、医療に関心をもつ人々の随一の懸念であることが示されている。文献レビューにより、医療関連感染に関する一般市民の知識、情報源、およびリスクの認識について評価した。22件の研究が組み入れ基準に合致した。このうち9件では、研究の主要目的として知識と認識を調査していた。そのほかは、異なる集団間で知識と認識を比較した研究や、その感染・保菌や隔離の経験を比較した研究の種々の組み合わせであった。すべての報告において、一般市民は医療関連感染のリスクと影響について不安を述べていた。最も報告頻度の高い情報源はメディアであり、扇情的であること、および報告が不正確であることが非難されていた。一般市民は信頼できる情報源にアクセスしていないと考えられ、またアクセスしていてもその意味を理解できていない。患者向けの医療関連感染情報を提供している機関は対象範囲が全般的であるため、固有の情報を得るには時間と手間を要する。医療を受けようとしている人々に妥当なレベルの安心感を提供するためには、一般向けの医療関連感染の情報源の受容性、包含性、およびアクセス性を調査し、リスクの認識を現実的なレベルに補正する方法を見いだすための研究が必要である。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
科学的な情報を市民にも分かりやすく伝えることは重要であり、ここ数年来、米国CDCでも医療従事者向けより一般家庭向けの情報戦略にむしろ力を注いでいる。一方、メディアの人材育成も重要である。

カンジダ血症の感染源としてのカンジダ保菌

Candida colonisation as a source for candidaemia

L.N. Miranda*, I.M. van der Heijden, S.F. Costa, A.P.I. Sousa, R.A. Sienra, S. Gobara, C.R. Santos, R.D. Lobo, V.P. Pessoa Jr., A.S. Levin
*University of Sao Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 9-16


カンジダ(Candida)属菌は重要な医療関連病原体であり、予防・制御戦略には感染源の特定が重要である。本研究の目的は、カンジダ血症の感染源の可能性としてのカンジダ保菌部位の評価である。カンジダ血液培養陽性の連続症例63例を対象とした。監視培養用の検体を尿、直腸、口腔咽頭、皮膚、血管内カテーテル先端、およびカテーテル周辺の皮膚から採取した。患者の血液と培養部位から分離されたカンジダ種が同一の場合は、分子タイピングを行った。カンジダ血症に関連した菌はカンジダ・アルビカンス(C. albicans)42%、カンジダ・パラプシローシス(C. parapsilosis)33%、カンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)16%、カンジダ・ギリエルモンディ(C. guilliermondii)、カンジダ・クルーセイ(C. krusei)、カンジダ・グラブラータ(C. glabrata)、カンジダ・ホルミイ(C. holmii)、およびカンジダ・メタプシローシス(C. metapsilosis)がそれぞれ2%であった。カテーテル先端から分離されたC. parapsilosis10株中6株は、同一患者の血液由来分離株と区別できなかった(すべて新生児)。血液由来C. albicans分離株は、26例中13例では消化管の分離株と、また2例ではカテーテル先端の分離株と区別できなかった。この結果から、C. albicansによるカンジダ血症の感染源として疑われるのは消化管保菌であり、C. parapsilosisによるカンジダ血症の感染源は外部保菌であることが示唆される。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
近年、安価で簡便なカンジダ属菌の同定培地が汎用されるようになり、この領域の研究が進んでいる。一方でカンジダは高度な微生物なので、型別・薬剤感受性試験の安定性は一般細菌のようにはいかず、解釈には注意が必要である。

新生児集中治療室におけるセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)アウトブレイク:非薬用液体石けんの汚染とリスク因子

Outbreak of Serratia marcescens in a neonatal intensive care unit: contaminated unmedicated liquid soap and risk factors

S. Buffet-Bataillon*, V. Rabier, P. Betremieux, A. Beuchee, M. Bauer, P. Pladys, E. Le Gall, M. Cormier, A. Jolivet-Gougeon
*CHU Pontchaillou, France

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 17-22


本研究では、新生児集中治療室におけるセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)のアウトブレイクと、その調査および制御について報告する。3か月間で、乳児5例にS. marcescens単一株の保菌または感染が認められた。症例対照研究、培養調査、およびパルスフィールド・ゲル電気泳動解析から、S. marcescensの感染源としてソープディスペンサーのボトルが関与していることが示された(P=0.032)。S. marcescens保菌・感染乳児は、中心静脈カテーテルまたは経皮的静脈カテーテル留置率が高く(P=0.05)、気管内挿管日数が長かった(P=0.05)。ソープディスペンサーは多くの病院で使用されており、院内感染源として認識されていない可能性がある。石けん使用時に空気の取り込みがない「エアレス」ディスペンサーを使用することで、この想定される感染源を抑制することができた。迅速な介入とアルコール製剤による手指消毒の厳格な遵守が、このアウトブレイク制御を成功に導く重要な因子であった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
エアレスディスペンサーとはいかなるものか? 機能的には理解できるが残念ながら写真が掲載されていなかった。

SHV-2およびCTX-M-15器質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)の院内感染アウトブレイクに対する吸引管汚染の意義

Role of contaminated aspiration tubes in nosocomial outbreak of Klebsiella pneumonia producing SHV-2 and CTX-M-15 extended-spectrum β-lactamases

F. Randrianirina*, S. Vedy, D. Rakotovao, C.-E. Ramarokoto, H. Ratsitohaina, J.F. Carod, E. Ratsima, M. Morillon, A. Talarmin
*Institut Pasteur de Madagascar, Madagascar

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 23-29


マダガスカルのアンタナナリボ市にある2つの病院に2006年2月から3月に入院した新生児10例から、セフタジジム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)が分離された。主な環境感染源は、特に1つの病院では、小児病棟で吸引管を洗浄するために使用される液体であった。アンタナナリボの病院では、管の洗浄に使用する水道水の定期的な交換が行われないため、吸引管による汚染リスクが極めて高い。全臨床分離株の表現型解析(生物型分類と抗菌薬感受性分類)および遺伝子型解析(パルスフィールド・ゲル電気泳動)により、9症例は単一クローンに起因することが示された。このクローンは、SHV-2およびCTX-M-15 β-ラクタマーゼをコードする遺伝子を保有していた。本稿は、マダガスカルの病院での器質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科最近の流行に関する最初の報告である。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
器質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は世界的に問題になっている。わが国でもプロテウス・ミラビリス等の検出頻度が高くなってきており、注意が必要である。

汎薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症例1例の入院後の疫学調査★★

Epidemiological investigation after hospitalising a case with pandrug-resistant Acinetobacter baumannii infection

Y.-Y. Chuang*, Y.-C. Huang, C.-H. Lin, L.-H. Su, C.-T. Wu
*Chang Gung Children’s Hospital and Chang Gung Memorial Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 30-35


2000年代前半に台湾で汎薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(PDRAB)が出現したが、小児病院(病院A)でこの菌が初めて同定されたのは、患者1例が呼吸器病院(病院B)から移送された2005年3月であった。PDRABは入院時に採取した眼のスワブ標本から回収された。培養結果の判明を受けて、両病院で感染制御予防策に加え疫学調査を実施した。入院患者30例(病院Aの7例と病院Bの23例)、医用機器、および病棟環境から合計212件の標本を採取した。A. baumannii陽性は、病院Aの標本84件中13件(15.5%)、および病院Bの標本128件中23件(18%)であった。このうち、病院Aの患者2例と医用機器から採取した分離株6株、および病院Bの患者3例から採取した5株がPDRABであった。患者1例は両病院に入院しており、それぞれの病院で1株のPDRAB分離株が検出された。A. baumanniiの36分離株には、9のIRS-PCR(infrequent restriction site-polymerase chain reaction)型および12のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)型が認められ、6つの抗菌薬耐性型が同定された。1つの主要なIRS-PCR型(4つのPFGE型)に25分離株が属し、汎薬剤耐性(PDRABの11分離株はすべてこの型)または多剤耐性(イミペネムのみに感受性を示す)のいずれかを示した。A. baumanniiは、患者およびその周辺機器から分離される、普遍的な微生物である。両病院にはA. baumanniiの多剤耐性または汎薬剤耐性のクローンが蔓延していた。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
海外では多剤耐性のアシネトバクター・バウマニーが多く検出されており、近隣諸国でも台湾や韓国でその分離頻度が増している。わが国でも今後監視を強化していく必要がある。

手指衛生遵守に対する鮮烈な経験の効力

The power of vivid experience in hand hygiene compliance

P.W. Nicol*, R.E. Watkins, R.J. Donovan, D. Wynaden, H. Cadwallader
*Curtin University of Technology, Australia

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 36-42


近年になり、手指衛生行動に関する一部の研究に系統的行動理論が導入されている。最もよく知られた理論の1つに、計画的行動理論(theory of planned behaviour;TPB)がある。今回の定性的研究は、急性期ケア領域における感染予防実践に関する理解の向上が目的であり、既存の教育や訓練の効力を改善する可能性がある新たな知見を得るための適切な枠組みとして、計画的行動理論を取り上げた。研究から派生する理論では、手指衛生行動を説明するには、個人的経験のほうが形式的な教育よりも重要であるという知見に基づくものであった。このことは、代償的な鮮烈な経験が、既存の訓練法の効力の改善、および持続可能で適切な手指衛生習慣の定着の向上を図る手段となる可能性を示している。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
アルキメデスは “Eureka! Eureka!(わかったぞ、わかったぞ)” と叫び、また、茂木健一郎氏は「アハ体験」を喧伝する訳であるが、やはり経験に基づかないことにはヒトは学べないということか。ヒポクラテスは「経験は欺く」とのたまったが。
手指衛生は感染予防管理の基本であり、すべての医療従事者が積極的に習慣とするべきであるが、その定着は難しく、永遠の課題のように思えることも少なくない。

手指からの細菌伝播の評価法の開発

Development of a method to measure bacterial transfer from hands

E. Lingaas*, M. Fagernes
*Rikshospitalet University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 43-49


医療従事者の手指からの細菌の伝播を調査する方法を開発した。この方法は、医療従事者と滅菌手袋を装着した被伝播者で手指の接触を標準化して、その後、グローブジュース法により手袋を装着していない医療従事者の手指および手袋を装着した被伝播者の手指から標本採取を行った。接触時間、摩擦の程度、および手指の乾燥状態にはばらつきがあった。人為的に大腸菌(Escherichia coli)で汚染した手指と自然汚染した手指からの細菌伝播について、乾燥した手指を中程度の摩擦で30秒間接触させて、その評価法の適用可能性を検討した。被伝播者の手指から回収された細菌数は、伝播者の手指に存在していた細菌数と比較するとごくわずかであり、大腸菌で0.15%、手指自然細菌叢で0.07%であった。手袋を装着していない手指から回収された大腸菌数は、手袋を装着した手指と比較して少数であったことから、自然状態の皮膚と接触したために、細菌の残存率が低下したことが示唆される。これらのデータは臨床的意義があり、また乾燥した手指との短時間の接触による細菌伝播はわずかであることを示していると考えられる。今回の方法は、多数の医療従事者が参加する臨床研究における、不適切な手指衛生の潜在的リスク因子の影響の調査、および接触伝播への手指衛生手順の影響の調査に適している。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
やはり手指衛生につきる。なお、この論文の評価と直接に関係しないが、「手袋は手指衛生の代替ではない」という原則も再確認するべきである。

院内感染のサーベイランスと制御:スペインの病院の現状

Nosocomial infection surveillance and control: current situation in Spanish hospitals

J. Sanchez-Paya*, C. Bischofberger, M. Lizan, J. Lozano, E. Munoz Platon, J. Navarro, J. Pazg, J.A. Vicente
*Hospital General Universitario de Alicante, Spain

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 50-56


2006年のスペインの病院における医療関連感染サーベイランスと制御プログラム、利用されている人的・物的資源を調査した。2005年全国病院目録に登録されているすべての病院に、医療関連感染サーベイランスと制御のための構成、組織、資源に関する質問票を送付した。合計237病院(29.8%)から回答を得たが、これは登録された病床数では55.9%に相当する。約92%の病院がサーベイランスと制御のプログラムを有していたが、29.9%の病院ではその期間は5年未満であった。感染制御看護師数が250床あたり1名を満たす病院は17.4%のみ、感染制御医師数が500床あたり1名を満たす病院は36.2%のみであった。サーベイランスと制御を担当するこれらの看護師・医師の主要な業務はサーベイランスであり、実施率が高い手法は微生物学的検査結果のレビュー、アウトブレイク調査、有病率調査、特定の手技および集中治療領域における発生率調査であった。多施設研究への協力にはばらつきがみられた。スペイン院内感染有病率調査EPINEは医療施設の80.5%で毎年実施されている。重症患者感染発生率研究ENVIN-UCIは24.8%、欧州外科手術感染発生率研究HELICSは22.7%で実施されている。標準的なサーベイランスシステムおよび制御システムを確立するために、専門家の人的資源を改善することを優先すべきである。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
より実効的な感染予防管理プログラムのためには、人的および物的な資源を確保するための予算が必要であり、安全はタダでないということを共通認識とする必要がある。

ブラジル・リオデジャネイロの教育病院における医療従事者の結核感染予防のための管理対策

Administrative measures for preventing Mycobacterium tuberculosis infection among healthcare workers in a teaching hospital in Rio de Janeiro, Brazil

P. Albuquerque da Costa*, A. Trajman, F. Carvalho de Queiroz Mello, S. Goudinho, M.A. Monteiro Vieira Silva, D. Garret, A. Ruffino-Netto, A. Lineu Kritski
*Federal University of Rio de Janeiro, Brazil

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 57-64


結核は医療従事者の職業関連疾患である。先進国の病院では、管理的介入と工学的介入を同時に実施することにより結核院内感染リスクが低下している。著者らは、感染制御管理対策が、資源の限られた流行国の医療従事者における潜在性結核感染症のリスクに及ぼす影響を調査した。医療従事者全員に連続的ツベルクリン反応検査(TST)がルーチンに提供されているリオデジャネイロ市内の大学附属病院で、介入研究を実施した。1998年10月から2001年2月にかけて、結核疑い例および結核確定例の入院患者の隔離、抗酸菌喀痰検査の迅速な結果報告、および防御用レスピレータ(監訳者註:N95マスク)の使い方に関する医療従事者の教育といった感染制御対策を順次実施した。初回検査を実施した医療従事者1,336名の中で599名に再検査を行った。これらの対策の実施中および実施後の1,000人・月あたりのTST陽転率は、5.8/1,000人・月から3.7/1,000人・月へ減少した(P=0.006)。高い減少率が認められたのは集中治療部門(20.2から4.5、P<0.001)、臨床病棟(10.3から6.0、P<0.001)であった。陽転率の減少は医師と看護師で最も大きかった(それぞれ7.6から0、P<0.001;9.9から5.8、P=0.001)。結論として、流行国においても感染制御管理対策によって医療従事者の潜在性結核感染症が有意に減少する可能性があり、工学的感染制御対策のための資源が限られている場合であっても、管理対策を実行すべきである。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
金がなければ人手を使え、ということか。目新しいアプローチではないが、まじめにやることが重要であると示唆する論文である。なお、ツベルクリン反応陽転については潜在性結核感染症としてとらえるのが世の流れである。かつては化学予防と呼ばれた陽転者への抗結核薬の投与も、現在は潜在性結核感染症の治療と位置づけられている。

遺伝子組み換えプロテアーゼによるプリオン蛋白質(BSE301V)除去

Decontamination of prion protein (BSE301V) using a genetically engineered protease

J. Dickinson*, H. Murdoch, M.J. Dennis, G.A. Hall, R. Bott, W.D. Crabb, C. Penet, J.M. Sutton, N.D.H. Raven
*Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 65-70


過去の研究でアルカリプロテアーゼによりウシ海綿状脳症プリオン(BSE301V)を不活化できる可能性が示されている。この論文では、遺伝子組換えバチルス・レンタス(Bacillus lentus)のスブチリシンMC3の使用につき検討した。BSE301V感染マウス脳ホモジネート(iMBH)をMC3で処理した。MC3は検出可能なすべての6H4免疫反応性物質をpH 10とpH 12で除去したのに対し、プロテイナーゼKはpH 12で一部のみに対して有効であった。VMマウスのバイオアッセイでは、MC3とプロテイナーゼKによる消化を受けた感染マウス脳ホモジネート接種iMBHによる生存率は、それぞれ66.6%、22.7%であった。連続希釈法による接種後生存日数の評価によれば、感染性の低下はMC3では>7 log、プロテイナーゼKでは>6 logに相当した。本研究から、医療管理におけるプリオン物質の効果的な不活化処理法として開発された熱安定性プロテアーゼの潜在的有用性が示された。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
クロイツフェルト・ヤコブ病やウシ海綿状脳症などの感染性プリオンの処理は困難であることが有名であるが、最近ではわが国においても不活化のためのガイドライン(手術医学 2008; 29: S67-S71)が示されており、具体的には、アルカリ洗剤ウォッシャーディスインエクター洗浄(90~93℃)+真空脱気式高圧蒸気滅菌134℃ 8~10分間による処理、洗浄+真空脱気式高圧蒸気滅菌134℃ 18分間、アルカリ洗剤ウォッシャーディスインエクター洗浄+過酸化水素低音ガスプラズマ滅菌2サイクル(NX 1サイクル)などが示されている。わが国の特色として3% SDSによる処理も記載されているが、この処理は実際には困難であるかもしれない。この論文では熱安定性アルカリプロテアーゼの有効性が評価されている。ちなみに脳神経外科領域などで使用された医療器材について、すべてを追跡可能とする管理が推奨されたこともあったが、実際のリスクと現場への負担を秤にかけると、個人的に過剰な対策にコストをかけるのは得策でないと考えている。

トリクロサン耐性菌:抗菌薬感受性の変化

Triclosan-tolerant bacteria: changes in susceptibility to antibiotics

A. Cottell*, S.P. Denyer, G.W. Hanlon, D. Ochs, J.-Y. Maillard
*University of Surrey, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 71-76


殺生物剤耐性が抗菌薬感受性に及ぼす影響については明確な意見の一致が得られていない。本研究では、トリクロサン耐性菌の種々の抗菌薬に対する感受性を明らかにするために、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、およびアシネトバクター・ジョンソニー(Acinetobacter johnsonii)のトリクロサン耐性菌株と感受性菌株を比較した。トリクロサンの最小発育阻止濃度は液体希釈法および寒天希釈法により測定した。英国抗菌化学療法学会のガイドラインに従って抗菌薬感受性を判定した。いずれのトリクロサン耐性菌株も抗菌薬耐性は認められず、また全体としても、トリクロサン耐性菌株が感受性菌株と比較して阻止帯が有意に狭いという傾向はみられなかった。トリクロサン耐性大腸菌株は、アミノグリコシド系抗菌薬に対する感受性が有意に高かった。大腸菌についてトリクロサン耐性が生じる機序は、アミノグリコシド感受性と関連するようである。この関連には、外膜の変化あるいはプラスミドの喪失が寄与していると考えられる。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
トリクロサンは、わが国では薬用石けん(0.3%トリクロサン含有)に用いられることの多い殺菌薬であり、欧米においては0.3%あるいは2%含有洗浄剤が医療機関における衛生的手洗いや手術時手洗いなどに繁用されている。トリクロサンは一般細菌に対する殺菌力があり、特にブドウ球菌をはじめとするグラム陽性菌に優れた効力をもつ抗菌成分である。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.