JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

手術部位感染症:コストはどのくらいか?

Surgical site infections: how high are the costs?

E.C.J. Broex*, A.D.I. van Asselt, C.A. Bruggeman, F.H. van Tiel
*Maastricht University Medical Centre, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 193-201


院内感染予防および医療費削減の可能性に対する関心が高まっている。この総説の目的は、手術部位感染症(SSI)に関する最近の研究を対象として、コストの算出方法およびSSIによるコストを比較することである。レビューした研究では、研究デザインおよびコスト算出方法に大きなばらつきがあった。しかし、平均するとSSI患者の医療費は非SSI患者の医療費の約2倍であった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
わが国でも、国民からは医療費削減を求める声があり、一方、これまでの出来高払い制度からDPCのような包括診療支払い制度へ医療制度を移行しようとしている背景もあって、医療関連感染症によるコストはさらに注目されることとなる。一般的には包括診療制度の下では医療関連感染症などのコストは病院経営を圧迫する結果となり、感染防止対策にも一定の費用を投資する必要があると考えなければならない。安全はタダ(無料)ではない。

国家および国内レベルの手指衛生ガイドラインの比較

Comparison of national and subnational guidelines for hand hygiene

B. Cookson*, E. Mathai, B. Allegranzi, C.L. Pessoa-Silva, S. Bagheri Nejad, A. Schneider, C. Tschopp, C. Wendt, D. Pittet
*Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 202-210


手指衛生の普及は医療関連感染予防の礎石であると考えられる。この数年間、国際レベル、国家レベル、国内レベルの団体がそれぞれに手指衛生ガイドラインを策定している。これらのガイドラインを比較することにより、世界の諸地域の勧告およびその策定方法の理解が促進される可能性がある。検索エンジン、電子図書館、および個人的連絡によってガイドラインを特定し、欧州委員会第12総局の支援によるHARMONYプロジェクトのツールの修正版を使用して、これらのガイドラインの内容を分析した。検索された22のガイドラインのうち21について評価を行った。ガイドラインは、その領域、アプローチ、内容、および用語について様々であった。一部では忠告的な指示を主旨としており、その他では手指衛生実施の理由、タイミング、方法というような技術上の問題点に焦点を当てていた。エビデンスの収集・評価の程度には大きなばらつきがあり、詳細に記述されたものはごく少数であった。エビデンスと勧告の強度を示すグレード化システムと定義も様々であった。ガイドラインの目的は、医療における手指衛生実践を改善することにより、医療関連感染や抗菌薬耐性の減少を図ることであった。手指衛生の適用と手順に関する見解は概ね一致していたが、最善の実践法に関する勧告の範囲と水準は多様であった。ほとんどのガイドラインでは、遵守の評価法やガイドラインの有効性の評価のための監査法などの不可欠な要素が軽視されていた。結論として、エビデンスの徹底的な評価に基づく、世界のあらゆる地域で適用可能な勧告を作成するためにはより一貫したアプローチが必要である。勧告の実施および影響のモニターにかかわる要素について、より注視していく必要がある。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
感染対策は手指衛生に始まり手指衛生に終わる、といい続けてはいるものの、ガイドラインだけでも様々であることから、要するにすべての医療従事者が手指衛生を完璧に実践するようになる決定打はないということが明らかになったと考えてよい。

手指衛生の遵守率の評価と解釈:ケアエピソードのすべてをモニタリングすることの重要性★★

Measurement and interpretation of hand hygiene compliance rates: importance of monitoring entire care episodes

M. Eveillard*, H. Hitoto, F. Raymond, A. Kouatchet, L. Dube, V. Guilloteau, M-T. Pradelle, P. Brunel, A. Mercat, M-L. Joly-Guillou
*Centre hospitalier universitaire, France

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 211-217


この研究の目的は、手指衛生遵守率を測定・解釈するため、患者および周辺環境との一連の連続的な接触機会における手指衛生の遵守をモニターすることの重要性の評価である。集中治療室(ICU)4施設と非集中治療病棟(NICW)4施設を対象として、手指衛生遵守の直接的観察研究を実施した。手指衛生の機会を2つのカテゴリー、すなわち、「一連の接触機会外(接触が1回の場合はその前または後、一連の接触機会が連続した場合は最初の接触前または最後の接触後)」、および「一連の接触機会中(一連の接触機会の、最初の接触後から最後の接触前まで)」に分類した。全体の手指衛生機会は ICU 903回、NICW 760回であった。「一連の接触機会中」の比率は、ICU 46.0%、NICW 22.9%であった。全体の手指衛生遵守率はNICWのほうがICUよりも有意に高かった(61.2%対47.5% 、P < 0.00001)。「一連の接触機会外」の手指衛生遵守率は「一連の接触機会中」より有意に高かった(67.7%対28.5% 、P < 0.00001)。「一連の接触機会中」の手指衛生遵守率は、ICU のほうが有意に高かった(32.2%対19.0%、P < 0.005)。NICWで観察された手指衛生機会のカテゴリーの比率がICUと同一であったと仮定すると、全体の手指衛生遵守率はNICW(46.4%)、ICU(47.5%)と同等になると考えられる。全体的な遵守率の著しい過大評価を回避するために、一連の連続的な接触機会におけるケアエピソード全体の手指衛生遵守をモニタリングする必要がある。同時に、遵守のデータを比較する際は、研究の評価対象とする「一連の接触機会中」の比率を考慮すべきである。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
実際のケアプロセスは「一連の」流れの中で提供されることから、手指衛生の実践遵守についても「一連の接触機会中」における評価が重要であるというのは理解できるが、実際に現場で手指衛生遵守の状況を評価するのは極めて困難であると認めざるを得ないところか?

病院は清潔過ぎるために良好な手指衛生が実践できないのか?★★

Are hospitals too clean to trigger good hand hygiene?

D.S.J.M. van der Vegt*, A. Voss
*Canisiuse-Wilhelmina Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 218-220


医療施設における手指衛生遵守率は全般的に低い。この研究の目的は、病院内外におけるトイレ使用後の手指衛生遵守率を調査することである。病院・検査室職員、2007 年度欧州臨床微生物学・感染症会議(European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases;ECCMID)参加者、および公衆トイレ利用者を対象として観察を行った。トイレ使用後の手指衛生遵守率は、病院職員46%、会議参加者84%、公衆トイレ利用者75%であった。医療従事者は医療施設の内外で異なる手指衛生行動を示した。おそらく、公衆トイレなどの「瘴気が漂う」環境にいるという気分が、より良好な手指衛生のトリガーとなるのに対し、相対的に清潔な病院環境では手指衛生のトリガーが抑制されている可能性がある。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
そうはおっしゃられましても、どうすればよろしいのでしょうか?
病院とは、高密度に患者を集めて抗菌薬を多く使用する場所であり、病院環境には耐性菌が多いという認識が必須であるが、やはり実感できないとヒトは対応できないのかもしれない。「もやしもん」みたいに、病原体が見える、というような特殊能力が必要かも。

3次病院における末梢静脈カテーテルケアの遵守を改善するためのポスター掲示を利用した教育プログラムの失敗事例:臨床的監査★★

Failure of a poster-based educational programme to improve compliance with peripheral venous catheter care in a tertiary hospital: A clinical audit

L. Morse*, M. McDonald
*Royal Darwin Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 221-226


この調査の目的は、3次ケア病院の医療現場における末梢静脈カテーテル挿入日時の記載実施率を明らかにすること、および簡易なポスターを利用した教育プログラムにより記載実施率が改善するか否かを判定することである。オーストラリアのロイヤル・ダーウィン病院の成人入院患者1,109例を対象として、2つの調査期間に時点実施率調査を行った。末梢静脈カテーテルの留置の有無を記録するとともに、カテーテル挿入日時が挿入部位、ベッドサイドのカルテ、または臨床ノート(clinical note)に記載されているかどうかを記録した。患者の人口統計学的データおよびカテーテル関連菌血症の同定可能なリスク因子を収集した。同一の診療部門で簡易ポスターを利用した教育プログラムを施行した後、上述のプロセスを再度実施した。いずれの記載法(挿入部位、ベッドサイドのカルテ、または臨床ノート)も記載率は低く、介入前群13.4%、介入後群16.1%であった。介入前後でも統計学的な有意差は認められなかった(P = 0.27)。ポスターキャンペーンとは無関係に、カテーテル関連菌血症のリスク因子を有する患者では、リスク因子がない患者と比較して挿入日の記載率が高かった(P = 0.03)。カテーテル関連菌血症により患者、病院、および地域社会が負担すると可能性がある費用を考慮すると、感染制御に関する病院内の勧告の遵守率が極めて不良であったのは意外である。ポスターを利用した教育プログラム単独では、この状況を改善する効果はほとんどなかった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
末梢静脈カテーテル管理のような日常的な業務におけるプロトコールの遵守を図るというのはやはり難しい。ポスターぐらいじゃ何ともならないのか?

集中治療室でのカテーテルへの細菌定着を予防するためのクロルヘキシジン/スルファジアジン銀含浸ダブルルーメン中心静脈カテーテル:前向き無作為化研究

Double-lumen central venous catheters impregnated with chlorhexidine and silver sulfadiazine to prevent catheter colonisation in the intensive care unit setting: a prospective randomised study

L.F.A. Camargo*, A.R. Marra, G.L. Buchele, A.M.C. Sogayar, R.G.R. Cal, J.M.A. de Sousa, E. Silva, E. Knobel, M.B. Edmond
*Hospital Israelita Albert Einstein, Brazil

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 227-233


抗菌薬含浸カテーテルおよび消毒薬含浸カテーテルは、中心静脈カテーテル(CVC)への細菌定着を予防するために推奨される戦略である。クロルヘキシジン/スルファジアジン銀含浸カテーテルの集中治療室(ICU)の患者への使用に関するデータはほとんど報告されていない。クロルヘキシジン/スルファジアジン銀含浸CVC(第1群)と通常のCVC(第2群)の細菌定着率を比較する前向き無作為化研究を実施した。カテーテルへの細菌定着率を評価するため、無菌的に抜去したカテーテルの先端部4 cmをロールプレート法により培養した。全体で、カテーテルの挿入に成功した患者109例を試験に組み入れ、このうち51例を第1群に、58例を第2群に割り付けた。年齢、Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア、ICU入室時の診断、感染リスク、カテーテル挿入部位、およびカテーテル留置期間は、両群に統計学的有意差は認められなかった。細菌定着率は、第1群29.4%(カテーテル15本)、第2群では34.5%(カテーテル20本)であった(P = 0.50)。クロルヘキシジン/スルファジアジン銀含浸ダブルルーメンCVCには、ICU患者のカテーテルへの細菌定着率を減少させる効果はなかった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
近年CV感染予防の方法として、抗菌薬や金属コーティングした素材によるカテーテルの使用やカテーテル内の抗菌薬ロック、カテーテル刺入部のパッドやドレッシング材に消毒薬や金属を使用した製品が多く供給されている。安全性は確保されていても、感染予防についての評価は製品群が様々であるため慎重な検討が必要である。

集中治療室におけるカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)アウトブレイクの制御に対するチゲサイクリンの効果

Role of tigecycline in the control of a carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii outbreak in an intensive care unit

W. Jamal*, M. Salama, N. Dehrab, G. Al Hashem, M. Shahin, V.O. Rotimi
*Kuwait University, Kuwait

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 234-242


アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症発生率は最近数十年で著しく増加しており、特に重症入院患者での発生が多い。抗菌薬多剤耐性株による病院アウトブレイクは、公衆衛生上の脅威が増大している。集中治療室(ICU)で1年間に3件の多剤耐性A. baumannii(MRAB)感染症アウトブレイクが、16~75歳の患者24例に発生した。臨床サンプルから分離株を培養し、自動Vitek II IDシステムおよびAPI 20NEシステムを用いて同定を行った。E-test法により感受性試験を行った。パルスフィールド・ゲル電気泳動法により分離株の分子タイピングを行った。患者および環境のスクリーニングを行った。獲得時間、すなわち入院から感染までの期間は3日から31日の範囲であった。全分離株が多剤耐性菌(MRAB)であり、その大半はカルバペネム耐性(MRAB-C)であったがチゲサイクリン感性であり、最小発育阻止濃度(MIC90)は2 μg/mLであった。全死亡率は16.7%であった。MRAB-Cの消失時間、すなわち抗菌薬開始から感染部位からの菌消失までの期間は、チゲサイクリンを使用しなかった最初のアウトブレイクで8.3日、チゲサイクリンを使用し1例を除く全例が生存した2回目および3回目のアウトブレイクでは、それぞれ2.8日、3.1日であった。環境スクリーニングにより、ICU内の多くの環境表面および機器に目視による汚染が認められた。アウトブレイク菌株は2種類の異なるクローン(DおよびE)に属していたが、環境株14株は3種類のグループ(A~C)に属していた。感染アウトブレイクは、チゲサイクリンによる治療と集中的な感染制御戦略との併用により終結させることができた。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
韓国や台湾では同様に多剤耐性アシネトバクターが台頭しており、わが国でも今後、監視すべき耐性菌である。チゲサイクリンは日本では承認されていないので、耐性菌の増加とともに今後は検討するべきであろう。

大腸の手術部位感染症発生率とその関連コストを明らかにするための退院後サーベイランス

Post-discharge surveillance to identify colorectal surgical site infection rates and related costs

J. Tanner*, D. Khan, C. Aplin, J. Ball, M. Thomas, J. Bankart
*De Montfort University, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 243-250


入院患者のデータのみに基づくことの問題点に注目したサーベイランス研究が増加しつつある。退院後サーベイランスデータが欠けていると、手術部位感染症(SSI)発生率と負荷を過小評価することになる。英国では、大腸手術の退院後サーベイランスデータは発表されていない。この領域のSSI発生率は極めて高いと考えられ、最も治療コストを要する領域の1つであるため、研究対象として重要である。今回、電話面接と家庭訪問による30日間のサーベイランスプログラムを用いて、大腸のSSIに関する研究を実施した。SSI患者が使用した医療資源の増加分を記録し、コストを算出した。組み入れ基準に合致し、30日間の経過観察を終了した105例中29例(27%)がSSIを発症し、このうち12例は退院後に診断された。SSI発症までの平均日数は13日であった。多変量ロジスティック解析から、体格指数(BMI)が唯一の有意なリスク因子であった。感染患者1例の治療に要した増加コストは10,523ポンドであったが、このうちの15%はプライマリ・ケアから支払われた。5か月間のサーベイランスプログラムの実施には5,200ポンドを要した。サーベイランス看護師の作業負荷の分析から、看護師は看護補助者(healthcare assistant)で代替可能であることが判明した。大腸手術後のSSI発生を検出するための退院後サーベイランスは、正確な増加コストの完全なデータを得るために必要である。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
皮肉にも、わが国は術後の平均在院日数が長いため、専門家の間では日本のSSIサーベイランスのほうが精度が高いと考えられている。いずれにせよ、術後30日までフォローするのは大変なことである。

韓国の病院の医療従事者におけるA型肝炎ウイルス感染の血清疫学

Sero-epidemiology of hepatitis A virus infection among healthcare workers in Korean hospitals

S.-I. Jung*, C.-S. Lee, K.-H. Park, E.S. Kim, Y.J. Kim, G.S. Kim, D.S. Lim, J.E. Moon, J.J. Min, H.S. Bom, M.-H. Jung, Y.J. Chang, S.L. Chae, J.H. Lee
*Chonnam National University Medical School, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 251-257


韓国ではA型肝炎ウイルス(HAV)の報告が増加しており、韓国の医療従事者におけるA型肝炎ウイルス(HAV)のアウトブレイクも増加している。2008年に実施した本研究では、韓国の4病院の医療従事者3,696名のHAV感染について血清疫学の評価を行った。医療従事者を対象として、市販のキットを用いて抗HAV IgG抗体を調べた。人口統計学的特性、職業、勤務地、他の肝炎ウイルスの血清学的状態などのデータを収集した。統計学的解析を行い、HAV血清陽性に関連する因子を特定した。対象者3,696名のうち、女性は2,742名(74%)で、大部分(96%)が20~39歳であった(中央値28歳、範囲19~68歳)。職種の内訳は医師18%、看護師46%、看護助手10%、パラメディカル技術者11%、事務職員15%であった。HAV血清陽性率は年齢とともに有意に上昇し(P < 0.001)、24歳以下1.8%、25~29歳14.7%、30~34歳41.8%、35~39歳75.5%、40歳以上93.7%であった。20~39歳の対象者では、年齢区分別のHAV血清陽性率は医師が他の職種群と比較して有意に低かった(P < 0.001)。韓国では、29歳以下の医療従事者に対する集団ワクチン接種、または30~39歳の医療従事者に対する血清スクリーニングと非免疫者へのワクチン接種を、特に医師を対象に考慮する必要がある。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
生牡蠣等の食品を介したHAVの感染は有名であるが、こうも陽性率が高いのには驚かされる。

リビアのトリポリ市の医療廃棄物処理者におけるB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス

Hepatitis B virus and hepatitis C virus in medical waste handlers in Tripoli, Libya

E. Franka*, A.H. El-Zoka, A.H. Hussein, M.M. Elbakosh, A.K. Arafa, K.S. Ghenghesh
*Al-Fateh University for Medical Sciences, Libya

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 258-261


医療廃棄物処理者は重篤なウイルス感染症への曝露リスクがある。リビアの医療廃棄物処理者のB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の保有率に関するデータはない。1年間(2004年1月~12月)に、トリポリで地元の受託業者に雇用されている医療廃棄物処理者300名(女性59名)の血液サンプル、および医療廃棄物への直接的・間接的接触がない非医療廃棄物処理者300名の血液サンプルを対象に、ELISAを用いてHBV、HCV、HIVの検査を行った。HBVは医療廃棄物処理者7件(2.3%)、非医療廃棄物処理者1件(0.3%)から、HCVはそれぞれ8件(2.7%)、0件(0.0%)から検出された。医療廃棄物処理者と非医療廃棄物処理者との比較で、HBV検出率(オッズ比7.14、P < 0.04)、およびHCV検出率(オッズ比算出不能、P < 0.005)に有意差が認められた。両群ともHIVは検出されなかった。調査した医療廃棄物処理者のうち、HBVワクチン接種を受けていたのは21%、医療廃棄物処理の訓練を受けていたのは7%であった。さらに、医療廃棄物処理時にオーバーオールを着用しているのは99.7%、厚手の使い捨て手袋57.7%、ブーツ55%、マスク17.7%であった。結論として、HBV、HCVの保有率は、医療廃棄物処理者のほうが非医療廃棄物処理者より有意に高かった。保健当局による医療廃棄物の適切な管理に加えて、医療廃棄物処理者に対する訓練、ワクチン接種、および曝露後防御により、リビアの医療廃棄物処理者における感染性病原体獲得リスクが有意に低下すると考えられる。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
病院サービス業の委託職員は人の入れ替わりも激しく、コスト面からも管理面からも職業感染予防策の対応が困難である場合が多く、わが国でも深刻な問題である。医療全体としてこの課題に取り組んでいく必要がある。

感染制御:ホスピスにおける展望

Infection control: a hospice perspective

R. Chilvers*
*Pilgrims Hospices in East Kent, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 262-265


感染予防と感染制御は、医療機関が患者の安全を確保するための最優先事項である。イングランド南東部の独立セクターのホスピスは、専門的な緩和ケアを提供するとともに、ホスピスの登録機関および英国衛生法(UK Health Act、2006年)に従ってリスク低減策を提示することが求められる。クリニカル・ガバナンスの枠組みを利用することにより、基本方針、プロセス、および手続きが用意されていることを確認できる。標準予防策を実践し、これによりエビデンスに基づく現行の知識が上述の目的のために伝達されていることを確認できる。これは、新規スタッフと既存のスタッフに対する教育プログラムと定期的な情報更新によって達成される。最終目的は、医療スタッフから患者への交差感染の伝播を抑制することである。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
医療を提供するあらゆる局面で標準予防策の基本的な考え方を浸透させることは、極めて重要である。

監訳者注:
クリニカル・ガバナンス(clinical governance):英国の国民保健サービス(NHS)が提唱した、医療システムの中で医療の質を維持・改善するための体系的なアプローチ法。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.