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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

発展途上国における医療従事者への血液媒介疾患の職業伝播:課題への対応

Occupational transmission of bloodborne diseases to healthcare workers in developing countries: meeting the challenges

R. Lee*
*Nuffield Centre for International Health and Development, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 285-291


発展途上国の医療従事者は、高リスクおよび不十分な安全予防策のために、職業曝露により血液由来病原体に感染する機会が多い。医療従事者の喪失は、構築途上にある医療制度を著しく損なう可能性があるので、リスクの最小化を図ることが重要である。3種の病原体(ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、およびC型肝炎ウイルス)の伝播リスクを調査するため、およびリスクの上昇にかかわる発展途上国特有の要因を特定するために、文献検索を実施した。発展途上国は、職業曝露リスクを最小化するうえで多くの困難に直面している。これらの問題に取り組むために、国際レベルと国家レベルの両面での活動が行われてきた。医療従事者は構築途上の医療制度の極めて重要な構成要員であり、すべての医療従事者の喪失を防止するために、その保護を図ることが肝要である。

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監訳者コメント:
我が国とは国情の異なる発展途上国のレポートであるが、医療資源の貧弱さにおいては実はこれらの国と大差がない。そういった観点でこのレポートを読むと、我が国にも共通する課題が内包されていることに気付くであろう。

ロウベリーレクチャー2008(Lowbury Lecture 2008):感染制御とリソースの制約―最良の解決策の模索★★

Lowbury Lecture 2008: infection control and limited resources ― searching for the best solutions

L. Raka*
*Prishtina University, Kosova

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 292-298


医療関連感染症は、発展途上国および体制移行国(transitional country)のいずれにおいても公衆衛生上の重大な問題である。一部の国々では、リソースが限られている中でも感染制御プログラムの開発がかなり進んでいるものの、多くの途上国ではプログラムが存在しないか、実施されていない。欧州の最貧国であるコソボでは、発展途上国の感染制御上の課題が具現化している。多くの病院では、財源不足、貧弱なインフラ、過密状態、不適切な衛生状態、十分に機能していない検査業務、甘い経営、低い技術水準、および訓練を受けた職員の不足のために、活動が制限されている。先進国の感染制御ガイドラインが途上国においても基準とみなされることが多いが、現地のニーズの違いを考慮した修正が必要である。最良の解決策を導くには、政府の関与を強化し、利用可能なリソースに見合った感染制御対策を適用していく必要がある。International Nosocomial Infection Control Consortium(INICC)は、途上国でのこのような活動に重要な役割を担っている。

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監訳者コメント:
毎年、感染制御の著しい発展に寄与した人物に対して送られる学会表彰の受賞講演の抄録である。欧州最貧国で直面する様々な困難に対して、最前線で活躍している第一人者からの情熱を感じ取ってほしい

監訳者注:
リソース(resource):ここでは人的・物的資源や予算のこと。

オランダの病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の疫学と伝播★★

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus epidemiology and transmission in a Dutch hospital

M.M.L. van Rijen*, T. Bosch, M.E.O.C. Heck, J.A.J.W. Kluytmans
*Amphia Hospital Breda, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 299-306


スカンジナビアおよびオランダの病院では、search and destroy(S&D)戦略の実施に伴い、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)発生率が低下している。本研究の目的は、オランダの病院におけるMRSAの疫学と伝播について述べることである。この記述的研究は、1年間に約4万件の入院を受け入れている教育病院で実施した。この病院では、MRSAのS&D戦略を過去数十年にわたって実施している。2001年から2006年にMRSAの疫学を調査した。この病院での伝播率を、(1)患者の既往歴、(2)他の患者または医療従事者との時間的・位置的関係、および(3)分子タイピング(パルスフィールド・ゲル電気泳動法およびSpaタイピング法)により算出した。患者82例と医療従事者13例の合計95名のMRSA保菌者を特定した。年間のMRSA発生率は研究期間中に3倍以上に増加しており、増加分のほとんどは動物由来MRSAによるものであった。患者のMRSA感染経路は23%が国外の病院、26%が動物から、16%が院内感染、4%がオランダの他の医療施設、10%がMRSA陽性者からの市中感染であり、22%は感染源が不明であった。医療従事者の感染経路は69%が院内感染、15%が国外の病院での勤務に関連しており、15%はMRSA陽性のパートナーまたは親族を介して保菌していた。伝播率は0.30(初発症例73例に対して二次感染者22例)であり、研究期間中にMRSAの拡大が抑制されていたことを示していることから、S&D戦略を継続すべきである。

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監訳者コメント:
MRSAの拡大防止策としては、積極的にサーベイランス培養(ASC)を行って保菌者を探し出し除菌を行うsearch & destroy policy(S&D)と、ハイリスク患者に絞ってこれ以上伝播しないように管理しようというrisk assessment policy(RA)の2種類がある。前者はオランダとスカンジナビアで成功を収めているが、後者は米国・英国を含むほとんどの先進国で実施されているものの成功した国はない。S&Dが成功できる前提条件として、それほどMRSAが蔓延していない地域であることが求められるが、すでに米国や我が国は蔓延しているので、必然的にRAを選択せざるを得ない状況にある。すなわち、RAについては決定的な対策が出されていないことから、まだまだ我が国でのエビデンスを確立し、世界へ発信する余地が残されているということである。

市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus):英国イーストヨークシャーにおける疫学、微生物学的特性、および臨床的影響

Community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus: epidemiology, microbiology and clinical impact in East Yorkshire, UK

J.W.T. Elston*, J. Meigh, A.M. Kearns, N. Jordan-Owers, A. Newton, R.E. Meigh, G. Barlow
*Castle Hill Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 307-313


市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(CA-MRSA)は世界的に増加している。英国ではCA-MRSAの報告はあるが、その臨床的影響についての情報はほとんどない。本研究では、イーストヨークシャーで発生している3種類の流行株について報告し、その疫学、微生物学的特性、および臨床的影響について述べる。CA-MRSAは合併症を認めない皮膚・軟部組織感染症または無症候性の保菌に関連するものがほとんどであるが、重篤な感染症や死亡例も報告されている。2つの異なる家庭で市中獲得型の伝播が認められた。本稿では、CA-MRSAの既存の定義の限界に焦点を当てるとともに、CA-MRSAの新たな定義を行うため、および英国におけるその疫学と臨床的影響の研究を進めるための論点を提示する。

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監訳者コメント:
CA-MRSAは、我が国では皮膚科領域で徐々に増加しているが、今のところ米国や英国ほどには伝播していないようである。これまでMRSAといえばHA-MRSAであり、各国のガイドラインやマニュアルはこれのみを対象としてきた。英国はCA-MRSAに対して既存の定義に限界を見いだし、来年度からは全入院患者に対して全例MRSAの積極的サーベイランス培養(ASC)を開始することになっている。我が国でもASCを簡便に行えるシステムの構築が2年以内に完了するように中期計画を立てておく必要がある。

英国の眼科におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する方針の調査

Survey of meticillin-resistant Staphylococcus aureus policies in UK eye departments

D. Rathod*, N. Luqmani, S.K. Webber, I.K. Hosein
*Royal Gwent Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 314-318


本研究の目的は、英国各地の眼科を対象として、日常的な白内障手術を受ける患者に対するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)のスクリーニングと除菌の実施について調査することである。英国のすべての眼科を対象に郵送による質問票調査を実施し、152件中75件(49.3%)から回答を得た。63%の眼科ではMRSAに対する独自の方針を定めていた。MRSAの術前スクリーニングを実施していた眼科は50か所(66.7%)で、このうち3か所は手術を受ける患者全員に、残りの眼科は患者選択のスクリーニングを行っていた。MRSAのスクリーニングを受けた患者の割合は0%から100%で、中央値2%、平均値9.9%(95%信頼区間3.5%~16.2%)であった。全体で回答者の65.3%は、所属する科の方針は妥当であると考えていたが、一方でかなりの不満や混乱もみられ、エビデンスの欠如や日帰り白内障手術に適用可能なガイドラインの必要性に言及するコメントもあった。調査結果から、英国各地の眼科におけるMRSAの術前スクリーニングの実施にはかなりのばらつきがあることが判明した。英国保健省の現行の勧告は、日帰り手術を受ける眼科患者にはルーチンのスクリーニングは不要であると述べているが、高リスク患者にはスクリーニングを継続すべきことを示唆している。これらの勧告の科学的妥当性を確認するために、さらに調査を行う必要がある。

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黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の臨床分離株57株に対する擦式アルコール製剤3種の殺菌効果の評価★★

Evaluation of the bactericidal efficacy of three different alcohol hand rubs against 57 clinical isolates of S. aureus

K.E. Cheeseman*, S.P. Denyer, I.K. Hosein, G.J. Williams, J.-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 319-325


英国ウェールズの集中治療室2施設で使用されている擦式アルコール製剤3種の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する有効性を調査した。保菌者検査を基本とした調査プロトコールを作成し、集中治療室での手指衛生行動を観察した後にパラメータ(濃度、接触時間)を選択した。擦式アルコール製剤への曝露後、標準平板菌数測定法とBioscreen C Microbial Growth Analyserを併用して生菌数を計数した。臨床分離株に対する擦式アルコール製剤の有効性にはばらつきがあり、Soft Care Med H5、Cutan、Guest Medicalの各擦式アルコール製剤への曝露後のlog10減少の平均値は、10秒間の曝露ではそれぞれ2.67、0.696、1.96、30秒間の曝露では4.58、1.74、3.60であった。各施設で医療従事者が擦式アルコール製剤による手洗いに費やした平均時間はそれぞれ11秒、15秒であったため、観察された実践状況ではこれらの擦式アルコール製剤の黄色ブドウ球菌分離株に対する有効性はかなり制限されていたと考えられる。さらに、平板菌数測定法とBioscreen法との間にみられた曝露後の細菌数減少(log10)の相違から、Guest Medical擦式アルコール製剤では曝露時間が2分以内の場合に障害を受けた黄色ブドウ球菌が回復する可能性がある一方で、擦式アルコール製剤の5分間の曝露による細菌の障害は不可逆的であるというエビデンスが得られた。擦式アルコール製剤の導入により医療従事者の手指衛生の遵守率は改善したが、今回の観察からこれらの製品の有効性を確保するためには接触時間が重要な要素であることが明らかとなった。

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監訳者コメント:
今回試験された3つの擦式アルコール製剤のうち、すべてが10秒の反応時間で、1つは30秒の反応時間でもブドウ球菌を十分に減菌しなかった。手指衛生にかける時間と、その後のアルコールの手指からの蒸発時間を考えると、10秒で十分な減菌作用を得る必要はないと思われるが、30秒でも十分でなかった製剤についてはその臨床適用において再検討する必要があるだろう。いずれにせよ、十分な反応時間を確保することが擦式アルコール製剤の適正使用において重要であることを、明確に示した論文である。ぜひ一読をお勧めする。

膵・腎同時移植後の手術部位感染の発生率とリスク因子

Incidence and risk factors for surgical site infection after simultaneous pancreas-kidney transplantation

L.B. Perdiz*, G.H.C. Furtado, M.M. Linhares, A.M. Gonzalez, J.O.M. Pestana, E.A.S. Medeiros
*Federal University of Sao Paulo, Brazil

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 326-331


膵・腎同時移植は、進行慢性腎不全を合併した1型糖尿病に対する最良の治療選択肢であるが、この処置を受けた患者の7%~50%に感染性合併症が生じる。2000年から2006年に著者らの施設でコホート内症例対照研究を実施し、膵・腎同時移植を受けた患者の手術部位感染(SSI)のリスク因子を評価した。評価を行った移植患者119例のうち55例(46.2%)がSSIを発症し、30日死亡率は11.8%であった。SSIから分離された微生物はグラム陰性菌が多かった。多変量ロジスティック回帰分析によりSSIと独立して関連する因子は、急性尿細管壊死、移植後瘻孔、および移植片拒絶反応であった。本研究から、この患者コホートではSSI発生率が高いこと、および外科手技と関係する因子がSSI発生と密接に関連することが示された。

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監訳者コメント:
消化器系の移植手術は手術侵襲も大きく、免疫抑制を要するなどの理由で術後感染発生のリスクが高い。本研究でも手術症例の約半数がSSIを発生している。多変量解析で同定されたリスク因子は、いずれも介入困難なものであり、この種の手術のSSI防止対策の困難さを示している。

病院内で摂取したサンドイッチに関連した腫瘍部門におけるリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のアウトブレイク

Outbreak of Listeria monocytogenes in an oncology unit associated with sandwiches consumed in hospital

A. Shetty*, J. McLauchlin, K. Grant, D. O’Brien, T. Howard, E.M. Davies
*Cym Taf NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 332-336


2003年5月、腫瘍部門の2例の成人患者がリステリア症と診断され、病院で食べたサンドイッチが共通のリスク因子と判定された。両患者はリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の同一菌株に感染していた。病院および院外のサンドイッチ製造業者から回収したサンドイッチと複数の製造環境内が、L. monocytogenesの同一菌株に汚染されていた。他の病院で食べられたサンドイッチは、英国のリステリア症患者の小規模クラスターと関連していた。本報告では、2件のリステリア症診断後の調査について述べるとともに、病院内で販売されているサンドイッチに関する一般的な問題に焦点を当てる。

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監訳者コメント:
病院内の食事提供設備は、病院内で調理を行う場合は比較的管理が容易であるが、外部で行う場合は管理が非常に難しい。したがって、本事例のような食中毒を完全に防止するのは困難であり、むしろその早期発見と事後対応が大切と言える。また、外部の給食設備業者などと品質管理に関する話し合いや見学などを行い、相互の理解を深めることが、多少なりとも発生をコントロールするものになると言える。

入院患者のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の自動判定システム

Automated system to identify Clostridium difficile infection among hospitalised patients

Y. Yadav*, K.W. Garey, T.K. Dao-Tran, V. Kaila, K.Y.E. Gbito, H.L. DuPont
*University of Texas School of Public Health, USA

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 337-341


本研究の目的は、電子的に収集した排便頻度に関するデータに基づいて、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染に対する高リスク患者を判定できるかどうかを評価することである。1日あたりの排便回数および下痢の日数について、下痢の報告があった全患者を前向きに評価した。C. difficile検査の要請は、研究担当者とは無関係に実施した。下痢の日数と非固形便の最大回数をC. difficile感染の予測因子として評価した。合計605例の患者が下痢の症状ありと判定され、このうち64例(10.6%)がC. difficile感染と診断された。単変量解析では、排便の最大回数および下痢の日数とC. difficile感染のリスク上昇との関連が認められた。1日あたりの下痢の回数が3回の患者はC. difficile感染発生率が6.3%であったのに対して、4回以上の患者では13.4%に上昇した[オッズ比(OR)2.3、95%信頼区間(CI)1.3~4.2、P = 0.0054]。また、下痢の日数が1日の患者はC. difficile感染発生率が6.3%であったのに対して、2日の患者は17.4%(OR 3.1、95%CI 1.7~5.6)、3日以上の患者は27.1%(OR 5.5、95%CI 2.6~11.7)に上昇した。これらの結果をロジスティック回帰によって検証したところ、下痢の日数が最も重要な予測因子であることが判明した。電子データ収集技術を用いることにより、下痢の日数と24時間の下痢の最大回数によってC. difficile感染の高リスク患者集団の判定が可能であった。

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監訳者コメント:
電子カルテが導入されている施設では、下痢の回数を電子的に監視することは可能であろう。施設によっては、より少ない労力でより効果的なC. difficile感染の監視につながる方法であると言える。

熱に弱い医療器具に適した従来の感染性病原体とプリオン病原体の両者に対する新規の病院消毒法

New hospital disinfection processes for both conventional and prion infectious agents compatible with thermosensitive medical equipment

S. Lehmann*, M. Pastore, C. Rogez-Kreuz, M. Richard, M. Belondrade, G. Rauwel, F. Durand, R. Yousfi, J. Criquelion, P. Clayette, A. Perret-Liaudet
*Universite Montpellier 1, France

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 342-350


変異型および散発性クロイツフェルト・ヤコブ病では特定の組織でプリオンが検出されるため、ヒト伝達性海綿状脳症(TSE)の病原体を医療器具に適した方法で効果的に汚染除去することが重要な問題となっている。著者らは以前、プリオンが銅(Cu)および過酸化水素(H2O2)に曝露されると切断を受けることを示し、この性質をプリオンの効果的な汚染除去法の開発に利用してきた。このアプローチの妥当性を検証するために、脳ホモジネートと鋼線による医療器具汚染モデルを使用して、実際のヒトおよび動物プリオンのin vitro検査を実施した。次に、ハムスター263 Kモデルで鋼線を用いてin vivo実験を行い、プリオンの感染性に対する効果を評価した。それぞれの実験後に、通常の病原体用の検査を国際基準に従って実施した。In vitroデータから、H2O2/Cuによる各種TSE株に対する汚染除去効果は十分なものであることが確認された。内視鏡消毒にCuと過酢酸を併用した場合にも、プリオンの汚染除去効果が向上することが示された。In vivo検査法からは、H2O2/Cu単独または洗浄剤との併用によるTSEの感染性に対する効果が示された(減少係数≧5.25 log10)。また、通常の病原体用の検査法では、各消毒法の消毒効果が確認された。まとめとして、本論文に示した新規の消毒法は、通常の病原体とプリオンの両方に有効であり、熱に弱い医療器具に適している。また、病院や臨床医の日常的な使用に適切であり、環境および医療従事者へのリスクを減少させる。

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監訳者コメント:
プリオンの消毒滅菌対策は現場で困っていることの1つである。特に脳神経外科や眼科など、器械を使い捨てにできない領域では、本研究の有用性が期待される。

嚢胞性線維症患者の家庭用ネブライザーの細菌汚染に対する次亜塩素酸系消毒薬の効果

Impact of hypochlorite-based disinfection on bacterial contamination of cystic fibrosis patients’ home-nebulisers

G. Reychler*, A. Leonard, C. Van Ossel, V. Godding, J. Gigi, A. Simon, P. Lebecque
*Cliniques universitaires Saint-Luc, Belgium

Journal of Hospital Infection (2009) 72, 351-357


ネブライザーは、嚢胞性線維症患者の細菌汚染の発生源となり得る。本研究の目的は、患者による家庭用ネブライザーのメンテナンス法を調査すること、および既存のin vitro試験に基づいて作成された標準ガイドラインの有効性を評価することである。合計42例の嚢胞性線維症患者を対象とした。連続2回の往診時に、患者の日常実践に関するアンケートに看護師が回答し、同時に喀痰および器具から検体を採取し、細菌学的分析に供した。最初の往診をベースラインとし、2回目の往診は、0.5%次亜塩素酸溶液を用いたネブライザーの洗浄・消毒法の詳細な指示の後に行った。最初の往診では、患者の日常実践に大きなばらつきがあることが確認された。ネブライザーの78.5%が共生細菌に、57.1%が環境細菌に、および14.3%が嚢胞性線維症に固有の病原体に汚染されていた。次亜塩素酸による消毒後には、全体の汚染率および程度が有意に低下したが、嚢胞性線維症に固有の病原体は減少していなかった。嚢胞性線維症患者に固有の病原体は、患者の喀痰のものと器具から分離されたものとで一致していなかった。結論として、今回の患者集団では、ベースラインの日常実践にばらつきがみられた。嚢胞性線維症に固有の病原体に関しては、次亜塩素酸溶液の他の消毒法に対する優越性はみられなかった。

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監訳者コメント:
ディスカッションの項で著者も記しているが、ネブライザーが嚢胞性線維症患者の細菌汚染の発生源となるかどうかがわかっていない。本研究においてもその関連性を示すことはなかった。だからといって、ネブライザーが細菌によって高度に汚染されていてよいというものでもなかろう。いずれにせよ、ネブライザーをさほど念入りに洗浄消毒する必要はなさそうである。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.