JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

医療従事者に対するインターフェロンγ放出測定法の意義

Role of interferon-gamma release assays in healthcare workers

J.E. Swindells*, S.H. Aliyu, D.A. Enoch, I. Abubakar
*City Hospital, Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 101-108


新規に開発されたインターフェロンγ放出測定法(interferon-gamma release assays;IGRA)は、潜伏性結核感染検出法の新たな選択肢となっている。これは、感染リスクが高いがワクチン接種率も高い医療従事者にとって、大きなかかわりがある。本論文では、種々の医療環境の潜伏性結核感染診断におけるIGRAの意義を検討する。医療従事者を対象としたIGRAのデータを報告している過去18年間の研究を検索し、22件が対象基準に合致した。IGRAは、結核発生率が高い国を除くとツベルクリン反応検査(TST)との一致率は低かったが、接触者調査も含めて結核曝露マーカーとの相関は概ね良好であった。T-SPOTR.TB法の評価を医療従事者を対象として行った研究は少なく、わずかな研究からはT-SPOTR.TB法の特異度はTSTと比較して高いことが示されている。本総説から、IGRAは医療環境での結核予防および管理の重要な手法として利用できることが明らかになった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
医療現場におけるインターフェロンγ試験の有用性をまとめた総説。ツベルクリン反応試験との詳細な比較も行われており、有用な論文である。なお、専門的知識がないと本文を読みこなすのは難しいと思われる。

病院およびその他の医療環境における食品の微生物学的安全性

Microbiological safety of food in hospitals and other healthcare settings

Barbara M. Lund*, Sarah J. O’Brien
*Institute of Food Research, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 109-120


医療施設で発生した食物媒介感染の症例やアウトブレイクにより、重篤な疾患、高額な医療費の損失、他の患者や医療従事者への感染伝播、および医療サービスの機能低下がもたらされる可能性がある。医療施設での脆弱患者に対する高栄養価の食事の提供には微生物学的安全性への体系的な取り組みが必要であり、これは危害分析重要管理点(hazard analysis and critical control point;HACCP)の原則に基づいて行われる。医療施設で提供する食品の種類は、食物媒介感染リスクが最小化するように選択すべきである。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
医療施設における食物媒介感染に関する総説。様々な種類の感染症が紹介されており、詳細に読まずとも1度目を通しておいて損はない論文である。

加熱処理済み即食(ready-to-eat)ソーセージに起因する病院および市中リステリア症の長期アウトブレイク

Prolonged hospital and community-based listeriosis outbreak caused by ready-to-eat scalded sausages

C.H. Winter*, S.O. Brockmann, S.R. Sonnentag, T. Schaupp, R. Prager, H. Hof, B. Becker, T. Stegmanns, H.U. Roloff, G. Vollrath, A.E. Kuhm, B.B. Mezger, G.K. Schmolz, G.B. Klittich, G. Pfaff, I. Piechotowski
*Baden-Wurttemberg State Health Office, Germany

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 121-128


リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)は食物媒介性の病原性細菌である。免疫不全患者は侵襲性リステリア症の発症リスクが高く、その致死率は高い。発症前に同一病院(A病院)に入院していたリステリア症患者2例の届け出を受け、著者らはアウトブレイクの範囲の確認、感染源の特定、およびさらなる感染の予防を目的として調査を開始した。積極的症例検出のためにA病院と連絡を取り、カルテレビューを実施し、リステリア症の届け出をドイツのサーベイランスシステム(SurvNet)を用いて後向きに調査した。調理場(A病院)および病院への肉の納入業者(X社)の検査を行い、微生物学的検査のために環境サンプルと食品サンプルを採取した。すべてのL. monocytogenes分離株、および2006年から2008年にバーデン・ヴュルテンベルク州で検出された患者と食品由来の分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)により評価した。合計16例のリステリア症症例を特定した。識別不能なPFGEパターン(AscI 17a/ApaI 10)を示す血清型4bが9例で検出されたほか、環境サンプル5件、X社から納入された加熱処理済み即食ソーセージのサンプル3件、およびA病院の食品サンプル2件からも検出された。A病院と関連のあった11例すべてが免疫抑制患者であり、入院中に定期的に食事を支給されていた。これらの患者のうち10例はコルチコステロイドとプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与を受けていた。死亡例は5例であった。今回の調査により、X社の加熱処理即食ソーセージがリステリア症アウトブレイクの原因であることが示された。病院への食品納入業者は最適な品質管理を行い、L. monocytogenesによる即食肉製品の汚染がないことを保証すべきである。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
食物媒介性感染症としてのリステリア症は比較的まれであるが、免疫不全状態の患者ではしばしば致命的になる。冷蔵庫の温度や高塩分濃度の環境中でも増殖することから、加工食品における食物媒介性感染症の原因となりうる。そのことを認識するために有用な論文である。また本論文は、公衆衛生当局が行ったアウトブレイク調査の典型例として一読の価値があると思われる。

カテーテル関連血流感染予防のための完全静脈栄養サーベイランス看護師の導入の費用対効果

Cost-effectiveness of employing a total parenteral nutrition surveillance nurse for the prevention of catheter-related bloodstream infections

M.H. Fraher*, C.J. Collins, J. Bourke, D. Phelan, M. Lynch
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 129-134


カテーテル関連血流感染による損失は合併症、死亡、および財源の点で甚大である。完全静脈栄養法(TPN)はカテーテル関連血流感染のリスク因子と考えられている。カテーテル関連血流感染の動向をモニターするため、1997年に静脈栄養看護師をTPNサーベイランス臨床看護マネジャー(TPN surveillance clinical nurse manager)に昇格させ、感染監査委員会の四半期ごとの開催を導入した。535床の大学附属急性期3次病院のTPNの記録を用いて、15年間にわたり前向きにデータを収集した。合計20,439中心静脈カテーテル日、カテーテル関連血流感染307件の記録が得られた。TPNサーベイランス臨床看護マネジャーの導入前後の平均感染件数を比較した。1,000カテーテル日あたりのカテーテル関連血流感染件数の平均 ± SDは1997年以前20.5 ± 6.34、1997年以降14.64 ± 7.81であり、1,000カテーテル日あたり平均5.84件の減少が認められた(95%CI -4.92~16.60、P = 0.05)。1年あたりのカテーテル関連血流感染件数の平均値 ± SDは1997年以前28.3 ± 4.93、1997年以降18.5 ± 7.37であり、1年あたり平均9.8件の減少が認められた(95%CI 0.01~19.66、P < 0.05)。1年あたり9.8件の感染を予防することで得られる削減コストを、病院財務部門から得たベッド使用日数のデータから算出した。1年あたりの入院日数からみたコスト削減は135,000ユーロであった。TPNサーベイランス臨床看護マネジャーの導入により、少なくとも1年あたり78,300ユーロの病院コストが削減され、TPN患者のカテーテル関連血流感染件数が有意に減少した。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
サーベイランス担当看護師が確固たるサーベイランスを行うことにより、CRBSIを減少させることができ、その医療費節減効果は看護師の給料を上回っていたという論文である。この種類の論文で常に問題になるのが、医療費節減効果がそのまま医療施設にとっての利益にならない点である。近年日本においてDPCが採用され、合併症による医療費に対する治療に応じた医療保険償還が行われなくなってきているが、それでも入院期間延長による1日あたりの医療費は定額ではあるが償還される。感染対策によって日本の医療保険制度の下で病院経費削減につながるデータを示すことが、我々にとっての大きな課題である。

成人入院患者への末梢カテーテル使用に関連する静脈炎およびその他の合併症の予防のためのアドオン器材の評価:無作為化対照試験

Evaluation of add-on devices for the prevention of phlebitis and other complications associated with the use of peripheral catheters in hospitalized adults: a randomised controlled study

J.A. Martinez*, M. Piazuelo, M. Almela, P. Blecua, R. Gallardo, S. Rodriguez, Z. Escalante, M. Robau, A. Trilla
*University of Barcelona, Spain

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 135-142


本研究の目的は、末梢カテーテルの使用に関連する静脈炎およびその他の合併症の予防のためのアドオン器材(add-on device)の役割を評価することである。感染症病棟に入院し24時間以上の末梢カテーテル留置を要した患者を、アドオン器材使用群と非使用群に無作為に割り付けた。主要評価項目は静脈炎発生率および全合併症発生率とした。輸液の漏れ、不測のカテーテル抜去、閉塞、断裂を機械的合併症と定義し、生存法による分析を実施した。評価対象としたカテーテル683件中351件をアドオン器材使用群に、332件を対照群に割り付けた。無作為化を行ったにもかかわらず、アドオン器材使用群のほうが高齢であり(P = 0.048)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染率が低く(P = 0.02)、抗菌薬投与歴を有する割合が高かった(P = 0.05)。これらの変数を補正しても静脈炎のハザード比(HR)は有意水準に到達しなかったが[HR 0.95、95%信頼区間(CI)0.7~1.3]、機械的合併症のリスクはアドオン器材使用群のほうが低かった(HR 0.68、95%CI 0.5~0.94)。そのため、全合併症リスクには低下傾向が認められた(HR 0.83、95%CI 0.67~1.01)。機械的合併症あるいは全合併症に対する有益な効果は、カテーテル留置から6日後に認められた。アドオン器材により静脈炎の発生率は低下しないが、機械的合併症を抑制する可能性がある。しかし、全合併症発生率に対するアドオン器材の効果はわずかであり、カテーテルの使用から6日後に初めて認められた。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
本文献には写真がなく、アドオン器材の詳細が不明であるが、説明文によれば延長チューブのようなものである。結論としては静脈炎その他の合併症を減少させる効果がない、あるとしても末梢ラインを6日以上留置する場合(ほとんどないと思われるが)のみである。末梢ラインの静脈炎やその他の合併症を減少させる介入を見つけることはなかなか難しい。

成人集中治療室での院内感染によるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)による血流感染のリスク因子と影響:症例対照研究

Risk factors and impact of nosocomial Acinetobacter baumannii bloodstream infections in the adult intensive care unit: a case-control study

T.-N. Jang*, S.-H. Lee, C.-H. Huang, C.-L. Lee, W.-Y. Chen
*Shin Kong Wu Ho-Su Memorial Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 143-150


Shin Kong Wu Ho-Su Memorial Hospitalの成人集中治療室(ICU)で、9年間の研究期間中にアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)による院内血流感染エピソード96件が特定された。このうち77例(80.2%)で年齢、性別、ICU入室時の主要な診断、ICU病棟、および疾患重症度でのマッチングが可能であった。単変量解析により、ICUでのA. baumannii血流感染と有意な関連がある因子は、中心静脈カテーテルの使用、人工呼吸器の使用、A. baumannii保菌歴、および呼吸器系と心血管系の臓器不全であった。多変量解析で独立したリスク因子として特定されたのは、A. baumannii保菌歴[オッズ比(OR)3.81、P < 0.001]および循環不全(OR 2.24、P = 0.04)のみであった。最も報告頻度の高い感染源は下気道(77例中32例、41.6%)であり、次いで血管内カテーテル(77例中13例、16.9%)であった。A. baumannii血流感染患者と対照患者の累積生存曲線に有意差は認められなかった(30日粗死亡率はそれぞれ29.9%、27.3%、P = 0.916)。しかし、A. baumannii血流感染患者ではICU入室期間と入院期間の平均値、および医療費の平均値が有意に増加し、ICU入室期間で8.7日、入院期間で19.1日、および医療費で8,480 USドルの増加が推定された。最も効果が高い抗菌薬は依然としてイミペネムとメロペネムであり、感受性はいずれも95.5%であった(MIC50はそれぞれ0.25、0.5)。A. baumanniiの保菌の抑制および血流感染発生率の低下には、医療従事者の手指衛生および血管カテーテルと気管内チューブの無菌ケアの改善が重要な方法である。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
欧州では、湾岸戦争以降中東地域から負傷兵によって持ち込まれたメタロベータラクタマーゼ産生の多剤耐性A. baumannii(XDR-ABまたはMDR-AB)が猛威を奮い、いまやICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)の主要起炎菌の1つになっている。台湾ではカルバペネム系抗菌薬がいまだ有効であることから、MDR-ABの拡散は限定的であると推察される。我が国も大病院を中心にカルバペネム系薬剤の偏向処方が問題になっているので、適正化は早期に終わらせておくべきである。なお、文中に予防のための手指衛生と無菌操作云々の重要性が書いてあるが、空気や周囲の環境を介した感染経路もあるので、プラクティカルな感染予防策だけでは、この菌のコントロールは非常に厄介であることを覚えておいてほしい。

3次紹介教育病院における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の疫学

Epidemiology of Pseudomonas aeruginosa in a tertiary referral teaching hospital

R.S. Bradbury*, A.C. Champion, D.W. Reid
*Royal Hobart Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 151-156


緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の遺伝子型識別不能株(genotypically indistinguishable strain)(オーストラリア流行株III;AES III)は、これまではオーストラリアのタスマニア州で嚢胞性線維症の成人患者の一部に認められていた。本研究の目的は、タスマニア州の主要な3次基幹紹介病院におけるこれらの感染源を特定するとともに、嚢胞性線維症患者の肺以外から分離されるかどうかを判定することである。合計120株の緑膿菌分離株を、病院内の臨床サンプルと環境サンプル、および病院周辺環境から採取した。DNA増幅断片多型(RAPD)-PCR法によりこれらの分離株の遺伝子タイピングを行い、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI;旧NCCLS)法による抗菌感受性試験を行った。RAPD-PCR法で特定した同一遺伝子型の確定検査を、制限酵素SpeIを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動法により行った。AES IIIは、嚢胞性線維症患者の気道分泌物以外のサンプルからは回収されなかった。嚢胞性線維症患者以外に由来する緑膿菌は、ランダム交配集団(panmictic)であることが示され、患者に病院環境株の交差感染または獲得は認められなかった。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
嚢胞性線維症はコーカサス人種に発生する遺伝病であり、我が国ではほとんどみられない。ただし、我が国でみられるびまん性汎細気管支炎は、この類縁疾患であろうとする仮説もある。嚢胞性線維症では多剤耐性緑膿菌感染が問題となっているが、これは抗菌薬による治療歴の影響であるのか、病院環境中のリザーバからの交差感染であるかの議論がいまだに決着していない。今回の論文では、環境由来の株には遺伝的多様性があることから、後者を支持するデータは認められなかったと報告している。

監訳者注:
遺伝子型識別不能株(genotypically indistinguishable strain):緑膿菌はPCRベースのタイピング法では識別能力が技術的に低いので、たとえ同じ遺伝型を示していても同一の菌株であるか否かは不明であるために、indistinguishable(識別不能)として取り扱っている。

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼをコードするプラスミドに関連する2種類の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)クローンの継時的定着によって発生した新生児病棟における広範なアウトブレイクの根絶★★

Eradication of an extensive outbreak in a neonatal unit caused by two sequential Klebsiella pneumoniae clones harbouring related plasmids encoding an extended-spectrum β-lactamase

C. Velasco*, J. Rodriguez-Bano, L. Garcia, P. Diaz, C. Lupion, L. Duran, A. Pascual
*Facultad de Medicina, Spain

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 157-163


基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるアウトブレイクの制御は困難であり、発生した病棟の閉鎖が必要となることもある。28床の新生児部門で2005年8月に始まり7か月間継続したESBL産生K. pneumoniaeアウトブレイクについて報告する。調査期間中に入院した全乳児から週1回、直腸スワブを採取した。すべての手技の調査、接触予防策、徹底した環境清掃、およびセファロスポリン使用の制限を実施した。Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の勧告に従ってESBL産生を調べ、等電点電気泳動とシークエンシングにより特性を確認した。パルスフィールド・ゲル電気泳動法を用い、分離株の遺伝子型を評価した。プラスミドについても調べた。アウトブレイク中、入院した乳児503例の32%に保菌が認められ、9例が菌血症を発症したが、これらの乳児は全員回復した。このアウトブレイクは2006年2月に終息した。2つの異なるクローンが認められ、最初のクローンは2005年8月から10月、2番目は2005年10月から2006年2月に蔓延した。両クローンはともに非ESBL SHV-11およびTEM-4 ESBLを有していた。TEM-4を有する両クローンのプラスミドは類似しており、分子解析から単一プラスミドの両クローン間での水平伝播が示唆された。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
ESBLをコードした遺伝子はプラスミド上に存在し、形質転換(transformation)により菌種を超えて自由に水平伝達されていく。よって、入院中の患者や環境中の細菌(主に腸内細菌科のグラム陰性菌)にプラスミドが保持されたままだと、これが遺伝子のリザーバとなり、本論文でみられるように異なったクローンへ受け渡される現象が起きる。よって、手指衛生と接触感染予防策、環境整備だけでは制御が困難になるので、必ず第3/4世代セフェム系抗菌薬の適正化を同時に行う必要がある。

モノクロラミンおよびクロラミンTの殺菌活性の比較

Microbicidal activity of monochloramine and chloramine T compared

R. Arnitz*, M. Nagl, W. Gottardi
*Innsbruck Medical University, Austria

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 164-170


クロラミンT(CAT)およびモノクロラミン(NH2Cl)は活性塩素化合物であり、殺生物剤(バイオサイド)として知られている。クロラミンTは、分子量が小さく脂溶性が高いモノクロラミンより酸化活性が高い。これにより、酸化活性の低さを高い脂溶性によって補えるか否かが問題となる。この問題に対処するために、純モノクロラミンの抗菌活性および抗真菌活性をクロラミンTと比較検討した。20℃、pH 7.1の等モルのクロラミンTおよびモノクロラミン溶液中で、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラーブス(A. flavus)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の定量的殺菌試験(killing assay)を行った。モノクロラミンは、全試験株に対してすべての試験濃度下でクロラミンTよりも優れていた。濃度0.036 mMでは、モノクロラミンは1分以内に大腸菌の菌数を、5分以内に黄色ブドウ球菌の菌数を、いずれも3 log10減少させたのに対し、クロラミンTは同じ効果を示すのにそれぞれ120分、30分を要した。濃度0.107 mMでは、モノクロラミンは5分後に緑膿菌を3 log10減少させたのに対し、クロラミンTは20分後であった。モノクロラミン0.355 mMは30秒以内にC. albicansを2 log10減少させたのに対し、クロラミンT 0.355 mMで同様の減少を得るためには60分を要した。両消毒薬の差は、アスペルギルス属を用いた試験でさらに顕著であった。モノクロラミンは酸化活性が低いにもかかわらず、クロラミンTよりも抗菌活性および抗真菌活性が有意に高かった。この現象は、その脂溶性および分子量が小さいことに起因する可能性があり、クロラミン含有消毒薬を開発する場合や使用する場合には考慮する必要がある。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
同じ活性塩素化合物系統でバイオサイドとしての性能比較をした論文である。脂溶性が高いということは、細胞内への浸透性が良いということを意味しており、これが有効性の差と関係しているのではないだろうか?

英国とアイルランドの医科大学における医療関連感染症の教育と学習に関する調査★★

Survey of teaching/learning of healthcare-associated infections in UK and Irish medical schools

D. O’Brien*, J. Richards, K.E. Walton, M.G.A. Phillips, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 171-175


すべての医師は、医療関連感染症の診断、管理、および予防に重要な役割を果たしている。医師と医学生の医療関連感染症予防プログラムへの寄与を強化するには、知識の向上、技術の改善、および患者ケアの安全性と質に対する適切な姿勢を身につけることが必要である。Hospital Infection Society(HIS)の資金援助により、英国およびアイルランド共和国のすべての医科大学を対象として医学教育に関する調査を行った。質問票を作成してすべての医科大学に配布し、38校中31校(82%)から回答を得た。医療関連感染症の有病率および伝播について教えている医科大学はそれぞれ97%、100%であったが、医療の質と安全性の問題としての医療関連感染症の重要性を教えているのは60%のみであった。医学生を評価する方法としては、多肢選択問題(MCQ)と客観的臨床能力試験(OSCE)の採用率が高かった。講義、症例検討、および実技デモンストレーションを有益と考えている医科大学は90%を超え、オンライン教材は67%、業務日誌は60%が有益性を認めていた。蓄積された共通の教育資源を共有することに前向きなのは80%以上であった。最適な評価法についての概要をまとめ、蓄積された教育資源を共有するためには、医療関連感染症の予防と制御に関する医学生指導用カリキュラムを合意を得て作成する必要がある。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
英国では、感染制御部門の部長をDirector of Infection Prevention and Control(DIPC)として各病院に配置が義務付けられており、患者安全委員会(Patient Safety Committee)への出席が義務付けられている。これは感染制御が病院の収益向上云々の問題からではなく、医療安全と質の観点から患者の権利を保護する意味合いが、社会的により強くなっていることを反映している。我が国も正しい方向で患者の権利を守る機運が高まることを期待している。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.