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手指擦式製剤および手洗い製剤の殺微生物活性の評価方法

Methods to evaluate the microbicidal activities of hand-rub and hand-wash agents

M. Rotter*, S. Sattar, S. Dharan, B. Allegranzi, E. Mathai, D. Pittet
*Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 191-199


キャリアーを用いたin vitroの検査、懸濁試験、殺菌効果曲線、最小発育阻止濃度測定による手指消毒剤の殺微生物活性の評価では、特定の製剤の抗微生物スペクトルおよび作用速度についての予備的指標しか明らかにすることができない。ヒトや動物の皮膚を用いたex vivo試験を、臨床での条件を反映したヒトの皮膚温度と曝露時間で実施すれば、手指を介して伝播する病原体に対する製剤の有効性についての良好な指標が得られると考えられる。また、消毒前後における手指の皮膚微生物叢のレベルに関する実地試験は、比較的容易に実施できると思われるが、制御不可能な様々な因子の影響を受ける。無作為化臨床試験は、手指消毒プロトコールの効果および製剤による微生物の交差伝播予防の効果、最終的には感染予防効果を評価する最良の手法であると考えられるが、膨大な費用と時間を要し、デザインの難易度が高く、実際的ではない。したがって、臨床的に推奨される製剤の使用法を厳密にシミュレートした、よくデザインされたプロトコールによる、ヒトの手指を対象としたin vivo試験を最優先とするべきであり、臨床試験はおそらくその次となる。これらの方法を実施すれば、医療環境における手指を介した病原体の伝播の製剤による予防効果について、有用なデータが得られる可能性が最も高いと考えられる。この総説では、欧州および北米において、手指消毒剤に関する規制要件を満たすために現在使用されている方法に対する批判的評価を行う。

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監訳者コメント:
手指衛生のための製剤を評価する方法には、欧州標準化委員会(CEN;European Committee for Standardization; Comite Europeen de Normalisation)による基準やアメリカ材料試験協会(American Society for Testing and Materials)から発展した ASTM Internationalによる基準、さらにASTM Internationalを参照した米合衆国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Agency)による基準(TFM;Tentative Final Monograph)やカナダ保健省(Health Canada)による基準がある。世界保健機関(WHO)による「医療における手指衛生のガイドライン(World Health Organization Guidelines on Hand Hygiene in Health Care)」の中にも同様の記載がある。

H1N1インフルエンザの到来

H1N1 influenza is here

S.M. Burns*
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 200-202


6月11日(監訳者註:日本時間2009年6月12日)、WHOはH1N1インフルエンザ流行がパンデミック・フェーズ6に到達したと宣言した。それ以降、世界中の国々が継続的なパンデミックに対する計画および備えを強化している。ガイドラインが公表され配布されているが、その解釈について混乱が続いている。我々は、制御対策の背景にある基本原理をよく認識し、急性期の病院環境における標準的な感染制御対策の教育と強化を行う必要がある。

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監訳者コメント:
新型インフルエンザA/H1N1 2009ウイルスの流行の今後について予想することは困難である。医療提供体制を含む公衆衛生的な対応はモニタリングの結果に従ってさらに検討を続けていく必要があるが、いずれにせよ、医療現場にあっては隔離予防策の原則に従った冷静な対応が求められる。

地域医療における医療従事者のインフルエンザワクチン接種のための共同アプローチ

Co-ordinated approach to healthcare worker influenza vaccination in an area health service

T. Ballestas*, S.P. McEvoy, J. Doyle, on behalf of the SMAHS Healthcare Worker Influenza Vaccination Working Party
*South Metropolitan Public Health Unit, Western Australia

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 203-209


2008年に西オーストラリア州パースの南部都市地域医療サービス(South Metropolitan Area Health Service;SMAHS)の5病院で、地域における医療従事者のインフルエンザワクチン接種率の向上を目的として、地域共同インフルエンザワクチン接種キャンペーンを実施した。このプログラムにおいては宣伝活動とデータ収集を標準化して、各対象者から同意書を取得した。分母データは、西オーストラリア州保健局の職員データベースから取得した。各病院の接種率を算出して、2007年と比較するとともに、ワクチン接種の予測因子を横断調査により追跡して特定した。合計6,387回のインフルエンザワクチン接種が実施された。2008年の接種率は1病院を除くすべての病院で55%を超えた(範囲48.8%~76.5%)のに対して、2007年は55%に達した病院はなかった(範囲29%~51%)。ワクチン接種率はコメディカル職員が最も高く(57.7%)、次いで医師(51.9%)、看護師(49.6%)、患者支援スタッフ(48.6%)の順であった。週20時間以上の勤務となる医療従事者では58.8%が接種を受けていた。ワクチン接種を受けた主な理由はインフルエンザ予防、感染拡大の抑制、およびプログラムが利用できたことであった。また横断調査から、自分はインフルエンザに易感染性であること、インフルエンザは重大な疾患であること、およびワクチン接種が有効かつ重要であることを認識していた医療従事者は、接種率が有意に高いことが示された。医療従事者のインフルエンザワクチン接種のための地域全体でのアプローチにより、接種率は大幅に向上し得る。作業部会による定期的なミーティング、一貫した宣伝活動、標準化されたデータ収集・分析、および上級管理者の協力が重要な要素であり、他の環境においても医療従事者のワクチン接種率の向上に利用できると考えられる。

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監訳者コメント:
医療従事者におけるインフルエンザワクチン接種は、医療安全の基本的要素として考える必要があり、あらゆる手段を用いて接種率の向上を図る必要がある。もっとも、わが国では多くの医療施設で90%を超える高いインフルエンザワクチン接種率が報告されている。

体外式膜型人工肺使用中の院内感染のリスク因子

Risk factors for nosocomial infection during extracorporeal membrane oxygenation

M.-S. Hsu*, K.-M. Chiu, Y.-T. Huang, K.-L. Kao, S.-H. Chu, C.-H. Liao
*Far Eastern Memorial Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 210-216


生命維持のために体外式膜型人工肺(ECMO)を使用する患者が増加している。この研究の目的はECMOを使用している成人患者を対象に院内感染症の発生率およびリスク因子を調べることである。2001年から2007年に亜東紀念醫院(Far Eastern Memorial Hospital)で72時間を超えてECMOを使用した成人例の診療録をレビューした。ECMO関連院内感染症の定義は、ECMO開始24時間後からECMO中止48時間後までに発生した感染症とした。ECMOを使用した患者114例中10例(8.77%)に院内感染症エピソード12件が認められた。内訳は、肺炎4件、菌血症3件、手術部位感染症3件、尿路感染症2件であった。ECMO関連院内感染症の発生率は、1,000 ECMO・日あたり11.92件であった。ECMO使用期間および集中治療室(ICU)入室期間は、患者の院内感染症の有無で有意差がみられた(P < 0.001)。ECMOの10日間を超える使用は、院内感染症発生率の有意な上昇と関連していた(P = 0.003)。グラム陰性桿菌は院内感染症の78%に関与していた。単変量解析ではICU入室期間およびECMO使用期間は院内感染症と有意に関連していた。多変量解析ではECMO 使用期間のみが院内感染症と独立して関連していた(P = 0.007)。全体として、この研究で特定されたECMO関連院内感染症の独立リスク因子は、長期間のECMO使用のみであった。

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監訳者コメント:
新型インフルエンザによる重症呼吸不全例の増加を受けて、体外式膜型人工肺(ECMO;extracorporeal membrane oxygenation)が広く注目されている。ECMOとは、呼吸不全に対して膜型人工肺を用いた体外循環による呼吸補助を目的とした装置である。
なお、経皮的心肺補助装置(PCPS;percutaneous cardio-pulmonary support)は、膜型人工肺と遠心ポンプを用いた閉鎖回路による人工心肺であるが、PCPSも呼吸補助を主体に考えればECMOということができる。純粋な呼吸補助を意図してPCPSと区別する場合、v-v ECMOと記載されることもあるようである。
いずれにせよ、侵襲的な医療処置には内在する感染症リスクがあり、曝露期間が長くなればそのリスクは高くなるという認識が重要である。

院内血流感染症発生率の相関:生態学的研究

Correlation of nosocomial bloodstream infection incidences: an ecological study

T. Benet*, P. Vanhems
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 217-224


この研究は、感染制御活動による環境面からの影響と院内血流感染症発生率との経時的な相関を見いだすことを目的とした。ある大学病院の血液内科病棟と集中治療病棟に48時間以上にわたって入院して、2004年1月1日から2006年6月30日に退院した患者全例を対象としてプロスペクティブに調査した。院内血流感染症の症例定義は、(1)通常の病原体の場合は血液培養が1回以上陽性かつ臨床的徴候があること、(2)コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、バチルス(Bacillus)属(ただし、炭疽菌[Bacillus anthracis]を除く)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、あるいは同等の病原性を有するその他の常在菌の場合は、48時間以内に同一の病原体が血液培養で2回以上陽性であることとした。3か月ごとの院内血流感染症発生率の相関をSpearman検定および直線回帰により評価した。合計で、対象患者数は3,829例、リスクのある延患者数は46,474患者・日であった。院内血流感染症と判定された患者数は集中治療病棟101例、血液内科病棟286例であった。院内血流感染症発生率は集中治療病棟と血液内科病棟の間に有意な相関がみられた(r = 0.68、P = 0.042)。病棟間の院内血流感染症発生率の線形モデルではR2= 0.52であり、正のトレンドが認められた(P = 0.029)。衛生対策の改善などの両病棟に共通する決定因子がこの関連に影響を及ぼした可能性が最も高い。

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監訳者コメント:
患者背景が異なり、物理的に離れた部署にあり、医療行為の内容や環境が異なる2つの病棟において、医療関連血流感染症の発生率がパラレルに推移することが報告された。フランスの大学病院からの報告であるが、感染制御チーム(ICT)による全病院的な手指衛生に関する教育プログラムが有効であったのではないか、と議論されている。

病院における有害事象と管理チャート:新たなパラダイムの必要性

Hospital adverse events and control charts: the need for a new paradigm

A. Morton*, A. Clements, M. Whitby
*Princess Alexandra Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 225-231


病院における経時的な有害事象発生率を示すために、管理チャートを使用することが多くなりつつある。管理チャートは安定的な予測可能なプロセスからの逸脱の検出を目的としてデザインされているため、平均値やそれに関連する時系列データの変動に関する情報を取り扱う場合に、プロセスが安定的で予測可能な状態にあるときから使用するのが適切である。手術部位感染症や手術関連死亡のようなバイナリ・データで表現される有害事象については、まさにその通りである。しかし、患者の転倒、褥瘡、誤投薬、あるいは多剤耐性微生物の新規分離などの事象では、安定的な予測可能な発生率が必ずしも判明しているとは限らない。さらに、抗菌薬使用と多剤耐性菌保菌率についてはデータが存在していないことが多い。このような場合は、データを分析・提示するためには時系列法を用いたほうがよい。スプライン回帰または一般化加法モデルを採用するのが簡便なアプローチである。

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監訳者コメント:
医療の現場においても品質管理の考え方が導入される傾向がある。この論文で言及されているのはシューハート(Shewhart)管理チャートで、一般的な品質管理ツールであり、品質が安定に管理されていることを確認するための経時的なデータを平均値、管理限界の上限および下限とともに図示する。わが国の品質管理の父、W・エドワード・デミングは「数量化できなければ管理することはできない」との言葉を残しているが、継続的な医療関連感染サーベイランスこそが、患者安全を確保する医療品質管理のための第一歩であるということもできる。

病院における感染制御に関する倫理的な枠組みは必要か?

Do we need an ethical framework for hospital infection control?

M. Millar*
*Barts and the London NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 232-238


病院における感染制御の戦略は、個人の自主性、行動の自由、または他者との接触を制限することにつながる可能性がある。医療従事者の(倫理的)実務規範は、個々の患者に対する責任を重視する傾向にある。公衆衛生に関する倫理的枠組みが対象とするのは、その大半が比較的健康で社会的能力を有する個人の集合(集団)である。病院感染制御の専門家はこの両方の視点をもち、脆弱で比較的依存度の高い入院患者集団の健康が損なわれないようにしながらも、感染者および感染性を有すると想定される患者のケアに留意する必要がある。この数年間に公衆衛生の倫理に関する一連の枠組みが提案されている。しかし、一般市民の健康の保護・促進を目指す集団的介入と、病院感染制御を背景とする介入には大きな相違があることから、病院感染制御に固有の倫理が求められる。このような枠組みを構築するためには、専門機関を設置することが最適であると考えられる。

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ドイツの集中治療室における多剤耐性菌感染症の地域的傾向:リアルタイムモデルによる疫学的モニタリングと解析

Regional trends in multidrug-resistant infections in German intensive care units: a real-time model for epidemiological monitoring and analysis

A. Kohlenberg*, F. Schwab, E. Meyer, M. Behnke, C. Geffers, P. Gastmeier
*Charite University Medicine, Germany

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 239-245


ドイツ院内感染サーベイランシステム(German Nosocomial Infection Surveillance System)の集中治療の構成要素として、多剤耐性菌を対象とした新たなサーベイランスモジュールが加えられた。参加する集中治療室(ICU)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、および基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)・肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(ESBL-EC/KP)の保菌・感染患者全員のデータを報告する。ドイツ国内におけるMRSA、VREおよびESBL-EC/KPの地域的分布を明らかにするため、2005年度と2006年度の各ICUにおけるこれらの細菌の1,000患者・日あたりの保菌密度(incidence density)を算出し、国内5地域のICU情報として蓄積した。合計176のICUの284,142例、延べ1,021,579患者・日から、多剤耐性菌症例5,490例のデータが報告された。蓄積された1,000患者・日あたりの保菌率はMRSA 4.54例、ESBL-EC/KP 0.54例、VRE 0.29例、1,000患者・日あたりの感染率はMRSA 1.56例、ESBL-EC/KP 0.32例、VRE 0.13例であった。MRSA感染率に有意な地域差は認められなかったが、VREおよびESBL-EC/KPの感染率には地域間に有意なばらつきがみられた。2005年から2006年にMRSA、ESBL-EC/KP、またはVRE感染を1件以上報告したICUの割合にも地域差がみられ、その範囲はMRSA 82%~91%、ESBL-EC/KP 34%~76%、VRE 8%~42%であった。この新たなサーベイランスモジュールにより、ICUが地域の保菌密度と国の基準との比較を通じて多剤耐性菌の発生をモニタリングすることが可能となり、ドイツでは多剤耐性菌に地域間の有意なばらつきがあることが示された。

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監訳者コメント:
ドイツ国内の地域間における耐性菌のターゲットサーベイランスをICUで行った報告である。欧州でも国により耐性菌の概況が異なることが分かっており、それらは隣接する国家間の影響があるのかが興味深い。

ドイツ院内感染サーベイランスシステム(German Nosocomial Infection Surveillance System)における2005年から2007年の異常値および人工呼吸器関連肺炎発生率の新たな特定★★

New identification of outliers and ventilator-associated pneumonia rates from 2005 to 2007 within the German Nosocomial Infection Surveillance System

E. Meyer*, D. Sohr, P. Gastmeier, C. Geffers
*Charite University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 246-252


本研究では、院内感染に関するドイツの病院サーベイランスシステム(Krankenhaus Infektions Surveillance System;KISS)から得られた、人工呼吸器の使用および人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率に関するデータを示す。2005年に米国疾病対策センター(CDC)の新しい定義が使用できるようになった。データが異常な範囲にある集中治療室(ICU)の特定にあたって、KISSが用いたこの新たな方法について報告する。1,000人工呼吸器使用日あたりのVAP症例数を算出し、異常値を特定するために新たな視覚的方法である漏斗プロット法を導入した。少ない人工呼吸器使用日数で観察されたVAP症例が少数の場合は、その発生率は偶然のばらつきに大きく影響されることが予想される。漏斗プロット法では、このようなイベント発生率と症例数との関係が考慮される。2005年1月から2007年12月までの期間に886,816例のサーベイランスデータが合計391のICUから報告され、VAPは6,896例、延べ3,113,983患者・日であった。CDCの新たな定義に従った平均VAP発生率は、1,000人工呼吸器使用日あたり5.5例であった(中央値4.4例)。全ICUの人工呼吸器の平均使用率は35.7%(中央値29.3%)であった。漏斗プロット法により異常値と特定されたICUは14.3%であり、その内訳は異常高値34施設、異常低値22施設であった。2008年以降、KISSの参加ICUでは漏斗プロット法による視覚的フィードバックが実施されている。漏斗プロット法はヒストグラムと比較して誤解釈が少なく、VAP増加に対する調査を実施すべきタイミングを示してくれる。

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監訳者コメント:
漏斗プロット法は大変興味深い分析手法である。ぜひ原著を読まれることをお勧めしたい。

インドの3病院からの院内感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の皮膚・軟部組織分離株の臨床的および分子的特性

Clinical and molecular characteristics of nosocomial meticillin-resistant Staphylococcus aureus skin and soft tissue isolates from three Indian hospitals

R. Gadepalli*, B. Dhawan, A. Kapil, V. Sreenivas, M. Jais, R. Gaind, R. Chaudhry, J.C. Samantaray, E.E. Udo
*All India Institute of Medical Sciences, India

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 253-263


インドの3病院において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内皮膚・軟部組織感染症のリスク因子を分析した。さらに、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)、multilocus sequence typing(MLST)、およびブドウ球菌カセット染色体(SCCmec)タイピングにより、MRSA分離株の抗菌薬耐性パターンと遺伝子型特性を判定した。黄色ブドウ球菌による院内皮膚・軟部組織感染症のために3つの3次病院に入院した患者709例のカルテを臨床的に評価した。米国臨床検査標準化協会(Clinical and Laboratory Standards Institute;CLSI)のガイドラインに従って患者の分離株の抗菌薬感受性試験を行い、マルチプレックスPCRによりメチシリン耐性とムピロシン耐性を確認した。MRSA分離株220株に対してPFGEによる分析を実施し、その結果に基づいて選択した分離株に対するMLSTおよびSCCmecタイピングを行った。MRSAが関連した感染症は、3病院でそれぞれ41%、31%、および7.5%であった。多重ロジスティック回帰分析から、MRSAによる皮膚・軟部組織感染症の独立予測因子は長期の入院[10日から19日の入院のオッズ比(OR)1.78、20日以上の入院のOR 2.83]、病院内の移動(OR 1.91)、非感染性皮膚疾患(OR 3.64)、骨髄炎(OR 2.9)、神経障害(OR 2.22)、アミノグリコシド系抗菌薬投与(OR 1.74)、およびクリンダマイシン投与(OR 4.73)であった。3病院すべてのMRSA分離株が多剤耐性であり、15のクローン(I~XV)が確認された。菌株の大半はSCCmec III型であった。最も高頻度に検出されたシークエンス型(ST)239は、PFGEによるクローンIIIにおける代表的なMLSTシークエンス型と考えられた。この主要なMRSAクローンIIIは英国由来のEMRSA-1と密接な関連があり、抗菌薬耐性が極めて強かった。インド亜大陸ではMRSAの多剤耐性クローンが拡散しているため、耐性遺伝子型を継続的に追跡する必要がある。

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監訳者コメント:
英国と繋がりの深い国で、英国内と同様の流行型MRSA株が存在することは興味深い。多型性解析法は沢山あるが、それぞれの重み付けは異なることから,疫学的な重み付けの判断には注意を要する。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)臨床ガイドラインに関する英国の医療従事者の知識:質問票による調査

UK healthcare workers' knowledge of meticillin-resistant Staphylococcus aureus practice guidelines; a questionnaire study

R.R.W. Brady*, C. McDermott, F. Cameron, C. Graham, A.P. Gibb
*University of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 264-270


効果的な感染制御を実施するためには、最新の感染制御ガイドラインの知識と遵守が必要である。多くの適切な医療従事者群を対象として、最近発表されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)予防に関するガイドラインの知識を、新しい質問票ツールを用いて評価した。英国のMRSA臨床ガイドラインに基づいて、正誤を問う10題の問題からなる質問票を作成した。この質問票で、医療従事者群および対照群の合計293名の知識を評価した。対象者は、英国医学会の年次代表者会議に参加した医師188名、外科研修医学会(Association of Surgeons in Training)の年次集会に参加した外科研修医52名、非臨床対照集団30名、および感染制御看護師(ICN)23名であった。知識レベルのスコアの平均値(SD)は医師6.6(1.68)、非臨床対照集団4.7(1.8)、およびICN 8.4(1.12)であった。知識レベルは職種群間(P < 0.001)、対象者の英国の勤務地(UK employment region)(P = 0.01)、および医師の専門分野(P = 0.02)で有意差が認められた。対象者の職階および性別は、知識レベルの相違と有意な関連がなかった。今回の質問票調査は、非臨床集団、医療従事者、および感染制御専門スタッフにおけるMRSA臨床ガイドラインに関する知識レベルを判別するための識別力のある新しい質問票ツールを評価したものであり、MRSAに関する教育的介入を迅速に評価するための手段を提供する。著者らは、これらの知識レベルが低いことと関連する医療従事者集団の人口統計学的データを示した。知識向上のための医療従事者に対する現行の教育プログラムの修正およびMRSA予防策の最善の実践を考慮する必要がある。

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監訳者コメント:
こと院内感染が問題で政府が取り組んでいる英国においても感染対策についての医療従事者の個人差はかなり幅が広く、対策のあり方の根幹を揺るがしかねない報告である。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による苦痛:保菌状態の経験および理解

Suffering from meticillin-resistant Staphylococcus aureus: experiences and understandings of colonization

M. Lindberg*, M. Carlsson, M. Hogman, B. Skytt
*Uppsala University/County Council of Gavleborg, Sweden

Journal of Hospital Infection (2009) 73, 271-277


本研究の目的は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)保菌状態に関する個人の経験および理解を調査することである。13名に面談を行い、内容分析法で解析した結果、「侵害(invaded)、不安(insecure)、および孤独(alone)」という主題が浮かび上がった。参加者らは、日常生活の中で恐怖や制限を経験し、それとともに他者を感染から守る必要性を表明した。さらに、彼らは医療従事者によって対応や情報が異なると感じ、満足している者もいれば満足していない者もいた。報告されている恐怖、制限、および不十分な患者-医療従事者の関係が、MRSA保菌者に受け入れがたい苦痛をもたらしていた。したがって、医療部門はMRSA管理について責任を負うべきであり、医療従事者はMRSA保菌者のニーズに適切に応えるために、専門性および情報提供能力を向上させる必要がある。

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監訳者コメント:
保菌者のメンタルな支援体制を確立するために、その現状把握は重要である。感染看護において今後、我が国でも真剣に取り組むべきテーマである。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.