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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

メチシリンン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)除菌のレジメンにおけるオクテニジン二塩酸塩の利用:文献レビュー

Use of octenidine dihydrochloride in meticillin resistant Staphylococcus aureus decolonization regimens: a literature review

B.V.S. Krishna*, A.P. Gibb
*Lothian University Hospitals Division, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 199-203


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)保菌患者の除菌は、病院内でMRSAを制圧する方法の1つとして推奨されているが、使用できる薬剤の選択肢は限られている。オクテニジン二塩酸塩は比較的新しい消毒薬であり、一部の国々でMRSA除菌に利用されている。MRSA除菌に対するこの薬剤の利用について入手が可能な文献をレビューしたところ、4件の観察研究しか見いだされなかった。これらはいずれも小規模な研究であり、研究デザインは異なっていた。MRSA除菌率は6%から75%と報告されていた。これらの研究には創部保菌患者は含まれていたが、このうち2件の研究では体毛の処置について記載がなかった。オクテニジンのMRSA除菌効果はクロルヘキシジンと同等であり、有害事象はより少ないと考えられたが、臨床環境での有用性を確認するには、MRSA除菌のための皮膚消毒薬としてオクテニジンを組み入れた大規模無作為化臨床試験を行う必要がある。

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監訳者コメント
臨床的にMRSA除菌の選択肢は限られており、わが国においては鼻腔内ムピロシン投与による方法しかない。まだ日本でオクテニジンは利用されていないが、今後の展開を注目したい。

擦式アルコール手指消毒製剤の使用によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)への影響:文献の解析★★

Impact of alcohol hand-rub use on meticillin-resistant Staphylococcus aureus: an analysis of the literature

S. Sroka*, P. Gastmeier, E. Meyer
*Charite University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 204-211


この総説の目的はアルコール手指消毒の影響を評価することであり、擦式アルコール手指消毒製剤(監訳者注:擦式アルコール手指消毒製剤消費量)を遵守の代用パラメータとして、あるいは遵守行動が病院の環境におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の状態に及ぼす結果を観察した。「手指衛生」、「遵守」、「消毒」、「時系列分析」のキーワードを「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌/MRSA」と組み合わせてMedlineを検索した。擦式アルコール手指消毒製剤の正確な使用数またはアルコール手指消毒の遵守状況の観察結果、および病院内のMRSAの状態を経時的に報告している研究のデータのみを使用した。文献検索で272件がヒットして、その12件の研究が適格基準に合致した。擦式アルコール製剤の使用量は、介入研究の開始時ではのべ患者・日数あたり3 mLから78 mLであったが、終了時はのべ患者・日数あたり12 mLから103 mLに増加した。手指消毒の遵守率は、開始時20%から64%の範囲、終了時は42%から71%であった。擦式アルコール手指消毒製剤使用量の増加とMRSAの状態の改善との間に有意な相関がみられた(r = 0.78)が、遵守とMRSAの状態との間に相関はなかった。擦式アルコール手指消毒製剤の使用量の増加はMRSA検出率の有意な減少と関連していた。

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監訳者コメント
手指衛生は最も基本的な感染対策ではあるが、現場における実践(アドヒアランス)・遵守(コンプライアンス)は困難である。しかし、手指衛生を改善すると病院環境におけるMRSAの状況は改善する科学的根拠が示されており、特にMRSAが多く、個床病室が少ない、わが国の医療環境においては手指衛生の重要性は一層に認識されるべきである。

衛生的手指消毒における擦式手指消毒薬使用量の手指の微生物数減少に及ぼす影響

Impact of the amount of hand rub applied in hygienic hand disinfection on the reduction of microbial counts on hands

P. Goroncy-Bermes*, T. Koburger, B. Meyer
*Schulke & Mayr GmbH, Germany

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 212-218


2種類の擦式手指消毒薬を対象として、殺菌効果を得るために必要な最少量を調べるために、欧州規格(EN)1500に従って研究を実施した。また、手の大きさとの相関を評価することも目的とした。今回の研究の参加者は、手が大きい(平均184 cm2)男性ボランティア8名および手がかなり小さい(平均148 cm2P < 0.001)女性ボランティア8名であった。いずれの製品でも2 mLを使用した場合の平均log10減少値は、対照消毒薬よりも有意に小さかった(製品A:製品3.34、対照4.00、P = 0.001;製品B:製品3.37、対照3.75、P = 0.022)。使用量が増えた場合(製品A:3および4 mL;製品B:2.5、3、および4 mL)は、EN 1500の合格基準に到達した。両製品とも使用量が増えるとlog10減少値が増加してプラトーに達した。手の小さい女性では、製品Aは3 mL、製品Bは2.5 mLを使用したときにプラトーに達した。男性の手の場合のプラトーは、製品Aは4 mL以上、製品Bは3 mLを使用したときにみられた。また、製品使用量の増加は、使用量が十分ではないと感じるボランティアの数の減少とも相関していた。結論として、擦式手指消毒薬による効果の最大化を図るためには、使用量が3 mLを下回らないようにすべきである。

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監訳者コメント
擦式アルコール手指消毒薬も十分量を使用しないと十分な効果が得られず、この論文では少なくとも3 mLを手に取るべきであると結論している。やはり手指衛生にも正しい方法があり、手の全体を消毒するように手技を徹底する必要がある。

アルコール性ハンドジェルの抗菌効果

Antimicrobial efficacy of alcohol-based hand gels

M. Guilhermetti*, L.A. Marques Wiirzler, B. Castanheira Facio, M. da Silva Furlan, W. Campo Meschial, M.C. Bronharo Tognim, L. Botelho Garcia, C. Luiz Cardoso
*State University of Maringa, Brazil

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 219-224


近年、医療従事者の手指消毒遵守の改善を目的として、複数のアルコールハンドジェルが市販されている。これらの製品の抗菌効果について各国から報告されているが、ブラジルでの研究はほとんどない。この研究では、活性成分として70% w/w(またはv/v※※)エタノールを含有するブラジル製の12種類のハンドジェルの抗菌効果を欧州標準1500(EN1500)に基づいて評価した。対象としたアルコールジェルはHand Gel、Voga Gel、Solumax Solugel、Doctor Clean、Rio Gel、Clear Gel、Sevengel、Hand CHC、Gel Bac、WBL-50 Gel、Sanigel、およびSoft Care Gelである。さらに、70% w/wエタノール、および欧州で一般的に使用されEN1500に基づいて有効とされている3種類の擦式アルコール製剤(Sterillium、Sterillium Gel、およびSpitaderm)についても試験を行った。2種類を除くその他の製品は、製品を60秒間使用するEN1500の試験プロトコールの基準に合致した。この結果から医療従事者の手指衛生を目的とするブラジル製のアルコールジェルは、その大半が抗菌効果を有することが確認された。

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監訳者コメント
この研究はブラジル製品に関する報告であり、わが国においては直接的な影響は少ないが、抗菌効果が不十分であると名指しされた2つの商品の立場は?

監訳者注
w/w:重量比。
※※v/v:容量比。

Clean Hands for Life(命のためのきれいな手)邃「:ソーシャル・マーケティングの手法を用いた大規模多施設多角的な手指衛生キャンペーン★★

Clean Hands for Life邃「: results of a large, multicentre, multifaceted, social marketing hand-hygiene campaign

L.A. Forrester*, E.A. Bryce, A.K. Mediaa
*Vancouver Coastal Health, Canada

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 225-231


医療従事者の手指衛生行動に影響を及ぼす個人要因、環境要因、および組織要因を明らかにするために、Clean Hands for Life(命のためのきれいな手)邃「と称する1年間にわたる多角的な手指衛生キャンペーンを、バンクーバー沿岸地域保健機関(Vancouver Coastal Health)の管轄地域にある急性期ケアおよび長期ケアの36施設で実施した。キャンペーンの内容は、10種類のポスターの順次掲示、2回のポスターコンテストの実施、および複数のキャンペーン促進アイテムの配布であった。ソーシャル・マーケティングの手法を用いてキャンペーンを実施して、その効果をモニターした。評価方法は、品質保証調査、医療従事者調査(ベースライン、キャンペーン中、およびキャンペーン後)、およびフォーカス・グループである。ポスターコンテストで受理された応募件数は合計141件、完了した医療従事者調査件数は5,452件、およびフォーカス・グループの実施回数は14件であった。ベースライン時の手指衛生の重要性および手洗いの目的に関する全般的な認知度は高かった。キャンペーン中およびキャンペーン後のスコアは、ベースラインと比較して、有意差は認められなかった。大半の医療従事者(89.5%)は、石けんと水による洗浄をアルコールハンドジェルよりも好んでいると報告した。自己報告による手指衛生用品の使用率の有意の改善が認められ、特に直接的な患者ケアを行っていない医療従事者で高かった。手指衛生の障壁となっていたのは、設置が不適切なシンク、動線の問題、手指衛生用品の設置が不十分な手洗い場、労働負荷、および時間的制約であった。キャンペーン期間を通じて、施設の支援が得られた。これらの結果から、ソーシャル・マーケティングの手法は、医療従事者の関心を引くために有効なアプローチであることが示された。医療従事者の認知を図ることに大半の力を注いだ手指衛生キャンペーンでは、多角的キャンペーンまたは特定の手指衛生の障壁を標的としたキャンペーンほどの効果は得られない可能性がある。

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監訳者コメント
一般的にマーケティングとは、企業が顧客にとって価値のある製品やサービスを提供するのに必要なすべての要素をコントロールして、顧客から信頼を勝ち取り、継続的に成長することを目的とする。一方、ソーシャル・マーケティングとは、社会的問題を解決するために、理念、行動指針への認知と理解を上げ、社会に浸透させるためのマーケティング手法である。公共広告機構(現:ACジャパン)の活動や様々なレベルで展開されているストップ・エイズ・キャンペーンなどが実例である。
医療従事者にとって、手指衛生は最も基本的な感染対策でありながら、現場における実践(アドヒアランス)・遵守(コンプライアンス)の徹底が困難であることから、ソーシャル・マーケティングの手法を導入するべき対象と考えられる。「手をきれいにすると、あなたを守り、あなたの周りの人々を守ることができる。手をきれいにしてくれてありがとう。」などのメッセージを含む、多様なアプローチにより現場の医療従事者における手指衛生の徹底を図る必要がある。

積極的監視によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の伝播と医療資源の利用に及ぼす影響

Impact of active surveillance on meticillin-resistant Staphylococcus aureus transmission and hospital resource utilization

C. Martinez-Capolino*, K. Reyes, L. Johnson, J. Sullivan, L. Samuel, B. DiGiovine, M. Eichenhorn, H.M. Horst, P. Varelas, M.A. Mickey, R. Washburn, M. Zervos
*Henry Ford Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 232-237


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)を対象とした積極的監視培養の感染予防策としての意義について意見が分かれている。今回の前向きコホート研究では、MRSAの積極的監視培養が、3次ケア病院(病院1)および市中病院(病院2)の院内感染に及ぼす影響を分析した。両院ともにMRSA保菌率が高く、ミシガン州南東部の大規模医療システムに加入している。集中治療室(ICU)およびその他の病棟における院内感染を、ICUにおける積極的監視培養の実施前後で比較した。病院1では積極的監視培養によりMRSA保菌が認められた患者には、ICU入室において接触感染予防策を講じた。病院2の患者は入院期間を通して接触隔離策を継続した。ICU入室時のMRSA保菌率は、病院1で23%、病院2は13%であった。研究期間における平均新規保菌率は、病院1で1,000患者・日あたり1.85、病院2は3.47であった。人工呼吸器関連肺炎は両院で減少したが、病院全体でMRSA院内感染の減少が認められたのは病院2のみであった。結論として、MRSA院内感染が流行している地域における人工呼吸器関連肺炎およびMRSA院内感染の発生率低下に効果的な方策は、標準的な感染予防イニシアチブに加えて、接触感染予防策を前提とした積極的監視培養を実施することであると考えられる。

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監訳者コメント
この報告では、接触感染予防策を前提とした接触的監視培養がMRSA対策に有効であったが、その意義については様々な議論がある。基本的な手指衛生の実践こそが重要であるとの意見もあり、いずれにせよ、それぞれの環境における継続的なサーベイランス活動によって病院の対策を評価する地道な活動が必要であると認識するべきである。

台湾のある病院の集中治療室の成人入院患者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)鼻腔内保菌:一時点保菌率、分子的特性、および保菌のリスク因子

Nasal meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage among intensive care unit hospitalised adult patients in a Taiwanese medical centre: one time-point prevalence, molecular characteristics and risk factors for carriage

C.-B. Chen*, H.-C. Chang, Y.-C. Huang
*Chang Gung University, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 238-244


2008年6月25日から7月11日までに3次ケア病院の集中治療室(ICU)に入室した合計177例の成人患者(内科ICU 94例、外科ICU 83例)を対象として、PCR法によりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)鼻腔内保菌のスクリーニングを行った。患者の黄色ブドウ球菌およびMRSAの鼻腔内保菌率はそれぞれ42%、32%であった。内科ICU入室患者のMRSA保菌率は、外科ICU入室患者と比較すると有意に高かった(47%対16%、P < 0.001)。多変量ロジスティック回帰分析によるMRSA鼻腔内保菌の独立予測因子は、肺炎、慢性閉塞性肺疾患、現時点のMRSA感染症、および内科ICU入室であった。分子的解析が可能であったMRSA分離株38株に合計6つのパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)型が認められて、その2つが主要な型(F型42%、A型37%)であった。MRSA分離株の半数以上は、2つの主要なクローンであるシークエンス(ST)型5/PFGE F型/ブドウ球菌カセット染色体(SCCmec)II型/パントン-バレンタイン型ロイコシジン(PVL)遺伝子陰性(34%)およびST239/PFGE A型/SCCmec III型/PVL遺伝子陰性(26%)のいずれかに属しており、これらのクローンは台湾の医療関連感染クローンと関連していた。6株(16%)はST59/SCCmec IV型あるいはVT型であり、台湾の市中流行株と関連していた。結論として、2008年6月から7月までに台湾の3次ケア教育病院のICUに入室した成人患者の32%は、鼻腔内にMRSAを保菌していた。分離株の多くは医療関連MRSA由来であったが、一部は市中流行株であった。

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監訳者コメント
台湾におけるMRSAは1980年代前半から認められていたが、1990年代に急激に増加しており、2000年の調査(Hsueh PR, Liu CY, Luh KT. Current status of antimicrobial resistance in Taiwan. Emerg Infect Dis 2002;8:132-137)によれば臨床分離黄色ブドウ球菌株の53%から83%がMRSAとなっている。この論文によれば、台湾においても、市中流行型MRSA(CA-MRSA)であるST59/SCCmec IV型/PVL陰性株や ST59/SCCmec VT型/PVL陽性株がICUの中で認められるようになりつつあるようである。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)に対するリアルタイムPCR法のポイントオブケアとしての利用可能性試験★★

Feasibility study of a real-time PCR test for meticillin-resistant Staphylococcus aureus in a point of care setting

N.P. Brenwald*, N. Baker, B. Oppenheim
*City Hospital, Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 245-249


市販のリアルタイムPCRによるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)検査法が、ポイントオブケア検査として利用可能であるかどうかを検討した。GeneXpertシステムをSandwell and West Birmingham病院NHSトラストの4病棟と中央微生物検査室に設置した。GeneXpertシステムは定量的PCR装置であり、これを用いてMRSA検出キットであるXpert MRSAによる検査を実行する。この4病棟に新たに入院した患者の鼻腔内サンプルを双頭スワブで採取した。一方のスワブは検査室以外のスタッフが病棟のXpert MRSAを用いて検査し、もう一方のスワブは微生物検査室で検査した。全体で、患者930例から鼻腔内スワブ988件を採取した(2008年3月から6月)。検査を行ったスワブのうち947件から検査室と各病棟の両方で適切な結果(MRSA陽性または陰性)が得られ、病棟と検査室の結果の一致率は97.5%であった(MRSA陰性850件、MRSA陽性73件)。24件のスワブでは、病棟と検査室で得られた結果が一致しなかった。検査室でのMRSA検査に対する病棟での検査の感度、特異度、陽性的中率、および陰性的中率は、それぞれ83.9%、98.8%、88.0%、98.4%であった。結果が得られるまでの時間(平均)は、病棟のほうが検査室より10時間以上短かった。Xpert MRSA検査は病棟、検査室のいずれで実施しても同様に良好な成績を示した。MRSAに対するポイントオブケア検査の重要な利点は、検査室検査と比べて結果が得られるまでの時間が大幅に短縮されることであった。

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監訳者コメント
Point-of-care-testingとはいわゆる迅速診断のことである。POCTと検査領域では略される。ベッドサイドテストとも呼ばれる。その定義は曖昧だが、おおむね1時間以内に判定可能な検査診断手技と考えてよいだろう。GeneXpertシステムは米国Cepheid社の販売している遺伝子検査システムで、極めて短時間(80分程度)で結果を出すことが可能である。

時間間隔分布モデリングを用いた血流感染症の患者間伝播の検出

Detecting related cases of bloodstream infections using time-interval distribution modelling

H. Charvat*, L. Ayzac, R. Girard, S. Gardes, R. Ecochard
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 250-257


血流感染症の集団発生に対する地域の公衆衛生当局による特異的な施策の推進を図るために、院内感染サーベイランスシステムのデータを用いて、血流感染症の患者間伝播を検出するアルゴリズムを作成した。このアプローチは2段階の手順に基づく。第1段階は、異常に多数の症例が一部の場所で短期間に発生する病原体を特定するための検査である。第2段階では特定された病原体ごとに、連続した症例の時間的間隔の分布を2つの理論的分布を合成してモデル化し、時間的間隔がそれ以下になった場合に特定の調査を実施すべき閾値を決定した。このアルゴリズムを、フランスのリヨンの878床の教育病院(24病棟)で10年間(1996年から2005年)に収集した血流感染症調査データに適用した。第1段階では調査対象とした18種類の病原体のうち、7種類が異常な発生パターンを示したものと特定した。モデル化により、追加的調査を実施する必要がある集団発生を検出するための時間閾値を、事前に規定した感度および特異度ごとに決定することができた。感度レベルを95%に設定した場合の閾値の範囲は24日(アシネトバクター・バウマニー[Acinetobacter baumannii])から294日(エンテロバクター・クロアカエ[Enterobacter cloacae])であり、特異度はE. cloacae(52.1%)を除いて70%を超えた(最大値はA. baumanniiの97.5%)。特異度レベルを95%に設定すると、感度の低下がA. baumannii(ほぼ100%)以外でみられ、3種類の病原体では50%未満となった(肺炎レンサ球菌[Streptococcus pneumoniae]およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)約40%、E. cloacae 25%)。閾値の範囲は8日(肺炎レンサ球菌)から67日(Streptococcus pyogenes)であった。このアプローチは有望であることが示されたが、ルーチンで使用するためにはさらなる改良が必要である。

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監訳者コメント
数理疫学的手法による取り組みである。理論と実際の乖離を介入にきっかけとしているが、実際的には検査にかかるタイミングのずれや検査オーダーの発生に依存している点など、課題も多い。

監訳者注
時間的間隔がそれ以下になった場合に特定の調査を実施する閾値:2症例の発生間隔が閾値未満の場合は患者間伝播によるものと見なされるため、追加的調査が必要となる。

集中治療室感染の積極的サーベイランスによるベンチマークの設定:イタリアのSPIN-UTIネットワーク

Building a benchmark through active surveillance of intensive care unit-acquired infections: the Italian network SPIN-UTI

A. Agodi*, F. Auxilia, M. Barchitta, S. Brusaferro, D. D’Alessandro, M.T. Montagna, G.B. Orsi, C. Pasquarella, V. Torregrossa, C. Suetens, I. Mura, GISIO
*University of Catania, Italy

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 258-265


Hospital in Europe Link for Infection Control through Surveillance(HELICS)の集中治療室(ICU)のベンチマークに基づき、定義の標準化、データ収集、および報告手順を確立するために、Italian Study Group of Hospital Hygiene(GISIO-SItI)のItalian Nosocomial Infections Surveillance in Intensive Care Units(SPIN-UTI)プロジェクトを実施した。参加ICUには研究計画の段階からの参加を通じて本プロジェクトの中心的なステークホルダーに加わってもらうため、サーベイランス開始前のミーティングに参集させた。インターネットを介してデータを収集するため、電子データの書式を4種類作成した。サーベイランスについての1か月間のパイロット研究により、本プログラムの全体的な実現可能性の評価、および所要期間と参加病院のリソースの判定を実施した後に、2006年11月から2007年5月までに6か月間の患者対象の前向き調査を行った。SPIN-UTIプロジェクトの対象は、49のICU、2日を超える入院患者3,053例、延べ35,498患者・日であった。感染症の累積発生率は患者100例あたり19.8件、発生頻度は1,000患者・日あたり17.1件であった。最も発生頻度の高い感染症の種類は肺炎であり、感染症に関連した微生物で最も頻度が高かったのは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、次いで黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)とアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)であった。患者のリスク因子を基に層別化した肺炎、血流感染症、中心静脈カテーテル関連血流感染症、および尿路感染症の発生率は、HELICSネットワークのベンチマークとして報告された75パーセンタイル値よりも低かった。SPIN-UTIプロジェクトにより、イタリアの多くの病院で現行のサーベイランスの導入が可能であることが示された。本研究は、リスクに関連する因子を比較するとともに、より深く理解することを目的とした、ベンチマークデータを用いたHELICSプロジェクトに参加する機会を提供できた。

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4か国の医療関連感染症有病率調査:肺炎および下気道感染症

Four country healthcare-associated infection prevalence survey: pneumonia and lower respiratory tract infections

H. Humphreys*, R.G. Newcombe, J. Enstone, E.T.M. Smyth, G. McIlvenny, E. Davies, R. Spencer, on behalf of the Hospital Infection Society Steering Group
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 266-270


2006年、英国病院感染学会は医療関連感染症の有病率調査を実施するために、イングランド、ウェールズ、北アイルランド、およびアイルランド共和国の各公衆衛生当局から資金提供を受けた。本稿では、これらの4か国における肺炎および肺炎以外の下気道感染症の有病率を報告する。医療関連感染症の全有病率は7.59%(75,694例中5,743例)であった。これらの感染症のうち900例(15.7%)が肺炎、402例(7.0%)が肺炎以外の下気道感染症であった。両感染症の有病率は男性のほうが女性よりも高く、85歳を超える患者の有病率は35歳未満の3倍であった(P < 0.001)。調査時またはそれ以前の7日間の人工呼吸器装着率は、肺炎患者23.7%、肺炎以外の下気道感染症患者18.2%に対して、研究の全集団では5.2%であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)が起因菌であったのは肺炎患者7.6%、肺炎以外の下気道感染症患者18.1%であった(P < 0.001)。クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)による下痢の併発は肺炎以外の下気道感染症患者(4.2%)のほうが肺炎患者(2.4%)よりも多くみられたが、統計学的有意水準には達しなかった。肺炎患者137例(15.2%)と肺炎以外の下気道感染症患者66例(16.4%)は、その他の医療関連感染症を有していた。この結果から、可能な場合は人工呼吸器などの機器の使用を控えることが、感染症の減少に寄与することが示唆される。肺炎以外のMRSAによる下気道感染症の有病率が高かったことから、起因菌を同定する際の特異度が不十分であることが示唆され、またC. difficile感染との関連がみられたことから、抗菌薬のより適切な使用が重要であると考えられる。

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監訳者コメント
国家的な有病率調査による動向調査は極めて重要である。残念ながら我が国ではこうした取り組みが、いまだ行われていない。米国ではAPICが中心となり、点有病率調査をMRSAやクロストリジウム・ディフィシルで実施している。

感染制御バンドルによるパンデミックブタインフルエンザウイルス(A/H1N1)の院内感染予防

Prevention of nosocomial transmission of swine-origin pandemic influenza virus A/H1N1 by infection control bundle

V.C.C. Cheng*, J.W.M. Tai, L.M.W. Wong, J.F.W. Chan, I.W.S. Li, K.K.W. To, I.F.N. Hung, K.H. Chan, P.L. Ho, K.Y. Yuen
*Queen Mary Hospital, Hong Kong Special Administrative Region, China

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 271-277


香港では重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイク後、呼吸器ウイルスの院内感染予防が感染制御の最優先事項として重要視されている。ブタインフルエンザウイルスパンデミックの封じ込め期および被害軽減期早期(early mitigation phase)の院内感染を最小限に抑えるために、当院の感染制御チームが一連の複数の方策で構成される感染制御バンドルをまとめた。その内容は、職員による複数回の公開勉強会(高い出席率を達成)、様々な検査による入院患者中の初発症例の早期発見、罹患職員の早期自宅待機、アウトブレイク中の手指衛生の実践の直接監視、および感染制御の実践遵守のモニタリングなどである。臨床検査によりブタインフルエンザウイルスが確認された患者の最初の100例および医療従事者の感染者12例が特定された初期100日間(2009年5月1日から8月8日まで)で、合計836例(患者184例、医療従事者652例)の無症状曝露者に7日間の医学的サーベイランスの適用が求められた。感染制御看護師が曝露者の症状発現をモニターした。4例(0.48%)の曝露者(研修医1例、非臨床医療従事者2例、および患者1例)から、ブタインフルエンザウイルスがウイルス学的に確認された。初発患者と接触中の曝露者がサージカルマスクを着用しない場合(感染した曝露者4例中4例が非着用、感染しなかった曝露者832例中264例が非着用、P = 0.010)、または曝露者と接触中の初発患者がサージカルマスクを着用しない場合(感染した曝露者4例中4例の接触した初発患者が非着用、感染しなかった曝露者832例中300例の接触した初発患者が非着用、P = 0.017[Fisherの正確確率検定])のいずれも、サージカルマスクの非着用はブタインフルエンザウイルス院内感染の有意なリスク因子であることが判明した。

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監訳者コメント
H1N1の感染予防のための呼吸器防護器具の有効性については、N95タイプのマスクとサージカルマスクの実地疫学による調査情報が必要であり、今後類似の論文が数多く登場するであろう。

ブタインフルエンザ(H1N1)肺炎の院内感染:実際の症例から得られた教訓

Nosocomial swine influenza (H1N1) pneumonia: lessons learned from an illustrative case

B.A. Cunha*, V. Thekkel, L. Krilov
*Winthrop-University Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 278-281


2009年春、当施設はニューヨークにおけるブタインフルエンザ(H1N1)パンデミックの「前駆波」の渦中にあった。インフルエンザ様症状を呈する数百人の患者が、A型インフルエンザウイルスの迅速検査を求めて溢れかえっていた。このパンデミックの最中に、急性リンパ性白血病の初発乳児が導入化学療法のために入院した。入院から1週間後、患児は高熱と息切れを呈したが、胸部X線像は正常であった。人工呼吸器を使用するために小児集中治療室(PICU)に移された。パンデミックの最中であったためH1N1肺炎を疑ったところ、逆転写PCR法でH1N1陽性であった。接触者調査から、患児の家族・面会者の中にはインフルエンザ様症状やH1N1を有する者および直近に近接して接触した者はいないことが判明した。またこの調査により、H1N1患児と接触があった小児科医療従事者が、PICUでこの患児のケアを行ったことも明らかになった。個人の特定はできなかったが、小児科病棟とPICUの両方に勤務した医療従事者からH1N1が伝播したと考えられた。本症例は小児科においてH1N1肺炎院内感染が認められた初めての例である。

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監訳者コメント
新型インフルエンザの流行期における施設内感染予防は緊急の課題である。病床運営上、大きな課題だが根本的な解決策はなく、現状で持ち得る対策を徹底するしかない。面会者への対応やスタッフからの発症者等、対策は多岐に及ぶ。

英国の獣医師および感染したペットの飼い主に認められたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)保菌:新しいリスク群

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in UK veterinary staff and owners of infected pets: new risk groups

A. Loeffler*, D.U. Pfeiffer, D.H. Lloyd, H. Smith, R. Soares-Magalhaes, J.A. Lindsay
*Royal Veterinary College, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 74, 282-288


入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の鼻腔内保菌は、その後の感染の最も重要なリスク因子の1つである。感染制御プログラムを成功させるためには、MRSA保菌の高リスク群の特定が極めて重要である。獣医師はこうしたリスク群の1種であると考えられるが、ペットの飼い主について、および感染したペットとの接触の重要性については明らかにされていない。2005年から2008年にかけて、英国全域で犬と猫のMRSA感染のリスク因子を調査した症例対照研究の一環として、MRSAに感染したペット106匹およびメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)に感染したペット91匹と接触した獣医師および飼い主608名を対象に、黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌のスクリーニングを実施した。臨床検査室での分離および特性評価として、食塩ブロスでの増菌培養、標準微生物検査と自動微生物検査、黄色ブドウ球菌に特異的なサーモヌクレアーゼ遺伝子(nuc)およびmecAの検出、およびPCR法による系統解析を行った。MRSA保菌率は、MRSAに感染した動物を診療した獣医師12.3%、飼い主7.5%であった。対照群であるMSSAに感染した動物では、MRSAの保菌は獣医師の4.8%にみられたが、飼い主には認められなかった。獣医師は飼い主よりもMRSA保菌率が高かった(オッズ比2.33、95%信頼区間1.10~4.93)。ヒトから採取したすべてのMRSAと、1頭を除く動物から採取したすべてのMRSAは、英国の病院感染型MRSAに典型的なCC22またはCC30であった。本研究により、小動物獣医師には職業的なMRSA保菌リスクが存在することが初めて示された。獣医師およびMRSAに感染したペットの飼い主は、病院と直接的な関連がない場合であってもMRSA保菌の高リスク群である。MRSA感染の悪循環を断つための戦略では、これらの新たな潜在的リザーバを考慮しなければならない。

サマリー 原文(英語)はこちら

監訳者コメント
動物が耐性菌の運び屋となることは既知の事実である。ことに市中獲得型化したMRSAの運び屋として、愛玩動物の疫学は今後重要となる。

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