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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis):持続的な院内感染グラム陰性菌

Sphingomonas paucimobilis: a persistent Gram-negative nosocomial infectious organism

M.P. Ryan*, C.C. Adley
*University of Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 153-157


ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌は、極めて広範に認められる院内感染症の起因菌であり、臨床環境に重大な問題を引き起こしている。これらは平素は無害病原体(監訳者註:いわゆる日和見病原体)であり、患者の基礎状態や基礎疾患によっては感染症を生じる。ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌のスフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)は、臨床的な重要性は小さいと考えられているが、文献的にはこの菌による多数の感染例が報告されている。これらの感染症には蒸留水、血液透析液、滅菌薬液などの汚染溶液によって生じる菌血症・敗血症がある。S. paucimobilisに関連しては偽性菌血症の症例報告があるが、一方では、細菌性関節炎や骨髄炎などのまれな重度かつ侵襲性の感染症症例も少なくない。S. paucimobilisに関連する文献の中に死亡例は認められなかった。この総説では、S. paucimobilisがこれまで考えられていたよりも重要な病原体であることを示す。

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監訳者コメント
スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)は、様々な環境に広く認められるブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌であり、かつては宇宙船ミールの中でも認められたことがあるような適応性にも富んだ細菌である。医療環境に由来する病原体細菌としては、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やアシネトバクター属(Acinetobacter spp.)などのブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、腸内細菌科に属するセラチア属(Serratia spp.)、芽胞産生性であるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)やバシルス・セレウス(Bacillus cereus)などがあり、感染防止対策としても医療環境整備は重要である。

検査確認された病院血流感染症:全国サーベイランスのデータと臨床および財務に関する病院のデータとを関連づけて入院期間延長と医療費増加を評価する

Hospital-acquired, laboratory-confirmed bloodstream infections: linking national surveillance data to clinical and financial hospital data to estimate increased length of stay and healthcare costs

F. Vrijens*, F. Hulstaert, S. Van de Sande, S. Devriese, I. Morales, Y. Parmentier
*Belgian Health Care Knowledge Centre, Belgium

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 158窶・62


この対照化コホート研究では、ベルギーの急性期病院19施設から収集した患者1,839例(年齢範囲1歳未満から80歳超)を対象として、病院血流感染症(HA-BSI)が入院期間および入院医療費に及ぼす影響を推定する。この研究の副次的な目的は、マッチング基準の選択の影響を評価することである。患者の医療記録の機密保持にかかわる権利に配慮しつつ、HA-BSIの全国サーベイランスのデータと病院が管理する退院データを関連づけた。対照は、マッチさせる因子として、病院、全患者精密化診断群分類、年齢、主疾患、Charlson併存疾患指数、および感染症までの期間の中からいくつかを組み合せて選定した。結果としては、マッチさせる因子の選択に応じて入院期間延長の推定値が26日間から10日間へ短縮し、最も重要な因子は感染症までの期間であった。HA-BSIに起因する入院期間延長は9.9日間(95%信頼区間[CI]7.8~11.9日間)であった。感染症1件あたりの追加費用は4,900ユーロ(95%CI 4,035~5,750ユーロ)であり、追加費用の58%が入院期間延長、10%が抗菌薬、10%がその他の医薬品、15%が診療費によるものであった。主要な結論として、検査確認されたHA-BSIによって生存した患者でも入院期間が10日間にわたって延長し、この推計には感染症までの期間の因子が重要な影響を及ぼしていた。

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監訳者コメント
ベルギーでは、すべての退院患者に関する入院記録をまとめた病院臨床データベース(Hospital Clinical Database;HCD)、病院が保険支払機関へ請求した入院費をまとめる病院財務データベース(Hospital Financial Database;HFD)があり、HCDとHFDを突き合せることによって、たとえば急性期ケア病院における入院1日あたりの費用が285ユーロと推定されるなど、医療経済に関する評価のシステムが存在する。
また、この論文で示されているように、対照比較研究においてはどのように対照症例を選定するのかによって結論が異なるので注意が必要である。HA-BSI症例と比較するためには、対照はそれに見合う入院期間が必要であり、選定された対照がHA-BSIを発症しない短い期間の入院症例であれば結果に重要な影響を及ぼしてしまう。

監訳者注
感染症までの期間(time to infection):対照を選定する際に、症例がHA-BSIを発症までの日数と同等以上の入院期間があると確認すること。

2007年のベルギーにおける病院感染症全国有病率調査★★

The 2007 Belgian national prevalence survey for hospital-acquired infections

B. Gordts*, F. Vrijens, F. Hulstaert, S. Devriese, S. Van de Sande
*AZ Sint Jan, Belgium

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 163窶・67


ベルギーでは、継続的な対象限定サーベイランスが実施されているものの、病院感染症の病院内有病率に関するデータは公表されていない。ベルギーの急性期ケア病院63施設が、病院のすべての入院患者または各病棟の50%の患者を対象とした点有病率調査に参加した。2007年10月から11月の1日間に、各病棟における病院感染症を病床で登録した。診断は、携帯用コンピューターで使用できる基準判断のための特別なソフトウェアによる専用システムを利用して、米国疾病対策センター(CDC)基準に従った。全国で調査対象となった患者数の合計は543病棟の17,343例であった。病院感染症全有病率は7.1%(95%信頼区間[CI]6.7%~7.4%)、少なくとも1つ以上の病院感染症を有する患者は6.2%(95%CI 5.9%~6.5%)であった。成人領域の集中治療部門における病院感染症の有病率は31.3%であった。病院感染症の多くは、非集中治療部門(非ICU)病棟、主として内科、外科、高齢者、およびリハビリテーションの病棟における入室患者に認められた。高齢者病棟とリハビリテーション病棟で最も頻度の高い病院感染症は尿路感染症であった。今回の調査により、CDC基準に基づいて病院感染症を診断するための専用システムを搭載した携帯用コンピューターを、大規模な点有病率調査に活用することは可能であり、患者間の診断のばらつきを減少させ得ることが示された。この調査で判明したベルギーの急性期ケア病院における病院感染症の有病率は近隣諸国と同等であった。全病院感染症の80%以上が非ICU病棟で発生していることから、感染防止の取り組みをICU以外にまで拡大する必要がある。

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監訳者コメント
やはり急性期ケア病院における医療関連感染症の有病率は5%から10%の範囲となる。たしかにICU症例は高リスクであるが、この論文に示されているように、実際の数としては ICU以外の病棟で多くの医療関連感染症を認めるわけであり、感染防止のための努力はあらゆる場所で心掛ける必要がある

オランダにおける2007年から2008年の院内感染症有病率:初期4回の全国調査の結果

Prevalence of nosocomial infections in The Netherlands, 2007窶・008: results of the first four national studies

T.I.I. van der Kooi*, J. Mannien, J.C. Wille, B.H.B. van Benthem
*RIVM (National Institute for Public Health and the Environment), The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 168窶・72


オランダにおける院内感染症サーベイランスのためのPREZIES全国ネットワークでは、2007年から年2回の全国有病率調査を実施している。この論文は初期4回の調査結果を報告する。オランダの95病院のうち41病院がのべ92回の調査に参加して、対象患者は26,937例であった。調査日の時点で6.2%の患者に院内感染症が認められた(感染症有病率は7.2%)。感染症有病率は病院によって1.4%から16.5%のばらつきがあった。有病率は外科手術部位感染症4.8%、肺炎1.1%、原発性血流感染症0.5%、症候性尿路感染症1.7%であった。入院時に院内感染症を有していた患者は3.3%であった。調査日の時点で30.9%の患者が抗菌薬を投与されていた。抗菌薬と医療器材の使用状況は病院間で大きく異なっていた。オランダにおける院内感染症有病率および抗菌薬と医療器材の使用状況はいずれも他の欧州諸国と同様であった。

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監訳者コメント
やはり急性期ケア病院における医療関連感染症の有病率は5%から10%の範囲となる。

米国疾病対策センターの基準に従って定義した手術部位感染症の臨床的重要性★★

Clinical relevance of surgical site infection as defined by the criteria of the Centers for Disease Control and Prevention

N.A. Henriksen*, C.S. Meyhoff, J. Wetterslev, P. Wille-Jorgensen, L.S. Rasmussen, L.N. Jorgensen, PROXI Trial Group
*University of Copenhagen, Denmark

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 173窶・77


手術部位感染症(SSI)は腹部手術後に一般的な合併症であり、その診断とサーベイランスには一般的に米国疾病対策センター(CDC)の基準が用いられる。この研究の目的は、CDC基準に従って診断したSSIが臨床的に重要であるか否か、およびCDC基準に基づく評価とASEPSIS(Additional treatment[追加治療]、presence of Serous discharge[滲出液]、Erythema[紅斑]、Purulent exudate[膿性滲出]、Separation of the deep tissues[深部組織の離開]、Isolation of bacteria[細菌の分離]、duration of Stay[入院期間])スコア、および臨床的に重要なSSIとの間に一致がみられるかどうかを検討することであった。開腹手術後にCDC基準に基づいてSSIと診断された患者54例と、SSIと診断されなかったマッチさせた対照46例を対象とした。熟達した外科医2名が無作為にカルテを評価して、以下の基準に従って患者が臨床的に重要なSSIであるか否かを判定した。その基準は、抗菌薬治療、外科的介入、入院期間の延長、またはSSIによる集中治療部門への入室であった。臨床的に重要なSSIは、CDC基準に基づいてSSIと診断された患者で54例中38例(70%)に認められたが、CDC基準で SSI と診断されなかった患者には認められなかった。CDC基準に基づいて診断されたSSIの61%が表在性であり、その中では48%が臨床的に重要であると判定された。CDC基準と臨床的に重要なSSIの一致度は高く(κ = 0.69、95%信頼区間[CI]0.55~0.83)、ASEPSISスコアとCDC基準の一致度(κ = 0.23,95%CI 0~0.49)およびASEPSISスコアと臨床的に重要なSSIの一致度(κ = 0.39,95%CI 0.17~0.61)は高くなかった。CDC基準からは、一部に臨床的重要性の低い表在性SSIが含まれるとしても、SSIの監視と同定に適した標準的定義を得ることができる。

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監訳者コメント
サーベイランス診断は、サーベイランスの本来的な目的である継続的な質改善のための基準であり、一般的には臨床診断と必ずしも一致する必要はないと考えられているが、この論文ではSSIのCDC基準が臨床的にも有用であることを示している。SSIサーベイランスへの外科医の協力を得るにはよい材料かもしれない。

外科医による手術部位感染症サーベイランス:バイアスのある過少報告か、有用な疫学的データか?★★

Surveillance of surgical site infections by surgeons: biased underreporting or useful epidemiological data?

R. Rosenthal*, W.P. Weber, W.R. Marti, H. Misteli, S. Reck, M. Dangel, D. Oertli, A.F. Widmer
*Basel University Hospital, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 178窶・82


手術部位感染症(SSI)によって手術後の罹患率と死亡率は著しく上昇する。SSIサーベイランスは確立されたモニタリング手法であり、SSI発生率を低下させる。この研究の目的は、前向きの病院内SSIサーベイランスを外科スタッフが実施した場合(I)と、それに加えて感染制御チーム(ICT)が行った場合(II)を比較することである。外科チームが作成したデータにICTが補完して、利用可能なあらゆるリソースを投入した術後1年間の追跡による退院後サーベイランスの結果を反映させたものを対照方法(III)とした。24か月間ですべての連続する入院患者が受けた処置(6,283件)を、外科スタッフが患者の退院まで前向きに記録した(I)。SSI発生率をICTが参加したサーベイランス(II)および対照方法(III)と比較した。SSI全発生率(対照方法)は4.7%(293件)で、このうち187件(63.8%)は入院期間に検出されて、106件(36.2%)は退院後に検出された。(I)外科スタッフが検出した病院内SSIは187件中91件(48.7%)(対照方法では293件中91件[31.0%])、(II)ICT による検出は187件中96件(51.3%)(対照方法では293件中96件[32.8%])であった。さらに内臓外科部門でデータ照合を実施したことにより、(I)外科スタッフによる病院内SSI検出率が105件中59件(56.2%)へ上昇した(対照方法では147件中59件[40.1%])。外科スタッフによるSSIサーベイランスによって、すべての病院内SSIのほぼ半数が検出され、データ照合などの簡単な介入により検出率が上昇する可能性がある。このような比較的安価なサーベイランス手法は、感染制御チームを設置していない病院にとって、またリスクの低い外科的処置においては選択肢の1つである。さらにSSI発生率の傾向が容易に判明し、早期介入につながる可能性がある。

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監訳者コメント
外科スタッフが自らSSIサーベイランスを実施すれば感染制御担当者は不要となる可能性を示唆している。ふぅむ、コメントしづらい。たしかに外科スタッフの自助努力があれば、人的資源も過剰にかける必要はないのかもしれない。

日本の大規模な消化管手術コホートにおける手術部位感染症の独立したリスク因子としての年齢

Age as an independent risk factor for surgical site infections in a large gastrointestinal surgery cohort in Japan

M. Utsumi*, J. Shimizu, A. Miyamoto, K. Umeshita, T. Kobayashi, M. Monden, K. Makimoto
*Osaka University, Japan

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 183-187


消化管手術を受ける日本人患者の手術部位感染症(SSI)のリスク因子を評価するために、大規模調査を実施した。研究の目的としては、(i)消化管手術によるSSIのリスク因子として年齢を検討すること、および(ii)腹腔鏡下胆嚢摘出術と開腹胆嚢摘出術における SSIのリスク因子の相違を検討することとした。2003年7月から2007年11月に日本の参加病院20施設から調査データを前向きに収集した。SSIの診断は米国疾病管理予防センター(CDC)の基準を使用した。SSIはデータが得られた12,015例中1,471例に認められ、全発生率は12.2%であった。最終的なロジスティック回帰モデルにおいては、年齢は開腹胆嚢摘出術、胃切除術、および虫垂切除術でSSIリスク因子であった。手術時間は6種類の手術手技でのSSIのリスク因子であり、創分類およびドレーンの使用も半数以上の手術手技でのリスク因子であった。腹腔鏡下手術を開腹手術と比較すると、絹製縫合糸の使用は腹腔鏡下胆嚢摘出術でのSSIリスク因子であった。ドレーンの使用、創分類、手術時間、男性であること、および年齢は、開腹胆嚢摘出術でのSSIリスク因子であった。まとめると、患者年齢はいくつかの消化管手術でのSSIの有意な予測因子であるが、腹腔鏡下手術でのSSIのリスク因子は開腹手術の場合とは大幅に異なると考えられる。

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監訳者コメント
大阪からの多施設共同研究である。SSIリスク因子をわが国の医療環境において同定しようとする試みであり重要である。

退院後の浸出液:退院後の患者の手術部位感染症の予測★★

Discharge after discharge: predicting surgical site infections after patients leave hospital

N. Daneman*, H. Lu, D.A. Redelmeier
*Sunnybrook Health Sciences Centre, Canada

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 188-194


この地域住民対象の後向きコホート研究では、退院後の手術部位感染症(SSI)の発生頻度、重症度、および予測について検討した。2002年4月1日から2008年3月31日に、カナダのオンタリオ州で初回の待機的手術を目的に入院したすべての患者を対象に評価を実施した。関連病院、救急治療室、およびカナダ国民皆保険制度に基づく医師からの請求に関するデータベースを組み合わせて、手術および患者特性を抽出した。手術から30日以内のSSI発生リスクを、初回入院、外来診察、救急治療室への再入室、および再入院に基づき評価した。622,683例の患者コホートの84,081例(13.5%)がSSIと診断され、その半数を超える患者(48,725例)が退院後SSIであった。退院後SSIは、再手術(オッズ比[OR]2.28、95%信頼区間[CI]2.11~2.48)、救急治療室への再入室(OR 9.08、95%CI 8.89~9.27)、および再入院(OR 6.16、95%CI 5.98~6.35)のリスクの増加と関連していた。ごく一般的なリスク指標により院内SSIリスク増加の増加が予測できたが、退院後感染症のリスクの増加は予測できなかった。退院後感染症患者のベースラインの特性は、病院内感染症患者よりも非感染症患者に類似していた。退院後感染症の予測因子には、短い手術時間、短い入院期間、地方在住、アルコール依存症、糖尿病、肥満などがあった。退院後SSIは頻度が高く、重篤で、発生時期と部位にばらつきがあり、一般的なリスク指標を用いた予測が困難である。退院後SSIはカナダの医療制度における重大な潜在的な負担となっている。

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監訳者コメント
入院期間を短くすることを至上目的とすると、退院後に発生する手術部位感染症の管理には不利益となる可能性があることを示唆している。わが国では平均在院日数が長いことがしばしば攻撃対象となっているが、SSIサーベイランスなどはむしろ手術後に十分な観察期間を確保することとなり、部分的には患者安全につながっている可能性があるかもしれないことも議論されるべきである。まあ、ムダな入院管理で耐性菌が定着してしまっては元も子もないが。

集中治療室の組織的特性に関連するデバイス関連感染のリスク因子:韓国院内感染サーベイランスシステム(Korean Nosocomial Infections Surveillance System)からの知見

Risk factors for device-associated infection related to organisational characteristics of intensive care units: findings from the Korean Nosocomial Infections Surveillance System

Y.G. Kwak*, S.-O. Lee, H.Y. Kim, Y.K. Kim, E.S. Park, H.Y. Jin, H.J. Choi, S.Y. Jeong, E.S. Kim, H.K. Ki, S.R. Kim, J.Y. Lee, H.K. Hong, S. Kim, Y.S. Lee, H.-B. Oh, J.M. Kim, Korean Nosocomial Infections Surveillance System (KONIS)
*Inje University Ilsan Paik Hospital, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 195窶・99


デバイス関連感染は集中治療室(ICU)の患者の罹患および死亡の主な原因となっている。本研究では、ICUにおけるデバイス関連感染のリスク因子を評価した。2007年7月から2008年6月に、56病院の内科ICUと外科ICU 96か所が韓国院内感染サーベイランスシステム(Korean Nosocomial Infections Surveillance System)に参加した。カテーテル関連尿路感染、中心静脈カテーテル関連血流感染、および人工呼吸器関連肺炎の発生をモニターし、デバイス関連感染率を算出した。ICUの特性と関連するデータを収集し、Poisson回帰分析を用いて統計学的解析を行った。発生率は、カテーテル関連尿路感染で1,000尿道カテーテル日あたり3.87件、中心静脈カテーテル関連血流感染で1,000中心静脈カテーテル日あたり2.23件、人工呼吸器関連肺炎で1,000人工呼吸器日あたり1.89件であった。カテーテル関連尿路感染発生率は、ソウルのICU(P = 0.032)および大規模教育病院のICU(P = 0.010)で高かった。大学病院のICUでは、カテーテル関連尿路感染発生率は低かった(P = 0.013)。中心静脈カテーテル関連血流感染発生率はソウルのICU(P = 0.001)および内科ICU(P = 0.026)で高かった。人工呼吸器関連肺炎発生率は、900床を超える病院のICUでは400~699床の病院の場合と比較して低かった(P = 0.026)。人工呼吸器関連肺炎発生率は外科ICUで高く(P < 0.0001)、また感染制御専門家1人あたりの病床数が100増加するごとに1.13倍増加した(P = 0.003)。ICUの組織や施設の特性がデバイス関連感染発生率に影響を及ぼす可能性があり、人工呼吸器関連肺炎、カテーテル関連尿路感染、および中心静脈カテーテル関連血流感染の発生率を低下させる必要がある。

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監訳者コメント
医療観光立国を目指している韓国。感染予防についてもサーベイランスなどが普及しているようだ。感染率も低めなのが印象的である。

電子登録に基づく選択的帝王切開後感染症サーベイランス:退院後感染症を対象とした実証研究

Surveillance of selected post-caesarean infections based on electronic registries: validation study including post-discharge infections

R.A. Leth*, M. Norgaard, N. Uldbjerg, R.W. Thomsen, J.K. Moller
*Aarhus University Hospital, Denmark

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 200-204


手術後の入院期間が短縮していることから、退院後感染症のサーベイランスの重要性が高まっている。本研究では、帝王切開後30日以内に発生した尿路感染症および手術創感染症を対象とした、コンピューターによるサーベイランスシステムの検出能を検討した。参照基準に従って分類した帝王切開後尿路感染症および手術創感染症患者を特定することを目的として、種々の電子記録データの利用について評価した。参照基準は、カルテおよび患者報告データ(質問票)の情報に基づき、米国疾病対策センターの定義を修正し作成した。入院中、再入院中、または外来受診時に診断された尿路感染症の、コンピューターシステムによる検出感度は80.0%、特異度は99.9%であった。退院後に院外で診断された尿路感染症の感度は76.3%、特異度は99.9%であった。院内で診断された手術創感染症および退院後に院外で診断された手術創感染の感度はそれぞれ77.1%、68.9%、特異度は99.5%、98.2%であった。結論として、コンピューターを用いたサーベイランスシステムにより院内感染症と退院後感染症を特定できる可能性があり、その感度は比較的高く、特異度は極めて優れていた。

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監訳者コメント
我が国は平均在院日数が長く、手術部位感染症(SSI)の調査はむしろ、より正確な把握がなされている可能性がある。日帰り手術の増加とともに、自宅でのSSI事例のモニタリングが課題である。

1999年から2004年のフィンランドにおける人工股関節・人工肘関節置換術後の人工関節感染症発生率:capture窶途ecapture法による推計

Disease burden of prosthetic joint infections after hip and knee joint replacement in Finland during 1999窶・004: capture窶途ecapture estimation

K. Huotari*, O. Lyytikainen, J. Ollgren, M.J. Virtanen, S. Seitsalo, R. Palonen, P. Rantanen, Hospital Infection Surveillance Team
*Helsinki University Central Hospital, Finland

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 205-208


1999年から2004年にFinnish Hospital Infection Program(SIRO)で実施された人工関節感染症発生率サーベイランスの評価を行った。Capture窶途ecapture法によりその感度を推計し、人工股関節置換術(THA)および人工肘関節置換術(TKA)後の人工関節感染症発生率を評価した(13,482件)。データソースとしてSIRO、Finnish Arthroplasty Register(FAR)、およびFinnish Patient Insurance Center(FPIC)を使用し、マッチングにより129例の人工関節感染症患者を特定した。SIROの陽性的中率(91%)で補正後の、FARとFPICとの間の交互作用項を含めた対数線形モデルから得られた人工関節感染症発生率推計値は、THA 1.6%(95%信頼区間[CI]1.2%~2.4%)、TKA 1.3%(95%CI 1.1%~1.6%)であった。SIROの感度は36%から57%で、ばらつきがみられた。1年間の人工関節感染症発生率は、THA後は人口100,000人あたり2.1件、TKA後は1.5件であった。人工関節感染症の真の発生率は、全国の定点サーベイランスシステムから通常示唆されている率よりも大きい可能性がある。

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監訳者コメント
待機的かつ無菌的手術を実施する関節置換術においては、感染率が特に重要である。我が国でも国家的なサーベイランスシステムを持つべきであろう。

モンゴルにおける病院感染制御機構

Organisation of hospital infection control in Mongolia

B.-E. Ider*, A. Clements, J. Adams, M. Whitby, T. Muugolog
*University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 209-213


モンゴルの医療制度は、その他の公共部門と同様に、1990年代初頭から大幅な構造・政策改革が行われてきた。これまでの感染制御システムは公衆衛生と疫学の連携が特徴であったが、代替策なく廃止された。1997年に新たな感染制御管理システムが確立され、感染制御政策・ガイドラインの導入、すべての主要病院における病院感染制御プログラムの構築、医療専門家の研修、および病院感染の受動的サーベイランスの導入が図られた。最近の医療統計によると、病院感染の発生率は全入院の0.01%から0.02%で、最も高いのは首都ウランバートルの3次病院であったが(0.05%)、これは過小評価された数値である可能性が極めて高い。2002年、政府は検査室ベースのモニタリングの改善を含めた、病院感染のセンチネルサーベイランスシステムを確立するための国家プログラムを承認した。しかし、利害関係者の支援、資源、および熟練した感染制御専門家が不足しているため、実施が遅延している。非政府組織による感染制御への取り組みは、時間と対象範囲に限界がある。

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監訳者コメント
黎明期の感染対策事情を物語っており、我が国からの支援も必要であろう。

モンゴルの2つの3次病院における病院感染症有病率と抗菌薬の使用

Prevalence of hospital-acquired infections and antibiotic use in two tertiary Mongolian hospitals

B.-E. Ider*, A. Clements, J. Adams, M. Whitby, T. Muugolog
*University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 214-219


モンゴルの保健統計によると、病院感染は全入院の0.01%から0.05%で発生している。これは、世界各国で報告されている数値より相当低い。そこで2008年9月にウランバートルにある2つの3次病院で1日調査を実施し、病院感染症有病率、関連リスク因子、および抗菌薬使用パターンの評価を行った。調査対象患者933例中50例(5.4%)が病院感染症と診断された。有病率は手術部位感染症1.1%(手術患者の3.9%)、血流感染症0.3%、呼吸器感染症1.3%、尿路感染症1.3%、その他の病院感染症1.4%であった。微生物学的検査の記録があったのは、全患者の18.9%のみであった。合計558例の患者(59.8%)が、902コースの抗菌薬治療を受けていた。このうち92.1%は、感受性試験を実施せずに抗菌薬を処方されていた。多重ロジスティック回帰分析により、病院感染症と有意な関連が認められた因子は、入院前の滞在場所、病院、入院期間、手術やその他の侵襲的処置、尿路カテーテル、およびその他の留置デバイスであった。本研究の結果は他の発展途上国の報告と同等であり、公式統計はモンゴルにおける病院感染症の真の頻度を過小評価していることが確認された。

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監訳者コメント
医療事情の詳細がわからないが、各国の保健衛生や医療水準、国民所得水準に即した最大限の改善が必要であろう。

小児集中治療における看護師主導の人工呼吸器関連肺炎サーベイランスの確立★★

Establishing nurse-led ventilator-associated pneumonia surveillance in paediatric intensive care

M. Richardson*, S. Hines, G. Dixon, L. Highe, J. Brierley
*Great Ormond Street Hospital for Children NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 220-224


人工呼吸器関連肺炎の予防は、英国保健省が掲げる「命を救う(Saving Lives)」イニシアチブの対象の1つである。人工呼吸器関連肺炎の有病率および死亡率についての報告は成人では多いが、小児を対象とした研究は少ない。本稿では、患者の安全および医療関連感染減少に関する総合的な活動の一部である、看護師主導の人工呼吸器関連肺炎サーベイランスプログラムの確立について報告する。3次基幹病院の小児集中治療室に入室したすべての小児を対象として、4か月間の調査を実施した。人工呼吸器関連肺炎の定義は、挿管後48時間以降に発症した肺炎とした。診断基準は以下のとおりである。(i)画像診断:胸部X線で新規・進行性の浸潤像、硬化像、または空洞化像が認められることに加えて、(ii)臨床的診断:新たな膿性気管支分泌、白血球減少症または白血球増加症、他に原因がない38.5℃以上または36℃以下の深部温(core temperature)、呼吸器分泌物培養強陽性、またはその他の感染症関連部位の培養強陽性のうち、3つ以上に該当すること。人工呼吸器関連肺炎が疑われる患者の病棟看護師による調査を支援するために、フローチャートと研修プログラムを作成した。データを収集は、担当看護師が抜管24時間後または退院・死亡まで、連日深夜に行った。人工呼吸器関連肺炎が疑われる症例は、感染制御部門に照会して二次検証を行った。4か月間で合計258例の挿管を受けた小児が入室し、58例は除外された(人工呼吸器装着24時間未満)。全データが得られた小児は100例であった。人工呼吸器関連肺炎発生率は、1,000人工呼吸器日あたり5.6件であった。看護師主導による人工呼吸器関連肺炎サーベイランスプログラムの導入は成功であったことを報告する。しかし、本研究のデータ収集は看護師の作業負荷に依存しており、研究遂行にあたっては著しい時間的負担を要した。人工呼吸器関連肺炎発生率は比較的低いことが示されたが、自動化サーベイランスを利用する人工呼吸器関連肺炎バンドルが導入されつつある。

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監訳者コメント
人工呼吸器関連肺炎の診断は難しく、教育システムと相まって本プログラムは注目に値する。

2002年から2007年のギリシャにおけるエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)臨床分離株の抗菌薬耐性の傾向

Trends in antimicrobial resistance of clinical isolates of Enterococcus faecalis and Enterococcus faecium in Greece between 2002 and 2007

E. Protonotariou*, E. Dimitroulia, S. Pournaras, V. Pitiriga, D. Sofianou, A. Tsakris
*Hippokration University Hospital, Greece

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 225-227


2002年から2007年にギリシャの3次病院で臨床的感染患者から回収したエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)(1,498株)およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(625株)の抗菌薬耐性の傾向を解析した。分子的検査法を用い、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の種レベルの同定および遺伝子タイピングを行った。E. faecalisおよびE. faeciumによる入院1,000件あたりの感染率は試験期間中に上昇した(傾向検定のχ2 = 25.5および13.3、P < 0.0001)。E. faecalis/E. faeciumの耐性率は、アンピシリン1.3%/82.4%、高用量ゲンタマイシン45.6%/51.2%、高用量ストレプトマイシン48.9%/69.1%、バンコマイシン0.5%/9.6%、テイコプラニン0.1%/8.2%、およびリネゾリド0.3%/1.6%であった。vanA遺伝子はVRE分離株の79.1%から検出され、残りの20.1%からはvanBが検出された。抗菌薬耐性の傾向の解析から、E. faecium分離株のアンピシリン耐性率が一貫して高いことが示された。両腸球菌ともに、高用量ゲンタマイシンおよび高用量ストレプトマイシン耐性が有意に上昇していた(P < 0.0001)。このような注意を喚起すべき傾向がみられるにもかかわらず、オキサゾリジノン系耐性を示す株は当地域では散発的と考えられ、グリコペプチド系耐性率の上昇傾向は認められなかった。

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監訳者コメント
ギリシャ国内における抗菌薬の処方動向を知りたくなる論文である。

サーベイランスとバンコマイシン耐性腸球菌の流行:ある程度の制御は可能である

Surveillance and endemic vancomycin-resistant enterococci: some success in control is possible

M. Morris-Downes*, E.G. Smyth, J. Moore, T. Thomas, F. Fitzpatrick, J. Walsh, V. Caffrey, A. Morris, S. Foley, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2010) 75, 228-233


バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、アイルランドの多くの病院で流行している。VREが流行している施設の2001年から2008年のサーベイランスデータを解析した。臨床的に重要なすべての腸球菌のバンコマイシン感受性を調べた。集中治療室への全入室例を対象として、入室時およびその後は週1回スクリーニングを行った。VRE患者の隔離・コホーティング、月1回のVRE保菌率調査、電子警告システムの導入、手指・環境衛生の改善プログラム、および抗菌薬担当薬剤師との面談などの介入を実施した。VREスクリーニングサンプル陽性数は、2001年(10,000病床日あたりのVREスクリーニング陽性1.96例)から2006年(10,000病床日あたり4.98例)にかけて有意に増加し(P ≦ 0.001)、2007年(10,000病床日あたり3.18例)には減少した(P ≦ 0.01)。VRE血流感染症(BSI)は、2001年の10,000病床日あたり0.09例から2005年の10,000病床日あたり0.78例に増加したが(P ≦ 0.001)、その後は減少した。線形回帰分析から、新規VRE症例数と非隔離VRE患者数との間に有意な関連が認められ、特に2005年5月から2006年12月との間(P = 0.009、95%信頼区間[CI]0.08~0.46)、および2005年5月から2008年12月との間(P = 0.008、95%CI 0.06~0.46)で顕著であった。ルーチンのVREサーベイランスと他の方法と組み合わせることにより、VREが流行している地域や制約のある施設であっても、VRE BSI・保菌を制御することが可能である。

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監訳者コメント
選択圧と保菌圧の両方の改善が感染対策には必要であろう。地域的に蔓延した状態での制御はほとんど困難であり、それ以前の改善が重要である。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.