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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

各種中心静脈カテーテルのカテーテル関連感染に対する効果:ネットワークメタアナリシス

Effectiveness of different central venous catheters for catheter-related infections: a network meta-analysis

H. Wang*, T. Huang, J. Jing, J. Jin, P. Wang, M. Yang, W. Cui, Y. Zheng, H. Shen
*Zhejiang University, China

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 1-11


本稿の目的は、各種カテーテルのカテーテル関連感染予防の効果を比較し、特定のカテーテルによるカテーテル関連感染の減少が他のカテーテルよりも優れているかどうかを評価することである。Medline、Embase、Web of Science、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用いて1996年1月から2009年11月に発表された論文の系統的検索を実施し、異なる種類の中心静脈カテーテル(CVC)によるカテーテル関連感染を比較評価している無作為化対照試験を特定した。Bayesian Markov Chain Monte Carloシミュレーションを用いた混合治療比較法によるネットワークメタアナリシスを実施し、試験内・治療群間の直接比較からのエビデンスと、間接比較の試験からのエビデンスとを統合した。10種類の侵襲的カテーテルを対象とした48件の臨床試験(CVC 12,828本)の分析を行った。CVCへの細菌定着の予防に関しては、加工を施したカテーテルである銀イオン導入カテーテル(オッズ比[OR]0.58、95%信頼区間[CI]0.33~0.95)、クロルヘキシジン/スルファジアジン銀カテーテル(OR 0.49、95%CI 0.36~0.64)、クロルヘキシジン/スルファジアジン銀カテーテルblue plus(OR 0.37、95%CI 0.17~0.69)、ミノサイクリン/リファンピシンカテーテル(OR 0.28、95%CI 0.17~0.43)、ミコナゾール/リファンピシンカテーテル(OR 0.11、95%CI 0.02~0.33)への細菌定着率は、標準的なカテーテルと比較して有意に低かった。カテーテル関連血流感染(CRBSI)の予防に関しては、加工を施したカテーテルであるヘパリン結合カテーテル(OR 0.20、95%CI 0.06~0.44)およびミノサイクリン/リファンピシンカテーテル(OR 0.18、95%CI 0.08~0.34)の発生率は、標準的なカテーテルと比較して有意に低かった。リファンピシンベースの含浸カテーテルは、他のカテーテルよりもカテーテル関連感染予防に優れていると考えられる。

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監訳者コメント
各種成分含浸カテーテルは国内での発売は現在はないが、質の高いエビデンスとガイドラインでの推奨等があると国内導入も視野に入るのではないだろうか?

監訳者注
銀イオン導入カテーテル(silver iontophoretic catheter):イオン導入またはイオン泳動などと呼ばれる方法(iontophoresis)により、銀イオンを徐々に放出する素材で作製されたカテーテル。

長期ケア施設に入居する高齢者における胃腸炎発生率の評価

Assessing the incidence of gastroenteritis among elderly people living in long term care facilities

M.D. Kirk*, G.V. Hall, M.G.K. Veitch, N. Becker
*Australian National University, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 12-17


文献のシステマティックレビューおよびメタアナリシスにより、公表されている感染症サーベイランスの報告から長期ケア施設の入居者における胃腸炎発生率を推計した。キーワードとして「長期ケア施設(long-term care facility)」、「ナーシングホーム(nursing home)」、「胃腸炎(gastroenteritis)」、「サーベイランス(surveillance)」、「発生率(incidence)」を用いてPubMed、Web of Science、およびGoogle Scholarを検索した。さらに、各論文に掲載されている文献リストのマニュアル検索を行った。サーベイランス中の胃腸炎症例数および病床使用日数(床・日)を記録して発生率を算出するとともに、ランダム効果を組み入れたメタアナリシスおよび回帰分析により試験実施国および症例定義の影響を評価した。この解析では1件の介入試験と14件のサーベイランス試験を対象とし、このうち47%(15件中7件)は1995年以降に実施された試験であった。1件の試験は入居者の胃腸炎のみに焦点を当てており、これ以外の試験は種々の感染症を対象としていた。サーベイランス中の合計2,071,330床・日に717例の胃腸炎が発生した。これらのうち194例は、それぞれの試験中に発生した10件のアウトブレイクに関連していた。試験間に不均一性が認められたが、これは報告されていない胃腸炎症例の集団発生があったためと考えられる。長期ケア施設入居者の胃腸炎の平均発生率は1,000床・日あたり0.40エピソード(95%信頼区間0.27~0.56)であった。米国の試験を実施した研究者らが報告した発生率は、米国以外の研究者らの報告の3分の1であった。長期ケア施設専用に開発した症例定義を使用しても、胃腸炎発生率は上昇しなかった。解析の結果、入居者には5年から10年ごとに1回、胃腸炎が発生すると考えられ、この率は点有病率調査による推計値よりも低い。長期ケア施設入居者の胃腸炎発生率および原因をより正確に評価するためには、今後の研究が必要である。

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監訳者コメント
長期ケア施設における各種感染症の持ち込みは、今後の検討課題である。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)に対する2段階検査の前向き評価

Prospective assessment of two-stage testing for Clostridium difficile

A. Arnold*, C. Pope, S. Bray, P. Riley, A. Breathnach, S. Krishna, T. Planche
*St George’s Healthcare NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 18-22


一般的に使用されている免疫測定法は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の診断のための単独の検査法としては限界がある。特に、この検査法の特異度は低く、偽陽性の結果が比較的多くみられる。著者らはC. difficile感染症の2段階検出法を日常検査に導入した。当検査室に送付された無形糞便検体をMeridian Premier酵素免疫測定法(EIA)による一次検査に供し、陽性検体には標準検査法(毒素産生性検査培養[toxigenic culture]および細胞毒性検査[cell cytotoxicity assay])による再検査を実施した。臨床医に対しては検査室に検体が到着した当日に、診断に有用な情報としてEIAによる陰性確定または仮陽性の結果を提供した。無形糞便3,643検体で一次検査を実施し、このうち158検体(4.3%)がEIA仮陽性であった。EIA陽性の158検体中119検体は、少なくともいずれかの標準検査法で陽性と確認された。この集団の陽性的中率は75%(95%信頼区間67.6%~81.7%)であった。真陽性と偽陽性の検体のEIAの光学濃度(OD)を比較したところ、第2のカットオフ値を採用することにより診断を改善できることが示唆された。2つのカットオフ値を用いた検査では、「陽性」、「陰性」、「中間結果のため確認検査を要する」という結果が得られる。このアルゴリズムは、直ちに診断を改善できる簡便かつ費用対効果の高い方法であるが、検査室でのC. difficile感染診断のさらなる研究が急務である。

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監訳者コメント
抗原検査と培養検査の併用をしないと、検査漏れがどうしても生じる。陽性検体の場合は、菌株保存をすることが望ましい。

フィットテスト未実施の新しいHEPAフィルタ付きフェイスマスクとフィットテスト済みのN95マスクのろ過係数の比較のための無作為化対照パイロット研究★★

A randomised controlled pilot study to compare filtration factor of a novel non-fit-tested high-efficiency particulate air (HEPA) filtering facemask with a fit-tested N95 mask

S.S.W. Au*, C.D. Gomersall, P. Leung, P.T.Y. Li
*Chinese University of Hong Kong, Hong Kong SAR, China

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 23-25


空中浮遊病原体の伝播からの保護のために、フィットテスト済みのN95マスクまたはFFP2マスクの使用が推奨されている。これは、感染症流行への備えや、実際の対応時の流通に大きな問題をもたらす。これらの問題の一部は、適切な大きさにカットできる再利用可能な小型のHEPAフィルタ付きマスクを使用することにより解決すると考えられる。著者らは健常者22名を対象として、カット可能なマスク(Totobobo;Dream Lab One Pte Ltd社、シンガポール)の有効性を、フィットテスト済みのN95マスク(1860、1860s、または1862;3M社、St Paul、MN、米国)と比較する無作為化対照クロスオーバー試験を実施した。空中浮遊粒子数減少の中央値(四分位範囲)は、N95マスク(193倍[145~200])のほうがTotoboboマスク(135倍[83~184])よりも有意に高かった(P < 0.05)。100倍以上減少したマスクの割合は、N95マスク(19/22)とTotoboboマスク(16/22)との間に統計学的有意差はみられなかった。結論として、フィットテスト未実施のTotoboboマスクの使用は推奨されないが、この成績は、さらなる研究が必要であるとするには十分に有望なものである。

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監訳者コメント
Totoboboマスクは面体タイプの呼吸用保護具で、価格を抑えた製品である。幅広い年齢層に使用可能であり、注目される。

病院アウトブレイクの制御には病院管理部門、微生物検査室、および感染制御部門の協調が必要である★★

Hospital outbreak control requires joint efforts from hospital management, microbiology and infection control

U. Ransjo*, B. Lytsy, A. Melhus, O. Aspevall, C. Artinger, B.-M. Eriksson, G. Gunther, A. Hambraeus
*Uppsala University Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 26-31


2005年5月から2007年8月に、スウェーデンの1,000床の教育病院の30を超える病棟で、主に高齢の患者247例に基質特異性拡張型β-ラクタマーゼCTX-M15産生多剤耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)アウトブレイクが発生した。病棟および外来での症例間の接触の可能性について病院管理記録をマニュアル検索した結果、伝播が複雑に連鎖していることが判明した。糞便スクリーニングからは、臨床検体の培養検査の2倍の症例が特定された。伝播は患者間の直接的および間接的接触により発生し、患者の過密状態が伝播を促進していた。介入として、支出権限を有する管理部門の設置、病床数の増加、手指のアルコール消毒および病院の服装規定の遵守向上、患者の手指衛生の改善、および清掃の改善などを実施した。介入の推定費用は3,000,000ユーロであった。特別な感染制御方針は必要ではなかったが、現行方針の徹底と、遵守改善のための教育的取り組みの実施には資源が必要であった。

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監訳者コメント
我が国で発生している現在の課題を正面からとらえている論文である。

手指衛生遵守に対する在職年数、手指衛生教育、および患者・看護師比の影響

Influence of job seniority, hand hygiene education, and patient-to-nurse ratio on hand disinfection compliance

S. Buffet-Bataillon*, E. Leray, M. Poisson, C. Michelet, M. Bonnaure-Mallet, M. Cormier
*CHU Pontchaillou, France

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 32-35


2006年および2007年に、手指衛生遵守状況を直接観察により評価した。2007年には、直接観察の期間中に在職年数、手指衛生教育、および患者・看護師比などの特性のデータを収集した。2回の評価の間に手指衛生推進プログラムを実施した。単変量解析および多変量解析により、手指衛生遵守の改善に関連する因子を特定した。2006年から2007年に手指衛生機会は合計761回あり、完全遵守率は44.9%から58%に(P < 0.001)、部分遵守※※率は73.5%から88.4%に(P < 0.001)改善した。2007年には、本調査対象の臨床部門に在職年数の長い医療従事者がいる場合は、手指衛生の完全遵守率(P = 0.04)または部分遵守率(P = 0.08)の改善が認められた。手指衛生の部分遵守率は、手指衛生教育実施後の2007年に有意に改善した(P < 0.015)。観察時の患者・看護師比と遵守率との関連はみられなかった。多変量解析により、在職年数が手指衛生遵守の独立予測因子であることが判明した。今回の結果から、手指衛生遵守は手指衛生教育による影響を受けること、また在職年数の長い医療従事者は他の従事者へのロールモデルとなり得ることが示唆される。今後の衛生介入方法の策定にあたっては、これらのデータを考慮するべきである。

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監訳者コメント
継続的な教育ならびに観察により手指衛生の遵守率の維持が行われている。人為的な手指衛生行動を絶えず持続することは至難の業である。

監訳者注
完全遵守(overall compliance):手指衛生機会の前後の両方で手指衛生行動を実施。
※※部分遵守(partial compliance):手指衛生機会の前後の少なくとも一方で手指衛生行動を実施。

高齢者のナーシングホームにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を対象とした感染制御教育・指導介入プログラムのクラスター無作為化対照試験

Cluster randomised controlled trial of an infection control education and training intervention programme focusing on meticillin-resistant Staphylococcus aureus in nursing homes for older people

N.S. Baldwin*, D.F. Gilpin, M.M. Tunney, M.P. Kearney, L. Crymble, C. Cardwell, C.M. Hughes
*Queen’s University Belfast, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 36-41


このクラスター無作為化対照試験の目的は、感染制御教育・指導介入プログラムがナーシングホームにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌率に及ぼす影響を調べることである。ナーシングホームを介入群(感染制御教育・指導プログラムを実施、16施設)、または対照群(従来の実践を継続、16施設)に無作為に割り付けた。介入群の施設職員には、良好な感染制御の実践の原則と遂行について教育・指導を行った(0、3、および6か月目)。全施設で監査を行い、良好な実践の遵守を評価した(0、3、6、および12か月目)。監査スコアおよび改善可能な実践を記載した報告書を、介入群のナーシングホームのマネージャーにフィードバックした。0、3、6、および12か月目に、同意を得た全入居者および職員の鼻腔スワブを採取した。主要評価項目は入居者および職員のMRSA保菌率、副次的評価項目は感染制御監査スコアの変化とした。全体で入居者793名および職員338名をベースライン時に登録した。試験実施期間中に、入居者および職員のMRSA保菌率に変化はみられなかった。12か月時点の介入群入居者のクラスタリング補正後のMRSA保菌相対リスクは、対照群との比較で0.99(95%信頼区間0.69~1.42)であった。12か月時点の感染制御監査スコアの平均値は、介入群(82%)のほうが対照群(64%)より有意に高かった(P < 0.0001)。高齢者のナーシングホームでは、MRSAの減少に寄与し得る別のアプローチを考慮すべきである。

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経皮内視鏡的胃瘻造設術後の胃内酸度が人工肛門周囲感染症に及ぼす影響

Effects of gastric acidity on peristomal infection after percutaneous endoscopic gastrostomy placement

H. Ono*, S. Ito, Y. Yamazaki, Y. Otaki, H. Otaki
*Seiwa Memorial Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 42-45


人工肛門周囲感染症は、経皮内視鏡的胃瘻造設術後に多くみられる合併症である。この研究では、胃内酸度が人工肛門周囲感染症に及ぼす影響(細菌の種類や、中咽頭の培養細菌と胃瘻チューブ部位の培養細菌との関連など)を調べた。1998年から2001年に、福井市の大滝病院で嚥下障害患者67例に経皮内視鏡的胃瘻造設術を実施した。胃内酸度を24時間pHモニタリングにより評価した。経皮内視鏡的胃瘻造設術後2週間、人工肛門周囲感染症の有無を観察し、中咽頭と胃瘻チューブ部位から検体を採取した。経皮内視鏡的胃瘻造設術施行患者の21例(31.3%)に人工肛門周囲感染症が認められた。中咽頭にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌が確認されなかった52例中11例(21.2%)に、人工肛門周囲感染症が認められた。胃内pH中央値は感染患者(11例)では5.05 ± 2.55(平均 ± SD)、非感染患者(41例)は3.06 ± 1.83であった(P = 0.019)。MRSA保菌患者の66.7%(15例中10例)で人工肛門周囲感染症が認められたのに対して、MRSA非保菌患者では21.2%(52例中11例)であった(P < 0.001)。人工肛門周囲感染症発生率は、胃内酸度や中咽頭のMRSAの有無による影響を受けていた。

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監訳者コメント
人工肛門の造設部では、その内容物や宿主の保菌状況により周囲の皮膚の維持に大きく影響が及ぶ。パックや被覆材、テープなどの診療材料も同様に皮膚のコンディションを保つうえで重要な因子である。

カンジダ血症発生率の上昇:オーストラリア・クイーンズランド州における1999年から2008年の長期的疫学動向

Increasing incidence of Candidaemia: long-term epidemiological trends, Queensland, Australia, 1999窶・008

E.G. Playford*, G.R. Nimmob, M. Tilse, T.C. Sorrell
*Princess Alexandra Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 46-51


カンジダ血症は疫学的にばらつきがあり、経時的データが比較的不足していることから、1999年から2008年の期間にわたりオーストラリア・クイーンズランド州のすべての公的医療施設を対象として検査室ベースの受動的サーベイランスを実施して、カンジダ血症の疫学評価を行った。適切な評価尺度(入院患者数およびのべ患者・日数を分母とする)を用いたカンジダ血症発生のすべてのエピソードについて人口統計的・細菌学的データを、検査および管理情報システムから収集した。1999年から2008年に発生したエピソードは1,137件(全発生率はのべ10,000患者・日数あたり0.45 件)であり、発生率はこの期間に3.5倍に増加した(傾向検定P < 0.0001)。教科書的にリスクが高いとされる病棟で発生したカンジダ血症の経時的エピソード数は、減少(血液腫瘍科および小児科病棟)または一定(集中治療室)であった。成人内科病棟および成人外科病棟のエピソード数は経時的に有意に増加し、2008年には合計件数の60%を占めていた。起因菌の相対的な割合は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が減少して、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)は増加した(いずれもP < 0.01)。フルコナゾール耐性分離株の割合には変化はみられなかった。教科書的にリスクが高いとされる病棟以外でカンジダ血症の発生率が上昇したこと、およびC. parapsilosisが増加したことから、予防・早期介入戦略に新たな課題が生じていることが示唆される。

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監訳者コメント
カンジダ属(Candida spp.)は最も代表的な酵母真菌であり、医療関連感染症、特に中心静脈カテーテル関連血流感染症の起因菌として最も多く分離される。臨床的に最も高頻度に分離されるのはカンジダ・アルビカンス(C. albicans)であり、その病原性も最も強いとされる。次いでカンジダ・トロピカーリス(C. tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(C. glabrata)、カンジダ・パラシローシス(C. parapsilosis)、さらにはカンジダ・クルーゼイ(C. krusei)、カンジダ・ルシタニエ(C. lusitaniae)、カンジダ・ケフィール(C. kefyr)、カンジダ・ギリエルモンディ(C. guilliermondii)、などがある。特にC. parapsilosisは経静脈栄養管理(total parenteral nutrition;TPN)、いわゆる高カロリー輸液管理との強い関連が認められる。なお、フルコナゾールが予防的投与された場合、フルコナゾール耐性であるC. glabrataC. kruseiなどによる感染症のリスクが増加すると考えられる。中心静脈カテーテル管理などの侵襲的な医療処置が増加しており、医療関連カンジダ症については今後もさらなる注意が必要である。

移植前の腎・肝・心保存液の酵母汚染:微生物評価の標準化の必要性

Yeast contamination of kidney, liver and cardiac preservation solutions before graft: need for standardisation of microbial evaluation

F. Botterel*, F. Foulet, P. Legrand, A.-M. Soria, C. Farrugia, P. Grimbert, M. Matignon, J.-Y. Lauzet, P. Guerrini, S. Bretagne
*Hopital Henri Mondor, France

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 52-55


固形臓器摘出の際の保存液の酵母汚染がレシピエントに生命を脅かす合併症を引き起こすことがあり、このような汚染の発生率を明らかにする必要がある。著者らは2004年1月から2008年12月に、当院で回収されたすべての保存液について、保存液10 mLを遠心分離した沈殿を真菌用培地に接種して30℃ 15日間培養とする標準化した手順によって、潜在的な真菌汚染を前向きに調査した。試験期間中に実施された728件の移植手術(腎397件、肝262件、および心69件)から659件(90.5%)の保存液を得た。移植臓器の酵母汚染率は、心0%(62件中0件)、腎3.1%(356件中11件)、および肝4.1%(241件中10件)であった。同定した菌種はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans;10件)、カンジダ・グラブラータ(C. glabrata;5件)、カンジダ・クルーゼイ(C. krusei;2件)、カンジダ・トロピカーリス(C. tropicalis;1件)、カンジダ・バリーダ(C. valida;1件)、ピキア・エチェルシー(Pichia etchellsii;1件)、およびロドトルラ(Rhodotorula)属菌(1件)であった。日常的な微生物検査により同定できたのは、これらの真菌汚染21件中5件のみであった。1年以上の追跡後に生存していたレシピエントは20例であり、1例は7か月時点で髄膜癌腫症のために死亡した。3例のレシピエントの術後排液から同一種のCandida属菌が検出されたが、感染症あるいは超音波検査による異常は認められなかった。14例は抗真菌薬投与を受けた。検査した腎・肝保存液全体の3.4%に酵母汚染が認められた。その臨床的な転帰や治療管理については現時点では不明である。この研究から、多くの保存液の分析、真菌用培地への接種、および長時間培養、など、微生物検査法の最適化・標準化が必要であることも示唆される。

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監訳者コメント
わが国においても、2010年7月から施行された改正臓器移植法に伴い、脳死移植の症例数が著増しており、これからは摘出された固形臓器の保存液も感染予防対策の重要な対象となると考える必要がある。

病院用水の真菌汚染予防のための採水口ろ過法

Point-of-use filtration method for the prevention of fungal contamination of hospital water

A. Warris*, A. Onken, P. Gaustad, W. Janssen, H. van der Lee, P.E. Verweij, T.G. Abrahamsen
*Radboud University Nijmegen Medical Center, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 56-59


病院用水は、免疫不全患者の生命を脅かす感染症を引き起こすことがある日和見真菌症の感染源となり得るとするデータが公表されている。採水口フィルターは細菌を捕捉できることが知られているが、真菌曝露量の減少効果についてはほとんど不明である。著者らは、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)やその他の糸状菌による汚染レベルに対する採水口フィルター(Pall-AquasafeR)の効果を調査した。ノルウェー・オスロにある国立病院の小児骨髄移植部門において、数か所の出水口(蛇口、シャワー部)に、採水口フィルターを設置した。このほかに試験用装置を用いた有効性の調査を実施した。装置を用いた試験では、フィルターによるコロニー形成単位数の減少効果が高い状態が15日間以上にわたり持続した。小児骨髄移植部門ではフィルターによる水中真菌の除去は1日目から認められたが、水中粒子によるフィルターの目詰まりのため、その後の評価が不能となった。この研究の結果から、採水口のろ過は各採水口での糸状真菌を除去する効果的な予防法であることが示唆され、これにより患者への曝露量が減少すると考えられた。

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監訳者コメント
医療環境で使用する水については、「管理された水道水」が基本であり、現場レベルの管理としては蛇口やシャワー・ヘッドなどの出水口の管理が重要である。

西オーストラリア州のある病院における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の出現

Emergence of multi-resistant Pseudomonas aeruginosa in a Western Australian hospital

T.J.J. Inglis*, K.A. Benson, L. O'Reilly, R. Bradbury, M. Hodge, D. Speers, C.H. Heath
*PathWest Laboratory Medicine WA, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 60-65


西オーストラリア州にある教育病院の患者から多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が分離されて、発生数は2006年に初めて検出されて以降、引き続き増加している。2006年から2008年にかけて、多剤耐性緑膿菌保菌患者数は年間3例から9例に増加し、発生場所は集中治療室(ICU)から重症ケアユニット(HDU)へと移行した。職員の手洗い台に新しく設置した節水装置(エアレーター)が感染伝播に関与している可能性が指摘されて、手洗い台の配管のバイオフィルムから多剤耐性緑膿菌が分離された。手洗い台に廃棄された患者の体液、静注用抗菌薬の残り、および固形物が関与している可能性が考えられた。多剤耐性緑膿菌の遺伝子タイピングにより、他の病院の患者とは異なる遺伝子型系統が認められた。2008年の集団発生は長期間にわたり持続しており、環境に適応したことを示している。緑膿菌に対するより効果的な環境制御が早急に必要である。

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監訳者コメント
多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)や多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の対策では、これらの菌が環境表面で生き延びることから、環境制御も重要となる。なお、緑膿菌の対策は水周りなど湿潤な環境を中心とするのに対して、A. baumanniiは乾燥した環境表面にも生存するために対策がより困難となる。

小児集中治療室における患児の基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生クレブシエラ(Klebsiella)属菌の保菌

Colonisation by extended-spectrum β-lactamase-producing Klebsiella spp. in a paediatric intensive care unit

S.S.S. Levy*, M.J.G. Mello, F.A.R. Gusmao-filho, J.B. Correia
*Instituto de Medicina Integral Professor Fernando Figueira (IMIP), Brazil

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 66-69


小児の基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生クレブシエラ(Klebsiella)属菌の保菌率と保菌のリスク因子を調べるため、前向きコホート試験を実施した。試験は2008年の5か月間に、ブラジル・ルシフェにある小児集中治療室(PICU)で実施した。PICUへ入室した後24時間以内と2、5、7および14日目に直腸スワブを採取した。Kirby-Bauerディスク拡散法を用いてKlebsiella属菌ESBL産生株の検出を行い、double disc synergy testにより確認した。合計186例の患児を試験に組み入れ、その年齢中央値は3歳であった。ESBL産生Klebsiella属菌の保菌率は14%であり、13例(7%)は入院時にすでに保菌していた。PICU入室における保菌発生率は1,000 患者・日数あたり14.2件であった。多変量解析では、第三世代セファロスポリン系抗菌薬の使用が保菌のリスク因子であった(P = 0.008)。生存解析によって、PICU入室期間が延長すると、累積保菌リスクが増加することが明らかになった。この研究から同様の医療環境における業務改善の指針となるとともに、交差感染の規模と感染制御介入の効果に関する今後の研究の方向性を示すことになる基本的な情報が得られた。

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監訳者コメント
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌はわが国でも明らかな増加傾向にあり、ESBL産生菌による感染症が増加すれば治療としてカルバペネム系抗菌薬の使用量が増加することになる。諸外国の中にはESBL産生菌が蔓延していると考えざるを得ない状況もあり、わが国においても早期に封じ込める必要があると認識するべきである。

KPC-2 β-ラクタマーゼ産生コリスチン耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による病院内アウトブレイク★★

Hospital outbreak caused by Klebsiella pneumoniae producing KPC-2 β-lactamase resistant to colistin

K. Kontopoulou*, E. Protonotariou, K. Vasilakos, M. Kriti, A. Koteli, E. Antoniadou, D. Sofianou
*G. Gennimatas General Hospital, Greece

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 70-73


2つの医療施設におけるKPC-2 β-ラクタマーゼ産生コリスチン耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による病院内アウトブレイクを報告する。病院感染症患者から、カルバペネム耐性を示すK. pneumoniaeの臨床分離株の7株を採取した。すべての分離株の表現型が、カルバペネマーゼ活性陽性かつメタロβ-ラクタマーゼ産生陰性であった。blaKPCblaSHVblaTEMおよびblaCTX-Mに対する特異的プライマーを用いたPCR解析により、A病院由来のK. pneumoniaeのすべての臨床分離株とB病院由来の分離株1株には遺伝的な関連が認められ、blaKPC-2およびblaSHV-12を有することが示された。一方、その他の分離株はblaSHV-5およびblaKPC-2を有しており、プロファイルが異なっていた。これらの結果は、KPC産生菌のクローンが病院間で伝播して、さらにK. pneumoniaeの別の菌株がKPC遺伝子を獲得したことを示している。すべての分離株はカルバペネム系、β-ラクタム系、シプロフロキサシン、アミノグリコシド系、およびコリスチン耐性であって、チゲサイクリンに対する中等度の感性とゲンタマイシン感性が認められた。感染症により患者5例が死亡した。blaKPC-2を有するコリスチン耐性K. pneumoniaeの出現は、病院におけるこれら微生物の拡散防止を目的とした厳格な制御対策の実施の重要性を強調するものである。

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監訳者コメント
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)の中でも、特にKPCはカルバペネムを含むほぼすべてのβ-ラクタムに耐性を示すことから極めて重大な脅威であると考えられているが、この論文ではKPC産生かつコリスチンにまで耐性という菌株によるアウトブレイクが報告されている。報告されたK. pneumoniaeは、ゲンタマイシン感受性とチゲサイクリン中等度感受性を残していたというが、現実的に現存の抗菌薬で治療することはほぼ不可能であろう。
私たちの隣国である韓国からはコリスチン耐性多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の報告もあり、現在の世界は抗菌療法が無効な強度耐性菌株が散見される状況に陥っていると考えなければならない。

表面に付着したプリオンの自動汚染除去法

Automated decontamination of surface-adherent prions

A. Schmitt*, I.M. Westner, L. Reznicek, W. Michels, G. Mitteregger, H.A. Kretzschmar
*Ludwig-Maximilian-Universitat, Germany

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 74-79


現時点では、再利用可能な手術器具に付着したプリオンを確実に不活化・除去することができる、ウォッシャー・ディスインフェクターを用いた日常的に実施が可能な汚染除去法はない。これは、プリオン病の医原性伝播の確実な予防は不可能であることを意味する。手術器具の一般的な日常的な再処理手順の中に組み入れることができる、有効なプリオン汚染除去法が求められている。この研究ではウォッシャー・ディスインフェクターによるプリオン除去のために設計された自動処理法の評価について報告する。評価には、表面に付着したプリオン22L株を検出する高感度の定量的in vivoアッセイを使用した。この自動処理法は、従来のアルカリ洗浄に比べて大きな利点を有していた。また、この新規処理法は、134℃ 2時間の高圧蒸気滅菌による効果とも同等であり、高度に汚染した表面からもプリオンの感染性は検出不能であった。これは、表面付着プリオンの感染性低下が7 log単位を超えたことを示している。この処理法は精巧な手術器具にも適用できるため、中央滅菌材料部で集約的な医療器具再処理工程に組み入れることが可能である。このシステムは、プリオンの医原性伝播の防止に大きく寄与する可能性がある。

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監訳者コメント
わが国では日本手術医学会から2008年にプリオン対策としての医療器具再処理ガイドラインが発表されており、その中では(1)アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄(90~93℃)+真空脱気式高圧蒸気滅菌(134℃ 8~10分間)、(2)洗浄+真空脱気式高圧蒸気滅菌(134℃ 18分間)、(3)アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄(90~93℃)+過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌2サイクル(NXは1サイクル)、などとする現実的な対応が推奨されている。プリオン対策には様々な困難を伴うが、潜在性プリオン病からの交差感染による因果関係が明確な事例は少なくとも過去30年間にわたり報告されておらず、過剰なコストをかけた対策は考えものである。

5%過酸化水素ドライミストによる結核菌(Mycobacterium tuberculosis)殺滅の不成功事例

Failure of dry mist of hydrogen peroxide 5% to kill Mycobacterium tuberculosis

B.M. Andersen*, G. Syversen, H. Thoresen, M. Rasch, K. Hochlin, B. Seljordslia, I. Snevold, E. Berg
*Ulleval University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 80-83


プラスチック製オープントレイ表面の3×105 cfu/mLの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)風乾試料の、過酸化水素ドライミスト(Sterinis)による汚染除去能を測定した。過酸化水素ドライミストによる汚染除去法を、通常の3サイクル、または効果を倍にするため6サイクル施行したが、有意な汚染除去効果は認められなかった。

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監訳者コメント
最近は特に米合衆国を中心に、環境に由来する強毒性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)や高度耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の脅威から環境制御のための方法論が見直されているが、科学的根拠はさらに議論される必要がある。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.