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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

入院患者の隔離の有害な影響:システマティックレビュー

Adverse effects of isolation in hospitalised patients: a systematic review

C. Abad*, A. Fearday, N. Safdar
*University of Wisconsin Medical School, Wisconsin, USA

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 97-102


医療施設では、多剤耐性菌の保菌・感染が判明している患者に対して接触隔離などの感染予防策を適用することが推奨されている。接触隔離は感染制御に不可欠であるが、近年は患者への悪影響が指摘されている。接触隔離が患者の心理的・身体的問題の原因となるかどうかを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。対象とした研究は、(1)入院患者が医学的適応を有しているために隔離予防策の対象となっているもの、または(2)隔離に関連する何らかの有害事象を評価しているものである。隔離が患者の心理的健康状態、満足感、安全、または医療従事者が直接的な患者のケアに費やす時間に及ぼす影響についてのデータを報告している16件の研究が、選択基準に合致した。大半の研究では、隔離患者は抑うつ、不安、怒りのスコアが高いなど、患者の心理的健康状態および行動に対する負の影響が示されていた。また一部の研究では、医療従事者が隔離患者に費やす時間は通常より少ないことが判明した。患者が自分が受ける医療について知らされていない場合は、隔離は患者の満足感に悪影響を及ぼしていた。患者の安全も隔離によって負の影響を受け、支持療法の無効に関連する有害事象の発現が8倍増加した。接触隔離が患者ケアの様々な面に負の影響を及ぼす可能性があることが判明した。これらの結果をさらに調査するためには、十分に検証された手法が必要である。隔離の悪影響を評価するには、多くの安全性指標を評価する大規模な研究が必要となる。隔離による心理的悪影響の軽減には患者教育が重要なステップであると考えられ、その実施が推奨される。

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監訳者コメント
接触予防策のための個室隔離をはじめとする隔離予防策は、感染制御上必要な事項ではあるが、その実施にあたっては感染制御的側面とその他の患者ケアへの影響への側面を総合的に勘案する必要がある。本論文はそのための理論的根拠となる研究を検索し、まとめたものであるが、概して根拠が明確とはいえない。さらに研究が必要な分野であるといえる。

SmartIdeas Projectによる病棟の評価:患者の感染源隔離

Ward assessment of SmartIdeas Project: bringing source isolation to the patient

G. Moore*, S. Ali, G. FitzGerald, M. Muzslay, S. Atkinson, S. Smith, P. Cryer, C. Gush, the SmartIdeas Research Student Group, A.P.R. Wilson
*University College London Hospitals, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 103-107


英国の病院の大半は、すべての感染患者を対象として感染源隔離を実施できるほどの十分な個室を備えていない。本研究の目的は、隔離システムの試作品を、専用に設計した可動式シンクおよびトイレと併せて一般病棟で評価することである。使いやすさと受容度に関する質問票を職員、患者、および訪問者に配布した。患者53例を隔離し、同時に環境サンプルの採取およびスタッフの手指衛生の観察を行った。感染患者の隣のベッドの閉鎖は行わなかったが、患者および職員は空間が狭いこととコミュニケーションに問題があると回答した。隔離ベッド空間への入室および退室時の手指衛生遵守率は有意に改善した[76回中43回(56.6%)から147回中107回(72.8%)へ、P < 0.05]。トイレは好評であったが、機械的な信頼性に欠けていた。低レベルの微生物汚染(< 1~3.4 cfu/cm2)がすべての隔離ベッド空間に認められた。コロニー数は、最も接触の多い部位(リモートコントローラーなど)に最も多く認められた。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が、評価したすべてのシステムに同等のレベルで認められた。1つのシステムは空気隔離と接触隔離が可能なように設計されていたが、システムの内外からMRSAが検出されたことから、通気口の性能が不十分であったことが示唆される。これらの結果は英国ポートンダウンの健康保護局検査室(Health Protection Agency Laboratory)が空中微生物試験により確認した。ユニットを再設計した上で試験を行い、効果を確立することが必要である(Trial Identifier:ISRCTN02681602)。

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監訳者コメント
本研究では3つの異なる形状の隔離システムを使用している。ガラス室のようなもの、ガラスの衝立、それに単なる衝立である。論文には写真が掲載されている。おのおの20例程度の使用経験に基づく結果が記述されている。こういった物理的障壁を設けると手指衛生の遵守率は少なくとも向上するようだ。しかし機械的な面などで問題点も浮かび上がっている。3つのシステムはいずれも有用なシステムと考えられ、個室の少ないイギリスだけでなく日本でも応用可能なシステムと思われる。さらなる検討と改善が必要である。

疫学と計量経済学との会合:病床利用率が多剤耐性菌の拡散に及ぼす影響の観察のための時系列解析の使用

Epidemiology meets econometrics: using time-series analysis to observe the impact of bed occupancy rates on the spread of multidrug-resistant bacteria

K. Kaier*, E. Meyer, M. Dettenkofer, U. Frank
*University Medical Center Freiburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 108-113


病床利用率、空床期間、および平均入院期間が教育病院における多剤耐性菌の拡散に及ぼす影響を明らかにするため、2つの多変量時系列解析を実施した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)および基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の発生率に関する疫学的データを収集した。病床利用率、空床期間、および平均入院期間の時系列データを独立変数としてモデルに組み入れて、検定を行った。発生率の定義は、1,000患者日あたりの院内感染症例発生数とした。症例の定義は、入院から48時間以降にMRSAまたはESBL産生菌の感染・保菌を認めた全患者である。2003年1月から2008年7月のMRSAによる院内感染発生率の平均値は、1,000患者日あたり0.15件であった。2005年1月までは、ESBL産生菌は調査対象ではなかった。2005年1月から2008年7月のESBL産生菌による院内感染発生率の平均値も、1,000患者日あたり0.15件であった。2つの多変量モデルにより、一般病棟の病床利用率とMRSAおよびESBL産生菌による院内感染発生率との間には時間的関連が認められた。同様に、1か月ごとの集中治療室(ICU)への平均入室期間とMRSAおよびESBL産生菌による院内感染発生率との間にも時間的関連が認められた。一般病棟が過密状態であることおよびICUへの長期入室は、病院環境における多剤耐性菌の拡散に影響を及ぼす因子であることが明らかになった。

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監訳者コメント
病床利用率が向上し、病棟が混雑してくると、接触予防策の必要な疾患の患者に対して個室に収容するなどの必要な感染対策がとれなくなり、院内感染が増加する傾向にある。病院経営改善と院内感染の双方を考慮した病院運営の難しさを改めて感じさせられる論文である。

発現頻度が低い有害事象の系列分析

Sequential analysis of uncommon adverse outcomes

A. Morton*, K. Mengersen, M. Waterhouse, S. Steiner, D. Looke
*Princess Alexandra Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 114-118


手術部位感染(SSI)などの発現頻度が低い有害事象の解析には系列分析(sequential analysis)が適切である。術後入院期間が短い場合は退院後のSSIが多発するが、多くは表在性感染症である。深部および臓器・体腔の(複雑な)SSIの発生率は低いが、より確実に検出することができ、創傷ケアのモニタリングに適している。退院後に発生した深部および臓器・体腔のSSIでは通常は再入院が必要となるため、その発生件数を正確に計数することが可能である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)による菌血症の系列分析も必要である。予防の鍵となるのは、「バンドル」やチェックリストなどのエビデンスに基づいたシステムの導入である。定期的な死亡例・合併症例カンファレンスが必要であり、さらにその後の独立監査が必要と考えられる。信頼性の高いシステムにおいてまれに有害事象が発生する際には、逐次的な統計解析を実施することが、データの提示、変動の検出、およびプロセスが変更されることの阻止のために有用である。集計表作成、観測値から推定値を減じた値(O - E)の累積グラフ、および漏斗プロット法は、累積和解析により有害事象の連続的発生が明確に認められた場合に有用である。これらの解析方法を前向きに使用することにより、それまでは顕在化しなかった有害事象の発生率および発生件数のパターンや変遷が職員に可視化され、検出可能になると考えられる。

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監訳者コメント
様々なサーベイランスにより感染率などの医療関連感染発生状況が監視されうるが、その変動はアウトブレイクなどの異常を察知する上で最も重要な解析項目である。少々専門的であるが、本論文は系列分析による変動の詳細な分析について説明している。統計学的解析に興味のある方はご一読をお勧めする。

完全静脈栄養法を実施している患者のカテーテル関連血流感染の診断:培養陽性中心静脈カテーテル抜去後の敗血症患者の解熱の診断基準への組み入れ

Diagnosis of catheter-related bloodstream infection in a total parenteral nutrition population: inclusion of sepsis defervescence after removal of culture-positive central venous catheter

C.M. Walshe*, K.S. Boner, J. Bourke, R. Hone, D. Phelan
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 119-123


培養陽性の中心静脈カテーテル(CVC)抜去後に敗血症患者の解熱がみられた場合は、たとえ血液培養が陽性ではなくても、カテーテル関連血流感染(CRBSI)と診断することが提唱されている。しかし大半の研究では、血液培養とCVC先端部の培養がいずれも陽性の場合(標準的定義)のみをCRBSIとして、その発生率を報告している。著者らは、解熱による基準を組み入れることによる、完全静脈栄養法(TPN)を実施している患者集団のCRBSI発生率への影響を調べた。本研究は525床の3次紹介病院で12年間実施した。標準的定義(CVC先端部の培養および血液培養が陽性)を用いた場合と、「解熱による基準」を組み入れた場合のCRBSI発生率を比較した。敗血症患者の解熱の定義は、CVC先端部培養陽性、血液培養陰性で、CVC抜去後に体温の低下、白血球数の減少、および敗血症の症状の消失がみられることとした。血液培養を実施しなかったCRBSI事象は除外した。研究対象集団は1,365例であり、これらの患者は15,234 CVC日にわたり2,536本のCVCを使用した。165例に192件のCRBSIエピソードが発生した。CRBSIの標準的基準のみに合致した事象は全体で152件、解熱による基準に合致した事象は40件であった。標準的定義のみを用いた場合の平均(± SD)発生率は1,000 CVC日あたり10.6 ± 5.8件であり、解熱による基準を組み入れた場合の発生率は1,000 CVC日あたり13 ± 6.4件に上昇した。解熱による基準を含めることにより、CRBSI発生率は1,000 CVC日あたり平均2.5 ± 1.4件、すなわち27%上昇した(95%CI 1.61~3.339、P < 0.001)。本研究から、CRBSIの規模は現在認識されているより大きいと考えられること、およびCRBSIの血液培養陽性率は79%(152/192)であることが示された。

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監訳者コメント
血液培養陽性はBSI判定の標準的事項であるが、その感度は必ずしも十分とはいえない。一方、抜去したCVC先端部から検出される細菌は、抜去時に付着したコンタミネーションである可能性もあり、その解釈には慎重を期する必要がある。アメリカのサーベイランスシステムNHSNではこのほどカテーテル関連BSIの判定基準から臨床的敗血症、すなわち血液培養陰性だが抜去後解熱やカテ先陽性など臨床的にカテーテル関連BSIと考えられる病態を外した。本研究はその妥当性に疑問を投げかける研究であり、一読をお勧めする。

入院患者の末梢静脈カテーテル関連軟部組織感染症:症例対照研究

Soft tissue infections related to peripheral intravenous catheters in hospitalized patients: a case-control study

W.-L. Lee*, S.-F. Liao, W.-C. Lee, C.-H. Huang, C.-T. Fang
*Hsinchu Cathay General Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 124-129


末梢静脈カテーテル関連の軟部組織感染症は、局所的な皮膚・軟部組織の炎症に始まり、蜂窩織炎や侵襲的な外科治療を要する組織壊死にまで進行し得る。著者らは入院患者を対象として、マッチさせた症例対照研究を実施し、末梢静脈カテーテル関連の軟部組織感染症のリスク因子について調べた。2006年から2008年に教育病院2施設で発生した46症例を後向きに特定した。各症例を、軟部組織感染症が発生した日に同一の病棟にいた4例の対照と無作為にマッチさせた。リスク因子を条件付きロジスティック回帰により解析した。重回帰分析により、独立リスク因子を特定した。独立リスク因子は、連続24時間を超える持続静注による輸液(オッズ比[OR]5.2、P = 0.001)、挿入部位が下肢であること(OR 8.5、P = 0.003)、輸液ポンプの使用(OR 4.6、P = 0.023)、および神経系・神経外科系疾患による入院(OR 3.6、P = 0.018)であった。集団寄与割合(研究集団からリスク因子への曝露を取り除くことによって発生を予防することができる症例の割合)は、それぞれ40%、19%、24%、および25%であった。不必要な長時間の静注輸液を最低限に抑えること、および下肢への挿入を回避することにより、本研究を実施した病院の末梢静脈カテーテル関連軟部組織感染症発生率は有意に低下すると考えられる。

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監訳者コメント
末梢ラインは血流感染のみならず局所の感染も引き起こし、時に重篤になる。本研究は軟部組織感染症に焦点をあて、そのリスク因子を同定した。下肢への挿入など末梢ライン関連感染の既知のリスクもあがってきている。神経系疾患の患者はライン関連の疼痛を訴えることができないケースも多く、感染症に至る一因であろう。なお、リスク因子の1つに挙げられている24時間以上の持続静脈注射は、末梢ラインの使用において多くのケースにあてはまり、これを避けるためには頻繁に入れ替えをしなければならず、その際の医療従事者の血液曝露のリスクや、患者の痛みなどの苦痛といったデメリットも発生する。挿入期間については総合的に判断されなければならない。

スウェーデンの集中治療室における動脈カテーテル感染症の低い発生率:保菌・感染のリスク因子

Low incidence of arterial catheter infections in a Swedish intensive care unit: risk factors for colonisation and infection

F. Hammarskjold*, S. Berg, H. Hanberger, B.-E. Malmvall
*Ryhov County Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 130-134


動脈カテーテルがカテーテル関連感染症を引き起こす懸念が高まっている。動脈カテーテル関連感染症(AC-CRI)のリスク因子に関する入手可能なデータは限られており、北欧ではその発生率と起因菌についての研究は実施されていない。本研究の目的は、スウェーデンの集中治療室(ICU)における動脈カテーテルへの菌定着およびAC-CRIの発生率とその原因菌を明らかにすること、およびそれらに影響するリスク因子を特定することである。郡立病院の総合ICUで動脈カテーテル留置を受けた全患者(691件、539例)を前向きに調査した。動脈カテーテル全件のうち600件(87%)ですべての評価を実施した。患者482例のカテーテル留置期間の合計は2,567日であった。カテーテル先端部の培養陽性率は1,000カテーテル日あたり7.8件であり、優勢な原因菌はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であった。AC-CRI発生率は1,000カテーテル日あたり2.0件であり(菌血症症例なし)、全例がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるものであった。多変量解析により、AC-CRIの有意なリスク因子は免疫抑制、中心静脈カテーテル(CVC)への菌定着、およびCVC感染症であることが明らかになった。結論として、当ICUでは動脈カテーテルへの菌定着および全身症状を伴うAC-CRIの発生率は低く、このことはAC-CRI予防のためのルーチンの基本的感染制御行動が実践されていることを示している。同時に留置しているCVCへの菌定着およびCVC感染症を有することがリスク因子であると考えられる。以前は、複数の血管内留置カテーテルへの菌定着および感染症が同時に発生することの意義についてはほとんど注目されていなかった。今回の知見の重要性を検証するために、さらなる研究が必要がある。

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監訳者コメント
動脈ライン関連感染の詳細はあまり報告がなく、本研究はそれを詳細に分析しており興味深い。ただし、結果の解釈には留意する必要がある。例えばCRIはカテーテル関連感染であり、基本的にカテーテル先端培養と全身状態で陽性となり、血液培養所見は必須ではない。本研究で発生したとされる5件のAC-CRIはいずれも血液培養陰性であり、本当にカテーテル関連感染であったのか、若干の疑問が残る。

全国的有病率調査にみられる病院間差とケースミックス

Interhospital differences and case-mix in a nationwide prevalence survey

M. Kanerva*, J. Ollgren, O. Lyytikainen on behalf of the Finnish Prevalence Survey Study Group
*National Institute for Health and Welfare, Finland

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 135-138


有病率調査は、病院1施設または全国レベルのいずれであっても、医療関連感染の概要を把握するための便利な手法であり、時間の節約が可能である。有病率の直接比較は困難である。本研究では、病院ごとの有病率に対するケースミックス補正の影響を評価した。2005年に、フィンランドの3次病院全5施設、2次病院全15施設、その他の急性期病院10施設(全40施設中の25%)が初めての全国有病率調査に参加した。医療関連感染の定義には米国疾病対策センター(CDC)の基準を使用した。人口統計学的特性、基礎疾患の重症度、カテーテルや人工呼吸器の使用、および手術歴などのデータを収集した。別の病院に関連していると考えられる医療関連感染の患者は除外した。多変量ロジスティック回帰モデルによる医療関連感染リスク因子、および間接的な標準化法を用いて、ケースミックス補正後の医療関連感染有病率を算出した。全体で、成人患者8,118例中587例(7.2%)に1回以上の感染症が発生し、病院ごとの有病率は1.9%から12.6%の範囲であった。標準化のための多変量解析には、医療関連感染の既知のリスク因子または単変量解析により特定したリスク因子(年齢、男性、集中治療、Charlson併存疾患指標およびMcCabe指標の高値、人工呼吸器、中心静脈または尿路カテーテル、および入院中の手術)を算入した。ケースミックス補正後の有病率は2.6%から17.0%の範囲であり、病院ごとの順位は有病率の観察値とは異なっていた。病院11施設(38%)では、有病率の観察値による順位がケースミックス補正後の値から予測されるよりも低かった。有病率を病院間で比較する場合は、ケースミックスを考慮すべきである。

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監訳者コメント
本研究は、病院ごとの医療関連感染発生頻度の大まかな比較を行い、大きな幅をもって異なることを明らかにした。しかしながら、どのような医療関連感染が発生しているかを詳細に記述しておらず、真の比較として妥当であるかは少々疑問が残る。いずれにせよ、単一のデバイス関連感染(CLABSIなど)と異なり、病院全体の状況をあまり労力をかけずに調査し、病院間で比較することは、一定の意義があるであろう。

イタリアのSPIN-UTIネットワークによる集中治療室感染症サーベイランスの検証

Validation of intensive care unit-acquired infection surveillance in the Italian SPIN-UTI network

M.D. Masia*, M. Barchitta, G. Liperi, A.P. Cantu, E. Alliata, F. Auxilia, V. Torregrossa, I. Mura, A. Agodi, and Italian Study Group of Hospital Hygiene (GISIO)
*University of Sassari, Italy

Journal of Hospital Infection (2010) 76,139-142


院内感染症サーベイランスでは、検証(validation)が最も重要な要素の1つである。本稿では、イタリアのNosocomial Infections Surveillance in Intensive Care Units(SPIN-UTI)プロジェクトのサーベイランスデータを対象とした初回の検証研究について報告する。その目的は、感染症データを検証し、SPIN-UTIネットワークに参加している集中治療室(ICU)の患者の院内感染症データの感度、特異度、陽性的中率(PPV)、および陰性的中率(NPV)を算出することである。検証研究はサーベイランス期間の終了時に実施した。訓練を受けた検証チームの医師が、すべての臨床的および検査室データが記載された全カルテを後向きにレビューし、PPV、NPV、感度、および特異度を算出した。SPIN-UTIに参加しているICU全49施設から8施設(16.3%)を無作為に選択し、検証を行った。検証チームは合計832例の患者(SPIN-UTI参加患者の27.3%)のカルテレビューを行った。PPVは83.5%、NPVは97.3%であった。全体の感度は82.3%、全体の特異度は97.2%であった。事前に訓練・指導を行っていたにもかかわらず、症例定義の誤解釈やプロトコールからの逸脱に関連する院内感染症の過大報告や過少報告がみられた。今回の研究の結果は、サーベイランスシステム内の方法論的な問題点の特定に有用であり、サーベイランスに携わる人材の再教育計画、およびSPIN-UTIプロジェクトの第2段階の計画と実践においても利用されている。

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台湾の教育病院における医療関連感染症の1981年から2007年の長期的傾向

Secular trends of healthcare-associated infections at a teaching hospital in Taiwan, 1981-2007

Y.-C. Chuang*, Y.-C. Chen, S.-C. Chang, C.-C. Sun, Y.-Y. Chang, M.-L. Chen, L.-Y. Hsu, J.-T. Wang
*National Taiwan University Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 143-149


National Taiwan University Hospitalは1981年、医療関連感染症のサーベイランスと制御に関する国際的なガイドラインを導入した。本稿では、過去27年間の当病院における医療関連感染症の感染部位、病因、および制御対策に関する長期的傾向について述べる。感染制御看護師が、標準化した症例記録用紙を用いて臨床的および微生物学的データを収集した。必要に応じて特定の制御プログラムを適用または強化した。Poisson回帰分析または負の二項回帰分析を用いて、医療関連感染症発生率の時間的傾向を定量化した。1年間の退院数はCharlson併存疾患指数の増加と並行して25,074例から91,234例に増加した。医療関連感染症の積極的サーベイランスおよび定期的なフィードバックに伴い、手術部位感染症は1981年から2007年にかけて著しく減少した(手術100件あたり2.5件対0.5件、P < 0.0001)。一方、血流感染症(BSI)は4.8倍に増加した(100退院あたり0.39件対1.88件、P < 0.0001)。1981年から2007年の間の医療関連感染症発生数の1年あたりの平均増加率は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)11.4%、超多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii;XDRAB)75.4%、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)7.5%であった(いずれもP < 0.0001)。2004年に感染予防・制御プログラムを、プロジェクトレベルでの1年ごとの集中的な制御プログラムを実施するように改定し、医療関連感染症、BSI、MRSA、およびXDRABの発生率の減少が認められた。今回の長期的研究は、医療関連感染症サーベイランスと集中的な制御プログラムを併用する必要があることを示している。この目標を達成するためには、医療施設は適切な人的資源を投入しなければならない。

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中国・湖北省の13病院における医療関連感染症の2007年から2008年の時点有病率調査

Point prevalence surveys of healthcare-associated infection in 13 hospitals in Hubei Province, China, 2007-2008

Duo-shuang Xie*, Wei Xiong, Li-li Xiang, Xiang-yun Fu, Yuan-hua Yu, Li Liu, Shu-qiong Huang, Xiao-hui Wang, Xiu-min Gan, Min Xu, Hong-bo Wang, Hao Xiang, Yi-hua Xu, Shao-fa Nie
*Tongji Medical College of Huazhong University of Science and Technology, China

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 150-155


2007年および2008年11月に、中国・湖北省の三級甲等の13病院を対象として、中華人民共和国衛生部が定めた症例定義の基準を用いて連続的な時点有病率調査を実施し、医療関連感染症有病率のモニタリングを行った。調査した合計20,350例の患者の790例(3.88%)に833件(4.09%)の医療関連感染症が認められた。医療関連感染症の全有病率は、2007年(4.14%)と2008年(3.72%)で有意差はなかった。最も頻度が高い医療関連感染症は気道感染症(63.15%)、次いで手術部位感染症(9.60%)および尿路感染症(8.64%)であった。微生物検査結果が陽性であった医療関連感染症患者は35.29%(833例中294例)のみであった。最も分離頻度が高い菌はグラム陰性菌であり、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が最も多く、大腸菌(Escherichia coli)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などが続いた。10,344例(50.83%)の患者が抗菌薬を使用しており、治療薬または予防薬として使用頻度が高い薬剤はセファロスポリン系、ペニシリン系、およびキノロン系であった。

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監訳者注:
中国衛生部が指定する病院の等級で、その規模などに基づいて一級(1~100床)、二級(101~500床)、三級(≧501床)に分類される。三級病院は高度な医療を担う紹介病院であり、医学教育や研究も行っている。各等級の病院は、その医療水準、病院経営、利用可能な特定の設備、医学研究などによって、さらに甲乙丙の3等に区分される。

フィンランドの新生児集中治療室における医療関連感染症の反復的有病率調査

Repeated prevalence surveys of healthcare-associated infections in Finnish neonatal intensive care units

E. Sarvikivi*, T. Karki, O. Lyytikainen, the Finnish NICU Prevalence Study Group
*National Institute for Health and Welfare, Finland

Journal of Hospital Infection (2010) 76,156-160


新生児集中治療室(NICU)の5分の1を超える患児が、医療関連感染症に罹患していることが報告されている。本研究の目的は、フィンランドのNICU入室患児の医療関連感染症の有病率、発症の時期、および種類を評価することである。2008年11月から2009年5月に、フィンランドの全NICU(24施設)で月1回の時点有病率調査を6回実施した。調査日に入室中の全患児を対象として、基礎疾患および調査日とそれ以前の6日間に使用した侵襲性デバイスまたは治療薬について、標準化した調査票に記入した。調査日に症状を有するか治療中である医療関連感染症の全患児のデータを記録した。医療関連感染症を早発型(生後72時間以内に発症)または遅発型(生後72時間以後に発症)に分類した。6回の調査で、1,281件の調査票を得た。患児163例に164件の医療関連感染症が認められ(全有病率13%)、このうち63件(38%)が遅発型感染症(有病率6.5%)であった。多くみられた医療関連感染症のタイプは臨床的敗血症、検査確認された血流感染症、結膜炎、および肺炎であった。全医療関連感染症のうち24%が微生物検査により確認された。出生時体重が1,500 g未満の患児は、出生時体重が1,500 g以上の患児と比較して遅発型医療関連感染症の発生頻度が高かった(10%対4%、P < 0.01)。7日以上の入院も、医療関連感染症有病率の上昇と関連していた(8%対3%、P = 0.01)。今回の調査は、参加NICUの医療関連感染症に対する認識の向上に有用であった。これらの結果は、将来的なフィンランドのNICUにおける医療関連感染症発生率のサーベイランスの強化に役立つと考えられる。

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アクションプランを用いた看護師の手指衛生行動の改善:集中治療室および外科病棟におけるパイロット研究

Improving hand hygiene behaviour of nurses using action planning: a pilot study in the intensive care unit and surgical ward

V. Erasmus*, M.N. Kuperus, J.H. Richardus, M.C. Vos, A. Oenema, E.F. van Beeck
*University Medical Center Rotterdam, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 161-164


病院の医師および看護師の手指衛生ガイドラインの遵守率は一般に低く、これを改善するためには、強力な社会科学的介入法を適用する必要がある。1つの方法は実行意図(implementation intention)(またはアクションプラン)の作成である。この方法では、状況的手がかり(environmental cue)を、意図的な行動による成果に結びつけるために、具体的な「if then」プランを作成する。本パイロット研究では、大学病院のICUおよび外科病棟の看護師の手指衛生行動に対するアクションプランの実用性と効果を検討した。事前事後テストのデザインを採用し、看護師17名に参加を要請した。訓練を受けた調査者1名が、アクションプラン作成という介入の前および3週後に看護師の手指衛生行動を観察した。手指衛生行動の回数を計数し、ロジスティック回帰分析により手指衛生行動の変化を評価した。参加者17名中10名(外科病棟7名、ICU 3名)から完全なデータ得られ、この10名を解析対象とした。手指衛生を実施すべき機会が全体で283回確認され、このうち外科病棟142回、ICU 141回であった。手指衛生行動遵守率はベースライン時の9.3%から介入後は25.4%に増加した(オッズ比3.3、95%信頼区間1.7~6.5、P < 0.001)。今回の研究は小規模ではあるが、その結果から、短期間で看護師の手指衛生行動を改善するうえでアクションプランの使用が有望であることが示された。アクションプランは他の分野では意図と行動の間のギャップの縮小に有効であることが示されており、医療環境での手指衛生行動を改善するためには、アクションプランの利用についてさらに調査する必要がある。

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監訳者注:
if thenプラン(if then plan):「Xという状況が発生した場合には、Yという目的を達成するためにZという行動を起こす」という、アクションプランの形式。

病原性大腸菌(Escherichia coli)株のバイオフィルム形成に対するヒト血清アルブミン、イブプロフェン、およびN-アセチル-L-システインの影響

Effects of human serum albumin, ibuprofen and N-acetyl-L-cysteine against biofilm formation by pathogenic Escherichia coli strains

P. Naves*, G. del Prado, L. Huelves, V. Rodriguez-Cerrato, V. Ruiz, M.C. Ponte, F. Soriano
*Fundacion Jimenez Diaz-Capio, Spain

Journal of Hospital Infection (2010) 76,165-170


本研究の目的は、バイオフィルム産生大腸菌(Escherichia coli)7株のバイオフィルム形成に対する、ヒト血清アルブミン、イブプロフェン、およびN-アセチル-L-システイン(NAC)の影響を評価することである。ポリスチレン製マイクロタイタープレートを用いた静置培養によりバイオフィルム形成を測定した。細菌増殖およびバイオフィルム形成に対する上記3成分の影響を、各成分を溶液として添加した場合、およびポリスチレン製ウェルへの前処理(コーティング)に使用した場合で調べた。溶液で測定した最小バイオフィルム形成阻止濃度は、ヒト血清アルブミン8 mg/L(全分離株)、イブプロフェン2~125 mg/L(5株)、およびN-アセチル-L-システイン30~125 mg/L(5株)であった。ポリスチレンプレートをヒト血清アルブミン8 mg/Lおよび32,000 mg/Lで前処理することにより、すべての分離株のバイオフィルム形成が有意に減少したのに対して、イブプロフェン125 mg/LおよびN-アセチル-L-システイン1,000 mg/Lによるコーティングでは有意な減少はみられなかった。前処理法でヒト血清アルブミン8 mg/Lおよび32,000 mg/Lと、イブプロフェン125 mg/LまたはN-アセチル-L-システイン1,000 mg/Lのいずれかを併用した場合、さらに強力なバイオフィルム抑制効果が複数の分離株で認められた。今回の結果から、ヒト血清アルブミン単独もしくはイブプロフェンまたはN-アセチル-L-システインのいずれかとの併用で医療器材をコーティングすることにより、大腸菌バイオフィルム形成が抑制される可能性が示唆された。さらに、イブプロフェンおよびN-アセチル-L-システインは、細菌増殖とバイオフィルム形成の両方に対する抑制効果があることから、大腸菌による尿路感染症の治療に有用である可能性がある。

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乳児におけるヒトボカウイルス病院感染

Hospital-acquired human bocavirus in infants

G.S. Durigon*, D.B.L. Oliveira, S.B. Vollet , J.G. Storni, M.C.C. Felicio, C. Finelli, J. Piera,
M. Magalhaes, R.N. Caldeira, M.L. Barbosa, E.L. Durigon, E.N. Berezin
*Santa Casa de Misericordia Hospital, Brazil

Journal of Hospital Infection (2010) 76,171-173


ヒトボカウイルス(HBoV)は、幼児に感染する呼吸器病原体である。2008年1月から12月に、呼吸器感染症で入院している乳児から採取した鼻咽頭吸引511サンプルを対象として、HBoV病院感染のスクリーニングを行った。HBoV感染症を有する小児55例のうち、10例が病院感染であった。市中感染症例と比較して、これらの患児の他の呼吸器系ウイルスの同時感染の頻度は低かった。HBoVは、特に集中治療室での院内感染による小児呼吸器感染症のスクリーニングプロトコールの対象とすることを考慮すべきである。

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