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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

創傷ケアにおけるヨードの有益性と有害性:システマティックレビュー

Benefit and harm of iodine in wound care: a systematic review

H. Vermeulen*, S.J. Westerbos, D.T. Ubbink
*Academic Medical Center at the University of Amsterdam, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 191-199


今日では感染症と戦うことによって創傷治癒を促進する数多くの製品が利用できる。ヨードはそのような製品の1つであるが、創傷治療に対する有効性と有害作用については相反する報告がある。慢性創傷、急性創傷、熱傷、褥瘡、および皮膚移植片を対象とする27件の無作為化臨床試験のシステマティックレビューを実施した。主要な転帰項目は、創傷治癒、細菌数、および有害作用とした。その他の(殺菌)創傷ドレッシングまたは薬剤と比較して、ヨードが創傷治癒時間を短縮あるいは延長することはなかった。各試験の細菌数減少や創傷サイズの縮小について、ヨードは他の生体消毒薬(サルファジアジン銀クリーム、など)および非滅菌ドレッシングより有意に優れていたが、局所抗菌薬(Rifamycin SV MMXR)より劣り、またヨードをアルコールと併用しても未加工の蜂蜜より劣っていると考えられた。ヨードにより甲状腺機能障害などの有害作用の頻度が増加することはなかった。現時点で得ることができる臨床試験のエビデンスから、ヨードは効果的な生体消毒薬であり、一般にいわれているような有害作用や、とくに慢性創傷および熱傷創の治癒過程の遅延は認められない。ヨードの殺菌効果は他の生体消毒薬に比べて遜色なく、創傷治癒を損なうことはない。したがってヨードは、依然として生体消毒薬としての地位を保っている。

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監訳者コメント
ポビドンヨードなど、ヨードを含む消毒薬の創傷ケアにおける役割が評価されているが、この総説においては否定的な要素は指摘されていない。

殺生物薬に対する微生物の耐性または順応は感染予防と感染制御に危険をもたらすか?

Does microbial resistance or adaptation to biocides create a hazard in infection prevention and control?

B. Meyer*, B. Cookson
*Ecolab Deutschland GmbH, Germany

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 200-205


医療関連感染症の症例数は、抗菌薬耐性菌による症例も含めて増加しており、感染制御のための消毒レジメンを改善する必要が生じている。結果的に殺生物薬を含む種々の抗菌薬に対する耐性に関する報告が増加している。殺生物薬と、その他の殺生物薬または抗菌薬との交差耐性については多くの報告がある。多くの文献では、殺生物薬への曝露を受けた微生物の順応と耐性とを明確に区別していない。順応は、殺生物薬を除去すれば元の状態に戻る点が耐性とは異なる。耐性は遺伝子に基づく現象であるため強力であり、容易には元に戻らない。このように明確な定義がないため、臨床の現場でこれらの現象の関連性を評価することが困難になっている。この総説では、順応プロセスおよび耐性の定義を提案するとともに、その定義に従って文献調査を実施した。結論としては、殺生物薬が適切に使用されていれば、殺生物薬耐性による医療へのリスクは現時点では低い。さらなる研究に取り組む必要がある。

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監訳者コメント
環境や医療器具の消毒や生体消毒における殺生物薬の効果を科学的に評価するためには、微生物の順応と耐性の区別などの明確な定義が必要である。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)におけるムピロシン耐性に関連するリスク因子★★

Risk factors associated with mupirocin resistance in meticillin-resistant Staphylococcus aureus

A.R. Caffrey*, B.J. Quilliam, K.L. LaPlante
*Veterans Affairs Medical Center, Rhode Island, USA

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 206-210


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)除菌プログラムが適用される機会が増加しており、ムピロシン耐性の出現が報告されるようになっている。しかし、ムピロシン耐性と関連する患者側のリスク因子については不明である。この研究では2004年7月1日から2008年6月30日の間にMRSA培養陽性であったプロビデンス退役軍人病院の患者を対象として、頻度マッチングを用いた症例対照研究により、MRSAのムピロシン耐性の独立予測因子を特定した。四半期毎および1年毎の培養実施日に基づき、ムピロシン耐性症例40例にムピロシン感受性270例の対照をマッチさせた。補正した条件付きロジスティック回帰モデルにより、MRSAのムピロシン耐性と関連する有意な独立予測因子として以下の3つが特定された。(1)培養前1年間のムピロシン投与[オッズ比(OR)9.84、95%信頼区間(CI)2.93~33.09]、(2)培養を実施した入院前1年間の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症(OR 4.85、95%CI 1.20~19.61)、および(3)培養前1年間のセフェピム投与(OR 2.80、95%CI 1.03~7.58)。ムピロシンの投与歴は、感受性試験で低レベルのムピロシン耐性[最小発育阻止濃度(MIC)8~128 mg/L、症例23例、対照202例、OR 6.32、95%CI 1.58~25.33]および高レベルのムピロシン耐性(MIC ≧ 256 mg/L、症例17例、対照151例、OR 11.18、95%CI 1.89~66.30)と関連があった。著者らの知る限り、この研究はムピロシン投与歴とその後のMRSAにおけるムピロシン耐性との強い関連を明らかにした初めての症例対照研究であり、低レベルおよび高レベルのムピロシン耐性との関連においてその頑健性を示した。ムピロシンによる除菌は、使用頻度が増加すると耐性により有効性が低下する可能性があるため、この方法を採用する医療機関ではムピロシン感受性をモニタリングすることが極めて重要となる。

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監訳者コメント
MRSAがムピロシンに対しても耐性を獲得することが明確にされた。ムピロシンの鼻腔内投与は、外科手術部位感染症をはじめとする医療関連感染症予防やMRSAアウトブレイク対策に有用ではあるが、ルーチンで無批判に乱用するとムピロシン耐性MRSAが蔓延する結果となる可能性が示唆された点で非常に重要な報告である。

監訳者注:
頻度マッチング(frequency matching):症例対照研究において対照をマッチングさせる方法のひとつ。マッチング要因(この研究では培養検査実施日)の各々の区分(階層)に含まれる対照数が、症例と同様の分布となるように対照をマッチさせる手法。

鼻腔内の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のニッチ(生態的地位)としての毛包:より効果的な除菌方法が必要か?

Hair follicles as a niche of Staphylococcus aureus in the nose; is a more effective decolonisation strategy needed?

N.J.P. ten Broeke-Smits*, J.A. Kummer, R.L.A.W. Bleys, A.C. Fluit, C.H.E. Boel
*University Medical Center Utrecht, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2010) 76,211-214


黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は手術部位感染症における主要な起因菌であり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は感染症の原因として世界的にも増加している。保菌患者のスクリーニングや除菌により手術部位感染症を予防することで感染件数は減少するが、リスクが完全に消失するわけではない。予防、費用、およびムピロシン耐性黄色ブドウ球菌出現の可能性のバランスを評価し、最適な除菌法を実施する必要がある。保菌中の黄色ブドウ球菌の存在部位を知ることは必須である。今回の研究では、組織学的手法を用いてヒトの鼻腔内の黄色ブドウ球菌の正確な存在部位を初めて明らかにした。著者らは、鼻前庭の扁平上皮角化層、そこから派生する角化上皮・粘液剥屑物、および毛包内に黄色ブドウ球菌が認められることを見いだした。毛包内に黄色ブドウ球菌が存在することは、黄色ブドウ球菌が毛包にニッチ(生態的地位)を築いており、除菌後にここから再発する可能性があることを示唆している。除菌方法の再検討が必要である。

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監訳者コメント
鼻腔内投与による除菌に頻用されるムピロシンに対してMRSAが耐性を獲得することは極めて重大な問題であるが、一般的な鼻前庭への塗布だけでは毛包に潜むMRSAに確実な効果を上げることは難しいかもしれない。この論文ではMRSAのムピロシン耐性獲得との関連は明らかではないが、ルーチンで無批判な乱用によるムピロシン耐性MRSAの蔓延はいずれにせよ避けなければならない。

スペインの地域長期ケア施設入居者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌の自然経過

Natural history of meticillin-resistant Staphylococcus aureus colonisation among residents in community long term care facilities in Spain

A. Manzur*, M.A. Dominguez, E. Ruiz de Gopegui, D. Mariscal, L. Gavalda, F. Segura, J.L. Perez, M. Pujol and the Spanish Network for Research in Infectious Diseases
*Hospital Universitari de Bellvitge, Spain

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 215-219


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の拡散は、急性期ケア病院や長期療養施設入居者の大きな問題となっている。著者らは長期療養施設入居者における MRSA保菌の自然経過をコホート研究で評価した。入居者の2つのコホート(MRSA保菌者231例、非保菌者196例)を18か月間にわたって追跡し、6か月ごとに鼻腔および褥瘡の培養を行った。MRSA保菌者のコホートでは、MRSAの6か月以上の持続的保菌者は110例(47.8%)、一時的保菌者44例(19.0%)、間欠的保菌者9例(3.9%)であった。MRSAの持続的な保菌のリスク因子は特定できなかった。MRSA保菌の1年間における発生率は約20%[95%信頼区間(CI)14.3~25.5]であった。抗菌薬投与はMRSA保菌と独立して関連していた(オッズ比2.27、95%CI 1.05~4.88、P = 0.03)。パルスフィールド・ゲル電気泳動法および複数部位配列タイピング(multilocus sequence typing)により識別可能であったのは、CC5-MRSA IV(スペインの病院に広く蔓延)とST22-MRSA IVの2クローンのみであった。この研究により、地域の長期療養施設におけるMRSAの疫学に関する知見が得られた。これらの知見はスペインの長期療養にとって重要である。

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監訳者コメント
この研究は保菌状態の持続の有無についてのみ着目されており、臨床的な感染症の発生については言及されていない。抗菌薬投与とMRSA検出に有意の相関が認められている。

地域における熱傷病棟におけるパントン・バレンタイン型ロイコシジン(PVL)産生メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus)アウトブレイク

Outbreak of Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus in a regional burns unit

L. Teare*, O.P. Shelley, S. Millership, A. Kearns
*Broomfield Hospital, Chelmsford, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 220-224


地域における熱傷・形成外科病棟において16か月にわたり、単一株のパントン・バレンタイン型ロイコシジン(PVL)産生メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus;PVL-MRSA)の保菌・感染例30例(患者19例、患者家族1例、職員10例)が認められた。この菌株はシプロフロキサシン、ネオマイシン、およびゲンタマイシンに耐性を示し、英国で蔓延している市中獲得型MRSAの系統に属していた。アウトブレイクは4段階で発生しており、第1段階は熱傷外来の患者、第2~3段階では熱傷病棟、最終段階は形成外科病棟で認められた。保菌・感染例が確認された部門を閉鎖して、蒸気洗浄および過酸化水素処理を含む入念な洗浄を実施したにもかかわらずアウトブレイクは持続した。職員の保菌に対する徹底的な取り組みの後にアウトブレイクの制圧が達成された。

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監訳者コメント
一般的にMRSA対策で最も重要なのは医療従事者による手指衛生と適切な個人防護具(手袋・ガウン・マスク)使用の徹底であり、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)では加えて環境整備も重要となるとされる。米合衆国やカナダでは毒性の強いクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の蔓延のために環境消毒に対する関心が高まっているが、基本的な手指衛生や個人防護具使用の徹底がより重要である。技術(technology)よりもそれを使いこなす考え方(concept)が問題である。

汚染されたプロポフォールによる重症敗血症のアウトブレイク:学ぶべき教訓★★

Outbreak of severe sepsis due to contaminated propofol: lessons to learn

A.E. Muller*, I. Huisman, P.J. Roos, A.P. Rietveld, J. Klein, J.B.M. Harbers, J.J. Dorresteijn, J.E. van Steenbergen, M.C. Vos
*Erasmus MC-University Medical Center Rotterdam, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 225-230


院内感染症は医療に関連して発生する頻度が高い懸案事項である。院内感染症やその予防策に関する情報は存在するものの、感染症アウトブレイクは継続的に発生している。この研究では、連続した2日間に手術室で小手術を受けた患者に発生した重症敗血症のアウトブレイクを記述するとともに、その分析を実施した。疫学データを用いた後向きコホート研究による感染源の調査に加えて、微生物学的検査、現場調査、および聞き取りを実施した。7例が術後に全身性炎症反応症候群(SIRS)の症例定義に合致した。同一期間に手術を受けた他のすべての患者を対照とした。検討したリスク因子のうち、統計学的に有意な関連があったのは全身麻酔およびプロポフォールの使用であった(P = 0.003)。開栓後のプロポフォール・バイアル、プロポフォールに関連した器材、および患者2例の血液培養から肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)およびセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)が検出された。培養菌株は遺伝子型が同一であった。プロポフォールの無菌的調製、取り扱い、および保存に過失が認められて、外因性汚染の原因となった可能性が強く疑われた。日常的なプロポフォールの取り扱い手順が製造会社による推奨に従っておらず、主要逸脱事項は単回使用バイアルが複数の患者に使用されていたことであった。この研究により、汚染プロポフォールの感染リスク、および取り扱い説明書に従うことの重要性が示された。

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監訳者コメント
この報告では、プロポフォールの単回使用バイアルが多分割投与されていたことがアウトブレイクの原因として同定されたが、いずれにせよ、多分割投与バイアルの取り扱いには十分な安全配慮が必要である。現在の標準予防策には安全な注射処置に関する注意事項も含まれており、無菌的な取り扱いも含めて重要なポイントである。

整形外科部門における侵襲性B群レンサ球菌感染症

Invasive group B streptococcal disease in an orthopaedic unit

P.J. Jenkins*, N.D. Clement, P. Gaston, S. Breusch, H. Simpson, J. Dave
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 231-233


侵襲性B群レンサ球菌は整形外科患者の感染症の原因菌であり、増加が認められている。高齢、糖尿病、免疫不全などがリスク因子である。B群レンサ球菌は、化膿性関節炎(生体関節および人工関節周囲)、蜂巣炎、筋膜炎、軟部組織膿瘍、および骨髄炎の原因となり得る。本稿では、一般整形外科患者の大規模コホートにおけるB群レンサ球菌感染症の疫学と転帰について述べる。当院で3年間に深部組織または吸引検体にB群レンサ球菌を認めた全患者を特定し、カルテを後向きに調査した。対象患者は17例で、成人10万人あたりの1年間の発生率は0.69件、全緊急入院患者の有病率は0.12%であった。8例は人工関節関連であり、人工関節置換術後の発生率は0.15%であった。その他は骨折固定用金属製インプラント、骨髄炎、または慢性軟部組織感染症に関連していた。すべての分離株がベンジルペニシリン感性であったが、6株はマクロライド系抗菌薬に対して中等度の耐性を示した。16例は外科的創面切除を必要とし、2例は最終的に切断術が必要となった。本研究は、B群レンサ球菌は特定のリスク因子を有する患者の軟部組織および関節の感染症の原因菌となり得るという認識を強化するものである。

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監訳者コメント
劇症B群レンサ球菌感染症は我が国でも臨床的に重要な感染症である。本サマリーには院内伝播に関する記載はないが、注意したい。

エア・プラズマ処理によるモデル表面および医療器材からの分子レベルの蛋白質汚染除去

Molecular-level removal of proteinaceous contamination from model surfaces and biomedical device materials by air plasma treatment

K.K. Banerjee*, S. Kumar, K.E. Bremmell, H.J. Griesser
*University of South Australia, Australia

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 234-242


医療器材の洗浄・滅菌法が確立し、肉眼レベルのバイオバーデンについては除去が可能となったと考えられるが、分子レベルの汚染(主に蛋白質)は課題として残されている。残留物にプリオンが含まれる可能性がある場合は、とりわけ懸念事項となる。エア・プラズマ(イオン化した空気)を用いた処理による、モデル表面および医療器材の表面からの実験的蛋白質汚染および臨床的蛋白質汚染の分子レベルの除去について調査した。表面分析が可能なX線光電子分光法(XPS)を用い、窒素元素(N1)の光電子シグナルを指標として蛋白質汚染の除去を評価した。モデル表面(シリコンウェハー)に吸着させた実験的蛋白質汚染(ウシ血清アルブミン)、および外科用ステンレス鋼製器材をヒト全血に浸漬しインキュベートして得た蛋白質の残存汚染(臨床的生体材料)からは、十分な洗浄後も強いN1シグナルが認められた(それぞれ16.8原子パーセントおよび18.5原子パーセント)。エアプラズマによる5分間の処理後は、XPSによりサンプル表面から窒素は検出されなかったが、このことは蛋白質汚染が完全に除去され、XPSの推定検出限界である10 ng/cm2を下回ったことを示している。従来の臨床的な洗浄法では歯科用バーに7.7原子パーセントの窒素が残存していたが、同一のプラズマ処理によって、新しい未処理の歯科用バーのレベルにまで低下した。接触角度の測定および原子間力顕微鏡法による測定からも、エアプラズマによる処理直後に蛋白質汚染が分子レベルで完全に除去されたことが示された。本研究によりエアプラズマは、モデル表面と医療器材の表面のいずれについても蛋白質汚染除去に有効であることが実証されるとともに、外科用および歯科用器材の再使用にあたってプリオンなどの分子レベルの残存汚染がない処理方法であることが示された。

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監訳者コメント
革新的な技術による蛋白質汚染除去に関する報告であるが、実験的研究に基づく報告であるため、今後は臨床の現場におけるシミュレーションの成果が期待される。

手術時の無菌スペースを拡張するための水平層流型器械台の評価

Assessment of horizontal laminar air flow instrument table for additional ultraclean space during surgery

K.-G. Nilsson*, R. Lundholm, S. Friberg
*Umea University, Sweden

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 243-246


一般的な超清浄垂直層流型ユニットの面積は、大手術に必要なすべての器具を収容するには不十分である。従来の層流ユニット本体への固定式超清浄層流装置付き器械台の付設を評価し、ユニット本体に対する物理的・細菌学的影響を判定した。第1期の試験として調査者2名による、患者を配置しない状態での送煙検査を実施したところ、器械台からユニット本体への空気の流入はないことが示され、粒子数の測定からは層流ユニット本体への有害な影響は認められなかった。第2期の試験では患者2例に対する人工膝関節全置換術時に、層流ユニット本体に層流装置付き器械台および層流装置が付いていない器械台を付設した。層流ユニット本体内では、追加で配置した1名の手術室看護師がこれらの器械台で作業を行い、活発な器具操作をシミュレートした。その操作中の粒子径が5 μmを超える粒子数は、層流装置付き器械台では275/m3、層流装置が付いていない器械台では8,550/m3であった(P < 0.0001)。また、手術室看護師が作業を行わない場合は、ユニット本体内部および層流装置付き器械台に隣接する部位の粒子数は有意に減少した(P < 0.03~0.003)。層流装置付き器械台の上およびユニット本体内に設置した平板培地で落下法により測定した細菌数は、それぞれ22 cfu/m2/時、25 cfu/m2/時であったのに対し、層流装置が付いていない器械台では45 cfu/m2/時であった。結論として、送煙検査、粒子数、および細菌学的評価から、層流装置付き器械台の付設は有効であり、手術室の層流ユニット本体を拡張する手法として安全な使用が可能であることが示された。

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監訳者コメント
手術時の層流形成は重要であるが、術者が視覚的にその領域を日常的に認識できないことが問題であろう。

高輝度狭帯域光による隔離病室の環境汚染除去

Environmental decontamination of a hospital isolation room using high-intensity narrow-spectrum light

M. Maclean*, S.J. MacGregor, J.G. Anderson, G.A. Woolsey, J.E. Coia, K. Hamilton, I. Taggart, S.B. Watson, B. Thakker, G. Gettinby
*University of Strathclyde, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 247-251


「高輝度狭帯域光環境汚染除去システム(HINS-light EDS)」と称する新しい汚染除去技術の性能を、熱傷患者用の隔離病室で実施した一連の3種類の試験により評価した。天井に設置したHINS-light EDSが放射する高輝度の405 nmの光には殺菌作用があるが、患者や病院職員には無害のため、1日を通した連続的な環境消毒が可能となる。性能の評価は、HINS-light EDS処理前、処理中、および処理後に室内の環境表面のブドウ球菌を接触平板培地により採取し、計数して行った。空室の場合は、HINS-light EDSの使用により表面細菌数が約90%減少した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に感染した熱傷患者が入室している場合は、56%~86%の減少が認められた。最大の減少(86%)はHINS-light EDS作動日数を延長した後の測定で得られた。オン/オフ介入試験では、HINS-light EDS処理により表面細菌数が62%減少したが、装置をオフに切り換えた2日後には通常の汚染レベルに戻った。黄色ブドウ球菌およびMRSAを含むブドウ球菌のHINS-light EDS処理による減少は、通常の感染制御と清掃のみで達成される減少より大きかった。今回の知見は、補助的手段としてHINS-light EDSを用いた場合に、臨床環境からの細菌汚染除去に大きく寄与し得るという強力なエビデンスを提示するものである。

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監訳者コメント
光照射による環境浄化に関する論文である。そもそも光浄化が適切な対処法なのかどうかの検討が必要に思う。

病院における手指衛生遵守の24時間観察研究

Twenty-four-hour observational study of hospital hand hygiene compliance

J. Randle*, A. Arthur, N. Vaughan
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 252-255


この観察研究では、2病棟における24時間にわたる医療従事者、患者、および訪問者の手指衛生遵守状況を「手指衛生の5つの機会」観察法を用いて評価した。手指衛生は医療関連感染症の減少に最も有効な対策であると考えられているが、遵守状況は最適な水準ではないことが多くの研究から報告されている。大半の研究は任意の時間帯の観察によってデータ収集を行っているが、このことは問題視されている。合計823回の手指衛生の機会(医療従事者659回、患者および訪問者164回)を観察した。医療従事者の遵守率は、医師47%、看護師75%、コメディカル78%、補助職員・その他の職員59%であった(P < 0.001)。患者と訪問者の遵守率に差はなかった(56%対57%、P = 0.87)。手指衛生遵守率は、医療従事者が手指衛生の5つの機会のいずれに実施したかにより異なり(P < 0.001)、無菌操作前100%(3/3)、体液への曝露後93%(86/93)、患者との接触後80%(114/142)、患者との接触前68%(196/290)、患者の周囲環境との接触後50%(65/129)であった。午前中に勤務する医療従事者の遵守率が低いことが示された(P < 0.001)。患者と訪問者では、手指衛生の機会と遵守率との間に関連は認められなかった。遵守率は既報の推定値と比較して高かった。医師の遵守率は最も低かったが、これは他の研究でも認められている懸念事項であることから、今後は特に介入が必要である。

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監訳者コメント
繁忙期とそうでない時の比較や、重症集中病棟とそうでない病棟などの比較が加味されると、より質的な問題点が浮き彫りになるだろう。

インドネシア農村部の医療従事者の手指衛生:流し、擦式手指消毒薬、および実地訓練では克服できない障壁

Hand hygiene in rural Indonesian healthcare workers: barriers beyond sinks, hand rubs and in-service training

B. Marjadi*, M.-L. McLaws
*Universitas Wijaya Kusuma Surabaya, Indonesia

Journal of Hospital Infection (2010) 76, 256-260


医療従事者の手指衛生遵守率の向上を図る試みの中では、手指衛生が実践されないことの社会的背景や行動上の背景の詳細な分析はほとんど行われていない。本研究は、複数の方法を組み合わせたアプローチを用いて、インドネシア農村部の医療施設における手指衛生の障壁を調査し、当地の資源に応じた国際的ガイドラインの導入方法を見いだすことを目的とした。インドネシア農村部のある地区の2病院と8診療所(民間、公的)をそれぞれ3か月間調査した。手指衛生遵守状況を、2病院の成人病棟3棟で2交代の勤務時間のいずれにもわたり、被験者に調査であることを伏せて観察した(covert observation)。定性的データを、医療施設および地域住民の直接観察、フォーカスグループ・ディスカッション、詳細な半構造化面接、および自由面接により収集した。遵守に対する主な障壁は、長期間の水不足、地域住民の不潔さへの寛容性、および医療組織の文化などであった。手指衛生遵守は不良であり(20%、57/281、95%信頼区間16%~25%)、遵守率が高かったのは、患者との接触後(患者との接触後34%対接触前5%、P < 0.001)、不潔であると認識される接触に関連する「本来の」手指衛生機会(「本来の」機会49%対清潔な接触に関連する「選択的な」機会11%、P < 0.001)であった。医師は手指衛生を行わずに患者に接触することが多く、患者との接触を完全に避ける医師もあった。長期的な地域住民の教育や、協力的な職場環境を形成する管理者の責任に焦点を当てた介入がなければ、清潔な石けんや水の提供および実地訓練のみでは強力な社会的障壁や行動上の障壁を克服することは不可能であろう。

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監訳者コメント
水のない地域での手指衛生は究極の課題である。WHOの手指衛生キャンペーンもこの点を配慮してガイドラインが作成されている。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.