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★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

院内感染によるコストの推計のための種々の解析法:システマティックレビュー

Variations in analytical methodology for estimating costs of hospital-acquired infections: a systematic review

H. Fukuda*, J. Lee, Y. Imanaka
*Institute for Health Economics and Policy, Japan

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 93-105


費用対効果に優れた感染制御対策を策定するためには、院内感染による追加コストを算出することが不可欠である。このようなコスト推計法には、ケースレビュー、変数をマッチさせた比較、回帰分析などがある。どのコスト推計法を選択するかにより推計値の精度に影響を与えると考えられるが、回帰分析では一般に、その他の手法にみられる選択バイアスを回避することが可能である。本研究の目的は、院内感染による追加コストの推計を実施している研究の発表論文を対象として、コスト推計法の使用状況と傾向を明らかにすることである。MEDLINE を利用し、院内感染によるコストの推計を実施している 1980 年から 2006 年にピアレビュー誌に掲載された論文を系統的に検索した。推計法の 10 年ごとの変遷を Fisher の正確確率検定を用いて解析した。院内感染によるコストの推計に使用された手法で最も頻度が高いものは多変数をマッチさせた比較(59.6%)であり、次いで回帰モデル(25.8%)とケースレビュー(7.9%)であった。1980 年代、1990 年代、および 2000 年以降にわたって、回帰モデルを用いた研究は有意に増加し、変数をマッチさせた比較は減少した(P = 0.033)。院内感染によるコストの推計には、近年は回帰分析が用いられる頻度が高くなっているが、現在も半数以上は変数をマッチさせた比較が使用されている。研究者は解析法に関して、より高い見識をもつべきであり、さらに精度の高い推計法を明らかにするためには比較分析が必要である。本総説は解析専門家を対象として、院内感染によるコストの推計のための既存の種々の手法について、その使用状況、傾向、および利点と欠点を概説する。

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監訳者コメント
医療関連感染のコスト推計やその分析は、医療関連感染対策に費やすことのできる費用と関連があり、重要な分野である。本論文は、その推計や分析の手法に関して、最近の論文で見られる研究の傾向を分析しており、興味深い。ただし、筆者らは本論文について解析専門家向けであるとしており、この分野に興味のある方には一読をお勧めする。

病院環境におけるノロウイルス:病院環境でのウイルスの侵入および伝播

Norovirus in the hospital setting: virus introduction and spread within the hospital environment

S. Morter*, G. Bennet, J. Fish, J. Richards, D.J. Allen, S. Nawaz, M. Iturriza-Gomara, S. Brolly, J. Gray
*Norfolk and Norwich University Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 106-112


2009 年から 2010 年にかけての 4 か月間に、胃腸炎症状を呈する入院患者からノロウイルス株が検出された。市中から病院内に持ち込まれたノロウイルスの株数を推定するために、採取したノロウイルスの特性を評価した。さらに、感染患者が滞在している病室・病棟の清掃後に、環境のスワブ採取を実施した。このスワブ採取の目的は、清掃の効果を評価すること、およびノロウイルスによる環境汚染を判定することである。この 4 か月間に、GII-4 型ノロウイルスの合計 8 種類の遺伝子群が同定され、このシーズン中に一部の病棟で異なる GII-4 株による複数のアウトブレイクが発生していた。清掃後の環境スワブの 31.4%にノロウイルスが検出された。ノロウイルスのリザーバとして、書類用カート、コンピューターのキーボード、石けん・アルコールのディスペンサー、血圧測定装置、パルスオキシメーター、および鼓膜体温計が特定されたが、病床周囲の環境表面、家具、作り付け設備、トイレ・浴室の付属器具からも汚染が検出された。ウイルス特性の詳細な評価と環境のスワブ採取の併用は、アウトブレイクの規模や範囲を判定し、臨床現場での清掃の効果をモニターするための感染制御監査の強力な手段となる。

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監訳者コメント
ノロウイルス感染症の院内伝播とウイルス株の関連を調べた研究。多数の環境検体中からノロウイルス遺伝子が検出されたことは、より念入りな環境清掃が必要であることを示唆している。一方で、ウイルス株の同定自体は学問的には興味深いが、その結果が臨床現場での感染対策にどのように役立つのかが見えてこない。

基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の根絶のための新規除菌レジメンの有効性

Effectiveness of a new decolonisation regimen for eradication of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacteriaceae

M. Buehlmann*, T. Bruderer, R. Frei, A.F. Widmer
*University Hospital Basel, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 113-117


基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生グラム陰性菌が世界的に拡散している。ESBL 産生菌の保菌は数年間にわたって持続することもあり、伝播を促進すると考えられる。接触隔離予防策や抗菌薬使用の制限などの介入が実施されるが、ESBL 産生菌の除菌法は確立していない。標準化された除菌プログラムの有効性を明らかにするため、2000 年 1 月から 2008 年 1 月にかけてオープンラベルの前向きコホート対照研究を実施した。ESBL 産生菌陽性患者に対して、直腸、咽頭、および尿のスクリーニングを定期的に実施した。除菌法として 0.2%クロルヘキシジンによる 1 日 3 回の口腔洗浄(咽頭の保菌に対して)、paromomycin 1 g の 1 日 4 回投与(腸の保菌に対して)、および尿路の保菌に対する経口抗菌薬投与を実施した。ESBL 産生菌の除菌成功の定義は、追跡時のスクリーニングのサンプルセット(咽頭、直腸、尿)が 1 回以上陰性であることとした。登録患者 100 例のうち、ESBL 産生菌感染患者は 83%、保菌患者は 17%であった。検出頻度が高い病原菌は大腸菌(Escherichia coli)(71%)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(25%)であった。追跡時に ESBL 産生菌陰性となった患者は、全体で 76%(100 例中 76 例)であった。治療が成功した患者の 55%(76 例中 42 例)は、感染症に対する全身治療を受けていた。除菌を完了した患者の 83%(18 例中 15 例)は、追跡期間中に ESBL 産生菌が検出されなかった。除菌成功はリスク因子の数および保菌部位と関連があった。除菌は選択された特定の患者群に有益であると考えられ、これにより ESBL 産生菌の保菌期間が短縮し、その後の伝播リスクが低下する可能性がある。

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監訳者コメント
ESBL に関する除菌の有効性や必要性についてはいまだ検討が不十分である。除菌治療は新たな耐性菌を生み出す可能性や C. difficile 感染症のリスクもあり、研究することすら容易ではない。実際、本研究においても 100 例の登録患者のうち 35 名しか除菌を実施されておらず、しかも 17 例は除菌レジメンから途中で脱落している。さらに、除菌が完了した患者のほとんどがその後の ESBL 検出陰性、すなわち除菌成功例であるが、脱落例においても約半数その後の ESBL 検出陰性である。すなわち、除菌レジメンの妥当性は言うに及ばず、除菌の必要性すら検討が困難な状況である。ともあれ、興味深い文献である。

ベルギーの 3 次病院におけるパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009 の対策と臨床的特性

Hospital preparedness and clinical description of the 2009 influenza A (H1N1) pandemic in a Belgian tertiary hospital

S. Cherifi*, M. Reynders, C. Theunissen
*Brugmann University Hospital, Belgium

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 118-122


ベルギーの 3 次病院で成人患者に発生したパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009 の、コストを含めた対策と臨床的特性を報告する。対策委員会がトリアージや入院などの全体的な運営の調整を実施した。2009 年 6 月 1 日から 11 月 30 日に、インフルエンザ様疾患患者 521 例が救急病棟に入院した。A 型インフルエンザと診断された 43 例の入院患者のデータを評価した。年齢中央値は 44 歳(範囲 21 ~ 79 歳)であり、84%が基礎疾患を有していた。11 例が集中治療室への入室を必要とし、1 例が死亡した。インフルエンザの流行による経済的影響は 75,691 ユーロと推計され、このコストの約半分は感染制御対策実践の強化に関連するものであった。今回の入院患者 43 例のコホートでみられたベルギーのパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009 での集中治療室入室率は 26%と比較的高く、死亡率は 3%とごく標準的であった。この後向き研究は将来の流行の制御を改善する上で有用であると考えられる。

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監訳者コメント
2009 年 A(H1N1)については様々な論文により知見が発表されている。本論文は単一医療施設における 43 例のデータのまとめであり、その結果自体に特筆すべきものはみられない。しかし、単一医療施設のデータのまとめ方を知る上で参考になる論文である。また、インフルエンザ流行に際して病院に生じたコストの分析方法も参考にはなる。

抗菌薬管理プログラム:フランス南西部の病院における法的枠組みおよび構造(structure)と過程(process)の指標、2005 ~ 2008 年

Antibiotic stewardship programmes: legal framework and structure and process indicator in Southwestern French hospitals, 2005-2008

C. Dumartin*, A.-M. Rogues, B. Amadeo, M. Pefau, A.-G. Venier, P. Parneix, C. Maurain
*Southwestern Regional Coordinating Centre for Nosocomial Infection Control (CCLIN), France

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 123-128


フランスの病院は、抗菌薬の使用の改善を目的とした抗菌薬管理プログラムの実施が求められている。本研究では抗菌薬管理プログラムの法的枠組みを分析するとともに、法的枠組みがフランス南西部の病院の抗菌薬管理プログラム開発に及ぼす影響を評価した。関連する個々の公的文書を対象として、求められている対策、告示日、管理方法、およびインセンティブを分析した。2005 年から 2008 年に 84 病院で後向き調査を年 1 回実施し、抗菌薬管理プログラムの構成項目の実施状況として組織編成、資源、および活動についてモニターを行った。各対策の改善状況、および抗菌薬管理プログラムの実施状況が反映される構造(structure)と過程(process)の指標(SPI)の改善状況を、病院ごとに示した。2002 年以降に保健当局が告示した公的文書には、過去の専門的なガイドラインに基づく抗菌薬管理プログラムの要件が反映されていた。2006 年と 2007 年にはインセンティブと管理方法が強化され、SPI の一般への開示が義務化された。研究期間中に、抗菌薬管理プログラムの実施状況に改善が認められた。2008 年には 98%以上の病院が処方集、抗菌薬専門委員会、および手術時の予防ガイドラインを導入し、抗菌薬使用のモニターを行っており、85%の病院は抗菌薬アドバイザーを任命していた。薬剤師が抗菌薬にかかわる時間、およびストップ・オーダーによる使用制限には、ほとんど改善がみられなかった。IT ツール、生涯教育、および監査の活用は不十分なままであった。SPI 値は、私立病院およびリハビリテーション施設がその他の施設と比較して高かった。公的文書と SPI が公開されたことによって、専門家や病院経営者が抗菌薬管理プログラムの策定に深く関与するようになり、これが改善をもたらした。しかし、一部の活動についてはさらに強化を図る必要がある。抗菌薬管理プログラムの有効性を正しく評価し、要件を適応させるためには、業務実践をモニターすることが不可欠と考えられる。

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監訳者コメント
フランスでの取り組みであるが、国が指針を示し、各医療機関がそれぞれの事情に応じた形ながらも全体的にその指針に沿った方向で感染対策を向上させていることが伺える。進まない分野は、医療機関が資金やマンパワーを必要としたり、臨床医の特権ともいえる処方に対する強力な介入を必要としたりする部分であり、日本でも同様の点に困難を抱えているといえる。この問題は洋の東西を問わない。

パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)変異株に対するトリクロサンの抗菌特性へのメチル化の影響

Influence of methylation on the antibacterial properties of triclosan in Pasteurella multocida and Pseudomonas aeruginosa variant strains

A.B. Clayborn*, S.N. Toofan, F.R. Champlin
*Northeastern State University, Oklahoma, USA

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 129-133


日和見感染細菌であるパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)は、外膜の透過性が著しく高いため、疎水性殺生物剤トリクロサンに対する感受性が極めて高いのに対して、院内感染起因菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、水溶解限度をはるかに超える濃度のトリクロサンに対しても自然耐性を示す。トリクロサンは医療用製品およびパーソナルケア製品に広く含まれており、それに伴いメチルトリクロサンなどの代謝物が環境系および生体系に蓄積するようになっている。本研究の目的は、トリクロサンのメチル化によって医療現場での消毒効果が低下している可能性を検討すること、および想定される耐性機序を明らかにすることである。高度に標準化されたディスク拡散法およびバッチ培養の比濁法による測定を用いて、トリクロサン感性・耐性菌株とメチルトリクロサンとの関連を評価した。野生型の緑膿菌親株、細胞外エンベロープが透過性を示す表現型の緑膿菌変異株、および耐性野生株を外膜透過性増加化合物 48/80 を用いてトリクロサン感性とした株を調べた。検討したすべての菌株がメチルトリクロサン耐性であり、緑膿菌親株を除くすべての菌株が広い濃度範囲のトリクロサン感性を示した。外膜透過性の表現型を示す両菌株、すなわち変異株および化学的に感受性を増加させた野生株はいずれもトリクロサン感性であったが、メチルトリクロサン感性は示さなかった。以上のデータから、トリクロサンはメチル化を受けることにより種々の病原菌に対する増殖抑制効果を喪失し、これは細菌外膜の完全性とは無関係であるという考え方が支持される。また、殺生物剤の修飾がトリクロサンに対する緑膿菌の自然耐性に関与している可能性も、結論として挙げることができる。

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監訳者コメント
グラム陰性菌の消毒薬耐性に関する基礎的検討。消毒薬や菌株の修飾により感受性が変化する点は興味深い。

結核患者の多剤耐性菌感染症のリスク因子

Risk factors for multidrug-resistant bacterial infection among patients with tuberculosis

H.-R. Kim*, S.S. Hwang, E.-C. Kim, S.M. Lee, S.-C. Yang, C.-G. Yoo, Y.W. Kim, S.K. Han, Y.-S. Shim, J.-J. Yim
*Seoul National University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 134-137


結核治療薬それ自体の抗菌活性、および広域スペクトル抗菌薬が広範に使用されていることを考慮すると、結核治療を受ける患者に多剤耐性菌が出現する可能性は高い。症例対照研究により、結核患者における多剤耐性菌感染症の臨床的予測因子を調べた。1996 年 1 月 1 日から 2006 年 8 月 31 日に、結核と診断され治療を受けた患者から症例および対照を選択した。多剤耐性菌感染症が認められる結核患者を症例、非多剤耐性菌感染症が認められる結核患者を対照とした。多剤耐性菌感染症のリスク因子を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を行った。研究期間中に 3,667 例が結核と診断され、その治療を受けた。123 例に細菌感染症エピソードが認められ、このうち 59 例(48.0%)は 1 回以上、多剤耐性菌に感染していた。慢性腎不全(補正オッズ比[OR]4.96、95%信頼区間[CI]1.37 ~ 18.01)、および 3 か月以内の標準的結核治療薬以外の抗菌薬使用(補正 OR 4.37、95%CI 1.74 ~ 10.95)が、多剤耐性菌感染症の独立リスク因子であった。結核患者の細菌感染症の多くは多剤耐性であった。医師は、慢性腎不全を有する結核患者や他の抗菌薬を最近使用した結核患者における多剤耐性菌感染症の可能性を認識しておくべきである。

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ナーシングホーム入居は医療関連肺炎による死亡率増加の主要なリスク因子である

Nursing home residence is the main risk factor for increased mortality in healthcare-associated pneumonia

P. Depuydt*, B. Putman, D. Benoit, W. Buylaert, P. De Paepe
*Ghent University Hospital, Belgium

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 138-142


医療関連肺炎は、市中感染肺炎とは別の疾患群であると考えられている。本稿では、救急部を経由して入院した患者を対象として、医療関連肺炎の発生率と特性を市中感染肺炎と比較する。2006 年 11 月 1 日から 2007 年 10 月 31 日にベルギーのヘント大学病院救急部で診断された肺炎を、米国胸部学会(American Thoracic Society)/米国感染症学会(Infectious Disease Society of America)の定義に従って市中感染肺炎または医療関連肺炎に後向きに分類した。肺炎と診断された269例の患者に287件の肺炎エピソードが認められ、これらを市中感染肺炎(159 件[55%])と医療関連肺炎(128 件[45%])に分類した。医療関連肺炎患者は市中感染肺炎患者と比較して高齢であり(75 歳[範囲 64 ~ 83 歳]対 68 歳[41 ~ 78 歳]、P < 0.001)、併存疾患が多く、肺炎が重度であった(CURB-65 スコア 2[1 ~ 3]対 1[0 ~ 2]、P < 0.001)。また、医療関連肺炎患者は市中感染肺炎患者と比較して不良な臨床経過が高頻度にみられ(27% 対 15%、P < 0.01)、入院期間が長期間であった(12 日対 9 日、P < 0.001)。多変量回帰分析では、院内死亡の独立予測因子は医療関連肺炎ではなく、ナーシングホーム入居であった(オッズ比 2.96、95%信頼区間 1.12 ~ 7.84、P = 0.03)。結論として、救急部を経由して入院した肺炎患者は高い割合(45%)で医療関連肺炎に分類された。医療関連肺炎に分類されることは、不良な臨床経過と関連していた。ナーシングホーム入居は死亡率増加の独立予測因子であった。

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アイルランドの病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびメチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible S. aureus;MSSA)の死亡診断書による報告

Reporting of meticillin-resistant and -susceptible Staphylococcus aureus on death certificates in Irish hospitals

C.J. Collins*, M.H. Fraher, K. O’Connell, J. Fennell, S.F. FitzGerald, N. O’Sullivan, M. Cormican, L.E. Fenelon, P. Murphy, M.M. Hannan
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 143-147


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症の死亡診断書への記載に関する問題が、社会的に大きな議論を呼んでいる。アイルランドの 3 次紹介病院 5 施設から得たデータを用いて、血液培養により MRSA またはメチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible S. aureus;MSSA)が分離されてから 30 日以内に死亡した院内患者を対象として、死亡診断書に記載された MRSA と MSSA との比較を行った。研究期間中に、死亡前 30 日以内に血液培養により MRSA または MSSA が分離された患者は合計 133 例であった。1 例は死亡診断書の情報を入手できなかったため除外したが、その他の 132 例は本研究に適格であった。血液培養により MRSA が分離された患者は 59 例(44.4%)、MSSA は 74 例(55.6%)であった。1 例は、血液培養から MRSA と MSSA がいずれも分離されたため、両カテゴリーに分類された。MRSA 症例 59 例のうち、死亡診断書に MRSA の記載があった患者は 15 例(25.4%)であった。MSSA 症例 74 例のうち、死亡診断書に MSSA の記載があった患者は 9 例(12.2%)であった。MRSA は MSSA と比較して死亡診断書に記載される割合が高かった(オッズ比 2.46、95%信頼区間 1.01 ~ 6.01、P < 0.05)。これらの結果から、アイルランドでは死亡診断書への病原体や感染症の記載方法は一貫していないと考えられること、および死亡診断書のデータは特定の病原体が関連する死亡率が過小評価されている可能性があることが示唆される。特に、診断書記入者は MSSA よりも MRSA を過度に重視して記載していると考えられる。

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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症:感染症有病者としての現代における烙印であるのか?

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus infection - the infectious stigma of our time?

G.S. Braut*, J. Holt
*Norwegian Board of Health Supervision, Norway

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 148-152


本稿では、感染症患者の隔離に関する倫理的側面について論じる。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染患者の拡大防止に関する 2 か国のガイドラインのテキスト解析を行った。本解析から、いずれのガイドラインも疫学と感染症に関する最新の科学的エビデンスに基づいてはいるが、隔離やその他の拘束下での治療・ケアにかかわる種々の問題に対する倫理的考察が明確には行われていないことが示された。文書化されたガイドラインは医療従事者の省察や学習に重要な骨格をもたらすと考えられることから、このようなガイドラインは北欧のみならず国際的にも、隔離患者に関する個々のリスクアセスメントの中に倫理的考察をいかに組み入れていくことができるかを示すべきである。

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インプラント関連感染での表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の付着には粘液産生が不可欠である

Slime production is essential for the adherence of Staphylococcus epidermidis in implant-related infections

N. Nayak*, G. Satpathy, H.L. Nag, P. Venkatesh, S. Ramakrishnan, T.C. Nag, S. Prasad
*All India Institute of Medical Sciences, India

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 153-156


眼内レンズ挿入術後の眼内炎、静脈カテーテル関連敗血症、および整形外科用インプラント感染症などの留置器材関連感染症から分離された表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)合計 32 株を対象として、粘液産生および人工表面への付着について調べた。これらのうち 21 株(65.6%)はコンゴーレッド培地法により粘液産生陽性であり、24 株(75%)は粘液の定量試験により人工表面に付着することが示された。付着細菌の大半(24 株中 19 株、79.1%)は粘液産生性であった。ウサギから得た抗粘液抗体により、定量試験で付着細菌と判定された全 24 株の付着が阻害された。粘液は、付着の過程に不可欠であると考えられ、その結果として留置器材上のバイオフィルム形成がもたらされる。

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カンジダ(Candida)属菌による血流感染症:単一施設における 1991 年から 2008 年の疫学および転帰

Candida species bloodstream infection: epidemiology and outcome in a single institution from 1991 to 2008

M. Ortega*, F. Marco, A. Soriano, M. Almela, J.A. Martinez, J. Lopez, C. Pitart, J. Mensa
*University of Barcelona, Spain

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 157-161


カンジダ血症は、依然として医療施設内での疾患・死亡の主要な原因である。本研究の対象は、1991 年から 2008 年に単一施設で実施された血液培養サーベイランスプログラムにおいて、前向きに記録されたカンジダ(Candida)属菌血流感染症エピソードとした。菌種や診断後 30 日時点の生存率などのカンジダ血症エピソードに関するデータを解析した。研究期間中に 529 件のカンジダ血症エピソードが認められた(このうち院内感染症は 495 件)。カンジダ・アルビカンス(C. albicans)以外の Candida 属菌によるカンジダ血症の発生率(52%)は、C. albicans(48%)よりも高かった。全体の 30 日粗死亡率は 32%であった。カンジダ・パラプシローシス(C. parapsilosis)によるカンジダ血症患者の死亡率が最も低かった(23%)。カンジダ・クルーセイ(C. krusei)によるカンジダ血症との関連が高かった因子は、血液悪性腫瘍(61%、P < 0.001)、幹細胞移植(22%、P = 0.004)、好中球減少症(57%、P = 0.001)、およびアゾール系抗真菌薬使用歴(26%、P < 0.001)であった。本研究で 30 日粗死亡率が最も高かったのは C. krusei によるカンジダ血症患者であった(39%)。カンジダ血症の臨床的・微生物学的特性を明らかにするため、および各種状況下での経験的治療法の指針を得るにためには疫学研究が重要である。

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真皮縫合と皮下ドレナージとの併用による皮膚閉鎖は縦切開による手術を受けた肥満女性の創合併症を減少させる

A combination of subcuticular sutures and a drain for skin closure reduces wound complications in obese women undergoing surgery using vertical incisions

Y. Inotsume-Kojima*, T. Uchida, M. Abe, T. Doi, N. Kanayama
*Hamamatsu University School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 162-165


縦切開による手術を受けた女性では、肥満は手術部位感染症または創合併症のリスク因子である。皮下ドレナージによる合併症発生率減少効果についての報告はいくつかあるが、肥満患者の手術に対する使用については一致した見解が得られていない。スコットランド医療関連感染症サーベイランスプログラム(Scottish Surveillance of Healthcare Associated Infection Programme)は 2006 年、切開の閉鎖にはステープルではなく真皮縫合を使用することによって手術部位感染症のリスクが有意に低下することを示している。2008 年 1 月以前(第 1 群、40 例)は当病院の肥満患者の一部に、皮膚閉鎖にステープルのみを使用した産婦人科手術後に創合併症が認められた。2008 年 1 月(第 2 群、31 例)に肥満患者(体格指数[BMI]> 28 kg/m2)の皮膚閉鎖方法を変更し、現在は 4 つのチャンネル付きチューブを使用する皮下ドレナージ、およびポリジオキサノン 4-0 縫合糸を用いた結節縫合・埋没縫合による真皮縫合を採用している。本研究の目的は、この介入方法が肥満女性の皮膚閉鎖にもたらす効果を評価することである。患者の全般的特性(年齢、体重、および BMI)は両群で同等であった。第 2 群には創合併症は認められなかった。第 1 群では創離開が 5 例(12.5%)、漿液腫が 1 例(2.5%)に認められた。第 2 群の創合併症発生率は第 1 群よりも有意に低かった(P = 0.0319)。これらの結果から、皮膚閉鎖に新規の素材と技術を用いることにより、肥満女性の創合併症を減少させることが可能であると考えられる。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.