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★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)に対する殺芽胞薬:悪魔は細部に宿る

Sporicides for Clostridium difficile: the devil is in the detail

M.H. Wilcox*, A.P. Fraise, C.R. Bradley, J. Walker, R.G. Finch
*Leeds Teaching Hospitals & University of Leeds, Old Medical School, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 187-188


現在、保健省の抗菌薬耐性・医療関連感染(Antimicrobial Resistance and Healthcare Associated Infection;ARHAI)諮問委員会、病院感染学会(Hospital Infection Society;HIS)、保健省(英国)、および健康保護局の代表者からなる作業部会が結成されている。殺芽胞性消毒薬 ARHAI/HIS 作業部会の目的はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞に対する有効性を標榜している消毒薬の適正な検査基準を策定すること、消毒薬の殺芽胞効果の in vitro 検査に対応できる検査機関のネットワークを構築すること、および消毒薬の殺芽胞効果の in vitro 検査実施機関のための全国的な質評価スキームの策定を模索することである。

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監訳者コメント
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、偏性嫌気性菌でありながら、芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の 1 つである。一方、これまでの殺芽胞性消毒薬に関するヨーロッパ規格(EN 13704)は、枯草菌(Bacillus subtilis)に対する活性が評価の対象となっており、主として食品衛生のための基準であった。新たに C. diffcile に照準を合わせた基準が 12 ~ 24 か月を目途に策定されようとしている。

欧州殺生物性製品指令に基づく殺芽胞薬の規制

Regulation of sporicides under the European Biocidal Products Directive

A. Low*
*Chemicals Regulation Directorate, Health and Safety Executive, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 189-192


医療現場で使用される消毒薬(殺芽胞薬を含む)は、欧州殺生物性製品指令(European Biocidal Products Directive;98/8/EC)の対象となっている。これらの製剤に含有される有効成分の評価は、欧州連合(EU)全域の調査プログラムの一環として実施されることになっており、ヒト、動物、および環境に対して過度の危険を伴うことなく使用可能であるか、およびこれらの製剤の有効性についても判定を受ける。有効成分の調査終了後、当該有効成分を含有する殺生物性製品はすべての EU 加盟国で規制管理対象となる。本稿では、この指令がいかに運用されているかについて、その調査プログラムおよび加盟各国レベルでの殺生物性製品の承認の両方を通して、有効成分および最終製品である殺生物性製品の両方の有効性に関する提出データの要件とともに議論する。

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監訳者コメント
欧州連合(EU)は、加盟各国の市場における制度間格差の是正(harmonization)を図る目的から様々な統一規格を打ち出しており、消毒薬についても欧州殺生物性製品指令(European Biocidal Products Directive;98/8/EC)の対象としている。この規格では、ヒト、動物、および環境に対する安全性と製品の十分な有効性を要件としている。

殺芽胞薬の標準的検査法

Testing standards for sporicides

P.N. Humphreys*
*University of Huddersfield, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 193-198


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞による汚染への対処が可能な製剤が必要とされており、殺芽胞薬は医療環境において極めて重要である。殺芽胞効果の標榜を検証するための殺芽胞性検査基準は、市販の殺芽胞製剤を評価するために重要なツールである。欧州には多くの殺芽胞性検査基準があり、市販の殺芽胞薬が標榜する効果を実証するためにしばしば使用されている。しかし、これらの検査では、接触時間が長く(30 分以上)、また表面汚染を対象としていないため、これらの基準は医療施設における殺芽胞薬の使用実態をあまり反映していない。代替として、芽胞懸濁液ではなく汚染担体を検査に使用する国際基準が利用可能であるのに加えて、現在では経済協力開発機構(OECD)が現行の欧州の基準より実態に即した検査手法を用いた統一基準を策定中である。本稿は、検査手法における主要な相違点、および検査基準が殺芽胞薬の使用実態をどの程度反映しているかに焦点を当てつつ、現行の殺芽胞薬の検査基準をレビューする。また、欧州の殺芽胞性検査基準を適用する際に多くみられる問題点や誤謬についても若干の考察を行う。最後に現行の検査基準における欠点を明示・考察する。

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監訳者コメント
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、偏性嫌気性菌でありながら、芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の 1 つである。医療環境における環境表面の汚染にどのように対処するのか、現場における重要な課題となっている。

医療環境におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)に対するガスを用いた汚染除去および空気汚染除去の方法論

Gaseous and air decontamination technologies for Clostridium difficile in the healthcare environment

A. Davies*, T. Pottage, A. Bennett, J. Walker
*Centre for Emergency Preparedness and Response, Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 199-203


病院感染に関する最近のデータからは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の感染率が低下し始めていることが示唆される。しかし、この傾向を維持するには困難があり、標準的洗浄薬に対する C. difficile 芽胞の耐性は、水平伝播の防止やアウトブレイクの制圧を企てる多くの英国の病院にとっては依然として重要な問題である。現在、用手的消毒法の代用または補助として、ガスを用いた除染など、代わりとなる消毒方法が医療用に市販されており、環境汚染を減少させることに有効であることが示されている。これらの方法を正しく用いれば用手清拭を補助する方法となり、C. difficile 芽胞の生存能を効果的に低下させるとともに、均一性の比較的高い消毒薬散布ができる。C. difficile による環境汚染を低下させる効果の適性について、3 種類のガス、すなわち過酸化水素ガス、二酸化塩素ガス、およびオゾンガスによる汚染除去法を評価する。また、空気汚染除去法および紫外線を用いた汚染除去法についても簡単に述べる。結論として、C. difficile による病棟の環境表面からの汚染除去にこれらの新規技術は有用であるが、使用前に事前清掃が必要であること、および in vivo のエビデンスが限られていることから、医療現場での費用対効果を明らかにする大規模な実地試験が必要である。

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監訳者コメント
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、偏性嫌気性菌でありながら、芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の 1 つである。医療環境における環境表面の汚染にどのように対処するのか、現場における重要な課題となっている。米合衆国やカナダでは毒性の著しい C. difficile の蔓延に加えて、高度耐性の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の問題があり、環境消毒に対する関心が高まっている。

殺芽胞薬に対する自然耐性および汚染除去不成功の可能性

Innate resistance to sporicides and potential failure to decontaminate

J.-Y. Maillard*
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 204-209


細菌芽胞の多くは殺生物薬に対する内在的な耐性を有しており、特定の状況の下で一部のアルキル化殺生物薬や酸化性殺生物薬のみが殺芽胞効果を発揮する。芽胞に対する作用は、薬剤濃度、曝露時間、汚染状態、および処置される表面のタイプなどのいくつかの重要な因子から影響を受ける。通常、高濃度の殺生物薬への数分間の曝露によって殺芽胞効果が得られる。これらの因子についての認識が欠如していると、殺芽胞効果が低下して、芽胞の生残につながる。医療現場において、殺芽胞薬は、環境表面の消毒や(内視鏡などの)特定の医療器材の高水準消毒に利用される。医療器材の消毒には、有効性データを考慮しつつ、高濃度かつ長時間の曝露により殺芽胞効果を発揮させる必要がある。しかし、環境表面の消毒には高濃度の曝露は推奨されず、また長時間の曝露は実施不可能である。この場合、殺芽胞効果は大幅に低下し処置後も芽胞が生残することが予想され、このことから表面への芽胞残存を説明することができる。

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監訳者コメント
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、偏性嫌気性菌でありながら、芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の 1 つである。医療環境における環境表面の汚染にどのように対処するのか、現場における重要な課題となっている。

医療に使用可能な現行の殺芽胞薬とその限界

Currently available sporicides for use in healthcare, and their limitations

A. Fraise*
*University Hospital Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 210-212


これまでクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、環境汚染および環境を介する二次伝播をもたらす可能性のある病原体として認識されてきた。残念なことに、医療環境で現在用いられている多くの消毒薬は C. difficile に対して無効である。たとえば、アルコール含有擦式手指消毒薬には殺芽胞効果がなく、一部の四級アンモニウム化合物や洗浄薬は芽胞形成を促進することさえある。消毒薬の効果の検査法の標準化を図るために欧州標準が作成されているが、医療環境における C. difficile に対する消毒薬の効果の検査法については欧州標準が存在しない。多くの検査施設では、食品、家庭、および製造業に適用するために策定された EN 13704 修正版を使用している。消毒薬の検査の際に重要なのは、清潔状態だけでなく汚染状態でも行うこと、および消毒薬が適切に中和できることである。現行の殺生物薬は C. difficile に優れた効果を有するものもあるが、比較的長時間の接触を必要とする場合があり、この点が実際の使用時に正確に反映されていないことがある。薬剤の中には 1 時間接触させても C. difficile に対する効果をほとんど示さないものもある。C. difficile に対する効果の試験は技術的に非常に困難であること、またこのために検査結果の施設間差が大きい可能性があることを認識しておく必要がある。データを解釈する際には、使用した検査方法を詳細に検討することが不可欠である。

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監訳者コメント
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、偏性嫌気性菌でありながら、芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の 1 つである。医療環境における環境表面の汚染にどのように対処するのか、現場における重要な課題となっている。

エアロゾルおよび空気伝播する疾患の感染制御のための空気流の観察と定量:アプローチ方法の概要★★

Observing and quantifying airflows in the infection control of aerosol- and airborne-transmitted diseases: an overview of approaches

J.W. Tang*, C.J. Noakes, P.V. Nielsen, I. Eames, A. Nicolle, Y. Li, G.S. Settles
*National University Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 213-222


感染性病原体、特にインフルエンザは、エアロゾル伝播および空気伝播の可能性が懸念されることから、このような感染経路を介する病院感染予防を目的とした感染制御方法の有効性が注目を集めている。より最近は、病院環境における空気流のパターンや関連する空中浮遊物質の動態に関する時空間的情報を調査するため、多くの様々な技術が用いられている。臨床微生物学者、ウイルス学者、および感染制御チームは、工学技術者との緊密な協力によって、病院内の隔離室や換気設備の有効性を評価することが可能となる。また、いくつかの一般的な工学技術を用いて、ヒトの呼吸活動の特性についても調査が行われている。これらの研究はそれら予防対策の有効性の向上を目的としており、ヒト型マネキンを用いた様々な追跡用標識ガス・粒子による実験、リアルタイムの非侵襲性シュリーレン画像によるヒトボランティアでの実験、数値流体力学による数値モデル化、および水による小型の物理的シミュレーションなどがあり、本稿では、空気流や工学の専門知識のない臨床分野の読者に向けて、これらの個々の技術についてわかりやすく概説する。

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監訳者注
この総説は空気流の評価に関する様々な技術を解説しているが、掲載されている写真だけでも十分に参考になる。

監訳者コメント:
シュリーレン画像(Schlieren imaging):微小な屈折率の変化を明暗の差として表現する光学的測定方法。

血液培養コンタミネーション防止のための静脈穿刺部位消毒に使用する皮膚消毒薬:メタアナリシスによるシステマティックレビュー★★

Skin antiseptics in venous puncture-site disinfection for prevention of blood culture contamination: systematic review with meta-analysis

D. Caldeira*, C. David, C. Sampaio
*Clinical Pharmacology and Therapeutics Laboratory, Portugal

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 223-232


静脈穿刺による血液培養の検体採取は菌血症を診断するための一般的な臨床手順である。血液培養のコンタミネーションは臨床判断の誤りや不要な医療費の原因となり得る。この研究の目的は、静脈穿刺による血液培養のコンタミネーション防止のための皮膚消毒薬に関する無作為化対照試験を対象としたシステマティックレビューである。2010 年 6 月に、CENTRAL(Cochrane Library、2010 年 4 月発行)、MEDLINE、EMBASE、および mRCT を用いたデータベース検索を実施した。静脈穿刺による血液培養で使用した皮膚消毒薬を評価しているすべての無作為化対照試験が収集された。血液培養のコンタミネーションが発生する相対リスク(RR)と 95%信頼区間(CI)をランダム効果解析法により算出した。レビュー担当著者 1 名が各研究を評価して、他の著者はそれを確認した。6 つの研究が適格とされた。単独試験の比較からは、アルコール性ヨードチンキは非アルコール性ポビドンヨードよりも優れており、イソプロピル/アセトン/ポビドンヨードはイソプロピル/ポビドンヨードより優れていた。2 つの試験の 4,757 検体の血液培養に関するメタアナリシスでは、アルコール性クロルヘキシジンが非アルコール性ポビドンヨードより優れていた(RR 0.33、95%CI 0.24 ~ 0.46)。4 つの試験結果から 21,300 検体の血液培養をまとめて検討すると、アルコール性製剤は非アルコール性製剤より優れていた(RR 0.53、95%CI 0.31 ~ 0.90)。2 つの試験による 13,418 検体の血液培養からは、ヨードチンキによる血液培養のコンタミネーション防止はポビドンヨードより優れていなかった(RR 0.79、95%CI 0.54 ~ 1.18)。アルコール性ヨード製剤と非アルコール性ヨード製剤との相違は認められなかった(RR 0.79、95%CI 0.53 ~ 1.17)。クロルヘキシジンとヨウ素化合物の比較は決定的なものではなかった。静脈穿刺による血液培養のコンタミネーション防止におけるアルコール単独のヨウ素製剤に対する非劣性は認められなかった。アルコールとポビドンヨードの併用には有用性はないと考えられた。アルコール性クロルヘキシジン溶液は水性ポビドンヨードと比べて血液培養偽陽性が少なかった。

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監訳者コメント
皮膚上には表皮ブドウ球菌など多くの常在菌が存在するため、血液培養を採取する際にはこれら皮膚常在菌による汚染 = コンタミネーション(いわゆるコンタミ)により偽陽性を示す場合がある。CUMITECH(Cumulative Techniques and Procedures in Clinical Microbiology;臨床微生物学検査における技術と手順の蓄積)血液培養検査ガイドラインには、ヨードチンキ製剤とクロルヘキシジン製剤はほぼ同等の効果があり、そのいずれもポビドンヨード製剤より効果的に汚染率を下げることができる可能性が示唆されるとある。一方、米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America;IDSA)ガイドラインでは、血液培養の際の皮膚消毒として、ポビドンヨードよりもアルコール、ヨードチンキまたは 0.5%以上のクロルヘキシジンを配合したアルコール製剤の使用を推奨している。特にポビドンヨードは皮膚への接触時間を十分に保つ必要があり、注意が必要である。

病院環境内での血液培養汚染の臨床的および経済的影響

Clinical and economic impact of contaminated blood cultures within the hospital setting

Y.M. Alahmadi*, M.A. Aldeyab, J.C. McElnay, M.G. Scott, F.W. Darwish Elhajji, F.A. Magee, M. Dowds, C. Edwards, L. Fullerton, A. Tate, M.P. Kearney
*Queen’s University Belfast, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 233-236


血液培養は重篤な感染症の診断に重要な役割を担っているが、血液培養汚染(すなわち血液培養偽陽性)は病院環境内で高い頻度でみられる問題である。本研究の目的は、血液培養偽陽性の結果が下記のアウトカムに及ぼす影響を明らかにすることである。在院日数、宿泊費用、抗菌薬の費用、および臨床検査・画像検査の費用。後向き症例対照研究デザインにより、血液培養偽陽性症例 142 例を適切な対照(培養で真の陰性と判定された患者)とマッチさせた。マッチングの基準は、年齢、併存疾患スコア、および入院期間とした。研究期間は 13 か月(2007 年 7 月から 2008 年 7 月)であった。症例と対照との平均値の差は、入院期間は 5.4 日(95%CI[信頼区間]2.8 ~ 8.1 日、P < 0.001)、総費用は 5,001.5 ポンド(7,502.2 ドル、95%CI 3,283.9 ポンド[4,925.8 ドル]~ 6,719.1 ポンド[10,078.6 ドル]、P < 0.001)であった。したがって、本研究実施病院の 1 年間の偽陽性血液培養発生数は 254 例であったことと併せると、血液培養偽陽性の全症例の 1 年あたりの追加的な入院期間は 1,372 日、無駄な追加的な病院費用は 1,270,381 ポンド(1,905,572 ドル)であった。したがって、血液培養偽陽性は入院期間の延長、検査・薬剤費用の増加に大きな影響を及ぼすことが示された。これらの結果は、血液培養・採取の技術水準を向上させるための介入が必要であること、それよって患者のケアの質および医療資源の利用のいずれもが改善することを示している。

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監訳者コメント
血液培養検査の検出感度が低いことは周知の事実であるが、陽性時における治療への寄与について考えると実施すべきであり、経済性ばかりでは推し量れない。

オーストリアの医療施設におけるノロウイルスを排出する無症候性の調理スタッフによる食品由来胃腸炎アウトブレイク

Foodborne gastroenteritis outbreak in an Austrian healthcare facility caused by asymptomatic, norovirus-excreting kitchen staff

D. Schmid*, H.-W. Kuo, M. Hell, S. Kasper, I. Lederer, C. Mikula, B. Springer, F. Allerberger
*Austrian Agency for Health and Food Safety, Competence Center for Epidemiology, Austria

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 237-241


2009 年 3 月 15 日から 27 日、ノロウイルス GGII.4 2006b のアウトブレイクがオーストリアの 600 床の医療施設で発生した。患者、研修医、および職員の合計 204 例がアウトブレイクの症例定義に合致し、このうち 17 例(8.3%)は臨床検査により確定診断された。3 月 15 日から 18 日に発症した患者および研修医の 114 症例は、感染源が食品であることが疑われた。症例コホート研究を実施し、3 月 14、15、16 日(リスク期間)に提供された食事の摂取が感染リスクの上昇に関連しているという仮説の検証を行った。同時に後向きコホート研究を実施し、患者および研修医コホートの 62%(317/510)の食事摂取データを入手した。症例コホート解析から、3 月 15 日に提供された冷製スライスソーセージの摂取(オッズ比[OR]3.98、95%信頼区間[CI]1.18 ~ 14.1)、3 月 16 日のサラダ添え肉料理(補正 OR 2.2、95%CI 1.19 ~ 4.08)とホウレンソウのロールパンケーキ(補正 OR 2.17、95%CI 1.27 ~ 3.71)の摂取が独立したリスク因子であることが判明した。リスク期間中に勤務していた調理スタッフの中の無症候性ウイルス排出者 5 名中 1 名が食品の汚染源であると考えられた。この症例コホート研究デザインは、食品由来アウトブレイクが疑われる大規模コホートの調査のための後向きコホート研究デザインの代替法として有効であることが示された。

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監訳者コメント
ノロウイルスの無症候性キャリアの重要性を証明している論文である。しかし、現実的には無症候性キャリアの便の検査を監視検査として実施することはこれまでないため、アウトブレイクへの寄与に関してはさらなるエビデンスが必要となる。

病院環境中の空気および表面のウイルス汚染を評価するための環境調査

Environmental survey to assess viral contamination of air and surfaces in hospital settings

A. Carducci*, M. Verani, R. Lombardi, B. Casini, G. Privitera
*University of Pisa, Italy

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 242-247


病院環境中の病原性ウイルスの存在は、職員と患者の両者にとって深刻なリスクである。病院環境中のウイルスを直接検出するには技術的に大きな問題があり、一方、現行の間接的な指標にも重大な限界がある。本研究の目的は、病院環境中の表面および空気をモニターし、核酸解析により C 型肝炎ウイルス、ヒトアデノウイルス、ノロウイルス、ヒトロタウイルス、およびトルクテノウイルス(TTV)の存在を明らかにするとともに、総細菌数の測定およびヘモグロビンの存在の確認を行うことである。合計で、表面サンプル 114 件および空気サンプル 62 件を採取した。細菌汚染は、表面では極めて低値(< 1 cfu/cm2)であったが、空気サンプルの測定値は「中等度」の 282 cfu/m3 であった。調査した表面サンプルの合計 19 件(16.7%)がウイルス核酸検査陽性であり、内訳はノロウイルス 1 件、ヒトアデノウイルス 1 件、および TTV 17 件(14.9%)であった。TTV のみが空気サンプル 10 件(16.1%)から直接検出された。ヘモグロビンは表面サンプル 2 件で認められた。ウイルス指標、生化学的指標、または細菌指標の間に関連は認められなかった。得られたデータから、細菌指標を用いてウイルス汚染を検出することは困難であることが判明した。TTV が高い頻度で検出されたことから、環境のウイルス全般の汚染指標として TTV が利用できることが示唆される。

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監訳者コメント
環境感染対策の重要性が昨今の話題であるが、科学的な検証における手法論の選択が実験系においては特に重要となる。トルクテノウイルス(輸血伝達性ウイルス;Torque teno virus; TTV)は、1997 年日本の輸血後肝炎の患者で発見された DNA ウイルスである。

小児救急部における RS ウイルスの迅速検査:感染制御および病床管理での有用性

Rapid testing for respiratory syncytial virus in a paediatric emergency department: benefits for infection control and bed management

J.M. Mills*, J. Harper, D. Broomfield, K.E. Templeton
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 248-251


RS ウイルスは、温帯地域で毎年冬季に発生する小児の気道感染症のアウトブレイクの原因となっており、病床管理に大きな負担をもたらしている。RS ウイルスの院内伝播の減少を図るうえで、患児のコホーティングは効果的な戦略であることが示されており、また、これにより個室を必要とする患児のために個室を確保することが可能となる。症状を呈する小児の RS ウイルス検査は標準的な処置であるが、残念ながら従来の臨床検査法は迅速性に劣るため、治療法の決定プロセスに有用ではない。これに代わるものとして、救急部門での迅速ポイントオブケア検査が提唱されている。著者らは前向き研究を実施し、対象を限定したコホーティング戦略の実施を目的として、ポイントオブケア検査の結果を用いることにより確保できた個室の時間を推計した。4 か月の研究期間中に、ポイントオブケア検査を実施することによって指定のコホーティングエリアに小児 183 例が直接入院することができ、他の患児のために確保できた個室の時間は 568.5 個室・日であった。これは、研究期間中に 1 日あたり 5 室の個室を確保できたことに相当する。本稿はポイントオブケア検査の有用性を初めて定量的に評価したものである。RS ウイルスのポイントオブケア検査は、病床管理を改善するための安全で費用対効果に優れた効率的な手法である。

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監訳者コメント
ポイントオブケア検査(POCT)とは、一般的には迅速診断検査のことを指す。RS ウイルスによる呼吸器感染症は広く乳幼児が罹患することから、我が国の免疫クロマトグラフ法検査の適応対象は年齢や基礎疾患により限定されている。

N95 マスクの密着度判定のためのユーザーシールチェックの感度および特異度★★

Sensitivity and specificity of the user-seal-check in determining the fit of N95 respirators

S.C. Lam*, J.K.L. Lee, S.Y. Yau, C.Y.C. Charm
*Open University of Hong Kong, Hong Kong SAR, China

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 252-256


呼吸器病原体を伝播させる可能性のある飛沫の吸入を予防するために、世界保健機関(WHO)および米国疾病対策センター(CDC)は N95 マスクを推奨している。N95 マスクによる伝播予防の信頼性は、装着者へのマスクの密着度に依存する。定量的フィットテストは、この密着度の客観的評価に使用されるゴールドスタンダードである。マスクの製造メーカーも、マスク漏れの確認のために、自己報告によるユーザーシールチェックを行うことを推奨している。本研究の目的は、ユーザーシールチェックの感度および特異度を定量的フィットテストと比較評価することにより、ユーザーシールチェックによる N95 マスクの密着度の判定性能を調べることである。前向き横断研究デザインを採用した。合計 204 名の地元の中国人看護学部生を登録し、汎用されている 2 種類のマスク(3M 1860S および 3M 1862)の評価を行った。濃縮粒子数計測フィットテストシステム(Condensation Nucleus Counter Fit Tester System)を用いて、ユーザーシールチェックの結果をゴールドスタンダードである定量的フィットテストと比較した。マスクに対するユーザーシールチェックの感度および特異度を算出した。その結果、ユーザーシールチェックでは、N95 マスクの密着度判定の感度、正確度、および的中率が低いことが示された。ユーザーシールチェックは定量的フィットテストの信頼性のある代替方法であることを証明することはできなかった。今回の結果から、ユーザーシールチェックは多量のマスク漏れであっても、検出の信頼性に欠ける可能性が示唆された。N95 マスクの密着度の判定には、定量的フィットテストを用いることが推奨される。

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監訳者コメント
リアルタイムに漏れ率を確認できる粒子数計測装置がすでに発売されており、呼吸器防護具の装着の適正使用に一役買っている。

結核患者に偶発的に接触した医療従事者に対する QuantiFERONR-TB Gold 検査および胸部 CT を用いた結核スクリーニングプログラム

Tuberculosis screening programme using the QuantiFERONR-TB Gold test and chest computed tomography for healthcare workers accidentally exposed to patients with tuberculosis

T. Hirama*, K. Hagiwara, M. Kanazawa
*Saitama Medical University, Japan

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 257-262


医療従事者の結核の発生率が上昇している。結核患者に接触した医療従事者の定期的および必要に応じたスクリーニングが重要である。著者らは、胸部 CT と QuantiFERONR-TB Gold(QFT-G)検査を医療従事者に対する結核スクリーニングプログラムに組み入れた。最初に QFT-G 検査により接触者の検査を行った。QFT-G 検査陽性者に対しては CT 検査を実施し、活動性結核、潜伏性結核、または陳旧性結核に分類した。2005 年 4 月から 2010 年 4 月までの期間に、入院時に活動性結核との診断を受けなかった患者 11 例が活動性結核であることが判明した。濃厚接触者または高リスク接触者合計 512 名を特定し、スクリーニングを行った。このうち 34 名(6.64%)が QFT-G 陽性、478 名(93.36%)が陰性であった。QFT-G 陽性の医療従事者 34 名中 4 名は CT 所見で活動性結核が認められ、多剤併用療法を実施したが、24 名には活動性結核所見は認められずイソニアジドを 6 か月間投与した。全員が治療レジメンを完遂し、有害事象は認められなかった。CT と QFT-G 検査を組み合わせた結核スクリーニングプログラムは安全かつ適用可能であった。本プログラムの有効性を大規模臨床試験により確認する必要がある。

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監訳者コメント
日本からの論文。さらなる積み上げのエビデンスが必要である。入職時に検査をしてバックグラウンドを知ることが重要となる。

エタノール製剤による術前手指擦式消毒:欧州統一規格 EN 12791 の基準を満たす濃度および使用時間

Ethanol in pre-surgical hand rubs: concentration and duration of application for achieving European Norm EN 12791

M. Suchomel*, M. Rotter
*Medical University Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 263-266


欧州では、エタノールは擦式製剤の一般的な有効成分であり、米国疾病対策センター(CDC)や世界保健機関(WHO)が最近公表した手指衛生ガイドラインでも推奨されている。しかし、欧州統一規格である EN 12791 の有効性試験の基準を達成するための濃度範囲および使用時間については十分なデータがない。そこで、清潔な手指に容積濃度 95%、85%、または 75%の純エタノールを 3 分間擦り込んだときの殺菌効果を、EN 12791 の標準手法である 60%(v/v)n-プロパノールを 3 分間使用した場合と、消毒直後および消毒から 3 時間後に比較した。85%エタノールについては、5 分間の使用でも検討した。ボランティア 20 名をラテン方格法により無作為に割り付けた。消毒直後の細菌数減少の平均値は、標準手法(log 減少係数[RF]3.27)と比較して 75%エタノール(log RF 1.68)および 95%エタノール(log RF 2.70)で有意に低かったのに対して、85%エタノールを 3 分間(log RF 2.90)および 5 分間(log RF 3.12)使用した場合の殺菌効果はいずれも有意に低いということはなかった。消毒から 3 時間後の細菌数減少については、手袋を装着した手指で 75%エタノールを使用した場合のみが標準手法よりも有意に効果が低かった。結論として、擦式エタノール製剤は > 75%(v/v)かつ < 95%(v/v)のエタノール濃度で 3 分間以上使用した場合に、EN 12791 の基準に合致する可能性が高い。

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監訳者コメント
n-プロパノールを基準とぜすに消毒用エタノールで対応できないかを検定した論文である。

既製ウェットタオルによるバークホルデリア・コンタミナンス(Burkholderia contaminans)の全病院的アウトブレイク

Hospital-wide outbreak of Burkholderia contaminans caused by prefabricated moist washcloths

M. Martin*, B. Christiansen, G. Caspari, M. Hogardt, A.J. von Thomsen, E. Ott, F. Mattner
*University of Lubeck, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 267-270


2 つのキャンパスを有するドイツの大学病院で、バークホルデリア・コンタミナンス(Burkholderia contaminans)(バークホルデリア・セパシア[Burkholderia cepacia]Group K)の病院アウトブレイクが発生した。症例の定義は、2008 年 6 月 30 日から 10 月 21 日までに検査室に送付された何らかの臨床検体から、B. cepacia complex(BCC)が微生物学的に検出されることとした。recA 遺伝子シークエンス法によりBCCの菌種を同定し、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)(SpeI による消化)でクローンを同定した。両キャンパスで合計 61 例が BCC 陽性症例と診断された。少なくとも 9 例の患者が、BCC による人工呼吸器関連肺炎を発症した。1 例にペーシング電極挿入部位の感染が認められ、4 例は敗血症を発症した。16 例が入院中に死亡したが、いずれもアウトブレイク菌株が原因ではないと考えられた。最終的に、BCC は集中治療室の患者に使用される既製のウェットタオルのパッケージ内から検出された。ドイツの保健医療当局はこの報告を受け、他の病院での感染を予防するため、EU の緊急警告システムである RAPEX を介して警告を発した。PFGE により、臨床検体および両キャンパスのウェットタオルに由来する分離株は同一クローンであることが判明した。汚染ウェットタオルの使用中止後は、新規症例の発生はみられなかった。比較的新しく導入された製品による今回の事例から、現行の規則は利用者保護に適切であるのかという問題が提起される。重篤な患者の場合は、医療用品の評価を入念に行うべきである。汚染製品に由来する感染がみられた際は保健医療当局への迅速な報告が必要であり、当該製品が欧州各国で流通しているような場合は RAPEX を介する警告を考慮すべきである。

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監訳者コメント
タオルは実に多くの問題となる細菌を運ぶ。衛生管理の徹底が重要であるが、我が国でも患者もちのタオルの衛生管理まではしていない。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.