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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

手術部位感染の予防に関連する因子としての術中手技

Intraoperative technique as a factor in the prevention of surgical site infection

S.M. McHugh*, A.D.K. Hill, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 1-4


手術を受けた患者の約 5%が手術部位感染症(SSI)を発症する。SSI 患者は入院期間が 7 日間延長し、術後死亡率が上昇する。SSI の予防には、外科医の能力と技術が重要であると考えられる。著者らは、術中手技の種々の特性にかかわるエビデンスと、SSI 予防に対するその意義について調査した。ジアテルミーによる皮膚切開は切開時間の短縮および出血量の減少をもたらすため、感染症発生率の低下に寄与するが、英国国立医療技術評価機構(NICE)の最新のガイドラインはジアテルミーを避けることを推奨している。連続縫合と結節縫合など、各種閉創術の比較研究では、SSI 発生率に統計学的有意差は認められていないが、連続縫合は所要時間が短い。汚染創は、一次治癒が生じる前に局所感染症の治療ができるように、手術創を 4 日間開放しておくべきである。手術時ドレーンは手術創とは別の切開創に設置すべきであり、閉鎖式吸引ドレーンのほうが開放式ドレーンより望ましく、またすべてのドレーンは可及的速やかに抜去すべきである。SSI 発生率への術中手技の影響に関する大規模試験は比較的少ない。術中手技のどのような特性が SSI に影響するのかを明らかにするため、また手術の研修者を対象とした手術実務の情報提供および教育プログラム支援のため、さらに大規模な多施設前向き試験が必要である。

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監訳者コメント
これまでのガイドラインに登場してきたことの検証のような論文であり、新規性はない。

臨床的に重要な皮膚部位の好気性菌密度に関連する因子の特定

Identification of variables for aerobic bacterial density at clinically relevant skin sites

M. Reichel*, P. Heisig, G. Kampf
*Bode Chemie GmbH, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 5-10


局所抗菌薬の効果を評価する試験では、検査部位の無作為化および男女比の調整が常に実施されているわけではない。本研究の目的は、文献のシステマティックレビューによりエビデンスに基づく皮膚細菌叢マップを作製するとともに in vivo 試験により細菌密度に影響を及ぼす因子を特定することである。評価対象とした 83 試験中 10 試験のレビューを実施した。細菌密度は、皮脂が多く湿潤な皮膚部位でより高かった。In vivo 試験では、180 例の前頭部、上背部、腰部、および腹部からの試料を標準的なスワブ法により採取した。好気性菌密度は前頭部で最も高く(平均 log10 cfu/cm2 = 3.69 ± 1.00)、次いで上背部(3.00 ± 0.90)、腹部(2.98 ± 0.74)、腰部(2.35 ± 0.70)であった。全 4 か所の皮膚部位間には有意差が認められた(P < 0.001、分散分析)。前頭部では、内側部の細菌密度のほうが外側部と比較して有意に高く(P = 0.002、t 検定)、上背部では、頭側のほうが尾側と比較して高かった(P = 0.006)。すべての部位で男性のほうが細菌密度が有意に高かった(P < 0.001)。検査部位の無作為化を行うことは、皮膚細菌叢密度や皮膚消毒薬の効果に関する試験によって典型的な結果を得るために不可欠である。試験集団の男女比の調整を図ることも強く推奨される。

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監訳者コメント
本研究は、健康保菌のバックグラウンドとして重要である。すべての部位で男性のほうが細菌密度が有意に高かった理由はわからないが、興味深い。常在菌叢は年齢や性別や部位によりそのポピュレーションが多少異なる。

前腕に対する擦式消毒薬の効果の評価、および手術時手指消毒への影響

Determination of antiseptic efficacy of rubs on the forearm and consequences for surgical hand disinfection

N.-O. Hubner*, N.B. Kellner, L.I. Partecke, T. Koburger, C.-D. Heidecke, T. Kohlmann, A. Kramer
*Ernst-Moritz-Arndt University, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 11-15


手指は外科チームの皮膚における病原巣として最も重要なものであると認識されているが、前腕からの病原体の伝播も関与している可能性がある。術前の手指消毒が推奨されているが、前腕についてはエビデンスに基づく標準的な消毒法はない。欧州標準 EN 12791および米国のガイドライン ASTM1115 はいずれも前腕を対象としていないため、欧州標準 EN 12791 およびドイツ衛生微生物学会(German Society for Hygiene and Microbiology;DGHM)の皮膚消毒薬の有効性の検査法に基づいて、前腕を対象とした新しい検査法を開発した。市販の擦式アルコール製剤(76.7%[w/w]エタノール)の消毒効果を、上腕については 15 秒、2.5 分、30 分後、前腕については 2.5 分、30 分、3 時間後に評価した。上腕への製剤の塗布は DGHM の標準的手順に従った。前腕への製剤の塗布は、術前の手指消毒のように被験者自身が右手指で左前腕に塗布し、逆も同様とした。試料の採取および培養を、DGHM による上腕の皮膚消毒法に従って実施した。ボランティア 22 名を対象とした。前腕の消毒薬処置の効果は、いずれの検査部位についても、上腕と比較して有意に低いということはなかった(P > 0.05)。いずれの検査部位および消毒後時間においても、減少係数(reduction factor)は極めて近似しており、95%信頼区間の下限は 1.43 log10、上限は 2.31 log10 であった。適切な製剤を使用する場合には、術前手指消毒の一環としての前腕の処置は 10 秒の塗布時間で十分であると考えられる。

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監訳者コメント
確かに、古典的外科手洗いでは肘までスクラブ剤で処理するのに対して、これらの指針では前腕部をカバーしていない。結論として、前腕は手指より菌量が少なく、手指の対応よりも緩やかでも十分な効果が得られている。

サウジアラビア、ジェッダの King Abdulaziz 大学病院で新生児アウトブレイクの原因となったセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)で汚染されたベビーシャンプー

Serratia marcescens-contaminated baby shampoo causing an outbreak among newborns at King Abdulaziz University Hospital, Jeddah, Saudi Arabia

T.A. Madani*, S. Alsaedi, L. James, B.S. Eldeek, A.A. Jiman-Fatani, M.M. Alawi, D. Marwan, M. Cudal, M. Macapagal, R. Bahlas, M. Farouq
*King Abdulaziz University Hospital, Saudi Arabia

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 16-19


2008 年 11 月から 2009 年 1 月にサウジアラビアの King Abdulaziz 大学病院で、新生児集中治療室(NICU)の乳児 11 例と新生児室の乳児 3 例がセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)に感染した。NICU の乳児 11 例に合計 15 件の感染症が確認され、内訳は敗血症(5 例)、化膿性結膜炎(3 例)、尿路感染症(2 例)、髄膜炎(2 例)、および蜂巣炎(1 例)であった。新生児室の乳児 3 例に 3 件の感染症が確認され、内訳は化膿性結膜炎(2 例)および臍炎(1 例)であった。乳児 14 例中 13 例は完全に回復したが、1 例は S. marcescens による髄膜炎と敗血症で死亡した。すべての感染症は、最初の報告例の 5 日前に病棟に搬入された、元々汚染されていた乳児用シャンプーが原因であることが判明した。アウトブレイクはこのシャンプーの中止後に終結した。

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監訳者コメント
セラチアによる汚染は水周りに多くみられる、古典的なアウトブレイクである。シャンプー等には防腐剤が入っているが、殺菌作用に乏しい。国内でも継ぎ足し式のシャンプーの使用が一般家庭で行われているが、その際には内部を洗浄ししっかり乾燥すると衛生的である。

新生児院内感染症の追跡:継続的な質改善サイクル★★

Tracking neonatal nosocomial infection: the continuous quality improvement cycle

A.W. Gill*, A.D. Keil, C. Jones, L. Aydon, S. Biggs
*King Edward Memorial Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 20-25


新生児院内感染症(NNI)は新生児ケアに際して発生する重大な合併症であり、死亡率、有病率、および医療費の上昇の原因となる。NNI の管理法としては、ケアの詳細に注意を払うこと、新生児室のカルチャーの改革、および継続的な質改善サイクルの実施などが挙げられる。本稿では、質改善チームの活動開始、および感染制御バンドルの実施状況について報告する。単一の大規模周産期医療施設を 7 年間にわたって研究対象とした。管理図法を用いて、超早産児の NNI を統計学的に追跡した。在胎期間 29 週未満の乳児では、NNI 発生率が 1,000 床・日あたり 13 件から 7 件に一貫して、かつ統計学的に有意に減少したことが記録された(35 日目に観察打ち切りとした)。多職種からなる質改善チームが、新生児室の NNI 減少のためにデザインされた対策の実行を運営した。これらの対策は、無菌操作法の必要性に関する認識向上、手指衛生の改善、中心静脈ライン使用時の注意の強化、血液培養用検体採取技術のモニタリング、および環境改善などであった。これらの対策に加えて、管理図から正のフィードバックが得られたことが、NNI の一貫した減少に寄与したと考えられる。本研究は、質改善のループが完結し、特異的なケアバンドル導入による NNI の統計学的改善が示された、初の研究の 1 つである。

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監訳者コメント
新生児医療は特殊領域であり、特有のエビデンスを必要としている。こうした先進的な取り組みには拍手を送りたい。我が国でも「NICUにおける医療関連感染予防のためのハンドブック、第 1 版」が公開されている。
http://www.nih.go.jp/niid/bac2/janis/file/nicu_handbook_ver1.pdf

癌成人におけるカテーテル関連血流感染症の発生率とリスク因子:前向きコホート研究★★

Catheter-associated bloodstream infection incidence and risk factors in adults with cancer: a prospective cohort study

P. Mollee*, M. Jones, J. Stackelroth, R. van Kuilenburg, W. Joubert, J. Faoagali, D. Looke, J. Harper, A. Clements
*Princess Alexandra Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 26-30


中心静脈カテーテル関連血流感染症(CABSI)は癌患者の合併症を著しく増加させる。著者らは、中心静脈アクセス器材を必要としている血液・腫瘍部門の全成人患者を対象として前向きコホート観察研究を実施し、CABSI の発生率とリスク因子の評価を行った。中心静脈アクセス器材は、いずれもインターベンショナルラジオロジー専門施設の熟練した技師が超音波ガイド下で挿入した。患者 727 例の合計 1,127 の中心静脈アクセス器材を51,514 ライン・日にわたって評価した。CABSI 発生率は1,000 ライン・日あたり 2.50 件であった。CABSI に関連する因子は、中心静脈アクセス器材のタイプ(末梢挿入式中心静脈カテーテル[PICC]ラインと比較して、非トンネル型ライン[ハザード比(HR)3.50、P < 0.0001]およびトンネル型ライン[HR 1.77、P = 0.011]は高リスク)、患者の診断名(食道癌、結腸癌、直腸癌以外の固形腫瘍と比較して、中高悪性度血液悪性腫瘍は高リスク[HR 3.17、P = 0.0007]、食道癌、結腸癌、直腸癌は低リスク[HR 0.29、P = 0.019])、カテーテル挿入側(右側のラインが高リスク[HR 1.60、P = 0.027])、以前のカテーテル挿入回数(HR 1.20、P = 0.022)などであった。中高悪性度血液悪性腫瘍の患者では、PICC ラインと比較して、非トンネル型ラインで CABSI リスクが有意に多く(HR 3.9、P < 0.001)、トンネル型ラインでは高い傾向がみられた(HR 1.43、P = 0.12)。また、カテーテルを右側に挿入した場合のほうが CABSI リスクが高かった(HR 1.62、P = 0.047)。本研究は成人癌患者に対する標準化された CABSI サーベイランス戦略の有用性を明らかにするものであり、この患者集団に PICC ラインを使用すべきことを支持するデータをさらに提供するとともに、カテーテルラインの挿入側が CABSI リスクに影響する可能性を示唆している。

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監訳者コメント
感染予防の観点からの PICC の有用性を導き出している論文である。我が国でもグローションカテーテルとして償還点数の付与された診療材料があり、注目される。

逆流防止弁は静注輸液の逆流と細菌汚染を防止しない

Non-return valves do not prevent backflow and bacterial contamination of intravenous infusions

B. Ellger*, D. Kiski, E. Diem, I. van den Heuvel, H. Freise, H. Van Aken, F. Hinder, A.W. Friedrich
*University Hospital of Muenster, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 31-35


逆流防止弁は、1 本の静脈アクセスで複数回の注入を行う場合に、輸液が意図した流れ方向(DDF)から逆流することを防止するために設計されている。臨床的条件に相当する遅い注入速度下で、逆流防止弁が DDF からの逆流を確実に防止できるかどうかを in vitro で検討した。汚染輸液の注入に起因するカテーテル関連感染症は患者ケアに関連する問題であるため、逆流防止弁によって近位側(ドリップ側)の輸液の細菌汚染を防止することができるか、また逆流防止弁が医療関連感染の予防に寄与しているかどうかを検討した。さらに、集中治療室(ICU)の点滴装置および輸液の細菌汚染率を測定した。5 種類の逆流防止弁のモデルの 10 個ずつに対して DDF に逆らった低速の流れを in vitro で発生させ、輸液に対する閉鎖性(流入の有無)、およびインジケータである 3 種類の細菌の移入の有無を評価した。次いで、ICU の患者から回収した輸液チューブの汚染状況を調査した。DDF に逆らった圧力を徐々にかけたところ、防止弁のモデルとはほぼ無関係に、評価した逆流防止弁の 40%は輸液の漏出防止ができなかった。30%では細菌が DDF に逆らって移入し、防止弁の近位側から検出された。ICU 患者から回収したチューブサンプルの 6.7%に細菌汚染が認められた。結論として、点滴装置の汚染は ICU のケアに関連する問題である。逆流防止弁では輸液の逆流を確実に防止することはできず、細菌フィルタとしての有用性はない。したがって、医療関連感染を減少させるための手段として逆流防止弁は推奨できない。

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監訳者コメント
構造的な逆流防止弁が、機能的には逆流防止になっていなかったというお粗末な部材特性を露見した論文である。マクロの防止がミクロの(つまり、より高感度な培養法などによる)検証プログラムで調べると乖離することはあり得る。

シンガポールにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)院内感染症の経済的・臨床的影響:適合化症例対照研究★★

Economic and clinical impact of nosocomial meticillin-resistant Staphylococcus aureus infections in Singapore: a matched case-control study

S.K. Pada*, Y. Ding, M.L. Ling, L.-Y. Hsu, A. Earnest, T.-E. Lee, H.-C. Yong, R. Jureen, D. Fisher
*National University Health System, Singapore

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 36-40


シンガポールの病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)院内感染症の直接的な臨床的・経済的影響を評価するため、前向き適合化症例対照研究を実施し、退院患者を 6 か月間追跡した。シンガポールの公立 3 次ケア病院 2 施設における MRSA 院内感染症の連続症例を、それぞれ年齢、診療科、(該当する場合には)主要な外科的手技、および Charlson 併存疾患指標で非感染症対照者 1 ~ 2 例と適合させた。カルテのレビューと被験者の問診を入院中に実施して、生存者については退院後 6 か月時も行った。分析対象とした転帰は、死亡率、入院期間、医療関連費用、および健康関連 QOL であった。健康関連 QOL の評価は、退院時に面接式 EuroQol-5D 質問票を使用して、単一の健康状態サマリーインデックスに変換して行った。転帰に関連する因子を、条件付きロジスティック線形回帰分析により特定した。症例群は 181 例、対照群は 351 例であった。MRSA 感染事例との間に独立した関連性が認められたのは、院内死亡(14.4%対 1.4%、オッズ比[OR]5.54、95%信頼区間[CI] 1.63 ~ 18.79、 P = 0.006)、長期入院(中央値 32 日 対 7 日、係数 1.21、95%CI 1.02 ~ 1.40、P < 0.001)、入院費用の増加(中央値 18,129.89 米ドル対 4,490.47 米ドル、係数 1.14、95%CI 0.93 ~ 1.35、P < 0.001)、退院後の医療関連費用の増加(中央値 337.24 米ドル対259.29 米ドル、係数 0.39、95%CI 0.06 ~ 0.72、P = 0.021)、および健康関連 QOL 低下(係数 -0.14、95%CI -0.21 ~ -0.08、P < 0.001)であった。両施設の転帰には有意差はみられなかった。シンガポールでは、個人、施設、社会に対する MRSA 感染症の影響は重要である。このような感染症を予防することにより、患者の転帰や医療の提供が大きく改善すると考えられる。

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監訳者コメント
シンガポールの 3 次ケア病院において、医療関連 MRSA 感染症は入院期間を約 1 か月、入院費用を約 100 万円も延長・増加させて、患者の健康関連 QOL を有意に損なうことが示された。感染防止対策に関する医療経済的な裏付けとして重要なデータであり、わが国を含めた様々な医療の現場で必要な議論である。DPC データの活用なども検討するべきであろう。

尿路感染症発生率のベンチマーキング:ドイツ全国院内感染症サーベイランスシステムの集中治療部門コンポーネントから得られた経験

Benchmarking of urinary tract infection rates: experiences from the intensive care unit component of the German national nosocomial infections surveillance system

P. Gastmeier*, M. Behnke, F. Schwab, C. Geffers
*Charite University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 41-44


この研究の目的は、集中治療部門(ICU)における症候性のカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)サーベイランスにより、CAUTI 発生率が低下するかどうかを調べることである。ドイツ全国院内感染症サーベイランスシステム(KISS;Krankenhaus Infektions Surveillance Systems)のデータを、3 通りの開始時期(1997 ~ 2000 年、2001/2002 年、2003 年以降)から収集して、解析対象とした。各期間の 1 年目と 3 年目に得たデータを比較した。CAUTI 総発生率を参加期間に毎月算出して、線形回帰モデルをあてはめた。1997 年 1 月から 2008 年 6 月まで、合計 547 か所の ICU が KISS の ICU コンポーネントにデータを提供した。研究プロトコールに従って、267 か所の ICU における 1,966 例の症候性 CAUTI 症例を解析対象とした。症候性 CAUTI 発生率を 3 年目と 1 年目において比較したところ、全相対リスクは 0.86(95%信頼区間 0.77 ~ 0.96)であった。CAUTI 発生率に対するサーベイランスの影響は、人工呼吸器関連肺炎や原発性血流感染症に関する同様のデータと比較して極めて小さかったが、これは CAUTI に対する多くの集中治療専門医の認識が、他の 2 種類の感染症と比較して欠如しているためであると考えられる。しかし、症候性 CAUTI の減少を図ることは可能であり、CAUTI をすべての ICU サーベイランス活動の対象に含めたとしても、作業負荷が大幅に増加することはない。

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監訳者コメント
提示された KISS のデータによれば、集中治療部門(ICU)における症候性カテーテル関連尿路感染症の発生率は、のべ 1,000 カテーテル・日あたり 2000 年以前が 1.39、2001/2002 年が 0.83、2003 年以降が 0.68 となっており、有意な減少傾向を示している。国家的なサーベイランス事業が継続的医療質改善に資するデータを提供している。

1995 年から 2008 年に台湾の大学病院でみられたロイコノストック(Leuconostoc)属菌による医療関連菌血症

Healthcare-associated bacteraemia caused by Leuconostoc species at a university hospital in Taiwan between 1995 and 2008

M.-R. Lee*, Y.-T. Huang, P.-I. Lee, C.-H. Liao, C.-C. Lai, L.-N. Lee, P.-R. Hsueh
*National Taiwan University College of Medicine, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 45-49


1995 年から 2008 年に台湾北部の 3 次ケア病院でみられたロイコノストック(Leuconostoc)属菌による菌血症患者 20 例の調査を行った。従来の市販されている自動検査法と 16S rRNA 遺伝子配列解析との併用により、すべての分離株を種レベルまで同定した。最も多くみられた菌種はロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)(20 例中 15 例、75%)であったが、より正確な同定には分子学的方法が必要であった。10 種類の抗菌薬の最小発育阻止濃度(MIC)を、微量液体希釈法によって測定した。これらの患者 20 例中19 例は Leuconostoc 属菌による医療関連菌血症を発症しており、11 例(55%)は悪性腫瘍に罹患していた。菌血症エピソード発生前の入院期間が30 日を超えていた患者は 11 例であった(中央値 32.5 日、範囲 0 ~ 252 日)。菌血症発症時に Pitt 菌血症スコアが 4 以上であった患者は 11 例(中央値 4、範囲 0 ~ 7)、改訂版 Acute Physiological Assessment and Chronic Health Evaluation(APACHE II)スコアが 20 以上の患者は 12 例であった(中央値 22、範囲 5 ~ 37)。Leuconostoc 属菌に対して、アジスロマイシン(MIC 0.12 μg/mL)、モキシフロキサシン(MIC 0.25 ~ 0.5 μg/mL)、ダプトマイシン(MIC 0.03 ~ 0.25 μg/mL)、チゲサイクリン(MIC 0.06 ~ 0.12 μg/mL)は優れた in vitro 活性を示したが、L. lactis による菌血症は免疫不全患者の高い死亡率と関連していた。

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監訳者コメント
Leuconostoc 属菌は、ヘテロ乳酸発酵菌としても知られているが、環境に広く存在することから、Lactobacillus 属菌とともに極めてまれながら中心静脈ライン関連血流感染症の起因菌となることがある。一般的に Leuconostoc 属菌、Lactobacillus 属菌ともにバンコマイシン耐性であり、注意が必要である。

台湾北部の 3 次医療施設における 2000 年から 2008 年のカンジダ血症発生率の変動

Changes in the incidence of candidaemia during 2000-2008 in a tertiary medical centre in northern Taiwan

L.-Y. Chen*, S.-Y. Liao, S.-C. Kuo, S.-J. Chen, Y.-Y. Chen, F.-D. Wang, S.-P. Yang, C.-P. Fung
*Taipei Veterans General Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 50-53


カンジダ血症は高い死亡率と高額の医療費に関連している。台湾におけるカンジダ血症の発生率は1980 年から 2000 年の期間に著しく増加した。2000 年から 2008 年のカンジダ血症発生率の長期的傾向を調査するため、病院を対象としたサーベイランスを実施した。この研究では、カンジダ(Candida)属菌は血流感染症の原因として 4 番目に頻度が高く、30 日粗死亡率は 36.7%であった。最も多く同定された菌種はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)であったが、菌種による死亡率については有意差が認められなかった。カンジダ血症発生率は 2004 年から減少が始まった。高い死亡率と関連するリスク因子は、カンジダ血症を発症する前の長期入院、肝硬変、悪性腫瘍、腎透析を要する末期腎疾患、人工呼吸器、および尿路カテーテルなどであった。

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監訳者コメント
カンジダ属(Candida spp.)は最も代表的な酵母真菌であり、医療関連感染症、特に中心静脈カテーテル関連血流感染症の起因菌として最も多く分離される。臨床的に最も高頻度に分離されるのはカンジダ・アルビカンス(C. albicans)であり、その病原性も最も強いとされる。次いでカンジダ・トロピカーリス(C. tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(C. glabrata)、カンジダ・パラシローシス(C. parapsilosis)、さらにはカンジダ・クルーゼイ(C. krusei)、カンジダ・ルシタニエ(C. lusitaniae)、カンジダ・ケフィール(C. kefyr)、カンジダ・ギリエルモンディ(C. guilliermondii)などがある。特にC. parapsilosis は経静脈栄養管理(total parenteral nutrition;TPN)、いわゆる高カロリー輸液管理との強い関連が認められる。なお、フルコナゾールが予防的投与された場合、フルコナゾール耐性である C. glabrataC. krusei などによる感染症のリスクが増加すると考えられる。中心静脈カテーテル管理などの侵襲的な医療処置が増加しており、医療関連カンジダ症については今後もさらなる注意が必要である。

入院患者におけるエルタペネム耐性肺炎桿菌(ertapenem-resistant Klebsiella pneumoniae)のリスク因子および臨床的重要性★★

Risk factors and clinical significance of ertapenem-resistant Klebsiella pneumoniae in hospitalised patients

G.B. Orsi*, A. Garcia-Fernandez, A. Giordano, C. Venditti, A. Bencardino, R. Gianfreda, M. Falcone, A. Carattoli, M. Venditti
*Sapienza University, Italy

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 54-58


エルタペネム耐性肺炎桿菌(ertapenem-resistant Klebsiella pneumoniae;ER-Kp)は、新興の医療関連病原体である。ER-Kp 感染に関連するリスク因子を特定するために、2008 年 7 月から 2009 年 12 月に肺炎桿菌が分離された患者 100 例の記録をレビューした。これらの内訳では、ER-Kp 38 例(感染 28 例、保菌 10 例)、エルタペネム感性肺炎桿菌(ES-Kp)62 例(感染 43 例、保菌 19 例)であった。ER-Kp 25 株の複数部位塩基配列タイピング(MLST)およびポーリン遺伝子解析を実施したところ、24 株は ST37 遺伝子系統に属しており、新規の OmpK36 変異体を発現するが OmpK35 を発現していないことが示された。血流感染症(BSI)患者 25 例中 13 例(52%)がブレイクスルー菌血症を発症した。ER-Kp BSI 患者 9 例中 5 例がブレイクスルー菌血症を合併して、このうち 4 例がカルバペネム投与中に発症した。ES-Kp BSI 患者 16 例中 8 例(50%)がブレイクスルー菌血症を発症したが、カルバペネム投与中に発症したのは 1 例(12%)のみであった。ロジスティック回帰分析により ER-Kp 感染の独立リスク因子であることが示されたのは、カルバペネム系(オッズ比[OR]12.9、95%信頼区間[CI]3.09 ~ 53.7、P < 0.001)、第 2 世代セファロスポリン系(OR 11.8、95%CI 1.87 ~ 74.4、P < 0.01)、内視鏡検査(OR 5.59、95%CI 1.32 ~ 23.6、P < 0.02)、急性腎不全(OR 5.32、95%CI 1.13 ~ 25.1、P = 0.034)、および第 3 世代セファロスポリン(OR 4.15、95%CI 1.09 ~ 15.8、P < 0.01)であった。今回の結果から、特定の抗菌薬、特にカルバペネムおよびセファロスポリン系の投与歴が ER-Kp 保菌・感染の主要な独立リスク因子であることが確認された。

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監訳者コメント
β-ラクタム抗菌薬を分解する酵素であるβ-ラクタマーゼは、アミノ酸配列に基づく Ambler 分類によりクラス A からクラス D に分類される。その中でクラス A、C、D に属するβ-ラクタマーゼは、活性中心にセリン残基を有するセリン・ペプチダーゼであり、一方、クラス B は活性中心に亜鉛分子を要求するメタロ-β-ラクタマーゼである。特にクラス A、D の中で第 2、3、4 世代セファロスポリン薬までを分解する能力を獲得した場合を基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)といい、細菌の染色体上だけではなくプラスミド上にもコードされることから、異なる菌株や菌種に耐性因子が伝播されてしまう特徴がある。また、クラス C に分類されるβ-ラクタマーゼには、腸内細菌科やブドウ糖非発酵菌の染色体上に存在して、セフェムの存在下でその大量産生が誘導されることから第 2、3、4 世代セファロスポリン薬まで分解する AmpC があり、抗菌薬投与により誘導される耐性であるため注意が必要である。
ESBL 産生菌および AmpC 産生菌に対して、ほとんどの場合でカルバペネム系が有効であるが、最近では北米大陸などからクラス A に属するプラスミド性のカルバペネム分解酵素 KPC が報告されている。肺炎桿菌(K. pneumoniae)による産生菌が多いが、その他の腸内細菌科にも耐性伝播を示しており、世界的にも拡大する傾向があることから注意が必要である。
エルタペネムは、わが国では市場になく使用されていないカルバペネム系抗菌薬であるが、抗緑膿菌活性を欠き、血中半減期が長いという特徴がある。米合衆国 CLSI 2011 年度改訂では、腸内細菌科のカルバペネム系に対するブレイクポイントが変更となり、耐性と判断される濃度が引き下げられたことにより、変法 Hodge 試験を実施することが必ずしも求められなくなった。腸内細菌科においてカルバペネム系への耐性が進行していることの現れとも受け取られる。

監訳者注:
ブレイクスルー菌血症(breakthrough bacteremia):この研究では、グラム陰性菌をカバーできる抗菌薬を投与してから 48 時間以降に菌血症が発症することと定義されているが、一般的には抗菌療法を実施しているにも関わらず出現した菌血症をいう。

オランダの介護施設における医療関連感染症の 3 年間の有病率調査★★

Three-year prevalence of healthcare-associated infections in Dutch nursing homes

A. Eikelenboom-Boskamp*, J.H.M. Cox-Claessens, P.G.M. Boom-Poels, M.I.J. Drabbe, R.T.C.M. Koopmans, A. Voss
*Radboud University, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 59-62


2007 年 11 月からの 3 年間(2007 年から 2009 年)、オランダ・ナイメーヘン地区にある介護施設入居者を対象として、年 1 回、医療関連感染症の 1 日有病率調査を実施した。介護施設に適用される国としての医療関連感染症の定義がないため、米国疾病対策センター(CDC)による血流感染症、下気道感染症、細菌性結膜炎、および胃腸炎に関する基準に基づく修正定義を使用した。尿路感染症のサーベイランスにはオランダ高齢者介護担当医師連合(Dutch Association of Elderly Care Physicians)が作成した基準を用いた。高齢者介護担当医師が入居者の特性の記録およびデータ収集を行った。3 年間で調査対象となった介護施設入居者は 2007 年 1,275 名、2008 年 1,323 名、2009 年 1,772 名であり、医療関連感染症有病率はそれぞれ 6.7%、7.6%、7.6%であった。年齢(平均 81 歳)と性別(男性 31%、女性 69%)に関する人口統計学的特性は 3 年間でほぼ同一であった。最も有病率が高い医療関連感染症は尿路感染症であり、それぞれ 3.5%、4.2%、4.1%であった。医療関連感染症の発症が最も多かったのはリハビリテーション病棟入居者であった。医療関連感染症有病率は介護施設によりばらつきがあった(範囲 0.0% ~ 32.4%)。この論文は、オランダの介護施設における医療関連感染症有病率調査の初めての結果報告である。医療関連感染症の時点有病率調査は、質改善サイクルの一環として、介護施設における感染制御プログラムの基盤として重要であり、この調査によって介護施設での患者の安全に対する取り組みをさらに強化することが可能となる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
急性期ケア医療機関だけではなく、高齢者介護施設やリハビリテーション施設などの長期療養施設においても一定の医療ケアは提供されており、医療関連感染症のリスクが存在していることを認識しなければならない。医療提供体制はそれぞれの国、コミュニティでの差異があり、医療関連感染リスクアセスメントに基づく現場の継続的な質改善と意思決定のためにもサーベイランスによるデータ収集が必要である。

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