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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

3 年間のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)スクリーニングプログラムのレビュー

Review of a three-year meticillin-resistant Staphylococcus aureus screening programme

J. Collins*, M. Raza, M. Ford, L. Hall, S. Brydon, F.K. Gould
*Newcastle upon Tyne Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 81-85


Newcastle upon Tyne Hospitals NHS Foundation Trust(NuTH)は 2006 年、患者のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌・感染を最小限に抑えるために「探し出して、粉砕する」(seek and destroy;S&D)プログラムを開始した。段階的に導入し、2008 年 9 月までにすべての診療科を計画に組み入れたが、これは英国保健省による全患者のスクリーニングの義務化よりかなり以前のことである。NuTH は発色性培養法(chromogenic culture method)により 1 か月あたり約 15,000 例の鼻、咽喉、および会陰部の試料のスクリーニングを行い、MRSA 陽性率は平均 2.4%であった。微生物・感染管理サービスを週 7 日体制で提供することにより、除菌治療の処方までに要する時間を24時間未満とした。168,073 の試料の解析結果から、MRSA の検出率を向上させるためには、3 か所のスクリーニング部位すべてを対象とする必要があることが判明した。低リスク領域の患者をスクリーニングプログラムの対象とすることを必須とされたため、作業量は大幅に増加したものの、MRSA 検出率は向上しなかったことが、S&D に基づく手法の評価から示された。典型的な 1か月間のデータのレビューから、我々の標的を絞った S&D アプローチによっていれば MRSA 保菌者であることが特定できなかったであろう患者数は、英国保健省のユニバーサルスクリーニングとの比較で、日帰り入院の 7 例のみであった。これらの患者を追加的に検出するために要する検査費用の総額は 1 か月で 20,000 ポンドであり、これによって追加的に発生する MRSA 陰性患者は 4,200 例であった。本研究から、臨床的リスクに基づくスクリーニング戦略は、イングランドで現在求められているユニバーサルプログラムよりも実用的かつ費用対効果が高いことが示唆される。

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監訳者コメント
イギリスで始まった全患者に対する義務的 MRSA スクリーニングに対する批判的論文。MRSA のスクリーニングは、疫学的状況に応じてその実施方法を考えるべきであり、まっとうな意見を述べている。このような論文が国の方針に今後どのような影響を与えるか、見物である。

外科患者のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌・感染に関連する入院期間の延長を推定するための多状態モデル

Multistate modelling to estimate the excess length of stay associated with meticillin-resistant Staphylococcus aureus colonisation and infection in surgical patients

G. De Angelis*, A. Allignol, A. Murthy, M. Wolkewitz, J. Beyersmann, E. Safran, J. Schrenzel, D. Pittet, S. Harbarth
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 86-91


院内感染に関連する入院期間延長についての現行のエビデンスは、時間依存性バイアスなどの方法論上の問題があるために限定的である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)院内感染・保菌に関連する入院期間延長を評価するため、外科患者で MRSA 保菌 797 例、MRSA 感染 167 例、および MRSA 陰性 13,640 例を対象として多状態モデルによる解析を行った。MRSA 感染・保菌を時間依存性の事象と見なし、退院および死亡を研究のエンドポイントとした。入院期間の延長を、遷移確率行列の Aalene-Johansen 推定量を算出して求めた。多変量 Cox 回帰分析を用いて、入院期間延長に対する MRSA の独立した影響を評価した。MRSA 感染患者の入院期間は、非感染患者と比較して 14.5 日(95%信頼区間[CI]7.8 ~ 21.3 日)、MRSA 保菌患者と比較して 5.9 日(95%CI 0.1 ~ 11.7 日)延長した。MRSA 院内感染患者の退院のハザードは、MRSA 陰性患者(補正ハザード比[HR]0.69、95%CI 0.59 ~ 0.81)および MRSA 保菌者(HR 0.79、95%CI 0.65 ~ 0.95)と比較して低下した。MRSA 保菌のみの患者では、交絡因子補正後の退院のハザードは低下しなかった(HR 1.00、95%CI 0.93 ~ 1.07)。多状態モデルは、薬剤耐性菌による院内感染がもたらす医療経済的影響を評価するうえで有望な統計学的手法である。

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監訳者コメント
複雑な統計解析モデルにより MRSA 感染症の転帰に与える影響を分析している。得られた結果は他の報告と大きな相違はなく、妥当な結果であると考える。

監訳者注:
退院のハザード(hazard of discharge):本研究での定義は、当該日の退院患者数(生存例と死亡例を含む)を、その前日の入院患者数で除した値。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)伝播に対する過密の影響:単一の公立病院を対象とした Bayesian ネットワーク分析

Role of overcrowding in meticillin-resistant Staphylococcus aureus transmission: Bayesian network analysis for a single public hospital

M. Waterhouse*, A. Morton, K. Mengersen, D. Cook, G. Playford
*Queensland University of Technology, Australia

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 92-96


病院内の多剤耐性菌の伝播は、相互に関連する多数の因子、すなわち保菌率(蔓延の程度)、手指衛生、患者スクリーニングの有効性、保菌者の隔離・コホーティング、病院清掃の質、病床利用率などに影響される。また、ある多剤耐性菌が蔓延すると、隔離病床利用率が上昇し、隔離のための資源が減少することによって、他の菌の伝播に影響を及ぼす可能性がある。例えば、第三世代セファロスポリン系抗菌薬の過剰使用によって基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)が増加することがあり、このことが間接的にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播に影響する。この複雑な相互関連システムの検討のために、本研究ではBayesian ネットワークを使用した。公立病院 1 施設における初期 2 年間の解析結果を報告する。結論として、当施設では、高い病床利用率と MRSA 伝播の増加との関連は、動的な複数の閾値・転換点に依存している可能性がある。この関連は、MRSA の蔓延の程度などの他の因子や、高い病床利用率が新規入院患者のためのベッドの準備・清掃、手指衛生、および保菌者の隔離・コホーティングを阻害するかどうかによる影響を受けると考えられる。

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監訳者コメント
本論文の前に掲載されている報告と同様に、複雑な統計学的解析に基づいて MRSA 伝播と様々な感染対策要因との関連を検討している。MRSA 伝播防止対策は本来多面的であり、本論文の結果は極めて妥当であると考える。

挿管患者に対する先制攻撃的接触予防策による集中治療室における医療関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播および感染の減少

Pre-emptive contact precautions for intubated patients reduced healthcare-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus transmission and infection in an intensive care unit

A. Matsushima*, O. Tasaki, K. Tomono, H. Ogura, Y. Kuwagata, H. Sugimoto, T. Hamasaki
*Osaka University Graduate School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 97-101


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による医療関連感染は、集中治療室(ICU)では依然として重大な懸念事項である。著者らの ICU サーベイランスのデータから、気管内挿管患者の MRSA 獲得リスクは非挿管患者の 8 倍であることが判明した。そこで、すべての挿管患者に対して先制攻撃的接触予防策を実施することにより、ICU の医療関連 MRSA 感染が予防できるという仮説を立てた。2 日を超えて当 ICU に在室した患者を本研究の対象とした。研究期間を 2 期に分け、2004 年(第 1 期)には MRSA 患者のみに対して接触予防策を適用し、2005 年から 2007 年(第 2 期)には MRSA 感染の有無にかかわらず、すべての挿管患者に対して接触予防策を適用した。登録時の監視培養または臨床検体培養で MRSA が検出された患者を「入院時 MRSA 陽性」と定義した。その他の MRSA 陽性の結果を「医療関連 MRSA 伝播」と定義した。医療関連 MRSA 感染の診断は、全米病院感染サーベイランスのマニュアルに準拠した。患者数は第 1 期 415 例、第 2 期 1,280 例であった。挿管患者では、医療関連 MRSA 感染率が第 2 期に有意に減少した(第 1 期 12.2%、第 2 期 5.6%、P = 0.015)。第 2 期には入院時 MRSA 陽性患者率が有意に増加した(第 1 期 2.9%、第 2 期 6.1%)にもかかわらず、全患者の医療関連 MRSA 感染の発生は 1,000 患者日あたり 3.6 から 2.3 に減少した(P < 0.05)。挿管患者に対する先制攻撃的接触予防策は、ICU における医療関連 MRSA 感染の減少に有用であると考えられる。

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監訳者コメント
先制攻撃的接触予防策を実施することにより、入院時 MRSA 陽性患者において検体採取から検査結果が得られるまでの間の MRSA 伝播を抑制することができる。本研究は 17 床の ICU で行われ、ベッド間隔も十分にあり患者同士の接触はない。医療従事者や器具による MRSA 媒介が多く発生していることを示唆している。本来、患者接触の前後に手指衛生を実施すれば防げるはずの MRSA 伝播を、気管内挿管患者に限って接触予防策を全員に行うことによって、効果的に MRSA 伝播を抑制した興味深い論文である。

医療関連または市中獲得型黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症患者 430 例の前向き追跡調査による素因、疾患の進行、および転帰

Predisposing factors, disease progression and outcome in 430 prospectively followed patients of healthcare- and community-associated Staphylococcus aureus bacteremia

E. Forsblom*, E. Ruotsalainen, T. Molkanen, J. Ollgren, O. Lyytikainen, A. Jarvinen
*Helsinki University Central Hospital, Finland

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 102-107


1999 年から 2002 年に実施された多施設前向き研究により特定した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)エピソード(MRSA を除く)を、感染症専門医が追跡調査した。本研究の目的は、医療関連 SAB および市中獲得型 SAB の素因、進行、および転帰を比較することである。SAB エピソード 430 件中 232 件(54%)が医療関連 SAB であった。医療関連 SAB 患者は市中獲得型 SAB 患者と比較して有意に年齢が高く、罹患期間が長かった。発症から 3 日以内の医療関連 SAB および市中獲得型 SAB の深部感染巣保有率は、深在性膿瘍 26%対 37%(P < 0.05)、肺炎 25%対 31%(有意差なし)、骨髄炎 24%対 36%(P < 0.01)、永久的異物 24%対 9%(P < 0.001)、心内膜炎 11%対 15%(有意差なし)、化膿性関節炎 9%対 13%(有意差なし)であり、感染巣のない患者は 3%対 6%(有意差なし)であった。28 日時点の症例致死率は、医療関連 SAB 14%、市中獲得型 SAB 11%(有意差なし)であった。致死的な転帰の多変量解析による独立したリスク因子は年齢、慢性アルコール依存症、免疫抑制治療、慢性または急性致死性基礎疾患、SAB 発症時の重度の敗血症、黄色ブドウ球菌による肺炎、および心内膜炎であった。前向き研究デザインにより、感染巣の綿密な評価および感染症専門医による各 SAB エピソードの追跡を実施した結果、症例致死率は依然として低く、医療関連 SAB エピソードの 97%には菌血症の発症から 3 日以内に感染巣が認められた。

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監訳者コメント
大学病院 5 施設と一般病院 7 施設で行われた、黄色ブドウ球菌による医療関連感染と市中感染の前向き比較研究である。フィンランドでは、黄色ブドウ球菌に占める MRSA の割合が低いため、MRSA 以外の黄色ブドウ球菌感染症の検討を行う価値がある。医療関連感染のほうが市中感染より深在性感染症の頻度が低いという結果は興味深い。

ドイツ北部のナーシングホーム入居者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌率および分子疫学

Prevalence and molecular epidemiology of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in nursing home residents in northern Germany

S. Pfingsten-Wurzburg*, D.H. Pieper, W. Bautsch, M. Probst-Kepper
*Stadtisches Gesundheitsamt, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 108-112


ナーシングホームの入居者は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌リスクが高い集団である。感染制御および医療連携の推進を強化するため、ドイツ北部のブラウンシュヴァイクのナーシングホーム入居者における MRSA の時点保菌率および分子疫学を調査した。この地域の 34 施設のナーシングホームのうち 32 施設が研究に参加し、入居者の 68%(2,688 名中 1,827 名)が鼻腔内保菌および/または創部保菌のスクリーニングを受けた。合計 139 名の入居者(7.6%、95%信頼区間 6.4% ~ 8.8%)に MRSA 陽性が確認されたが、これは調査前のナーシングホームの情報から予想された MRSA 保菌者数である 24 名(0.9%)の約 6 倍であった。尿道カテーテル、創傷、入院歴、およびナーシングホームでのケア依存度が高いことなどの既知のリスク因子が特定されたが、MRSA 保菌の単独の決定因子と考えられるような感度の高い因子はなかった。spa タイピングにより、分離株の 70%以上がドイツ北部の病院感染型 MRSA に典型的な Barnim 株(ST-22、EMRSA-15、CC22)に分類されることが示された。市中獲得型または家畜関連の黄色ブドウ球菌株の存在を示すエビデンスはみられなかった。これらのデータは、ドイツ北部では MRSA が病院環境から他の医療施設に拡散しており、現在はこのような医療施設を MRSA 伝播の重要なリザーバであると見なすべきことを示している。

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監訳者コメント
本調査では、MRSA 保菌陽性率が最も高い施設では 18%に達している。日本でも長期療養型施設の入所者における多剤耐性菌の保菌は徐々に問題になりつつあり、そういった施設からの転入患者が多剤耐性菌を持ちこむ事例が少なくない。これらの施設における伝播の実態は不明であり、またそれを効果的に制御する手法も明らかでなく、深遠な問題である。

香港の看護師および一般集団が保菌している黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の生体消毒薬耐性遺伝子保有率

Prevalence of antiseptic-resistance genes in Staphylococcus aureus and coagulase-negative staphylococci colonising nurses and the general population in Hong Kong

M. Zhang*, M.M. O'Donoghue, T. Ito, K. Hiramatsu, M.V. Boost
*The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong SAR, China

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 113-117


ブドウ球菌の殺生物剤感受性の低下は、流出蛋白質(efflux protein)をコードしている四級アンモニウム化合物(qac)遺伝子と関連がある。本研究では、看護師および非医療従事者が保菌しているブドウ球菌の生体消毒薬耐性遺伝子(qacA/B、smr)の保有率を比較した。看護師 249 名から分離した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の qacA/B および smr の陽性率を、非医療従事者の保菌者由来分離株と比較した。qac 遺伝子と抗菌薬耐性との関連を調べ、塩化ベンザルコニウムおよびクロルヘキシジンの最小発育阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)を測定した。看護師由来のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌は両遺伝子の保有率が一般集団由来よりも高く(オッズ比[OR]8.4、95%信頼区間[CI] 5.4 ~ 13.2)、看護師由来の黄色ブドウ球菌分離株には qacA/B が一般集団由来よりも高い頻度で認められた(OR 5.5、95%CI 2.7 ~ 11.2)。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌率は低かった(看護師 3.2%、一般集団 0.5%)。黄色ブドウ球菌およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の qacA/B および smr の保有リスクは、mecA の保有(OR 2.9、95%CI 1.8 ~ 4.8)および MRSA 感染患者との接触(OR 2.0、95%CI 1.0 ~ 3.9)と関連していた。qac 遺伝子を保有する黄色ブドウ球菌は抗菌薬耐性が有意に強く、遺伝子陽性の分離株はいずれも生体消毒薬に対する MIC および MBC が高値であった。看護師由来ブドウ球菌の生体消毒薬耐性遺伝子保有率が高いことは、病院環境がこれらの菌株保菌の選択圧となり得ることを示している。MRSA 陽性患者との接触者の遺伝子陽性菌保菌率が高いことから示唆されるように、メチシリン耐性菌株の qac 遺伝子保有率が高いことは、これらの遺伝子には選択圧が同時に働いていることを示唆している。生体消毒薬感受性の低下は、低濃度の残留生体消毒薬中での微生物の生存を可能にするとともに、MRSA の生残に寄与する可能性がある。

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監訳者コメント
生体消毒薬耐性遺伝子に関する詳細な検討はこれまであまり行われていない。MRSA の臨床分離株、とりわけ医療従事者のスクリーニングにより得られた株の消毒薬感受性低下につながる耐性遺伝子は、注意が必要な要因であると考える。一方、医療従事者が保菌に至る要因は明らかになっておらず、本論文の知見に基づいてどのような対策を取るべきであろうか。難しい問題である。

フルオロキノロン系処方指針の全病院レベルでの変更とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)発生率:10 年間の分割時系列分析

Hospital-wide modification of fluoroquinolone policy and meticillin-resistant Staphylococcus aureus rates: a 10-year interrupted time-series analysis

J.-J. Parienti*, V. Cattoir, P. Thibon, G. Lebouvier, R. Verdon, C. Daubin, D. du Cheyron, R. Leclercq, P. Charbonneau
*CHU de Caen, France

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 118-122


著者らの 3 次大学病院で 2001 年にフルオロキノロン系の使用を禁止したところ、使用量は 90%減少した。本研究の目的は、フルオロキノロン系再導入後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の傾向を評価することである。フルオロキノロン系使用規制期間(2001 年 1 月から 2002 年 1 月、第 1 期)、規制前のフルオロキノロン系使用量に到達するまでの期間(2002 年 1 月から 2004 年 12 月、第 2 期)、および擦式アルコール製剤を用いた手指衛生キャンペーン実施期間を含む観察期間(2005 年 1 月から 2009 年 6 月、第 3 期)に、MRSA を月 1 回調査する 10 年間の時系列分析を実施した。区分線形自己回帰分析を用いて、近接する期間の間にみられる傾向を評価した。フルオロキノロン系使用量を 1 日規定用量(DDD)で表すと 2001 年は 1,000 患者日あたり 5.2 DDD であったが、2005 年に 1,000 患者日あたり 56.6 DDD まで増加して規制前のフルオロキノロン系使用量に到達し(P < 0.001)、2005 年から 2010 年の間は安定していた(P = 0.65)。フルオロキノロン系の使用を規制していた第1期中に、月ごとの MRSA 陽性率は低下した(-0.49%/月、P < 0.05)。フルオロキノロン系の再導入期間である第 2 期は、第 1 期と比較して MRSA 陽性率が有意に上昇した(+0.68%/月、P < 0.02)。第 3 期は、第 2 期と比較して MRSA 陽性率の有意な低下が認められた(-0.32%/月、P < 0.001;第 2 期直後の低下は -5.9%、P < 0.002)。第 3 期中に手指衛生が推進され、擦式アルコール製剤の使用量が 2005 年の 3,411 L から 2009 年には 14,599 L に増加した。本研究は、MRSA の制御を目的とした全病院的なフルオロキノロン系の処方方針の理論的根拠を強固なものにするとともに、この方針には手指衛生推進との相加作用があることを示唆している。

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世界保健機関が推奨する擦式製剤は 5 分以内の手術時手指消毒に関する欧州の有効性の要件に合致しない

World Health Organization-recommended hand-rub formulations do not meet European efficacy requirements for surgical hand disinfection in five minutes

G. Kampf*, C. Ostermeyer
*BODE Chemie GmbH, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 123-127


世界保健機関(WHO)は、使用施設で調製する 80%エタノールまたは 75%イソプロパノール(いずれも v/v)ベースの 2 種類の擦式製剤を推奨している。EN 12791 に準拠して、これらの有効性を評価した。被験者 26 名が標準処置(n-プロパノール、60%)による 3 分間の手指消毒、または 2 種類の製剤のいずれかによる 1.5、3、または 5 分間の手指消毒を行った(ラテン方格法)。処置後細菌量(即時効果)を一方の手指で測定し、対側の手には手袋を 3 時間装着した。手袋を取り外した後、二次的処置後細菌量(3 時間後の効果)を測定した。各擦式製剤の全 3 種類の処置時間による平均減少量の対数値(log10)を、Hodges-Lehmann 検定を用いて比較評価した。第 1 ブロックでは、標準処置により細菌量が 2.43 log10(即時効果)および 2.22 log10(3 時間後の効果)減少した。エタノール製剤の有効性(例えば、5 分間処置後の即時効果は 1.41 log10 の減少)は、いずれの処置時間でも標準処置に対して劣性が認められた(95%信頼区間[CI]下限値 < -0.75)。第 2 ブロックでは、標準処置により細菌量が 2.72 log10(即時効果)および 2.26 log10(3 時間後の効果)減少した。イソプロパノール製剤の有効性(例えば、5 分間処置後の即時効果は 2.05 log10 の減少)についても、いずれの処置時間でも標準処置に対して劣性が認められた(95%CI 下限値 < -0.75)。WHO が推奨する擦式製剤はいずれも、5 分以内の手術時手指消毒に関する EN 12791 の有効性の要件に合致していなかった。有効成分の濃度を高めることにより、この有効性が改善する可能性がある。

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不適切な血管内デバイスの使用:前向き研究

Inappropriate intravascular device use: a prospective study

M.M. Tiwari*, E.D. Hermsen, M.E. Charlton, J.R. Anderson, M.E. Rupp
*University of Nebraska Medical Center, Nebraska, USA

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 128-132


血管内カテーテルによる合併症は臨床的に重要であるにもかかわらず、入院患者における不適切な血管内カテーテルの使用については十分な特性評価が行われていない。今回の前向き観察研究の目的は、適切な血管内デバイスの使用の定義、血管内デバイスが不適切に使用される頻度の推定、および入院患者に対する不適切な使用と関連するリスク因子および転帰の評価である。2007 年 10 月から 12 月に入院した患者 436 例の合計入院日数は 2,909 日、血管内デバイスの使用は 876 件であった。合計 3,806 カテーテル日が記録され、このうち本研究の基準に基づいて不適切と判定されたのは 1,179 カテーテル日(31%)であった。ロジスティック回帰分析からは、年齢、カテーテル使用本数、およびカテーテル留置期間が、不適切なデバイス使用のリスク因子であることが示された(P < 0.05)。不適切な使用は、集中治療室への入室の増加(P < 0.05)および入院期間の延長(適切な使用 4.9 ± 4.3 日対不適切な使用 8.5 ± 12.6 日、P < 0.05)と強く関連していた。中心静脈カテーテルの使用は、不適切なデバイス使用の予測因子ではなかった。不適切な血管内デバイスの使用は入院患者に極めて高い頻度でみられる事象であり、デバイス関連の不良な転帰と強く関連している。これらの結果は、血管内デバイスの過剰な使用を組織的に減少させるための対策を確立するうえで有用であると考えられ、これにより有病率、死亡率、および過剰な医療費が減少することが期待される。

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デバイス関連感染症有病率と擦式アルコール製剤使用量との関連:多水準モデルによるアプローチ

Relationship between prevalence of device-associated infections and alcohol-based hand-rub consumption: a multi-level approach

C. Slekovec*, H. Gbaguidi-Haore, B. Coignard, X. Bertrand, D. Talon
*Centre Hospitalier Universitaire Besancon, France

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 133-137


多水準ロジスティック回帰モデルを用いて、フランスの医療施設における擦式アルコール製剤の使用量とデバイス関連感染症有病率との関連の有無を評価した。2 種類の全国的データベース、すなわち 2006 年のフランスの院内感染有病率調査、および指標として擦式アルコール製剤の使用量(ICSHA;indicateur de consommation de solution hydro-alcoolique)を含む 2006 年フランス感染制御指標(2006 French Infection Control Indicators)データベースを使用した。医療施設に 2 日以上入院し、1 種類以上の医療器材(尿道カテーテル、血管カテーテル、または気管チューブ)を使用した患者を解析対象とした。多水準統計解析を実施し、患者レベルの変数と病院レベルの変数の共同効果を評価した。対象患者を 15 例以上含む 814 の医療施設を対象とし、合計患者数は 53,459 例であった。デバイス関連感染症の全有病率は 6.7%(95%信頼区間 6.4 ~ 6.9)であった。ICSHA の中央値は 37.2%であった。デバイス関連感染症有病率と ICSHA との間に関連はみられなかったが、患者レベルのすべての変数はデバイス関連感染症有病率と関連していた。デバイス関連感染症有病率の病院レベルでのばらつきの 25%は患者レベルの変数により説明されたが、本モデルに患者レベルの変数と病院レベルの変数の両方を組み入れた場合も、このばらつきの 60%は依然として説明されなかった。デバイス関連感染症有病率と手指衛生との関連をさらに評価するためには、侵襲性医療器材の操作に密接に関連する手指衛生の実践について、研究を重ねる必要がある。

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術後の院内感染眼内炎に対する周術期抗菌薬予防投与は推奨されるか? 単一施設の経験

Postoperative nosocomial endophthalmitis: is perioperative antibiotic prophylaxis advisable? A single centre’s experience

T. Ness*, W.V. Kern, U. Frank, T. Reinhard
*University Eye Hospital of Freiburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 138-142


本稿では、術前に局所ポビドンヨードとゲンタマイシン含有洗浄液の予防投与を受けたが、セフロキシムの前房内投与または周術期抗菌薬局所投与は実施していない、白内障手術後の患者の眼内炎発生率について報告する。大規模な大学教育病院 1 施設で 12 年間に白内障手術を受けた患者を対象として、後向き臨床試験を実施した。白内障手術 26,566 件のデータを解析した。術後眼内炎症例の特定・診断は、臨床所見および微生物学的検査を組み合わせて行った。白内障手術合計 26,566 件を調査し、術後眼内炎症例 16 例(発生率は手術 1,000 件あたり 0.6 件、すなわち 0.06%、95%信頼区間 0.03% ~ 0.09%)を特定した。原因微生物は症例の 81.3%(16 例中 13 例)から検出された。その大半はグラム陽性菌(13 例中 10 例)であり、このうちセフロキシム感性 10 例中 9 例、フルオロキノロン系感性 8 例中 4 例、アミノグリコシド系耐性 10 例中 10 例であった。グラム陰性菌(3 例)はセフロキシム、アミノグリコシド系、およびフルオロキノロン系に感性であった。局所ポビドンヨードとゲンタマイシン含有洗浄液を用いた今回のレジメンの術後眼内炎発生率は低く、最近報告された他の大規模試験の感染率と同等であった。白内障手術後の感染性合併症を最小限に抑えるために、セフロキシムの前房内投与および周術期レボフロキサシン点眼は不要と考えられる。したがって、欧州白内障・屈折手術学会(European Society of Cataract and Refractive Surgery;ESCRS)ガイドライン(周術期抗菌薬投与を必須としている)を再考し、白内障手術後の感染症を予防するための効果的な代替レジメンを認めることを提案する。

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パキスタン・カラチの公立病院および私立病院の集中治療室からのカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)臨床分離株の分子的・疫学的特性

Molecular and epidemiological characterisation of clinical isolates of carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii from public and private sector intensive care units in Karachi, Pakistan

S. Irfan*, J.F. Turton, J. Mehraj, S.Z. Siddiqui, S. Haider, A. Zafar, B. Memon, O. Afzal, R. Hasan
*Aga Khan University Hospital, Pakistan

Journal of Hospital Infection (2011) 78, 143-148


本研究の目的は、パキスタン・カラチの 2 つの集中治療室(ICU)からのカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の院内分離株の分子的・疫学的特性を明らかにすることである。2007 年 11 月から 2008 年 8 月に、私立の 3 次病院の成人 ICU と公立病院の成人 ICU で横断研究を実施した。臨床検体中のカルバペネム耐性 A. baumannii 分離株から同一患者の重複株を除外し、カルバペネマーゼ遺伝子およびクラス 1 インテグラーゼ遺伝子について調べた。遺伝子配列に基づいて、マルチプレックス PCR、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)、および variable number tandem repeat(VNTR)解析により分離株のタイピングを行った。患者合計 50 例(私立 ICU 33 例、公立 ICU 17 例)を登録した。両 ICU の患者の間には、平均年齢、併存疾患、中心静脈圧ラインの有無、尿路カテーテル、および平均入院期間に統計学的な有意差が認められた。獲得性のオキサシリナーゼ遺伝子 blaOxA-23-like が分離株 50 株中 47 株で検出された。クラス 1 インテグラーゼ遺伝子は分離株の 50%(50 株中 25 株)で検出された。大半の分離株は European clone I および European clones II に属していた。PFGE タイピングにより分離株は 8 つのクラスターに分類され、このうち 3 つは両病院から検出された。PFGE で分類された各クラスター内の分離株の大部分は、VNTR プロファイルが同一または高度に類似しており、密接な疫学的関連が示唆された。両 ICU は、リスク因子や感染制御の方針・実践が異なるにもかかわらず、カルバペネム耐性 A. baumannii 分離株のクローン性は高度に類似していた。

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