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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

接触予防策はうつ病を引き起こすか? 3 次医療施設における 2 年間の研究

Do contact precautions cause depression? A two-year study at a tertiary care medical centre

H.R. Day*, E.N. Perencevich, A.D. Harris, S.S. Himelhoch, C.H. Brown, A.L. Gruber-Baldini, E. Dotter, D.J. Morgan
*University of Maryland School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 103-107


接触予防策は感染症伝播の減少を目的として実施されるものであり、入室時のガウンや手袋の着用もこれに含まれる。これまでの小規模な研究から、接触予防策とうつ病や不安の症状悪化との関連が示唆されている。本研究では、2 年間に 3 次医療施設に入院した全患者の後向きコホートを対象として、接触予防策とうつ病や不安との関連を評価した。2 年間で 70,275 件の入院があり、このうち非集中治療室(ICU)かつ非精神科への初回入院は 28,564 件であった。この非 ICU 患者集団では、潜在的交絡因子を補正後、接触予防策はうつ病と関連していた(オッズ比[OR]1.4、95%信頼区間[CI]1.2 ~ 1.5)が、不安とは関連していなかった(OR 0.8、95%CI 0.7 ~ 1.1)。すなわち、接触予防策が実施された一般入院患者では、うつ病の有病率が40%高かった。

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監訳者コメント
接触予防策は感染対策に有効であるが、その弊害も指摘されている。本研究ではうつ病との関連が示されたが、スタッフの訪室が減ることによる観察頻度の減少により、転倒などのリスクが高まることが指摘されている。感染対策とその他の有害事象との両立は難しい問題である。

臨床医への予防可能因子のフィードバックにより院内発症黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症発生率が減少し得る

Feedback to clinicians on preventable factors can reduce hospital onset Staphylococcus aureus bacteraemia rates

J. Kok*, M.V. O’Sullivan, G.L. Gilbert
*Westmead Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 108-114


黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)は重大な疾患や死亡を引き起こすが、予防可能因子についてのデータは少ない。本研究の目的は、3 次病院 1 施設で SAB 事象を評価すること、SAB 事象が回避可能であった場合の予防可能因子を特定すること、および治療を担当した臨床医にフィードバックを行うことである。19 か月間に SAB 事象が 187 件発生し、このうち原因はメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)59.9%、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)40.1%であり、医療関連感染は 65.8%、市中獲得感染は 34.2%であった。全体で 7 日死亡率は 11.2%、30 日死亡率は 20.9%であった。1 つ以上の予防可能因子が特定された医療関連 SAB 事象は 50.4%であった。予防可能因子としては、最近の MRSA 院内獲得が MRSA 菌血症事象の 53.7%に認められ、静脈アクセスに関連する 1 つ以上の因子が医療関連感染症例の 24.3%以上(院内発症例の 35.7%)に認められた。特定可能な 1 つ以上の予防可能因子と関連する SAB の割合は、外科入院患者のほうが内科入院患者よりも高かった(86.2%対 54.5%、P = 0.004)。集中治療室への入室を要する患者の割合は、医療関連 MRSA 菌血症のほうが医療関連 MSSA 菌血症よりも高かった(44.4%対 18.8%、P = 0.003)。予防可能因子を特定し、対策を実施することにより、医療資源をより効果的に SAB 予防に使用できると考えられる。予防可能因子のフィードバックと医療関連 SAB 発生率の減少との関連が認められ、1,000 床日あたりの発生率は 2008 年の 0.29 件からから 2009 年の 0.20 件に減少した。

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監訳者コメント
黄色ブドウ球菌菌血症の院内発生に関して、予防可能な因子があればそれを同定し、臨床へフィードバックすることによって、これを減少させた取り組みである。予防可能な因子に関する解析を含めた研究的側面と、菌血症の減少という実践報告の双方の側面をもった論文である。フィードバックの手法が参考になる。

世界保健機関が推奨する手術時手指消毒用製剤の評価および有効性改善の提案

Testing of the World Health Organization-recommended formulations for surgical hand preparation and proposals for increased efficacy

M. Suchomel*, M. Kundi, B. Allegranzi, D. Pittet, M.L. Rotter
*Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 115-118


2009年に世界保健機関(WHO)が発表した「医療における手指衛生に関するガイドライン(Guidelines on hand hygiene in health care)」は、衛生的手指衛生および術前手指衛生のいずれについても擦式アルコール製剤を推奨している。市販製品が入手できないか高価なため使用できない医療施設に対しては、80%(v/v)エタノールベースおよび 75%(v/v)2-プロパノールベースの 2 種類の製剤を施設で調製することが推奨されている。この両製剤および著者らが提案する製剤の改良(容積ではなく重量パーセント濃度を用いる)が、次回の欧州統一規格(EN)12791 改正における有効性の要件、すなわち消毒の直後および 3 時間後の製剤の有効性が標準処置(60%[v/v]1-プロパノール、3 分間)と比較して非劣性であることに合致するかどうかを評価した。本研究では、WHO が推奨する製剤を 3 分間および 5 分間で検査した。いずれの製剤も 3 分間の処置では EN 12791 の有効性の要件に合致しなかった。それぞれの製剤の濃度を 80%(w/w)(85%[v/v])および 75%(w/w)(80%[v/v])に高めるとともに処理時間を 5 分間に延長すると、両製剤とも即時効果では標準消毒処置に対する非劣性が認められた。しかし、3 時間後では効果が認められず、標準処置に対して有意に劣性であった。元々の製剤は EN 12791 の有効性の要件に合致しなかったが、今回の知見の臨床的重要性を考慮すると、さらなる臨床試験を行う必要がある。製剤の改良としてアルコール濃度を容積から重量パーセントに変更して高め、処置時間を 3 分間から 5 分間に延長することによって、EN 12791 の要件に合致させることが可能となる。

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監訳者コメント
手指衛生に使用する擦式アルコール製剤には様々なものがあり、その組成によって薬効が大きく異なることが本論文から読み取れる。臨床現場での使用にあたっては、広く認められた薬効基準の要件に合致する製剤を使用することが必要である。また、研究的側面から言えば、今後も様々な組成が試みられ、検証されていくと思われる。それが臨床現場で使用できる製剤に反映され、改良が重ねられていくことになる。

Variable life-adjusted displayチャートを用いた手術部位感染の自動モニタリング

Automating the monitoring of surgical site infections using variable life-adjusted display charts

C. Vasilakis*, A.P.R. Wilson, F.S. Haddad
*University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 119-124


病院内の手術部位感染(SSI)発生のモニタリングおよび報告を支援するために専用に開発されたソフトウエアについて述べる。本ツールでは、ロンドンの教育病院で感染症サーベイランスシステムの一環として日常的に収集されているデータを使用する。これらのデータには退院後追跡調査が含まれる。これらのデータを基に、本ツールを用いて経時的な感染症累積症例数を示すグラフ、および診療科ごとの感染症リスクの予測平均値を示す variable life-adjusted display(VLAD)チャートを作成する。ユーザーはグラフ作成に際し、その他のオプションとともに、使用する感染症の定義を選択することができる。本ツールとその使用目的について、整形外科手術における SSI のモニタリングを実例として示すが、その趣旨は明確な結論を提示することではなく、さらなる検証の契機とすることである。本ツールは各診療科に討論の材料を提供することになり、最終的には手術患者の安全性の向上をもたらすべきものであることを示す。著者らは、手術部位のサーベイランスを継続的に実施しているあらゆる医療機関に対して、本ツールおよび VLAD チャートを採用することを推奨する。

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監訳者コメント
SSI の累積発生状況の経時的変化に関し、リスク調整されたデータを提示できるという点でこのツールは非常に有用であると考える。一方で、SSI の判定をアルゴリズムを用いている点については、正確さに若干不安が残る。SSI の判定は、電子的診療情報だけでは必ずしも行うことができないからである。また、病院の電子情報システムとのリンクが必要など、課題も多い。これらの点は、情報技術の進歩で解決されるかもしれない。

オーストラリアの病院病棟における過酸化水素蒸気による汚染除去の生物学的効果の評価

Evaluation of the biological efficacy of hydrogen peroxide vapour decontamination in wards of an Australian hospital

H.-T. Chan*, P. White, H. Sheorey, J. Cocks, M.-J. Waters
*St Vincent’s Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 125-128


本研究では、オーストラリアの病院で実施された「ドライ」過酸化水素蒸気による汚染除去の効果を 2 段階の試験により評価した。In vivo 試験では、病棟内の高頻度接触部位のベースラインの細菌数を測定し、中性洗剤による清掃後の過酸化水素蒸気による汚染除去、または中性洗剤による清掃後の漂白剤または Det-Sol 500 による用手的最終清掃の効果を評価した。In vitro 試験では、オーストラリアの病院病棟における種々の一般的な環境表面に規定濃度のバンコマイシン耐性腸球菌を意図的に付着させ、過酸化水素蒸気による汚染除去の効果を調べた。接触培地法により全細菌数を評価した。In vivo 試験では、過酸化水素による汚染除去後の好気性細菌数は、評価を行った高頻度接触部位の 33.3%で検出限界未満(すなわち細菌の回収なし)であり、いずれも最大細菌数は 3 cfu/cm2 以下であった。一方 in vitro 試験では、調査したすべての表面で細菌量が 10 分の 1 以下に減少した。微生物の回収は環境表面の性状の影響を受けるため、今回の方法で得た清浄度のデータを異なる表面で単純に比較することはできないものの、上記の結果から、ドライ過酸化水素蒸気による室内の種々の表面に対する汚染除去の効果は高いことが示された。

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監訳者コメント
過酸化水素による環境汚染の除去効果はすでに多く報告されているが、その性状はまだ統一されていない。霧状のものか気体であるかの 2 つが主であり、本論文では気体、すなわち「ドライ」な過酸化水素を使用している。効果はこれまでの報告と同様、高いものとなっており、環境制御の有用な手段であることは確実と思われる。

人工股関節感染症および人工膝関節感染症のリスク因子の相違

Risk factors for prosthetic hip and knee infections according to arthroplasty site

T.N. Peel*, M.M. Dowsey, J.R. Daffy, P.A. Stanley, P.F.M. Choong, K.L. Buising
*St Vincent’s Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 129-133


人工関節感染症は関節形成術の深刻な合併症である。関節形成術による感染症に関連する因子はこれまでの疫学研究でも評価されているが、人工関節感染症に対する併存疾患の影響について、関節形成術の部位別の評価は実施されていない。症例対照研究デザインを用いて、解剖学的部位別の人工関節感染症のリスク因子を調査した。1 病院を対象とした 8 年の研究期間中に、63 例の患者に人工関節感染症(股関節 36 例、膝関節 27 例)が発症した。人工股関節感染症または人工膝関節感染症の症例を、対照に対して 1:2 の割合でマッチさせた。結果から、関節形成術感染症に関連する因子は解剖学的部位によって異なることが示唆された。膝関節形成術後は、創部滲出液と人工関節感染症のリスク増加との関連が認められたが、ドレーンチューブ留置はリスク低下と関連した。一方、人工股関節感染症は、体格指数(BMI)高値、ドレーンチューブからの排出量増加、および表層切開創の手術部位感染(SSI)との関連が認められた。コホートを統合した解析では、全身性ステロイド薬の使用、ドレーンチューブからの排出量増加、創部滲出液、および表層切開創の SSI が人工関節感染症の予測因子であった。

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監訳者コメント
術後感染症のリスク因子を明らかにする研究は、感染対策にかけることができる人的物的資源が限られる中で、特に感染症防止対策を強化すべき患者を同定することができる点で非常に有意義である。本研究は、人工関節形成術のリスク因子を膝と股にわけ、その相違を明らかにしており、大変興味深い。

イタリアの 3 次紹介病院の集中治療室における多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の逐次的アウトブレイク:疫学調査のための複合的な分子的アプローチ

Sequential outbreaks of multidrug-resistant Acinetobacter baumannii in intensive care units of a tertiary referral hospital in Italy: combined molecular approach for epidemiological investigation

F. Ansaldi*, P. Canepa, M. Bassetti, M. Zancolli, M.P. Molinari, A. Talamini, F. Ginocchio, P. Durando, M. Mussap, G. Orengo, C. Viscoli, G. Icardi
*University of Genoa, Italy

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 134-140


2007 年 1 月から 2010 年 5 月に、イタリア、ジェノヴァの 3 次病院である San Martino Hospital で臨床検査に基づくサーベイランス研究を実施し、5 か所の集中治療室(ICU)で多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の分子疫学を調べた。合計 53 株の A. baumannii を ICU 入室患者(69.8%)および疫学的に関連のあるその他の病棟の入院患者(30.2%)から分離し、repetitive extragenic palindromic PCR(REP-PCR)法、複数部位塩基配列タイピング(MLST)、および adeB 遺伝子配列タイピングにより遺伝子型を決定した。REP-PCR フィンガープリント解析、MLST、および adeB タイピングの結果には強い関連が認められ、流行の原因となった菌株を以下の 3 つの主要な流行型クローンに分類することができた。2007 年 5 月に初めて分離されたクローン A(REP-I/ST4、adeB-STII 遺伝子型)、2007 年 11 月から 2009 年 5 月に分離されたクローン B(REP-IV/ST95、adeB-STI 遺伝子型)、2008 年 7 月から 2010 年 5 月に分離されたクローン C(REP-VII/ST118、adeB-STII 遺伝子型)。MLST の結果から、流行型クローン A と C は広く蔓延するクローン複合体 CC92 に属し、関連があることが示された。カルバペネム耐性の遺伝的決定因子を調査したところ、クローン A では blaOxA-58-like遺伝子とこれに隣接する ISAba2 および ISAba3 エレメントの存在、クローン B と C では blaOxA-23-like 遺伝子とこれに隣接する ISAba1 エレメントの存在が、耐性と関連していた。分子的アプローチにより感染制御対策の迅速な導入が可能となり、広範な疫学的背景に基づくデータの評価を行うことができた。

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監訳者コメント

大腸菌(Escherichia coli)臨床分離株に対する四級アンモニウム化合物の最小発育阻止濃度高値が抗菌薬感受性および臨床転帰に及ぼす影響

Effect of higher minimum inhibitory concentrations of quaternary ammonium compounds in clinical E. coli isolates on antibiotic susceptibilities and clinical outcomes

S. Buffet-Bataillon*, B. Branger, M. Cormier, M. Bonnaure-Mallet, A. Jolivet-Gougeon
*Université Européenne de Bretagne, France

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 141-146


四級アンモニウム化合物は陽イオン界面活性剤であり、防腐剤および環境消毒薬として用いられる。臨床環境における四級アンモニウム化合物の効果に関するデータは限られている。2008 年 2 月から 9 月にレンヌの大学病院で、大腸菌(Escherichia coli)菌血症患者 153 例を対象とした前向きコホート研究を実施した。寒天平板希釈法により抗菌薬および四級アンモニウム化合物であるアルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム(ADBAC)とジデシルジメチル塩化アンモニウム(DDAC)の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。クリスタル・バイオレット法によりバイオフィルム形成能を評価し、分離株のリファンピシン耐性発現能の測定により変異頻度を評価した。ロジスティック回帰分析から、コトリモキサゾール感性は ADBAC(≦ 16 mg/L)および DDAC(≦ 8 mg/L)の MIC 低値と関連する重要な因子の 1 つであることが示された(ADBAC のオッズ比[OR]3.72、95%信頼区間[CI]1.22 ~ 11.24、P = 0.02、DDAC の OR 3.61、95%CI 1.56 ~ 7.56、P < 0.01)。コトリモキサゾール感性であることは、アモキシシリンおよびナリジクス酸感性と強く関連していた(P < 0.01)。市中感染菌血症と医療関連菌血症のいずれであるか、菌血症の重症度、および患者の転帰は ADBAC および DDAC の MIC とは関連がなかった。今回の知見から、大腸菌臨床分離株に対する四級アンモニウム化合物の MIC 高値と抗菌薬耐性との疫学的関連が示された。

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監訳者コメント

長期血液透析患者におけるバンコマイシン耐性腸球菌の直腸培養スクリーニング:偽陰性率および保菌期間

Rectal culture screening for vancomycin-resistant enterococcus in chronic haemodialysis patients: false-negative rates and duration of colonisation

I. Park*, R.W. Park, S.-K. Lim, W. Lee, J.s. Shin, S. Yu, G.-T. Shin, H. Kim
*Ajou University School of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 147-150


長期血液透析患者ではバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染・保菌が多くみられる。しかし、長期血液透析患者の VRE 保菌期間や、VRE の除去を判定するための直腸培養の連続陰性の信頼性に関する情報は限られている。VRE が分離された長期血液透析患者を対象として、後向きの評価を実施した。2003 年 6 月 1 日から 2010 年 3 月 1 日に、直腸培養検体を 1 週間以上の間隔で 4 回以上採取した。VRE の連続培養の結果および患者データの解析を行った。VRE が分離された 812 例のうち長期血液透析患者は 89 例、培養結果が 3 回連続して陰性であった患者は 92 例であった。培養結果が 3 回連続して陰性であった検体の採取期間は、非長期血液透析患者 83 例では 60.7 ± 183.9 日、長期血液透析患者 9 例では 111.4 ± 155.4 日であった(P = 0.011)。直腸培養結果が 4 回以上連続して陰性となる独立リスク因子は、グリコペプチドの使用(オッズ比[OR]2.155、P = 0.003)および入院期間(OR 1.009、P = 0.001)であった。直腸培養結果が 3 回連続して陰性であることが確認された後に再度陽性が認められた患者は、長期血液透析患者は 6 例中 2 例、非血液透析患者は 36 例中 10 例であった。結論として、3 週間隔での直腸培養ではかなりの割合の VRE 保菌患者が検出漏れとなること、および長期血液透析患者の VRE 保菌期間は長期化する傾向があることが示された。これらの結果は、VRE 保有率の持続的上昇の一因となっている可能性がある。

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監訳者コメント

CSI:入院時のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症重症度指標

CSI: a severity index for Clostridium difficile infection at the time of admission

O.A. Lungulescu*, W. Cao, E. Gatskevich, L. Tlhabano, J.G. Stratidis
*Danbury Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 151-154


米国ではクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は院内下痢症の原因菌として高い頻度でみられる。入院時の C. difficile 感染症が重度であるか軽・中等度であるかの判定に有用なスコアリングモデルを作成するために、後向きコホート研究を実施した。2004 年 1 月から 2007 年 12 年に、255 例の患者が本研究の組み入れ基準に合致した。重度の C. difficile 感染症の定義は、結腸切除、集中治療室での管理、死亡による試験終了、または 10 日を超える入院を要する場合とした。データとして既往歴、入院時の身体診察所見、臨床検査データ、および画像データ・大腸内視鏡検査データなどを記録した。C. difficile 感染症重症度指標(CSI)のスコアの算出にあたっては、単変量解析により特定した重度の C. difficile 感染症の 4 つのリスク因子、すなわち悪性腫瘍の既往歴、入院時の白血球数 > 20,000/dL、血中アルブミン値 < 3.0 mg/dL、および入院時クレアチニン値がベースライン値の 1.5 倍を超えることを算入した。各リスク因子に対して1 点を割り当てた。c 統計量は 0.78 であり、CSI スコアによる重度の C. difficile 感染症の予測能は偶然(c 統計量 0.50)よりもはるかに良好であることが示された。重度の C. difficile 感染症の発現リスクは、CSI スコアの 1 点上昇ごとに 2.9 倍(95%CI 1.82 ~ 4.59)上昇した。カットオフ値が 2 の場合の CSI スコアの感度は 82%、特異度は 65%であった。CSI スコアは入院時の重度の C. difficile 感染症リスクの定量化、およびより積極的な治療が有益となる可能性がある患者の早期特定に有用であると考えられる。

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監訳者コメント

小児血液腫瘍内科におけるパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009:急激なアウトブレイクの管理成功例

Pandemic A/H1N1/2009 influenza in a paediatric haematology and oncology unit: successful management of a sudden outbreak

N. Buchbinder*, C. Dumesnil, D. Pinquier, V. Merle, B. Filhon, P. Schneider, J.P. Vannier
*Rouen University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 155-160


ウイルス性呼吸器感染症は、癌治療を受けている小児の生命を脅かす可能性がある。小児血液腫瘍内科で発生したパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009 の院内アウトブレイク 6 症例について報告する。患児 3 例が肺炎を発症し、このうち 2 例に持続性心血行動態不全が認められた。感染源は、第一感染患児の親類であると考えられた。アウトブレイクの拡大は、社会活動中の患者間の交差感染によるものと考えられた。アウトブレイクの判定が数日遅延したことが、インフルエンザの拡大を助長した。感染制御策として、全入院患児に対するオセルタミビル経口投与、感染患児の隔離、厳格な個人防御策、来院者の制限などを実施した。これらの封じ込め策施行後は、新たな症例は認められなかった。アウトブレイクと判定された時点では、他の理由からすべての患児がすでに隔離されていた。結論として、インフルエンザ A(H1N1)2009 は急速に拡大し、小児癌患児の重度の感染症の原因となる可能性があるが、効率的に封じ込めることが可能である。単発症例またはアウトブレイク症例を特定することは、適切な感染制御策の迅速な実施につながる。

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監訳者コメント

セネガルの新生児室における院内血流感染症の減少に対する感染制御プログラムの有効性

Efficacy of an infection control programme in reducing nosocomial bloodstream infections in a Senegalese neonatal unit

C. Landre-Peigne*, A.S. Ka, V. Peigne, J. Bougere, M.N. Seye, P. Imbert
*Service de Pédiatrie, CH Versailles, Le Chesnay, France

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 161-165


新生児院内感染症は発展途上国における公衆衛生上の脅威であり、介入成功の報告は少ない。セネガルの Hôpital Principal de Dakar の新生児室に 2005 年 3 月から 5 月に導入された多角的な病院感染制御プログラムの有効性を評価するため、前後比較試験を実施した。介入として集中的看護、早発型敗血症が疑われる患児の経験的治療のための簡易アルゴリズムの導入、侵襲的処置の軽減、および新生児の早期退院の促進などを実施した。感染制御プログラム導入の前後に、院内血流感染症、死亡率、細菌の薬剤耐性、および抗菌薬使用についてのデータを収集した。本プログラム導入の直前(第 1 期、2005 年 1 月 ~ 2 月)に乳児 125 例が入院し、直後(第 2 期、6 月 ~ 7 月)に 148 例が入院した。これらの 2 群の乳児の入院理由および出生時体重は同等であった。感染制御プログラム導入後は、院内血流感染症の総発生率は 8.8%から 2.0%(P = 0.01)に低下し、1,000 患者日あたりの院内血流感染症発生率は 10.9 件から 2.9 件に減少した(P = 0.03)。総死亡率に有意差はなかった。早発型敗血症が疑われ抗菌薬治療を受けた新生児の割合は、リスク乳児の 100%から 51%に有意に減少した(P < 0.001)。薬剤耐性菌発現率は本プログラム導入後に有意に低下し(79%対 12%、P < 0.001)、1 年後も低値が持続していた。この新生児室では、簡易で低コストの継続可能な介入により、高頻度で発症する院内細菌血流感染症が制御され、その介入効果は長期間持続した。このような介入は、他の低所得国にも適用することが可能である。

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監訳者コメント

監訳者注:
集中的看護(clustering of nursing care):本論文では、各看護師らが特定の業務を専業的に分担するのではなく、割り当てられた患児の看護をすべて担当することを指している。

スイスの病院における抗菌薬使用量:多文化国家と欧州との比較

Hospital antibiotic consumption in Switzerland: comparison of a multicultural country with Europe

C. Plüss-Suard*, A. Pannatier, A. Kronenberg, K. Mühlemann, G. Zanetti
*Centre Hospitalier Universitaire Vaudois, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 166-171


スイスの入院患者の抗菌薬使用量を評価し、同国内の言語圏間の相違を明らかにするとともに、欧州の調査結果との比較を実施した。抗菌薬使用量のデータは、国の急性期病院の 54%が参加するセンチネルネットワーク、および民間の医薬品市場調査会社から得た。収集したデータは 1 日規定用量(DDD)に換算した。スイス全体の使用密度(consumption density)は、欧州の調査で報告された使用量中央値と同程度であった。2004 年から 2008 年にかけて、全病院の全身性抗菌薬の総使用量は 100 病床利用日あたり 46.1 DDD から 54.0 DDD に増加し、集中治療室では 100 病床利用日あたり 101.6 DDD から 114.3 DDD に増加した。総使用量の相違が言語圏間に認められ、また抗菌薬クラス間でも相違がみられた。イタリア語圏の病院の使用密度は有意に高く、次いでフランス語圏、ドイツ語圏であった。さらにイタリア語圏の病院ではフルオロキノロン系の使用量が多く、イタリア、ドイツ、フランスの間に報告されている相違と一致していた。スイスの急性期病院の抗菌薬使用量は欧州の中央値と同程度であったが、集中治療室での使用量は比較的少なかった。欧州諸国間でみられる使用レベルの相違パターンの一部は、スイス国内の文化圏間にも認められた。

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監訳者コメント

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.