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医療関連感染症の原因菌としての市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)株

Community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus strains as a cause of healthcare-associated infection

J.A. Otter*, G.L. French
*King’s College London and Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 189-193


市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus;CA-MRSA)が、医療との接点がない市中の住民の感染症の原因菌となることが初めて確認された。CA-MRSA の世界的な流行が持続しているため、CA-MRSA 株は医療関連感染症(HAI)の原因となりつつあり、世界各地で病院アウトブレイクが発生している。米国の USA300(ST8-IV)などの CA-MRSA クローンが定着し、有病率が高い地域では、HAIの原因菌として CA-MRSA が従来の医療関連 MRSA 株に置き換わり、優勢になろうとしている。CA-MRSA が HAI の原因菌となることにより、入院患者、医療従事者、および市中における彼らとの接触者という広範な集団に MRSA 感染リスクがもたらされる恐れがある。このことは、CA-MRSA 株を病院内の抗菌薬使用という選択圧に曝露させるため抗菌薬耐性の増加につながる可能性があるほか、従来の CA-MRSA の定義に修正を迫るとともに、市中の新興リザーバから MRSA が繰り返し供給されるために感染制御の取り組みの妨げとなる。したがって、CA-MRSA の定義、有病率、および疫学を明らかにすること、また市中、病院、その他の医療施設、および市中と病院との接点におけるこれらの細菌の同定・制御のための仕組みを構築することが緊要である。

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監訳者コメント

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌から医療関連感染症への移行に関連するリスク因子

Risk factors associated with the conversion of meticillin-resistant Staphylococcus aureus colonisation to healthcare-associated infection

L. Harinstein*, J. Schafer, F. D’Amico
*Cleveland Clinic, USA

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 194-197


本研究の目的は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の長期保菌患者における医療関連 MRSA(HA-MRSA)感染症のリスク因子を特定することである。本研究は地域教育病院で実施された症例対照研究である。対象患者は 18 歳以上かつ MRSA 鼻腔内保菌の培養陽性症例 41 例と対照 82 例であり、前者は保菌の初回確認後 60 日以内に HA-MRSA 感染症を発症した者、後者は発症しなかった者とした。想定されるリスク因子として評価したのは、人口統計学的特性、併存疾患、使用薬剤、侵襲的器材の有無、創傷その他の感染症の有無、栄養状態、入院回数、および感染症発症までの期間であった。単変量解析では、末梢血管疾患、3つ以上の併存疾患、中心静脈カテーテル、フォーリーカテーテル、および 2 回以上の入院が、HA-MRSA 感染症リスクの増加と有意に関連していた。多変量解析からは、中心静脈カテーテル(OR 8.00、95%CI 3.13 ~ 20.4)または2回以上の入院(OR 3.37、95%CI 1.37 ~ 8.26)を MRSA 保菌者における MRSA 感染症の独立リスク因子とするモデルが得られた。結論として、MRSA 保菌から HA-MRSA 感染症への移行と独立して関連するリスク因子は、中心静脈カテーテルまたは 2 回以上の入院であった。この患者集団では、リスク因子を最小化する戦略が HA-MRSA 感染症の減少に有用と考えられる。

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監訳者コメント

オランダにおける病院入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の低い保菌率の持続

Sustained low prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus upon admission to hospital in The Netherlands

L.G.M. Bode*, H.F.L. Wertheim, J.A.J.W. Kluytmans, D. Bogaers-Hofman, C.M.J.E. Vandenbroucke-Grauls, R. Roosendaal, A. Troelstra, A.T.A. Box, A. Voss, A. van Belkum, H.A. Verbrugh, M.C. Voss
*Erasmus Medical Centre, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 198-201


1999 年から 2000 年のオランダにおける病院入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌率は 0.03%であった。本研究の目的は、オランダにおける MRSA 保菌率の過去数年の変動を評価することである。オランダの 5 病院の患者 6,496 例を対象として、2005 年 10 月 1 日から 2007 年 6 月 7 日に入院時の鼻腔内黄色ブドウ球菌保菌のスクリーニングを微生物培養により行った。合計で 6,496 例中 2,036 例(31.3%)が鼻腔内に黄色ブドウ球菌を保菌し、7 例(0.11%)は MRSA 保菌者であった。オランダ人集団の入院時の MRSA 保菌率は、1999 年から 2000 年までの期間と比較して 3 倍を超えて上昇したが、この上昇は有意ではなかった(P = 0.06、Fisher の正確確率検定)。この保菌率は依然として世界最低レベルであり、おそらくはオランダの感染制御方針が厳格であること、およびオランダでは抗菌薬の使用が制限されていることに起因すると考えられる。

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監訳者コメント

優勢ではない同一遺伝子型のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を保菌する患者間の古典的な疫学的関連の評価、および疫学的追跡のための教訓

Investigation of classical epidemiological links between patients harbouring identical, non-predominant meticillin-resistant Staphylococcus aureus genotypes and lessons for epidemiological tracking

L. Senn*, G. Zanetti, F. Bally, C. Chuard, A. Cometta, M. Burr, M.-C. Eisenring, P. Basset, D.S. Blanc
*Centre Hospitalier Universitaire Vaudois and University of Lausanne, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 202-205


分子疫学理論では、識別能が高い分子タイピング法により 2 つの分離株の類似性が認められた場合、これらは同一の感染鎖に属していると見なす。これについてはアウトブレイクを対象とした研究は行われているが、地域的流行についてはほとんど検討されていない。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)分離株が地域流行性の優勢な遺伝子型である場合は、ヒトからヒトへの伝播を立証することができない。一方、頻度が低い遺伝子型の分離株のほうが疫学的追跡に適していると考えられる。本研究の目的は、優勢ではない遺伝子型の MRSA を保菌する新規患者を対象として、分子タイピングから推定された疫学的関連は、地域的サーベイランスプログラムにより収集した古典的な疫学データに代わり得るかを検討することである。clfB および spa 遺伝子の組み合わせによる double-locus sequence typing(DLST 法)を用いて MRSA の遺伝子型を特定した。2005 年から 2006 年にスイス西部で分離された重複のない MRSA 分離株 1,268 株のタイピングを行った。897 株(71%)が 4 種類の優勢な遺伝子型、231 株(18%)が 55 種類の優勢ではない遺伝子型であり、140 株(11%)は単一の株であった。優勢ではない遺伝子型の分離株を保菌する患者 231 例のうち、明確な疫学的関連が認められたのは 106 例(46%)のみであり、分子サーベイランスにより特定されたクラスター数は古典的な疫学的関連が疑われたクラスター数の 2 倍であった。しかし、これらの分子的クラスターのすべてがヒトからヒトへの伝播であったことを示しているわけではない。したがって、分子タイピングは古典的な疫学データに代わり得るものではなく、補完的なものである。MRSA 遺伝子型の前向きサーベイランスは、病院環境や市中環境における新たなリスク因子や新たな流行性クローンの出現を把握するための疫学的追跡に有用であると考えられる。

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監訳者コメント

香港における spa タイピングを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播動態の研究

Studying the transmission dynamics of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in Hong Kong using spa typing

V.C.C. Cheng*, J.F.W. Chan, E.H.Y. Lau, W.C. Yama, S.K.Y. Ho, M.C.Y. Yau, E.Y.F. Tse, A.C.Y. Wong, J.W.M. Tai, S.T. Fan, P.L. Ho, K.Y. Yuen
*Queen Mary Hospital, Hong Kong Special Administrative Region, China

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 206-210


本研究では、300 床の 3 次紹介外科部門におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播動態を調査した。2008 年 10 月 1 日から 12 月 31 日に全成人患者を対象として、入院時および入院中の週 2 回、培養による MRSA の積極的スクリーニングを実施した。MRSA の spa 型ごとに、1,000 患者日あたりの保菌圧、および 1,000 保菌日あたりの MRSA 院内伝播発生率を算出した。合計で、2,289 例の患者から 6,619 件の鼻腔内スワブを採取した。入院時のスクリーニングにより鼻腔内スワブに MRSA が認められた患者は 148 例(7%)であったが、このうち 68 例(46%)は高齢者ケア施設入所者であった。2,141 例中 52 例(2%)は、鼻腔内の MRSA の保菌状態が入院中に陰性から陽性に転換した。MRSA 保菌患者合計 200 例中 99 例(50%)に spa 型 t1081、30 例(15%)に t037 が認められた。1,000 患者日あたりの保菌圧は、t1081では 40.9、t037 では 22.2、その他の頻度の低い spa 型では 26.3 であった。1,000 保菌日あたりの MRSA 院内伝播発生率は、t1081(28.5 対 4.0、P < 0.01)および t037(21.5 対 4.0、P = 0.03)はその他の頻度の低い spa 型と比較して有意に高かった。病院内の MRSA 制御には、高齢者ケア施設入所者に対する事前の MRSA スクリーニング、およびこれらの患者、特に感染性の高い spa 型を保菌する患者を対象とした隔離策が重要である。

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監訳者コメント


監訳者注
保菌圧(colonisation pressure):本論文での定義は、試験期間中の全患者日に対する、入院時に MRSA 陽性であった患者の患者日と入院中に陰性から陽性に転換した患者の患者日の合計の比率。


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症の感染源の動向:英国の MRSA 菌血症の全国的義務的サーベイランスのデータ(2006 ~ 2009 年)

Trends in sources of meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) bacteraemia: data from the national mandatory surveillance of MRSA bacteraemia in England, 2006-2009

J. Wilson*, R. Guy, S. Elgohari, E. Sheridan, J. Davies, T. Lamagni, A. Pearson
*Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 211-217


英国では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症の報告を目的とした全国的な義務的サーベイランスシステムに、2006 年以降に報告された菌血症の感染源に関するデータが記録されている。本研究の解析対象は、2006 年から 2009 年に感染源(その可能性も含む)が報告された MRSA 菌血症エピソード(4,404 例)である。感染源に関する情報を入手することができたのは、2009 年には報告された MRSA 菌血症エピソードの 3 分の 1 であった。このうち 20%は血管内デバイス、28%は皮膚軟部組織感染が感染源と考えられた。患者の 64%は男性であり、また男性は女性に比べて尿路感染症が MRSA 菌血症の原因である頻度が有意に高かった(12%対 3%)。市中獲得型 MRSA の症例は侵襲性の手技や器材と関連することが多いため、入院から 2 日以内に菌血症が検出された場合、市中獲得型 MRSA と病院感染型 MRSA を確実に判別することは不可能である。2006 年から 2009 年にかけて、中心静脈カテーテル(発生率比[IRR]0.42、95%信頼区間[CI]0.29 ~ 0.61、P < 0.001)、末梢血管カテーテル(IRR 0.69、95%CI 0.48 ~ 0.99、P = 0.042)、および手術部位感染(IRR 0.42、95%CI 0.25 ~ 0.72、P = 0.001)に関連する MRSA 菌血症エピソードの割合が有意に低下し、皮膚軟部組織感染(IRR 1.33、95%CI 1.05 ~ 1.69、P = 0.017)と関連のある、および検体の汚染(IRR 1.96、95%CI 1.25 ~ 3.06、P = 0.003)が原因と考えられる MRSA 菌血症エピソードの割合が有意に増加した。すべての症例のデータを入手することはできなかったため、このような傾向を一般化できるかどうかは、感染源に関するデータの記録が毎年の症例の適切なランダムサンプルを反映しているという前提に依存する。英国では 2006 年以降、MRSA 菌血症の発生率が全般的に低下している中で、このような動向が生じている。

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監訳者コメント

血液透析患者の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血流感染症に関する 12 年間の調査:さらなる研究の必要性

A 12-year review of Staphylococcus aureus bloodstream infections in haemodialysis patients: more work to be done

S.F. FitzGerald*, J. O’Gormana, M.M. Morris-Downes, R.K. Crowley, S. Donlon, R. Bajwa, E.G. Smyth, F. Fitzpatrick, P.J. Conlon, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 218-221


黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血流感染症(BSI)は、血液透析患者の疾患および死亡の重要な原因である。本研究では、3 次紹介病院の大規模な血液透析施設で実施された、黄色ブドウ球菌 BSI の 12 年間の後向き調査について報告する。全体の黄色ブドウ球菌 BSI 発生率は、100 患者年あたり 17.9(範囲 9.7 ~ 36.8)であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)BSI 発生率は、100 患者年あたり 5.6(範囲 0.9 ~ 13.8)であった。黄色ブドウ球菌 BSI の全エピソードのうち 11%に感染性合併症が発生し、最も頻度が高いのは感染性心内膜炎であった(7.6%)。黄色ブドウ球菌が血液中から分離されてから 30 日以内に死亡した患者は 10%であった。大半の黄色ブドウ球菌 BSI 症例(83%)は血管カテーテルと関連していた。すべての血液透析部門は、動静脈瘻のような低リスクの血管アクセスを用い、血管内カテーテルの使用を減らすことを優先すべきである。この脆弱な患者群の疾患および死亡の減少を図るため、代替血管アクセスを確保できない場合は、カテーテル関連感染症のリスク低下のための介入を実施すべきである。

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監訳者コメント

集中治療室入室患者のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌に対する抗菌薬全身投与およびクロルヘキシジン局所使用の影響

Effect of systemic antibiotics and topical chlorhexidine on meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in intensive care unit patients

T. Kypraios*, P.D. O’Neill, D.E. Jones, J. Ware, R. Batra, J.D. Edgeworth, B.S. Cooper
*University of Nottingham, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 222-226


抗菌薬および生体消毒薬はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌および伝播に影響を及ぼす可能性があるが、その効果は複合的であり、特に複数の薬剤が使用されている場合に顕著である。本研究の目的は、MRSA を保菌している集中治療室(ICU)入室患者 544 例の入院時と週 1 回の MRSA スクリーニング結果、および抗菌薬と消毒薬の連日の処方データを用いて、これらの薬剤が患者の MRSA 保菌の短期的動態に及ぼす影響を明らかにすることであった。患者の MRSA 陽性(MRSA 保菌の検出あり)と MRSA 陰性(保菌の検出なし)の 2 つの保菌状況間の移行を評価する Markov モデルを使用して、時系列データを解析した。抗菌薬全身投与およびクロルヘキシジン局所使用の同時併用が、これらの 2 つの保菌状況間の移行に及ぼす影響を評価した。スクリーニングにより MRSA 保菌が確認された部位へのクロルヘキシジンの使用により、培養陽性から陰性への移行が増加するとともに、その後の陰性から陽性への復帰もエビデンスは弱いながら減少した。一方、抗菌薬の場合はいずれの種類であっても、 2 つの状況間の移行に影響するというエビデンスはどちらの方向の移行についても弱く、また一貫していなかった。例えば、単変量解析によりキノロン系抗菌薬が 1 日の時間内での MRSA 保菌の陰性化リスクおよびその後の再陽性化リスクの増大と強く関連していることが示されたが、週単位のモデルではこのような効果はみられなかった。これらの知見の一般化が可能であるかどうかを明らかにするためには、同様の試験が必要である。

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監訳者コメント

病院環境表面からのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の各種採取方法の評価

Evaluation of different methods to recover meticillin-resistant Staphylococcus aureus from hospital environmental surfaces

A. Dolan*, M. Bartlett, B. McEntee, E. Creamer, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 227-230


環境は医療関連感染の感染源に関与しており、エビデンスに基づく環境サンプル採取方法が、清潔度の評価および感染予防・制御の改善のために求められている。著者らは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を対象とした環境サンプル採取の各種方法の評価を in vitro で実施した。室内研究により、2 種類の一般的な病院環境からの MRSA 採取について、MRSA の野生型株を用いて 6 種類のサンプル採取法を評価した。マットレスおよび室内のベンチの各表面 100 cm2 に、既知量の MRSA を接種して汚染させた。接種 30 分後に、生理食塩液含浸綿スワブ、中和緩衝液含浸スワブ、eSwab、またはマクロフォームスワブ(いずれもトリプトンソーヤブイヨン中で培養)により、あるいは直接接触平板培地または chromogenic ‘sweep’ plate により菌を採取した。各表面に対する各種採取方法の感度(すなわち、表面に接種された細菌数のうち、陽性と判定された最小値)を算出した。最も感度の高い方法は eSwab とマクロフォームスワブであり、ベンチ表面から陽性判定を得るためには、それぞれ 6.1 × 10-1 MRSA/cm2、3.9 × 10-1 MRSA/cm2 を必要とした。最も感度の低いスワブ法は生理食塩液含浸綿スワブであり、マットレス表面で 1.1 × 103 MRSA/cm2 を必要とした。環境サンプルからの細菌採取は使用したスワブや方法によりばらつきがあり、培養判定陰性であっても必ずしも病原菌のない環境ではない。医療環境の清潔度の評価を強化するために、より高度の標準化が必要である。

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監訳者コメント

病院疫学の支援のための既存の医療データベース間のデータ統合

Data linkage between existing healthcare databases to support hospital epidemiology

L. García Álvarez*, P. Aylina, J. Tian, C. King, M. Catchpole, S. Hassall, K. Whittaker-Axon, A. Holmes
*National Centre for Infection Prevention and Management, Imperial College, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 231-235


急性期病院内の既存のデータセットの利用拡大を図ることにより、病院疫学やサーベイランス、各種プロセス・アウトカム・リスク因子のモニタリング、アラートシステム構築などが大きく推進されると考えられる。英国の国民保健サービス(NHS)病院内には重複のある複数のデータシステムが存在しており、統合や連携が行われていないため多くのデータが重複して記録されている。このため、病院で収集されたデータは効率的に利用されていない。本研究の目的は、管理、経営、人材、微生物、診療やその他のプラットフォームなど、既存の全データシステムのリストを作成し、病院の疫学部門に対して有用な情報提供が可能となるデータ構成について論じることである。これらのデータセットをいかに活用し、サーベイランスデータ、重要な成績指標、およびリスク情報を得るか、またこれらを委員会、臨床プログラムグループ、専門科、および病棟レベルで共有できるものとするかを検討した。この統合データプラットフォームのアウトプット例を示すとともに、弾力的なインフルエンザ対策と即応性の実践について述べる。スタッフの欠勤・配置レベルの基準を設定することにより、感染予防のためのリスクモニタリングの重要な指標としての利用も可能であると考えられる。本研究は、このようなデータのリスト化・統合の意義、既存の NHS データのさらに高度な利用の重要性、および診療、質改善、サーベイランス、緊急時の計画作成と調査を支援するための革新的な協調的手法の重要性を示すものである。

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監訳者コメント
電子カルテ等の導入により医療資源の多くの情報はデーターベース化されているにもかかわらず、それらを疫学や医療の改善に役立てる取り組みは今後の課題である。

心臓手術患者の中心静脈カテーテル関連感染後の手術部位感染症:患者コホート 7,557 例の解析

Surgical site infection after central venous catheter-related infection in cardiac surgery. Analysis of a cohort of 7557 patients

V. Le Guillou*, M.-P. Tavolacci, J.-M. Baste, C. Hubscher, E. Bedoit, J.-P. Bessou, P.-Y. Litzler
*Rouen University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 236-241


本研究の目的は、手術部位感染症(SSI)の発生と中心静脈カテーテル関連感染の存在との関連を明らかにすることである。ルーアンの大学病院の胸部心血管外科では、1997 年以降、すべての院内感染(肺炎、SSI、中心静脈カテーテル関連感染を含む)について前向きの疫学調査を行っている。1997 年から 2007 年の 10 年間に心臓手術を受けた一連のすべての症例を研究対象集団とした。コホート内症例対象研究により、SSI および中心静脈カテーテル関連感染のリスク因子を特定した。症例は中心静脈カテーテル関連感染後に SSI を発症した患者とし、対照は中心静脈カテーテル関連感染後に SSI を発症しなかった患者から無作為に選択した。合計で 7,557 例の患者を登録し、133 例(1.7%)に SSI が確認された。このうち表在性 SSI は 0.7%(95%信頼区間[CI]0.5% ~ 0.9%)、縦隔炎は 1.0%(95%CI 0.8% ~ 1.2%)であった。SSI 症例 133 例中 12 例(9.0%、95%CI 5.0% ~ 14.8%)は、中心静脈カテーテル関連感染後に同一の微生物により発症した。中心静脈カテーテル関連感染(補正オッズ比[aOR]5.2、95%CI 3.2 ~ 8.5)、冠動脈バイパス術(aOR 2.9、95%CI 1.6 ~ 5.2)、および肥満(aOR 11.4、95%CI 1.0 ~ 130.1)が、SSI と関連する独立因子であった。本研究の新たな知見として、中心静脈カテーテル関連感染を有する患者のSSI 発症率は、有していない患者と比較して 5.2 倍であった。

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監訳者コメント
手術部位感染症(SSI)の発生と中心静脈カテーテル関連感染の関係を疫学調査した論文であるが、肥満や冠動脈バイパス術がエントリーされているため、高血糖などの別なリスク因子の検討が必要である。

血管外科部門における高度クリンダマイシン耐性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)PCR リボタイプ 106 による下痢のアウトブレイクの制御

Control of an outbreak of diarrhoea in a vascular surgery unit caused by a high-level clindamycin-resistant Clostridium difficile PCR ribotype 106

L. Ratnayake*, J. McEwen, N. Henderson, D. Nathwani, G. Phillips, D. Brown, J. Coia
*Ninewells Hospital, NHS Tayside, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 242-247


本稿では、2009 年に血管外科病棟で発生した高度クリンダマイシン耐性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)リボタイプ 106 による C. difficile 感染症アウトブレイクについて報告する。C. difficile 感染症症例の定義は、下痢を発現し、C. difficile 毒素陽性かつ他の腸内病原菌陰性の患者とした。培養した菌を Scottish Salmonella Shigella and Clostridium difficile Reference Laboratory(SSSCDRL)に送付し、PCR リボタイピング、抗菌薬感受性検査、および PCR による ermB 検出を行った。患者 9 例の平均年齢は 73 歳(範囲 38 ~ 90 歳)であった。全例がクリンダマイシンとシプロフロキサシンの投与を受けていた。全例が PCR リボタイプ 106 に分類され、高度クリンダマイシン耐性を示した。これらの分離株のうち 5 株については、PCR による ermB 遺伝子検査では増幅は認められなかった。この菌株は、この病棟の患者からはこれまでほとんど分離されていなかった。病棟閉鎖中の最終清掃、感染制御・予防策の強化、および新しい抗菌薬指針の導入により、アウトブレイクの制御を達成した。特記すべき点は、このアウトブレイクは ermB が関与しない高度クリンダマイシン耐性株によって引き起こされたことである。さらにこのアウトブレイクからは、C. difficile 感染症のアウトブレイクは PCR リボタイプ 027 以外のリボタイプによって生じ得ることがあらためて強調される。このアウトブレイクは、クリンダマイシンとシプロフロキサシンの使用、および本環境中での芽胞による交差感染と関連している可能性が高い。厳格な感染制御・予防策の実施、抗菌薬の適正使用、および環境清掃の強化は、このようなアウトブレイクの管理を達成するための主要な要素である。これらの介入後は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)の獲得数も大幅に減少した。

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監訳者コメント
特徴的な C. difficile による施設内アウトブレイクの報告である。

整形外科感染症におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌のメチシリン耐性

Meticillin resistance in orthopaedic coagulase-negative staphylococcal infections

I. Uçkay*, S. Harbarth, T. Ferry, A. Lübbeke, S. Emonet, P. Hoffmeyer, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 248-253


コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)やメチシリン耐性株による整形外科感染症は増加していると考えられる。CoNSに感染した整形外科患者を対象として、1995 年 1 月から 2007 年 12 月に 13 年間の後向きコホート研究を実施し、CoNS感染症の長期的傾向およびメチシリン耐性に関連する因子を評価した。CoNS感染症 60 件中 57 件(95%)はインプラントと関連していた。治療終了後の追跡期間中央値は、5.1 年(2.4 ~ 13.8 年)であった。研究期間中に実施された整形外科的処置は 44,237 件で、このうちインプラントは 21,299 件(48%)であった。CoNS関連感染症の累積発生率は、全処置では 0.14%、インプラント関連処置では 0.28%であった。CoNS関連感染症の発生数および累積発生率には有意な変動はみられなかった(カイ二乗検定による傾向検定 P = 0.45 および 0.97)。メチシリン耐性株による感染は 45 件(75%)であった。メチシリン耐性菌の割合は長期間一定であった(傾向検定 P = 0.65)。メチシリン感性株 15 件のうち、原因菌に対する術前予防投与が実施されていたのは 4 件と少なかったが、メチシリン耐性株 45 件中 28 件には不十分な予防投与が行われていた(P = 0.03)。当施設におけるCoNSによる整形外科感染症の累積発生率は低く、また一定であり、ほとんどがインプラントのみと関連していた。過去 10 年間のCoNSにおけるメチシリン耐性株の割合は一定であり、臨床転帰は良好であった。

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監訳者コメント
我が国の病院分離コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)の8割以上がすでにメチシリン耐性であり、こうした情況を踏まえ我が国でも長期入院例で整形外科的治療を行う際には注意が必要である。

ナーシングホームの高齢者 44,869 名における感染症の負荷:全国的な横断的クラスターサーベイ

Burden of infections among 44,869 elderly in nursing homes: a cross-sectional cluster nationwide survey

K. Chami*, G. Gavazzi, F. Carrat, B. de Wazières, B. Lejeune, F. Piette, M. Rothan-Tondeur
*Charles-Foix University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 254-259


フランスには高齢者用のナーシングホームが 445,000 床あるが、ナーシングホームにおける感染症の負荷に関する研究の発表論文はない。本研究の目的は、入居者の感染症有病率を推計するとともに、感染症と入居者のリスク因子との関連の程度を評価することである。1 か月を 1 期間として 5 期間にわたる全国的な多施設横断的クラスターサーベイにより有病率を調査した。感染症例を「確定例」と、臨床検査による確認のない「ほぼ確実例」に分類した。578 の参加施設の入居者合計 44,869 名を調査対象として登録した。感染症有病率は全体で 11.23%(95%信頼区間[CI]10.50 ~ 11.97)であり、調査期間(調査が実施された年)の間に有意差がみられた(P < 0.001)。「確定例」は 4.60%(95%CI 4.04 ~ 5.54)、「ほぼ確実例」は 6.63%(95%CI 5.77 ~ 7.98)であった。気道感染症が最も頻度が高く、全感染症の 41%を占めていた。感染症と、年齢、入居期間、自立性障害、尿路デバイス、褥瘡、および調査期間との間に有意な関連がみられた。この脆弱な集団に対する感染症の影響を軽減できるのは、予防プログラムのみであると考えられる。

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監訳者コメント
米国CDCでも同様に、ナーシングホームにおける感染症発生の実態調査に興味を持って今後の課題としている。

欧州の医療関連感染症の予防・制御のためのコンセンサス標準・成績評価指標

Consensus standards and performance indicators for prevention and control of healthcare-associated infection in Europe

B. Cookson*, D. Mackenzie, A.P. Coutinho, I. Russell, J. Fabry
*Microbiological Services Colindale, Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 260-264


医療関連感染症とこれに関連する抗菌薬耐性の問題は、医療の提供、患者、患者の家族や介護者、および経済にとっての大きな負担となっている。かつては重要視されていなかったが、現在では患者の安全にとって大きな問題であることが世界的に認識されている。欧州連合保健・消費者保護総局(European Union’s Directorate General for Health and Consumer Protection)は、医療関連感染症の予防・制御により患者の安全を改善する方策に関する公聴会を開催し、抗菌薬の管理基準を強化した。さらに同局は、資金を拠出している「欧州における患者安全の改善」研究プロジェクトに対して、医療関連感染症と抗菌薬耐性の予防・制御のためのコンセンサス標準と、これに関連する成績評価指標を作成することを求めた。本稿では、参加した欧州 29 か国が合意に到達するまでの経緯、コンセンサス標準・成績評価指標の詳細、世界的・全国的に使用できる医療関連感染症の予防・制御の改善を促進・評価するための簡易指標セット(「13 + 13」)、および抗菌薬管理のための活動について述べる。

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監訳者コメント
経済統合は医療関連感染対策も重要な課題と考え、共通認識のプラットフォームを持とうとしている。

シリンジ内の細菌増殖に対する薬剤の影響

Impact of medications on bacterial growth in syringes

M. Kerenyi*, Z. Borza, C. Csontos, B. Ittzes, I. Batai
*University of Pecs, Hungary

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 265-266


集中治療室で静脈内投与に使用されたシリンジを培養し、その分離株を当該患者の陽性血液培養からの分離株と比較した。全体の汚染率は 16%であり、インスリンなどの細菌増殖を促進する薬剤に使用されたシリンジは、汚染率がより高かった。すべてのシリンジはルーチンに 6 時間後に交換すべきである。

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監訳者コメント
古典的な検討である。使用後の注射器材は単回使用として速やかに廃棄するべきである。

イミペネム、レボフロキサシン、またはゲンタマイシン耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)菌血症のリスク因子

Risk factors for bacteraemia attributable to Pseudomonas aeruginosa resistant to imipenem, levofloxacin, or gentamicin

S. Mikura*, H. Wada, M. Okazaki, M. Nakamura, K. Honda, T. Yasutake, M. Higaka, H. Ishii, T. Watanabe, T. Tsunoda, H. Goto
*Kyorin University School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 267-268


日本の入院患者 175 例の血液培養から分離された緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のイミペネム、レボフロキサシン、およびゲンタマイシン耐性に関連するリスク因子について検討した。イミペネム耐性は他院からの転院および抗真菌薬投与と関連していた。ゲンタマイシン耐性はペニシリン投与歴と関連していた。レボフロキサシン耐性に関連する特異的なリスク因子は認められなかった。

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監訳者コメント
日本からの論文投稿である。個々の抗菌薬別にリスク因子の検討をしている知見が新しい。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)流行株-16の減少

Decline and fall of epidemic meticillin-resistant Staphylococcus aureus-16

G. Gopal Rao*, A.M. Kearns, G.F.S. Edwards
*North West London Hospitals, UK

Journal of Hospital Infection (2011) 79, 269-270


英国全域や他の世界各国に拡大したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)流行株-16 は、ここ数年で顕著な減少がみられる。その理由は不明である。

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監訳者コメント
英国ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌流行株(EMRSA)に序数が付いており、全国的に疫学調査を行っている。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.