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トイレ水洗後のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のエアロゾル化の可能性:環境汚染リスク低下に対するトイレの蓋の意義

Potential for aerosolization of Clostridium difficile after flushing toilets: the role of toilet lids in reducing environmental contamination risk

E.L. Best*, J.A.T. Sandoe, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 1-5


背景
医療施設のトイレ設備は多様であるが、患者のトイレは一般に共用であり、蓋はない。蓋を閉めずにトイレの水を流すと、エアロゾルが発生してトイレ環境の表面汚染が生じる可能性がある。

目的
トイレ水洗後の、特に蓋を閉めない場合のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の空気伝播リスクを明らかにすること。

方法
疾患時の細菌量をシミュレートした C. difficile の便懸濁液を用いて医療施設のトイレ内で実験を行い、C. difficile のエアロゾル化を測定した。さらに、病院で一般に使用されている 2 種類のトイレで、水洗中に発生する飛沫量を測定した。

結果
トイレの便座から最大 25 cm の高さで採取した空気サンプルから C. difficile が回収された。空気サンプルから回収された C. difficile 数は水洗直後が最も多く、60 分後は 8 分の 1、その 90 分後はさらに 3 分の 1 に減少した。C. difficile による表面汚染は水洗後 90 分以内に生じたことから、比較的大型の飛沫が放出され、近接環境を汚染したことが示唆された。臨床区域の蓋のないトイレでの水洗時に放出された平均飛沫数は、トイレの種類により 15 ~ 47 個であった。C. difficile のエアロゾル化と周囲環境の汚染は、蓋のないトイレでの水洗時に発生した。

結論
蓋のない従来型のトイレでは、C. difficile による環境汚染リスクが高く、特に C. difficile 感染症が多い環境では、このようなトイレの使用を避けることを推奨する。

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監訳者コメント
トイレの便器の蓋に着目した研究であるが、蓋あり、蓋なしでの臨床研究も必要そうである。

小児の医療関連感染の動向:イタリアの研究病院における年次有病率調査、2007 ~ 2010 年

Trend of healthcare-associated infections in children: annual prevalence surveys in a research hospital in Italy, 2007-2010

M.L. Ciofi degli Atti*, M. Cuttini, L. Ravà, J. Ceradini, V. Paolini, G. Ciliento, M. Pomponi, M. Raponi
*Bambino Gesù Children’s Hospital, Italy

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 6-12


背景
2007 年から 2010 年に、イタリアで最大規模の 3 次小児病院で医療関連感染(HAI)の年次有病率調査が実施された。この期間中に、強化隔離策、侵襲的処置に関するケアバンドルの適用、世界保健機関(WHO)の多面的戦略を用いた手指衛生の促進、および適切な抗菌薬使用の促進など、HAI 予防の改善のための措置が講じられた。

目的
HAI 率に対するこれらの対策の効果を明らかにすること。

方法
合計 1,506 例の患者を調査対象とした。患者の人口統計学的特性、人工呼吸器の使用、調査前 48 時間以内の中心ラインおよび尿路カテーテルの留置、および調査前 30 日以内の手術に関する情報をカルテから抽出した。HAI の種類と発症日、および微生物学的データを記録した。単変量および多変量ロジスティック解析を用いて、HAI 率の経時的変動、および HAI リスクに対する病棟の種類と患者の特性の影響を評価した。

結果
HAI 有病率(7.6%から 4.3%へ)、および全 HAI 有病者数の割合(100 例あたり 8.6 件から 4.3 件へ)は有意に低下した(P < 0.001)。HAI リスクの上昇と独立して関連する因子は、集中治療室への入室、30 日を超える入院、侵襲的器材の使用、および年齢が 6 ~ 11 歳であることであった。

結論
本研究の HAI 予防戦略は、入院中の小児の感染を減少させるうえで効果的であった。定期的な有病率調査は、HAI の頻度のモニタリング、医療従事者の認識の向上、および効果的な感染制御の確立のための効果的なツールである。

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監訳者コメント
我が国での小児医療に特化した感染サーベイランスのベンチマークはまだなく、こうした取り組みは参考になる。

従来の質問票および電子質問票を用いた小児患者に対する病院関連感染に関する退院後追跡調査

Post-discharge follow-up of hospital-associated infections in paediatric patients with conventional questionnaires and electronic surveillance

S. Kinnula*, M. Renko, T. Tapiainen, T. Pokka, M. Uhari
*University of Oulu, Finland

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 13-16


背景
ウイルス感染は小児患者における病院関連感染(HAI)の原因として高い頻度で認められ、その多くは退院後に判明する。

目的
HAI に関する追跡調査の方法として、従来の調査法と電子的調査法の有益性と費用を分析すること。

方法
回答率、患児 1 例に要する時間、および医療施設に要した費用を、従来の調査法と電子的調査法(ショートメール、電子メール、電話)とで比較した。

結果
2001 年から 2003 年に合計 1,927 例が従来の追跡調査に参加し、このうち 1,175 例(61%)が質問票に回答した。2005 年から 2007 年の電子的調査の期間中に 2,309 例が病院内で調査を受け、このうち 1,940 例(84%)が退院後の情報について回答した。医療従事者が患児 1 例あたりに要した時間は、従来の追跡調査では 33 分、電子的追跡調査では 13 分であり、患児 1 例あたりの総費用はそれぞれ 15.07 ユーロ、13.61 ユーロであった。電子的追跡調査では、毎年の費用の削減率は 17.1%に達した。HAI 発生率は、従来の調査を行った期間では 8.4%、電子的調査を行った期間では 12.2%であり、大半の症例では退院後に症状が発現した。

結論
電子的なデータ収集は、HAI の継続的な追跡調査のための簡便な方法であり、回答率が高く費用も安価であった。

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監訳者コメント
電子サーベイランスの経済的効果をうたっているが、デジタルデバイダー対策はどうしているのだろうか? 携帯電話や電子 pad の普及とともに、こうした手法は今後主流となるだろう。

小児の病院感染:小児病院 3 施設における前向き退院後追跡調査

Hospital-associated infections in children: a prospective post-discharge follow-up survey in three different paediatric hospitals

S. Kinnula*, M. Buettcher, T. Tapiainen, M. Renko, K. Vepsäläinen, R. Lantto, U. Heininger, M. Uhari
*University of Oulu, Finland

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 17-24


背景
小児科病棟および小児病院に入院中の小児におけるウイルス性病院感染(HAI)の発生率は、1%から 24%の範囲と報告されている。このようなばらつきの原因は不明である。

目的
小児病院 3 施設のウイルス性 HAI の発生率およびリスク因子を評価すること。

方法
フィンランドおよびスイスの感染症病棟 1 施設と一般小児病棟 3 施設で、2 年間にわたりデータを前向きに収集した。入院中および退院後 1 週間の感染を記録した。多変量ロジスティック回帰分析により、各病棟のそれぞれの HAI のリスク因子を調べた。

結果
合計 5,119 例が入院した。HAI の全発生率は 12.2%であり、患児の 2.4%は病院内で HAI を発症し(最も頻度が高いのは胃腸炎)、9.8%(95%信頼区間[CI]8.9% ~ 10.8%)は退院後 72 時間以内に発症した。HAI 発生率は病棟によって 5.8%から 17.1%とばらつきがあり、その頻度は、相部屋が多く、ウイルス性の感染症を対象とした積極的なコホーティングを実施していない一般小児病棟で最も高かった。相部屋(オッズ比[OR]5.45、95%CI 2.44 ~ 12.2、乳児を対象とした一般小児病棟)、長期の入院(1 日あたりのOR 1.42、95%CI 1.20 ~ 1.67、感染症病棟)、および低年齢(1 歳あたりの OR 0.71、95%CI 0.51 ~ 0.98、1 歳以上の小児を対象とした一般小児病棟)では、入院中の HAI リスクが高かった。

結論
小児病棟におけるウイルス性 HAI の多くは退院後に発症していた。個室病床は HAI 予防、特に呼吸器系ウイルス伝播の予防に効果的であると考えられた。また、感染症に罹患した患児の別室へのコホーティングも有益と考えられた。

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監訳者コメント
小児病棟に入院したことに、これら感染症が起因していたのかどうかの評価方法はどうしているのだろうか?

リトアニアにおける医療関連感染症有病率

Prevalence of healthcare-associated infections in Lithuania

R. Valinteliene*, G. Gailiene, A. Berzanskyte
*Institute of Hygiene, Lithuania

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 25-30


目的
リトアニアの急性期病院の半数で 2003 年、2005 年、および 2007 年に実施された、医療関連感染症(HCAI)の点有病率調査を比較すること。

結果
HCAI 有病率は 2003 年から 2007 年にかけてわずかに低下した(4.3%から 3.4%へ)。集中治療室、外科病棟、および小児病棟では調査ごとに有病率が低下したが、リハビリテーション・介護病棟では上昇した。下気道感染症の割合は増加したが、(26.3%から 32.3%へ)尿路感染症(11.6%から 6.7%へ)と血流感染症(8.9%から 2.3%へ)の割合は減少した。微生物学的検査を受けた HCAI 症例の割合は 2003 年から 2007 年にかけて減少した(56.0%から 41.0%へ、P < 0.02)。HCAI 症例の起因菌としては、グラム陽性菌の割合が高かった。患者の約 3 分の 1 は、ペニシリン系、広域スペクトルペニシリン系、第一および第二世代セファロスポリン系、およびアミノグリコシド系などの抗菌薬療法を受けていた(2003 年 31.1%、2005 年 29.3%、2007 年 32.1%)。

結論
反復的調査により HCAI の有病率、リスク因子、および抗菌薬使用の経時的変化が明らかとなった。これらの調査により、リトアニアでは感染制御が優先的事項となり、全国的な HCAI サーベイランスシステムが変更された。

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監訳者コメント
感染サーベイランスにおける耐性菌の検出状況は国ごとに異なるため、それぞれの国でのローカルなデータを参考にする必要がある。また、特徴的な抗菌薬消費により耐性傾向が変化する場合も多く、他の国での状況は将来的な予測に役立つ。

急性期ケアにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のユニバーサルスクリーニング:多施設共同研究から判明したリスク因子とアウトカム

Universal screening for meticillin-resistant Staphylococcus aureus in acute care: risk factors and outcome from a multicentre study

J.S. Reilly*, S. Stewart, P. Christie, G.M. Allardice, T. Stari, A. Matheson, R. Masterton, I.M. Gould, C. Williams
*Health Protection Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 31-35


背景
スコットランドでは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のスクリーニングの有効性に関する医療技術評価(HTA)モデルに基づき、発色酵素基質寒天培地を用いたユニバーサルスクリーニングが有効性と費用の点で望ましい選択肢であることが示唆されている。

目的
1 年間のパイロット研究により、このモデルの妥当性を検証すること。

方法
国民保健サービス(NHS)スコットランドの急性期病院 6 施設において、入院 81,438 件を対象とした 1 年間にわたる MRSA スクリーニングの大規模前向きコホート研究を実施した。アウトカム(MRSA の保菌率および感染率)の多変量解析を行い、スクリーニング実施前後の動向を比較した。

結果
保菌率は、当初は 5.5%であったが 12 か月後は 3.5%に低下した(P < 0.0001)。保菌は、患者 1 例あたりの入院回数、入院した診療科、年齢、および入院前の滞在場所(自宅、他の病院、または介護施設)と関連していた。MRSA 感染歴または保菌歴のない患者の全入院事例における検査陽性率は約 2%であった。入院時スクリーニング陰性患者と比較した感染症発症率は、入院時スクリーニング陽性かつ過去に陽性歴がない患者では 12 倍、入院時スクリーニング陽性かつ過去に陽性歴がある患者では 18 倍であった。1 年間の研究期間中に MRSA 感染症も有意に減少した(全体で 1,000 入院患者日あたり 7.5 件、P = 0.0209)。

結論
本研究で特定された MRSA 保菌および感染のリスク因子から、全患者を対象とした臨床的リスク評価がMRSA のスクリーニングに有用である可能性が示唆される。

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監訳者コメント
積極的な監視培養を全患者に対して実施して、すり抜けをなくすことによる感染予防効果を証明したものである。我が国での同様なトライアルが望まれる。

抗菌薬耐性菌発生率が低いノルウェーにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、2006 ~ 2010 年

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus in Norway, a low-incidence country, 2006-2010

P. Elstrøm*, O. Kacelnik, T. Bruun, B. Iversen, S.H. Hauge, P. Aavitsland
*Norwegian Institute of Public Health, Norway

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 36-40


背景
抗菌薬耐性は世界的な公衆衛生上の脅威である。ノルウェーでは耐性菌の発生率は、医療施設と市中のいずれにおいても低レベルに維持されている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の単一症例とアウトブレイクはともに報告が義務化されており、すべての分離株の遺伝子型判定が行わている。

目的
ノルウェーにおける MRSA の疫学について述べるとともに、発生率が低い国で MRSA がどのように伝播しているかを解析すること。

方法
ノルウェーで 2006 年から 2010 年に報告された MRSA 保菌・感染の検査確認例の全症例を対象として、疫学的解析を実施した。

結果
合計 3,620 例の MRSA 症例が特定された。このうち約 3 分の 1 は海外から持ち込まれたものであり、3 分の 1 は国内の医療施設、残りの 3 分の 1 は市中で感染したものであった。症例の 12%は既知のアウトブレイクと関連があった。保菌・感染患者の全発生数は徐々に増加していた。重度の感染症の症例数は年間約 20 例で安定しており、医療関連感染による MRSA 症例の割合は減少していた。

結論
MRSA はノルウェーの住人には現在もまれにしかみられず、病院や介護施設の細菌叢内での MRSA の常在化を予防するための戦略は妥当である。

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監訳者コメント
輸入感染症としての MRSA の位置づけがノルウェーでは明確化している。我が国とは分離頻度があまりにも違うが、こうした世界各国の耐性菌事情から学べるとこは多い。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の過酸化水素蒸気抵抗性は市販のゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)のバイオロジカルインジケータよりも強い★★

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus is more resistant to vaporized hydrogen peroxide than commercial Geobacillus stearothermophilus biological indicators

T. Pottage*, S. Macken, J.T. Walker, A.M. Bennett
*Health Protection Agency, Microbiology Services, Porton Down, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 41-45


背景
病院の隔離室の汚染除去に過酸化水素蒸気(VHP)が使用されることが多くなっている。汚染除去の有効性を評価するために、市販のバイオロジカルインジケータが使用されており、最も一般的なものはゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)芽胞である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)などの黄色ブドウ球菌はカタラーゼを産生して VHP を分解するため、汚染除去に対して抵抗性となっている可能性がある。

目的
本研究のデザインは、MRSA の VHP 抵抗性を、市販の芽胞のバイオロジカルインジケータと比較評価することを目的とした。

方法
MRSA(NCTC 13142)を市販のG. stearothermophilus(ATCC 7953)のインジケータ(芽胞約 3.1 × 106 個)と同じ負荷量に調製してステンレススチールの試験片に接種し、それぞれの試験片を VHP サイクル(750 ppm)に曝露した。曝露中の所定の時点で各細菌を含む試験片を取り出し、処理と計数を行い、生残数を比較した。

結果
曝露後に試験片から回収された MRSA 数は G. stearothermophilus 芽胞と比較して 1.5 ~ 3.5 log10 多かった(P < 0.05)。このような強い抵抗性は、過酸化水素を分解するカタラーゼを産生することにより、VHP 効果が低下したためと考えられる。

結論
これらの結果は、市販のバイオロジカルインジケータで達成された減少が必ずしも他の微生物に当てはまらないことを示している。気体による汚染除去は汚染除去プロセスの最終段階であり、曝露した微生物の負荷を減少させるためには事前に表面の清掃を実施すべきであることを認識する必要がある。

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監訳者コメント
カタラーゼを産生して VHP を分解するため、汚染除去に対して抵抗性となっている可能性があるとは、何とも意外な推論である。そうなると殺菌効果については主要病原菌を対象に幅広く検定する必要がある。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の感染性不活化に対する蒸気滅菌の効果はわずかである

Limited efficacy of steam sterilization to inactivate vCJD infectivity

K. Fernie*, S. Hamilton, R.A. Somerville
*University of Edinburgh, Easter Bush, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 46-51


背景
プリオンとして知られる伝達性海綿状脳症(TSE)の原因物質は、一般的な滅菌方法、特に蒸気滅菌(すなわちオートクレーブ)に抵抗性を示すことから、牛海綿状脳症(BSE)がヒトに伝播して変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)を引き起こすことは、二次感染への懸念を招いている。手術器具やその他の医療器材には、洗浄・蒸気滅菌後も、次に使用する患者への感染性を有する感染組織が付着している可能性が指摘されている。

目的
vCJD に対する蒸気滅菌の効果はないという懸念が妥当であるかどうかを明らかにすること。

方法
vCJD の脳マセレートを英国の病院に推奨されているオートクレーブの標準温度・時間(134 ~ 137℃、3 分)で蒸気滅菌し、感染性の低下レベルを測定した。

結果
102.3 から 103.6 ID50 を超える力価の減少が認められた。4 サンプル中 3 サンプルは、蒸気滅菌後も感染性を有していた。

結論
既報と同様に、BSE 由来 TSE 株の蒸気滅菌やその他の熱不活化に対する抵抗性は、その他の TSE 株よりも強いと考えられた。

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監訳者コメント
やはりといったところだろうか。vCJD のやっかいさは噂通りである。

監訳者注:
脳マセレート(brain macerate):脳組織を水分などを加えずにすりつぶして試験材料としたもの。

最終清掃後の集中治療室の臨床環境表面における多剤耐性菌の生菌を含むバイオフィルムの存在

Presence of biofilm containing viable multiresistant organisms despite terminal cleaning on clinical surfaces in an intensive care unit

K. Vickery*, A. Deva, A. Jacombs, J. Allan, P. Valente, I.B. Gosbell
*Macquarie University, Australia

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 52-55


背景
近年は表面清掃や手指衛生プログラムの重要性が認識されているにもかかわらず、病院環境からの多剤耐性菌の分離は依然として続いている。菌体外高分子物質中に細菌を含むバイオフィルムは、洗浄剤や消毒薬に対する抵抗性が増大しているため除去が困難であり、感染源となり得る浮遊細菌を環境中に持続的に放出する。

目的
多剤耐性菌のリザーバが環境中にバイオフィルムとして存在しているかどうかを明らかにすること。

方法
集中治療室(ICU)の最終清掃後に器具や備え付けの備品を無菌的に取り出し、培養検査および走査型電子顕微鏡検査(SEM)を行った。サンプルをトリプトンソーヤブイヨン 5 mL 中に採取し、5 分間の超音波処理後、ウマ血液寒天、Brillance MRSA Agar、および Brilliance VRE Agar の各平板培地で培養した。SEM のサンプルは、3%グルタルアルデヒドとヘキサメチルジシラザン(HMDS)で固定し、金スパッタリング後に電子顕微鏡で観察した。

結果
滅菌材料容器、半透明のプラスチック製ドア、ブラインドのひも、およびシンクのゴム部にはバイオフィルムが視覚的に確認されたが、カーテンには菌体外高分子物質のみが認められた。3 か所のサンプル培養で生菌が増殖し、このうちブラインドのひもとカーテンからは MRSA の増殖がみられた。

結論
多剤耐性菌を含むバイオフィルムは最終清掃後にも ICU の臨床環境表面に残存しており、現行の清掃方法はバイオフィルム形成の制御には不十分であることが示唆される。バイオフィルム内に多剤耐性菌が保護されて存在することが、病院環境内に多剤耐性菌が残存する機序であると考えられる。

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監訳者コメント
要するに徹底した環境浄化が最終消毒には求められるということである。

乾燥表面上のアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の生存に対するバイオフィルム形成の影響

Effect of biofilm formation on the survival of Acinetobacter baumannii on dry surfaces

P. Espinal*, S. Martí, J. Vila
*University of Barcelona, Spain

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 56-60


背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、病院内の重大な病原体となりつつあり、環境内で長期間の生存が可能である。この細菌はバイオフィルム、すなわち細菌の集合体を内包する保護的な高分子マトリックスを形成することが知られている。

目的
A. baumannii によるバイオフィルム形成の影響が、病院環境中の本菌の生存と関連しているかどうかを明らかにすること。

方法
乾燥表面上の A. baumannii の生存に対するバイオフィルム形成の影響を調べるため、バイオフィルム形成株と非形成株を比較した。生存試験として、カバーガラス上に A. baumannii を接種し、規定の温度および相対湿度下で保存後、生菌数を計数した。

結果
バイオフィルム形成株の生存期間は非形成株よりも長かった(36 日対 15 日、P < 0.001)。走査型および透過型電子顕微鏡検査では、バイオフィルム形成株の菌体周囲に多糖層および付属器官が認められたが、非形成株にはみられなかった。

結論
バイオフィルム形成は乾燥表面上の A. baumannii の生存率を上昇させ、病院環境中の本菌の生存に寄与していると考えられることから、院内感染およびアウトブレイクの発生率を上昇させる可能性がある。

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シトラス系蒸気を用いたエンテロコッカス(Enterococcus)属菌および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による表面汚染およびバイオフィルムの低減

Reduction of surface contamination and biofilms of Enterococcus sp. and Staphylococcus aureus using a citrus-based vapour

K. Laird*, D. Armitage, C. Phillips
*De Montfort University, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 61-66


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)やバンコマイシン耐性エンテロコッカス(Enterococcus)属菌(VRE)などの抗菌薬耐性菌は現在、病院における問題となっている。エッセンシャルオイル蒸気によって、細菌による環境汚染が低減することが示されている。

目的
シトラス系ブレンドエッセンシャルオイル蒸気である Citri-V(オレンジとベルガモットの割合 1 対 1[v/v])(Belmay 社、ノーサンプトン、英国)によるステンレススチール表面からの Enterococcus 属菌および黄色ブドウ球菌の除去効果を評価し、これが細菌のバイオフィルム形成に及ぼす効果を検討すること。

方法
マイクロプレート法を用いて、シトラス蒸気がバイオフィルム形成およびその代謝活性に及ぼす効果を評価した。比色分析法およびデジタル顕微鏡検査により、ステンレススチール表面からのバイオフィルム除去能を測定した。

結果
ステンレススチール表面上の VRE および MRSA は、シトラス蒸気に 24 時間曝露後に 1.5 ~ 3 log10 減少した。黄色ブドウ球菌バイオフィルムは形成中および形成後の測定でいずれも減少したが、Enterococcus 属菌では形成後のみ有意な減少がみられた(P ≦ 0.05)。代謝活性は最大 72%低下した。二次元デジタル顕微鏡検査により、ステンレススチール製ディスクを覆っていたバイオフィルムが 99.5%減少したことが示された。

結論
シトラス蒸気は、VRE や MRSA による表面汚染の低減のための二次的な消毒薬などの用途で、臨床環境での使用が可能であると考えられる。

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過酸化水素蒸気、Citrox、および中性 Ecasol による密閉空間中の汚染除去の評価:パイロット研究

Evaluation of vaporized hydrogen peroxide, Citrox and pH neutral Ecasol for decontamination of an enclosed area: a pilot study

S. Galvin*, M. Boyle, R.J. Russell, D.C. Coleman, E. Creamer, J.P. O’Gara, D. Fitzgerald-Hughes, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 67-70


種々の院内病原菌に対する過酸化水素、Ecasol、および Citrox エアロゾルによる殺菌能の評価を行った。過酸化水素による殺菌作用が最も高レベルであったが、取り扱い上の問題があるため使用は限られる。Ecasol はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)を除くすべての細菌に対して有効であったが、Citrox エアロゾルはグラム陰性菌に対する有効性は認められなかった。

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ケニアの 3 次病院の医療従事者にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)鼻腔内保菌が予想外に認められない

Unexpected absence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus nasal carriage by healthcare workers in a tertiary hospital in Kenya

G. Omuse*, S. Kariuki, G. Revathi
*Aga Khan University Hospital Nairobi, Kenya

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 71-73


医療従事者はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の主要なリザーバである。2010 年 7 月から 12 月にナイロビの Aga Khan 大学病院で、MRSA 鼻腔内保菌率の調査のために横断研究を実施した。医療従事者 246 名を無作為に選択し、鼻腔内スワブを採取した。MRSA の同定は、表現型および遺伝子型の両解析法により行った。MRSA 保菌率は 0%(95%信頼区間[CI]0% ~ 1.5%)であったが、メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus)保菌率は 18.3%(95%CI 14.0% ~ 23.6%)であった。当院で MRSA が認められなかったことを考慮すると、医療従事者を対象としたスクリーニングはアウトブレイク時のみに実施すべきである。

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外傷病院の飲料水中のマイコバクテリウム・ムコゲニカム(Mycobacterium mucogenicum)およびその他の非結核性抗酸菌:ヒトへの感染源となる可能性

Mycobacterium mucogenicum and other non-tuberculous mycobacteria in potable water of a trauma hospital: a potential source for human infection

E. Fernandez-Rendon*, J.F. Cerna-Cortes, M.A. Ramirez-Medina, A.C. Helguera-Repetto, S. Rivera-Gutierrez, T. Estrada-Garcia, J.A. Gonzalez-y-Merchand
*Escuela Nacional de Ciencias Biologicas-IPN, Mexico

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 74-76


本研究では、メキシコシティーの中核的な外傷病院の飲料水サンプルからの非結核性抗酸菌(NTM)検出頻度を調べた。貯水槽、キッチンの水栓、および浴室のシャワーから各 23 件、合計 69 件の飲料水サンプルを採取した。69 件中 36 件に NTM が認められた。分離株 36 株の内訳は、マイコバクテリウム・ムコゲニカム(Mycobacterium mucogenicum)29 株、マイコバクテリウム・ローデシアエ(Mycobacterium rhodesiae)2 株、マイコバクテリウム・ペレグリナム(Mycobacterium peregrinum)1 株、マイコバクテリウム・フォルトゥイタム(Mycobacterium fortuitum)1 株、Mycobacterium 属菌 3 株であった。NTM が存在する病院飲料水は院内感染の感染源となり得ることから、病院飲料水に関する微生物ガイドラインでは NTM 属菌検査についても触れるべきであると考えられる。

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チュニジアの病院におけるミロイデス・オドラティミマス(Myroides odoratimimus)による尿路感染症の院内アウトブレイク

Nosocomial outbreak of Myroides odoratimimus urinary tract infection in a Tunisian hospital

S. Ktari*, B. Mnif, M. Koubaa, F. Mahjoubi, M. Ben Jemaa, M.N. Mhiri, A. Hammami
*CHU Habib Bourguiba, Tunisia

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 77-81


チュニジアの病院の泌尿器科で発生したミロイデス・オドラティミマス(Myroides odoratimimus)(旧名 Flavobacterium odoratum)による尿路感染症の院内アウトブレイクについて報告する。2010 年 5 月から 11 月に M. odoratimimus 分離株 7 株が尿から回収された。パルスフィールド・ゲル電気泳動法により、これらの分離株は近縁クローンと考えられる 2 群に明確に分類され、両群は分離された期間が異なっていた。1 例を除く全患者に尿路結石があり、泌尿器内視鏡手術を受けていた。M. odoratimimus 分離株はいずれも、検査したすべての抗菌薬に耐性を示した。患者 3 例はシプロフロキサシンとリファンピシンによる治療が成功した。M. odoratimimus は重篤かつ長期的な尿路感染症の院内アウトブレイクを引き起こす可能性があることを、臨床医は認識すべきである。

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PCR 法を含む 2 段階アルゴリズムによるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の診断:酵素免疫測定法による毒素検出に替わり得るか?

A two-stage algorithm for Clostridium difficile including PCR: can we replace the toxin EIA?

J.M. Orendi*, D.J. Monnery, S. Manzoor, P.M. Hawkey
*University Hospital of North Staffordshire NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 82-84


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の診断のための 2 段階、3 試験からなるアルゴリズムを評価した。便検体に対する酵素免疫法により、C. difficile の一般的な抗原であるグルタミン酸脱水素酵素(G)と毒素 A/B(T)を調べた。G と T の結果が一致しない検体は、PCR 法による毒素 B 遺伝子(P)の検出を行った。本アルゴリズムでは毒素 A/B の検出が可能な患者を迅速に特定できたが、毒素産生 C. difficile を排出しているが毒素 A/B 産生レベルが検出限界以下(GTP)である患者が多数存在することが判明した。結果が GT の患者の平均白血球数は、GTP である患者と比較して多かった。

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クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞に対する過酸化水素蒸気の in vitro 活性

Activity in vitro of hydrogen peroxide vapour against Clostridium difficile spores

F. Barbut*, S. Yezli, J.A. Otter
*Hôpital Saint-Antoine, France

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 85-87


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞は感染患者から多量に排出され、乾燥処理や消毒薬に抵抗性を示す。複数株の C. difficile 芽胞に対する過酸化水素蒸気の in vitro 活性を、芽胞・担体試験(spore-carrier test)を用いて調べた。平均 4.7 ~ 6.9 log10 の芽胞をポリ塩化ビニルまたはラミネート製の担体に接種して乾燥させ、次いで過酸化水素蒸気により汚染除去を行った。C. difficile 株や表面の材質にかかわらず、C. difficile は曝露された担体から完全に除去された。過酸化水素蒸気は、病院環境からの C. difficile 芽胞の除去法の候補となり得る。

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病院の不適切な換気装置により結核菌(Mycobacterium tuberculosis)院内感染リスクが上昇する

Inadequate hospital ventilation system increases the risk of nosocomial Mycobacterium tuberculosis

B. Hubad*, A. Lapanje
*Institute of Physical Biology, Slovenia

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 88-91


呼吸器専門病院および結核診断センターの 9 か所から採取した周囲空気を分析し、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によるリスクを評価した。4 か所から 6 ~20 換算菌量/m3 の結核菌が検出され、換算菌量が最も多かったのは換気が不適切な廊下であった。これらの区域では、結核菌の感染源であることが知られている区域と比較して医療従事者の感染リスクに対する意識が低く、防御マスクの着用と受動的換気が実施されていない。以上の結果から、さらなる感染予防・制御策の実施が必要である。

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監訳者注:
換算菌量(cell equivalents):サンプル中の DNA 量から推計した細菌数。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.