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過渡期の感染制御体制:旧ソビエト連邦および同盟諸国の課題

Infection control systems in transition: the challenges for post-Soviet Bloc countries

B.-E. Ider*, J. Adams, A. Morton, M. Whitby, A. Clements
*University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 277-287


背景
ヨーロッパとアジアの現在の 30 か国は 20 年前、ソビエト連邦支配下または直轄の社会主義政府を擁していた。これらの国々の多くは、集中的な医療制度改革により感染制御の状況が変化している。しかし、これらの文献の多くは、他国の科学者が入手することが困難である。

目的
旧ソビエト連邦および同盟諸国における現行の感染制御方針と実践について整理すること。

方法
PubMed および Google による検索のほか、各国のウェブサイトや灰色文献についても調査した。数か国の言語による合計 192 件の文献のレビューを行った。

結果
これらの国の感染制御の状況は過渡期にある。国を 3 グループに分類した。第 1 グループの早期に欧州連合に加盟した東欧諸国およびバルト 3 国は、特定の病原体と抗菌薬使用に関するサーベイランスシステムを構築している。第 2 グループの欧州内のその他の旧同盟諸国では、近年、感染制御のインフラが確立し、これを欧州のサーベイランスプログラムと同調させることに傾注している。第 3 グループの旧ソ連諸国、モンゴル、および紛争後の東欧諸国では、改革の初期段階にある。医療従事者の権限の欠如、医療資源の不足、および専門知識の不足が確認された。感染制御に関する公的な統計の過少報告が広く行われている。

結論
国際的な機関による指導が近代的な感染制御プログラムの開発・導入に極めて重要であると考えられた。第 3 グループの国では感染制御の問題が依然として軽視されており、国際社会からの一層の支援が必要である。

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監訳者注:
灰色文献(grey literature):通常の出版や流通経路に乗らないため、入手が困難な文献資料。

洗面台の蛇口および出水の細菌汚染の Ecasol による制御:1 年間の研究

Control of bacterial contamination of washbasin taps and output water using Ecasol: a one-year study

M.A. Boyle*, M.J. O’Donnell, A. Miller, R.J. Russell, D.C. Coleman
*University of Dublin, Trinity College Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 288-292


背景
汚染された洗面台の蛇口と出水は、院内感染原因菌の重要な発生源である。介入前の 5 週間の調査により、Dublin Dental Hospital の洗面台蛇口 15 か所からの温水と冷水は、好気性従属栄養細菌に著しく汚染されていることが一貫して示された。平均細菌数は、それぞれ 482.5(標準偏差[SD]293)コロニー形成単位(cfu)/mL、5,022(4,322)cfu/mL であった。

目的
電気化学的に生成される中性消毒薬 Ecasol を用いて、洗面台の蛇口と出水の微生物汚染を長期にわたって最小限に抑制すること。

方法
まず、冷水と温水を洗面台、温水器、および給水網に供給する 15,000 L の貯水槽を排水し、沈殿物を除去した。全体的な汚染およびバイオフィルムを除去するため、100 ppm の Ecasol によりこの給水システムのショック消毒を行った。その後、給水前の貯水槽内の水が Ecasol 濃度 2.5 ppm に自動的に維持されるように設定した。指標とする洗面台蛇口 5 か所からの出水の微生物学的水質を、R2A 寒天を用いて毎週 1 回、54 週間測定した。

結果
54 週間の研究期間中の平均細菌数(SD)は、温水1(4)cfu/mL、冷水2(4)cfu/mL、水道水 205(160)cfu/mL、貯水槽水 0 cfu/mLであった。3 回にわたる、のべ 40 か所の蛇口の検査では、33 か所のスワブサンプルは R2A 寒天で生育が認められなかったが、5 サンプルでは < 20 cfu/スワブ、2 サンプルでは > 200 cfu/スワブの菌が認められた。Ecasol による給水網への有害な作用は認められなかった。

結論
Ecasol により歯科医院の洗面台の蛇口と出水の細菌汚染が一貫して最小限に抑制された。

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監訳者注:
ショック消毒:高濃度・大量の消毒薬による短時間の消毒法。

英国の新生児集中治療室における Pantone-Valentine 型ロイコシジン産生メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus;PVL-MRSA)南西太平洋クローン感染のアウトブレイク

Outbreak of a South West Pacific clone Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus infection in a UK neonatal intensive care unit

H. Ali*, J.Q. Nash, A.M. Kearns, B. Pichon, V. Vasu, Z. Nixon, A. Burgess, D. Weston, J. Sedgwick, G. Ashford, F.A. Mühlschlegel
*The William Harvey Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 293-298


背景
Pantone-Valentine 型ロイコシジン産生メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus;PVL-MRSA)は、市中獲得感染の原因菌として世界各国で高頻度で認められるようになっている。

目的
英国の地域新生児室で乳児 3 例と職員 3 例が関与した PVL-MRSA アウトブレイクについて報告する。

方法
PVL-MRSA の推定にはキノロン感性が有用であるが、当室の 2 株の PVL-MRSA を識別するためには毒素遺伝子のプロファイリングとシークエンシングが必要であった。

結果
有症状の乳児全 3 例および保菌職員 2 例(このうち 1 例は有症状)が、PVL-MRSA の南西太平洋(SWP)クローン(ST30)を保有していることが判明した。保菌職員の 1 例はフィリピンを訪問しており、アウトブレイクの発生源であると考えられた。標準的な感染制御策による制御を実施したが、MRSA 保菌が再発した乳児 1 例は 100 日を超える隔離が必要であった。

結論
本稿は、英国における SWP クローンによる新生児アウトブレイクの初の報告である。著者らの研究は、フィリピンと疫学的な関係がある医療施設の職員や患者が、今後も本菌を持ち込むリスクがあり得ることを示すものである。

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銀コーティングおよび非コーティングの血管内ニードルレス・コネクターの臨床使用での微生物学的比較

Microbiological comparison of a silver-coated and a non-coated needleless intravascular connector in clinical use

A.L. Casey*, T.J. Karpanen, P. Nightingale, M. Cook, T.S.J. Elliott
*The Queen Elizabeth Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 299-303


背景
血管内ニードルレス・コネクターの微生物汚染の可能性とその後の感染リスクについては現在、議論の対象となっている。

目的
臨床環境で銀コーティングコネクターおよび非コーティングコネクターを使用した場合の菌数を比較すること。

方法
本研究の対象は、臨床的管理の一環として中心静脈カテーテル(CVC)を必要とする血液悪性腫瘍患者 25 例であった。各患者の CVC を銀コーティングコネクターまたは非コーティングコネクターのいずれかに無作為に接続した。コネクターの使用前後に、2%(w/v)グルコン酸クロルヘキシジン含有 70%(v/v)イソプロピルアルコール含浸ワイプによりコンプレッションシールの汚染除去を行った。留置 4 日後に、銀コーティングコネクター 119 個と非コーティングコネクター 117 個から回収した菌数を測定した。

結果
外側のシリコン製コンプレッションシールから菌が検出された銀コーティングコネクターは 36 個(30.3%)、非コーティングコネクターは 41 個(35%)であった(オッズ比[OR]0.8、95%信頼区間[CI]0.47 ~ 1.39、P = 0.49)。一方、内側の流路から菌が検出された銀コーティングコネクターは 31 個(26.1%)、非コーティングコネクターは 55 個(47.0%)であった(OR 0.40、95%CI 0.23 ~ 0.69、P = 0.001)。また、検出された総菌数は銀コーティングコネクターのほうが非コーティングコネクターよりも少なかった(P = 0.001)。

結論
至適な汚染除去法を適用した銀コーティングコネクターを使用することによって、内腔を介するカテーテル関連血流感染リスクが減少すると考えられる。

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血液悪性腫瘍の小児患児に対するカテーテルロック溶液としてのタウロリジン・クエン酸塩とヘパリンの無作為化対照試験

Randomized controlled trial of taurolidine citrate versus heparin as catheter lock solution in paediatric patients with haematological malignancies

M.J. Dümichen*, K. Seeger, H.N. Lode, J.S. Kühl, W. Ebell, P. Degenhardt, M. Singer, C. Geffers, U. Querfeld
*Charité University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 304-309


背景
1.35%タウロリジンと 4%クエン酸塩を含むカテーテルロック溶液は、タウロリジンの細菌付着防止作用および両化合物の抗凝固作用とキレート作用により、表面への細菌の付着およびその後のバイオフィルム形成を阻害する可能性がある。

目的
血液悪性腫瘍の小児患児を対象として、中心静脈カテーテル(CVC)ロック溶液としてのヘパリンおよびタウロリジン・クエン酸塩が、カテーテルへの微生物の定着および感染性合併症に及ぼす影響を比較すること。

方法
1.4 ~ 18 歳の患児 71 例を、ヘパリン(36 例)またはタウロリジン・クエン酸塩(35 例)のいずれかを使用する 2 群に無作為化した。感染性合併症と臨床的副作用を前向きにモニタリングし、カテーテル抜去時にカテーテルへの微生物の定着を評価した。

結果
血流感染症の件数は、タウロリジン・クエン酸塩群 2 件、ヘパリン群 9 件であった(1,000 カテーテル日あたり 0.3 件対 1.3 件、P = 0.03)。原因不明の発熱とカテーテル閉塞の観察頻度は、両群で同等であった。25.4%のカテーテルに微生物の定着が認められた。ロック溶液を使用せずにカテーテルを留置した時間は、カテーテルへの微生物定着の有意な予測因子であったが(P = 0.004)、ロック溶液の種類や観察期間は有意な予測因子ではなかった。留置直後にタウロリジン・クエン酸塩によるロックを行った CVC には微生物の定着が観察されなかった。タウロリジン・クエン酸塩群の患者 7 例(20%)に副作用(悪心、嘔吐、味覚異常)が発現した。

結論
タウロリジン・クエン酸塩含有ロック溶液を使用することにより、免疫不全状態の小児患児の血流感染症が有意に減少した。カテーテル挿入時からタウロリジン・クエン酸塩を使用すれば CVC への微生物の定着を防止できると考えられるが、ロック溶液を用いずにしばらくカテーテルを使用した後では防止はできないようである。

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フランス北部の 14 病院の死亡率調査により評価した院内感染関連死亡率の前向き研究

A prospective study of nosocomial-infection-related mortality assessed through mortality reviews in 14 hospitals in Northern France

A. Decoster*, B. Grandbastien, M-F. Demory, V. Leclercq, S. Alfandari for the Regional Network ‘Review of nosocomial infection-related mortality’
*Université Lille Nord de France, France

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 310-315


目的
フランスの病院で発生した院内感染関連死の件数を明らかにすること、および院内感染関連死の予防可能性を評価するうえでの病院の死亡率調査の意義を検討すること。

方法
本研究の対象は、2007 年から 2008 年にフランスの 14 病院で発生した全死亡 13,537 件である。死亡した患者を担当していた医師や看護師らを含む専門家委員会が、死因が院内感染症である可能性と、院内感染および死亡の予防可能性を判定した。

結果
McCabe スコアが 0 または 1 で、入院後 48 時間以降に死亡した適格患者 2,355 例のカルテレビューを行った。これらの患者の 33%が 1 件以上の院内感染症に罹患していた。死因が院内感染症であると考えられる患者は 182 例、このうち死亡が予防可能であったと判定された症例は 35 例であった。このうち 10 件の死亡は予期されないものであった。

結論
これらの結果を全国に当てはめると、フランスでは院内感染症による死亡が年間約 3,500 件(95%信頼区間[CI] 2,605 ~ 4,036)発生していることになる。このうち、約 1,300 件(95%CI 357 ~ 2,196)の院内感染と 800 件(95%CI 51 ~ 1,481)の死亡は予防可能であったと考えられる。病院の死亡率調査委員会は、死因となる院内感染症をもたらす環境を特定し、具体的な予防対策を策定することによって、医療の質改善に寄与し得る。このような病院の委員会には、あらゆる医療従事者が参加すべきである。

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日本の 3 次医療施設におけるパンデミックインフルエンザ発生年以降の医療従事者のインフルエンザワクチン接種率の変化

Changes in influenza vaccination rates among healthcare workers following a pandemic influenza year at a Japanese tertiary care centre

H. Honda*, S. Padival, Y. Shimamura, H.M. Babcock
*Teine Keijinkai Medical Centre, Japan

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 316-320


背景
インフルエンザワクチン接種はインフルエンザ院内伝播を予防するための制御計画の重要な構成要素であり、すべての医療従事者に対して推奨されているにもかかわらず、医療従事者の高いインフルエンザワクチン接種率を達成することは課題となっている。日本では、医療従事者のインフルエンザワクチン接種率に関するデータは限られている。さらに、パンデミック発生年以降の医療従事者のインフルエンザワクチン接種率に対するパンデミックインフルエンザの影響については不明である。

目的
日本の 3 次医療施設の医療従事者のインフルエンザワクチン接種率を明らかにすること、および医療従事者のワクチン接種率を向上させるために、さらに介入が必要であるかどうかを評価すること。

方法
札幌市の 550 床の 3 次医療施設における医療従事者の 2005 年から 2010 年のインフルエンザワクチン接種率を、病院の産業保健サービスデータベースを用いて後向きに調査した。

結果
本集団の季節性インフルエンザワクチン接種率は2005 年から 2010 年にかけて徐々に上昇し、また 2009/2010 年のパンデミックインフルエンザ(H1N1)シーズン中の接種率は高かった。しかし、2010/2011 年の季節性インフルエンザワクチン接種率は、2009/2010 年のパンデミックワクチン接種率と比較して有意に低下し、全医療従事者の中では医師のワクチン接種率が最も低かった。

結論
パンデミックインフルエンザは、後年のインフルエンザワクチン接種に対して持続的な影響を及ぼさないと考えられる。したがって、パンデミック発生年以降も医療従事者のワクチン接種率をモニターする必要があり、また適切なワクチン接種率を維持するためにはワクチン接種義務化プログラムなどの介入を実施することを考慮すべきである。

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診断検査室における Brucella melitensis への大規模な曝露

A large exposure to Brucella melitensis in a diagnostic laboratory

I.-C. Sam*, R. Karunakaran, A. Kamarulzaman, S. Ponnampalavanar, S.F. Syed Omar, K.P. Ng, M.Y. Mohd Yusof, P.S. Hooi, F.L. Jafar, S. AbuBakar
*University of Malaya, Malaysia

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 321-325


背景
Brucella 属菌はエアロゾルにより容易に伝播し、検査室内感染を起こすことがある。

目的
病院の診断検査室で 6 日間にわたって発生した Brucella melitensis への大規模な曝露に対して実施された管理対策について報告すること。

方法
曝露された職員 51 名を米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインに従って管理した。さらに、曝露がなかった検査室の職員 96 名の抗体保有状況の検査を実施した。検査には Brucella 属菌血清凝集素検査を用いた。

結果
27 名が高リスクの曝露を、24 名が低リスクの曝露を受けていた。高リスクの職員に対して曝露後予防投与を提案した。12 名(44.4%)はこれに同意し、このうち 8 名(66.7%)が治療コースを完遂した。ベースライン時、2 週目、4 週目、6 週目、および8 か月目の血清検査による追跡調査の遵守率は、全体で 45.9%であった。このように遵守率が低かったにもかかわらず、8 か月目の検査を受けた職員(遵守率 47.1%)の中にブルセラ症の臨床症状を示す者はなく、セロコンバージョンも認められなかった。検査を受けた全職員の Brucella 属菌抗体保有率は 147 名中 3 名(2.0%)であった。

結論
Brucella 属菌の経験がなく、危険が想定される微生物の取り扱い方針がなかったことが、このような曝露の長期化を招いた。現行の推奨の遵守率は低いと考えられることから、血清検査による追跡調査の最適な実施頻度と、予防治療が必要な集団についての評価を再度実施すべきである。地域流行性が低い、またはみられていない地域の検査室では、Brucella 属菌が分離される可能性に備えておく必要がある。マレーシアにおけるヒトブルセラ症の影響について、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
日本では、ブルセラ症は 1999 年以降、感染症法 4 類感染症として全数把握対象疾患であるが、検査室感染の報告はない。これ以前の記録では、1962 年以前に 13 例、1981 年に 1 例の検査室感染が報告されている。まれにしか報告例のない疾患であるため症状からブルセラ症を疑うことは難しく、検査室においても必ずしも安全キャビネットが十分に活用されている状況ではないことから、検査室感染のリスクは考慮される必要がある。
一方で、検査室内での曝露による感染事例は多数報告されており、検査の際には注意が必要である。米国でも最近、ミネソタやフロリダの病院検査室内での伝播例が報告されている。

トルコにおける検査室内感染ブルセラ症

Laboratory-acquired brucellosis in Turkey

S. Sayin-Kutlu*, M. Kutlu, O. Ergonul, S. Akalin, T. Guven, Y.Z. Demiroglu, O. Acicbe, M. Akova Occupational Infectious Diseases Study Group
*Pamukkale University, Faculty of Medicine, Turkey

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 326-330


背景
検査室の医療従事者は、検査室内感染ブルセラ症のリスクを有している。

目的
医療従事者の検査室内感染ブルセラ症のリスク因子を明らかにすること。

方法
トルコの 17 地域の 38 病院で、直接面接による多施設調査研究を実施した。感染症クリニックおよび微生物部門に勤務する、Brucella 属菌感染のリスクを有する医療従事者に対して構造化質問票に基づく調査を実施した。

結果
調査の回答率は 100%であった。検査室の職員 667 名中 38 名(5.8%)に検査室内感染ブルセラ症の既往があった。多変量解析では、検査室関連ブルセラ症のリスクが高いことと関連する独立因子は、Brucella 属菌の取り扱い作業(オッズ比[OR] 5.12、95%信頼区間[CI] 2.28 ~ 11.52、P < 0.001)、および男性であること(OR 2.14、95%CI 1.02 ~ 4.45、P = 0.042)であった。防御効果が認められたのは、レベル 2 の安全キャビネットの使用(OR 0.13、95%CI 0.03 ~ 0.60、P = 0.009)、手袋使用の完全な遵守(OR 0.27、95%CI 0.11 ~ 0.65、P = 0.004)、および長期の現職歴(OR 0.86、95%CI 0.80 ~ 0.92、P < 0.001)であった。

結論
Brucella 属菌の取り扱い作業、男性であること、個人防護具使用の遵守不良、および安全キャビネットの不使用が、本研究の検査室内感染ブルセラ症の独立リスク因子であった。個人防護具使用の遵守向上および安全キャビネットの使用を、検査室内感染ブルセラ症の予防のための優先的な目標とすべきである。

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監訳者コメント
Brucella 属菌の感染経路は主に 3 つと考えられており、第 1 は汚染されたミルクやチーズなどの飲食、第 2 は吸引、第 3 は皮膚の創傷や眼粘膜からの侵入である。実験室においては、手袋と安全キャビネットの使用がこの第 2、第 3 の経路を遮断するのに有用であるが、いずれも、適正な使用を担保する必要がある。
安全キャビネットは、外部からの異物の混入を防ぐために内部が陽圧となっているクリーンベンチと異なり、内部を陰圧にすることで作業者を曝露から守るとともに、内部の空気を HEPA フィルタを通じて循環させることで、試料の汚染も防ぐ構造となっている。気流を乱すと十分な機能が発揮できないため、正しい使用方法を理解することが求められる。

医療資源が豊富な集中治療室では人員配置および作業量はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の新規獲得リスクに影響するか?

Do staffing and workload levels influence the risk of new acquisitions of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in a well-resourced intensive care unit?

F. Kong*, D. Cook, D.L. Paterson, M. Whitby, A.C.A. Clements
*University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 331-339


背景
不適切な人員配置と作業量は、集中治療室(ICU)におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播に影響を及ぼす可能性がある。MRSA の新規獲得について調査することにより、ICU における MRSA 獲得と人員配置との関連が明確になると考えられる。

目的
人員配置および病床利用率は、十分な人員を擁する ICU において MRSA 新規獲得件数に即時性および遅延性の影響を及ぼすか、およびこれらの因子を MRSA 獲得の予測因子として使用することが可能かどうかを明らかにすること。

方法
オーストラリアの都市部の 796 床の病院の ICU における 2003 年 1 月から 2006 年 12 月の MRSA 新規獲得に関するデータを用いて、2007 年に実際に観察された MRSA 新規獲得の確率を予測するモデルを作成した。受信者動作特性(ROC)分析によりクロス検証を行った。

結果
対象期間中の 51 週で、61 件の MRSA 新規獲得(感染 21 件、保菌 40 件)が特定された。非正規雇用職員の労働時間は相対的に少なかった。クロス検証分析による曲線下面積(AUC)は 0.46(95%信頼区間 0.25 ~ 0.67)であり、このことから、2003 年 から 2006 年のデータに基づいて作成したモデルによって、2007 年に MRSA 新規獲得が発生する週を予測できないことが示された。

結論
ICU での作業量が多いことがもたらすリスクは、感染制御策の良好な遵守、看護師の訓練、および適切な人員配置比によって低下した可能性がある。したがって、当 ICU の人員配置方針と感染制御策を、MRSA 新規獲得率を制御するために変更する必要はない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この論文は、オーストラリアの看護師:患者が 1:1 で配置されている ICU における MRSA 新規獲得件数とベッド稼働率について検討している。これまでの知見であるスタッフの不足や過重労働が手指衛生や感染制御策の遵守を低下させることを否定するものではなく、むしろ、スタッフの配置基準の設定が感染管理において重要な因子であることを裏付けた。

インド農村部の教育病院の職員の手指衛生に対する認識に関する質的研究

Qualitative study on perceptions of hand hygiene among hospital staff in a rural teaching hospital in India

S.C. Joshi*, V. Diwan, A.J. Tamhankar, R. Joshi, H. Shah, M. Sharma, A. Pathak, R. Macaden, C. Stålsby Lundborg
*R.D. Gardi Medical College, India

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 340-344


背景
手指衛生は、医療関連感染の制御のための簡便な方法であるが、十分に実施されていない。

目的
フォーカスグループ・ディスカッションにより、インドの教育病院の職員の手指衛生に対する認識について調査すること。

方法
質的研究を行った。感染症の伝播、手指衛生の実践と実施に伴う問題、および手指衛生に関する勧告の遵守を改善する方法についての質問が記載されたフォーカスグループ・ディスカッションの手引きを使用した。フォーカスグループ・ディスカッションは録音して速記録を作成し、ヒンディー語の場合は英訳して、内容分析を行った。

結果
2 つの課題が浮上した。すなわち、「知識・信念、動機、実践、およびニーズのそれぞれの相互関係性」および「状況に即したアプローチと介入を持続的かつ効果的に実施するための役割と責任」である。職員は全般的に、医療関連感染の予防には手指衛生が重要であることを理解していたが、実施に関する実務的な問題についても認識していた。

結論
職員から様々な介入法が提案された。病院が必要な設備を提供すれば、職員は手指衛生ガイドラインに従う用意ができていると考えられた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者注:
フォーカスグループ・ディスカッション(focus group discussion;FGD):質的研究の手法の 1 つであり、ある特定のテーマについて、関連のある母集団から少数の対象者を選び、設定された質問に沿ってディスカッションを行う。目標は、参加者の理解・感情・受け止め方・考えを引き出すことである。

移動式オートクレーブへの太陽エネルギーによる電力供給

The use of solar energy for powering a portable autoclave

M.N. Dravid*, A. Chandak, S.U. Phute, R.K. Khadse, H.R. Adchitre, S.D. Kulkarni
*SBH Govt. Medical College, India

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 345-347


気候変動や化石燃料の枯渇のため、先進国は代替クリーンエネルギーを模索せざるを得ない。豊富な太陽光に恵まれたアジアおよびアフリカ諸国では太陽熱調理器が開発されつつあるが、まだ早期段階にある。この技術を用いた移動式オートクレーブがインドで開発された。Prince-40 Concentrator は、小規模な検査室環境における培地のオートクレーブ滅菌および医療廃棄物処理に十分な能力を備えており、1 年あたり 15,000 ルピー(188.10 ポンド)相当の電力、または 37,500 ルピー(470.25 ポンド)相当の LPG を節約することができる。この技術は、停電が頻発したり電力が供給されていない農村部の医療施設で多大な利用が期待される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この論文で取り上げられたオートクレーブは、構造上、気象条件に影響を受けるように思われる。しかし、太陽光エネルギーは、災害時の応用などにも期待される分野である。

擦式手指消毒薬の使用量は手指衛生遵守率および基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-PE)感染率と相関するか?

Is hand-rub consumption correlated with hand hygiene and rate of extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae (ESBL-PE)-acquired infections?

J.R. Zahar*, V. Masse, L. Watier, F. Lanternier, N. Degand, M. Postaire, P. Descamps, X. Nassif, O. Lortholary
*Université Paris Descartes, France

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 348-350


擦式アルコール製剤の使用量は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)または基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌による院内感染の発生率と相関するかどうかを、後向き研究により評価した。擦式アルコール製剤の 1,000 患者入院日あたりの使用量は、2005 年から 2008 年にかけて毎年 8 L という大幅な増加がみられた。同期間の手指衛生遵守率は 55.6%から 70.9%に大幅に上昇した(P < 0.0001)。このような改善がみられたにもかかわらず、ESBL 産生菌の発生率は過去 3 年間、一貫して上昇し、擦式アルコール製剤の使用量は、ESBL 産生菌による院内感染または手指衛生遵守率のいずれとも相関しなかった。

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監訳者コメント
これまで、擦式アルコール製剤(ABHR)使用量は手指衛生遵守の指標として有効と考えられてきたが、本研究では、ABHR 使用量の増加にもかかわらず ESBL 産生菌の検出が増加した理由として、そもそもの使用量算出の方法や、増加の解決は手指衛生だけでなく、抗菌薬の使用や保菌圧の関連の可能性を挙げている。

医療関連感染症の原因菌としての多剤耐性菌のサーベイランスプログラム:ブラジル南部の都市部での状況

Surveillance programme for multidrug-resistant bacteria in healthcare-associated infections: an urban perspective in South Brazil

P.V.M. Toledo*, L.N. Arend, M. Pilonetto, J.C. Costa Oliveira, K.R. Luhm; Working Group in Healthcare Associated Infections (WGHAI)
*Secretaria Municipal de Saúde, Brazil

Journal of Hospital Infection (2012) 80, 351-353


多剤耐性菌が公衆衛生上の問題となっており、世界保健機関(WHO)は、医療関連感染症の原因菌としての多剤耐性菌を制御するための措置をとることを推奨している。本研究では、ブラジルのクリチバ市で実施されている医療関連感染の原因菌としての多剤耐性菌のサーベイランスプログラムについて述べる。2010 年 1 月から、肺炎、血流感染症、尿路感染症、および手術部位感染症の多剤耐性菌について調査が行われている。医療関連感染症で最も頻度が高い多剤耐性菌は、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)および第三世代セフェム系薬耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)であった。病院や公衆衛生領域で実施される感染制御策の策定が進捗している。本稿で提示したデータは、ブラジルの一都市で実施された多剤耐性菌サーベイランスプログラムによる多剤耐性菌の分布状況、およびこのプログラムの有用性を示すものである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
本論文は、市の保健局によって構築された地域での耐性菌の疫学データを把握するためのプログラムの 3 年間の結果である。サーベイランスの結果は毎月共有され、感染対策の向上に反映されている。地域ネットワークのあり方の 1 つとして参考になる。

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