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人工関節感染に対する層流の影響:システマティックレビュー

Influence of laminar airflow on prosthetic joint infections: a systematic review

P. Gastmeier*, A.-C. Breier, C. Brandt
*Charité-Universitätsmedizin Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 73-78


背景
多くの病院は、手術部位感染(SSI)率を低下させるために、層流システム(LAF)とも称される超清浄換気装置(ultraclean ventilation)を手術室で使用している。しかし、これらの装置の効果のエビデンスは限られており、また LAF に要する費用は高額である。

目的
LAF による人工股関節および人工膝関節術後の SSI 率の低下効果を明らかにすること。

方法
過去 10 年間に発表された、人工股関節および人工膝関節術後の SSI に対する LAF による影響を検討しているコホート研究のシステマティックレビューを実施した。

結果
人工膝関節術後の重度の SSI をエンドポイントとしたコホート研究 4 件と人工股関節術後の研究 4 件を対象とした。個々の研究では、人工膝関節術後の LAF に有意な有益性は認められなかったが、1 件の小規模な研究で人工股関節術後に有意な有益性が認められた。しかし、1 件の研究では LAF 条件下の人工膝関節術後の重度 SSI 率が有意に高く、3 件の研究では人工股関節術後の SSI 率が有意に高いことが示された。全体のオッズ比は、人工膝関節では 1.36(95%信頼区間[CI] 1.06 ~ 1.74)、人工股関節では 1.71(95%CI 1.21 ~ 2.41)であった。

結論
LAF を備えた手術室を新たに設置するのは資源の浪費であると考えられるが、既存の手術室の LAF を従来の換気方式に置き換えるべきかどうかについては疑問の余地がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
医療保健施設における環境感染制御のための CDC ガイドライン(2003)では、手術室における感染対策と換気条件のセクションで、「適切に HEPA フィルタを設置すること」はカテゴリ II の勧告であるが、「層流が供給されている手術室で整形外科の人工物を埋め込む手術を実施すること」については、未解決問題とされている。本システマティックレビューでは、2007 年から 2011 年に公表された論文(研究期間は 1999 年から 2008 年)を引用して、整形領域の手術室の換気システムを LAF と従来の HEPA フィルタを用いた方法で SSI の発生率を比較しているが、いまだ解決には至らないようである。

カンジダ(Candida)属菌および大腸菌(Escherichia coli)バイオフィルムの殺生物剤耐性は高い抗酸化能と関連する

Biocide resistance of Candida and Escherichia coli biofilms is associated with higher antioxidative capacities

C.Y. Leung*, Y.C. Chan, L.P. Samaranayake, C.J. Seneviratne
*University of Hong Kong, Hong Kong

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 79-86


背景
殺生物剤の使用に関する臨床ガイドラインのほとんどは、浮遊微生物を対象として作成されているが、自然界では大半の微生物は表面に付着した集団またはバイオフィルムの形で生存している。

目的
大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダ(Candida)属菌に対して一般的に用いられている殺生物剤の有効性を、浮遊、接着、バイオフィルムの 3 種類の増殖期ごとに評価すること。

方法
殺生物剤に 5 分間曝露後、超微形態、構造、および菌の生存率のそれぞれの変化を、走査型電子顕微鏡および蛍光色素を用いた共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。浮遊期とバイオフィルム期における抗酸化物質である SOD1 および CAT1 転写物の相対的発現量を、定量的リアルタイム PCR 法により評価した

結果
浮遊期の大腸菌および Candida 属菌は、推奨濃度で検査したすべての殺生物剤に感受性であった。しかし、初期である接着期、後期であるバイオフィルム期ともに殺生物剤に対する感受性が低下し、最小発育阻止濃度が推奨濃度を超える例がみられた。接着した微生物細胞を短時間の殺生物剤曝露で完全に除去することはできず、殺生物剤の作用から回復し、殺生物剤で処理した表面にバイオフィルムを形成した。バイオフィルム期には SOD1 および CAT1 の発現量が高かった。

結論
病院環境での臨床消毒のための殺生物剤の推奨濃度では、接着期およびバイオフィルム期の大腸菌と Candida 属菌の完全な除去はできないと考えられる。微生物バイオフィルムの抗酸化能が高いことが、バイオフィルムの臨床用殺生物剤に対する耐性に関与している可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この論文で使用された殺生物剤“biocide”は、4 種類の消毒薬、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、エタノール、ヨード液であり、臨床で使用される濃度で行われた実験である。統一した評価方法で、通常の濃度では浮遊の状態の真菌・細菌には有効であるものの、バイオフィルムが形成されると消毒薬の効果が発揮されにくくなることを示した。いったんバイオフィルムが形成されるとその内部に消毒薬が侵入しにくくなるため、バイオフィルムを作らない環境を保つこと、特に内視鏡などの有機物の付着が想定される場合は、その処理を十分に行うことが必要である。

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の殺生物剤感受性と cepA、qacΔE、および qacE 排出ポンプ遺伝子および抗菌薬耐性との関連

Klebsiella pneumoniae susceptibility to biocides and its association with cepA, qacΔE and qacE efflux pump genes and antibiotic resistance

A. Abuzaid*, A. Hamouda, S.G.B. Amyes
*University of Edinburgh, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 87-91


背景
生体消毒薬は病院で最も広く使用されている抗菌性薬剤の一種であるが、これらの殺生物剤に対する感受性低下、およびその抗菌薬耐性との関連についての情報はほとんどない。

目的
殺生物剤感受性の低下と消毒薬耐性遺伝子(cepA、qacΔE、qacE)の保有との関連を明らかにするとともに、感受性低下に対する排出ポンプの役割を特定すること。

方法
5 種類の殺生物剤(クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、Trigene、MediHex-4、Mediscrub)と 11 種類の抗菌薬について、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)分離株 64 株の感受性を評価した。薬剤感受性の測定はすべて寒天二重希釈法(DDM)で行い、殺生物剤に対する排出ポンプの影響については、さらに排出ポンプ阻害薬カルボニルシアニド m-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)存在下での感受性試験を行うことにより判定した。cepA、qacΔE、および qacE 遺伝子の有無を PCR 法により確認した。

結果
細菌の抗菌薬耐性は全般的には少なかったが、一部はセフォキシチン、クロラムフェニコール、リファンピシン、および新世代のセファロスポリン系(カルバペネム系を除く)に対する感受性低下を示した。二重希釈法試験により殺生物剤感受性の低下を示した株数は、クロルヘキシジン 50 株、Trigene 49 株、および塩化ベンザルコニウム 53 株であった。消毒薬耐性遺伝子が認められた株数は、cepA 56 株、qacΔE 34 株、および qacE 1 株であった。それらの排出ポンプとしての効果を CCCP(10 mg/L)により判定したところ、CCCP の存在により、クロルヘキシジンおよび Medihex-4 の最小発育阻止濃度(MIC)は 2 ~ 128 倍低下したが、塩化ベンザルコニウム、Trigene、および Mediscrub の MIC には影響がなかった。

結論
K. pneumoniae 臨床分離株では、排出ポンプ遺伝子(cepA、qacΔE、qacE)の保有は殺生物剤感受性の低下と密接に関連していたが、抗菌薬耐性とは関連していなかった。

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監訳者コメント
本論文のディスカッションにも述べられているが、消毒薬の使用濃度は MIC よりもはるかに高濃度であり、ここで示されたような耐性が実際に問題となることはあまりないと考えられる。懸念するとすれば、バイオフィルムが形成されているなど他の条件が加わったときであろう。

早期発症人工呼吸器関連肺炎におけるプロカルシトニン

Procalcitonin in early onset ventilator-associated pneumonia

U. Zielińska-Borkowska*, T. Skirecki, M. Złotorowicz, B. Czarnocka
*Professor Orłowski Hospital, Poland

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 92-97


背景
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は集中治療における重大な問題であり、適切なバイオマーカーが強く求められている。プロカルシトニン(PCT)がマーカー候補として提案されている。

目的
VAP を早期発症した非外科患者に対する PCT 濃度モニタリングの臨床的有用性を評価すること。

方法
早期発症 VAP(定義は、人工呼吸器の装着後 48 時間 から 6 日で発症し、診断された VAP)患者 34 例を登録した。血清 PCT レベルを 1、2、3、5、6、および 7 日目に測定した。

結果
死亡率は 21%であった。非生存者では、3 および 7 日目の PCT レベルが有意に上昇していた。非生存者の PCT の受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、3 日目 0.762(95%信頼区間[CI] 0.6 ~ 0.923)、7 日目 0.754(95%CI 0.586 ~ 0.922)であった。敗血症患者では、PCT は 1、2、3、5、および 7 日目に有意に高く、AUC は 1 日目が最大(0.783、95%CI 0.626 ~ 0.94)であった。1 日目のカットオフ値を 1 ng/mL とした場合の敗血症性ショック発症の陽性適中率は 0.813 であった。

結論
PCT 濃度と抗菌薬療法の妥当性または VAP の原因菌との間に関連は認められなかった。ロジスティック回帰分析から、PCT と不良な転帰との有意な相関はみられなかった。非生存者および敗血症性ショック発症患者のほうが PCT レベルが高かったが、PCT はこれらの転帰の強力な予測因子ではない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
PCT はカルシトニンの前駆物質であり、細菌や真菌による感染症では、炎症性サイトカインの刺激により全身の臓器で PCT が産生されることから、細菌感染症のマーカーとしての有用性が多くの論文で検討されている。この論文では、PCT が VAP の診断や予後の予測に使えるかを検討したが、近年の他の感染症における検討と同様に、明確な相関は期待できなかった。

インフルエンザ(H1N1)2009 パンデミック時の 3 か国の病院感染制御対策実践の遵守状況の相違

Differences in the compliance with hospital infection control practices during the 2009 influenza H1N1 pandemic in three countries

J.S.Y. Chor*, S.K. Pada, I. Stephenson, W.B. Goggins, P.A. Tambyah, M. Medina, N. Lee, T.-F. Leung, K.L.K. Ngai, S.K. Law, T.H. Rainer, S. Griffiths, P.K.S. Chan
*The Chinese University of Hong Kong, Hong Kong

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 98-103


背景
世界保健機関(WHO)は 2009 年 12 月、医療環境におけるインフルエンザ(H1N1)ウイルスの防御に関する改訂ガイドラインを発表した。2010 年の WHO によるパンデミックインフルエンザの警戒レベルは依然としてフェーズ 6 であった。

目的
インフルエンザ(H1N1)2009 パンデミック時の 3 か国の医療従事者の感染対策の実践状況について調査すること。

方法
2010 年に、香港、シンガポール、および英国の病院の 120 の診療科の医師、看護師を含む医療従事者を対象として、標準化された無記名の自記式質問票による調査を行った。質問項目は、人口統計学的特性、インフルエンザの既往および自己評価による重症度、感染対策の実践状況、季節性インフルエンザおよびインフルエンザ(H1N1)のワクチン接種についてであった。多重ロジスティック回帰により、種々の因子との独立した関連の検定を行った。

結果
3 か国の医療従事者合計 2,100 名が研究に参加した。参加者らの報告では、手袋の着用・交換や患者との接触前後の手洗いなどの、飛沫感染予防策の遵守率は高かった(> 80%)。しかし、患者との間接的接触時および直接接触時のマスク(所属施設で使用が義務化されているサージカルマスクまたは N95 マスク)の使用の報告には、かなりのばらつきがみられた(それぞれ、香港 96.4%、70.4%、シンガポール 82.3%、87.7%、英国 25.3%、62.0%)。報告された遵守と、職種、患者との接触回数、およびパンデミックの重大性への認識との間に関連が認められた。季節性インフルエンザまたはインフルエンザ(H1N1)2009 のワクチン接種と遵守との関連は認められなかった。

結論
パンデミックインフルエンザに対する感染制御対策の遵守率は、状況によって大きく異なると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
奇しくもこの 3 か国は SARS を経験した国であり、国の感染管理ガイドラインやその遵守の充実は想像に難くないと思われた。実際、手洗い遵守率はいずれの国も 90%前後と大変高率であったが、一方、マスクの使用には大きな差がみられた。これは、各国の医療環境(ベッドの間隔など)や感染対策ガイドラインの違いによるものが大きいとも考えられる。マスクと手洗いに焦点を絞った質問票の内容は、我々が地域の感染対策の状況を共有するときに参考になる。
気になった点としては、この研究では、3 か国で約 6,100 人に質問票を配布したが、シンガポール、英国は 94%以上と、この種類の調査ではすばらしいほどの高い回収率であったのに比し、研究者の自国である香港の回収率が 27%と低かったことである。

嚢胞性線維症の成人に使用した非侵襲的人工呼吸器の微生物汚染

Microbial contamination of non-invasive ventilation devices used by adults with cystic fibrosis

A. Mutagi*, E.F. Nash, S. Cameron, G. Abbott, P. Agostini, J.L. Whitehouse, D. Honeybourne, E. Boxall
*Heart of England NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 104-108


背景
嚢胞性線維症患者に使用した非侵襲的人工呼吸器の細菌汚染の想定リスクについて、現時点でエビデンスはほとんど得られていない。

目的
本研究の目的は、当地域の成人嚢胞性線維症専門医療施設における非侵襲的人工呼吸器の細菌汚染レベルを明らかにすることである。

方法
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)またはバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)complex(セパシア菌群)による慢性感染症を有する嚢胞性線維症患者が最近使用した非侵襲的人工呼吸器 7 台を対象として、外側と内側の合計 7 か所からスワブ採取を行った。2 台に対しては、患者が使用してからスワブ採取までの間にエチレンオキサイド(EtO)滅菌を行い、5 台は EtO 滅菌は行わなかった。

結果
5 台の装置からのスワブ標本では環境微生物のわずかな増殖しかみられず、2 台のスワブ標本では大幅な増殖が認められた。いずれの装置からも、嚢胞性線維症に関連する感染症の起因菌は検出されなかった。

結論
今回の小規模な研究からは、嚢胞性線維症患者が使用した非侵襲的人工呼吸器に病原微生物汚染は認められなかった。著者らは、さらなる研究により非侵襲的人工呼吸器の細菌汚染についての評価を行うこと、また、今後の嚢胞性線維症に関連する感染制御ガイドラインにおいて、この問題を取り扱うことを提案する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
人工呼吸器の使用後にどのレベルまで消毒・滅菌するのかということと、VAP の発生との関連性は関心の高いところである。この研究ではエチレンオキサイド滅菌後に採取したサンプルから菌が検出されていたが、滅菌法に問題がないと仮定すれば、サンプル採取時に環境菌を拾ったのであろう。医療施設での研究の難しさが伺えるとともに、研究デザインの重要性を考えさせられる論文である。

消化管手術時の細菌に対するバリアとしてのプラスチック製創縁保護具:多施設前向き試験

Plastic wound retractors as bacteriological barriers in gastrointestinal surgery: a prospective multi-institutional trial

H.M. Mohan*, S. McDermott, L. Fenelon, N.M. Fearon, P.R. O’Connell, S.F. Oon, J. Burke, E. Keane, C. Shieldsd, D.C. Winter, Members of the University College Dublin Wound Retractor Study Group
*St. Vincent’s University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 109-113


背景
手術部位感染は依然として重大な問題であり、手術創の細菌への曝露を軽減するための周術期の戦略が緊要となっている。腹腔へのアクセスに使用されるプラスチック製のリング状創縁保護具により、切開部位を細菌から保護できる可能性がある。

目的
プラスチック製のリング状創縁保護具を使用する消化管手術を行い、切開部位の細菌への曝露について評価すること。

方法
多施設前向き観察研究。標準的な抗菌薬予防的投与後に、消化管の準清潔手術を受けた患者を対象とした(250 例、500 サンプル)。腹腔へのアクセスを容易にするため、プラスチック製創縁保護具を使用した。手術終了時に創縁保護具の内側(内腔)表面と外側(手術創側)表面からサンプルを採取し、細菌培養を行った。

結果
細菌検出率は、創縁保護具の内側表面からのサンプルでは 56%(250 件中 140 件)、外側表面からのサンプルでは 34%(250 件中 85 件)であった(P < 0.0001)。皮膚由来微生物の検出率は、創縁保護具の内側表面(245 件中 34 件[14%])および外側表面(250 件中 27 件[11%])との間に有意差は認められなかった(P = 0.108)。しかし、創縁保護具の内側表面からのサンプルの腸内細菌培養陽性率は、創縁保護具の外側表面の 2 倍であった(49%対 26%、P < 0.0001)。

結論
プラスチック製創縁保護具は、消化管手術時の手術創の腸内細菌への曝露を軽減する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
日本でも、大腸手術を中心に、創縁保護具を利用することにより SSI が減少するかを検討した論文が複数発表されている。SSI を減少させるための複数の対策の 1 つととらえられているようである。

監訳者注:
創縁保護具(wound retractor):切開創に装着するプラスチック製のリングであり、切開創を覆うようにして使用する。日本手術医学会による手術医療の実践ガイドラインでは、「非浸透性材質の創縁保護ドレープは、その使用により創縁の汚染を防ぎ、SSI 防止に有効な可能性がある。数種類の創縁保護ドレープが市販されており、どの製品も必ずしも有意差をもって SSI 減少効果が証明されているわけではないが、その有効性は期待できる」とされている。

ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)による血流感染症:7 年間のカルテレビュー

Bloodstream infections caused by Stenotrophomonas maltophilia: a seven-year review

M. Garazi*, C. Singer, J. Tai, C.C. Ginocchio
*Long Island Jewish Medical Center, NY, USA

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 114-118


背景
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は重要な院内感染病原体であり、感染症の増加、特に免疫不全患者での増加の原因となっている。

目的
S. maltophilia 菌血症患者の臨床的および微生物学的特性について述べること。

方法
米国・ニューヨークの 2 つの 3 次ケア施設における 2001 年から 2007 年の 7 年間の S. maltophilia 菌血症患者 102 例を対象としてカルテレビューを行った。

結果
患者の内訳は、院内感染エピソード 79 例(77.5%)、医療関連感染ピソード 21 例(20.6%)、および市中感染エピソード 2 例(2%)であった。菌血症の感染源として最も頻度が高いものは、汚染された中心静脈カテーテルの 44 例(43.1%)であった。また、17 例(16.6%)は好中球減少性敗血症と関連があり、9 例(8.8%)は腹部、6 例(5.9%)は呼吸器が感染源であり、26 例(25.5%)では感染源は不明であった。ほとんどの患者(94.1%)が中心静脈アクセス器材を留置していた。単変量解析では、集中治療室入室、気管内挿管、敗血症性ショック、菌血症時の好中球減少症、またはエピソード発生前 30 日以内のカルバペネム系抗菌薬使用と、死亡との関連が認められた。多変量解析では、死亡と有意に相関する因子は、低血圧性ショックおよびエピソード発生前 30 日以内のカルバペネム系抗菌薬使用であった。分離株 102 株の多くは、トリメトプリム・スルファメトキサゾール(97.1%)、レボフロキサシン(92.9%)、セフタジジム(53.0%)、およびチカルシリン・クラブラン酸(49.2%)に対して in vitro で感受性を示した。

結論
本研究のデータは、S. maltophilia 菌血症患者の特性を示すとともに、これらの患者の血管アクセス器材を注意深く評価することの重要性を強調するものである。

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アウトブレイク時の KPC 型カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)腸内保菌の迅速検出法

Rapid detection of intestinal carriage of Klebsiella pneumoniae producing KPC carbapenemase during an outbreak

T. Giani*, C. Tascini, F. Arena, I. Ciullo, V. Conte, A. Leonildi, F. Menichetti, G.M. Rossolini
*University of Siena, Italy

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 119-122


KPC 型カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)腸内保菌の 2種類の迅速検出法、すなわち直腸スワブからの DNA抽出物の PCR 法による増幅(K-PCR 法)と、メロペネムディスクおよびメロペネム+3-アミノフェニルボロン酸ディスクを設置したマッコンキー寒天培地と直腸スワブによる直接平板法(直接 KPC スクリーニング法、DKST法)について述べる。アウトブレイク中に患者 65 例から得た合計 101 サンプルを対象として、K-PCR 法および DKST 法の評価を行った。DKST 法の感受性は K-PCR 法よりも低かったが、感染・保菌患者に多くみられる高レベルの保菌は検出可能であり、しかも極めて安価かつ実施が容易で、基本的な設備しか必要としない方法であった。

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カテーテル感染予防のためのガイドライン:小児および新生児集中治療室の医療従事者の知識および実践の評価

Guidelines for preventing catheter infection: assessment of knowledge and practice among paediatric and neonatal intensive care healthcare workers

M. Guembe*, A. Bustinza, M. Sánchez Luna, A. Carrillo-Álvarez, V. Pérez Sheriff, E. Bouza on behalf of the GEIDI and ECCAUPE Study Groups
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Universidad Complutense, Spain

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 123-127


スペインの小児および新生児集中治療室の医療従事者におけるカテーテル関連感染予防のためのガイドラインに関する知識および遵守に関する質問票 357 通を、スペインの 31 病院に配布し、分析を行った。全体の平均スコアは、個人的知識 5.61 および日常的実践 5.78 であった。本研究の結果から、スペインの医療従事者のカテーテル関連感染予防に関する知識には改善の余地があることが判明した。カテーテル関連感染の予防・管理の改善のためには、継続的な教育プログラムおよびケアバンドルの導入が必要である。

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発展途上国における人工呼吸器関連肺炎の経済的負荷

Economic burden of ventilator-associated pneumonia in a developing country

E. Alp*, G. Kalin, R. Coskun, M. Sungur, M. Guven, M. Doganay
*Erciyes University, Turkey

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 128-130


内科集中治療室(MICU)の患者 159 例中 96 例(60%)が人工呼吸器関連肺炎(VAP)を発症し、発生率は 1,000 人工呼吸器日あたり 37.2 件であった。VAP 発症までの期間の中央値は 5.5 日(範囲 2 ~ 25 日)であった。VAP のリスク因子のうち最も有意性が高いものは、MICU 入室前の入院、および MICU 入室期間であった。VAP 患者の平均 MICU 入室期間は 23.8 ± 19.8 日で、非 VAP 患者の 4 倍であった。VAP 患者の 1 日あたりのコストは非 VAP 患者の半分であった。VAP 患者に要したコストの総額は、非 VAP 患者の約 3 倍であった。

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英国の地域総合病院における新生児のインフルエンザ A(H1N1)2009 アウトブレイク

Neonatal influenza A/H1N1/2009 outbreak in a UK district general hospital

M. Milupi*, M. Madeo, N. Brooke, S.J. Ahmad
*Doncaster Royal Infirmary, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 131-133


文献報告された新生児のインフルエンザ A(H1N1)2009 の症例数は増加しているが、アウトブレイク管理に特化したガイドラインは存在しない。本稿では、大規模地域総合病院の新生児集中治療室におけるインフルエンザ A(H1N1)2009 のアウトブレイク事例を報告する。初発症例は母親から感染した可能性が高い。その後、別の 2 児が、おそらく持続陽圧呼吸を行ったことが原因で感染した。サーベイランスの強化と接触者のスクリーニング、確定症例の隔離、およびオセルタミビルの使用により、アウトブレイクは制御された。

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ドイツの病院におけるオオチョウバエ(Clogmia albipunctata、ハエ目チョウバエ科)の発生

Hospital infestations by the moth fly, Clogmia albipunctata (Diptera: Psychodinae), in Germany

M. Faulde*, M. Spiesberger
*Central Institute of the Bundeswehr Medical Service, Germany

Journal of Hospital Infection (2012) 81, 134-136


オオチョウバエ(Clogmia albipunctata)は以前は地中海沿岸でみられた種であるが、現在ではドイツの北緯 53°を越える地域でもみられる。オオチョウバエは生態系をヒトと共有して行動するため、病院の建物内で年間を通して発生することも多い。病院内での発生場所は、病棟のシャワー室とトイレが最も多く、次いで備品貯蔵室、そして病院調理場のトイレとシャワー室である。好んで繁殖する部位は、患者のシャワー室の毛髪の詰まったシンク、使用頻度が低いトイレや小便器、および気づかれないパイプの水漏れによる水たまりなどであり、このことから、駆除のためには病院の水回りと害虫の管理の強化が必要であることが示唆される。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.