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病院環境の微生物モニタリング:目的と方法

Microbial monitoring of the hospital environment: why and how?

S. Galvin*, A. Dolan, O. Cahill, S. Daniels, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 143-151


背景
患者周囲の無生物環境を対象とした微生物モニタリングの目的は、衛生基準のモニタリングと、アウトブレイクの発生源となり得る特定の院内病原体の有無の調査の 2 つであると考えられる。目的がいずれの場合であっても日常的な微生物培養を行うが、最適な結果を得るためにはそれぞれの方法が異なる場合がある。この 2 つの目的にみられる主な相違点は、衛生状態の評価においては微生物の定量化が必要であり、さらに特定の環境表面部位で好気性菌コロニー数を測定する必要があるが、感染制御サーベイランスにおいては多剤耐性院内病原体を検出する方法に簡便性が求められることである。

目的
無生物の臨床環境から院内病原菌を検出するために、調査研究およびアウトブレイク調査で用いられている現行の方法を評価すること。

方法
PubMed で公表文献の検索を行った。

結果
環境中の微生物モニタリングには、スワブ、スポンジ、接触平板培地、およびディップスライド法が、種々の増菌培地および選択培地と組み合わせて用いられている。PCR 法などの分子生物学的方法により検査時間の短縮を図ることによって、感染予防・感染制御のための清拭・消毒レジメンのより迅速な実施が可能となる。しかし、微生物学的な衛生状態の評価方法や、特定の病原細菌の最適な検出方法については、広範な同意は得られていない。

結論
最適な方法、環境サンプリングの頻度、および医療施設環境の表面汚染の許容レベルの基準について、意見の一致が求められる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
環境検査は日常的に行うべきものと、アウトブレイク時などに行うべきものがある。国や地域により問題となる病原菌が異なる場合もあり、指標の作成には様々な配慮が必要となる。また経済的な配慮も重要である。特定細菌や特定耐性菌の検出においては検査業務負荷や検出効率も大きく変動する。

脊椎手術後の椎間板炎:診断、治療、および予防における課題

Postprocedural discitis of the vertebral spine: challenges in diagnosis, treatment and prevention

H. McDermott*, C. Bolger, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 152-157


背景
術後椎間板炎は比較的まれであるが、極めて重大な臨床転帰をもたらすことがある。

目的
術後椎間板炎の診断、管理、および予防の現況をレビューすること。

方法
過去 20 年間に英語で発表された文献を、種々の適切な検索語を用いて検索した。

結果
診断にあたっては、臨床的特徴、微生物学的検査結果、画像検査、および炎症性マーカーを使用するべきである。不必要な抗菌薬使用を回避するため、また標的を絞った治療を行うために、感染症の確診に注力するべきである。外科的デブリードマンや感染巣コントロールは治療に不可欠であり、これによって抗菌薬療法の指針となる診断用検体を得ることができる。培養陽性の場合は、抗菌薬感受性検査の結果に基づいて抗菌薬療法を行うべきである。抗菌薬療法に関する確定的なガイドラインは存在しない。経験的治療法として、キノロン系やクリンダマイシンなどとフシジン酸やリファンピシンとの併用が処方されている。静注剤から経口剤への早期変更と、6 週以上の抗菌薬療法が推奨される。予防法として、周術期の抗菌薬予防投与、良好な手術手技、および適用可能な場合の低侵襲手術が挙げられる。

結論
現時点で利用可能な情報の多くは不十分であり、良質な臨床試験が行われていない。日常的な培養の代替法、および予防策としての局所抗菌薬療法の意義に関するさらなる研究が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
脊椎手術は開心術、人工関節置換術と並んで、待期手術での感染リスクは低いが感染すると重篤な有害事象につながるため、しっかりした感染予防策が重要である。

休日実施の血液透析後の C 型肝炎ウイルス感染の疫学的・分子的研究

Epidemiology and molecular investigation of hepatitis C infection following holiday haemodialysis

K.M. Roy*, A. Galmés-Truyols, J. Giménez-Duran, E. Anderson, H. Prempeh, F. Gonzàlez-Candelas, M.A. Bracho, C. Aitken, R. Mactier, E. Tejera for and on behalf of the Incident Groups in Scotland and Spain
*Health Protection Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 158-163


背景
血液透析患者の C 型肝炎ウイルス(HCV)感染はまれではない。既報の多くは、透析室で最も多くみられる伝播様式は患者間の直接または間接伝播であることを示唆している。

目的
マジョルカ島の同一の透析室で休日に血液透析を受け、8 週以内に急性 HCV 感染症を発症したスコットランド人 2 例のアウトブレイクの発生源と伝播経路の調査を行った。

方法
9 か国の血液透析患者コホートを対象として、HCV 感染の多国間の疫学的・分子的研究を実施した。

結果
マジョルカ島のこの透析室で血液透析を受けた現地住民および休日行楽客に、新規の HCV 感染は認められなかった。分子的調査から、スペイン人医療従事者がスコットランド人患者 2 例の感染源であることが確認された。伝播経路の特定はできなかった。

結論
本アウトブレイクは、透析室における医療従事者から患者への HCV 伝播の最初の報告例であり、侵襲的手技を実施していない医療従事者からの伝播としては 3 例目の報告である。非侵襲的手技に関連する伝播リスクについて、透析室は例外的な医療環境であるのかという問題は、英国や海外の透析室における血液由来ウイルス伝播のサーベイランスを改善する必要性と併せて、検討すべき課題である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
行楽地の透析施設でのアウトブレイク事例報告である。HCV については、HBV よりも低い水準の感染予防の取り扱いを容認している国もあり、注目される。

MRSA 発生率に対する感染制御実践および抗菌薬使用の経時的影響

Temporal effects of infection control practices and the use of antibiotics on the incidence of MRSA

X. Bertrand*, J.M. Lopez-Lozano, C. Slekovec, M. Thouverez, D. Hocquet, D. Talon
*Centre Hospitalier Universitaire Besançon, France

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 164-169


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は世界中に広がっており、各地で高度な流行がみられている。MRSA の制御戦略を実施する必要性については、もはや議論の余地がない。

目的
フランスの 1,200 床の大学病院における種々の感染制御実践および抗菌薬の使用と MRSA 発生率の経時的関連を明らかにすること。

方法
フランスの 1,200 床の大学病院における 9 年間(2000 年 1 月から 2008 年 12 月)の月次データに基づいて多変量時系列解析を実施し、種々の因子と MRSA 発生率との経時的関連を明らかにした。MRSA 保菌圧、感染制御実践、および抗菌薬使用について解析を行った。

結果
時系列解析により、病院獲得型 MRSA(HA-MRSA)発生率と MRSA 保菌圧、抗菌薬使用(フルオロキノロン系、マクロライド系、アミノグリコシド系)、および手袋使用との間に有意な正の関連が認められた。これとは逆に、HA-MRSA 発生率と擦式アルコール製剤の使用との間には全体として負の相関が認められた。このモデルにより、月間の MRSA 発生率の変動の 40.5%が説明された。

結論
本研究により、MRSA 感染患者の入院、抗菌薬の使用、および感染制御実践が HA-MRSA 発生に寄与することが示された。このことから、手指消毒の遵守向上を目標とした取り組みが必要であることが示唆される。さらにこれらの結果は、MRSA 感染患者のケアを行う際に手袋を使用することについて、懸念を提起するものである。

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監訳者コメント
MRSA 対策に王道はなく、総合的な感染対策が求められる。

第 2 回スコットランド全国有病率調査の結果:スコットランドにおける医療関連感染の疫学の変化

Results from the second Scottish national prevalence survey: the changing epidemiology of healthcare-associated infection in Scotland

J. Reilly*, S. Cairns, S. Fleming, D. Hewitt, R. Lawder, C. Robertson, W. Malcolm, D. Nathwani, C. Williams
*Health Protection Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 170-174


背景
医療関連感染(HAI)は、世界的な公衆衛生上の問題であると考えられている。点有病率調査により、あらゆる種類の HAI の負荷の評価が可能である。

目的
HAI 有病率を評価し、第 1 回スコットランド全国点有病率調査後の HAI の疫学の変化を明らかにすること。

方法
欧州の点有病率調査のために作成された欧州疾病予防管理センター(European Centre or Disease Prevention and Control)のプロトコールを用いて、2011 年 9 月から 10 月に国民保健サービス(NHS)の急性期、非急性期、小児の各病院、および独立病院を対象とした全国点有病率調査を再度実施した。HAI 有病率および HAI の種類の分布を評価し、結果を 2005/2006 年の第 1 回スコットランド全国 HAI 点有病率調査と比較した。

結果
HAI 有病率は急性期病院 4.9%、非急性期病院 2.5%、小児病院 6.1%、独立病院 1.2%であった。急性期病院の HAI 有病率は、非急性期病院と比較して有意に高かった。その他の種類の病院間では有病率に有意な差はなかった。急性期病院および非急性期病院の HAI 有病率は、第 1 回の調査の約 3 分の 1 以下であった。前回の調査と比較して、急性期病院では尿路感染、手術部位感染、血流感染の割合が増加し、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染を含む消化器の HAI の割合が低下した。

結論
2005/2006 年の第 1 回の全国調査以降、スコットランドにおける HAI の疫学が変化しているため、感染予防・制御策ではその点に再度注目する必要がある。有病率が低下し、急性期・非急性期ケアにおける HAI の疫学に変化がみられたことは、この間に、標的を定めた HAI 介入の全国的プログラムが実施されたことと時間的な関連がある可能性を示唆している。

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監訳者コメント
英国では 2005 ~ 2006 年ごろから、積極的な感染対策の取り組みが進められている。こうした影響がこの疫学統計にも出ている。

日本における消化管手術後のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連疾患の負荷

The burden of Clostridium difficile-associated disease following digestive tract surgery in Japan

H. Yasunaga*, H. Horiguchi, H. Hashimoto, S. Matsuda, K. Fushimi
*The University of Tokyo, Japan

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 175-180


背景
手術にはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連疾患(CDAD)のリスクがあると考えられているが、術後 CDAD の転帰に関する大規模なデータはほとんどない。

目的
日本の DPC(診断群分類)入院患者データベースを用いて、消化管手術後の CDAD 発症に関与する因子および CDAD の転帰を解析した。

方法
2007 年から 2010 年に癌に対する食道切除術、胃切除術、および大腸切除術を受けた患者から、術後に CDAD と診断された患者を特定した。患者背景と病院の因子を補正し、CDAD 発症率と院内死亡率についてはロジスティック回帰分析、術後入院期間および総費用については多重線形回帰と傾向スコアを 1 対 1 でマッチさせた解析を実施した。

結果
消化管手術を受けた 143,652 例の患者から 409 例(0.28%)の CDAD 患者を特定した。Charlson 併存疾患指数高値、長期の術前入院期間、および非大学病院が CDAD 発症率高値と有意に関連していた。院内死亡率は、CDAD 患者のほうが非 CDAD 患者と比較して高値であった(3.4%対 1.6%、オッズ比 1.83、95%信頼区間[CI]1.07 ~ 3.13、P = 0.027)。CDAD に起因する術後入院期間および CDAD 関連コストは、線形回帰ではそれぞれ 12.4 日(95%CI 9.7 ~ 15.0、P < 0.001)、6,576 米ドル(95%CI 3,753 ~ 9,398、P < 0.001)、傾向スコアをマッチさせたペア解析ではそれぞれ 9 日(P < 0.001)、6,724 米ドル(P < 0.001)であった。

結論
高死亡率、長期入院、および高費用が術後 CDAD と関連していた。これらの結果は、消化管手術を実施した患者にはさらなる CDAD 制御策が必要であることを示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
日本からの発表である。解析の対象を食道切除術、胃切除術、および大腸切除術を受けた患者から、術後に CDAD と診断された患者に限定しているのが本論文の特徴である。国内事例では一般的な長期入院者・抗菌薬投与群、高齢者、経管栄養実施者、呼吸管理者などがおそらく影響因子となっているが、この論文では評価されていない。

ドイツの 89 病院における院内感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)と院内感染クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症の関連

Associations between nosocomial meticillin-resistant Staphylococcus aureus and nosocomial Clostridium difficile-associated diarrhoea in 89 German hospitals

E. Meyer*, P. Gastmeier, D. Weizel-Kage, F. Schwab
*Charité - University Medicine Berlin, Germany

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 181-186


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、主として医療施設で下痢症を引き起こす病院感染病原体であると見なされている。

目的
ドイツの病院ネットワークのデータから、病院感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌・感染および C. difficile 関連感染症(CDI)の発生率を算出・比較するとともに、院内感染 MRSA と院内感染 CDI との関連の有無を評価すること。

方法
急性期病院は患者数、患者日、および MRSA や CDI の症例に関するデータをドイツの院内感染サーベイランスシステム(KISS)に報告している。症例を院内感染と院外感染に分類した。MRSA および CDI の院内感染発生率および発生密度(1,000 患者日あたり)を Spearman の相関係数により算出した。

結果
2010 年に合計 89 病院が病院全体の MRSA および CDI 症例を報告した。患者 1,536,031 例、11,138,496 患者日、院内感染 CDI 症例 5,183 例、および院内感染 MRSA 症例 2,233 例を解析対象とした。院内感染 CDI の全病院の発生密度は 0.47 で、院内感染 MRSA(0.20)の 2 倍以上であった。MRSA と CDI の院内感染発生率には有意な相関が認められた(相関係数 0.515)。発生密度にも同様に有意な相関が認められ、相関係数は 0.484 であった。

結論
今回使用したデータベースと定義に基づくと、院内感染 CDI の発生率は院内感染 MRSA の 2 倍であった。院内感染 MRSA 症例または CDI 症例が多いことは、不十分な感染制御や抗菌薬選択圧の指標であると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
MRSA と CDI の院内感染発生率には有意な相関があるということは、手指衛生の徹底が図れていない可能性があり、手指衛生コンプライアンスとの関連も分析すべきであろう。

監訳者注:
発生率と発生密度(incidence rate, incidence density):発生率の定義は、各病院における 1 年間の陽性患者数を 1 年間の合計患者数で除した数値。発生密度の定義は、各病院における 1 年間の陽性患者数を 1 年間の合計患者日 × 1,000 で除した数値。

塩基配列に基づくインフルエンザ A(H1N1)pdm09 ウイルス院内感染の特定および特性評価

Sequence-based identification and characterization of nosocomial influenza A(H1N1)pdm09 virus infections

M. Jonges*, J. Rahamat-Langendoen, A. Meijer, H.G. Niesters, M. Koopmans
*Centre for Infectious Disease Control, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 187-193


背景
インフルエンザのような伝播性の高いウイルスは院内感染の発生原因となることがあり、そのために患者の疾患と死亡が増加する。

目的
インフルエンザウイルスの遺伝子配列のデータを、インフルエンザの個人間の院内伝播を特定するために利用できるかどうかを評価すること。

方法
オランダの 1 施設の病院から得た A(H1N1)pdm09 陽性サンプル(107 件)を市中症例からのサンプル(685 件)と比較した。赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、および PB2 の遺伝子フラグメントのシークエンシングを実施した後に、同一のインフルエンザウイルスに感染した患者を検出するためにクラスター化を行った。各院内クラスターの中で同一のウイルスに感染した 2 例目の患者が検出される確率を、流行中の院内株と市中株を併せた多様な遺伝子配列データに基づいて算出した。さらに、すべてのクラスターについて患者間の関連の可能性を解析した。

結果
A(H1N1)pdm09 の 17 の院内クラスターが検出され、流行中の多様な遺伝子配列データに基づく算出により、このうち8クラスターは発生確率が低かった(P < 0.01)。疫学的解析では、これらの 8 クラスターの 4 クラスターから合計 8 件の院内感染が確認され、第 5 のクラスターでは 1 件の母子感染が確認された。発生確率が高い 9 クラスターには、既知の疫学的関連が不明なインフルエンザの市中感染症例が含まれていた。

結論
流行中の遺伝子配列データセットが得られれば、市中で優勢な株とは異なる院内の遺伝子配列クラスターを検出することにより、インフルエンザの院内アウトブレイクが疫学的に疑われる以前に、病院の感染制御専門家が詳細な調査を要するクラスターを選別することが可能となる。

サマリー原文(英語)はこちら

インフルエンザワクチン接種に関する医療従事者の意思決定に対するオタワインフルエンザ意思決定支援(Ottawa Influenza Decision Aid)の影響:ランダム化試験

Impact of the Ottawa Influenza Decision Aid on healthcare personnel’s influenza immunization decision: a randomized trial

L.W. Chambers*, K. Wilson, S. Hawken, J. Puxty, L. Crowe, P.-P. Lam, E. Farmanova-Haynes, S.A. McNeil, A.E. McCarthy
*Bruyére Research Institute, Canada

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 194-202


背景
医療従事者に対するインフルエンザワクチン接種によりインフルエンザ院内アウトブレイクの頻度と重症度が低下し、患者のインフルエンザ関連の疾患および死亡が減少する。オタワインフルエンザ意思決定支援(Ottawa Influenza Decision Aid;OIDA)は、ワクチン接種を受けるかどうかを決定していない医療従事者の意思決定を支援することを目的として作成されたツールである。

目的
OIDA の影響を評価すること、および OIDA の使用により医療従事者のインフルエンザワクチン接種に関する意思決定への自信の程度が増加するかどうか、またワクチン接種の意思が強化されるかどうかを明らかにすること。

方法
単一施設単盲検並行群間ランダム化対照試験。

結果
ワクチン接種を受けていない医療従事者の 8%(1,886 名中 151 名)を対象として、OIDA 群と対照群にランダムに割り付けた。適格な回答者は 107 名であり、このうち OIDA 群は 48 名、対照群は 59 名であった。OIDA 群では、接種に関する意思決定への自信の程度が、対照群と比較して統計学的に有意に改善した(P = 0.020)。ワクチン接種を受ける意思が「いいえ/わからない」から「はい」へと変化するオッズは OIDA 群のほうが 2.4 倍大きかったが、この結果はベースライン時のワクチン接種を受ける意思で補正後は、統計学的に有意ではなかった。OIDA 群と対照群のワクチン接種を受ける意思を介入の前後で比較したところ、OIDA にはワクチン接種の意思を未定とする回答者を有意に減少させる効果があることが示された(P = 0.035)。

結論
あらゆる医療従事者にとって利用しやすく、偏りがなく、理解しやすい形式のツールを用いたインフルエンザワクチン接種の意思決定支援法は、彼らのワクチン接種に関する意思決定への自信、およびワクチン接種を受ける意思の両方に対して影響を及ぼすと考えられる。

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新生児集中治療室の入り口に設置する感染制御手順の簡便かつ安価な視聴覚式リマインダー

A simple inexpensive audio-visual reminder of infection control procedures on entry to a neonatal intensive care unit

R.J. Taylor*, U. El-Kafrawy
*Salford Royal NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 203-206


患者数の多い教育病院の新生児集中治療室における面会者の手指衛生遵守および感染制御手順の改善を主要な目的として、コンピューターを用いた視聴覚式の新しい感染制御対策を企画・設置・検証した。このシステムは安定性が高く、外注が不要であり、安価で、事前の教育・研修が不要であることが判明し、迅速な配置と即時の使用が可能である。この対策の導入後に、面会者の手洗い技術、および手洗い時の留意事項の記憶に明確な改善が認められた。このシステムは、面会者に対して感染制御対策の教育・推進を図る新たな機会を提供するものである。

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人口統計学的リスク評価による MRSA スクリーニングは関節置換術病棟の囲い込み(ring fencing)の効果を損なう可能性がある

Demographic screening for MRSA may compromise the effectiveness of ring fencing on a joint replacement unit

H-M.A. Schmidt*, C. Izon, M.W. Maley
*Sydney South West Pathology Service, Australia

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 207-209


関節置換術病棟の囲い込み(ring fencing)によって手術部位感染が減少することが報告されており、オーストラリアおよび英国の保健当局はこれを推奨している。囲い込みの対象病棟へのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌患者の入院を避けるための方法として、人口統計学的リスク評価が適切であるかどうかは明らかではない。そこで、シドニー郊外の病院の関節置換術病棟への入院患者 250 例をスクリーニングしたところ、人口統計学的リスク評価の基準に合致した患者の 2.8%に MRSA 保菌が認められた。人口統計学的リスク評価は、身体的な MRSA スクリーニングの代替法として適切ではなく、囲い込み戦略の効果を損なう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者注:
囲い込み(ring fencing):術前のスクリーニングやリスク評価によって、MRSA 保菌者または高リスク者を入院対象から除外すること。

ウェールズにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のスクリーニング:ウェールズの病院の成人重症管理室における実践の調査

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus screening in Wales: survey of practices in adult critical care units in Welsh hospitals

O.C. Durojaiye*, J. Sinha
*University Hospital of Wales, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 210-212


重症管理室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌のスクリーニングについては、いまだに意見が分かれている問題である。この横断研究では、ウェールズの病院の成人重症管理室における MRSA スクリーニングの方針について調査した。構造化質問票を用いてデータを収集した。本研究により、普遍的スクリーニングからスクリーニング非実施まで、実践にはばらつきがあることが判明した。各施設の保菌率と感染率を考慮しつつ、施設の MRSA 対策を再検討するべきことが推奨される。また、基本的な感染制御戦略の遵守の対象には、MRSA 感染のみならず他の医療関連感染も含めるべきである。

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蒸気化過酸化水素によるコンタミネーション除去に対するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の感受性への懸濁液の影響

Impact of the suspending medium on susceptibility of meticillin-resistant Staphylococcus aureus to hydrogen peroxide vapour decontamination

J.A. Otter*, S. Yezli, G.L. French
*Bioquell UK Ltd, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 213-215


消毒薬に対する微生物の in vitro 感受性には種々の因子が影響を及ぼす。蒸気化過酸化水素(HPV)によるコンタミネーション除去に対するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の感受性への、種々の懸濁液の影響を評価した。> 6 log10 コロニー形成単位の MRSA を含む懸濁液を接種した場合の相対的感受性は、10%ウシ血清アルブミン(BSA) < トリプトンソーヤブイヨン(TSB) < 3% BSA < 生理食塩液 < 0.3% BSA = 水の順であった。HPV に 60 分を超えて曝露した後は、いずれの懸濁液の場合でも MRSA は回収されなかった。これらの知見は、懸濁液の種類が HPV に対する MRSA の in vitro 感受性に影響を及ぼすことを示しており、清掃が不十分な状況にも関連すると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

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