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医療関連尿路感染症のリスク因子、および病院の管理データを用いたサーベイランスでのこれらのリスク因子の活用:システマティックレビュー

Risk factors for healthcare-associated urinary tract infection and their applications in surveillance using hospital administrative data: a systematic review

C. King*, L. Garcia Alvarez, A. Holmes, L. Moore, T. Galletly, P. Aylin
*Imperial College, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 219-226


背景
医療関連尿路感染症(UTI)は院内感染症の多くの割合を占めており、英国では近年、カテーテル関連 UTI の減少を図るためのサーベイランスが開始されている。しかし現在のところ、病院がこれまで日常的に収集してきた膨大な管理情報はサーベイランスのために最大限に活用されていない。

目的
医療関連 UTI のリスク因子に関するエビデンスを定量的に評価すること、および病院内のデータを用いてこれらのリスク因子が画期的なサーベイランスツールの構築のため、またその情報として活用できるかどうかを明らかにすること。

方法
確立されている医療関連 UTI のリスク因子を特定するために文献のシステマティックレビューを行った。これらのリスク因子の人口寄与危険割合(PAR%)を算出し、リスクの階層化を行った。次に病院の管理データを対象として、これらの定量化されたリスク因子を調査した。

結果
文献のシステマティックレビューで特定されたリスク因子の 30%以上は、感染の独立予測因子であった。PAR%が最も高かったのは尿道カテーテル留置であり、カテーテル留置を実施しない場合は尿路感染症の 79.3%が予防されると計算された。医療関連 UTI の独立予測因子のうち 60%を対象として、PAR%を算出した。特定された独立リスク因子のうち、尿道カテーテル留置を含む 65%は、病院の管理データセットでコード化されていた。

結論
本研究から、確立されている医療関連 UTI のリスクを定量的に評価することによって、病院の管理データを医療関連 UTI リスクのモニタリングおよびサーベイランスのために、より効果的に活用できる可能性があることが示された。

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監訳者注:
人口寄与危険割合(population-attributable risk percentage;PAR%):全集団の中で発生した疾患(またはイベント)のうち、そのリスク因子が原因となって発生したと考えられる疾患(またはイベント)の割合。It を全人口における医療関連 UTI 発生率、Iu をリスク因子への曝露がない医療関連 UTI 発生率とした場合、PAR% = (ItIu)/It × 100 により算出される。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)高リスク入院患者のスクリーニングのための増菌培養検査への Xpert MRSA 法の併用の費用対効果

Cost-effectiveness of supplementing a broth-enriched culture test with the Xpert meticillin-resistantn Staphylococcus aureus (MRSA) assay for screening inpatients at high risk of MRSA

J. Li*, K. Ulvin, H. Biboh, I.S. Kristiansen
*University of York, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 227-233


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、合併症および費用の点で医療における大きな課題となっている。最も一般的な MRSA 検出法は依然として細菌培養法であるが、ノルウェーの Ullevål Oslo 大学病院は 2009 年、PCR 法を使用する Xpert MRSA 法を導入した。

目的
積極的サーベイランス戦略の一環として、増菌培養検査に Xpert MRSA 法を併用した場合の費用対効果を培養検査のみの場合と比較すること。

方法
決定木モデルを作成し、現行の戦略(増菌培養検査)と Xpert MRSA 法を用いる 2 種類の新規戦略(日中のみ、または 1 日 24 時間)との比較を行った。費用およびアウトカム(暫定的隔離期間、病室使用不能時間、QOL)を評価した。

結果
現行の戦略の費用(患者 1 例あたり 16,984 クローネ)は、日中 Xpert 戦略(患者 1 例あたり 7,360 クローネ)または 24 時間 Xpert 戦略(患者 1 例あたり 3,690 クローネ)と比較して高価であった。新規戦略により、患者 1 例あたりの暫定的隔離時間は減少し(減少は日中 Xpert 戦略 43.9 時間、24 時間 Xpert 戦略 57.5 時間)、患者 1 例あたりの病室利用不能時間も減少した(減少はそれぞれ 57.1 時間、77.7 時間)。患者の質調整生存年(QALY)の改善はわずかであった(改善は日中 Xpert 戦略 2.4 × 10-4 QALY、24 時間 Xpert 戦略 3.0 × 10-4 QALY)。感度分析により、モデルに使用したパラメータの通常の変動範囲内では、これらの結果は一貫していることが示された。

結論
24 時間 Xpert 戦略により、通常の想定条件下において他の方法と比較して費用および望ましくないアウトカムが減少し、望ましいアウトカムが改善することから、積極的サーベイランスの最良の戦略であると考えられる。

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漂白剤による洗浄・消毒プログラム導入後のバンコマイシン耐性腸球菌保菌・菌血症の大幅な減少

Significant reduction in vancomycin-resistant enterococcus colonization and bacteraemia after introduction of a bleach-based cleaning–disinfection programme

E.A. Grabsch*, A.A. Mahony, D.R.M. Cameron, R.D. Martin, M. Heland, P. Davey, M. Petty, S. Xie, M.L. Grayson
*Austin Health, Australia

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 234-242


背景
当院では標準的なバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)制御ガイドラインを遵守しているにもかかわらず、VRE 保菌・感染が増加している。

目的
漂白剤による洗浄・消毒プログラム「Bleach-Clean」を含む集学的な改善プログラムを病院全体で実施した。VRE の保菌、感染、および環境汚染を実施の前後で比較した。

方法
プログラムの内容は、新規製剤の導入(次亜塩素酸ナトリウム 1,000 ppm + 洗浄剤)、標準化された洗浄・消毒法の実践、洗浄管理者の雇用、およびアルコール製剤による手指消毒と袖なしエプロン(長袖ガウンと手袋に替えて)を用いる修正プロトコールなどであった。VRE の分離には発色酵素基質寒天培地または標準的な検査法を用いた。評価項目として高リスク病棟(集中治療室、肝移植科、腎臓病科、血液内科)の VRE 保菌率(スクリーニング患者 100 例あたり)、環境汚染率、および病院全体の VRE 菌血症エピソードなどをプログラム実施の 6 か月前および 12 か月後に評価した。

結果
新規 VRE 保菌率(スクリーニング患者 1,948 例中 208 例から 4,035 例中 324 例へ 24.8%減少、P = 0.001)および環境汚染率(66.4%減少、P = 0.012)の有意な減少が認められたが、入院時の保菌患者の割合には変化がなかった。高リスク病棟の入院患者の VRE 保菌率も減少した(週あたりの入院患者の保菌率中央値 19.4%から 17.3%へ、P = 0.016)。病院全体の VRE 菌血症発生率はスクリーニング患者 2,935 例中 14 例から 6,194 例中 5 例へ減少した(83.1%減少、P < 0.001)が、バンコマイシン感性腸球菌菌血症には変化がなかった(P = 0.54)。

結論
Bleach-Clean プログラムは、病院全体の高リスク患者の新規 VRE 保菌、および VRE 菌血症の大幅な減少と関連していた。これらの知見は VRE が流行している医療環境での VRE 制御に重要な意義を有すると考えられる。

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整形外科手術後の手術部位感染の経時的減少:サーベイランスが重要!

Decreasing time trend in SSI incidence for orthopaedic procedures: surveillance matters!

I. Skråmm*, J. Šaltytė Benth, G. Bukholm
*Akershus University Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 243-247


背景
人工股関節・人工膝関節置換術後、早期に再置換が必要となる理由として最も多いものは感染症であり、再置換術施行率は増加している。真の感染率を評価するためには手術部位感染(SSI)サーベイランスデータが重要である。しかし、整形外科手術後の SSI 発生率の経時的変動に関する情報はほとんどない。

目的
整形外科手術後のサーベイランスにより、SSI 発生率に経時的変動がみられるかどうかを評価した。

方法
人工股関節・人工膝関節置換術後、および大腿骨転子部骨折・足関節骨折に対する骨接合術後の SSI 発生率を、1998 年 5 月から 2008 年 10 月に米国疾病対策センター(CDC)の基準に従って前向きに記録した。合計 4,177 件の手術を解析対象とし、このうち 65.8%が女性患者であった。線形回帰により SSI 発生率の変動を解析した。

結果
SSI 発生率は、開始年の 7%から最終年の 3%へ有意に減少した(相対減少率 57%)。年齢、米国麻酔科医学会(ASA)スコア、および緊急レベルも組み入れたロジスティック回帰モデルでは、手術時間が感染の唯一の有意な予測因子であった(P < 0.001)。

結論
整形外科手術後のサーベイランスにより、11 年間のサーベイランス期間中に SSI 発生率が有意に減少したことが示された。サーベイランスと SSI 発生率の因果関係を証明することは困難であるが、手術時間が感染の唯一の予測因子であったとしても、フィードバックを伴うサーベイランスが医療の質を左右するいくつかの手術手技に影響を与えた可能性がある。

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早発性の人工股関節感染症および人工膝関節感染症:オーストラリア・ビクトリア州での治療および転帰

Early onset prosthetic hip and knee joint infection: treatment and outcomes in Victoria, Australia

T.N. Peel*, A.C. Cheng, P.F.M. Choong, K.L. Buising
*University of Melbourne, Australia

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 248-253


背景
人工関節感染症は依然として関節形成術の深刻な合併症である。国際的な承認を得ている診療ガイドラインは存在せず、治療法には大きなばらつきがある。

目的
この多施設研究の目的は、オーストラリアのビクトリア州の病院で治療を受けた早発性の人工関節感染症患者を対象として、その治療法および治療不成功の予測因子を調べることである。

方法
本コホート研究は、10 病院で 3 年間(2006 年 1 月から 2008 年 12 月)にわたって実施された。対象は、早発性の人工関節感染症を発症した患者 147 例であった。

結果
大半の患者(76%)はデブリードマン + 人工関節温存による治療を受けていた。患者の追跡期間中央値は 20 か月(四分位範囲 7 ~ 36 か月)であった。合計 43 例が治療不成功となり、12 か月無感染生存率推定値は 76%(95%信頼区間[CI] 68% ~ 83%)であった。治療不成功に関連する因子は、感染を伴う人工関節の緩みのための再置換術(ハザード比[HR] 7.5、95%CI 2.4 ~ 23.1、P < 0.0001)、発症時の低血圧(HR 4.9、95%CI 1.5 ~ 15.7、P = 0.007)、一期的関節置換術(HR 3.1、95%CI 1.0 ~ 9.2、P = 0.048)、および抗菌薬療法期間が合計 90 日未満(30 日未満[HR 18.5、95%CI 5.4 ~ 63.1、P < 0.001]、30 ~ 60 日[HR 8.0、95%CI 2.6 ~ 23.9、P < 0.001]、60 ~ 90 日[HR 7.3、95%CI 2.2 ~ 24.4、P = 0.001])であった。効果的な経験的抗菌薬療法は治療不成功のリスク低下に関連していた(HR 0.20、95%CI 0.09 ~ 0.47、P < 0.001)。

結論
オーストラリアの治療方法には他国との相違がみられる。推奨治療に影響すると考えられる、臨床的に重要な多くの治療不成功のリスク因子が特定された。

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海外で入院した旅行者の多剤耐性菌:保有率、特性、および臨床転帰への影響

Multidrug-resistant bacteria in travellers hospitalized abroad: prevalence, characteristics, and influence on clinical outcome

J. Nemeth*, B. Ledergerber, B. Preiswerk, A. Nobile, S. Karrer, C. Ruef, S.P. Kuster
*University Hospital Zurich and University of Zurich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 254-259


背景
世界的に多剤耐性菌(MDR)の負荷は増大しており、特に病院環境で顕著である。

目的
海外の病院から転院した旅行者から検出された MDR の特性および臨床的重要性を調べること。

方法
この後向き研究の対象は、海外の病院からスイスの University Hospital Zurich に転院し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌(ESBL)、および多剤耐性グラム陰性菌の保菌について通常の入院時スクリーニングを受けた患者とした。

結果
259 例中 46 例(17%)に MDR の保菌、9 例(3.5%)に感染が認められた。33 例(12%)が 1 菌種、12 例(4.6%)が 2 菌種、3 例(1.2%)が 3 菌種を保菌していた。合計で ESBL 36株、多剤耐性グラム陰性菌 21 株、MRSA 3 株の分離株が検出された。分離頻度が高かった菌種は、大腸菌(Escherichia coli)(18 株、30%)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(14 株、23%)、およびアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(14 株、23%)であった。検出部位で多かったのは、皮膚(97%)および気道(41%)であった。保菌がある場合は ICU 入室期間が長期にわたった(中央値[範囲] 8[1 ~ 35]対 3.5[1 ~ 78]日、P = 0.011)。院内死亡率は、MDR 保菌患者(10.9%)のほうが非保菌患者(2.3%)よりも高かった(P = 0.018)。MDR 保菌は死亡と関連していた(補正オッズ比 5.176、95%信頼区間 1.325 ~ 20.218)。

結論
海外から転院した患者には高い割合で MDR 保菌が認められ、保菌は不良な臨床転帰と関連していた。

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イタリアの新生児集中治療室における広範囲薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii;XDRAB)クローンの拡散および患児の同菌獲得のリスク因子

Clonal spread and patient risk factors for acquisition of extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii in a neonatal intensive care unit in Italy

R. Zarrilli*, A. Di Popolo, M. Bagattini, M. Giannouli, D. Martino, M. Barchitta, A. Quattrocchi, V.D. Iula, C. de Luca, A. Scarcella, M. Triassi, A. Agodi
*University ‘Federico II’, Italy

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 260-265


目的
イタリアの大学病院の新生児集中治療室(NICU)で発生した広範囲薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii;XDRAB)のアウトブレイクについて報告すること。患児の A. baumannii 獲得のリスクプロファイル、および実施したアウトブレイク制御策について述べる。

方法
菌株の抗菌薬感受性を微量希釈法により評価した。パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および複数部位塩基配列タイピング(MLST)による遺伝子型判定を行った。PCR 法および DNA シークエンシングによりカルバペネマーゼ遺伝子の分析を行った。症例対照研究デザインにより A. baumannii 獲得のリスク因子を特定した。

結果
新生児 22 例から A. baumannii が分離され、このうち 6 例は感染であった。シークエンス型(ST)2 に分類される優勢な PFGE 型が特定され、これは International Clone II 型に相当するものであった。このクローンは、同病院の成人 ICU からの分離株との識別ができなかった。A. baumannii 分離株にはアミノグリコシド系、キノロン系、およびβ-ラクタム系抗菌薬耐性が認められたが、チゲサイクリンおよびコリスチン感性であった。カルバペネム耐性は、blaOxA-23 遺伝子を含むトランスポゾン Tn2006 の存在と関連していた。単変量解析では、NICU 入室期間、A. baumannii 曝露期間、在胎期間、侵襲性デバイスの使用、および侵襲性デバイス曝露期間が A. baumannii 獲得と有意に関連していたのに対し、多変量解析による独立リスク因子は中心静脈カテーテル曝露期間および人工呼吸器曝露期間のみであった。

結論
今回の NICU における XDRAB アウトブレイクは、成人 ICU に入室していた母親の新生児の保菌を介した院内伝播が原因であると考えられた。アウトブレイクの制御には感染制御策の強化が必要であった。

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ポーランドにおける外科病棟の看護師、その担当患者、および献血候補者の C 型肝炎ウイルス抗体保有状況

Seroprevalence of hepatitis C virus infection among surgical nurses, their patients and blood donation candidates in Poland

M. Ganczak*, M. Korzeń, Z. Szych
*Pomeranian Medical University, Poland

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 266-270


目的
外科病棟の看護師および助産師の抗 C 型肝炎ウイルス(HCV)抗体保有状況を評価し、他の女性集団(同病院の担当患者および献血候補者)を対象とした横断的な血清調査のデータと比較するとともに、職業感染に関連すると考えられるリスク因子について評価すること。

方法
ポーランドの West Pomerania からランダムに選択した 16 病院の参加者が、2008 年 2 月から 2009 年 6 月に HCV 感染のリスク因子に関する質問票に記入した。第三世代の検査法を用いて、血清サンプルの抗 HCV 抗体を測定した。

結果
職員 414 名中 6 名が抗 HCV 抗体陽性であった(1.4%、95%信頼区間[CI] 0.7% ~ 3.1%)。この単回のスクリーニングによって、職員の抗体陽性を検出することができた。ロジスティック回帰モデルから、抗 HCV 抗体陽性に関しては勤務期間のみが HCV 感染のオッズ上昇と関連していることが示された(オッズ比[OR] 2.8、P < 0.006)。抗 HCV 抗体保有率は、女性患者 1,118 名では 1.1%(1,118 名中 12 名、95%CI 0.6% ~ 1.9%)、女性献血候補者 801 名では 0%(801 名中 0 名、95%CI 0% ~ 1.1%)であった。年齢が 50 歳を超える群の抗 HCV 抗体保有率は、職員と患者との間に有意差が認められた(6.9%対 1.0%、P < 0.007)。この年齢群では、看護師であることが HCV 感染のオッズ比が高いことと関連していた(OR 8.8、P < 0.005)。

結論
抗 HCV 抗体保有率を比較すると、外科病棟の看護師および助産師、患者、献血候補者の順に低下する傾向が明らかになった。このことは、職業リスクの存在を示唆していると考えられる。HCV 感染の最大のリスク因子は勤務期間であり、汚染血液・体液への曝露の累積が影響している可能性がある。外科および婦人科の職員が長期の血液曝露を受ける結果として、HCV 感染が生じ得ることを十分に認識する必要がある。

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監訳者コメント
日本での HCV 保有者は人口の約 1%だが、70 歳以上では 3%となっている。また、針刺し事故では汚染源となった患者のうち感染症がわかっているものの約 20%が HCV 陽性、血液・体液曝露では 35%が HCV 陽性という報告がある(職業感染制御研究会 2011 年データ)。この論文はポーランドでの研究であるが、高齢者の感染率がより高くなる日本の状況では一層、医療従事者の職業感染のリスクは高いと考えられる。

手指衛生遵守率改善を目的とした電子式手指衛生フィードバック装置の実用可能性および有効性

Feasibility and effectiveness of an electronic hand hygiene feedback device targeted to improve rates of hand hygiene

A.G. Sahud*, N. Bhanot, S. Narasimhan, E.S. Malka
*Allegheny General Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 271-273


手指衛生遵守のモニタリングのために、これまでに様々な電子ツールが開発されている。手指衛生遵守率改善を目的とした電子式手指衛生フィードバック装置の実用可能性と有効性を評価するため、評価者を盲検化した前向きパイロット研究を実施した。試験参加 1 か月目の手指衛生遵守率(37%)をベースライン値とした。2 か月目から 5 か月目の平均遵守率は、それぞれ 43%、44%、45%、および 49%であった(P < 0.001)。この電子式装置は実用可能であり、手指衛生遵守率の若干の改善が得られた。このような電子式装置の効果をより大きな規模で検証するための研究が実施される予定である。

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監訳者コメント
手指衛生遵守率の向上とその維持は感染管理において極めて重要かつ果てしない課題である。この論文で紹介されている電子式ツールは、部屋毎に設置する機械が 1 台 500 ドル、スタッフがポケットに入れるデバイスが 1 台 150 ドルである。手指衛生遵守率モニタリングは人的な直接観察法から、本論文で使用されたセンサー式、消毒薬の使用回数や使用量から推測する方法と様々であるが、どれも導入当初は遵守率向上に貢献するものの、見られていることになれてしまうと、その効果も徐々に薄れていく。つまりは、ホーソン効果が最も有効な遵守率向上のツール(?)なのであろうか。いずれにしても、感染管理に費やす費用を何に投資するのか、そのアセスメントが感染管理担当者の悩みどころである。

プライマリ・ケア/コミュニティ・ケアにおける感染予防実践の改善

Improving infection prevention practice in primary and community care

C. Blaine*, C. Pellowe, S. Hodgkinson
*Royal College of Physicians, UK

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 274-276


2012 年 3 月、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、プライマリ・ケア/コミュニティ・ケアにおける医療関連感染の予防・制御に関する 2003 年のガイドラインの改訂版を公表した。ガイドラインの作成にあたっては、ランダム化比較試験に基づく質の高いエビデンスはほとんど得られなかった。このような領域においては、質の高い研究を実施することが NICE ガイドラインの今後の改訂に寄与すると考えられ、その結果、より強固な推奨事項が提起されることになると思われる。本稿では、ガイドラインに記載された主な「研究の推奨」について概説するとともに、システマティックレビューによるエビデンスが得られない場合の「研究の推奨」の策定プロセスについて述べる。

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監訳者コメント
ガイドラインの作成には、多くの場合公表論文がエビデンスとして用いられる。システマティックレビューやランダム化比較試験(RCT)が、強い、つまり信頼のできるエビデンスとして引用され、結果、エビデンスレベルの高い勧告となる。一方、不十分なサンプル数での比較研究や症例対照研究はエビデンスレベルとしては低いものとなる。とはいえ、作成されたガイドラインは不変のものではなく、時間の経過の中で、新しい対策や機器・機械が登場したり、研究が進むことで、さらに質の高い論文が公表され、それに伴ってガイドラインも改訂されることになる。
この論文では、患者や医療従事者への教育、市中での感染対策、在宅での医療行為などについては十分な研究結果が報告されておらず、ガイドラインの作成を困難なものにしていると述べられている。まさに医療機関の感染対策担当者が知りたいと思う部分が欠けており、このことは、我々自身が日常の活動の中でリサーチマインドをもち、目の前の疑問を研究としてとらえる意識が求められているということではないだろうか。

アルコール製手指消毒薬と抗菌性石けんの in vitro および in vivo での抗ウイルス活性の比較

Comparison of virucidal activity of alcohol-based hand sanitizers versus antimicrobial hand soaps in vitro and in vivo

J. Steinmann*, D. Paulmann, B. Becker, B. Bischoff, E. Steinmann, J. Steinmann
*University Hospital Essen, Germany

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 277-280


ポリオウイルス、アデノウイルス、ワクチニアウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、およびヒトノロウイルスの代替ウイルスとしてのネコカリシウイルス(FCV)とマウスノロウイルス(MNV)に対する 3 種類のエタノール製消毒薬の不活化効果を、懸濁試験により 3 種類の抗菌性液体石けんと比較した。さらにフィンガーパッド法により、MNV に対する消毒薬と石けんの効果を比較した。懸濁試験の結果、消毒薬はいずれも試験ウイルスを十分に不活化したのに対して、石けん 2 種類はワクチニアウイルスおよび BVDV に対してのみ効果を示した。フィンガーパッド法では、ポビドンヨード含有石けんは消毒薬よりも優れていたが、他の 2 種類の石けんには効果が認められなかった。

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監訳者コメント
手指衛生は接触予防策の肝である。特にノロウイルス感染症に対する感染対策においては、感染を拡大しない、そして自分自身が感染しないためにも、確実な手指衛生が強く求められる。日本においては、近年、添加物によりノロウイルスに対する効果が期待できるアルコール製剤も発売されている。ただし、手指に有機物による明らかな汚れがあるときには、流水と石けんで洗い流すことも必要である。

カンジダ血症を併発した癌患者における Port-A-Cath デバイス管理の影響

Impact of Port-A-Cath device management in cancer patients with candidaemia

Y.-C. Lai*, L.-J. Huang, T.-L. Chen, Y.-W. Yang, L.-T. Hsiao, H.-W. Teng, C.-P. Fung, T.-J. Chiou, C.-H. Tzeng, C.-Y. Liu
*Taipei Veterans General Hospital, Taiwan, ROC

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 281-285


本研究では、完全埋め込み型中心静脈アクセスポートデバイス Port-A-Cath(Smith Medical 社、St. Paul、MN、米国)の管理が、カンジダ血症を併発した癌患者 98 例の転帰に及ぼす影響を調べた。Port-A-Cath 留置は不良な転帰と有意に関連しており、これは他の重要な予後不良因子(ブレイクスルーカンジダ血症、Acute Physiology and Chronic Health Evaluation[APACHE] II スコア ≧ 21、および Eastern Cooperative Oncology Group performance status[ECOG PS]高値[3 ~ 4])とは独立していた。しかし、カテーテル関連カンジダ血症の確定診断がなされていない患者、完全静脈栄養法を使用していない患者、ECOG PS または APACHE II スコアが不良ではない患者、および敗血症性ショックのない患者に対しては、Port-A-Cath 留置を考慮することが可能である。

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監訳者コメント
本論文では、カンジダ血症と診断されたときのポートの抜去にフォーカスしている。対象となった 98 人のほとんどに抗真菌薬が投与されていたが、投与のタイミングは中央値で 3 日(範囲は、カンジダ血症発症の 19 日前から 17 日後)であった。血液培養陽性から抗真菌薬投与開始までの日数が予後に大きく影響するという報告もあり、結果への影響が気にかかった。
なお、ブレイクスルー感染症とは、抗真菌薬の投与中に生ずる新たな真菌感染症を意味する。

冠疾患集中治療室におけるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)血流感染症アウトブレイク

Outbreak of Pseudomonas fluorescens bloodstream infection in a coronary care unit

N. Benito*, B. Mirelis, M. Luz Gálvez, M. Vila, J. López-Contreras, A. Cotura, V. Pomar, F. March, F. Navarro, P. Coll, M. Gurguí
*Hospital de la Santa Creu i Sant Pau, Spain

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 286-289


冠疾患集中治療室で発生した患者 6 例のシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)感染症アウトブレイクは、過去に報告例のない感染源である心拍出量測定のために使用した氷槽に関連していた。P. fluorescens による偽性菌血症アウトブレイクや、何例かの輸血関連血流感染症がこれまでに報告されている。しかし、P. fluorescens 血流感染症アウトブレイクについてはこの 20 年間で 2 件の報告があるのみで、本論文は 3 件目の報告となる。血液培養により P. fluorescens が分離された場合は、医師は注入液、ロック溶液、またはカテーテルフラッシュでの汚染の可能性に注意を払う必要がある。

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監訳者コメント
アウトブレイクの感染源は生食シリンジを冷却するための氷槽であり、冷却を中止した後、アウトブレイクは終息した。約半年間にわたり 6 例の症例が探知されているが、長期にわたり氷槽が汚染されていたとすれば、感染対策に問題があったと思われ、その管理が気にかかるところである。

集中治療室における多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(multi-drug-resistant Acinetobacter baumannii;MDRAB)アウトブレイクの制御:集中治療室の迅速な閉鎖の実行可能性および経済的影響

Control of multi-drug-resistant Acinetobacter baumannii outbreaks in an intensive care unit: feasibility and economic impact of rapid unit closure

S. Ayraud-Thévenot*, C. Huart, O. Mimoz, M. Taouqi, C. Laland, A. Bousseau, O. Castel
*CHU La Milétrie, France

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 290-292


アシネトバクター・バウマニー多剤耐性株(multi-drug-resistant Acinetobacter baumannii;MDRAB)による院内アウトブレイクが、2006 年 1 月から 5 月に総合的外科集中治療室(SICU)で発生した。このアウトブレイク中に、20 例の患者に MDRAB の同一株の保菌が認められた。制御策の導入にもかかわらず、アウトブレイクは SICU の完全閉鎖によってようやく終結した。2009 年 1 月に同じ SICU で 2回目のアウトブレイクが確認された際には、可及的速やかに SICU の閉鎖を実施した。この方策によりアウトブレイクの迅速な制御が可能となり、感染患者は 7 例にとどまり、25 日間で終結した。このアウトブレイクによる経済的影響もかなり小さく、推定費用は 2006 年の 539,325 ユーロに対して 2009 年は 202,214 ユーロであった。本研究から、SICU の迅速な閉鎖と患者の他所へのコホーティングは、MDRAB アウトブレイク制御のための費用対効果の高い方法であることが明らかとなった。

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監訳者コメント
アシネトバクター・バウマニー多剤耐性株によるアウトブレイクを探知したら、すぐに ICU を閉鎖することがアウトブレイクの終息に効果的であった、という論文である。2006 年と 2009 年のアウトブレイクの菌株は異なるものであったというが、なぜ、感染が拡大したのかという疑問が残る。貴重な機会ととらえ、しっかり疫学調査を行ってほしい。

侵襲性アスペルギルス症:薬剤搬送装置は高リスク病棟における糸状真菌の汚染源か?

Invasive aspergillosis: drug-dispensing systems as a source of filamentous fungal contamination in high-risk units?

P. Gibert*, E. Brudieu, J.F. Timsit, L. Foroni, A. Thiébaut-Bertrand, B. Allenet, H. Pelloux, M.-P. Brenier Pinchart
*Centre Hospitalier Universitaire de Grenoble, France

Journal of Hospital Infection (2012) 82, 293-296


Grenoble University Hospital の空気感染制御を実施している高リスク病棟には自動薬剤搬送装置が設置されており、薬剤部から病棟まで薬剤輸送カートによって薬剤が搬送され、毎日補充されている。本研究の目的は、輸送カート内の糸状真菌汚染レベルを、通常の条件下および Aniosurf®(殺真菌消毒薬)による洗浄後に評価することである。糸状真菌は全サンプル中から検出され、サンプルの 83.3%はアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)で汚染されていた。輸送カートを Aniosurf® で洗浄したところ、糸状真菌のレベルが有意に減少したが、非制御環境下での 24 時間の保管後には再び汚染が認められた。

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監訳者コメント
ショッキングなタイトルの論文である。対象となった血液内科病棟は、HEPA フィルタを設置し、陽圧管理されている。この病棟内に搬送されるカートに糸状菌が付着していたという。改修工事などで空気中に巻き上げられたアスペルギルスを吸引することでアウトブレイクの原因となるという報告はあるが、カートに付着しているアスペルギルスが感染源としてリスクとなり得るのか、そもそも費用と人力に限りのある感染対策は、リスクアセスメントを行い、優先順位を付けて実施したい。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.