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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

手術部位感染サーベイランス:より正確な定義と徹底的な記録が必要である

Surveillance of surgical site infection: more accurate definitions and intensive recording needed

D. Leaper*, J. Tanner, M. Kiernan
*University of Newcastle, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 83-86


手術部位感染(SSI)は、依然として医療提供システムの負荷であるとともに、医療介入による合併症といえる SSI 関連疾患、さらには死亡の被害を受ける患者の負荷となっている。SSI サーベイランスは多くの場合、施設における感染予防・制御活動の必須の構成要素であるが、確立された手法に従って退院後サーベイランスが実施されていないと、そのデータは不正確にして誤解のもととなる可能性がある。確立された定義が使用されないこと、症例検出方法が不統一であること、および追跡調査が不完全であることが重なると、サーベイランスから得られた結果は、安全に関する誤った感覚をもたらしたり、逆に不要な不安を助長したりすることになる。ベンチマーキングに適切であることを標榜する全国サーベイランスプログラムのデータは、多くの場合、適切にデザインされた研究が発表した感染率とは一致せず、その理由を調査する必要がある。ベンチマーキングを真に望ましいものとし、また臨床医らがそのデータに信頼を寄せるようにするには、サーベイランス参加施設が定義、退院後の症例検出方法、および確立された追跡調査方法に関する一貫したアプローチを採用できるようにサーベイランスプログラムが取り計らうべきであり、これによって、あらゆる機会を利用してデータの回収率の最大化を図り、妥当性を強化することが可能となるようにする必要がある。

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監訳者コメント
英国では、2008 年に「Surgical site infection: prevention and treatment of surgical site infection」という SSI のガイドラインが英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence, UK)から発表された。次の論文で質問票調査による英国の SSI の現状と、このガイドラインに沿った全国サーベイランスデータの解離について検討している。

ベンチマークとするにはほど遠い:手術部位感染の全国サーベイランスの結果

A benchmark too far: findings from a national survey of surgical site infection surveillance

J. Tanner*, W. Padley, M. Kiernan, D. Leaper, P. Norrie, R. Baggott
*De Montfort University, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 87-91


背景
イングランドの手術部位感染(SSI)の全国サーベイランスサービスでは SSI 発生率を整理・公表し、ベンチマーキングおよび SSI 有病率の算出に供している。しかし、質の高い SSI サーベイランス法を用いた調査研究による報告では、SSI発生率は全国サーベイランスサービスの公表よりもはるかに高い。このばらつきは、全国サービスで収集されたデータの妥当性に疑問を呈するものである。

目的
イングランドの病院トラストで用いられている SSI の定義およびデータ収集方法を監査すること。

方法
イングランドの 156 のすべての病院トラストに対して、SSI の定義およびデータ収集方法に関する質問票を送付した。

結果
106 の病院トラストから記入済み質問票を回収した。データ収集方法およびデータの質には大きな相違があり、報告された SSI 率にばらつきをもたらしていた。例えば、膝関節置換術での SSI 発生率は、質の高い退院後サーベイランスを行っていたトラストでは 4.1%、質の低い退院後サーベイランスを行っていたトラストでは 1.5%であった。全国サーベイランスのプロトコールと定義に反して、トラストの 10%は表層感染症のデータを提出しておらず、15%は推奨されている SSI の定義を使用しておらず、8%は入院患者のデータのみを使用していた。30 のトラストは、自院のデータの完全なセットを全国サーベイランスサービスに提出していなかった。提出されていないデータは、非義務的データ、退院後サーベイランスデータ、および継続的サーベイランスデータなどであった。

結論
全国サーベイランスサービスは SSI 発生率を過小評価しており、ベンチマーキングには適切でない。質の高い SSI サーベイランスを実施している病院では、現行のサーベイランスサービスの枠内では自院に不利なデータが出ることになると考えられる。

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監訳者コメント
本論文では、病院へのアンケートにより英国の SSI サーベイランスの信頼性を確認している。今回の解析では、より実態を反映するサーベイランスのためには post discharge surveillance(PDS)と呼ばれる退院後サーベイランスデータのさらなる活用が重要であることが強調されていた。公衆衛生分野では、サーベイランスの評価をする時の指標に以下の 7 つがある。すなわち simplicity、flexibility、acceptability、sensitivity、predictive value positive、representativeness、timeliness である。この項目に沿って結果を読んでみると、自施設のサーベイランスを再確認するチャンスにもなると思われる。

医療関連感染の公表:専門家の躊躇と一般市民の関心との関係

Public reporting of healthcare-associated infection: professional reticence versus public interest

M.A. Kiernan*
*Southport and Ormskirk Hospital NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 92-93


No abstract.

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欧州における医療関連感染のデータの公表:感染予防のオピニオンリーダーらの見解は?

Public reporting of healthcare-associated infection data in Europe. What are the views of infection prevention opinion leaders?

M. Martin*, W. Zingg, S. Hansen, P. Gastmeier, A.W. Wu, D. Pittet, M. Dettenkofer on behalf of the PROHIBIT study group
*University Medical Center Freiburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 94-98


背景
欧州では、医療関連感染(HAI)のデータの公表に対する関心が、主に患者の安全性の観点から高まっている。しかし、患者やその他の関係者にとってこれらのデータが有用であるかどうかは不明である。

目的
欧州の感染制御のオピニオンリーダーらの見解を収集すること、および欧州における HAI データの公表に関する情報を提示すること。

方法
欧州 34 か国の欧州疾病予防管理センター(ECDC)の HAI surveillance National Contact Points や感染制御のオピニオンリーダーらに自国の HAI データの報告に関する質問票への記入、および公表に関する個人的見解の提示を依頼した。2010 年と 2012 年に開催された 2 回のコンセンサスミーティングで、この問題について討論を行った。

結果
2 回の調査の回答率は 100%と 93.9%であった。HAI データ公表の現行の実践には欧州内で大きなばらつきがあった。多くの専門家は、HAI データの公表という考え方を支持していた。公表制度が確立されている 7 か国の代表者は全員、公表の実践を支持していた。第 1 回のミーティング後、12 名の専門家が意見を変更した。大部分の専門家は最終的に、質に基づく競争が強化されることによって病院は有益な影響を受けるということに同意したが、感染率のデータは患者に誤解される可能性があり、標準化と妥当性検証が必要であることから、これらのデータの公表には躊躇を示した。

結論
欧州の感染制御のオピニオンリーダーらは、データの公表は病院機能に有益な影響を及ぼし、その結果として感染減少への取り組みが行われるであろうということに同意した。彼らは、(i)アウトカムデータではなくプロセス指標が報告されること、および(ii)サーベイランスは外部監査機関のモニタリングを受けることを条件として、個々の病院のデータを報告することを支持した。

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監訳者コメント
本論文によると、2010 年の時点で 33 か国のうち 7 か国で病院毎の医療関連感染データの公開が義務化されていたが、公表の形式や頻度は週報から半期毎と様々であった。Surveillance for action の視点に基づく有益なデータの公表について考える機会となる論文である。

経腟および経直腸超音波検査の感染リスク:システマティックレビューとメタアナリシス★★

Infectious risk of endovaginal and transrectal ultrasonography: systematic review and meta-analysis

S. Leroy*
*Institut Pasteur, Paris, France

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 99-106


背景
経腟・経直腸超音波トランスデューサの適切な消毒は、産婦人科や泌尿器科における現在の難題である。しかし、フランスなどの一部の国々では、ルーチンにプローブカバーを使用し、その後に低レベルの消毒(ワイプ、噴霧)を実施してから次の患者に使用することが多い。

目的
学術論文のシステマティックレビューとメタアナリシスにより経腟・経直腸プローブ使用後の汚染に関する事例報告を特定し、日常診療でのこれらのプローブの使用に関連する感染率を推計すること。

方法
システマティックレビューおよびメタアナリシス。

結果
適格と考えられる論文 867 報のうち、最終的に 32 報を対象とした。汚染経路が確認された症例はわずかであった。アウトブレイク発生時以外に、経腟・経直腸超音波プローブの使用によるウイルス汚染を検出することは、不可能ではないものの困難である。しかし、低レベルの消毒後の経腟・経直腸プローブの汚染率は、統合データによると病原細菌 12.9%(95%信頼区間[CI] 1.7% ~ 24.3%)、一般的なウイルス(ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびサイトメガロウイルス) 1.0%(95%CI 0.0% ~ 10.0%)であった。経直腸超音波検査および超音波ガイド下生検後の統合データでの患者の感染率は 3.1%(95%CI 1.6% ~ 4.3%)と推計された。

結論
経腟・経直腸超音波トランスデューサを介する細菌またはウイルスの伝播リスクがあると考えられ、今回のメタアナリシスによりこのリスクが推計された。リスクを定量化するために、高度なモデルを用いたさらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
32 報の論文を用いたメタアナリシスである。このレビューでは、超音波ゼリーの汚染、プローブカバーの 1% ~9%に破損があり、カバーを使用していても消毒後のプローブ先端が汚染されていたことが解説されている。さらに、経腟・経直腸超音波トランスデューサはセミクリティカル・アイテムでありながら、適切な消毒方法が実施されていない状況が述べられている。患者間での高レベル消毒薬の使用は時間に制限があることが普及しない理由の 1 つとしてあげられている。このレビューを読めば、もはや言い逃れはできないことは明らかであろう。

欧州の 13 の外科病棟への入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌が未知であることに関するリスク因子

Risk factors for previously unknown meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage on admission to 13 surgical wards in Europe

A. Pan*, A. Lee, B. Cooper, A. Chalfine, G.L. Daikos, S. Garilli, H. Goossens, S. Malhotra-Kumar, J.A. Martínez, A. Patroni, S. Harbarth for the SURF study group (MRSA colonisation on admission to surgical wards in Europe: identification of risk factors), in collaboration with the MOSAR-04 Study Team
*Istituti Ospitalieri di Cremona, Italy

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 107-113


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌者の早期特定は、臨床的および疫学的な理由で有意義であると考えられる。

目的
フランス、ギリシャ、イタリア、スペインの 13 の外科病棟への入院時に MRSA 保菌が未知であることのリスク因子を特定・比較すること。

方法
本研究は、外科病棟入院時に MRSA スクリーニングを受けた連続症例を対象とした前向き観察コホート研究である。社会人口学的データ、併存疾患、および想定される MRSA のリスク因子を記録した。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、患者の特性に基づいて入院時に MRSA 保菌が未知である確率を推定した。MRSA 保菌の予測ルール(prediction rules)を作成し、c 統計量を用いて評価した。

結果
登録患者 2,901 例に対する入院時スクリーニングにより、新規 MRSA 保菌者が 111 例(3.8%)特定された。MRSA 保菌の独立リスク因子は、尿道カテーテル留置(オッズ比[OR] 4.4、95%信頼区間[CI] 2.0 ~ 9.9)、ナーシングホーム居住(OR 3.8、95%CI 1.9 ~ 7.7)、慢性皮膚疾患(OR 2.9、95%CI 1.5 ~ 5.8)、創傷・潰瘍(OR 2.4、95%CI 1.5 ~ 4.0)、最近の入院(OR 2.2、95%CI 1.5 ~ 3.3)、糖尿病(OR 1.6、95%CI 1.02 ~ 2.5)、および年齢 > 70 歳(OR 1.5、95%CI 1.03 ~ 2.3)であった。しかし、リスク因子は施設によりばらつきがあった。全施設に共通の予測ルールの c 統計量は 0.64 であり、予測能は限定的であることが示唆された。

結論
欧州各国の MRSA 保菌者のリスクプロファイルはそれぞれの外科病棟により異なっていた。欧州の施設に共通する予測ルールの臨床的価値は限定的であったことから、施設ごとのリスク因子を特定することが重要である。

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監訳者コメント
医療施設により入院患者の背景は大きく異なるが、外科病棟に限定しても同様であった、という研究である。感染対策にそれほど多くの選択肢はないとしても、優先すべきもの、重点的に実施すべきものを特定するためには、自施設のデータに基づくリスクアセスメントによる客観的な評価が不可欠である。

入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の低保菌率:リスク因子に基づくスクリーニングとユニバーサルスクリーニングにおける意義の比較★★

Low prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage at hospital admission: implications for risk-factor-based vs universal screening

J.A. Otter*, M.T. Herdman, B. Williams, O. Tosas, J.D. Edgeworth, G.L. French
*King’s College London, Guy’s and St. Thomas’ Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 114-121


背景
入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌の検出に関する最適な方針については意見が分かれている。市中獲得型 MRSA(community-associated MRSA;CA-MRSA)の出現は、医療関連 MRSA(healthcare-associated MRSA;HA-MRSA)に関するリスク因子に基づく標的を絞ったスクリーニング戦略の妨げとなる可能性がある。

目的
入院時の MRSA 保菌率と、その分離株の遺伝子型および分子疫学を明らかにすること。

方法
ロンドンの 1,200 床の 3 次紹介病院で、2008 年 4 月 1 日から 2009 年 3 月 1 日の 12 か月間、観察研究を実施した。採取したすべての MRSA 分離株の spa およびブドウ球菌カセット染色体 mec(SCCmec)タイピングによる遺伝子型判定を行った。

結果
全体的な MRSA 保菌率は、入院患者 28,892 例中 2.0%(範囲は重症管理部門の 6.6%から産科・婦人科・新生児科の 0.8%)であった。入院時に未知の MRSA 保菌の全体的な検出率は 1.4%であった。最も多い保菌株は流行性 HA-MRSA-15 および 16 であった。しかし、回収された分離株の 18%は種々の CA-MRSA 株であり、このうち 37.5%の MRSA は救急部門、23.1%は外科部門から分離されたものであった。CA-MRSA 株の疫学的特性は HA-MRSA 株とは大きく異なっており、したがって HA-MRSA の同定に用いられるリスク因子では、高い信頼性をもって CA-MRSA を検出できないと考えられる。

結論
英国では HA-MRSA 保菌率が低いため、CA-MRSA 保菌率が相対的に高くなっており、CA-MRSA に対しては従来のリスク因子に基づくスクリーニング戦略の効果は低いと考えられる。MRSA を対象とした入院時ユニバーサルスクリーニングの費用対効果分析にあたっては、この新たな疫学的所見を考慮する必要がある。

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監訳者コメント
MRSA の疫学的、分子疫学的な基本知識を再確認し、そのうえでリスク分析ができ、加えて、統計解析、結果や考察のまとめ方など、参考になることが多い論文である。読むことをお薦めする。
以下は MRSA の基本情報である。MRSA がβ-ラクタム系抗菌薬に耐性を示すのは PBP2' という酵素産生による。PBP2' 産生をつかさどる遺伝子が mecA 遺伝子で、MRSA の染色体 DNA には、MSSA には存在しない(= 外来性)SCCmec と呼ばれる DNA 断片が挿入されている。mecA 遺伝子はこの SCCmec 上に存在する。HA-MRSA と CA-MRSA の違いの 1 つは SCCmec であり、薬剤感受性では、HA-MRSA の多くは多剤耐性を示すのに対し、CA-MRSA はβ-ラクタム系抗菌薬以外には感受性を示す傾向がある。その一方、欧米を中心に分離されている CA-MRSA の多くは Panton-Valentine leukocidin(PVL)と呼ばれる白血球殺毒素を産生するが、HA-MRSA ではあまり産生されない。ちなみに、日本で分離される CA-MRSA はこれまでのところ、PVL 陰性株が主流を占めている。

医療環境における真菌生菌の迅速定量法:固相サイトメトリーを用いた空気サンプルおよび表面サンプルの分析

Rapid quantification of viable fungi in hospital environments: analysis of air and surface samples using solid-phase cytometry

D. Méheust*, P. Le Cann, J.-P. Gangneux
*EHESP, Sorbonne Paris Cité ,France

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 122-126


背景
免疫抑制患者の真菌感染の防止には、病院の高リスク区域での環境サーベランスが重要である。環境中の真菌数を定量化するには、従来の培養法は時間を要する。

目的
この実地調査では、病院の空気サンプルと表面サンプルの真菌汚染の定量化を、固相サイトメトリー法と従来の培養法で比較した。

方法
空気サンプルの採取にあたっては病院内の 4 か所の採取場所で、液体サイクロンエアサンプラーを流量 300 L/分、10 分間の条件で使用した。表面サンプルの採取は 2 か所の採取場所で、2 種類の異なるスワブを用いて行った。いずれの区域から採取したサンプルも、固相サイトメトリー法および麦芽エキス寒天培地での培養により処理した。

結果
固相サイトメトリー法で特定した空気サンプル中の真菌生菌平均濃度は、培養法による平均濃度の約 1.5 倍であった。病院環境の 3 か所の空気サンプルでは、この差は統計学的に有意であった。表面サンプルでは、2 種類のスワブの間、また 2 種類の分析法の間で有意差は認められなった。固相サイトメトリー法の明確な長所の 1 つは、培養法と比較して迅速であることであった(5 時間対 5 日)。

結論
本研究から、固相サイトメトリーにより病院環境中の真菌生菌の迅速なモニタリングが可能となることが示された。したがって、固相サイトメトリーを用いることにより早期に警告を発し、早急に是正策を実施することができる。真菌生菌の検出は、免疫抑制患者が滞在する病棟での感染リスクの重要な評価法であると考えられる。

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監訳者コメント
医療施設の建築・改修・工事に伴う塵埃の発生は、特に免疫が低下している患者にとってアスペルギルス属に代表される真菌感染症発症の危険性につながるものであり、その対策は極めて重要である。米国では、infection control risk assessment(ICRA)と呼ばれるリスクアセスメントツールを用いて事前に作業内容のリスクを評価し、必要な対策を決定する仕組みが取り入れられている。この論文で検討されているような当日中に結果がわかる検査法があれば、環境の封じ込めなどの対策が機能しているかどうかの評価に役立つと思われるが、実施には必要となる費用も考慮が必要であろう。

フィンランドのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の 2008 年から 2010 年にかけての減少

Reduction in Clostridium difficile infections in Finland, 2008-2010

M. Kanerva*, S. Mentula, A. Virolainen-Julkunen, T. Kärki, T. Möttönen, O. Lyytikäinen and the Hospital Infection Surveillance Team
*National Institute for Health and Welfare (THL), Finland

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 127-131


背景
フィンランド全国感染症登録(Finnish National Infectious Disease Register;NIDR)および、またフィンランド病院感染プログラム(Finnish Hospital Infection Programme;SIRO)によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)入院患者を対象とした強化サーベイランスの一環として、2008 年 1 月に臨床検査に基づく C. difficile サーベイランスが開始された。

目的
初期 3 年間のデータを提示すること。

方法
すべての臨床検査機関が便検体の毒素産生性 C. difficile 陽性症例を NIDR に報告した。CDI、CDI の由来、および重症例の定義は欧州疾病予防管理センター(ECDC)の暫定的な定義を使用して、CDI 入院患者のサーベイランスを実施した。2008 年から 2010 年にかけて、保健行政区 21 区のうち 10 区の急性期病院の合計 16 施設が SIRO に参加した。臨床微生物学検査室に、重症例から採取した分離株および持続的なアウトブレイク時に採取した分離株を、遺伝子型判定のために国内の標準検査施設に送付するよう依頼した。

結果
CDI の年間発生率は、2008 年の地域住民 100,000 人あたり 119 例から 2010 年の 90 例へ 24%減少した。保健行政区 21 区のうち 13 区(62%)で減少が認められた(行政区ごとの減少率の範囲は 2%から 51%)。院内感染率は、1,000 患者日あたり 0.31 例から 0.23 例へ 26%減少した。SIRO に参加する約半分の病院で減少が認められた。2008 年から 2010 年にかけて、保健行政区 17 区が遺伝子型判定のために C. difficile 検体を送付した。行政区 8 区からリボタイプ 027 が検出され、これらの行政区はいずれも地域住民の CDI 発生率が平均値を超えるか、期間中に増加していた。

結論
地域住民対象の CDI サーベイランスおよび院内感染症例の強化サーベイランスによって CDI は減少していることが示されたが、CDI 制御の成果には地域によりばらつきがみられた。

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監訳者コメント
C. difficile 感染症は、欧米では、疫学情報や遺伝子疫学情報を集約するためのサーベイランスが構築され、解析が進んでいる。抗菌薬使用後の発生よりも市中感染や医療関連感染が問題となっており、経済的負担も課題であることが、本論文や EU については ECDC のレポートで取り上げられている。日本にも対策のための現状を把握する仕組みの構築が求められる。

髄膜腫患者の尿路感染症:リスク因子と転帰の解析

Urinary tract infections in meningioma patients: analysis of risk factors and outcomes

K. Nosova*, M. Nuño, D. Mukherjee, S.P. Lad, M. Boakye, K.L. Black, C.G. Patil
*Cedars-Sinai Medical Center, California, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 132-139


背景
尿路感染症(UTI)は全院内感染の約 35%を占めており、75%が尿道カテーテルの使用に関連している。

目的
本研究の目的は、UTI のリスクに関連する術前因子を評価するとともに、患者の転帰および医療資源利用に対する UTI の影響を推測することである。

方法
米国の病院で 2002 年から 2007 年に開頭術を受けた成人髄膜腫患者を Nationwide Inpatient Sample(NIS)データベースから検索した。補正した標本抽出調査データの単変量解析および多変量解析により、周術期 UTI と転帰との関連を調べた。

結果
合計 46,344 例の患者を対象とした。女性が半数以上であり(70.0%)、男性よりも死亡率が低く(1.2%対 2.0%)、入院期間が短く(6.7 日対 7.5 日)、1 人あたり入院費が低く(76,682 米ドル対 87,220 米ドル)、UTI 発生率が高かった(6.3%対 3.9%)。多変量解析により UTI と関連していた因子は、女性(オッズ比[OR] 2.2、P < 0.0001)、高齢(OR 1.4、P < 0.001)、救急室経由での入院(OR 1.8、P < 0.0001)、全入院期間(OR 1.08、P < 0.0001)、併存疾患スコア(OR 1.04、P = 0.0147)、術後の体液・電解質異常(OR 1.96、P < 0.0001)、および肺合併症(OR 1.3、P < 0.0011)であった。UTI のために入院期間が 2.3 日延長し、1 人あたり入院費が 18,920 米ドル上昇した。

結論
周術期 UTI は特定の併存疾患および術後合併症と関連していた。また、UTI により有意に入院期間が延長し、入院費が増加していた。これらのデータから、脳神経外科患者の病院 UTI を減少させるために進められている全国的な取り組みを推進する必要があることが明らかとなった。

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ケニアの Thika Hospital における手術部位感染サーベイランスの評価

Evaluation of surveillance for surgical site infections in Thika Hospital, Kenya

A.M. Aiken*, A.K. Wanyoro, J. Mwangi, P. Mulingwa, J. Wanjohi, J. Njoroge, F. Juma, I.K. Mugoya, J.A.G. Scott, A.J. Hall
*London School of Hygiene and Tropical Medicine, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 140-145


背景
低所得国では、手術部位感染(SSI)は極めて頻度が高い病院感染の 1 つである。サーベイランスは SSI 制御のための重要な手法であるが、低所得環境での最善のサーベイランス方法については明らかにされていない。

目的
ケニアの病院 1 施設において、SSI サーベイランスプログラムのいくつかの項目の疫学的特性を評価すること。

方法
手術創分類(SWC)スコアおよび米国麻酔学会(ASA)スコアの観察者間一致度を κ 統計量を用いて評価した。退院後の電話調査による SSI 検出を、「ゴールドスタンダード」である医師による外来患者の診察と比較した。米国疾病対策センター・全米医療安全ネットワーク(CDC-NHNS)リスク指標の諸項目によるSSI検出の的中率を、2010 年 8 月から 2011 年 2 月に産科婦人科の大手術を受けた患者を対象として評価した。

結果
適切な研修を実施後、外科医が判定した SWC スコアおよび麻酔科医が判定した ASA スコアのいずれについても、高い観察者間一致度が認められた。電話調査による退院後 SSI の検出は、感度 70%(95%信頼区間[CI] 47% ~ 87%)、特異度 100%(95%CI 95% ~ 100%)であった。産科婦人科の大手術を受けた 954 例の患者においては、CDC-NHNS リスク指標モデルの中で SSI リスクに関連するパラメータとしては、SWC スコアが唯一のものであった(オッズ比 4.00、95%CI 1.21 ~ 13.2、P = 0.02)。

結論
低所得環境の病院で SSI サーベイランスは実施可能であるが、そのためには熱心な病院職員、十分な研修、およびサーベイランス方法の部分的な修正が必要である。電話調査による退院後 SSI サーベイランスは不完全ではあるが、各診療所での検出方法としては実務的な代替手段となる。本研究では、SWC スコアが産科婦人科手術後の SSI リスクの唯一の予測因子であった。

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3 次整形外科病院の入院患者における病院獲得型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の発生率およびリスク因子

Incidence and risk factors for hospital-acquired Clostridium difficile infection among inpatients in an orthopaedic tertiary care hospital

K.A. Campbell*, M.S. Phillips, A. Stachel, J.A. Bosco III, S.A. Mehta
*New York University Hospital for Joint Diseases, NY, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 146-149


この後向き研究の目的は、整形外科患者における病院獲得型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染(HA-CDI)のリスク因子を特定することである。32 例の各 HA-CDI 症例に、対照例を 2 例ずつマッチさせた。発生率は 1,000 患者日あたり 0.33 であった。単変量解析により、入院後 24 時間以降の手術、抗菌薬治療、およびプロトンポンプ阻害薬が HA-CDI と関連することが示された。多変量解析では、入院後 24 時間以降の手術が HA-CDI と関連していた。手術に先立って入院した患者では HA-CDI のリスクが高かったことから、外来において術前の患者状態の最適化を適時に行うことによって、C. difficile への環境曝露の減少が可能であることが示唆される。

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医療資源の乏しい病院における洪水後の真菌エアロゾルの測定:落下菌測定法を使用できるか?

Post-flood measurement of fungal bio-aerosol in a resource-limited hospital: can the settle plate method be used?

T. Khawcharoenporn*, A. Apisarnthanarak, K. Thongphubeth, C. Yuekyen, S. Damnin, M.K. Hayden, R.A. Weinstein
*Thammasat University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 150-152


タイの病院における洪水後の真菌エアロゾル測定性能を、落下菌測定法と微生物学的エアサンプラー法とで比較評価した。落下菌測定法による真菌エアロゾル量中央値は、自然換気※※病棟のほうが閉鎖換気病棟と比較して培養 3 日目(270 対 90 コロニー形成単位[cfu]/m3)および 5 日目(420 対 180 cfu/m3)で有意に高かった。落下菌測定法と微生物学的エアサンプラー法の培養 3 日目(r = 1.60、P < 0.001)および 5 日目(r = 1.49、P = 0.002)の結果には強い相関が認められたことから、落下菌測定法は、医療資源の乏しい環境の自然換気病棟における洪水後の真菌エアロゾル測定に有用であることが示唆される。

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監訳者注:
閉鎖換気(closed-ventilation):空調システムを使用する換気法。
※※自然換気(open-ventilation):外気を使用する換気法。

多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)分離を予測するリスク因子としてのメロペネム使用

Meropenem as predictive risk factor for isolation of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa

A. Nakamura*, K. Miyake, S. Misawa, Y. Kuno, T. Horii, S. Kondo, Y. Tabe, A. Ohsaka
*Juntendo University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 153-155


本研究の目的は、1997 年 1 月から 2010 年 12 月の日本の大学病院 1 施設における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)分離の独立リスク因子を調べることである。多剤耐性緑膿菌の定義は、調査した 5 種類の抗菌薬すべてに対して耐性または中等度感性の菌とした。14 年間で、多剤耐性緑膿菌保菌患者合計 159 例が特定された。多変量ロジスティック回帰分析から、入院期間が長いこと、メロペネムおよびフルオロキノロン系抗菌薬使用歴、糖尿病、および手術歴が、多剤耐性緑膿菌分離を予測するリスク因子であることが示された。

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集中治療室における連日の入浴とオクテニジン使用によりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌率が低下する

Daily bathing with octenidine on an intensive care unit is associated with a lower carriage rate of meticillin-resistant Staphylococcus aureus

C. Spencer*, D. Orr, S. Hallam, E. Tillmanns
*Lancashire Teaching Hospitals, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 156-159


集中治療室(ICU)の患者の連日の入浴とクロルヘキシジン局所使用によりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌が減少する。本研究の目的は、連日のオクテニジン局所使用の週 5 日間サイクル反復による効果は同様であるかどうかを調べることである。今回の内科外科混合 ICU・高度治療室における 2 年間の後向き非対照試験では、MRSA 保菌は 76%減少したが、ICU 獲得型の全菌血症については有意な減少は認められなかった。クロルヘキシジンの使用は増加している一方で、耐性も報告されている。このパイロット研究により、オクテニジンはクロルヘキシジンの代替として MRSA 保菌を同様に減少させることが示された。その因果関係を明確にするために、さらなる研究が必要である。

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無菌操作の改善により院内調製での静脈内投与における変動が大きい注射器の汚染率を低下させることが可能である

Improved aseptic technique can reduce variable contamination rates of ward-prepared parenteral doses

P. Austin*, M. Elia
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 160-163


中心静脈ラインの操作および静脈内投与の調製には無菌操作が必要である。本研究の目的は、無菌操作の相違が、院内調製での静脈内投与における汚染率に影響するかどうかを調べることである。調剤士 1 名と看護師 5 名が調製した、トリプトンソーヤブイヨン試験培地を充填した注射器の汚染状況を評価した。調剤士による汚染率は看護師よりも低率であった(0.0%対 6.9%、Fisher の正確確率検定、P < 0.001)。汚染率は看護師間に有意差がみられた(約 2%から 17%、2 値ロジスティック回帰、P = 0.018)。結論として、日常の臨床業務に無菌操作の適切な研修・実習を組み入れることによって、汚染率の低下を図るべきである。

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2 種類の選択培地による環境表面からのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)採取の比較

Comparison of two selective media for the recovery of Clostridium difficile from environmental surfaces

K.A. Hill*, J. Collins, L. Wilson, J.D. Perry, F.K. Gould
*Freeman Hospital, Newcastle upon Tyne, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 164-166


英国の病院内の環境表面からクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)を分離する性能を、2 種類の培地で比較評価した。培地として、リゾチーム加セフォキシチン-シクロセリン-卵黄寒天培地(CCEY/L)および chromID C. difficile を使用した。様々な環境表面から滅菌スポンジ(Polywipes)を用いてサンプル採取を行い、両培地に接種した。両培地を併せて、496 の検査部位の 105 部位(21%)から C. difficile が回収された。chromID C. difficile の感度は 87.6%であったのに対して、CCEY/L は 26.6%であった(P < 0.0001)。環境からの C. difficile 回収は、chromID C. difficile のほうが CCEY/L よりも有意に優れていた。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.