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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

感染制御についてお互いに何を学ぶか? 欧州と米国の経験の比較

What can we learn from each other in infection control? Experience in Europe compared with the USA

S. Harbarth*
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 173-184


欧州と米国の感染制御実践は過去 50 年間をかけて、医療関連感染の制御・予防のための種々のアプローチをもたらしてきた様々な技術開発、歴史的経験、および研究施設の影響を受け、確立されてきた。この記述的レビューの目的は、医療関連感染および抗菌薬耐性の制御・予防のための最良の実践を明らかにするために、欧州と米国の歴史的経験や提唱されている方法・方策から学ぶべき最も有用な教訓は何か、という疑問に回答することである。本総説は、争点のある科学的問題に関する現行の議論を展開することや、今日の病院疫学の網羅的な歴史的レビューを意図したものではなく、米国の影響を受けた病院疫学と、欧州の微生物学に基づく従来の衛生学とのギャップを埋めることを目指した個人的な見解であると考えていただきたい。

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監訳者コメント
国境や地域を越えて双方に情報交換するのは有意義である。日本もこの取り組みに学びたいが、土俵に上がれるだけのエビデンスを充実させるのが先決である。

医療環境におけるウイルス性出血熱

Viral haemorrhagic fevers in healthcare settings

L. Ftika*, H.C. Maltezou
*Hellenic Centre for Disease Control and Prevention, Greece

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 185-192


ウイルス性出血熱(VHF)は通常、急速に進行する急性発熱性症候群として発症し、重度の出血症状を伴い、致死率は極めて高い。ヒトからヒトへ伝播し大規模な院内アウトブレイクを引き起こす可能性のある VHF には、クリミア・コンゴ出血熱、エボラ出血熱、マールブルグ出血熱、およびラッサ熱などがある。近年は VHF の院内アウトブレイクの報告が増加しており、このことは VHF の発生動態を反映していると考えられる。人命や、症例管理・接触者の追跡・封じ込めにかかわる費用の点で、これらのアウトブレイクの影響は甚大である。ほとんどの流行国では、VHF のサーベイランス、診断能、感染制御、および院内の VHF イベントの管理に対する全般的な準備状況は非常に限られている。臨床環境での VHF の診断能を向上させ、その価格は安価にする必要がある。適切な防護具が利用できるようにすること、および安全な臨床実践と感染制御に関する医療従事者の教育が、VHF 院内伝播予防の柱である。

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監訳者コメント
輸入感染症としてのウイルス性出血熱であるが、わが国ではごく限られた指定医療機関でのみ、取り組みがなされている。情報を周知し、さらなる備えを考えるべきであろう。

先進国と発展途上国の新生児集中治療室における院内感染:いかにしてギャップの縮小を図ることができるか?

Nosocomial infections in neonatal intensive care units in developed and developing countries: how can we narrow the gap?

J. Gray*, N. Omar
*Birmingham Children’s Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 193-195


No abstract.

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エジプトの新生児集中治療室における院内感染サーベイランス

Nosocomial infection surveillance in an Egyptian neonatal intensive care unit

F. Abdel-Wahab*, M. Ghoneim, M. Khashaba, A.-H. El-Gilany, D. Abdel-Hady
*Mansoura University, Egypt

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 196-199


背景
院内感染は、新生児集中治療室(NICU)の主要な懸念事項となっており、また疾患および死亡の重要な原因となっている。

目的
本研究の目的は、エジプトの NICU における院内感染の発生率、解剖学的部位、および起因微生物を明らかにすること、また入院期間および死亡率に対する院内感染の影響を評価することである。

方法
Mansoura University Children’s Hospital の NICU で 12 か月間にわたり、病院受診者を対象とした記述的研究を実施した。院内感染発生率を種々の分母を用いて算出した(全院内感染発生率、院内感染発生密度、デバイス別の感染発生率、およびデバイス日あたりの感染発生率)。

結果
評価した新生児 238 例中 49 例に 51 件の院内感染エピソードが発生し、発生率は 21.4%、1,000 床日あたり 13.8 件であった。最も頻度が高い感染は肺炎(11.3%)、次いで血流感染(8.8%)であった。最も高い頻度で分離された微生物はクレブシエラ(Klebsiella)属菌(33.3%)、次いで大腸菌(Escherichia coli)(21.6%)であった。院内感染と入院期間延長との間に関連が認められた。

結論
院内感染は Mansoura University Children’s Hospital の NICU における重大な問題である。グラム陰性菌、特に Klebsiella 属菌は、発展途上国の他の研究からも報告されているように、新生児の院内感染の優勢な起因菌であった。

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監訳者コメント
腸内細菌科の細菌を中心とした施設内感染伝播が継続しているとの報告である。地域や国により耐性菌のメカニズムも異なるが、諸外国の事情を理解し自国の感染対策の事情と比較することで改善の糸口が見いだせる場合もあり、興味深い。

ブラジル北東部の公立病院におけるアリ(膜翅目、アリ科)による糸状菌媒介

Filamentous fungi vectored by ants (Hymenoptera: Formicidae) in a public hospital in north-eastern Brazil

R.S.S. Aquino*, S.S. Silveira, W.F.B. Pessoa, A. Rodrigues, J.L. Andrioli, J.H.C. Delabie, R. Fontana
*Santa Cruz State University, Brazil

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 200-204


背景
真菌による日和見感染が増加しているため、病院環境内の想定汚染源の捜索が行われている。

目的
ブラジル北東部・イタブーナの公立病院で、アリの糸状菌保菌を調査した。

方法
1 年間の調査期間中に、病院内の種々の区域でアリを採取した。アリの盛んな採餌行動が観察される場所を主に選択した。アリの外皮上の真菌を培養・同定した。

結果
11 属 12 種の合計 106 匹の働きアリを採取した。合計 47 の真菌株が 40%のアリ(42 匹)から分離され、13 属 16 種の真菌が同定された。多くみられた真菌属は、アスペルギルス(Aspergillus)、プルプレオシリウム(Purpureocillium)、およびフザリウム(Fusarium)であった。アリの中で、アワテコヌカアリ(Tapinoma melanocephalum)、ヒゲナガアメイロアリ(Paratrechina longicornis)、およびツヤオオズアリ(Pheidole megacephala)は 6 属の真菌を保菌しており、ヒアリ(Solenopsis saevissima)の働きアリは 4 属の真菌を保菌していた。真菌の多様性が高い病院内区域は、新生児室、病床、母乳バンク、および小児科であった。

結論
アリは、土壌中および空気中の真菌種のキャリアとして活動しており、これらの微生物の拡散を予防するためには病院区域内でアリを制御する必要がある。

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監訳者コメント
こうした媒介昆虫の医療関連感染に与える影響については、さらなる議論が必要である。

オーストラリア北部熱帯地方の入院患者における市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌

Community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in hospitalized patients in tropical northern Australia

L. Brennan*, R.A. Lilliebridge, A.C. Cheng, P.M. Giffard, B.J. Currie, S.Y.C. Tong
*Menzies School of Health Research, Australia

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 205-211


背景
地方のオーストラリア先住民居住地域から、市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus;CA-MRSA)が初めて報告された。これはオーストラリア北部で優勢な臨床病原体であり、病院環境内で伝播している可能性がある。

目的
Royal Darwin Hospital 内の黄色ブドウ球菌保菌の疫学的特性を明らかにすること。

方法
入院後 48 時間以内に登録した「入院直後の患者群」と入院後 5 日以降に登録した「入院患者群」の 2 群の患者を対象として、スクリーニングを実施した。黄色ブドウ球菌分離株の特性を抗菌薬感受性試験により評価し、複数部位塩基配列タイピング(MLST)に基づく高解像度融解曲線解析法により遺伝子型判定を行った。

結果
黄色ブドウ球菌保菌率は入院直後の患者群 225 例では 30.7%、入院患者群 201 例では 34.8%、MRSA 保菌率はそれぞれ 2.2%、18.9%であった。CA-MRSA は入院直後の患者群の 0.9%、入院患者群の 10.4%から分離され、医療関連(HCA)-MRSA はそれぞれ 1.3%、9.0%から分離された。入院患者群で最も多くみられた MRSA 株は、病院感染型 ST239 であった。入院直後の患者群で多くみられた CA-MRSA の clonal complex(CC)は 1 種類(CC5)、入院患者群では 7 種類(CC1、93、5、6、30、75、88)であった。

結論
入院患者に複数の CA-MRSA 株の保菌が認められたことから、病院内では典型的な HCA-MRSA 株だけでなく、多様な CA-MRSA 株についても選択圧が働いており、また伝播が生じていることが示唆される。

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監訳者コメント
MLST は国や地域の MRSA 流行株の特徴をとらえるのによく使用されている。最近では施設内感染に関与するタイプの型や clonal complex も明らかになりつつある。

介護施設の高齢入居者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA):保菌率および分子疫学★★

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus in elderly residents of care homes: colonization rates and molecular epidemiology

C. Horner*, P. Parnell, D. Hall, A. Kearns, J. Heritage, M. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 212-218


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は医療環境および市中環境で死亡と疾患の重要な原因となっている。しかし、介護施設での MRSA 発生を監視した大規模な縦断研究はわずかである。

目的
介護施設の高齢入居者が保菌する MRSA の分子疫学を明らかにすること。

方法
英国・リーズの 65 の介護施設入居者を対象として、連続 4 年間(2006 年から 2009 年)、MRSA 鼻腔内保菌のスクリーニングを行った。分離株の特性を、抗菌薬感受性試験、Pantone-Valentine 型ロイコシジン(PVL)遺伝子座検出、agr アレル判定、ブドウ球菌カセット染色体(SCC)mec タイピング、spa タイピング、およびパルスフィールド・ゲル電気泳動法により評価した。

結果
MRSA は入居者 2,492 名の 888 の鼻腔スワブから回収され、保菌率は研究期間を通して同程度であった(19%から 22%)。3 種類以上の抗菌薬クラスに耐性を示すものが多く(34%)、β-ラクタム系抗菌薬のみに耐性を示すものはまれであった(3%)。PVL 陽性の分離株は同定されなかった。大半の分離株は医療関連の MRSA 流行菌株 15 型(EMRSA-15、ST22-IV)に属していたが、その割合は研究期間中に減少した(86%から 72%へ、P < 0.0001、χ2 検定)。その他の分離株は、複数部位塩基配列タイピング(MLST)による 5 種類の clonal complex(CC)に属していた。最も注目すべきこととして、CC59 株の割合は増加し(10%から 25%へ、P < 0.0001、χ2 検定)、これらの株はムピロシン高度耐性との関連がみられた。

結論
介護施設における MRSA の分子疫学は複雑かつ動的である。MRSA 鼻腔内保菌については、保菌率は一貫して高く、医療関連株が優勢であった。しかし、研究期間中にムピロシン高度耐性との関連を示す 1 クローン群(CC59)の割合が有意に増加しており、警戒を要する。

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監訳者コメント
MRSA 鼻腔内保菌については、保菌率は一貫して高く、医療関連株が優勢というのはいかにも衝撃的である。ムピロシン高度耐性との関連を示す 1 クローン群(CC59)も目が離せない。

単独のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌医療従事者に関連した心臓外科部門での MRSA 長期アウトブレイク

Prolonged outbreak of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in a cardiac surgery unit linked to a single colonized healthcare worker

C. Haill*, S. Fletcher, R. Archer, G. Jones, M. Jayarajah, J. Frame, A. Williams, A.M. Kearns, P.J. Jenks
*Derriford Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 219-225


背景
保菌率が低い環境では保菌率が高い環境と同様に、医療従事者はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の重要であるが過小認識されたリザーバであると考えられ、患者への重大な伝播源となり得る。

目的
イングランドの心臓外科部門で発生した 10 か月間にわたる MRSA アウトブレイクについて報告すること。

方法
症例の定義は、2011 年 5 月 20 日から 2012 年 3 月 16 日にアウトブレイク菌株が新規に検出された心臓外科部門の患者および職員とした。spa タイピング、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)、および multi-locus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)法により、全症例から回収された主な分離株の特性を評価した。

結果
患者 4 例が、心臓外科部門への入院中に MRSA を獲得したと考えられた。これらの患者全 4 例と医療従事者 1 名に、同一の流行性菌株である(E)MRSA-15(spa 型 t032、パルソタイプ A、MLVA プロファイル 16-6-3-1-1-17-1-4)保菌が認められた。他の職員に MRSA 保菌は認められなかった。保菌がみられた医療従事者はアウトブレイク源と推定され、ムピロシン鼻腔内投与、クロルヘキシジン含有ボディソープ、およびリファンピシンとドキシサイクリンの経口投与による除菌を実施した。

結論
この報告は、イングランドにおいては近年、MRSA の疫学が変化していることを示しており、MRSA を保菌している医療従事者が患者への伝播に重要な役割を果たしていることを示唆している。医療従事者のスクリーニングは、医療従事者が関連する病院感染の管理のための戦略としてその有用性が益々増加しており、また初期の調査で感染源が特定できない場合にもアウトブレイクの特性を明らかにすることが可能である。

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監訳者コメント
MRSA を保菌している医療従事者の発見のための検査は、倫理的な背景からルーチンには行いにくい。一方で他に原因が特定できない場合には避けることができない経路でもある。

高等教育機関の医療従事者を対象とした全国的な包括的かつ一律の B 型肝炎ワクチン接種方針の必要性:南アフリカ共和国での事例研究

Need for a comprehensive, consistently applied national hepatitis B vaccination policy for healthcare workers in higher educational institutions: a case study from South Africa

L. Fernandes*, R.J. Burnett, G. François, M.J. Mphahlele, M. Van Sprundel, A. De Schryver
*University of Limpopo, South Africa

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 226-231


背景
B 型肝炎ウイルス(HBV)は感染者の血液やその他の体液を介して伝播するため、医療従事者および医療関連学生は職業曝露による HBV 感染のリスクが高い。

目的
南アフリカ共和国の高等教育機関で教育を受けている医療関連学生を対象とする B 型肝炎ワクチン接種方針の有無、内容、および実施状況を明らかにすること。

方法
医師、看護師、および歯科医師の養成を行っている南アフリカ共和国の看護学校 23 校および大学 11 校に、自記式の構造化質問票を送付した。

結果
12 校(35%)が質問票を返送した。このうち B 型肝炎ワクチン接種方針を有する高等教育機関は 10 校であり、その多くは学生の入学時の接種を推奨していた。9 校は学校内で B 型肝炎ワクチン接種を提供しており、このうち 4 校は接種費用を学費から充当していた。7 校ではワクチン接種証明書の提出が必須ではなかった。6 校はワクチン不応者の入学を認めておらず、2 校は不応者が 2 度目の 3 回連続ワクチン接種と再検査を受けることを条件に入学を認め、2 校は不応者が HBV 曝露リスクに関するカウンセリングを受けることを条件に入学を認めていた(日本語版監訳者注:原著抄録では、不応者の入学要件について「3 校は不応者が 2 度目の 3 回連続ワクチン接種とカウンセリングを受けた場合のみ、入学を認めていた」と記載されているが、論文テキスト中の記載に基づいて翻訳文を修正した)。6 校は HBV キャリアは感染性を有していると見なしており、10 校は HBV キャリアの入学を認めていた。回答率が低かったため結果を一般化することは困難であるが、未回答の高等教育機関では医療関連学生を対象とした B 型肝炎ワクチン接種方針が存在していないために、回答率が低かった可能性がある。

結論
質問票に回答した高等教育機関における B 型肝炎ワクチン接種、HBV 保有、およびワクチン応答に関する方針にはばらつきがみられ、医療関連学生を HBV 職業感染から保護するためには不適切であったり、包括性が十分ではない場合があった。このことから、医療関連学生を HBV 感染から適切に保護するには、全国的な包括的かつ一律の予防接種方針が必要であることが強調される。

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プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)感染リスクを有する術後手術部位の抗菌ドレッシングによる局所保護:in vitro 研究

Topical antimicrobial protection of postoperative surgical sites at risk of infection with Propionibacterium acnes: an in-vitro study

P.G. Bowler*, S. Welsby, A. Hogarth, V. Towers
*ConvaTec Global Development Centre, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 232-237


背景
プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)は手術部位感染症、特に関節置換術や脊髄手術などの手術部位感染症の病原体としての認知度が高まっている。毒性が低く、増殖が遅いことから、感染症の臨床徴候が遷延する場合があり、診断はしばしば困難となる。したがって、術前の適切な皮膚処理と術後の抗菌ドレッシングによる創傷保護は、P. acnes による手術部位感染症を予防するために考慮すべき重要な事項である。

目的
銀含有ゲル化ファイバー創傷ドレッシングの P. acnes に対する抗菌効果を、様々な創傷状態をシミュレーションした厳格な in vitro モデルを用いて調べること。

方法
創傷滲出液のシミュレーションモデルを用いて、滲出液の多い創部を模倣した条件下で銀含有ドレッシングの殺菌能を経時的に定量した。細菌が定着した浅い創傷のシミュレーションモデルを用いて、ドレッシングの密着性が抗菌活性に及ぼす影響を調べた。さらに第 3 のモデルを作成し、シミュレーションした細菌定着創傷表面内に接種した細菌に対するドレッシングの効果を測定した。

結果
In vitro のデータから、銀含有創傷ドレッシングは P. acnes に対して殺菌作用を有すること、著しい滲出液のある状態をシミュレーションした条件下での殺菌作用は長期間(7日間)持続すること、およびドレッシングマトリクスが湿潤後にゲル化することにより、ドレッシングがシミュレーションした創傷の形状に密着するため、浅い創傷モデルでの抗菌活性が向上することが示された。

結論
これらの in vitro のデータから、術後ケアプロトコールの一部として銀含有ドレッシングを使用することは、長期にわたり、かつ患者を衰弱させる P. acnes による手術部位感染症のリスク最小化に有用であると考えられる。

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アイルランドの集中治療室における HELICS 基準により診断したカテーテル関連感染症:多施設サーべーランス研究

Catheter-related infection in Irish intensive care units diagnosed with HELICS criteria: a multi-centre surveillance study

I. Conrick-Martin*, M. Foley, F.M. Roche, M.H. Fraher, K.M. Burns, P. Morrison, M. Healy, M.W. Power, F. Fitzpatrick, D. Phelan, C.M. Walshe
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 238-243


背景
医療の質の指標として、カテーテル関連感染症(CRI)サーベイランスのデータを利用することが提唱されている。しかし、アイルランドの集中治療室(ICU)を対象とした全国的 CRI サーベイランスプログラムや標準化された CRI の定義はない。

目的
Hospitals in Europe Link for Infection Control through Surveillance(HELICS)の CRI の定義(CRI 1、CRI 2、および CRI 3)を使用する、アイルランドの 9 病院の ICU を対象とした多施設 CRI サーベイランスの実施可能性について調査すること。

方法
3 か月間の研究期間中に、ICU に 48 時間以上入室した18歳を超える患者に挿入したすべての非トンネル型中心静脈カテーテル(CVC)を対象とした。

結果
調査用紙の返送率は 99.5%であり、実施可能性が確認された。患者 614 例に対する 1,209 件、7,587 CVC 日の CVC 挿入のデータから 17 件の CRI エピソードが認められ、全国の CRI 発生率は 1,000 CVC 日あたり 2.2 件(95%信頼区間[CI] 1.2 ~ 3.3)であった。CRI 1、CRI 2、および CRI 3 の発生率はそれぞれ 1,000 CVC 日あたり 0.13 件(95%CI 0.00 ~ 0.39)、0.79 件(95%CI 0.16 ~ 1.42)、および 1.39 件(95%CI 0.60 ~ 2.17)であった。CRI の有無は、患者 1 例あたりの ICU 入室期間(P < 0.001)、CVC 件数(P < 0.001)、および合計 CVC 日(P < 0.001)と関連していた。CVC を手術室で挿入した場合の CRI 発生率は、ICU で挿入した場合と比較して高かった(発生率比 3.9、95%CI 1.3 ~ 11.5、P = 0.02)。参加施設の報告ではサーベイランスを実施するうえでの困難はわずかであり、データ収集に要する時間は患者 1 例について 1 週間あたり約 1 時間であった。

結論
本研究から、HELICS による CRI の定義を用いた多施設 ICU サーベイランスは実用的かつ実施可能であり、臨床的に重要な情報が得られることが示された。ICU での CRI サーベイランスは、多忙な環境ではあるものの、CRI の減少を図るため、また現行の CRI 減少のためのプロセス評価を推進するうえで推奨されるものである。

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輸血による B 型肝炎の疑い例の調査後に診断された免疫抑制を介する B 型肝炎再活性化

Immunosuppression-mediated hepatitis B reactivation diagnosed following an investigation into suspected transfusion-transmitted hepatitis B

N. Floret*, J.P. Cervoni, F. Sheppard, M.F. Leconte Des Floris, F. Duchêne
*Réseau Franc-Comtois de Lutte contre les Infections Nosocomiales, France

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 244-246


2006 年 8 月、フランスの地域単位の院内感染制御ユニットである ARLIN に、5 か月前に輸血を受けた 87 歳の免疫抑制患者の症候性急性 B 型肝炎症例が報告された。免疫抑制療法は、様々な疾患で使用される機会が増加している。免疫抑制患者に対しては、B 型肝炎ウイルス(HBV)感染歴の調査を行い、必要な場合は先制治療を実施すべきである。この免疫抑制患者にみられた HBV 再活性化に関する著者らの調査について報告する。この調査について述べるとともに、免疫抑制患者の HBV 再活性化には引き続き警戒が必要であり、これらの患者は様々な診療分門の医師を受診する可能性があることを強調したい。

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オートクレーブ処理後の細菌ゲノム DNA の完全性:遺伝子水平伝播と臨床廃棄物管理への関与の可能性

Integrity of bacterial genomic DNA after autoclaving: possible implications for horizontal gene transfer and clinical waste management

J.M. Yap*, C.E. Goldsmith, J.E. Moore
*Belfast City Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 247-249


現在のオートクレーブ処理の目的は細菌の死滅である。オートクレーブ処理が細菌ゲノム DNA の完全性に及ぼす作用についてはほとんど知られていない。細菌 DNA の完全性の指標として PCR 法を使用して、標準的なオートクレーブ処理が細菌 DNA の完全性に及ぼす影響を評価する実験を行った。増幅可能な PCR シグナルが観察されるオートクレーブ処理時間は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa) NCTC 10662 では 10 分、20 分、および 30 分、サルモネラ(Salmonella) Nottingham NCTC 7832 では 10 分、20 分、30 分、および 40 分、大腸菌(Escherichia coli) NCTC 9001 では 10 分および 20 分であった。このことから、死滅した細菌やより高等な微生物のゲノム DNA 遺残がリザーバとして働き、遺伝子水平伝播によって毒性、持続性、抗菌薬耐性などの性状をつかさどる危険な遺伝子が生菌に導入される可能性があるため、今後のリスク評価や環境への影響の評価の際は、このような分子的遺残について慎重に考慮する必要がある。

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病院内のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の疫学に対するナーシングホーム入居の影響:アジアの現状

Impact of nursing home residence on hospital epidemiology of meticillin-resistant Staphylococcus aureus: a perspective from Asia

A. Verrall*, R. Merchant, J. Dillon, D. Ying, D. Fisher
*National University Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 250-252


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の入院時スクリーニングを実施しているシンガポールの病院では、ナーシングホームから転院した患者の MRSA 保菌の相対リスクは 6.89(95%信頼区間 5.74 ~ 8.26、190 例中 41%対 14,849 例中 6.0%)であった。しかし、入院時 MRSA 保菌へのナーシングホーム入居の寄与割合は低かった(6.9%)。ナーシングホームから転院した患者の MRSA 保菌に関連する独立リスク因子は、以前の入院、皮膚損傷、抗菌薬使用歴、および中国人であった。当院では、ナーシングホーム入居が MRSA に及ぼす全体的影響は、ナーシングホーム利用率が低いため小さいといえる。

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病室表面の消毒後の Staphylococcus 属菌集団の残存

Persistence of mixed staphylococci assemblages following disinfection of hospital room surfaces

V. Sigler*, S. Hensley
*University of Toledo, OH, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 253-256


病室表面の Staphylococcus 属菌集団の分布を、四級アンモニウム製剤による日常的な消毒の前後に評価した。9 種類の表面からのスワブの細菌を増菌培養し、抽出した DNA を Staphylococcus 属菌用の変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法により分析した。表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)/スタフィロコッカス・クルーシイ(Staphylococcus kloosii)の遺伝子マーカーは消毒の前後で全種類の表面から検出されたのに対して、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)のマーカーは 5 種類の表面からのみ検出された。全体として、ヒトの保菌・感染が知られている数種類のブドウ球菌の遺伝子マーカーは、日常的な消毒後の室内表面に普遍的に残存していた。

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mecC 遺伝子保有メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のスイス西部における保菌率は極めて低い

Very low prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus carrying the mecC gene in western Switzerland

P. Basset*, G. Prod’hom, L. Senn, G. Greub, D.S. Blanc
*Lausanne University Hospital, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 257-259


スイス西部で初の mecC 遺伝子保有メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症例を報告する。今回の初の同定後に PCR 法プロトコールを作成し、当地域の住民集団からの分離株におけるこの新規 mecC 遺伝子保有率を調査した。MRSA スクリーニング対象患者 1,062 例からの検体、患者 475 例の臨床サンプル由来メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)分離株、およびメチシリン耐性の遺伝子型と表現型が不一致であった MRSA 分離株(2005 年から 2011 年) 80 株を、増菌培地を用いて調べた。いずれからも mecC 遺伝子は検出されなかったことから、当地域の患者集団では mecC はまれであることが示唆された。

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