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交差感染の原因としての喉頭鏡のブレードとハンドル:統合的レビュー

Laryngoscope blades and handles as sources of cross-infection: an integrative review

A.C. Negri de Sousa*, C.E. Levy, M.I.P. Freitas
*University of Campinas (Unicamp), Brazil

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 269-275


喉頭鏡のブレードとハンドルは血液、体液、および微生物により汚染されていることが知られており、臨床使用時に重要な感染源となり得るが、その洗浄・消毒のための効率的な手順は標準化されていないことが報告されている。本稿の目的は、喉頭鏡のブレードとハンドルが患者への汚染源となるリスクに関する文献から、エビデンスの評価を行うことである。Medline、LILACS、SciELO、Cochrane Library、BDENF、および PubMed などのデータベースと、Medical Subject Headings(MeSH)のキーワードを用いて、文献の統合的レビューを実施した。1994 年から 2012 年に発表された 20 報の論文を対象とした。これらの研究では、交差感染のリスクがあること、および喉頭鏡の洗浄・消毒に関する現行のガイドラインには一致した見解がないことが示されていた。結論として、埋めるべき重大なギャップが存在していること、および喉頭鏡のブレードとハンドルを洗浄・消毒する効率的な手順の標準化を推進するための、またそれによって患者や医療チームが曝露を受ける潜在的リスクを低下させるための研究が緊要であることが挙げられる。

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アルコール製手指消毒薬の時代における手指衛生遵守の予測因子

Predictors of hand hygiene compliance in the era of alcohol-based hand rinse

G. Lebovic*, N. Siddiqui, M.P. Muller
*St Michael’s Hospital, Canada

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 276-283


背景
手指衛生遵守の予測因子の評価は、アルコール製手指消毒薬の時代である今日にはまだ行われていない。

目的
手指衛生遵守の予測因子を、アルコール製手指消毒薬の時代にあらためて評価すること。

方法
カナダの教育病院で、手指衛生遵守を直接観察法により 2 年間にわたってモニターした。遵守の標準化した定義を用いて、遵守の予測因子であると考えられるデータを記録した。クラスターを補正した一般化線形混合モデルを作成し、手指衛生遵守の予測因子の影響を評価した。

結果
3,487 名の医療従事者の 7,364 回の手指衛生機会を観察した。手指衛生遵守率は 45%であり、経時的な変動はみられなかった。多変量解析で示された遵守改善の予測因子は手指衛生を実施すべき機会などであり、体液への曝露後(オッズ比[OR] 4.7、95%信頼区間[CI] 3.7 ~ 6.1)および患者との接触後(OR 3.9、95%CI 3.5 ~ 4.4)は、患者との接触前と比較して遵守率が高かった。手袋の着用は、高い遵守率との関連がみられた(OR 1.3、95%CI 1.1 ~ 1.4)。職種が非看護師・非医師であることは、低い遵守率と関連していた(OR 0.72、95%CI 0.61 ~ 0.86)。1 時間あたりの手指衛生機会数は、低い遵守率との関連がなかった。石けんと水の使用頻度に対してアルコール製手指消毒薬の使用頻度が高い病棟では、遵守率が高かった(P = 0.035)。

結論
アルコール製手指消毒薬の時代においては、手指衛生機会の頻度が高いことは、もはや至適な手指衛生遵守の達成のための主要な障壁ではない。しかし、アルコール製手指消毒薬の使用頻度が病棟により異なっていることは、依然として改善の対象であると考えられる。

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グリセロールにより手術用擦式アルコール製剤の 3 時間後の効果が有意に低下する

Glycerol significantly decreases the three hour efficacy of alcohol-based surgical hand rubs

M. Suchomel*, M. Rotter, M. Weinlich, M. Kundi
*Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 284-287


背景
擦式アルコール製剤に含まれるグリセロールは、皮膚の状態および使用者の満足度に良好な影響をもたらすが、著者らの知る限り、術前の擦式アルコール製剤の殺菌効果への影響については報告がない。

目的
80%(w/w)エタノール、75%(w/w)イソプロパノール、および 60%(V/V) n-プロパノールによる手指常在菌叢の減少に対して、グリセロールが及ぼす影響を調査すること。

方法
術前の擦式製剤の効果を評価するためにボランティアの手指を使用して一連の in vivo 検査を実施し、欧州規格 EN 12791 に従って 3 種類のアルコール製剤の効果を 1.45%(V/V)グリセロールの有無別に調べた。24 名のボランティアに製剤をランダムに割り付け、手指に 3 分間擦り込ませた。指先のサンプルからの生菌数を、それぞれの処置前、処置直後、および3時間後に比較した。

結果
3 種類のグリセロール非含有アルコール製剤の 3 時間後の殺菌効果は、グリセロール含有製剤よりも有意に高かった(P < 0.01)。エタノール製剤では、処置直後の効果も同様であった。

結論
1.45%(V/V)グリセロールは手術用擦式アルコール製剤の殺菌効果、特に持続的効果を抑制する。

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ヒトエンテロウイルス 71 に対するアルコールおよびアルコール製手指消毒薬の効果

Efficacy of alcohols and alcohol-based hand disinfectants against human enterovirus 71

S.-C. Chang*, W.-C. Li, K.-Y. Huang, Y.-C. Huang, C.-H. Chiu, C.-J. Chen, Y.-C. Hsieh, C.-Y. Kuo, S.-R. Shih, T.-Y. Lin
*Chang Gung University, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 288-293


背景
ヒトエンテロウイルス 71(HEV71)感染症は、アジア太平洋地域における公衆衛生上の重大な脅威である。時に重度の神経系合併症を引き起こし、小児では死亡に至ることもある。その感染制御には適切な手指衛生が重要であるが、HEV71 に対して広く使用されている手指消毒薬の効果に関するデータはまだ少ない。

目的
HEV71 に対するアルコールおよびアルコール製手指消毒薬の殺ウイルス効果を調べること。

方法
一般的なアルコール製手指消毒薬(0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩 + 70%イソプロパノール)のほか、種々の濃度のイソプロパノールおよびエタノールの HEV71 に対する殺ウイルス効果を、懸濁試験およびフィンガーパッド試験を用いて評価した。

結果
懸濁試験による曝露時間 10 分での HEV71 ウイルス力価の平均 log10 減少係数は、85%エタノール > 3、95%エタノール約 6 であった。これに対して、70%および 75%エタノールと全濃度(70%から 95%)のイソプロパノールでは、同じ試験で同一時間曝露後の平均 log10 減少係数は < 1 であった。フィンガーパッド試験では、曝露時間 30 秒後の平均 log10 減少係数は 95%エタノールのみが > 4 を示したのに対し、75%エタノールとクロルヘキシジングルコン酸塩含有製剤はいずれも平均 log10減少係数 < 1 であり、HEV71 に対する効果は認められなかった。

結論
広く使用されている 70%エタノールやイソプロパノールによるアルコール製手指消毒薬の HEV71 に対する効果は不十分であった。エタノールでは 95%が最も有効な濃度であるが、それでも HEV71 を完全に不活化することはできず、多くの場合、実用的ではない可能性がある。アルコール製手指消毒薬のみによる手指消毒は、HEV71 伝播の予防には推奨されない。

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市中発症型または院内発症型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症患者の重症度の基準としての急性腎機能障害の定義

Defining acute renal dysfunction as a criterion for the severity of Clostridium difficile infection in patients with community-onset vs hospital-onset infection

D.N. Shah*, N.S. Bhatt, J.K. Welch, H.L. Koo, K.W. Garey
*University of Houston, College of Pharmacy, TX, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 294-299


背景
重度のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)を定義するために、急性腎機能障害の有無を使用することが可能である。米国医療疫学学会(SHEA)および米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、急性腎機能障害の定義は血清クレアチニン(SrCr)値が発症前の 1.5 倍以上となった状態であるとしている。

目的
CDI の入院患者を市中発症型 CDI と院内発症型 CDI に分類し、それぞれの発症前の SrCr を評価することが可能であるかどうかを明らかにすること、および急性腎機能障害の基準として、種々の定義による発症前 SrCr について評価すること。

方法
CDI の入院患者を市中発症型 CDI と院内発症型 CDI に分類した。発症前の SrCr が評価可能であるかどうかを明らかにするとともに、種々の定義による発症前 SrCr を用いて急性腎機能障害発生率および CDI の重症度を比較した。

結果
合計 293 例の CDI 患者を評価対象とし、このうち 135 例(46%)は市中発症型 CDI、158 例(54%)は院内発症型 CDI であった。市中発症型 CDI 患者 37 例(27%)および院内発症型 CDI 患者 1 例(1%未満)からは、発症前の SrCr のデータを入手することができなかった(P < 0.0001)。使用した発症前の SrCr の定義に応じて、急性腎機能障害の発生率の範囲は市中発症型 CDI 患者で17%から 24%(P = 0.26)、院内発症型 CDI 患者で 13%から 14%(P = 0.81)であった。患者 293 例中 43 例(15%)については、主として発症前の SrCr のデータが欠如していたため(38例)、CDI の重症度を決定することができなかった。

結論
多くの市中発症型 CDI 患者では、現行の SHEA/IDSA ガイドラインを用いて急性腎機能障害および CDI の重症度を評価することは不可能であった。市中発症型 CDI の発生率が上昇していることを考えると、これに代わる急性腎機能障害の定義が必要であると考えられる。

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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症患者の急性腎障害が死亡および医療費に及ぼす影響:後向き多施設観察研究

Impact of acute kidney injury on mortality and medical costs in patients with meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia: a retrospective, multicentre observational study

E.-J. Joo*, K.R. Peck, Y.E. Ha, Y.-S. Kim, Y.-G. Song, S.-S. Lee, S.-Y. Ryu, C. Moon, C.-S. Lee, K.-H. Park
*Sungkyunkwan University School of Medicine, Korea

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 300-306


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症に関連する腎障害がその治療中に高頻度に発生するにもかかわらず、腎障害が臨床的・経済的アウトカムに及ぼす有害な影響については評価されていない。

目的
MRSA 菌血症の臨床的および経済的負荷、ならびに治療中に発現した急性腎障害のアウトカムへの影響について評価すること。

方法
MRSA 菌血症のため韓国の病院 8 施設に 2010 年 3 月から 2011 年 2 月に入院した患者のカルテを後向きに調査し、急性腎障害および死亡のリスク因子を評価した。使用した医療資源に基づいて、治療中の MRSA 菌血症患者 1 例あたりの直接医療費を推計した。

結果
合計 335 例の患者が MRSA 菌血症であることが確認された。このうち 135 例(40.3%)に、ファーストラインの抗菌薬療法中に急性腎障害が発現した。急性腎障害の独立リスク因子は、男性、腎臓病の基礎疾患、腹腔内および中心静脈カテーテル感染、および Pitt 菌血症スコア上昇であった。試験期間中に 77 例(23.0%)が死亡した。死亡の独立リスク因子は、固形腫瘍の基礎疾患、Pitt 菌血症スコア高値、および急性腎障害の発現であった。MRSA 菌血症患者 1 例あたりの平均総医療費は 5,435,361 ウォン(4,906 米ドル)と推計され、急性腎障害の発現および ICU 入室が直接医療費の増加の独立予測因子として特定された。急性腎障害の患者では、ベースラインの腎機能を保持していた患者と比較して医療費が 45%増加した。

結論
急性腎障害を発現した患者は、ベースラインの腎機能を保持していた患者と比較して死亡率が有意に高く、直接医療費が高額であった。

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肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による病院感染菌血症患者の転帰に対するカルバペネム耐性の影響

Impact of carbapenem resistance on the outcome of patients’ hospital-acquired bacteraemia caused by Klebsiella pneumoniae

K. Hussein*, A. Raz-Pasteur, R. Finkelstein, A. Neuberger, Y. Shachor-Meyouhas, I. Oren, I. Kassis
*Rambam Health Care Campus, Israel

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 307-313


背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、特にクレブシエラ(Klebsiella)属菌は近年、世界的に健康上の重大な問題となっている。イスラエルにおけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae;CRKP)感染は、2006 年以降、大幅に増加している。これらの菌株を原因とする血流感染症では、治療不成功率や死亡率が高い。

目的
本研究は、医療関連 K. pneumoniae 菌血症患者におけるカルバペネム耐性のリスク因子、および医療関連 CRKP 菌血症による死亡の予測因子を、カルバペネム感性 K. pneumoniae(carbapenem-susceptible K. pneumoniae;CSKP)との比較によって特定するためにデザインされた。

方法
この後向き症例対照研究では、2006 年から 2008 年の K. pneumoniae 菌血症の全症例を特定し、CRKP 菌血症患者と CSKP 菌血症患者の耐性パターン、基礎疾患、薬剤耐性のリスク因子、および死亡率を比較した。

結果
CSKP 菌血症患者 214 例と CRKP 菌血症患者 103 例を比較した。重度の併存疾患、慢性併存疾患、および抗菌薬使用歴は CRKP 菌血症患者に多く認められた。多変量解析では、マクロライド系薬の使用歴および 14 日以上の抗菌薬投与が、CRKP 菌血症に関連する唯一の独立因子であった。CRKP 菌血症患者の死亡率は CSKP 菌血症患者よりも有意に高かった。多変量解析では、寝たきり状態、慢性肝疾患、Charlson 併存疾患指数 5 以上、人工呼吸器の使用、および血液透析が、K. pneumoniae 菌血症患者の死亡と独立して関連していた。カルバペネム耐性は死亡のリスク因子ではなかった。

結論
抗菌薬使用歴は CRKP 菌血症のリスク因子である。K. pneumoniae 菌血症患者の死亡は重度の併存疾患と関連するが、カルバペネム耐性とは関連していなかった。


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褥瘡における細菌保菌:血流感染のリスクの評価および患者の転帰への影響

Bacterial colonization of pressure ulcers: assessment of risk for bloodstream infection and impact on patient outcomes

I.A. Braga*, C.C.N.S. Pirett, R.M. Ribas, P.P. Gontijo Filho, A. Diogo Filho
*Clinical Hospital of the Federal University of Uberlandia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 314-320


背景
褥瘡は入院患者、医療従事者、および社会にとって重大な問題である。

目的
多剤耐性微生物のリザーバ、菌血症のリスク因子、および不良予後の予測因子としての入院患者の褥瘡の影響を評価すること。

方法
3 次急性期大学病院に 2005 年 4 月から 12 月および 2009 年 8 月から 2010 年 4 月の 2 期間に 48 時間を超えて入院したステージ II 以上の褥瘡を有する患者を対象として、想定される病院感染病原体および/または多剤耐性病院感染病原体の保菌・感染を評価するために、前向きコホート研究を実施した。

結果
ステージ II 以上の褥瘡を有する合計 145 例の患者を対象とした。このうち 76.5%(145 例中 111 例)の褥瘡に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(20.7%)、グラム陰性桿菌(32.5%)、またはその両方(46.8%)の保菌・感染が認められ、その半数以上(64.8%)は多剤耐性病原体であった。患者の50.5%(111 例中 56 例)に菌血症が認められた。菌血症エピソードの 53.6%(56 例中 30 例)では、褥瘡が菌血症の原因である可能性が最も高かった。抗菌薬投与歴(P = 0.04)および感染創(P < 0.001)が、血流感染および 30 日死亡率高値に関連する独立変数であった。30 日死亡のリスク因子は ICU 入室(P = 0.03)および人工呼吸器使用(P = 0.05)などであった。

結論
今回の結果から、褥瘡は多剤耐性病原体の重要なリザーバであることのほか、褥瘡を有する患者は転帰不良な菌血症の高リスク集団であることが示唆される。広域スペクトルの抗菌薬投与歴および感染創の存在は、患者の菌血症と死亡の両方を予測する独立因子であった。

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結核発生率が低い国における結核の広範な院内伝播

Extensive nosocomial transmission of tuberculosis in a low-incidence country

J. Jonsson*, B. Kan, I. Berggren, J. Bruchfeld
*Karolinska University Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 321-326


背景
本稿では、接触者に活動性結核症例が想定以上に多かった病棟で発生した結核の院内アウトブレイクについて報告する。本アウトブレイクは、最初の 2 例の二次結核症例からの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の遺伝子タイピングの結果を得て、初めて明らかになったものである。

目的
結核が疑われた場合の正しい感染制御策の重要性について述べること。

方法
この病棟に入院した初発患者の診断に基づき、後向きに接触者調査を実施した。

結果
肺結核により HIV 陽性患者が死亡した後 10 か月以内に、3 名の医療従事者を含む 7 名の接触者が結核を発症した。7 例中 6 例が培養により確定診断され、制限酵素断片長多型(RFLP)により、この全 6 例の結核菌分離株は初発症例の結核菌分離株と同一のクラスターに属することが確認された。医療従事者では、勤務時間が長いことと結核感染との間に関連が認められた。

結論
結核の感染制御ガイドラインを遵守すること、および医療従事者に対して最新の結核制御策に関する情報提供を継続的に行うことが重要である。結核症例の治療に携わる病棟の全職員を対象として結核の潜伏感染のスクリーニングを実施し、将来的な結核への偶発的曝露後の接触者調査の際の参照データとすべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
本事例では、3 人の家族、15 人の同室者、そして 36 人の医療従事者が接触者として取り上げられ、うち、同室者 4 人、医療従事者3人が結核を発症した。ほかに医療従事者の 15 人が潜在性結核と診断されたが、同病棟に年単位で勤務しており、事例との関連性を特定することは困難であったことが本文中で説明されていた。HIV 治療例の結核発症率は、海外の報告で 8% ~ 43%、日本で 10%とされていることを考えると、肺炎などの呼吸器症状を呈した HIV 患者のケアに際して、否定できるまでは結核を想定した空気予防策が必要であろう。

入居前の新築ナーシングホームの抗菌薬耐性菌による急速な環境汚染

Rapid environmental contamination of a new nursing home with antimicrobial-resistant organisms preceding occupation by residents

C. Ludden*, M. Cormican, B. Austin, D. Morris
*National University of Ireland Galway, Ireland

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 327-329


ナーシングホームは抗菌薬耐性菌のリザーバとなる。本研究では、新築のナーシングホームで抗菌薬耐性菌による環境汚染が発生するまでの期間を調べた。入居中のナーシングホームと建て替えた新築ナーシングホームの環境部位(それぞれ 18 か所、21 か所)を、入居者が建物間を引越しする前後 11 週間にわたってモニタリングした。新しい建物の性能検証(コミッショニング)中にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が検出され、入居後には建物全体に高い頻度で認められた。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli) O25b:ST131 が 1 回検出された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この論文によると、新築のナーシングホームであっても、入居した 1 ~ 2 週間後には、床、ドアノブ、テーブル、椅子などの環境サンプリングの約半数から MRSA が検出された。入居者やスタッフの MRSA 保菌率は調査されていないものの、ひとたび使用し始めれば、施設環境の至る所が汚染されていると考え、標準予防策や接触予防策を実施する必要性が再確認できた。

病院環境における無症状のカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)保菌者の検出のための積極的サーベイランス

Active surveillance for asymptomatic carriers of carbapenemase-producing Klebsiella pneumoniae in a hospital setting

C. Gagliotti*, V. Ciccarese, M. Sarti, S. Giordani, A. Barozzi, C. Braglia, C. Gallerani, R. Gargiulo, G. Lenzotti, O. Manzi, D. Martella, M.L. Moro
*Agenzia Sanitaria e Sociale Regionale Emilia-Romagna, Italy

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 330-332


カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(carbapenemase-producing Klebsiella pneumoniae;CPKP)の蔓延は、解決困難な公衆衛生上の脅威である。感染・保菌者の早期の特定と隔離が制御対策の鍵となる。本研究では、イタリアの 3 次病院の CPKP スクリーニング戦略について述べる。5 か月の研究期間中に、患者 1,687 例の直腸スワブによるスクリーニングを実施した。このうち 65 例(3.9%)が CPKP 陽性であり、また症例接触者の 5.1%が陽性であった。症例接触者のスクリーニングは、無症状の CPKP 保菌者の検出のためのサーベイランスに不可欠であると考えられる。入院時の選択的 CPKP スクリーニングの意義の大きさは、入院患者中の保菌者の割合に依存する。

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監訳者コメント
445 床の 3 次病院で 5か月間に 1,687 人、3,468 検体の直腸スワブを実施した研究であり、症例が探知されれば、同じ看護ユニットにいた患者を高リスク群としてスクリーニングすることの有用性が示された。入院患者中の保菌者の割合が高ければ、継続して実施することは有用であろうが、そのためにはコストと人手が必要となる。

新生児集中治療室の極早産児から検出された侵襲性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の生体消毒薬抵抗性率およびムピロシン耐性率:忍び寄る脅威か?

Prevalence of resistance to antiseptics and mupirocin among invasive coagulase-negative staphylococci from very preterm neonates in NICU: the creeping threat?

M. Lepainteur*, G. Royer, A.S. Bourrel, O. Romain, C. Duport, F. Doucet-Populaire, J.-W. Decousser
*University Hospital Antoine-Béclére, France

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 333-336


新生児集中治療室(NICU)では、感染制御のための局所製剤の使用が増加している。本研究では、カテーテル関連血流感染症を有する極早産児から検出されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)分離株 51 株の調査を行った。このうち 41.2%は、少なくとも 1 種類の生体消毒薬に対する感受性低下を示しており(クロルヘキシジン 12%、ベンザルコニウム 24%、アクリフラビン 33%)、61%はムピロシン耐性であった。PCR 法による CNS からの qacA/B 遺伝子、mupA 遺伝子、または両遺伝子の検出率は、それぞれ 59%、63%、および 49%であった。表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の 76%(パルスフィールド・ゲル電気泳動で特定された 5 つのサブグループすべて)とスタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)の 11%(3 つのサブグループ中の 1 つ)は多剤耐性であった。低濃度の液体消毒薬による皮膚消毒、およびムピロシンの適応外使用を効果的に行うためには、これらの薬剤の管理プログラムが必要である。

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監訳者コメント
CNS の消毒薬への感受性の低下は気になるところであるが、実用濃度における感受性への影響には言及されていない。これまでの研究では臨床的には問題がないと考えられているが、使用頻度と感受性を継続してモニターすることは意味があると思われる。

白内障手術後のオクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)眼内炎のアウトブレイク

Outbreak of Ochrobactrum anthropi endophthalmitis following cataract surgery

F.B. Mattos*, F.P. Saraiva, H. Angotti-Neto, A.F. Passos
*Federal University of Espírito Santo School of Medicine, Brazil

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 337-340


術後眼内炎は重大な視力障害に進展することがある。本稿では、白内障手術後のオクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)眼内炎のアウトブレイクについて述べるとともに、今後の症例発生リスクを最小限にするための新規滅菌プロトコールを提案する。O. anthropi 眼内炎患者、またはアウトブレイク期間中に本疾患を示唆する臨床所見を認めた患者のカルテレビューを行った。2010 年 7 月 24 日から 11 月 10 日に、O. anthropi による白内障手術後眼内炎患者 7 症例が確認された。O. anthropi 眼内炎アウトブレイクの原因として最も可能性が高いものは、水晶体乳化吸引装置のチューブの汚染であった。新規滅菌プロトコールの導入後に 1,000 回を超える白内障手術を実施したが、さらなる症例は発生しなかった。

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監訳者コメント
眼科で使用する器具・器材の多くは粘膜に直接触れるものであるが、構造や素材による理由で高水準消毒や滅菌が困難なものも少なくない。加えて精密な器具が多いことからシングルユースが進まず、現場では対応に苦渋している。さらに、点眼薬が複数の患者に使用されるシーンもある。たとえ感染源が明確に特定されなくとも、アウトブレイク事例の報告を積み上げることがリスクの啓発になると考える。

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の胃内視鏡に関連する伝播

Gastroscopy-associated transmission of extended-spectrum beta-lactamase-producing Pseudomonas aeruginosa

O. Bajolet*, D. Ciocan, C. Vallet, C. de Champs, V. Vernet-Garnier, T. Guillard, L. Brasme, G. Thiefin, G. Cadiot, F. Bureau-Chalot
*CHU de Reims, France

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 341-343


2011 年 5 月から 8 月に、フランスの教育病院に入院中の患者 4 例から、まれな多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が検出された。4 例全員が、5 か月の期間中に同一の胃内視鏡を用いた食道胃十二指腸内視鏡検査を受けていた。この内視鏡の培養の結果は、多剤耐性緑膿菌陽性であった。内視鏡洗浄の観察により、合意された手順からの逸脱として以下が確認された。不十分な初期洗浄、浸漬時間およびブラッシング時間の短縮、チャンネルの不十分なフラッシング、および保管前の不十分な乾燥。この内視鏡の使用を中止し、合意された手順の厳守を実施した後は、多剤耐性緑膿菌が分離される患者はなかった。

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監訳者コメント
緑膿菌による内視鏡の汚染事例、アウトブレイク事例はこれまでにも報告されてきた。器具を介した感染伝播のほとんどは、使用規定やマニュアルを遵守しなかった結果として発生している。再発を防止するための対応策、つまり、洗浄手順の遵守やリークテストなどのメンテナンスを確実に行うことはすでにわかっているのに、実践することは難しいことにジレンマを覚える。軟性内視鏡や超音波心エコー装置の場合、細かな亀裂にも問題となる菌の温床となる場合があり注意が必要である。

汚染されていた圧トランスデューサが元となった尿流動態検査後の多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症アウトブレイク

Outbreak of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa infection following urodynamic studies traced to contaminated transducer

E. Bilavsky*, I. Pfeffer, J. Tarabeia, V. Schechner, J. Abu-Hanna, G. Grisaru-Soen, D. Schwartz, S. Navon-Venezia, Y. Carmeli
*Tel-Aviv Sourasky Medical Center, Israel

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 344-346


コリスチンのみに感性を示す極度薬剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による尿路感染症の院内アウトブレイクについて報告する。尿流動態検査後の患者 3 例に感染が認められた。3 例中 2 例は小児であり、このうち 1 例は尿路性敗血症も発症した。調査により圧トランスデューサの汚染が発見された。遺伝子型判定により、患者と圧トランスデューサからの分離菌株は同一であることが確認された。これらの圧トランスデューサは、汚染された尿が逆流して器材内部の液体と混ざる可能性があったにもかかわらず、「使用は 1 回限り」の表示がなかった。再利用可能な尿流動態検査器材と使い捨ての器材のいずれを用いるべきかという問題についての考察も行う。

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監訳者コメント
本論文のディスカッションによると、圧トランスデューサ本体には「再滅菌不可」と表示されており、「シングルユース」とは記載されていなかったが、発売元のホームページには同一の製品に対して「シングルユースに限る」と示されていた。不明瞭な表示も問題だが、汚染の可能性が想定されれば、再利用や消毒・滅菌についての対策を講じることはできたのではないだろうか、という疑問が残った。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)検出のための 2 段階アルゴリズム:酵素免疫測定法による判定結果がグルタミン酸脱水素酵素陽性・毒素陰性の場合はさらに検査が必要である

Two-stage algorithm for Clostridium difficile: glutamate-dehydrogenase-positive toxin-negative enzyme immunoassay results may require further testing

G.E. Bignardi*, K. Hill, A. Berrington, C.D. Settle
*Sunderland Royal Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 83, 347-349


本研究では、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)検査のプロトコールにおける判定結果がグルタミン酸脱水素酵素陽性・酵素免疫測定法(EIA)による毒素陰性であった 102 件のエピソードについて調査した。これらの 102 の便サンプルのうち 46%の培養結果が毒素産生株陽性であり、その後 2 日から 32 日以内に 9 サンプルが EIA による毒素陽性となった。このようなデータは、こうした患者を症状が消失するまで別室で隔離し、他に説明のできない持続性の下痢を認める患者の治療を奨励するという当院の方針に一致するものである。第 3 の検査法(毒素産生性検査培養または PCR 法)を追加することが望ましいと考えられるが、その感度は各種の毒素産生性検査培養法や PCR 法によって大きく異なるようである。

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監訳者コメント
2012 年に英国の公衆衛生部門が発行したクロストリジウム・ディフィシルの診断と報告のためのガイドラインでは、2 つの方法を組み合わせた検査方法が必要とされている。また、近年米国では PCR 法による診断が主流となりつつある。日本では毒素の EIA 法が主流である。感染管理においては、検査診断が必ずしも優先されるものではなく、臨床症状による迅速な対応が感染拡大を防止するうえで重要であろう。

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