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プロバイオティクス:感染制御の新たな領域

Probiotics: a new frontier for infection control

J.V. Seale*, M. Millar
*Barts and The London NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 1-4


プロバイオティクスは、健康効果を得るために投与される生きた微生物と定義されている。調査研究と日常診療(例えば新生児集中治療室などにおける)という医療の両分野で、プロバイオティクスの使用が増加している。現在のところ、臨床診療でのプロバイオティクスの使用に関連する感染リスクの軽減を管理するためのガイドラインや規制は少ない。本稿では、リスク軽減を目的とした一連の推奨事項を提案する。その内容は、適切な関係者へのプロバイオティクス使用の連絡、日常的な検査によりプロバイオティクス株の感受性を判定・検査できるようにすること、調製と投与に関する基準を確立すること、および有害事象を把握するためのサーベイランス方法の確立などである。

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整形外科および骨外傷での手術部位感染の予防:最新情報

Prevention of surgical site infections in orthopaedic surgery and bone trauma: state-of-the-art update

I. Uçkay*, P. Hoffmeyer, D. Lew, D. Pittet
*University of Geneva, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 5-12


整形外科および骨外傷での手術部位感染の予防には、その他の外科領域とは異なるいくつかの特徴がある。すなわち、少量の病原体によるインプラント関連感染、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌やその他の皮膚共生菌の病原性、血行由来感染の可能性、長期にわたる退院後サーベイランスの必要性などである。整形外科での多くの手術部位感染予防策のうち、強固なエビデンスに基づくものは一部に過ぎず、どの要素が他の要素よりも優れているかを示すエビデンスも十分ではない。これらのことは、退院後の積極的サーベイランスや治療プロセスの各段階での予防策などを含む、集学的アプローチの必要性を示している。このようなアプローチは、個々の患者レベルでの術前管理から術中・術後管理に及ぶものであり、すべての医療関連感染を対象とした介入や抗菌薬管理の改善など、診療部門全体にわたる介入が含まれる。待機的整形外科手術での手術部位感染は、理論的にはゼロまで減少させることが可能であるが、現実的な減少が最大でどの程度かについては不明である。

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メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)の制御:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)対策の援用を超えて

Controlling meticillin-susceptible Staphylococcus aureus: not simply meticillin-resistant S. aureus revisited

D. Lepelletier*, J.-C. Lucet
*CHU de Nantes, France

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 13-21


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のスクリーニングと除菌によって、MRSA 感染・伝播リスクをどの程度軽減できるかについては多数の研究で評価されているが、地域的流行がみられている病院でのこの戦略の有効性には、依然として多くの不明点がある。メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible S. aureus;MSSA)の場合は、その目標は感染リスクを低下させるために菌の根絶を図るということに尽きる。近年、MSSA 除菌は高リスクの清潔手術に有効であることが明らかにされているが、これは費用対効果が高く、医療費の節減につながる介入である。解明されていない多くの問題点として、迅速スクリーニング検査の意義、至適な除菌レジメン、リスクの高いその他の状況での除菌の適応、除菌によって黄色ブドウ球菌感染症がその他の微生物による感染症に置き換わるリスク、およびムピロシン耐性の出現リスクなどが挙げられる。

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インフルエンザウイルスのバイオエアロゾルに対するサージカルマスクの効果

Effectiveness of surgical masks against influenza bioaerosols

C. Makison Booth*, M. Clayton, B. Crook, J.M. Gawn
*Health & Safety Laboratory (HSL), UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 22-26


背景
ほとんどのサージカルマスクは呼吸器防護器材としての使用は承認されていない。インフルエンザパンデミックの発生時には、大量の感染性バイオエアロゾルが発生する可能性のある特定の高リスク手技に対して呼吸器防護器材を使用することは、保管やフィットテストなどの物流の問題や実用上の問題によって制限されると考えられる。このような状況ではサージカルマスクの着用が増加することがいくつかの研究から示されているが、サージカルマスクによって着用者にもたらされる感染性エアロゾルに対する防護効果については、十分に理解されていない。

目的
サージカルマスクにより得られるバイオエアロゾル曝露に対する防護効果の評価法を開発・適用すること。

方法
呼吸シミュレーターに装着した試験用の頭部模型を用いて、ウイルス曝露に対するサージカルマスクの性能を評価した。英国の医療施設で一般的に用いられている数種類の型のサージカルマスクを対象として、各マスクの外側と内側の空気中の不活性粒子およびエアロゾル化した生きたインフルエンザウイルスの濃度を測定した。

結果
生きたインフルエンザウイルスが、すべてのサージカルマスクの内側の空気中から検出された。サージカルマスクによってエアロゾル化インフルエンザウイルスへの曝露が減少することがデータから示され、減少の範囲はマスクの型によって 1.1 倍から 55 倍(平均 6 倍)の範囲であった。

結論
エアロゾル化インフルエンザウイルス曝露に対するサージカルマスクおよび呼吸器防護器材による防護効果を評価するための有効な方法について報告した。これらの結果から、サージカルマスクにはある程度の防護効果があるが、このような条件下でのサージカルマスクの性能には限界があることが示された。

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患者の周囲環境に接触後の手指衛生:見過ごされることが最も多い機会

Hand hygiene after touching a patient’s surroundings: the opportunities most commonly missed

G. FitzGerald*, G. Moore, A.P.R. Wilson
*University College London Hospitals NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 27-31


背景
医療従事者は、感染伝播における環境表面の役割を一般的に過小評価しており、環境に接触後の手指衛生の遵守率は、患者への直接の接触後と比較して一般的に低い。それ以上に伝播が進むリスクを低下させるために、医療従事者は手指洗浄を行う必要がある特定の作業やイベントを認識しておく必要がある。

目的
救急部門および一般診療部門の医療従事者の移動状況を観察し、最も頻度が高い移動経路、および最も接触頻度が高い表面との接触時の適切な手指衛生の有無を明らかにすること。

方法
多床室および隔離室で unobtrusive observationによる 90 分のセッションを 58 回実施した。リンク解析により、ある場所から別の場所への医療従事者の移動と、動作の頻度を記録した。世界保健機関(WHO)の「手指衛生の 5 つの機会」の観察ツールを用いて手指衛生の監査を行った。

結果
救急部門では、大部分の移動は病床スペース内で行われていた。最も接触頻度が高い表面はベッドサイドのコンピューターと器具トロリーであり、患者との接触直後に多かった。一般診療部門では、病床スペース間での移動がより多く、観察された手指衛生実施率は 25%から 33%の範囲であった。診療部門の種類にかかわらず、医療従事者が隔離室に入室した直後に患者と接触した際に観察された手指衛生の遵守率は 30%未満であった。

結論
低リスクであると考えられる作業時であっても細菌の伝播が起こり得ることを、医療従事者は認識している必要がある。教育・介入プログラムでは、病室のコンピューター、カルテ、およびドアハンドルが汚染されている可能性に注意を払うべきである。

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監訳者注:
Unobtrusive observation:被験者に対して観察を行うことを知らせずに、観察を行う方法。

ゲーム技術を用いた医療従事者の手指衛生の方法と遵守の改善

Improved hand hygiene technique and compliance in healthcare workers using gaming technology

A. Higgins*, M.M. Hannan
*Mater Private Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 32-37


背景
世界保健機関(WHO)は 2009 年、医療従事者の手指衛生遵守の改善のために「多角的集学的手指衛生戦略」(手指衛生の 5 つの機会)を使用することを推奨した。この取り組みの一環として、救急医療の場での手指衛生方法を医療従事者に教育するために、ゲーム技術を用いた自動研修・監査ツールによる研修プログラムを実施した。

目的
この自動研修プログラム・監査ツールを集学的戦略の一環として使用することにより、救急医療の場での手指衛生の方法および遵守が改善するかどうかを明らかにすること。

方法
時系列デザインによる準実験計画法を用いて、手指衛生の 5 つの機会の遵守および手洗い方法を評価した。本試験は 2009 年 11 月から 2012 年 4 月に実施した。アデノシン三リン酸(ATP)監視システムを用いて手洗い方法を評価し、自動監査・研修装置 SureWash(Glanta Ltd、Dublin、Ireland)を用いて医療従事者の研修・教育支援を行った。

結果
試験期間全体を通して、手指衛生の方法および遵守が有意に改善した(P < 0.0001)。

結論
新しい自動教育技術を手指衛生プログラムに組み入れることにより、医療従事者の学習参加が促進され、救急医療の場での手指衛生の方法および遵守が改善した。

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フランス・パリの医療従事者における麻疹の免疫状態およびワクチン接種意図

Measles immunity and measles vaccine acceptance among healthcare workers in Paris, France

R. Freund*, A. Krivine, V. Prévost, D. Cantin, E. Aslangul, M.-F. Avril, Y.-E. Claessens, F. Rozenberg, A. Casetta, M.-T. Baixench, V. Dumaine, O. Launay, P. Loulergue
*Université Paris Descartes, France

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 38-43


背景
フランスなどの欧州では 2008 年から麻疹のアウトブレイクが持続している。免疫がない医療従事者が患者に接触し、感染を拡大させる可能性がある。

目的
本研究の目的は、当院の医療従事者の麻疹に対する免疫状況およびワクチン接種意図を評価することである。

方法
2011 年 4 月から 6 月にパリの大学病院 3 施設で医療従事者 351 名を対象として調査研究を実施した。登録時に下記のデータを収集した。年齢、所属部門、職種、麻疹感染歴およびワクチン接種歴、麻疹の血清検査施行歴、および血清陰性の場合の麻疹ワクチン接種意図。ELISA による麻疹検査キット CAPTIA® を用いて、血清中の特異的抗麻疹 IgG 抗体の有無を調べた。

結果
参加した医療従事者の平均年齢は 36 歳(範囲 18 ~ 67 歳)、278 名(79.2%)が女性であった。全体で 104 名(29.6%)が麻疹感染歴があると申告し、90 名(25.6%)が麻疹ワクチン接種歴がないと申告した。本研究の対象者 351 名中 322 名(91.7%)は麻疹に対する免疫を有していた(IgG > 90 mIU/mL)。免疫がないことのリスク因子は、年齢(18 ~ 29 歳、30 歳以上との比較による補正オッズ比 2.7、95%信頼区間 1.1 ~ 6.9)、麻疹感染歴またはワクチン接種歴がないことであった。対象者が自身の結果を知る前のワクチン接種意図は全体で 78.6%であった。

結論
本研究の医療従事者コホートの 8.3%が麻疹に対する感受性を有しており、その多くは 30 歳未満であった。麻疹ワクチンの接種意図は高かった。医療環境でのワクチン接種キャンペーンは、特に医学生と若年の医療従事者を対象とすべきである。

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帝王切開分娩後の手術部位感染発生率の病院間の比較:多施設サーベイランス研究の評価

Inter-hospital comparison of rates of surgical site infection following caesarean section delivery: evaluation of a multicentre surveillance study

J. Wilson*, C. Wloch, A. Saei, C. McDougall, P. Harrington, A. Charlett, T. Lamagni, S. Elgohari, E. Sheridan
*Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 44-51


背景
帝王切開分娩での術後入院期間は短期であるため、手術部位感染(SSI)リスクの正確な評価が困難である。特にベンチマーキングとしての使用など、効果的なサーベイランスシステムの支援のために用いるには、ばらつきが最小となる症例検出法が必要となる。

目的
帝王切開分娩後の SSI 症例検出法の有効性を評価すること、およびベンチマークとなる SSI 発生率を決定するにあたってのこれらの症例検出法の有用性を評価すること。

方法
対象病院で 13 週のサーベイランスを 1 期または 2 期にわたって実施した。患者の評価を入院中、分娩後(地域助産師による)、および分娩 30 日後(患者自記式質問票による)に実施した。症例検出法の信頼性の推定のため、病院 4 施設からのランダムサンプルのカルテレビューを実施した。

結果
病院 14 施設で実施した帝王切開分娩 4,107 例から 404 件の SSI が検出された。SSI 発生までの期間中央値は 10 日であり、66%は入院中または地域助産師の評価で検出され、その他の 34%は患者報告により明らかにされた。SSI 発生率は 9.8%であったが、追跡調査への回答率は病院間で大きなばらつきがみられた。症例検出の推定感度は 91.4%(95%信頼区間[CI]53.4% ~ 98.4%)、特異度は 98.6%(95%CI 98.4% ~ 98.8%)、陽性的中率は 91.0%(95%CI 82.4% ~ 96.1%)、および陰性的中率は 98.6%(95%CI 93.9% ~ 99.5%)であった。

結論
本研究で実施した複合的な症例確認法は、退院後の積極的サーベイランスの方法として実施可能なものであり、陽性的中率と陰性的中率がいずれも高かった。患者自記式質問票によって SSI をさらに検出することができるが、SSI 発生率は医療従事者による症例検出と患者自身による症例検出のいずれのばらつきにも大きな影響を受けた。SSI 発生率の比較やベンチマーキングに際しては、この因子を考慮しなければならない。

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イタリアの SPIN-UTI ネットワークのデータにみられる医療関連感染の傾向、リスク因子、および転帰

Trends, risk factors and outcomes of healthcare-associated infections within the Italian network SPIN-UTI

A. Agodi*, F. Auxilia, M. Barchitta, S. Brusaferro, D. D’Alessandro, O.C. Grillo, M.T. Montagna, C. Pasquarella, E. Righi, S. Tardivo, V. Torregrossa, I. Mura, GISIO-SITI
*University of Catania, Italy

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 52-58


背景
医療関連感染(HAI) サーベイランスのデータを踏まえた感染制御対策を実施することによって、HAIを予防することができる。サーベイランスと集中治療室(ICU)の患者の HAI 減少との間に関連が認められているが、この改善の理由はいまだに不明である。

目的
Italian Nosocomial Infections Surveillance in Intensive Care Units ネットワーク(SPIN-UTI)の 6 年間にわたるプロジェクトの 3 回の調査における HAI 発生率の変化を評価すること、および参加 ICU 65 施設での HAI 指標のばらつきの要因を調査すること。

方法
患者を対象とした HAI サーベイランスにあたっては、SPIN-UTI ネットワークは欧州のプロトコールを採用した。調査ごとに累積発生率、発生頻度、デバイス日で補正した感染率、およびデバイス使用率を算出し、比較した。多重ロジスティック回帰分析によりリスク因子を特定した。粗超過死亡率を、HAI 患者と非 HAI 患者の粗致死率の差として算出した。

結果
ICU 感染のリスクは、第 3 期の調査では過去 2 回の調査と比較して増加した(相対リスク 1.215、95%信頼区間 1.059 ~ 1.394)。リスク因子のうち、他の病棟からの ICU 入室患者の割合は 73.7%から 78.1%に、Simplified Acute Physiology Score II は 37.9 から 40.8 に増加した。死亡率に変化はみられなかったが、HAI 患者の死亡の相対リスクは増加し、第 3 期には 3 を超えた。微生物の報告頻度は、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)が第 3 期には最も高かったが(16.9%)、第 1 期は 3 番目(7.6%)、第 2 期は 2 番目(14.3%)であった。

結論
本研究では HAI リスクが増大していることが判明したが、その理由の一部は、ICU 入室を要する入院患者の疾患重症度の上昇およびその患者数の増加によって説明された。また、気管内挿管手技や人工呼吸器装着患者の管理が、ICU で上昇している HAI リスクの低下を図るための感染制御介入の標的となり得ることが明らかとなった。

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監訳者コメント
米国同様、欧州でもアシネトバクター・バウマニーが医療関連感染の脅威となっていることがうかがわれる。恒常的な ICU 感染サーベイランスの実施と、それを集計して公開し、各施設で比較により改善に結びつけることがそもそもの感染サーベイランスの目的であり、自施設の状況を周囲と比較できることが何よりの改善の契機を生むことになる。

院内滅菌部門の工程管理改善のための短時間判定用洗浄インジケータの導入

Application of rapid read-out cleaning indicators for improved process control in hospital sterile services departments

P.G. Nugent*, T. Modi, N. McLeod, L.J. Bock, C. Smith, T.M. Poolman, R. Warburton, P. Meighan, P. Wells, J.M. Sutton
*Health Protection Agency-Porton Down, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 59-65


背景
洗浄の重要性が強く認識されるようになったことから、再利用可能な医療器材の自動汚染除去システムが注目されている。著者らは以前、院内滅菌部門の自動洗浄工程の定量的モニタリングのための熱安定性アデニル酸キナーゼ(tAK)を用いた酵素インジケータシステムについて報告している。

目的
種々の洗浄剤、種々の自動洗浄消毒器が使用される様々な滅菌部門で、日常的な洗浄工程に対する tAK インジケータを用いたモニタリングを評価すること。

方法
tAK 含有インジケータストリップおよび他の工業試験用インジケータストリップを、8 種類の自動洗浄消毒器の 5 回ずつの洗浄サイクルで洗浄した。衛生監視機器を tAK 検出用に仕様変更し、洗浄後の残存 tAK をルシフェラーゼ共役アッセイにより測定した。

結果
工業試験用インジケータでは、1 回を除いた全検査で洗浄は適切であると判定された。これらの検査では各工程の洗浄効果を判別することができなかった。一方、tAK インジケータでは、滅菌部門ごとの洗浄効果の相違を判別することができた。tAK インジケータを用いた本アッセイによる洗浄効果の検出下限値は、酵素除去量 > 5.69 log10 であった。

結論
これらの結果から、tAK インジケータは種々の病院環境間および各洗浄工程間の洗浄効果の相違を判別することが可能であり、自動洗浄工程の工程管理の改善に適していることが示唆された。毎日または毎週の検査にこの技術を用いることは、自動洗浄消毒器の洗浄効果の日常的な評価に有用であると考えられる。

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監訳者コメント
熱安定性アデニル酸キナーゼ(tAK)を用いた酵素インジケータシステムのダイナミックレンジが非常に広いことを生かして、洗浄効果の指針とする可能性を示した論文である。ポイントは、その測定範囲とゆるやかなカーブを描く検量線という特徴を有したダイナミックレンジの広さであろう。

院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策が日本の新生児集中治療室における医療関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)伝播の発生に及ぼす影響★★

Impact of pre-emptive contact precautions for outborn neonates on the incidence of healthcare-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus transmission in a Japanese neonatal intensive care unit

I. Morioka*, M. Yahata, A. Shibata, A. Miwa, T. Yokota, T. Jikimoto, M. Nakamura, J.J. Lee, H. Yoshida, H. Yamada, S. Arakawa, K. Iijima
*Kobe University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 66-70


背景
新生児集中治療室(NICU)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)伝播の高リスク環境である。NICU に移送された院外出生新生児に適用した先制攻撃的接触予防策が、医療関連 MRSA(HA-MRSA)伝播の発生に及ぼす影響を調査した研究はわずかである。

目的
NICU で実施された院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策の有効性を評価すること。

方法
神戸大学病院の NICU で介入前後比較試験を実施した。院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策を 2008 年 9 月に導入した。先制攻撃的接触予防策導入前の期間(2007 年 1 月から 2008 年 8 月)を、導入後の期間(2008 年 9 月から 2010 年 12 月)と比較した。入室した全新生児のデータ、3 日を超えて NICU に入室した新生児、NICU 入室期間、院外出生新生児の入室時 MRSA 陽性率、手指衛生遵守状況、および HA-MRSA 伝播の発生率を両期間で比較した。

結果
NICU に入室した院外出生新生児の割合、3 日を超えて NICU に入室した新生児の割合、NICU 入室期間、および院外出生新生児の NICU 入室時の MRSA 陽性率は、先制攻撃的接触予防策導入前の群と導入後の群の間で有意差はなかった。しかし、手指衛生遵守は向上し、HA-MRSA 伝播の発生率は、1,000 患者日あたり 3.5 から先制攻撃的接触予防策導入後は 1.3 に有意に減少した(P < 0.0001)。

結論
院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策は、日本の NICU における HA-MRSA 伝播の発生率低下に有効であった。

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監訳者コメント
日本からの報告である。制攻撃的接触予防策の導入効果は、施設内におけるスタッフの教育的あるいは実務的なケアの質の改善によるものが大きいと思われ、いわゆるバンドルアプローチ的な効果を出している可能性がある。手指衛生の遵守率も 50%から一気に 75%まで上がり、理想とされる 80%以上に近い値を示している。

非耐熱性内視鏡用の保管キャビネットの臨床環境での評価

Evaluation of a storage cabinet for heat-sensitive endoscopes in a clinical setting

P. Grandval*, G. Hautefeuille, B. Marchetti, L. Pineau, R. Laugier
*‘La Timone’ University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 71-76


背景
ほとんどの国では、内視鏡は前回使用後に洗浄・消毒済みであっても、毎回の検査開始前に消毒または十分な洗浄を実施することとされている。非耐熱性内視鏡用保管キャビネット(SCHE)はいくつかのものが市販されており、SCHE 製造業者が検証した規定の期間は、洗浄済み内視鏡の微生物学的品質が維持されるように設計されている。SCHE を使用することによって、内視鏡の再消毒が必要とされるまでの保管期間が延長する。

目的
SCHE(DSC8000、Soluscope SAS 社、Marseilles、France)の有効性を臨床環境で評価すること。

方法
SCHE で 72 時間保管後の内視鏡(第 I 群)の微生物学的品質の評価を行い、清潔で乾燥した専用キャビネットで 72 時間保管し、朝の消毒を実施していない内視鏡(第 II 群)および清潔で乾燥した専用キャビネットで 72 時間保管し、朝の消毒を実施した内視鏡(第 III 群)の微生物学的品質と比較した。各群とも 41 本の内視鏡をサンプルとして、微生物学的品質の評価を行った。National Technical Committee on Nosocomial Infection が 2007 年に発表したガイドラインに従って、内視鏡の汚染レベルを分析した。

結果・結論
SCHE は、医療従事者が十分な研修を受け、すべての実践が検証された質保証プロセスの枠内で行われる場合は、内視鏡の微生物学的品質の維持に寄与する。

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監訳者コメント
非耐熱性内視鏡用保管キャビネット(storage cabinet for heat-sensitive endoscopest;SCHE)とは、専用の保管コンテナとラックの組み合わせによるシステムであり、欧米で販売されている。日本では見かけないが、マネジメントがきちんとなされていれば特段問題はないというのが本論文の主旨である。

血管内留置ラインの先端部培養のトリアージ方針による費用削減および方針の臨床的許容性

Cost savings and clinical acceptability of an intravascular line tip culture triage policy

J. Colston*, B. Batchelor, I.C.J.W. Bowler
*Oxford University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 77-80


背景
血管内に留置しているラインの先端部の培養は、血管内留置ライン関連の静脈炎および菌血症の診断に有用である。しかし、この検査法は特異度が不十分であり、血管内留置ライン関連菌血症の的中率が低い。最近のランダム化試験からは、血管内留置ライン先端部を冷蔵保存し、先端部を受け取る前の 7 日間またはそれ以降に菌血症が発生した場合のみにこれを培養することによって、的中率が上昇し費用削減がもたらされることが示されている。

目的
同様のトリアージ方針を、英国にある著者らの 1,400 床の国民保健サービス(NHS)教育病院に導入可能かどうかを検討した。検査室の費用削減および臨床的許容性を評価した。

方法
新規トリアージ方針導入前後の各 5 か月間の血管内留置ライン先端部の受け取り、保存、および培養の件数のデータ、および受け取った血液培養の件数のデータを、患者の微生物データベースから収集した。

結果
方針導入後の 5 か月間に受け取った 134 の血管内留置ライン先端部のうち、101 サンプル(75%)は冷蔵保存したが培養せず、33 サンプルは培養に供した。これらの 134 サンプル中 7 サンプル(5%)が培養陽性であり、3 サンプルからは同時期に実施した血液培養と同一の微生物が検出された。監査の結果、方針の遵守率は 98%を超えたことが示された。方針導入後の 1 年間の費用削減の推計値は 3,166.96 ポンドであった。この方針は医師にとって許容可能であった。

結論
この方針は、導入によって費用削減がもたらされ、また臨床的に許容可能であった。本方針が英国の全 NHS に導入された場合、NHS の 1 年間の費用削減は 300,000 ポンド程度であると考えられる。

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監訳者コメント
ルーチンの検査費用のコストセーブと、検査をリアルタイムで行う迅速性との兼ね合いは常に課題である。リスク因子も加味して、迅速診断的に行うべき検査と保管管理下で疑わしい例の検体を分析するのかを層別化することが必要であろう。

日本の血液透析施設におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)鼻腔内保菌の調査

Investigation of nasal meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in a haemodialysis clinic in Japan

Y. Uehara*, K. Kuwahara-Arai, S. Hori, K. Kikuchi, M. Yanai, K. Hiramatsu
*Juntendo University, Japan

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 81-84


日本の血液透析施設の患者および医療従事者を対象として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)鼻腔内保菌の調査を実施した。MRSA 保菌は調査 1 年目は 112 例中 10 例(8.9%)、2 年目は 103 例中 4 例(3.9%)に認められた。MRSA の全分離株がブドウ球菌カセット染色体(SCC)mec II 型また III 型を保有しており、医療関連株として一般的な clonal complex 5 に分類された。パルスフィールド・ゲル電気泳動法により、水平伝播は同一セッションの 2 組の患者のみに生じたことが示唆された。医療従事者 54 名中 1 名が、患者株と遺伝学的に関連のない MRSA を保菌していた。米国疾病対策センター(CDC)の勧告に基づく当施設の感染制御対策のため、血液透析室での MRSA の拡散はわずかであったと考えられた。

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監訳者コメント
順天堂の上原先生らによる論文報告である。調査対象とした母集団が少なく、この検討だけで言えることは少ない。

完全埋め込み型静脈アクセスデバイス関連血流感染の減少のための生理食塩液プレフィルドシリンジ:単一施設のパイロット試験

Pre-filled normal saline syringes to reduce totally implantable venous access device-associated bloodstream infection: a single institution pilot study

S. Bertoglio*, R. Rezzo, F.D. Merlo, N. Solari, D. Palombo, F. Vassallo, S. Beltramini, A. DeMaria
*University of Genova, Italy

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 85-88


用手的に生理食塩液を充填したシリンジを用いて、完全埋め込み型静脈アクセスデバイス(TIVAD)のフラッシングを行うことにより、汚染およびカテーテル関連血流感染(CRBSI)が増加する可能性がある。用手的に充填されたシリンジからプレフィルドシリンジ製品への変更が CRBSI の発生頻度に及ぼす影響を評価するため、TIVAD 留置患者 718 例を対象として後向きコホート研究を実施した。用手的に充填されたシリンジを使用した患者は 269 例、プレフィルドシリンジ製品を使用した患者は 449 例であった。CRBSI 発生率はプレフィルドシリンジ製品群 2.7%、用手的に充填されたシリンジ群 6.3%であった(P = 0.016)。性別、腫瘍の種類と病期、留置部位、および留置側は、CRBSI の独立リスク因子ではなかった。

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監訳者コメント
無菌製造による工場でのプレフィルドシリンジと、病院内で用手的にシリンジに充填した注射剤の衛生度に関する検討である。当然,前者のほうが感染予防の観点からは優位性が担保されているが、院内で製剤化する場合にはその質的保証に配慮する必要がある。

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