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手術器具のコンタミネーション除去のモニターのためのニンヒドリンの詳細な評価

Critical evaluation of ninhydrin for monitoring surgical instrument decontamination

N.K. Nayuni*, E. Cloutman-Green, M. Hollis, J. Hartley, S. Martin, D. Perrett
*Queen Mary University of London, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 97-102


背景
イングランド保健省の新しいガイダンスである Choice Framework for Local Policies and Procedures(CFPP 0101)においても、滅菌サービス部門で処理した手術器具の蛋白質除去の効果の確認にニンヒドリンが利用できるとされている。

目的
外科手技を介して変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)が伝播する可能性があることから、推奨されている蛋白質検出法を再評価する必要がある。

方法
本稿では、検査室および滅菌サービス部門でのニンヒドリンを用いた蛋白質検出の感度と適用可能性に関する研究について報告する。スワブ法による蛋白質除去効果についても評価する。

結果
ニンヒドリンによる蛋白質検出感度は低いことが示された。溶液中のウシ血清アルブミン(BSA)の検出限界は 205 μg/mL であり、アルギニンの検出限界は 6 μg/mL であった。1,000 μg未満の蛋白質をピペットで直接バイアルに注入した場合は、市販のニンヒドリンキットではラット脳ホモジネートと BSA のいずれも検出することができなかった。水で湿潤させたレーヨン製スワブを用いるスワブ法では、手術器具(N = 6)からの蛋白質(50 μg)除去効果は不十分であり、残存付着率は BSA 32 ± 4%、フィブリノゲン 61 ± 5%であった。0.5%洗剤(Triton X-100)溶液に浸漬したスワブでの除去効果はやや良好であり、残存率は BSA 20 ± 3%、フィブリノゲン 24 ± 2.8%であった。

結論
現在、滅菌サービス部門で使用されているニンヒドリンキットは、残存蛋白質の検出効果は不十分であるが、これは、ニンヒドリンによる蛋白質検出感度が低いことだけでなく、スワブ法による付着蛋白質の除去効果が低いことにもよる。全般的に、ニンヒドリンは検査室試薬としても、蛋白質検出キットとしても蛋白質検出感度が高くなく、コンタミネーション除去の評価に使用した場合は偽陰性件数が増加する。

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監訳者コメント
プリオンの完全な感染性の消失ができるのは焼却のみであり、完全な不活化は困難である。滅菌に先立っての洗浄の徹底は当然のことではあるが、極めて重要である。日本での対策の実践においては、「洗浄評価判定ガイドライン 2012 年 8 月」(日本医療機器学会、滅菌技師認定委員会)がその指針となると思われる。

未来への移行:医療関連感染の電子サーベイランス

Moving into the future: electronic surveillance for healthcare-associated infections

K.F. Woeltje*
*Washington University, School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 103-105


No abstract.

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21 世紀における医療関連感染の電子サーベイランスの進歩:システマティックレビュー

Advances in electronic surveillance for healthcare-associated infections in the 21st Century: a systematic review

R. Freeman*, L.S.P. Moore, L. García Álvarez, A. Charlett, A. Holmes
*Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 106-119


背景
従来の医療関連感染サーベイランスの手法は、資源集約型・時間浪費型の場合がある。そのため、サーベイランス対象が特定の微生物や感染症の種類に限定されることが多い。医療環境には種々の電子データベースが存在しており、医療関連感染サーベイランスを実施する際に利用できる可能性がある。

目的
医療関連感染の監視・検出のための電子サーベイランスの有用性を評価すること。

方法
医療関連感染サーベイランスに関する公表文献のシステマティックレビューを行った。2000 年 1 月から 2011 年 12 月に発表された研究をデータベースで検索した。検索語を感染、サーベイランス、およびデータマネジメントの項目に分類し、ブール演算子を用いて検索式を作成した。医療関連感染サーベイランスにおける電子システムの利用について実証または提案している研究を、本総説の対象とした。

結果
合計 44 件の研究が組み入れ基準に合致した。半数以上の研究は、特定の臨床環境における感染の自動監視方法を提供するための、電子データベースの連携に重点を置いていた。21 件の研究は、著者らの方法の性能を、従来のサーベイランス方法や手動の参照方法と併せて評価していた。感度と特異度を算出したところ、サーベイランス対象の微生物や感染症の種類、および使用したデータソースによってばらつきが認められた。

結論
多くの環境で電子サーベイランスの導入が可能であり、いくつかのシステムは病院の情報システムおよび日常的なサーベイランス作業の中に完全に組み入れられていた。本総説の結果から、病院内の豊富な電子データ情報の有効性を最大限に活用するために、電子サーベイランスシステムを開発すべきであることが示唆される。

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監訳者コメント
多くの病院でサーベイランスはそのほとんどのプロセスが人の手による作業にかかっており、時間的制約が対象感染症や微生物を制限していることは日本でも同様である。このレビューでは 44 の論文による解析を行っているが、その多くで電子カルテシステム、微生物検査システム、画像システムなど複数のデータとリンクし、NHSN などを引用して定義を設定した BSI、UTI、SSI などのサーベイランスが実施されていること、感度も特異度もばらつきがあることがわかった。我々が導入あるいは開発を検討するときに、考えるポイントの参考になるレビューである。

集中治療室における感染症の獲得:1997 年から 2010 年のベルギーにおける全国的サーベイランスの結果

Infections acquired in intensive care units: results of national surveillance in Belgium, 1997-2010

K. Mertens*, I. Morales, B. Catry
*Scientific Institute of Public Health, Belgium

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 120-125


背景・目的
1997 年から 2010 年にベルギーで実施した、集中治療室(ICU)で獲得した感染症に関するサーベイランスの方法とその結果を報告すること。

方法
1997 年以降、ベルギーの急性期病院の ICU は、全国的な多施設前向き観察サーベイランスプログラムに参加することが連邦法により推奨されている。データ収集のためのプロトコールとソフトウェアツールが開発されており、症例定義と方法は欧州疾病対策センターのものに準拠している。

結果
2010 年には 18 の病院が、四半期を単位とした 59 の観察期間における、ICU の患者 6,478 例、52,593 患者日のデータを提供した。ICU 肺炎および挿管関連肺炎の平均発生率は、それぞれ 1,000 患者日あたり 13 および 12 であった。ICU 血流感染症、中心静脈カテーテル(CVC)関連血流感染症、および CVC 関連一次血流感染症の平均発生率は、それぞれ 1,000 患者日あたり 3.2、2.6、および 2.3 であった。1997 年から 2010 年にかけて、ICU 肺炎と ICU 血流感染症には安定的な傾向が、挿管関連肺炎および CVC 関連血流感染症には減少傾向が、CVC 関連一次血流感染症には安定的な傾向が認められた。

結論
ベルギーでは ICU 感染症の全国的サーベイランスによって、急性期病院で施設レベルでの感染症発生率の追跡が可能となっており、これにより全国および欧州の基準データとの比較ができるようになった。1997 年から 2010 年にかけて、ICU 感染症の発生率は上昇し、デバイス関連感染の発生率は低下した。

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監訳者コメント
ベルギーで実施された ICU 感染症サーベイランスの 1997 年から 2010 年の報告である。このような複数の施設、長期間にわたるデータは、途中での症例定義の変更、報告施設や施設数の変更がトレンドに影響を与えることがある。この論文では、1997 年の開始当初は 170 施設であったのが、2011 年には 116 施設に参加施設が減少していた。公衆衛生データを読み解く際には、このような点や制度の変更にも注意したい。

スペインにおける集中治療室感染のサーベイランスプログラム(ENVIN-HELICSレジストリ)の質のコントロール

Quality control of the surveillance programme of ICU-acquired infection (ENVIN-HELICS registry) in Spain

M.J. López-Pueyo*, P. Olaechea-Astigarraga, M. Palomar-Martínez, J. Insausti-Ordeñana, F. Álvarez-Lerma, ENVIN-HELICS Study Group
*Hospital Universitario de Burgos, Spain

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 126-131


背景
院内感染サーベイランスレジストリの正確性を確保するためには、データの検証は不可欠な要素である。

目的
スペインにおける集中治療室(ICU)感染に関する全国サーベイランスプログラム(ENVIN-HELICSレジストリ)を対象とした、初の質コントロールプログラムの結果について報告すること。

方法
2008 年にデータベースに登録された 13,824 件のカルテのうち、20 の ICU の 1,500 件(10.8%)の登録データを調査した。これらの ICU はランダムに選択したものであり、レジストリの登録症例数によって層別化した。感染患者の割合は 9.6%(95%信頼区間[CI] 8.09 ~ 11.16)であり、調査対象の症例の選択期間中は一定であった。本研究のために 2 名の医師が研修を受け、調査を行った。

結果
ICU 在室中に何らかのデバイス関連感染が認められた患者の特定に関する ENVIN-HELICS レジストリの全体的な感度、特異度、陽性的中率、および陰性的中率は、それぞれ 86.0%(95%CI 80.0 ~ 92.0)、98.7%(95%CI 82.19 ~ 93.6)、87.9%(95%CI 82.19 ~ 93.6)、および 98.5%(95%CI 97.8 ~ 99.2)であり、κ 指数は 0.85(95%CI 0.79 ~ 0.92)であった。二次血流感染では最も感度が低く(59.3%)、挿管関連肺炎では最も感度が高かった(86.3%)。

結論
レジストリの登録担当者が報告したデータと監査者が検証したデータとの相関は良好であり、ENVIN-HELICS レジストリの信頼性が確認された。

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監訳者コメント
過去の 1,500 件の ICU 患者のデータを用いて、サーベイランスの質を評価した論文である。その結果、感染症の定義の解釈のミスやプロトコール逸脱が見つかった。評価を行うことで、データ収集のエラーや脆弱性を見つけ出すことが可能となる。

スイスの大学病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染の負荷:入院期間および費用の超過

Burden of meticillin-resistant Staphylococcus aureus infections at a Swiss University hospital: excess length of stay and costs

M. Macedo-Viñas*, G. De Angelis, P. Rohner, E. Safran, A. Stewardson, C. Fankhauser, J. Schrenzel, D. Pittet, S. Harbarth
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 132-137


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染によって、主として患者の入院期間の延長により入院費用が増加する。

目的
スイスの大学病院における MRSA 感染症による医療経済的な負荷を、種々の解析方法により推計すること。

方法
入院期間の延長日数は以下の方法により推計した。(i)MRSA 感染を時間依存性の曝露とした多状態モデルを用いた、MRSA 感染患者と MRSA 非感染患者の比較、(ii)MRSA 感染患者と MRSA 非感染患者コホートとのマッチング。経済的影響は以下の方法により評価した。(i)入院期間の延長日数に床日あたりの費用を乗じて算出した、MRSA 感染患者と MRSA 非感染あるいは非保菌患者の費用推計値の比較、(ii)MRSA 感染患者と MRSA 非感染保菌患者の実質費用の比較。

結果
未補正の入院期間平均値は MRSA 感染患者 37.3 日、MRSA 保菌患者 33.0 日、および MRSA 非感染非保菌患者 8.8 日であった。MRSA 感染による入院期間の延長日数は多状態モデルでは 11.5 日(95%信頼区間[CI] 7.9 ~ 15)、マッチング解析では 15.3 日であった。MRSA 感染後の退院の確率は有意に低下した(補正ハザード比 0.69、95%CI 0.59 ~ 0.81)。MRSA 感染患者の床日あたりの費用平均値は、急性期病棟の一般的な入院患者集団の 1.49 倍、MRSA 保菌患者の 1.26 倍高かった。MRSA 感染による追加費用平均値は、1 日あたり約 800 スイスフランであった。

結論
今回の解析から、MRSA 感染の経済的影響が明らかとなり、時間依存性バイアスを把握することの重要性が示されるとともに、多状態モデルは MRSA 感染による入院期間と費用の超過量を推計するための妥当な手法であることが確認された。

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監訳者コメント
MRSA 感染による経済的負担の増加は病院の種類(急性期・慢性期)や治療内容により大きく異なる。この論文では、MRSA 感染・保菌を時間依存の事象と見なし、その経済的影響を検討した。結果、MRSA 感染による追加費用は 8 万円強と推定された。筆者らのモデルを用いての MRSA 感染と MRSA 保菌、MRSA 非感染非保菌に分けての検討結果は想定されるものと大きく違わなかったが、数字で示すことで説得力が増すことは明らかである。

発展途上国における病院関連感染症有病率の効果的な低下は可能である

Prevalence of hospital-associated infections can be decreased effectively in developing countries

M. Ogwang*, D. Paramatti, T. Molteni, E. Ochola, T.R. Okello, J.C. Ortiz Salgado, A. Kayanja, C. Greco, D. Kizza, E. Gondoni, J. Okot, L. Praticò, V. Granata, A. Filia, H. Kellar Ayugi, D. Greco
*St. Mary’s Hospital Lacor, Uganda

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 138-142


背景
病院関連感染は、世界中で公衆衛生上の重要な問題となっている。アフリカ諸国から得られる情報はわずかであるが、公表データからは、アフリカの病院関連感染の負荷は先進国よりも大きいことが示されている。世界保健機関(WHO)は 2002 年に病院関連感染予防のためのガイドラインを発表した。

目的
ウガンダの大規模病院の患者における病院関連感染症有病率に対する病院感染制御プログラムの効果を評価すること。

方法
Lacor 病院で 2010 年 3 月に、標準化された質問票を用いて 1 日の横断的有病率調査および病棟のプロセス調査を実施した。調査の 2 日以上前に入院した全患者を有病率調査の対象とした。病院関連感染症の定義は修正 WHO 基準を用いた。病棟のプロセス調査により病院関連感染予防策の評価を行った。その後 2010 年 10 月から、WHO の感染制御ガイドラインに沿ったいくつかの病院感染制御策を導入した。有病率調査および病棟のプロセス調査を 2011 年 10 月に再度実施した。

結果
病院関連感染症有病率は 2010 年 34%、2011 年 17%であった。病院関連感染症患者有病率※※は 28%から 14%へ減少した。感染制御策導入後は、すべての年齢群、および尿路感染症を除くすべての種類の病院関連感染症で、病院関連感染症有病率が低下した。

結論
本研究により、このアフリカの大規模病院では病院関連感染が重要な問題であること、および基本的な感染制御策の導入により病院関連感染症有病率を効果的に低下させることが可能であることが示された。

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監訳者コメント
論文本文中には、2010 年の調査に基づく課題の抽出と、それに対する 2011 年の調査時の対応が記載されていたが、UTI に関しては、使用期間への介入ができておらず、それが、今回の結果につながっていると思われた。このようなプロセス調査は、施設内で対策を強化したり改良した際のリスクアセスメントに不可欠である。

監訳者注:
病院関連感染症有病率(prevalence of HAI):本研究での定義は、全患者数に対する病院関連感染症の全件数の比。
※※病院関連感染症患者有病率(prevalence of infected patients):本研究での定義は、全患者数に対する病院関連感染症を 1 件以上有する患者の割合。

英国の市中発症型および病院獲得型メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)菌血症患者の 30 日死亡率

Thirty-day mortality in UK patients with community-onset and hospital-acquired meticillin-susceptible Staphylococcus aureus bacteraemia

M. Melzer*, C. Welch
*Barts Health NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 143-150


背景
市中発症型と病院獲得型の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染症患者の死亡率の相違に関する研究はわずかであり、またそれらの結果は一貫していない。

目的
メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible S. aureus;MSSA)菌血症の連続症例の 30 日死亡率、および市中発症型感染症と転帰との関連を明らかにすること。

方法
MSSA 菌血症患者の人口統計学的、臨床的、および微生物学的データを、2007 年 8 月から 2011 年 7 月に前向きに収集した。患者の追跡を死亡、退院、または感染症の回復まで行った。多変量ロジスティック回帰を用いて、市中発症型感染症と 30 日死亡率との関連を明らかにした。

結果
患者 392 例に合計 403 件の菌血症エピソードが発生した。全死亡数は 7 日後の時点で 44 例(11.2%、95%信頼区間[CI] 7.9% ~ 14.0%)、30 日後の時点で 101 例(25.8%、95%CI 21.5% ~ 30.4%)であった。30 日死亡率は市中発症型(256 例中 71 例、27.7%)と病院獲得型(147 例中 31 例、21.1%)の感染症患者の間に相違が認められた。感染性心内膜炎(14 例中 13 例、92.9%)、化膿性脊椎炎(13 例中 12 例、92.3%)、および皮膚・軟部組織感染症(71 例中 61 例、85.9%)は市中発症型のほうが発生頻度が高かったが、血管内留置カテーテル関連感染症(82 例中 60 例、73.2%)は病院獲得型が優勢であった。年齢、Pitt スコア、Charlson 併存疾患指数、特定の感染部位(皮膚・軟部組織、下気道、および末梢関節)、および適切な治療の遅延は、30 日死亡率と強く関連していた。年齢、Charlson 併存疾患指数、および適切な治療の遅延で補正した多変量解析では、市中発症型感染症と 30 日死亡率との間に強い関連が認められた(オッズ比 1.59、95%CI 0.91 ~ 2.80)。

結論
病院獲得型 MSSA 菌血症と比較して、市中発症型の感染症は 30 日後の転帰が不良であった。病院獲得型 MSSA 菌血症は異所性の感染症を引き起こすことはまれであり、医療器材との関連がみられることが多く、患者の転帰は良好であった。

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心臓手術中の皮膚の細菌再保菌および創汚染:プラスチック製接着ドレープ使用と素肌との比較のランダム化対照試験

Bacterial recolonization of the skin and wound contamination during cardiac surgery: a randomized controlled trial of the use of plastic adhesive drape compared with bare skin

K. Falk-Brynhildsen*, B. Söderquist, Ö. Friberg, U.G. Nilsson
*Örebro University Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 151-158


背景
心臓手術後の胸骨創感染症は重大な合併症である。手術創の細菌汚染を減少させるために、プラスチック製接着ドレープなどの種々の周術期対策がとられている。

目的
心臓手術施行患者を対象として、手術創の細菌増殖および術中の隣接皮膚の細菌再保菌までの時間を、プラスチック製接着ドレープを使用した場合と素肌とで比較すること。

方法
今回の単盲検ランダム化対照試験(2010 年 5 月 ~ 2011 年 5 月)の対象は、胸骨正中切開による心臓手術が予定される患者 140 例であった。患者を接着ドレープ群(胸部をプラスチック製接着ドレープで被覆)または素肌群にランダムに割り付けた。細菌サンプル採取を術前および術中の皮膚を縫合するまでの 1 時間毎に行った。

結果
0.5%クロルヘキシジン 70%アルコール溶液による消毒によりコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)が減少したが、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)保菌率は有意な低下が認められず、50%を超える皮膚サンプルの中に依然として存在していた。P. acnes は女性よりも男性に有意に多く認められた。皮膚の細菌再保菌の進行が 2 ~ 3 時間以内に生じた。120 分後の培養陽性率は、接着ドレープ使用群のほうが素肌群と比較して P. acnes(63%対 44%、P = 0.034)および CoNS(45%対 24%、P = 0.013)ともに有意に高かった。手術創の細菌増殖については、接着ドレープ群では手術終了時に CoNS 陽性率が高かったことが、唯一の統計的に有意な相違であった(14.7%対 4.4%、P = 0.044)。

結論
プラスチック製接着ドレープの使用により、細菌再保菌は減少しなかった。P. acnes 保菌は男性に高頻度に認められ、クロルヘキシジンアルコール溶液による消毒では減少しなかった。

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プロバイオティクス VSL#3 による抗菌薬関連下痢症の予防に関する二重盲検ランダム化プラセボ対照試験

Probiotic VSL#3 prevents antibiotic-associated diarrhoea in a double-blind, randomized, placebo controlled clinical trial

C.P. Selinger*, A. Bell, A. Cairns, M. Lockett, S. Sebastian, N. Haslam
*Salford Royal Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 159-165


背景
抗菌薬関連下痢症は、抗菌薬全身投与の合併症として高頻度に認められ、その中でもクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症は有病率と死亡率から最も重大なものである。

目的
本試験の目的は、プロバイオティクス VSL#3 により、平均的リスクを有する入院患者の抗菌薬関連下痢症および C. difficile 関連下痢症が予防できるかどうかを調べることであった。

方法
抗菌薬全身投与を受ける成人入院患者を、今回の多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験に登録した。抗菌薬投与コース中およびその後の 7 日間に、VSL#3 またはプラセボ 1 包を 1 日 2 回連日投与した。主要評価項目は抗菌薬関連下痢症および C. difficile 関連下痢症とした。

結果
実薬群(117 例)およびプラセボ群(112 例)の患者のベースライン時の人口統計学的データは均衡していた。C. difficile 関連下痢症症例は検出されなかった。抗菌薬関連下痢症発生率は、per protocol 解析では実薬群で有意に低かった(実薬群 0%、プラセボ群 11.4%、P = 0.006)。Intention-to-treat 解析では、抗菌薬関連下痢症発生率の両群間の差は有意ではなかった(実薬群 4.3%、プラセボ群 8.9%、P = 0.19)。

結論
VSL#3 により、抗菌薬全身投与を受けた平均的リスクを有する入院患者の抗菌薬関連下痢症の発生率が有意に低下する。C. difficile 関連下痢症の発生率は急激に低下しており、その症例は認められなかった。平均的リスクの入院患者の C. difficile 関連下痢症に対するプロバイオティクス予防投与は、適応とはならないと考えられる。

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医療環境における清掃遵守の評価のための継続的な成績フィードバックおよび紫外線可視マーカーの利用

Continuing performance feedback and use of the ultraviolet visible marker to assess cleaning compliance in the healthcare environment

A.N. Trajtman*, K. Manickam, M. Macrae, N.S. Bruning, M.J. Alfa
*University of Manitoba, Canada

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 166-172


背景
これまで長年にわたり、環境表面は医療施設に微生物をもたらすことがあるリザーバであると見なされてきた。本試験の目的は、週 1 回の清掃職員への紫外線可視マーカー(UVM)を監査ツールとした清掃遵守成績のフィードバックが、清掃遵守の改善・維持に及ぼす影響を評価することである。

方法
清掃職員の清掃遵守の目標として 90%を選択した。患者用トイレ内の便座、流し、液体石けんディスペンサー、およびドアノブの各表面の UVM 評価を平日に連日実施した。試験群は 3 群からなり、第 1 群の職員は 24 週の試験期間を通して清掃遵守成績のフィードバックを受けた。第 2 群の職員は第 13 週から第 24 週に、第 3 群の職員は第 1 週から第 12 週にフィードバックを受けた。清掃職員へのフィードバックとして、病棟および清掃職員の事務室へのグラフの掲示も行った。

結果
試験前の監査による清掃遵守率は第 1 群 66.9%、第 2 群 66.5%、および第 3 群 66.4%であった。週 1 回のフィードバック期間中は、全 3 群ともに清掃遵守率が大幅に改善した(第 1 群 86.7%、第 2 群 80.4%、および第 3 群 73.7%)。シフトにおける非常勤職員の割合は第 1 群 16.1%、第 2 群 26%、および第 3 群 40.3%であったことから、非常勤職員の活用は高い清掃遵守率達成の障壁となっていた可能性がある。

結論
監査ツールとしての UVM の使用と清掃職員への清掃遵守成績の週 1 回のフィードバックを併用することにより、清掃職員の全般的な清掃遵守レベルが大幅かつ持続的に改善した。

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短波長紫外線消毒用に設計されたカテーテル試作品

A prototype catheter designed for ultraviolet C disinfection

J. Bak*, T. Begovic
*Technical University of Denmark, Denmark

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 173-177


背景
シングルルーメンのポリマーチューブ内腔を、外部光源からの短波長紫外線(UVC)照射によって消毒することが可能である。UVC による現在のカテーテル消毒では、カテーテルハブとチューブコネクタの設計が障害となっている。

目的
UVC によって内腔全体を消毒することができるハブ、チューブコネクタ、およびチューブパーツからなるシングルルーメンカテーテルの設計が可能であることを示すこと。

方法
2 種類のシングルルーメンカテーテルを設計した。1 つは対照で、もう 1 つは UVC 照射用である。これらのカテーテルを緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(104 ~ 105 cfu/mL)で汚染させた後、UVC 照射、サンプル採取、および平板測定法による計数を行った。

結果
2 分間の UVC 照射により、試作品カテーテル全長の 4 log10 の消毒効果を得ることができた。これはカテーテルチップに対する約 40 mJ/cm2 の照射に相当し、照射時間のさらなる短縮が可能であることを示している。

結論
内腔全体の消毒が可能なカテーテルを設計することは可能である。UVC 照射は臨床使用でのカテーテルのコンタミネーション除去法として有用であると考えられる。

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トルコの大学付属 3 次病院で検出されたカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の分子的特性

Molecular characterization of carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae in a tertiary university hospital in Turkey

E. Alp*, D. Perçin, S. Colakoǧlu, S. Durmaz, C.A. Kürkcü, P. Ekincioǧlu, T. Güneş
*Erciyes University, Turkey

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 178-180


本研究の目的は、トルコの大学付属 3 次病院で同定されたカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の耐性遺伝子およびその遺伝的関連を明らかにすることである。研究期間中に患者 137 例からカルバペネム耐性 K. pneumoniae が検出された。分離株 94 株を対象として耐性遺伝子を調査した。これらの分離株では、ほとんどのカルバペネム耐性 K. pneumoniae はオキサシリナーゼ(OXA)-48 のみを産生していたが(91.5%)、4.3%はニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ 1(NDM-1)のみを、1%は OXA-48 と NDM-1 の両方を産生しており、3.2%はイミペネマーゼを産生していた。本研究によって、トルコは NDM-1 産生菌が存在する数多い国の 1 つとなり、また NDM-1 は世界中に容易に拡散する可能性があることが示された。

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病院環境からのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)分離の困難さ

On the difficulties of isolating Clostridium difficile from hospital environments

D.J. Malik*, K.V. Patel, M.R.J. Clokie, G. Shama
*Loughborough University, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 84, 181-183


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞をステンレス製パネル表面に付着させ、次いで塩素系消毒薬(ジクロロイソシアヌル酸)に曝露した。種々の選択的および非選択的寒天を含有する RODAC 平板培地を用いて C. difficile 芽胞を採取した。非選択的寒天培地は、対照芽胞および塩素ストレスを受けた芽胞をともに高率で回収した。本試験の結果は、選択培地に含まれる抗菌薬は消毒薬処理した芽胞および無処理の芽胞にさらにストレスを加え、芽胞回収率を大きく低下させることを示している。このために、本菌による環境汚染の程度の重大な過小評価を招く可能性がある。

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