JHIサマリー日本語版トップ

レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

感染制御のための迅速診断検査:迅速検査は検査室で行うべきか、診療の場で行うべきか?

Point-of-care tests for infection control: should rapid testing be in the laboratory or at the front line?

C. Moore*
*University Hospital of Wales, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 1-7


背景
迅速診断検査(point-of-care test;POCT)では、直ちに患者の診療を行うために迅速に検査結果が提供される。これらの検査法は簡易であると考えられることから、適切な訓練を受けていない者が実施したり結果を解釈をした場合にみられる実施者間のばらつきが明確に現れない。感染性疾患の診断用に開発が進められている POCT 用の体外診断薬は増加している。これらを使用する際の限界を理解することにより、感染制御を目的とした POCT の実施が可能になると考えられる。

目的
拡大が続く感染性疾患診断用 POCT 製品レパートリーのレビューを行うとともに、病院感染の減少およびアウトブレイク管理の支援ツールとしてのそれらの有用性を評価すること。

方法
PubMed および Scopus で検索した感染性疾患の診断用 POCT をテーマとしている公表文献のシステマティックレビュー。

結果
POCT について記述している公表文献は増加しているが、臨床環境での使用について記述した文献は依然として少ない。レビュー対象の文献からは、RS ウイルスおよびノロウイルス診断用 POCT は感染制御のための有用性が非常に高いが、それらのデータは感度と訓練に関する問題があることが示唆される。将来の POCT デバイスは分子的手法に基づくものになると予想され、感度は改善されるが使用者にとってコストが増大すると考えられる。

結論
POCT は感染制御に役割を担っているが、現時点では臨床検査室環境外でのそれらの使用に関する良質な一貫した臨床データが不足していることが、それらの導入を制限する要因となっている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
日本は免疫クロマトグラフ法検査試薬をおそらく世界で最も大量に消費している国の 1 つである。ことにインフルエンザやノロウイルスの流行する冬場にその消費が激増する。あまりの便利さゆえに国内の迅速診断検査試薬のかなりの部分が免疫クロマトグラフ法で占められているが、欧米では PCR 法を中心とする遺伝子増幅検査の使用頻度も一定の割合を確保している。

肥満と院内感染

Obesity and nosocomial infections

R. Huttunen*, M. Karppelin, J. Syrjänen
*University of Tampere, Finland

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 8-16


背景
医療関連感染の予防は、現代の医療の主要な目標である。内的な患者側の因子は、医療関連感染リスクに寄与していると考えられる。

目的
肥満と、医療関連感染のリスクおよび転帰との関連について調査すること。

方法
肥満と院内感染、および肥満と抗菌薬投与に関連する研究の PubMed 検索。検索語は、「肥満(obesity)」、「感染(infection)」、「院内感染(nosocomial infection)」、「手術部位感染(surgical site infection)」、「救命救急部門(critical care unit)」、「菌血症(bacteremia)」、「尿路感染(urinary tract infection)」、「医療関連感染(health care associated infection)」とした。

結果
複数の研究により、肥満は医療関連感染リスクの増加と関連することが示されていた。この関連は、特に心臓、血管、整形、および消化器の手術で明確に認められた。体格指数(BMI)のデータは、外科的・侵襲的手技を受ける患者では記録頻度が高かった。BMI データの記録方法は文献ごとの一貫性がなく、多くの研究では対照群または基準群(正常体重)の BMI 中央値でさえも過体重や肥満を示していた。したがって、感染リスクの増加がみられる BMI の明確なカットオフ値を明らかにすることはできなかった。肥満では多くの場合、医療関連感染の予防と治療のいずれにおいても抗菌薬が過少投与されていた。肥満は抗菌薬の薬物動態に影響を及ぼすことを示唆する研究がある。しかし、肥満での抗菌薬投与に関する推奨方法はない。

結論
肥満は院内感染リスクを上昇させ、多くの場合、医療関連感染の予防と治療のいずれにおいても抗菌薬の過少投与と関連していた。肥満の増加へのわれわれの対処能力が、今後の病院衛生における予防的活動の主要な課題である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この研究には様々な交絡因子が絡んでいる可能性がある。肥満と糖尿病などの患者背景は易感染性患者や創感染との関係が気になるところである。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症患者のコホーティングが症状再発リスクに及ぼす影響★★

Influence of cohorting patients with Clostridium difficile infection on risk of symptomatic recurrence

J. Islam*, E. Cheek, V. Navani, C. Rajkumar, J. Cohen, M.J. Llewelyn
*Brighton & Sussex Medical School, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 17-21


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)患者に対しては、個室が使用できない場合はコホーティングが推奨されている。患者は下痢の症状が消失した後も感染性が持続している場合があり、コホーティングを継続することによって患者の再感染リスクが上昇する可能性がある。

目的
CDI 再発のリスク因子を特定すること、および患者のコホーティングが再発リスクの上昇と関連するかどうかを明らかにすること。

方法
2008 年 10 月から 2011 年 6 月に当院で CDI と診断された患者 248 例を対象として、患者の人口統計学的特性、併存疾患、CDI の重症度、および治療内容が記録されたデータを収集した。主要評価項目は診断後 30 日以内の症状再発とした。

結果
CDI 患者 138 例(55.6%)がコホート隔離病棟に入院した。これらの患者は、非コホーティング患者と比較して重度の CDI の割合が高く(オッズ比[OR]1.95、95%信頼区間[CI]1.10 ~ 3.46、P = 0.022)、バンコマイシン投与を受ける割合が高かった(OR 1.59、95%CI 0.94 ~ 2.68、P = 0.083)。再発は 26 例(10.5%)にみられた(コホーティング患者 21 例、非コホーティング患者 5 例)。入院時の尿路感染症(OR 5.16、95%CI 2.10 ~ 12.64、P < 0.001)、コホーティング(OR 3.77、95%CI 1.37 ~ 10.35、P = 0.01)、抗菌薬併用投与(OR 2.07、95%CI 0.91 ~ 4.72、P = 0.083)が再発リスクの上昇と関連していた。多変量解析では、コホーティング(OR 3.94、95%CI 1.23 ~ 12.65、P = 0.021)および尿路感染症(OR 4.27、95%CI 1.62 ~ 11.24、P = 0.003)が有意な再発予測因子であった。

結論
C. difficile のコホート隔離病棟への入院患者は再感染リスクが高いため、再発リスクが上昇していると考えられる。C. difficile の制御ためにコホート隔離病棟を使用する病院は、このリスクを最小化するために、コホートにおける患者のフローの管理を行うべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
なんとも驚きの結末である。こうなると CDI 患者は個室隔離をして、かつ退出後には次の患者に二次伝播しないようにするために徹底した病室清掃消毒が必要ということになる。

重度のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症に対するバンコマイシン単剤療法と併用療法の治療効果の比較

Comparison of treatment outcomes with vancomycin alone versus combination therapy in severe Clostridium difficile infection

S.N. Bass*, S.R. Bauer, E.A. Neuner, S.W. Lam
*Cleveland Clinic, OH, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 22-27


背景
重度のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)に対して推奨される治療法は経口バンコマイシン単剤である。メトロニダゾールとの併用療法はショック、イレウス、または中毒性巨大結腸症が合併した場合にのみ推奨される。しかし併用療法を支持するデータが不十分であるにもかかわらず、重度の感染症患者が併用療法による治療を受けることが多い。

目的
重度の CDI 患者に対する経口バンコマイシン単剤療法と併用療法の転帰の相違を評価すること。

方法
経口バンコマイシン単剤療法または併用療法を 72 時間以上受けた重度の CDI 患者 78 例のカルテの後向きレビューを実施した。主要評価項目は CDI の臨床的治癒までの期間(定義は、合併症が発生せずに、下痢の消失が 48 時間以上持続した最初の日までの期間)とした。その他の評価項目は治癒率、合併症発生率、および再発率とした。

結果
臨床的治癒率は単剤療法と併用療法との間に相違はみられなかった(57.1%対 65.1%、P = 0.49)。臨床的治癒までの期間中央値は単剤療法群 7.0 日、併用療法群 8.0 日であった(P = 0.19)。想定される交絡因子で補正後の、臨床的治癒までの期間の併用療法の単剤療法に対するハザード比は 0.58 であった(P = 0.10)。再発率および個々の合併症の発生率は両群間に相違はなかったが、全合併症発生率は併用療法群で有意に高かった。

結論
これらのデータから、重度の CDI に対する単剤療法と併用療法の転帰には相違がないことが示唆された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
メトロニダゾールは炎症病巣への移行はよいが、改善すると悪くなることが知られている。したがって、重症例では経口でのバンコマイシン投与が第一選択薬となる。

重症度に基づくクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の治療方針の実施前後の治療パターンおよび患者の転帰の評価

Assessment of treatment patterns and patient outcomes before vs after implementation of a severity-based Clostridium difficile infection treatment policy

C.G.M. Jardin*, H.R. Palmer, D.N. Shah, F. Le, N.D. Beyda, Z. Jiang, K.W. Garey
*St. Luke’s Episcopal Hospital, TX, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 28-32


背景
米国のガイドラインでは、重度のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)に対する治療として、臨床転帰の改善が示された最近のいくつかの臨床試験の結果に基づいてバンコマイシンの経口投与を推奨している。しかし、これらの臨床試験を裏づける実臨床データはわずかである。

目的
3 次教育病院で、CDI の治療を受けた患者の治療パターンと転帰を、重症度に基づく治療方針の実施前後で比較すること。

方法
本試験では、重度の CDI に対するメトロニダゾール投与を、禁忌がない場合にはバンコマイシン経口投与に切り替えるという治療方針の実施前後に、C. difficile 毒素陽性の成人患者の評価を行った。公表されている重症度スコアに修正を加えたものを使用して、患者を疾患の重症度ごとに層別化した。CDI の重症度に基づく治療パターンおよび治療抵抗性 CDI の割合を評価した。

結果
CDI 患者合計 256 例(年齢平均値 66 歳、標準偏差 17、女性 52%)を評価した(実施前 144 例、実施後 112 例)。重度の CDI に対する経口バンコマイシンの使用は 14%(8 例)から、治療方針の実施後は 91%(48 例)に有意に増加した(P < 0.0001)。重度の CDI 患者における治療抵抗性疾患は 37%から、治療方針の実施後は 15%に有意に減少した(P = 0.035)。軽度から中等度の CDI 患者では、有意な相違は認められなかった。

結論
3 次教育病院における CDI の重症度に基づく治療方針によって経口バンコマイシンの使用が増加し、それに伴って治療抵抗性 CDI の割合が低下した。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
経口バンコマイシンの使用の増加に伴い、バンコマイシン耐性腸球菌やバンコマイシン耐性 MRSA の出現に関する検証も必要だろう。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)医療関連感染の減少のための選択的スクリーニング+除菌と全症例スクリーニング+除菌の比較

Targeted versus universal screening and decolonization to reduce healthcare-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus infection

S.R. Deeny*, B.S. Cooper, B. Cookson, S. Hopkins, J.V. Robotham
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 33-44


背景
入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の全症例スクリーニングを、特定の患者集団を標的としたスクリーニングと比較した場合の有益性や、退院時スクリーニングを追加した場合の影響については明らかではない。

目的
MRSA スクリーニングと除菌治療の併用が MRSA 感染率に及ぼす影響を定量的に評価すること。全症例スクリーニング方策と選択的スクリーニング方策を比較するとともに、退院時スクリーニングと除菌の併用を追加した場合の影響を評価すること。

方法
900 床の 3 次病院における 18 か月の患者個別データから得た、一般病棟と集中治療室(ICU)との間および病院と市中との間の患者の移動に関する情報を組み入れた、MRSA 伝播の確率論的個体ベースモデルを開発した。MRSA の全症例スクリーニング+除菌方策および選択的スクリーニング(ICU の患者、急性期高齢患者、または再入院患者が対象)+除菌方策の影響を、入院時と退院時の各条件下でシミュレーションした。

結果
入院時の全症例スクリーニングと除菌により、MRSA 感染は 10 年間で 77%(95%信頼区間[CI]76% ~ 78%)減少すると考えられた。急性期高齢患者部門または ICU 患者のみを対象としたスクリーニングによる減少率は、それぞれ 62%(95%CI 61% ~ 63%)、66%(95%CI 65% ~ 67%)であった。選択的スクリーニング方策によって、スクリーニング件数は最大 95%、除菌コース数は 96%減少した。入院時スクリーニングに退院時スクリーニングを追加しても影響はわずかであり、感染のさらなる減少は最大 7%であった。

結論
選択的スクリーニングでは、必要となるスクリーニングおよび除菌の件数が全症例スクリーニングと比較して大幅に減少したが、感染の減少率は 12%低下したのみであった。選択的スクリーニングと除菌の併用により耐性菌出現リスクが低下し、医療資源の利用が効率化すると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
MRSA の除菌が一過性のものなのかどうかについて長期フォローアップ研究を行うべきであろう。全症例スクリーニングは費用と手間がかさむが、より確実な対処法と考えられる。

欧州の長期療養施設での感染予防・制御および抗菌薬管理に関する国レベルでの成績評価指標の開発と評価

Development and assessment of national performance indicators for infection prevention and control and antimicrobial stewardship in European long-term care facilities

B. Cookson*, D. MacKenzie, G. Kafatos, B. Jans, K. Latour, M.L. Moro, E. Ricchizzi, M. Van de Mortel, C. Suetens, J. Fabry on behalf of the National Network Representatives for the Healthcare-Associated Infections in Long-Term Care Facilities (HALT) Project
*Health Protection Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 45-53


背景
長期療養施設における医療関連感染の重要性が増加している。

目的
長期療養施設における感染制御および抗菌薬管理を対象とした、合意形成を得た国レベルでの成績評価指標を開発すること、およびこれらの指標を用いて欧州 32 か国の成績評価を実施すること。

方法
すでに確立している欧州の標準指標を雛形として、同一の反復アプローチ法を用いて 32 か国の担当者による合意形成を行った。世界保健機関(WHO)のスコアリングシステムにより、各国が個別の標準指標をどの程度厳格に実施しているかを記録した。

結果
合意形成を得た 42の個別指標を、「全国的プログラム」、「ガイドライン」、「専門家の助言」、「感染制御のための施設構造(抗菌薬管理に関する成績指標は該当しない)」、「サーベイランス」、および「その他」の 6 カテゴリーに分類した。各カテゴリーのスコア平均値をスコア満点に対する百分率で表すと、「ガイドライン」(60%、範囲 20% ~ 100%)が最も高く、次いで「その他」(53%、範囲 30% ~ 100%)、「専門家の助言」(48%、範囲 20% ~ 100%)、「サーベイランス」(47%、範囲 20% ~ 100%)、「全国的プログラム」(42%、範囲 20% ~ 100%)、および「感染制御のための施設構造」(39%、範囲 20% ~ 100%)の順であった。いくつかのスコアは低値であったものの、すべての成績評価指標を実施していた国もあることから、この指標は実用可能であることが示唆される。ほとんどのカテゴリー間には極めて強い有意な関連が認められたことから、各国でこれらすべての指標が重要視されていると考えられる。「ガイドライン」と「感染制御のための施設構造」のカテゴリーには欧州内の各地域との有意な関連が認められた(P ≦ 0.05)。7 か国(22%)では認可/審査が行われておらず、9 か国(28%)の認可/審査には感染制御の評価が、7 か国(22%)の認可/審査には感染制御と抗菌薬管理の評価が含まれていた。多変量解析からは、全国的成績評価指標および感染制御に関する成績評価指標の「専門家の助言」のみが、感染制御と抗菌薬管理を評価項目とする認可/審査と関連していた。

結論
本試験で判明したギャップから、重大な患者の安全性の問題が存在する可能性が示される。この国レベルでの成績評価指標は、ベンチマーク指標として今後数年間のモニタリング向上に寄与するはずである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
耐性菌はいともたやすく国境をまたいでくる。そうした観点から、隣接する国のみならず世界規模で抗菌薬の適正使用に関する管理を真剣に考える必要がある。

監訳者注:
反復アプローチ法:WHOがHARMONYプロジェクトで使用した手法(Cookson B, et al. J Hosp Infect 2009;72:202)。

カナダの病院におけるバンコマイシン耐性腸球菌に関する経済分析:バンコマイシン耐性腸球菌に起因する費用および入院期間の評価

Economic analysis of vancomycin-resistant enterococci at a Canadian hospital: assessing attributable cost and length of stay

P. Lloyd-Smith*, J. Younger, E. Lloyd-Smith, H. Green, V. Leung, M.G. Romney
*University of Alberta, Canada

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 54-59


背景
カナダの一部の医療施設では、医療費の増大のためにバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)制御プログラムが緩和されるようになっている。

目的
カナダの急性期病院 1 施設を対象として、VRE 保菌・感染に起因する費用および入院期間を明らかにすること。

方法
カナダ・バンクーバーのダウンタウンに立地する急性期病院で、サーベイランスおよび院内の財務データベースを用いて 2008 年度(2008 年 4 月 1 日から 2009 年 3 月 31 日)の症例-対照分析を実施した。VRE に起因する費用および入院期間に関する統計学的解析を、一般化線形モデルにより行った。副次的解析では、費用および入院期間の相違をVRE の保菌と感染とで比較評価した。

結果
合計で VRE 陽性患者 217 例および VRE 陰性患者のランダムサンプル 1,075 例の評価を行った。VRE は、患者の入院費用および入院期間に対して有意な正の影響を及ぼした。VRE に起因する患者 1 例あたりの推定費用平均値の増加は、相対値で 61.9%(95%信頼区間[CI]42.3% ~ 84.3%)、絶対額で 17,949 カナダドル(95%CI 13,949 ~ 21,464)であった。入院期間については、VRE 陽性患者 1 例あたりの入院日数平均値の延長は、相対値で 68.0%(95%CI 41.9% ~ 98.9%)、絶対値で 13.8 日(95%CI 10.0 ~ 16.9)であった。VRE の保菌と感染での費用を比較した副次的解析では、統計学的有意差は認められなかった。

結論
今回の解析から、VRE に起因する費用および入院期間は甚大である。病院での VRE 制御プログラムを緩和する前に、これらの因子について考慮するべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

集中治療室におけるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)伝播の可能性:遺伝子型判定と時間的クラスター分析

Possible transmission of Candida albicans on an intensive care unit: genotype and temporal cluster analyses

F. Hammarskjöld*, S. Mernelius, R.E Andersson, S. Berg, H. Hanberger, S. LÖfgren, B.-E. Malmvall, M. Petzold, A. Matussek
*Ryhov County Hospital, Sweden

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 60-65


背景
カンジダ(Candida)属菌の院内伝播については十分調査されておらず、これまでの研究で示された結果は一貫していない。

目的
集中治療室(ICU)における Candida 属菌の院内伝播の可能性を評価すること。

方法
サーベイランスまたは医師の指示による培養により Candida 属菌の増殖が認められた当院 ICU の全患者を対象として、19 か月間にわたって前向き試験を実施した。反復配列PCR法を用いた分子タイピングにより、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)の分離株間の遺伝子型の関連を明らかにした。同一郡内の当 ICU 以外の患者の血液培養から採取した Candida 属菌分離株を基準株とした。遺伝子型の分布の経時的な変動を評価するために時間的クラスター分析を行った。

結果
ICU への全入室件数の 12%である 78 件、77 例の患者から、Candida 属菌分離株 180 株を検出した。分子タイピングにより、27 の C. albicans 遺伝子型と 10 の C. glabrata 遺伝子型が特定された。互いに識別不能な遺伝子型の Candida 属菌を保有する患者の入室期間が重複していたことに基づいて、C. albicans で 7 件、C. glabrata で 2 件のクラスター化の可能性が示された。基準株と比較して、ICU 分離株では 2 つの C. albicans 遺伝子型が有意に高い頻度で認められた。また ICU 分離株では、複数の患者から検出された C. albicans 遺伝子型の数が有意に多かった。時間的クラスター分析からは、21 日間隔での解析の場合に、互いに識別不能な遺伝子型が検出された患者ペア数が有意に増加することが明らかとなり、クラスター化が生じたことが示された。

結論
本研究から、遺伝子型判定と時間的クラスター分析に基づいて、ICU の患者間で C. albicans 伝播が生じた可能性が示された。

サマリー原文(英語)はこちら

医療従事者のカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)への持続的曝露により KSHV 感染は生じない

Continuous exposure to Kaposi sarcoma-associated herpesvirus (KSHV) in healthcare workers does not result in KSHV infection

R. Mancuso*, L. Brambilla, V. Boneschi, A. Hernis, S. Agostini, A. Tourlaki, M. Bellinvia, M. Clerici
*Don C. Gnocchi Foundation, ONLUS, Italy

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 66-68


カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV または HHV-8)感染の経路、および職業曝露のリスクは十分明らかにされていない。著者らは、医療従事者の古典的カポジ肉腫患者への長期的職業曝露による KSHV 感染獲得リスクを分析し、カポジ肉腫患者の健康な親族から得られた結果と比較した。血清または唾液中の KSHV 特異的抗体および DNA の検出は、カポジ肉腫患者の健康な親族 35 名中 5 名にみられたのに対して、8 名の医療従事者では認められなかった。このことは、家族同士の密接な接触以外では、カポジ肉腫患者と長期間接触する医療従事者であっても、KSHV の水平伝播は極めて生じにくいことを示唆している。

サマリー原文(英語)はこちら

イラン・エスファハーンの大規模病院 3 施設における手指衛生遵守のベースライン時の評価

Baseline evaluation of hand hygiene compliance in three major hospitals, Isfahan, Iran

B. Ataei*, S.M. Zahraei, Z. Pezeshki, A. Babak, Z. Nokhodian, S. Mobasherizadeh, S.G. Hoseini
*Isfahan University of Medical Sciences, Iran

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 69-72


手指衛生は院内感染予防の柱である。本研究は、イランのエスファハーンにある大規模病院 3 施設の医療従事者の手指衛生遵守を、直接観察によって評価するためのベースライン調査である。種々の手指衛生用製品の使用についても評価した。潜在的な手指衛生機会 3,078 回のうち 2,653 回(86.2%)で、手指衛生用製品の利用が可能であった。全体的な遵守率は 6.4%(教育病院 7.4%、公立病院 6.2%、私立病院 1.4%)であった。看護師(8.4%)の遵守率が最も高かった。エスファハーンの病院の手指衛生遵守率は低かったことから、病院インフラと職員の知識を併せて改善する介入が直ちに必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)complex のアウトブレイクに関与する患者特性および転帰予測因子

Characteristics and outcome predictors of patients involved in an outbreak of Burkholderia cepacia complex

E. Righi*, M. Girardis, P. Marchegiano, C. Venturelli, S. Tagliazucchi, M. Pecorari, L. Borsari, E. Carluccio, M. Codeluppi, C. Mussini, G. Aggazzotti
*University of Modena and Reggio Emilia, Italy

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 73-75


イタリアの集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着した非嚢胞性線維症患者にバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)complex のアウトブレイクが発生した。保菌患者 33 例および感染患者 13 例を対象として後向き研究を実施し、臨床的感染および死亡に関連する因子を検討した。人口統計学的特性、臨床的特性、および死亡率は保菌患者群と感染患者群で大きな相違はなく、いずれの群も ICU の全患者集団と比較して死亡率が高かったが、その他の感染症患者の死亡率とは同等であった。多変量回帰分析による早期死亡の独立予測因子は、疾患重症度(Simplified Acute Physiology Score II により定義)(オッズ比[OR]1.12、95%信頼区間[CI]1.02 ~ 1.26)および年齢(OR 1.07、95%CI 1.01 ~ 1.15)のみであった。

サマリー原文(英語)はこちら

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)による環境汚染の検出法としての市販リアルタイム PCR 法の評価

Evaluation of a commercial real-time polymerase chain reaction assay for detection of environmental contamination with Clostridium difficile

A. Deshpande*, S. Kundrapu, V.C.K. Sunkesula, J.L. Cadnum, D. Fertelli, C.J. Donskey
*Case Western Reserve University, OH, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 76-78


汚染された環境表面は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の重要な伝播源である。しかし、汚染評価のための効率的で簡便な方法はない。市販のリアルタイム PCR 法による環境中の毒素産生性 C. difficile の検出能を、嫌気培養後の分離株の毒素検査と比較評価した。66 か所でサンプル採取を行い、PCR 法の検出能は感度 17.39%、特異度 100%、陽性的中率 100%、陰性的中率 69.35%であった。PCR サイクルの閾値(CT)を 45 まで増加させると、特異度は低下せずに感度が 52%に上昇した。市販の PCR 法の感度は環境モニタリングには十分ではないが、CT 値を修正することにより感度の改善が可能であると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

シミュレーションした病院環境での環境からの嗅覚刺激の手指衛生行動への影響:ランダム化試験

Impact of environmental olfactory cues on hand hygiene behaviour in a simulated hospital environment: a randomized study

D.J. Birnbach*, D. King, I. Vlaev, L.F. Rosen, P.D. Harvey
*University of Miami Miller School of Medicine, FL, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 79-81


本研究では、新人の医療従事者の手指衛生遵守率に対する「新鮮な香り」の影響について調べた。合計 165 名の参加者が標準化された患者を診察し、この際に一方の群(79 名)は新鮮な香りがする環境で、もう一方の群(86 名)は標準的な環境で行った。ビデオ監視システムにより、患者との接触前の手指衛生行動を追跡した。手指衛生遵守率は、標準的な環境の群では 51%であったが、新鮮な香りの群ではそれより高い 80%であった(P < 0.001)。このデータは、手指衛生行動は潜在意識下で環境からの刺激に影響されると考えられることを示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者注:
標準化された患者:本研究では、当施設で初心者を対象として毎年実施される研修において行われた、一律に心悸亢進を主訴とする患者の診療シミュレーションの模様を観察した。

サイト内検索

Loading

アーカイブ

最新のコンテンツ

Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.