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新生児室における百日咳の院内感染

Nosocomial pertussis in neonatal units

H.C. Maltezou*, L. Ftika, M. Theodoridou
*Hellenic Center for Disease Control and Prevention, Greece

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 243-248


百日咳は、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの国では依然として公衆衛生上の問題となっている。百日咳の院内アウトブレイクが新生児室で継続的に発生している。新生児集中治療室に入室する新生児および年少乳児は、未熟児、免疫応答が不十分、低年齢のため百日咳ワクチン接種の第 1 期初回シリーズが完了できないなどにより、易感染性の高リスク集団を形成している。本稿では新生児および乳児の院内百日咳について、医療従事者の役割に焦点を当ててレビューを行った。新生児室でのアウトブレイクは、しばしば医療従事者が発生源となり、易感染性年少乳児の重篤な疾患や致死的転帰と関連する。百日咳の疑い例または確定例として入院した患者、および同様の臨床症状を呈する医療従事者を、ワクチン接種状況にかかわらず早期に検出・隔離するために、百日咳を疑うための高度な指標が必要である。曝露後予防投与の指針とするために、接触者調査も不可欠である。いくつかの国では医療従事者への追加ワクチン接種に関する推奨が整備されているが、医療従事者に必要な百日咳に対する終生免疫は、現在のワクチンでは得ることができない。

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監訳者コメント
日本では近年、大学での百日咳集団発生が複数例報告されたが、乳幼児期の百日咳の予防接種の効果が減弱したことが一因とされている。米国でも青年・成人層での報告例が増加したことから、成人を対象とする Tdap(Tetanus, Diphteria, acellular Pertussis)ワクチンが 2005 年に承認され、11 歳以上を対象に接種が推奨されている。現時点では、日本では Tdap は承認されておらず、一部の医療施設では医療従事者を対象に小児用の DPT ワクチンを減量して接種しているのが現状である。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のムピロシン耐性の臨床的意義

Clinical relevance of mupirocin resistance in Staphylococcus aureus

D.J. Hetem*, M.J.M. Bonten
*University Medical Center Utrecht, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 249-256


ムピロシンは、患者および医療従事者からのメチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)の除菌や、黄色ブドウ球菌およびストレプトコッカス(Streptococcus)属菌による局所の皮膚・軟部組織感染症の治療に使用される局所抗菌薬である。ムピロシンは細菌のイソロイシル tRNA 合成酵素(IleRS)を阻害することにより、細菌の蛋白質合成を阻害する。ムピロシン軽度耐性(定義は、最小発育阻止濃度[MIC]8 ~ 256 mg/L[日本語版監訳者注:mg/L = μg/mL])は野生型 IleRS の点突然変異に起因し、高度耐性(MIC ≧ 512 mg/L)は変異した IleRS をコードしているプラスミド上に局在する mupAileS-2)が仲介する。EUCAST(European Committee for Antimicrobial Susceptibility Testing)および BSAC(British Society for Antimicrobial Chemotherapy)は黄色ブドウ球菌の場合の臨床閾値を感性 ≦ 1 mg/L、耐性 > 256 mg/L とし、感性の閾値を疫学的カットオフ値(ECOFF)としている。そのため、MIC が野生型の値(ECOFF である 1 mg/L)より高いが、耐性機序の認められない(MIC ≦ 4 mg/L)分離株の感受性は、中等度として報告される。ムピロシン耐性は、高度および軽度のいずれであっても黄色ブドウ球菌または MRSA の除菌戦略の効果を損なう。軽度耐性分離株の初回の除菌効果は、感性分離株と同程度であると考えられるが、再保菌の頻度はより高いようである。ムピロシンの使用の増加は、選択圧と交差伝播を増強することによって耐性発現をもたらす。ムシロピンの OTC 薬の乱用や、ムピロシンによる創傷や褥瘡の治療は、特に強く耐性と関連する。しかし、ムピロシンの使用増加後の耐性の発現について一貫した報告はなく、病院および市中におけるムピロシン耐性の動態にかかわるあらゆる因子を総合的に理解するには至っていない。

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監訳者コメント
本レビューは、タイトルにあるようにムピロシン耐性の臨床的意義を過去の論文を用いて解説したものである。レビューされた論文からは、ムピロシン使用の増加は耐性発現のリスクであり、除菌の失敗につながることが読み取られた。一方で、最近、ICU 患者への MRSA 除菌の標準化(Huang SS, et al. NEJM 2013;368:2255-2265)、市中における保菌者の除菌、術前の除菌と、今後の使用が増加することを示唆する論文もある。まずは、感染管理担当者がその使用を把握し、コントロールできる環境であることの必要性を考えさせられた。

サハラ以南のアフリカにおける医療関連感染

Healthcare-associated infections in sub-Saharan Africa

C. Rothe*, C. Schlaich, S. Thompson
*University of Malawi, Malawi

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 257-267


背景
医療関連感染は、医療によってもたらされる有害な事象として世界中で極めて高い頻度で発生しており、また患者と医療従事者の両者の健康を脅かしている。医療従事者数が逼迫し、市中感染の負荷が大きい、医療資源の乏しい国々では医療関連感染の影響が特に顕著にみられる。

目的
医療関連感染の分布、抗菌薬耐性、職業曝露、および感染予防に関するサハラ以南のアフリカの現状を概観すること。

方法
1995 年から 2013 年に公表された文献、および国や国際機関などの他の情報源からの文献をレビューした。

結果
わずかなデータから、サハラ以南のアフリカに医療関連感染が蔓延していることが示唆され、主要な感染巣は手術部位であった。多剤耐性結核菌の院内伝播と、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)および薬剤耐性腸内細菌科細菌の流行が重大な懸念事項である。医療従事者は、ワクチンによる予防が可能な職業感染リスクに備えたワクチン接種率が低く、職業曝露後の報告率およびその後のヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査の実施率も低い。医療従事者は一般集団と比較して結核のリスクが高い。手指衛生遵守率は地域内で大きなばらつきがある。ワクチン接種プログラムにおける注射の安全性は過去 10 年にわたって改善しており、その主な理由は再使用不能型注射器の導入である。

結論
データは乏しいものの、サハラ以南のアフリカにおける医療関連感染の負荷は大きいと考えられる。感染予防・管理については、ある程度の改善がみられるというエビデンスが存在するが、広範なサーベイランスデータは欠如している。全般的に、感染予防策および職業上の安全性に関する対策が不足している。

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監訳者コメント
様々な限界がある中での医療の現状が浮き彫りになるレビューである。サーベイランスシステムがどの程度実像を把握できているかは不明であるが、サハラ以南諸国で ESBL 産生菌や NDM-1 産生菌が院内感染や市中感染で検出されていた。使用できる抗菌薬が少なく、繰り返し使用される状況も関連があるとされていた。使用可能な抗菌薬の種類と質が気にかかった。

表面のプリオン汚染の洗浄、消毒、および滅菌

Cleaning, disinfection and sterilization of surface prion contamination

G. McDonnell*, C. Dehen, A. Perrin, V. Thomas, A. Igel-Egalon, P.A. Burke, J.P. Deslys, E. Comoy
*STERIS Corporation, OH, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 268-273


背景
プリオン汚染は医療器材の再処理時のリスクとなるものであり、除去・不活化が困難である。臨床実践での一般的な再処理サイクルにおける洗浄、消毒、および滅菌の併用効果についてはほとんど不明である。

目的
洗浄、消毒、および/または滅菌の併用による表面のプリオン汚染リスクの低下について調査すること。

方法
洗浄単独と、洗浄に加熱消毒および高温/低温滅菌の過程を併用した場合の影響を、in vivo 検査法によって調べた。高力価のスクレイピー感染脳ホモジネートでステンレス製ワイヤーを汚染させる標準的な検査法を用いて、感染性の低下を評価した。

結果
プリオンに対する従来の化学的な表面汚染除去法は有効であることが確認されたが、長時間の高圧蒸気滅菌(18 分)の効果にはばらつきがみられた。通常の曝露時間(4 分)または長時間の曝露による蒸気滅菌単独によってプリオンの汚染リスクは低下したが、大きなばらつきがみられた。これらの検査では加熱消毒の併用効果は認められなかった。特定の製剤、特にアルカリ製剤による洗浄と蒸気滅菌の併用は、効果的なプリオン汚染除去法であると考えられた。低温の過酸化水素ガス滅菌も、洗浄の併用の有無にかかわらず感染性を低下させることが確認された。

結論
プリオン汚染の除去は、汚染表面に対する全再処理サイクルの影響を受ける。本報告でスクレイピーの感染性の検査を行った洗浄法、消毒法、および滅菌法を正しく用いることによって、プリオン汚染に対する標準的予防策がもたらされると考えられる。

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監訳者コメント
日本では、「プリオン病感染予防ガイドライン 2008 年版」により、4 つの処理方法が示されている。2009 年の調査によると、8 割の医療施設が「アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター(WD)洗浄 + 真空脱気プリバキューム式高圧蒸気滅菌 134℃以上、8 ~ 10 分間」を選択すると回答していた(黒田恵ら,医療関連感染 2009;2:44-47)。この論文の結果からは効果的な方法と考えられた。過酸化水素プラズマ滅菌についての評価も含め、ガイドラインの改訂が待ち遠しい。

英国の病院の環境条件を反映した抗菌性表面活性の有効性に関する新規 in vitro 試験法の評価

Evaluation of new in vitro efficacy test for antimicrobial surface activity reflecting UK hospital conditions

M. Ojeil*, C. Jermann, J. Holah, S.P. Denyer, J.-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 274-281


背景
抗菌性表面は、微生物バイオバーデンの減少と衛生状態の改善を意図したものである。現在の抗菌性表面の有効性試験(ISO22196)は初期段階のスクリーニング試験であるが、その試験条件は高温(37℃)かつ相対湿度が高い(100%)ため、実際の使用条件との関連性が乏しい。

目的
実臨床に即した第二の試験法となり得る、実際の使用条件をシミュレートした抗菌性表面の有効性の試験法を開発すること。

方法
英国の病院で 1 年間にわたり表面の相対湿度、温度、および汚染を測定し、これによって病院環境の表面の有効性試験のための実臨床に即したパラメータを設定した。カスケードインパクターに接続したネブライザーを用いて黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の懸濁液をエアロゾル化し、試験素材である銅合金表面と対照素材であるステンレス表面に均一に噴霧した。実際の使用条件を反映する「20℃、相対湿度 50%」および「20℃、相対湿度 40%」のパラメータ設定で、噴霧後および種々の接触時間の後に細菌数を測定した。また、ISO22196 の試験条件を反映する「37℃、相対湿度 100%」による測定も実施した。

結果
調査したすべての条件下で、すべての銅合金において 24 時間後に 4 log10 を超える細菌数の減少が認められた。すべてではないがほとんどの銅合金で、4 log10 を超える殺菌を達成するためには実際の使用条件(「20℃、相対湿度 50%」および「20℃、相対湿度 40%」)では 60 分を要したが、「37℃、相対湿度 100%」の条件では 30 分後に同レベルの細菌数減少が示され、より高い効果が認められた。

結論
表面への細菌接種にネブライザーによる噴霧を使用したが、結果のばらつきはほとんどみられなかった。著者らの方法は ISO22196 による表面の殺菌活性の評価法よりも識別能が高く、この方法によって医療環境での使用が想定される抗菌性表面をより厳格に選択することができる。

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監訳者コメント
実際の医療現場により近い条件下での抗菌表面の有効性を検討した論文である。私たちが知りたいのは「実際のところどうなのか?」なので、その視点からのアプローチは興味深いものであった。

分割分析による手術部位感染の多施設サーベイランス

Multicentred surgical site infection surveillance using partitioning analysis

Y. Fujiwara*, T. Yamada, Y. Naomoto, T. Yamatsuji, Y. Shirakawa, S. Tanabe, K. Noma, T. Kimura, H. Aoki, H. Matsukawa, M. Kimura, Y. Nonaka, H. Sasaki, T. Onoda, Y. Otawa, M. Takaoka, T. Fukazawa, Y. Ohno, T. Fujiwara
*Okayama University, Japan

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 282-288


背景
手術部位感染(SSI)は、世界中で医療費の増大をもたらしており、公衆衛生上の大きな問題となっている。医師が SSI のデータを継続的に収集・解析して病院の日常診療にフィードバックするうえで役立つ方法を活用することは、日本の国家的最重要事項とされている。

目的
多施設における分割分析を用いた「オペレーションズ・リサーチ」による介入研究を実施し、SSI の発生率および影響の低減を図ること。

方法
7 施設からなる Setouchi SSI Surveillance Group が、2006 年に SSI サーベイランスを開始した。2008 年 5 月までの 4 つのサーベイランス期間(A ~ D)を設けた。合計 3,089 例の患者に消化管手術を施行し、手術後 30 日間追跡した。SSI との関連が報告されている 26 因子の評価を全患者を対象として評価した。各サーベイランス期間で主要な 3 因子を特定し、その後の各期間のための実践の改善を計画した。

結果
全 SSI 発生率は、期間 A で 6.9%、期間 B で 6.3%、期間 C で 6.4%、期間 D で 3.9%であった。期間 A と期間 D との比較による SSI 発生率の低下は、統計学的に有意であった(P = 0.012)。

結論
臨床実践改善のための行動計画に寄与する積極的 SSI サーベイランスの結果と分割分析の活用は、SSI の大幅な減少に有効であった。

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監訳者コメント
日本の SSI 多施設共同研究の論文である。本論文では、オペレーションズ・リサーチを活用してリスク因子を共通認識するところから取り組みを行い、SSI の発生減少というアウトカムを得た。リスクアセスメントに基づき、いくつかの手技や対策が変更された、という点においても参考になるモデルである。ちなみに、主要な 3 リスク因子は、手術時間、抗菌薬予防投与の方法、年齢であった。

監訳者注:
オペレーションズ・リサーチ(operations research):意思決定のうえでの問題解決を支援し、また他者に説明するための数学・統計学モデルを用いる理論的手法。電車の乗り換えシステム、授業・施設時間割、銀行の窓口の数を決める、など幅広い分野に応用されている。

バンコマイシン耐性腸球菌保菌により末期腎不全の死亡率は上昇しない:症例対照研究

Vancomycin-resistant enterococci colonization does not increase mortality in end-stage kidney failure: a case-control study

S.E. Garner*, K.R. Polkinghorne, D. Kotsanas, P.G. Kerr, T.M. Korman, R.L. Stuart
*Monash Medical Centre, Monash Health, Australia

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 289-296


背景
腎不全患者では、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)保菌が高い頻度で生じる。この患者群に対する VRE 保菌の影響を理解することは、臨床的に極めて有用である。

目的
腎不全患者の VRE 保菌が入院件数、入院期間、および死亡率に影響するかどうかを明らかにすること。

方法
2000 年から 2010 年に、腎透析患者の後向き症例対照研究を実施した。症例は腎代替療法を必要とする VRE 保菌患者 134 例、マッチさせた対照は同一のベースライン特性を有する非保菌患者 137 例とした。症例およびマッチさせた対照の入院件数、入院期間、および死亡率の相違を分析した。

結果
保菌患者と非保菌患者との間に死亡率の差はなかった(ハザード比 1.14、95%信頼区間 0.78 ~ 1.69、P = 0.49)。保菌患者の入院期間は 7.29 日、非保菌患者では 4.14 日であった(P < 0.001)。VRE 保菌患者の入院件数は、対照と比較して有意な差は認められなかった(9.34 対 8.33、P = 0.78)。

結論
VRE 保菌により、腎不全患者の死亡率は上昇しなかったが、入院期間が延長した。

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監訳者コメント
この論文では、VRE 保菌と入院期間の延長の関連が示唆されたが、理由は不明であった。保菌者の定義が保菌と感染の両方を含むものであったことも、一因かと思われた。症例定義や母集団は抄録だけではわかりにくいことが多く、結果だけを拾い上げていると思わぬミスリーディングにつながることを再認識した。
なお、腎代替療法とは、血液透析・腹膜透析・腎移植のことを意味する。

整形外科手術時の術前抗菌薬投与の経済性および実施時期

The economics and timing of preoperative antibiotics for orthopaedic procedures

B.A. Norman*, S.M. Bartsch, A.P. Duggan, M.B. Rodrigues, D.R. Stuckey, A.F. Chen, B.Y. Lee
*University of Pittsburgh, PA, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 297-302


背景
抗菌薬による手術部位感染(SSI)予防効果は、手術開始前の投与時期に依存する。しかし、現行の投与時期と推奨には大幅な相違がある。

目的
整形外科手術時の術前抗菌薬投与の病院の視点からみた経済的価値が、その投与時期によってどのように異なるかを明らかにすること。

方法
病院の視点からの術前抗菌薬投与の電子的意思決定モデルを作成し、オペレーション解析を実施した。ベースライン解析により現行の投与時期を明らかにするとともに、追加解析により様々な投与時期、推奨ガイドライン遵守率、投与から手術開始までの時間間隔目標値を用いたシミュレーションを行った。

結果
手術前 0 ~ 30 分の抗菌薬投与によりコストと SSI が最低となった。オペレーション解析により、術前の操作に基づく投与時期の評価では、最適な抗菌薬投与時期は麻酔の準備後から切開までの間であり、この間の時間の 92.1%は、抗菌薬投与の最適な時間間隔(切開前 0 ~ 30 分)の範囲内であった。この術前の操作に基づく投与時期の遵守率が 80%から 90%に改善すると、1 年間で 100 件の整形外科手術を実施する病院 1 施設あたり、年間 447 ドルのコスト削減がもたらされることとなった。

結論
本研究は、抗菌薬投与時期の改善による想定コスト削減額を定量的に評価したものであり、今後は病院がこの問題に対処するために支出すべき資金の指針となると考えられる。

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集中治療室におけるステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)アウトブレイク

Outbreak of Stenotrophomonas maltophilia on an intensive care unit

A. Guyot*, J.F. Turton, D. Garner
*Frimley Park Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 303-307


背景
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は日和見感染を引き起こし、その多剤耐性のために依然として集中治療室(ICU)で問題となっている病原体である。

目的
ICU における S. maltophilia アウトブレイクについて報告し、汚染された飲料水給水器のリスクに焦点を当てること。

方法
疫学、環境サンプリング、および分子タイピングの併用により、アウトブレイクの分析を行った。

結果
2009 年から 2011 年に 23 例の患者から分離された S. maltophilia 分離株は 2 つの遺伝子型にのみ属していたのに対し、この期間の他の患者 52 例からの分離株は異なる菌株であることが明らかになった。すべての S. maltophilia 株の 1 か月間の発生率の範囲は 0%から 11%、2 つのアウトブレイク株は 0%から 9%であった。ICU 入室時および ICU での週 1 回の咽頭スクリーニングから、アウトブレイク株は ICU で獲得されたことが示された(ICU 入室から分離までの期間の範囲 3 ~ 90 日)。大半の分離株(74%)は気道由来であった。保菌が認められた挿管患者 12 例中 2 例(17%)のみが肺炎を発症した。環境サンプリングにより、ICU のキッチンの 2 つの流しと冷水器の飲料水に 2 つのアウトブレイク株が認められた。S. maltophilia は、カーボンフィルターから冷水器までの可撓管(flexible tube)、および冷水器からキッチンの流しの水栓までの可撓管の内腔にバイオフィルムを形成していた。この冷却水は、ICU 患者の飲料水および口腔ケア用水として使用されていた。アウトブレイク株は冷水器の撤去後に消失し、1 か月間の発生率は ICU 入室患者の 2%未満まで低下した。

結論
本アウトブレイク報告は、ICU 患者に飲料水を供給する機器内のバイオフィルムによるリスクに焦点を当てるものである。

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病院内の洗面台の水:レジオネラ菌に汚染されたエアロゾル吸入のリスク

Hospital washbasin water: risk of legionella-contaminated aerosol inhalation

P. Cassier*, C. Landelle, M. Reyrolle, M.C. Nicolle, S. Slimani, J. Etienne, P. Vanhem, S. Jarraud
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 308-311


レジオネラ菌が定着した病院内の洗面台の水からのエアロゾルの汚染について評価した。エアロゾルサンプルを 2 種類の液体捕集法(impingement technology)により採取した。いずれのエアロゾルサンプルからも、培養によりレジオネラ菌は検出されなかった。しかし、PCR 法ではエアロゾルサンプルの 45%(40 サンプル中 18)はレジオネラ(Legionella)属菌陽性であり、サンプルの 10%(40 サンプル中 4)では PCR 法の定量限界を超える濃度であった。さらに、免疫測定法によりレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型 1 およびレジオネラ・アニサ(L. anisa)が検出され、生死判別試験により生存の可能性がある細菌が認められた。これらのデータから、菌が定着した病院内の洗面台は、特に易感染患者に対して、レジオネラを含むエアロゾルを吸入する曝露リスクをもたらす可能性がある。

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心臓の大手術後のルーチンの声門下分泌物吸引:人工呼吸器関連肺炎の発生率への影響

Routine aspiration of subglottic secretions after major heart surgery: impact on the incidence of ventilator-associated pneumonia

M.J. Pérez Granda*, J.M. Barrio, J. Hortal, P. Muñoz, C. Rincón, E. Bouza
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 312-315


48 時間以上の人工呼吸を必要とする患者に対しては、声門下分泌物吸引が推奨される。心臓の大手術後の全患者に対するルーチンの声門下分泌物吸引の導入の影響を評価するため、声門下分泌物吸引実施前後の人工呼吸器関連肺炎(VAP)発生率、人工呼吸器使用日数、および抗菌薬コストを比較した。介入前と介入後の結果は、いずれも 1,000 日あたりで VAP 発生率 23.92 対 16.46(P = 0.04)、抗菌薬コスト 71,384 ユーロ対 63,446 ユーロ(P = 0.002)、および人工呼吸器使用日数 507.5 日対 377.5 日(P = 0.009)であった。心臓の大手術を施行した全患者に対して、麻酔導入時点からルーチンの声門下分泌物吸引を実施すべきである。

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グラム陰性菌によるカテーテル関連血流感染

Catheter-related bloodstream infections caused by Gram-negative bacteria

E. Bouza*, A. Eworo, A. Fernández Cruz, E. Reigadas, M. Rodríguez-Créixems, P. Muñoz
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 316-320


2008 年から 2010 年に、グラム陰性菌によるカテーテル関連血流感染(CRBSI)が微生物学的に確認された患者を、それぞれランダムに選択した対照 2 例と比較した。症例 81 例(全 CRBSI 症例の 17%)と、その他の病原体に起因する CRBSI を有する対照 162 例を試験の対象とした。グラム陰性菌による CRBSI 発生率は、入院 1,000 件あたり 0.53 であった。症例は対照と比較して、神経系や消化管の基礎疾患、抗菌薬療法歴を有する割合が高く、血液培養が陽性となるまでの期間が短かった。現在の入院中の手術(オッズ比[OR]3.5)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染(OR 3.6)、菌血症の合併(OR 4.1)は、高い死亡率と関連していた。グラム陰性菌による CRBSI は全 CRBSI 症例の 17%に及ぶ、上述の特性を有する患者に対する経験的治療にあたっては、グラム陰性菌による CRBSI を念頭に置くべきである。

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病院環境での病原菌伝播の減少-握手とフィスト・バンプの比較:パイロット研究

Reducing pathogen transmission in a hospital setting. Handshake verses fist bump: a pilot study

P.A. Gharee*, T. Bourlai, W. Dutton , W.T. McClellan
*West Virginia University, School of Medicine, WV, USA

Journal of Hospital Infection (2013) 85, 321-323


握手は個人間の細菌伝播を媒介することが知られている。手洗いは、医療環境全体を通じて伝播率減少のための主要な取り組みとなっているが、手洗い後も個人の 80%は何らかの疾患の原因菌を保持している。フィスト・バンプ(拳タッチ)は、握手に代わるものとして多く行われるようになっている。著者らは、医療環境にフィスト・バンプを導入することにより、通常の握手と比較して、医療従事者間の接触時間と曝露される総表面積が減るために、細菌伝播率がさらに低下すると考えられることを明らかにした。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.