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★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

医療施設の組織文化とその感染予防・制御に対する影響

Organizational culture and its implications for infection prevention and control in healthcare institutions

S. De Bono*, G. Heling, M.A. Borg
*Maastricht School of Management, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 1-6


背景
ある病院では感染予防・制御のための介入が成功しても、別の医療施設でそれを実施した際には失敗したり、成功には遠く及ばないことはまれではない。組織的要因はその主な理由の 1 つであると見なされている。そのため近年は、医療の質を改善するために組織文化を理解し、またこれに取り組もうとする動きが強くなっている。

目的
組織文化と医療専門家の行動姿勢との相互関係を調べること、組織文化が感染予防・制御の遵守に影響し得るか、またどのように影響すると考えられるかを明らかにすること、および病院内の感染予防・制御実践を改善する手段としての組織文化の修正介入の意義について検討すること。

方法
人間の行動と組織の変化に焦点を当てている感染予防・制御関連のジャーナルや出版物の文献レビューを実施し、その知見をまとめた。

結果
本稿では、医療現場の組織文化に関する理論について評価するとともに、種々の要素が感染予防・制御に関連する行動に対してどのように影響を及ぼすと考えられるかを明らかにした。適切にデザインされた研究が不十分であることを指摘しているものの、適切にデザインされカスタマイズされた組織文化改変のための取り組みは、手指衛生などの感染予防・制御実践にプラスの影響を及ぼす可能性があることを示唆している文献についても、本稿ではそのいくつかを特定した。

結論
組織文化の変革は、理論的観点と入手可能な少数の研究の結果の両方からみて、感染予防・制御改善キャンペーンの困難ではあるが有望な標的であると考えられた。しかし、効果的かつ持続的な変革をもたらすことができる有効な戦略を特定するためには、より多くのデータと、質に関する情報が必要である。

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監訳者コメント
感染予防と制御に関する組織文化に絡んだ論文調査に関する総説である。レビューのなかでは、検索により見いだされた有益な情報を数々紹介している。

医療施設の給水システムと緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染との関連:迅速システマティックレビュー

Association between healthcare water systems and Pseudomonas aeruginosa infections: a rapid systematic review

H.P. Loveday*, J.A. Wilson, K. Kerr, R. Pitchers, J.T. Walker, J. Browne
*University of West London, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 7-15


背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は日和見病原体であり、特に免疫低下患者の疾患の原因となる。給水システムは、医療環境での緑膿菌伝播に寄与していることが報告されている。

目的
医療環境の給水システムは緑膿菌感染と関連するというエビデンスを系統的に評価すること、給水システムがリザーバとして作用する可能性が高いデザイン形態について調査すること、および汚染を根絶し感染を予防するための戦略の有効性を比較すること。

方法
3 段階の検索戦略を用いた迅速レビュー法により、既報研究を特定した。また、科学アドバイザーが未公表の研究を特定した。

結果
該当する研究 25 件を評価対象とした。給水システムから患者へ、および患者から給水システムへの緑膿菌伝播を示す妥当なエビデンスが認められたが、正確な伝播様式を説明する直接的なエビデンスは得られなかった。2 件の研究からは、効果的な介入(採水口フィルタ設置および塩素消毒強化)についての妥当なエビデンスが得られた。緑膿菌バイオフィルム形成およびその後の患者への伝播のほぼ確実なリスク因子として、自動水栓および給水システムのデザイン構造が特定された。想定される寄与因子として、不良な手指衛生および接触予防策の遵守不良が特定されたが、これを確証する妥当なエビデンスは得られなかった。

結論
医療環境では給水システムが緑膿菌感染の原因となる可能性があるが、その伝播経路については不明である。汚染は給水システムの遠位末端に限定されていると考えられ、長期間持続する可能性がある。緑膿菌の伝播を予防し給水システムから根絶するための効果的な方法を確立するには、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
論文調査をすることで、どこまで調査・介入・改善が効果的にできるのかについて、医療環境の給水システムは緑膿菌感染と関連するという項目立てで調査した論文である。論文調査の結果、必ずしも満足のいく結果が導き出されるわけではないので過信は禁物である。

北アイルランドの新生児室における蛇口の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムに関連する医療関連感染の調査

Investigation of healthcare-acquired infections associated with Pseudomonas aeruginosa biofilms in taps in neonatal units in Northern Ireland

J.T. Walker*, A. Jhutty, S. Parks, C. Willis, V. Copley, J.F. Turton, P.N. Hoffman, A.M. Bennett
*Public Health England, Salisbury, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 16-23


背景
北アイルランドの病院で、2011 年 12 月と 2012 年の初めに新生児 4 例が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)菌血症により死亡した。

目的
緑膿菌と新生児室の蛇口との関連、および水からの分離株と患児由来分離株との一致について評価すること。

方法
当該病院の 30 の蛇口と 8 つの整流器を 494 の部品に分類・分解し、非選択寒天培地および選択寒天培地を用いて好気性菌コロニー数と緑膿菌数を評価した。Variable number tandem repeat(VNTR)解析により、緑膿菌分離株のタイピングを行った。蛇口の特定の部品を落射蛍光顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察し、バイオフィルムを視覚的に評価した。

結果
緑膿菌数が最も多かったのは、整流器、金属製の固定環、およびこれらの 2 つの部品の周囲の蛇口本体であった。複雑な整流器では、その他のタイプの整流器よりも緑膿菌数が有意に多かった(P < 0.05)。ミキサーとソレノイドが一体化した部位は好気性菌コロニー数が最も多かったが(P < 0.05)、好気性菌コロニー数と緑膿菌数との間に強い相関は認められなかった(r = 0.33)。病院の新生児室 2 施設の蛇口から採取した典型的な緑膿菌分離株の VNTR プロファイルは、水道水および感染新生児由来の分離株と一致していた。

結論
緑膿菌は、蛇口の整流器とその周囲の部品のバイオフィルムから優勢に検出され、観察された感染症の感染源である可能性が示された。医療従事者は水道の蛇口が緑膿菌汚染の原因となり得ることを認識して、このような汚染を軽減するための措置を講じ、そのモニタリングを実施し、感受性患者のリスクを最小限にするための戦略を立てるべきである。

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監訳者コメント
新生児室における緑膿菌感染アウトブレイクの原因調査報告である。緑膿菌は遺伝子サイズも大きく、多型性解析を行った場合も多様性に富んでいる。また、水周りには相当数のシュードモナス(Pseudomonas)属菌が付着している場合が多く、終末塩素濃度の管理や業務開始時および定期的な水道の管理が重要となる。

英国の病院における手術部位感染症による臨床的・経済的負荷、および手術部位感染症の根絶により予測される財政的影響

Clinical and economic burden of surgical site infection (SSI) and predicted financial consequences of elimination of SSI from an English hospital

P.J. Jenks*, M. Laurent, S. McQuarry, R. Watkins
*Derriford Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 24-33


背景
手術部位感染症(SSI)は入院期間延長および費用の増加と関連することが知られているが、それらが外科手技の採算性に及ぼす影響については不明である。

目的
2 年間にわたる SSI による臨床的・経済的負荷を明らかにすること、および SSI 根絶の財政的影響を予測すること。

方法
2010 年 4 月から 2012 年 3 月に Plymouth Hospitals NHS Trust で大手術を受けた患者の SSI サーベイランスと Patient Level Information and Costing System(PLICS)のデータセットを統合した。主要評価項目は、SSI による術後入院期間、費用、および病院利益の相違(採算性)への影響とした。副次的評価項目は、すべての SSI を根絶することによる財政的影響の予測とした。

結果
SSI による入院期間延長の中央値は 10 日(95%信頼区間[CI]7 ~ 13日)であり、2 年間で合計 4,694 床日の逸失であった。SSI による費用増加の中央値は 5,239 ポンド(95%CI 4,622 ~ 6,719 ポンド)であり、研究期間中の超過費用の累計は 2,491,424 ポンドであった。全 SSI の根絶により発生する 2 年間の機会費用を算入した、全 SSI の根絶による財政的利益の推計値の合計は 694,007 ポンドのみであった。7 種類の手術カテゴリーでは、全 SSI の根絶に成功した場合は病院は財政的に悪化すると予測された。

結論
SSI は大きな臨床的・経済的負荷をもたらしている。しかし、現行の償還システムは SSI の減少に対する財政的な阻害要因となっていた。

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監訳者コメント
患者安全と医療業収益の償還制度におけるアンバランスを、さらけ出す結果となった論文である。保険医療制度には、感染予防の徹底が収益増に繋がるようなインセンティブを期待したい。

病院間ネットワークを介する高リスクの抗菌薬耐性クローンの拡散:患者の紹介先の変更により大きな改善が望める

Dispersal of antibiotic-resistant high-risk clones by hospital networks: changing the patient direction can make all the difference

T. Donker*, J. Wallinga, H. Grundmann
*University of Groningen, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 34-41


背景
病院での治療を希望する患者は、過去の入院時に病院で獲得した高リスクの抗菌薬耐性病原体クローンを持ち込むことがある。これによって、様々な医療施設が疫学的な関連をもつことになる。これらの関連がすべて結びつくことによって全国的な患者紹介ネットワークが形成され、これを介して高リスククローンが伝播すると考えられる。

目的
紹介パターンとネットワーク構造の変化が、これらの病原体の拡散に及ぼす影響を評価すること。

方法
入院データをマッピングしてイングランドの患者紹介ネットワークを再現し、地理的に区分された 12 の医療圏(healthcare collectives)を特定した。患者が属する医療圏以外の病院に入院および紹介された患者の数を評価した。シミュレーションモデルを用いて、ネットワーク構造の変化が病院獲得型病原体の拡散に及ぼす影響を評価した。

結果
シミュレーションモデルから、医療圏を越える患者の紹介数を、紹介先を変更することによって 1 病院あたり平均 1.5 例/日減らすだけで、拡散は強い影響を受けた。医療圏を越える紹介数を減らすことにより、ネットワークを介する高リスククローンの拡散が 36%減少すると考えられた。一方、地域を越えて全国レベルで専門医によるケアを提供する専門施設を設立すると、拡散率は 48%上昇すると考えられた。

結論
患者紹介ネットワークの構造は、高リスククローンの流行動態に大きな影響を及ぼす。医療圏を越える紹介数に影響を及ぼす何らかの変化は、必然的にこれらの病原体の全国的な拡散にも影響を及ぼす。全国レベルでの専門施設は、感染制御の取り組みを脅かす可能性があるため、その設立にあたっては上述の影響を考慮に入れる必要がある。

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監訳者コメント
患者の地域医療圏外への受診は結果的に、より広い範囲への拡散に繋がる。理論的には理解できるが、いかにしてシビリアンコントロールするのかという課題が残る。いずれにせよ、他の医療機関で耐性菌保菌者や保菌リスクのある患者が受診・入院する場合には、トレーサビリティを担保できることが必要になりそうだ。

乾癬を有する医療従事者に由来する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)手術部位感染症の長期アウトブレイク★★

Prolonged outbreak of Staphylococcus aureus surgical site infection traced to a healthcare worker with psoriasis

S.A. Crusz*, C. Yates, S. Holden, A. Kearns, T. Boswell
*Nottingham University Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 42-46


背景
メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-sensitive Staphylococcus aureus;MSSA)は手術部位感染症(SSI)の原因となることが多いが、単一曝露によるアウトブレイクが認識されることはまれである。

目的
胸部外科部門における MSSA SSI のアウトブレイクについて記述すること。

方法
フシジン酸耐性 MSSA(MSSA FusR)による 2 件の術後菌血症の発生後に、アウトブレイク調査を開始した。微生物検査記録および前向き症例検出により MSSA FusR 保菌患者の特定を行った。医療従事者のスクリーニングを実施した。ファージ型別、spa タイピング、パルスフィールド・ゲル電気泳動、および毒素遺伝子プロファイリングにより分離株の特性を評価した。症例対照研究により、MSSA FusR を保菌する医療従事者1名とアウトブレイク患者との関連を調査した。

結果
16 か月間で MSSA FusR 保菌患者 19 例が特定された。タイピングを行った 4 つの分離株は、いずれも同一の系統に属することが示された。医療従事者 76 名のスクリーニングを実施し、1 名(乾癬を有する看護師)がアウトブレイク株を保菌していた。19 例の全症例がこの医療従事者への曝露を受けていたのに対して、対照者群では 66 例中 40 例のみであり(P = 0.003)、また症例群のほうが曝露期間が長期であった(P = 0.00001、χ2 傾向検定)。症例 15 例では、この医療従事者と直接的な接触があったことがカルテに記録されていた。病棟の徹底的なクリーニングと、当該医療従事者を臨床業務から除外することによって、アウトブレイクは終息した。

結論
乾癬を有する医療従事者が本アウトブレイクの発生源であった。MSSA におけるフシジン酸耐性は、その保菌が皮膚の状態と関連する株の指標である可能性がある。皮膚の状態に問題がある医療従事者は、外科病棟での感染リスクを有すると考えられる。労働衛生担当チームには、皮膚炎を有する医療従事者を対象としたスクリーニングを実施することを推奨したい。

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監訳者コメント
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)や多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)が院内で水平伝播するのなら、MSSA や感受性のよい緑膿菌も、微生物としては同じなのだから、同様に院内で水平伝播することがあるのではないだろうか。
ふと考えれば当たり前の疑問を証明したのが本論文である。もちろん薬剤耐性菌はひとたび感染症を起こすとその治療は難渋する。しかし薬剤感性菌だからといって水平伝播してよいわけではない。だからこそ標準予防策が重要なのである。
もう一点、本論文は医療従事者のスクリーニングにより皮膚疾患をもつ医療従事者の MSSA 保菌が明らかになり、臨床業務から除かれるという結論に到る。さらに筆者らは、皮膚疾患をもつ医療従事者のスクリーニングを推奨している。しかし、医療従事者の耐性菌保菌調査は、あらかじめ陽性者への対応や倫理的問題をしっかり議論したうえで行う必要があろう。
蛇足であるが、本研究はアウトブレイク調査を行ううえで最も基本となる症例対照研究であり、その手法を学び、自身の業務に活かせるという意味でも一読の価値のある論文である。

集中治療室でのカテーテル関連血流感染症予防のための教育的介入は費用対効果に優れるか?

Are educational interventions to prevent catheter-related bloodstream infections in intensive care unit cost-effective?

K. Cooper*, G. Frampton, P. Harris, J. Jones, T. Cooper, N. Graves, J. Cleland, J. Shepherd, A. Clegg, B.H. Cuthbertson
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 47-52


背景
中心静脈カテーテルの管理に関するエビデンスに基づく教育的介入への関心が高まっている。このような介入が、血管内留置カテーテルの使用による血流感染症(カテーテル関連 BSI)リスクの低下、およびこれに伴う費用面および健康面での有益性に対してどの程度の効果をもたらすかについては不明である。

目的
このような介入を導入することによる費用面および健康面での有益性の増加について、ならびにカテーテル関連 BSI に関連する費用について推計すること。

方法
包括的な疫学的・経済的レビューを実施し、教育的介入の導入による費用対効果を介入なしでの臨床実践と比較評価するための経済モデルのパラメーターを設定した。このモデルでは、複数の患者コホートを対象として、患者がカテーテル関連 BSI に罹患すると考えられる集中治療室(ICU)入室以降の臨床経過を追跡し、これに関連する費用、死亡率、および平均余命を推計した。

結果
カテーテル関連 BSI 1 件あたりの費用増加は 3,940 ポンドであった。本モデルの結果から、カテーテル関連 BSI 予防のための教育的介入を導入することによって、患者の平均余命が改善し、総費用が減少した。

結論
エビデンスに基づく教育の導入によりカテーテル関連 BSI の発生が減少すると考えられた。本モデルから、ICU の病床稼働費用の減少に関連する節減額は教育的介入の導入費用を上回る可能性が示唆される。

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監訳者コメント
タイトルにある「教育的介入」とは具体的には「central venous catheter care(CVC)bundle」を指している。CVC bundle は、適切な手指衛生、クロルヘキシジンによる皮膚消毒、マキシマルバリアプレコーション、適切な刺入部位の選択、迅速なカテーテルの抜去の 5 つの要素からなる。本論文はこの CVC bundle の実施・徹底により、患者の平均余命の改善と総費用減少の可能性を示した論文である。日本ではこのような医療経済学的な評価を行える専門家が少なく、まだまだ研究・発展の余地のある分野である。

基礎疾患の重症度と院内肺炎の転帰:集中治療室における前向きコホート研究

Underlying illness severity and outcome of nosocomial pneumonia: prospective cohort study in intensive care unit

B. Guzmán-Herrador*, C. Díaz Molina, M.F. Allam, R. Fernández-Crehuet Navajas
*Reina Sofia University Hospital, Spain

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 53-56


背景
これまでの研究から、院内肺炎患者の最終的な転帰は、集中治療室(ICU)入室時の患者の基礎疾患の重症度に依存する可能性が示唆されている。

目的
成人 ICU に入室中の院内肺炎発症と死亡リスクとの関連を、特に ICU 入室時の基礎疾患の重症度に焦点を当てて評価すること。

方法
2006 年から 2009 年にスペインの基幹大学付属病院 1 施設の ICU に 24 時間以上入室した全患者を対象として、前向きコホート研究を実施した。入室時の患者の基礎疾患の重症度に基づいて、層別化単変量解析を行った。疾患の重症度は Acute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II スコアを用いて評価した。院内肺炎が ICU での死亡率上昇と独立して関連するかどうかを明らかにするために、想定される交絡因子を補正した多変量ロジスティック回帰分析を行った。

結果
合計 4,427 例を対象とし、このうち 233 例が入室中に院内肺炎を発症した。院内肺炎を発症した患者の死亡リスクは、発症しなかった患者と比較して 2.6 倍高値であった(95%信頼区間 2.1 ~ 3.0)。APACHE II スコアで層別化した評価では、各層で有意な関連が依然として認められたが、スコアが高値であるほど関連の強さは低下した。多変量解析では、院内肺炎は ICU での死亡と独立して関連していた。院内肺炎と APACHE II スコアとの交互作用についても、相関係数が負の有意性が認められた。

結論
ICU 入室中の院内肺炎の発症は死亡率上昇と独立して関連していた。しかし、関連の強さは ICU 入室時の疾患の重症度が高いほど低下し、APACHE II スコアが重度の患者の死亡には影響しなかった。

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監訳者コメント
とある研究会で、「院内肺炎患者の本当の死因は何だろうか」という話題が出たことがある。その時、「院内肺炎そのもので死亡する、つまり喀痰から何らかの微生物が出続け、肺炎のコントロールがつかずに死亡するケースはそれほどない。やはり基礎疾患の悪化で心肺機能や腎機能のコントロールがつかずに死亡するケースが圧倒的に多い」という意見があった。
本研究は、基礎疾患が重篤な患者では、院内肺炎を発症して死亡した患者の死因は肺炎よりもむしろ基礎疾患によるものだろうと結論づけている。一方で、基礎疾患が軽症の患者の院内肺炎では肺炎そのものが死亡率を増加させる可能性を示しており、その予防と早期診断・治療が重要であることを示唆している。

遅発性新生児敗血症、およびそのリスク因子と介入:2006 年から 2011 年のセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)アウトブレイク再発生の分析★★

Late-onset neonatal sepsis, risk factors and interventions: an analysis of recurrent outbreaks of Serratia marcescens, 2006-2011

A. Samuelsson*, B. Isaksson, H. Hanberger, E. Olhager
*Linköping University, Sweden

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 57-63


背景
2006 年から 2011 年に、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)の種々の異なるクローンの伝播による敗血症が 11 例に、保菌が 47 例に認められた。これらのアウトブレイク再発生を受けて、患児間の伝播を制御するための介入が実施された。

目的
S. marcescens 保菌・敗血症の予防のための段階的介入の効果を評価すること、および遅発性敗血症のリスク因子を分析すること。

方法
後向きオープン観察研究により介入の評価を行った。後向き症例対照研究により遅発性敗血症のリスク因子を分析した。

結果
感染予防策を段階的導入後に S. marcescens 敗血症および保菌は減少した。遅発性敗血症のリスク因子として特定されたのは、短い在胎期間、低出生体重、中心静脈カテーテルまたは臍帯カテーテル留置、および人工呼吸器の使用であった。2007 年第 4 四半期から継続的なモニタリングが行われていた唯一の介入は、基本的な感染予防策指針の遵守率であった。遵守率は徐々に上昇し、2009 年初めには高値定常状態に達した。2008 年第 2 四半期以降は、アウトブレイクはみられたが S. marcescens 遅発性敗血症は減少した。2009 年第 1 四半期以降には S. marcescens 保菌が減少した。

結論
各介入に特異的な効果を特定することはできなかったが、病院の抗菌薬使用方針の改定が S. marcescens 遅発性敗血症の発生に影響を及ぼしたと考えられる。S. marcescens 保菌に対する介入の効果が遅延したのは、基本的な感染予防指針の遵守率が徐々に上昇したことからわかるように、新規の日常的業務手順が効果を発揮するまでに時間を要することが原因であると思われる。

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監訳者コメント
分娩 48 時間以降に発生する遅発性敗血症(LOS)は医療施設関連感染(HAI)である。本論文では、5 回の複合的な感染予防策によりセラチア菌による HAI 患者の減少が認められた。介入内容は、手指衛生、個人防御具の使用、病院環境整備、静脈カテーテルの管理、患者の配置など多岐にわたる対策である。さらに、菌交代現象の予防のための抗菌薬適正使用も重要な介入の 1 つである。本論文では、6 年という長期にわたる複合的な感染予防策の実施とその遵守率のモニタリングを行っている点が特徴として挙げられる。アウトブレイクが収束するとともに、介入は終了してしまいがちである。継続した感染予防策遵守状況の把握が、このような集中治療が行われる現場では必要である。ぜひ、本文を読んでいただきたい論文である。

3種類の手術時手洗い用製剤の in vivo での細菌数減少効果の比較

In vivo comparative efficacy of three surgical hand preparation agents in reducing bacterial count

P. Barbadoro*, E. Martini, S. Savini, A. Marigliano, E. Ponzio, E. Prospero, M.M. D’Errico
*Hospital Hygiene Service, Ospedali Riuniti, Ancona, Italy

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 64-67


背景
手術時手洗い法として消毒薬含有液体石けんと擦式アルコール製剤のどちらを選択するかについては、客観的な効果を除くと個人の好みに基づいている。忍容性を改善するために製剤にグリセロールが添加されることが多いが、グリセロールは手術用擦式製剤の持続的効果を低下させる要因の 1 つであることが最近報告された。

目的
3 種類の市販の手指汚染除去製剤の効果を比較すること。

方法
擦式アルコール製剤(イソプロピルアルコール 40%、n-プロピルアルコール 25%、グリセリン 1.74%、カルボマーのトリエタノールアミン塩 < 1%)の in vivo での効果を、他の広く使用されている手術用手指消毒薬(クロルヘキシジンおよびポビドンヨード)と比較した。いずれの製品も製造会社の添付文書に従って使用した。

結果
擦式アルコール製剤の成績が最も良好であり、効果は 3 時間にわたって持続した。擦式アルコール製剤の使用時に一部の被験者に手指の皮膚剥離が生じ、この参加者群では細菌数の減少は 0.91 ± 1.67 log10 のみであったのに対して、皮膚剥離がみられなかった参加者群では 2.86 ± 1.22 log10 であった。

結論
これらの結果から、手術時の手指汚染除去のための擦式アルコール製剤の重要性が確認されたことに加えて、医療従事者の皮膚の特性や反応を評価することの意義が示唆された。そして、そのことが、擦式アルコール製剤による手術時の手洗い後の原因不明の保菌数増加が、皮膚剥離の発現によりもたらされている可能性を示唆している。

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監訳者コメント
EU 諸国では、手術時手指消毒には液体性の手指消毒剤と擦式アルコール製剤の両者が利用されている。本論文では、擦式アルコール製剤の持続消毒効果が確認された。擦式アルコール製剤には様々な添加剤が配合され、消毒剤の即効性を増強させている。一方で、消毒剤に添加されているグリセロールは持続効果を減弱させることが報告されている。また、擦式アルコール製剤は、時に細かな塊ができ、砂のようなザラザラ感として認識され、皮膚剥離を起こすことがあり、逆に菌数を増やすことがある。アルコール製剤の選択において、個人差があることも考慮する必要がある。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対するポリヘキサニドの単独および抗菌薬併用の in vitro 活性

In-vitro activity of polyhexanide alone and in combination with antibiotics against Staphylococcus aureus

W. Fabry*, H.-J. Kock
*Universität Rostock, Germany

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 68-72


背景
抗菌薬のみならず、生体消毒薬に対する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の耐性も増加している。

目的
メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible S. aureus;MSSA)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)の臨床分離株に対する消毒用ポリヘキサニドといくつかの抗菌薬の活性を調べること。ポリヘキサニドを単剤、または oxacillin、ペニシリン G、アンピシリン、セファゾリン、セフロキシム、イミペネム、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、レボフロキサシン、リネゾリド、およびバンコマイシンとの併用で評価した。

方法
MSSA 50 株および MRSA 50 株(バンコマイシン軽度耐性株 1 株を含む)の検査を行った。すべての菌株をパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によりタイピングし、同一クローン株は検査対象から除外した。最小発育阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を、DIN 58940 に従った連続ブロス希釈法により測定した。ポリヘキサニドと種々の抗菌薬との併用を、チェッカーボード法を用いて調べた。

結果
ポリヘキサニドの MIC および MBC は、MSSA および MRSA のいずれも 0.5 から 2 mg/L の範囲であり、バンコマイシン軽度耐性株の MIC および MBC は 2 mg/L であった。いずれの分離株もポリヘキサニド感性と判定され、ポリヘキサニドと評価した抗菌薬との間に拮抗作用は認められなかった。一部の菌株に対して、ポリヘキサニドといくつかの静菌的抗菌薬(エリスロマイシン、ドキシサイクリン、およびリネゾリド)との間の相乗作用が認められた。

結論
ポリヘキサニドの単剤および抗菌薬との併用は、黄色ブドウ球菌に対する局所治療に適していると考えられた。

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監訳者コメント
ポリヘキサニドは、コンタクトレンズの洗浄保存剤としても使用されているクロルヘキシジンと同様のビグアナイド系の消毒薬である。ヒトへの安全性も確認され、創傷治癒効果も期待されている。本論文では、黄色ブドウ球菌に対する局所投与薬が、全身投与される抗菌薬に影響を及ぼさず、一部で相乗効果が認められている。ムピロシン耐性の MRSA に対する局所治療への代替薬として期待される。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.