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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

院内感染制御を目的とした介入研究:研究デザインおよび統計に関する問題

Interventions to control nosocomial infections: study designs and statistical issues

M. Wolkewitz*, A.G. Barnett, M. Palomar Martinez, U. Frank, M. Schumacher for the IMPLEMENT Study Group
*University of Freiburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 77-82


院内感染の減少を目的とした介入研究には、多くの研究デザインが可能である。しかしながら、競合するイベントやクラスタリング、複数のタイムスケール、および時間依存性の期間変数および介入変数といった問題が存在し、その解析は複雑とならざるを得ない。本総説では、広く用いられている疑似実験的な前後比較デザインについて評価を行い、ランダム化デザインと比較した。ランダム化にはいくつかの方法があるが(並行群間比較試験でのクラスター[集中治療室(ICU)や病院など]のランダム化や、クロスオーバー比較試験での介入順序のランダム化、およびステップウェッジデザイン※1での介入時期のランダム化など)、著者らは院内感染の評価にこれらの研究手法を用い、バイアス、介入以外に影響を及ぼすファクター、および一般化可能性※2などの重要項目について、各手法を比較した。さらに統計学的な問題も検討した。
 アウトブレイクが生じた状況で後向きに解析を行う際には、介入前後比較デザインが、有用な情報が得られる唯一の方法であることが多い。この手法はパイロット研究と見なされるが、因果関係をさらに明確にするために、より厳密に計画した研究を行う必要がある。一方、内的妥当性※3が良好な結果を得るためには、ランダム化が必要である。一般的に、内的妥当性を確保するための第一選択は、並行群間ランダム化試験である。しかし、特にパイロット研究により有望な結果が得られている場合には、ステップウェッジデザインのほうが、ICU を初めとするより多くの医療従事者の参加が得られる可能性があるため、一般化可能性が強いと考えられる。統計解析には、拡張した競合リスクモデルの使用が推奨される。

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監訳者コメント
感染対策に関する介入研究には、(1)単なる介入前後の比較研究、(2)対照群を置いた、介入前後の比較研究、(3)セクションないし施設をランダムに割り振った、平行群間比較試験、(4)クロスオーバー比較試験(2 つの群に時期をずらして介入を行い、比較する)、(5)介入時期をランダム化し、複数の群に順次介入を行っていくステップウェッジデザインの 5 つがある。(3)は内的妥当性に優れるという特長を持つ。一方で一般化可能性が高いことは、結果を他の集団に当てはめても同様の結果が得られることを意味するが、(5)のステップウェッジデザインはこの点に優れていると筆者は指摘している。

監訳者注:
※1ステップウェッジデザイン(stepped-wedge design):複数の試験群に対して、介入を導入時期をずらして順次適用していく方法。比較的少数を対象として介入を開始できるため、効率性や経済性に優れると考えられるほか、季節変動や導入後期間などの時期効果を評価できることが利点とされる。
※2一般化可能性(generalizability):ある試験で得られた知見を、より広範囲の患者集団や広範囲の条件へと信頼性をもって広げて解釈できる度合い。
※3内的妥当性(internal validity):研究対象者と同じ集団に対して同様の介入を行った場合、同等の結果が再現される程度を指す。因果推論の適切さを示すものでもある。

医療関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症のアウトブレイク:流行株中の隠れた(cryptic)変異株の役割

Healthcare-associated outbreak of meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia: role of a cryptic variant of an epidemic clone

R.M. Miller*, J.R. Price, E.M. Batty, X. Didelot, D. Wyllie, T. Golubchik, D.W. Crook, J. Paul, T.E.A. Peto, D.J. Wilson, M. Cule, C.L.C. Ip, N.P.J. Day, C.E. Moore, R. Bowden, M.J. Llewelyn
*University of Oxford, John Radcliffe Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 83-89


背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症の発症率や臨床的特徴に変化が認められる場合、それには新しい株の出現が関与している可能性がある。しかしながら従来のタイピング法では、疫学や臨床的な表現型の変化をもたらしている新しいクローン変異株(clonal variant)が検出できないことがある。

目的
イングランドの病院で発生した MRSA 菌血症のアウトブレイク(2004 ~ 2006年)において、クローン変異株の役割を調べること。

方法
英国の主要な MRSA 系統(EMRSA-15 および EMRSA-16)に属する菌血症由来株を、アウトブレイクの前後に採取し、全ゲノムシークエンスを行うとともに,その結果と疫学および臨床データとの関連を解析した。なお比較のため、イングランドの他の病院で分離された EMRSA-15 と EMRSA-16 のシークエンスも行った。アウトブレイクが発生した病院で EMRSA-16 のクローン変異株が 1 株特定されたため、さらに他の EMRSA-16 株についても変異株を検出する目的で、一塩基変異多型を用いたタイピング(molecular signature test)も実施した。

結果
全ゲノムシークエンスにより、アウトブレイク中の EMRSA-16 分離株は、アウトブレイク前および対照とした病院の EMRSA-15 および EMRSA-16 分離株と比較して遺伝的多様性が極めて低かった(P < 1 × 10-6、Monte Carlo 法)。これはクローン変異株の増加を示していた。一方、従来のタイピング法では変異株を祖先型と識別することはできなかった。なお、このクローン変異株は、アウトブレイクが発生した病院で 2006 年以降に菌血症例から分離された EMRSA-16 の 72 株のうち、89%(64 株)を占めていた。

結論
従来のタイピング法では検出されない MRSA 流行株の進化的な変化は、疫学上の変化と関連している可能性がある。全ゲノムシークエンスの迅速かつ安価な技術が利用可能になってきているため、クローン性が高い微生物集団の中から変異株の出現を発見し、追跡することが可能であると考える。

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監訳者コメント
MRSA の分子疫学的解析には、これまで PFGE や POT(phage open-reading frame typing)法、MLST(multilocus sequence typing)が主に使用されてきた。しかしながら今回の検討により、全ゲノムシークエンスでなければ分別できないような新規の変異株の出現と増加が明らかになった。他にも Clostridium difficile などで同様の手法が伝播要因の解明に役立った報告がなされているが、本邦でも全ゲノムシークエンスは身近に利用可能になってきており、今後この技術を応用した疫学調査がさらに容易になると予想される。

監訳者注:
EMRSA:MRSA 流行株(epidemic MRSA)の略。

不確実な状況下での病院アウトブレイクへの対処法の決定

Structuring our response to hospital outbreaks under conditions of uncertainty

Michael R. Millar*
*Royal London Hospital, Barts and the London NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 90-94


背景
手に入れたい情報が全部そろっていない状況で、われわれはしばしば意思決定を行わなければならない。感染制御専門家も、患者の転帰にどう影響が出るか不確実な状況で、アウトブレイク(保菌・感染)に直面することはまれではない。アウトブレイクの深刻さが不明な段階で、相応な対処法をいかにして決定すればよいであろうか?

目的
脅威がもたらす実際の影響がかなり不明な状況で、新型パンデミックインフルエンザウイルスのように、深刻と予想される脅威への対処法を決定する方法として、欧州連合(EU)は予防的アプローチ法を策定した。本稿では、大きな不確実性を伴うアウトブレイクへの対処法を決定するうえでの、本アプローチの有用性を評価する。

方法
EU のアプローチ法は、行動が相応であること、恣意的でないこと、一貫していること、費用対効果を考慮していること、および行動の事後評価を行うことを求めており、また科学的根拠を提供して情報の重大なギャップを埋めていく責任者を決める必要があるとしている。本稿では、多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)のアウトブレイクの管理を例に挙げ、感染予防・制御のためにどのような予防的アプローチ法を用いるかについて述べる。

結果・結論
アウトブレイクが転帰に及ぼす影響が不明確である場合でも、予防的アプローチ法を用いれば、病院アウトブレイクに対して体系的にしっかりした対処法を決定できると考える。最も重要なことは、どのリスクが優先的に制御されるべきなのか、不確かではあるが意思決定のために不可欠な情報は何か見極めることと、さらに情報を収集する責任者を明確にすることである。

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監訳者コメント
院内ないし施設内で何らかの感染症の集団発生の兆候を認めた場合、われわれは不確実な状況下で対応策を決定していかねばならない。常にこのような状況に置かれているといっても過言ではないが、その時点において、この対応でよいのかと心中疑問を抱きながら対処しているのも事実である。EU の予防的アプローチ法は、具体的な対応策そのものを示すものではない。しかしながら感染対策担当者が眼前の限定された情報から(しかも状況に拘泥され過ぎることなく)、適切な対応策を客観的に決定してゆく過程で有力なツールになると考える。

エストニアの小児集中治療室における院内血流感染の 5 年間にわたる前向きサーベイランス

Five-year prospective surveillance of nosocomial bloodstream infections in an Estonian paediatric intensive care unit

P. Mitt*, T. Metsvaht, V. Adamson, K. Telling, P. Naaber, I. Lutsar, M. Maimets
*Tartu University Hospital, Estonia

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 95-99


背景
新生児も対象とする混合型の小児集中治療室(PICU)における院内血流感染(BSI)発生率に関する研究はほとんどない。

目的
エストニアの PICU における BSI の発生率、病原体、および転帰を明らかにすること。

方法
Tartu University Hospital の PICU で、2004 年 1 月 1 日から 2008 年 12 月 31 日にデータを前向きに収集した。米国疾病対策センター(CDC)の定義を用いて、臨床検査で確認された BSI(laboratory-confirmed BSI)の診断を行った。

結果
患児 89 例(新生児 74 例、乳児 8 例、1 歳を超える患児 7 例)に合計 126 件の BSI エピソードが特定された。新生児 42 例(57%)は出生体重 1,000 g 未満であった。BSI の全発生率は入院 100 件あたり 9.2、発生密度は 1,000 患者日あたり 12.8 であった。92 エピソードが一次 BSI と診断された。新生児の中心ライン関連 BSI の発生密度は 1,000 中心ライン日あたり 8.6 であり、このうち最も高かったのは超低出生体重の新生児であった(27.4)。多くみられた病原体は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(43%)およびセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)(14%)であった。メチシリン耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)分離株 7 株中 4 株に認められ(いずれも 1 件のアウトブレイク由来)、また腸内細菌科細菌の 23%が基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株であった。全致死率は 10%であった。

結論
当院の混合型 PICU の BSI 発生率は、既報と比較して高かった。抗菌薬耐性が高頻度に認められた。今後は、アウトブレイクの予防と中心ライン関連 BSI 発生率の低下を目的とした、感染制御策の効果に焦点を当てた調査を実施するべきである。

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監訳者コメント
耐性菌の検出頻度や医療関連感染の発生率は国によって、病院によって大きく異なることが知られている。本研究は「エストニア」と呼ばれるバルト三国の一国における「新生児から 1 歳を超える幼児」を収容する小児集中治療室を対象とした、中心ライン関連血流感染症の発生率・発生密度の報告である.
日本においても標準化された方法で様々な医療関連感染の発生率を検討することで、独自の傾向や、それに基づく独自の対策に結びつく可能性がある。研究結果そのものよりも、研究の手法について学ぶことのできる一報である。

新卒看護師の感染制御に関する必須コンピテンシー(資質・適性)を明らかにする:オーストラリアおよび台湾における 3 期にわたる研究★★

Identifying essential infection control competencies for newly graduated nurses: a three-phase study in Australia and Taiwan

L.-M. Liu*, J. Curtis, P.A. Crookes
*Chang Gung University of Science and Technology, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 100-109


背景
医療関連感染および病院感染により患者の罹患率と死亡率が上昇し、医療費が増加する。感染予防・制御は、医療現場の医療従事者の最優先事項である。

目的
新卒看護師の感染予防・制御に関する必須コンピテンシーについて明らかにすること。

方法
以下の 3 期にわたる研究をデザインした。第 1 期:調査ツールの作成(2008 年 1 月から 5 月に実施)、第 2 期:感染制御関連組織および看護学校(オーストラリア 60 組織、台湾 62 組織)のそれぞれの長が指名した専門家 122 名からなる専門家パネルの設立、および第 3 期:デルファイ法による調査(オーストラリアと台湾で 2008 年 7 月から 2009 年 5 月に同時に 3 回実施)。

結果
専門家 93 名が 1 回目の質問票に回答した。回答率は、1 回目 76.2%、2 回目 91.4%、および 3 回目 94.1%であった。3 回すべてに回答した専門家は 80 名であった。全体で 81 項目で合意に到達し、その内訳は、基礎微生物学に関するコンピテンシー領域 7 項目、手指衛生 12 項目、標準予防策および付加的予防策 30 項目、個人防護具 12 項目、洗浄、消毒、および滅菌 9 項目、および主要なアセスメントスキル 11 項目であった。専門家の大半(49 名、75.4%)は、新卒看護師の感染制御に関するコンピテンシーレベルは不十分であることに同意した。

結論
台湾とオーストラリアの専門家パネリストの合意によって、新卒看護師に特化した感染予防・制御に関するコンピ―テンシー調査のための 81 項目を作成した。本研究で得られたベースラインデータは、看護師による感染制御の原則の臨床への適用を促進するための看護学生用カリキュラムの開発に有用であると考えられる。

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監訳者コメント
感染管理に関する卒前教育の必要性は声高に叫ばれている一方で、その具体的なカリキュラムについては明らかになっていない。本研究はオーストラリアと台湾の専門家にアンケート形式で「何が必要と考えられるか」を問い、81 項目の合意項目が得られたことを報告している。
日本でも卒前教育に感染管理を盛り込む動きがあり、本論文に紹介されている様々な項目・事項はカリキュラムの作成に役に立つことであろう。願わくば日本でも同様の研究が行われるべきである。

医療用手袋の使用:医療従事者の行動および認識

Clinical glove use: healthcare workers’ actions and perceptions

H.P. Loveday*, S. Lynam, J. Singleton, J. Wilson
*University of West London, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 110-116


背景
医療用手袋の不適切な使用や、処置と処置の間で手袋が適切に交換されないことにより、交差感染のリスクが上昇する。手指衛生の遵守について、より一層の注意が払わている。

目的
手袋の使用状況、手袋による交差伝播の可能性、および医療従事者の手袋装着の意思決定に影響する因子について調査すること。

方法
英国の単一の病院トラストの 6 つの診療部門で手袋の使用状況を観察した。交差汚染リスクの定義は、手袋使用中の「手指衛生のタイミング」の不遵守とした。これらの診療部門の医療従事者 25 名を、手袋使用の促進要因を特定するための観察および面接の対象とした。

結果
13 時間で合計 163 回の手袋使用を観察した。163 回中 69 回(42%)の手袋使用が不適切であり、低リスク作業における不適切な使用が多かった(37 回中 34 回、92%)。手袋使用 163 回中 60 回(37%)に交差汚染リスクがあり、その多く(48%)は手袋を適切に脱がなかった、または手袋を脱いだ後に手指衛生を行わなかったことによるものであった。医療従事者の面接から、手袋装着の意思決定は、社会的要因と情動要因の両者の影響を受けていることが示された。主要な情動は嫌悪感と恐怖感であった。患者は手袋使用を好むという思い込み、装着のタイミングについての混乱、および社会的規範や同僚からのプレッシャーも重要な影響を及ぼしていた。

結論
手袋の使用は交差汚染リスクと関連しており、手指衛生の指針の中により明確に組み入れる必要がある。手袋の誤用や乱用を減らすための介入法を策定するには、何が手袋の使用を促進しているかを理解する必要がある。

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監訳者コメント
手指衛生の遵守率向上は多くの医療施設に共通した重要な課題である。多くの医療従事者が依然として適切な手指衛生の適応を十分に理解できていない中で、手袋の適切な使用を推進することは非常に困難である。
本論文はイギリスの病院においても手袋が不適切に使用されている現状を明らかにしたうえで、「何が」その不適切な使用の原因になっているかを検討している。
その結果は「みんなに見られているから」「以前からこうしているから」などの予想されるものであった。この結果に基づいて「では何ができるか」は次のステップの事項とはいえ、簡単ではないように思えるが、結語に述べられているように「手指衛生のポリシーに手袋の適切な使用についても一緒に盛り込む」ことは 1 つの解決策であろう。

開放式末梢静脈カテーテルと安全な閉鎖式末梢静脈カテーテルの留置時間、合併症、およびコストの比較:ランダム化試験

Indwell times, complications and costs of open vs closed safety peripheral intravenous catheters: a randomized study

J.L. González López*, A. Arribi Vilela, E. Fernández del Palacio, J. Olivares Corral, C. Benedicto Martí, P. Herrera Portal
*Hospital Clínico ‘San Carlos’, Spain

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 117-126


背景
末梢静脈カテーテル(PIVC)によるカテーテル関連感染症は、増加中の医原性合併症である。これを予防するために推奨されている PIVC の定期的な交換時間は、その裏づけとなる科学的エビデンスが欠如しているにもかかわらず、48 時間から 72 時間へ、さらに 96 時間へ延長されてきた。

目的
閉鎖式 PIVC と開放式 PIVC を比較すること。

方法
今回の前向きランダム化対照試験では、合併症が発生するまでの PIVC の留置時間を、閉鎖式 PIVC と開放式 PIVC で比較した。PIVC の抜去は、臨床的適応が認められた場合のみ実施した。合計で、PIVC 1,199 件(入院患者 642 例)をランダム化の対象とし、283 件で培養を行った。ランダム化後に 16 件のカテーテル(11 例)が追跡不能となった。

結果
合計で、104,469 カテーテル時間(閉鎖式 584 件、54,173 カテーテル時間、開放式 599 件、50,296 カテーテル時間)の記録を行った。留置時間中央値は、閉鎖式 PIVC 137.1 時間、開放式 PIVC 96 時間であった(P = 0.001)。24 時間以上留置した PIVC の留置時間中央値は、閉鎖式 PIVC 144.5 時間(95%信頼区間[CI]123.4 ~ 165.6 時間)、開放式 PIVC 99 時間(95%CI 87.2 ~ 110.8 時間)であった。閉鎖式 PIVC の使用によって静脈炎の発生率は 29%減少した(1,000 カテーテル日あたり 31 件対 45 件、P = 0.004)。開放式 PIVC の 96 時間留置率は 79.9%、閉鎖式 PIVC の 144 時間留置率は 80.4%であった。1,000 カテーテル日あたりの細菌定着率(閉鎖式 51.1、開放式 54.1)、またはカテーテル関連感染発生率(閉鎖式 5.76、開放式 6.65)に有意差はみられなかった。それにもかかわらず、カテーテル関連感染の相対リスクは 20%低下した。

結論
閉鎖式 PIVC を使用することによって、1 日あたりわずか 0.09 ユーロのコストで静脈炎エピソードが減少し、感染リスクが低下した。PIVC を臨床的適応に基づいて交換する場合は、リスクの増加なしに閉鎖式 PIVC は 144 時間まで、開放式 PIVC は 96 時間まで留置することが可能であり、コストは大幅に低下した(1,000 床年あたり 786,257 ユーロ)。

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監訳者コメント
スペインでは入院患者の約半数において血管内留置カテーテルが挿入され、その 95%が末梢静脈カテーテルと報告されている。そのような背景での末梢静脈留置カテーテルの開放式(三方活栓型)と閉鎖式の挿入時間と合併症について検討した論文である。閉鎖式により留置期間の延長と静脈炎発生の低減、さらにコストダウンができたことから、閉鎖式の優位性に加え、定期的交換よりも臨床状況に応じた交換がよいとの立場をとっている。

非複雑待機的大腸手術後の退院後手術部位感染症:影響とリスク因子-VINCat Program の経験

Post-discharge surgical site infections after uncomplicated elective colorectal surgery: impact and risk factors. The experience of the VINCat Program

E. Limón*, E. Shaw, J.M. Badia, M. Piriz, R. Escofet, F. Gudiol, M. Pujol, on behalf of the VINCat Program and REIPI
*VINCat Coordinator Center, Spain

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 127-132


背景
大腸手術後の手術部位感染症(SSI)は、医療システムの測定可能な質評価指標である。病院間や国の間での SSI 率の比較が注目されるようになっているが、SSI 発生に関するデータにばらつきがあるため、このような比較は困難である。評価にあたっては、データ収集を標準化し、信頼性の高い退院後サーベイランス(PDS)を行う必要がある。

目的
待機的大腸手術後の退院後 SSI の影響とリスク因子を明らかにすること。

方法
VINCat は、スペイン・カタロニアの院内感染サーベイランスプログラムである。2007 年から 2011 年に 52 病院がこのプログラムに参加した。各病院が、待機的大腸切除術に関する標準化された積極的サーベイランスを前向きに実施した。PDS は集学的アプローチにより実施し、手術後 30 日間は必須とした。

結果
研究期間に実施された待機的大腸手術 13,661 件を対象とした。2,826 例(20.7%)が SSI と診断され、このうち PDS 中に診断されたのは 22.5%であり、その 52%は再入院が必要となった。PDS SSI の患者は入院時 SSI の患者よりも年齢が低く(オッズ比[OR]1.57、95%信頼区間[CI]1.29 ~ 1.91)、女性が多く(OR 1.40、95%CI 1.16 ~ 1.69)、内視鏡手術が多く(OR 1.56、95%CI 1.30 ~ 1.88)、切開部 SSI が多かった(OR 1.88、95%CI 1.54 ~ 2.28)。

結論
VINCat 参加病院の待機的大腸手術での SSI 率は、他の全国的なプログラムの報告と比較すると高値の部類に属する。PDS SSI は SSI の全発生率の増加をもたらし、重大な臨床的影響を及ぼし、SSI の約 4 分の 1 を占めた。低年齢と腹腔鏡手術が最も重要なリスク因子であった。大腸手術のサーベイランスを実施する病院では、標準化された集学的 PDS を行うべきである。

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監訳者コメント
SSI サーベイランスは、在院期間が短い場合は退院後に発生した SSI がカウントされず、見かけ上低く算出される。本論文では手術後 30 日間にわたり、多施設共同で SSI サーベイランスを実施し、その実態を明らかにした。退院後の SSI サーベイランスの必要性を強調している。

硬膜外カテーテル離断後の防御策がカテーテル内腔の菌定着に及ぼす効果:in vitro 研究

Influence of protective measures after epidural catheter disconnection on catheter lumen colonization: an in vitro study

D. Scholle*, F. Kipp, A. Reich, H. Freise
*University Hospital of Muenster, Germany

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 133-137


背景
硬膜外麻酔は優れた疼痛治療法であり、これにより術後の疾患および死亡が減少する。この治療法の重篤な合併症として、硬膜外血腫と感染症が挙げられる。不慮のカテーテル離断の発生後は、再接続か治療中止かの選択を迫られる。硬膜外カテーテル離断後の臨床的意思決定の指針となる実験的または臨床データはほとんどない。

目的
臨床使用されている硬膜外カテーテル離断後の安全対策の効果を、in vitro で調査すること。

方法
硬膜外カテーテルの近位 20 mm を表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis) 1 × 108 cfuの縣濁液に浸漬した。カテーテルを、予防対策と考えられる以下の方法で処理した。(i)汚染部位から遠位 20 mm の箇所の切断、(ii)消毒薬噴霧と拭き取りによる消毒、または(iii)生理食塩液の代わりにロピバカイン 0.75%を用いるフラッシング。各対策を、単独、2 種併用、または 3 種併用で評価した(各群カテーテル 10 本)。対照カテーテルは未処理とした。24 時間培養後、溶出液中の細菌増殖を記録した。

結果
対照カテーテルはいずれも培養陽性であった。単独、2 種併用、または 3 種併用介入において切断を行ったカテーテルの溶出液 49 件はいずれも無菌であった。単独または 2 種併用介入で消毒を行った場合に、溶出液中の細菌増殖の予防が認められたカテーテルは 6 本のみであった。ロピバカインによるフラッシングでは細菌増殖の予防はできなかった。

結論
硬膜外カテーテルの汚染部位から遠位 20 mm の箇所の切断のみが、細菌増殖を完全に予防した。消毒は付加的な対策としてリスクをさらに低下させると考えられた。この結果は、カテーテルを切断・短縮して、再接続するという臨床実践を支持するものである。時間と切断長に関する安全域について、さらなる調査が必要である。

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監訳者コメント
硬膜外カテーテルが離断した際の対応を、実験的に検討したものである。先端を細菌で人為的に汚染し、その後に 20 mm チューブを切断すると、チューブ内の感染が防げるとしている。汚染後の時間経過が考慮されていない点で問題が残るが、離断直後であればチューブを 20 mm 切断した後に再接続が可能であることを示唆している。

アウトブレイク時の麻疹伝播のリスク因子:マッチング症例対照研究

Risk factors for transmission of measles during an outbreak: matched case-control study

D. Hungerford*, P. Cleary, S. Ghebrehewet, A. Keenan, R. Vivancos
*Field Epidemiology Services North West, Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 138-143


背景
2012 年、英国・マージーサイドで麻疹のアウトブレイクが発生し、6 月 30 日までに 359 症例が確認された。多くの症例が医療施設や市中を訪れたと回答した。

目的
アウトブレイク時の麻疹伝播に関連するリスク因子を特定すること。

方法
後向きマッチング症例対照研究を 2012 年 4 月に実施した。年齢および居住地で 1:1 にマッチさせた確定症例 55 例と住民対照 55 例をランダムに選択した。医療施設受診など、発症前 2 週間の曝露データを電話面接により収集した。単変量解析および多変量解析を実施し、オッズ比を算出した。

結果
症例 42 例およびマッチさせた対照 42 例の面接を行うことができた。単変量条件付きロジスティック回帰分析から、症例は救急部受診、入院、および年齢相応のワクチン接種未完遂の割合が高いことが示された。多変量解析からは、以下の 3 因子が独立して麻疹感染と関連していることが確認された。年齢相応のワクチン接種未完遂(補正オッズ比[aOR]22.1、95%信頼区間[CI]3.8 ~ ∞、P < 0.001)、定期ワクチン接種の年齢未満(aOR 20.4、95%CI 2.0 ~ ∞、P = 0.009)、および入院(aOR 20.2、95%CI 1.4 ~ ∞、P = 0.025)。

結論
ワクチン接種未完遂、定期ワクチン接種の年齢未満、および入院が麻疹感染と関連していた。これらの結果は、予防接種の対象者に対する適切な時期でのワクチン接種、早期診断、症例の適時の隔離、および厳格な感染制御対策実施が重要であることを示している。

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監訳者コメント
麻疹は発疹のでる 1 ~ 4 日前から感染性がある。そのため、発症に気づいてからの感染対策では、感受性者への感染を防ぐことはできない。また、感染力が極めて強く、麻疹の免疫がない集団に 1 人の発症者がでると、12 ~ 14 人が感染するとされている(インフルエンザでは 1 ~ 2 人)。確実な予防策はワクチン接種であり、接種率の目標は 95%以上とされている。麻疹排除の国際基準は人口 100 万人あたりの発症者が 1 人未満(輸入例除く)であるが、日本は目標接種率も、麻疹排除基準も、まだ到達できていない。

イングランド北東部において医療従事者の麻疹ワクチン接種が不十分であることがアウトブレイク中にもたらした影響

Consequences of incomplete measles vaccine uptake in healthcare workers during an outbreak in North East England

P. Bogowicz*, J. Waller, D. Wilson, K. Foster
*Public Health England Centre North East, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 144-146


イングランド北東部において麻疹アウトブレイク中に麻疹に感染した医療従事者の 2 症例、および免疫がないために長期間にわたり勤務から除外された第 3 の症例について報告する。医療従事者が麻疹に対する免疫を有していることを確認するための、さらなる取り組みが必要であることは明白である。ワクチン接種率の上昇は、単回の麻疹ワクチン接種プログラムを確立し、さらに雇用前スクリーニングの手順化を併用することによって可能となると考えられる。このようなプログラムは、ワクチン接種のインセンティブ付与または義務化によって強化できる。あらゆる立場の医療従事者および政策立案者が、院内獲得型麻疹感染の予防のために協調すべきである。

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監訳者コメント
日本でも同様の事例は十分起きうる状況である。日本環境感染学会が発行する「院内感染対策としてのワクチンガイドライン」(2009年)には、医療従事者に求められる抗体価とワクチン接種の条件が掲載されているが、当然ながら、確実に実施できていないことが医療従事者の発症、院内での感染伝播につながる。抗体価が不十分であってもワクチン接種を受けないスタッフへのアプローチも悩ましい。

欧州の学生の医療従事者を対象とした B 型肝炎ワクチン接種方針

Hepatitis B vaccination policies for student healthcare workers in Europe

A. De Schryver*, B. Claesen, A. Meheus, R. Hambach, M. van Sprundel, G. François
*University of Antwerp, Belgium

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 147-150


学生の医療従事者は、B 型肝炎ウイルス(HBV)伝播の特有のリスクグループであり、その職務開始後の可及的早期にワクチン接種を受けるべきである。欧州連合(EU)諸国の HBV に特化した施策の概要を調査するため、横断研究を実施した。17 か国から回答を得た。医学生および看護学生に対する HBV ワクチン接種は 5 か国で義務化されており、9 か国で推奨されていた。ワクチン接種前の検査は 5 か国、ワクチン接種後の血清学的な検査は 12 か国で実施されていた。HBV ユニバーサルワクチン接種に関する種々の方針に対応するため、学生の医療従事者に対する HBV ワクチン接種強化策は多様なものとすべきである。

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監訳者コメント
日本でも、医療系の学生は病院実習の際にワクチン接種記録を求められることから、ワクチン接種歴がある新入職者が増えてきた。その一方で、スタッフのワクチン接種ルールは医療機関により差が大きく、接種勧奨をしている医療機関は 44%だったという報告もある(環境感染誌 2013;28(3):147-153)。昨今の風疹や麻疹の流行を考えても、実習として臨床現場に入る前に、B 型肝炎を含む職業曝露が問題となる疾患についてのワクチン接種が完了していることが望ましい。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA):ブラジルの教育病院の複数の診療部門の患者における特定の系統株の蔓延

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus: spread of specific lineages among patients in different wards at a Brazilian teaching hospital

F.S. Cavalcante*, R.P. Schuenck, D.C. Ferreira, C.R. da Costa, S.A. Nouér, K.R.N. dos Santos
*Universidade Federal do Rio de Janeiro, Brazil

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 151-154


本研究の目的は、ブラジルの教育病院に蔓延しているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)系統株の特徴を明らかにすることである。鼻腔内スワブ由来の MRSA 分離株の抗菌薬感受性、ブドウ球菌カセット染色体 mec(SCCmec)、Pantone-Valentine 型ロイコシジン関連、パルスフィールド・ゲル電気泳動プロファイル、および複数部位塩基配列タイピング(MLST)の評価を行った。MRSA 分離株 83 株を解析した。SCCmec III 型(43.4%)および IV 型(49.4%)が優勢であった。内科では ST1-IV(USA400)型が多くみられたが(P = 0.002)、内科・外科集中治療室では「clone M」(SCCmec III 型)がより多く(P = 0.004)、皮膚科ではすべての分離株が ST5-IV(USA800)型であった(P < 0.001)。これらのデータは、病院内の MRSA の疫学に関する理解の向上、および効果的な制御対策の確立に寄与した。

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酸性化された亜硝酸塩:クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞の定着に対する宿主防御か?

Acidified nitrite: a host defence against colonization with C. difficile spores?

R. Cunningham*, E. Mustoe, L. Spiller, S. Lewis, N. Benjamin
*Plymouth Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 155-157


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞は酸抵抗性であるにもかかわらず、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用すると C. difficile 感染リスクが上昇する。唾液に含まれる亜硝酸塩は胃酸と反応するため、唾液を飲み込むと殺菌性の窒素酸化物が発生する。pH 2(通常の胃内環境を反映)では、5 mM の亜硝酸塩によりすべての C. difficile 芽胞が 15 分以内で死滅した。PPI 服用患者の胃内状態である pH 5 では、同一濃度の亜硝酸塩による細菌数の減少は 60 分後でも認められなかった。唾液中の亜硝酸塩の胃内での酸性化が抑制されることが、PPI 服用中の患者の C. difficile感染リスク上昇の説明となると考えられる。

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Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.