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★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

感染制御行動の文化的決定因子:推進因子の理解と効果的な変革の実践

Cultural determinants of infection control behaviour: understanding drivers and implementing effective change

M.A. Borg*
*Mater Dei Hospital and University of Malta, Malta

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 161-168


感染予防・制御は生物医学的な実践に関する取り組みであるが、本質的には行動科学の問題であるといえる。ヒトの行動は、文化を含む様々な因子の影響を受ける。Hofstede が提唱する「文化的次元モデル」では、特定の構成要素として分類・スコア化することが可能な一定の次元において、国民文化は異なることが指摘されている。これらの構成要素のうち「権力格差」、「不確実性の回避」、および「男性らしさ」の3つが、感染予防・制御および抗菌薬使用の管理と関連する複数の重要なパフォーマンス指標(キー・パフォーマンス・インジケーター)と有意な関連を示すことが、複数の研究から報告されている。さらに、欧州各国のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の検出頻度は、予防戦略や患者の人権などの全般的な医療の質の指標と強く相関する。このことは、感染予防・制御は、病院や国における全般的な質や安全性の基準の縮図にほかならないことを示唆している。したがって、有効な改善戦略を議論するには、患者の安全やケアの質に関する基本的・根本的な文化的価値観に触れる必要がある。成功に至る可能性が高い感染予防・制御戦略は、おそらくその実施環境における文化的背景に則った戦略であろう。感染予防・制御戦略を成功させるために行われた現行の種々の感染制御・予防の改善手法に関する内容分析からは、「不確実性の回避」と「権力格差」が弱く、「個人主義」と「男性らしさ」が強い文化への親和性が高い要素が明らかにされている。しかし、このような文化的特性の組み合わせは、近年の医療関連感染発生率の改善のほとんどが行われたアングロサクソン諸国に概ね限定される。種々の文化的背景、特に「権力格差」および/または「不確実性の回避」のスコアが高い国々における感染予防・制御の行動変容に関する研究は乏しい。このような国々では医療関連感染発生率が高いことが多いが、そこで感染予防・制御キャンペーンを浸透させるためには、これらの情報が不可欠である。

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監訳者コメント
「アメリカやイギリスで行われた研究結果が、果たして日本の病院でも同じように当てはめることができるのか」。諸外国の研究結果やガイドラインが出るたびに、このような「答えのない」議論が繰り返されてきた。
Edward Joseph Lister Lowbury は英国病院感染学会の初代会長であるが、その名を冠したレクチャーが「Lowbury lecture」であり、本論文は 2013 年の Lowbury lecture が文書化されたものである。筆者はイタリア半島に隣接するマルタ共和国のマルタ大学で感染管理・抗菌薬スチュワードシップに従事する医師であり、2007 年には 50 か国以上の国々が参加する国際感染管理協会の会長を務めている。文中には行動科学や文化学領域のやや難解な用語が多いが、冒頭のように「気にはなるけどよくわからない」問題に正面から取り組んだ論文であり、時間と興味のある方にはぜひ一読をお勧めする。

医療関連感染の新興起因菌としてのクロノバクター(Cronobacter)属菌

Cronobacter spp. as emerging causes of healthcare-associated infection

O. Holý*, S. Forsythe
*Palacký University Olomouc, Czech Republic

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 169-177


背景
近年まで、院内感染の起炎菌としてのクロノバクター(Cronobacter)属(旧名エンテロバクター・サカザキイ[Enterobacter sakazakii])の菌群の位置づけはよくわかっていなかった。しかし、Cronobacter 属菌と乳児の感染との関連、特に新生児集中治療室における汚染された乳児用調製粉乳の授乳による感染は、新生児医療の改善のための国際的な取り組みをもたらした。

目的
この新興の病原性細菌群に関する現在の知見、および新生児の感染症の減少のために実施されている手順について調査すること。

方法
Cronobacter属の最近の分類学上の変更、感染源、および臨床的重要性に関する現在の知見を明らかにするため、文献レビューを行った。

結果
新生児の重度の髄膜炎感染症のほとんどは、Cronobacter 属菌 10 種のうちの 1 種である C. sakazakii のシークエンス型 4(ST4)として知られているクローン複合体と関連していた。本菌による新生児の感染症リスクを低下させるための国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の国際的な取り組みによって、乳児用調製粉乳の微生物学的安全性は改善したが、授乳に関する改訂版ガイドラインには依然として問題がある。また、感染症の多くは成人集団で発生しており、その感染源は不明である。

結論
乳児用調製粉乳の微生物学的安全性の国際的な改善および授乳に関する提言は、新生児領域における Cronobacter 感染症を周知させることと、新生児医療の改善を重視している。これにより、その他の日和見病原性細菌への新生児の曝露も減少するだろう。しかし WHO の提言を遵守したとしても、早産児への安全な授乳方法に関しては多くの未解決の問題が残されている。

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監訳者コメント
Cronobacter sakazakii は、腸内細菌の研究に多大な貢献をした坂崎利一氏の名前を冠した腸内細菌群の一菌種である。従来 Enterobacter sakazakii と同定されていた菌群は、2008 年に8種の Cronobacter 属菌に細分化された。本菌による粉ミルクの汚染とそれに続発する新生児の髄膜炎が多発したため、2004 年に WHO はその改善について提言を行ったが、「70℃のお湯で溶かす」などの温度管理は実際には難しいといった問題がある。また本菌による感染症は成人例が多く、その感染経路などはよくわかっていない。日本での本菌による新生児髄膜炎はまれであるが、今後も注意が必要である。

タスマニアの集中治療室の臨床サンプルにおけるアカントアメーバ(Acanthamoeba)属陽性率

Prevalence of Acanthamoeba spp. in Tasmanian intensive care clinical specimens

R.S. Bradbury*, L.P. French, L. Blizzard
*University of Tasmania, Australia

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 178-181


背景
アカントアメーバ(Acanthamoeba)属は環境内に普遍的に存在する自由生活性アメーバであり、ヒトの角膜炎、肉芽腫性脳炎、皮膚病変、および全身性疾患などを引き起こすことがある。アカントアメーバ属は細菌の担体として働いているとされており、これによって医療関連肺炎の一般的な起因菌の多くが肺に侵入していると考えられる。アカントアメーバ属が集中治療室(ICU)の患者の肺炎や尿道カテーテルへの定着の主要な原因であることを示すエビデンスは限られている。

目的
ICU の患者の気道および尿路における自由生活性アメーバ定着の可能性について調査すること。

方法
Royal Hobart Hospital で 2011 年 8 月から 4.5 か月間にわたり、患者 45 例からのカテーテル尿 39 サンプル、気管内喀痰 50 サンプル、および一般病棟の喀痰 1 サンプル、ならびに ICU 環境内の 9 つの水サンプルを採取した。

結果
アカントアメーバ属が、単一の患者から 1 週間の間隔を置いて採取した喀痰 2 サンプルから培養により分離され、また PCR 法により検出された。ICU 環境からは培養によってのみ、アカントアメーバ属の分離株が 1 件検出された。

結論
ICU の患者の気道にアカントアメーバ属が定着することが確認された。このことは、ICU で治療を受ける患者の気道における病原細菌の感染源として、アカントアメーバ属が重要な役割を有する可能性を示している。

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監訳者コメント
自由生活アメーバであるアカントアメーバ属による角膜感染症は、ソフトコンタクトレンズ装着者において約 5 年前に大きな話題となった(薬食審査発 1216 第 1 号)。本病原体は特に水場に生息し、水道の蛇口の 7 割から検出されたとの報告もある。さらにこれらのアカントアメーバ属と細菌、特に緑膿菌、エンテロバクター菌、大腸菌、セラチア菌、肺炎球菌、クレブシエラ菌、レジオネラ菌などとの関連性が報告されている。また、MRSA の供給源の可能性も示唆されており、これらのアメーバ内に生存する細菌は、熱や消毒剤から保護され、バイフィルム形成に一部関与している。そのような背景のもとに、本論文では集中治療室に入室中の患者の気道へのアカントアメーバ属の定着が確認され、挿管チューブや尿路カテーテルへ定着することで、その後の難治性の肺炎や尿路感染症を発生させる可能性を警告している。

医療従事者のインフルエンザワクチン接種率は入院患者の院内インフルエンザ様疾患のリスクに影響するか?

Can influenza vaccination coverage among healthcare workers influence the risk of nosocomial influenza-like illness in hospitalized patients?

E. Amodio*, V. Restivo, A. Firenze, C. Mammina, F. Tramuto, F. Vitale
*University of Palermo, Italy

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 182-187


背景
毎年、約 20%の医療従事者がインフルエンザに感染し、院内アウトブレイクや職員不足を引き起こしている。医療従事者のインフルエンザワクチン接種は最も効果的な予防戦略であるが、接種率は依然として低い。

目的
急性期病院の入院患者の院内インフルエンザ様疾患リスクと、医療従事者のインフルエンザ接種率との関連を解析すること。

方法
イタリアの急性期病院 1 施設で、連続 7 回のインフルエンザシーズン(2005 年から 2012 年)に収集したデータを後向きに解析した。データソースとして、病院の退院記録、医療従事者のインフルエンザワクチン接種率、および一般集団のインフルエンザ様疾患発生率の 3 種類を使用した。院内インフルエンザ様疾患の定義には、国際疾病分類(ICD)第 9 版のClinical Modification(CM)コードを用いた。

結果
合計 62,343 例の入院患者を本研究に組み入れ、このうち 185 例(0.03%)が院内インフルエンザ様疾患症例として特定された。医療従事者のインフルエンザワクチン接種率は研究期間中に 13.2%から 3.1%に低下し(P < 0.001)、一方、入院患者の院内インフルエンザ様疾患発生率は 1.1‰から 5.7‰に上昇した(P < 0.001)。医療従事者のインフルエンザワクチン接種率と、患者の院内インフルエンザ様疾患発生率との間には、有意な負の関連が認められた(補正オッズ比 0.97、95%信頼区間 0.94 ~ 0.99)。

結論
医療従事者のインフルエンザワクチン接種率を上昇させることによって、急性期病院の入院患者の院内インフルエンザ様疾患リスクの低下を図ることができると考えられた。本研究は、病院が医療従事者に対するインフルエンザワクチン接種の有益性を評価・周知を推進するうえで、信頼性が高くかつ費用節減をもたらす方法を提供するものである。

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監訳者コメント
本論文ではワクチン接種率 13%から 3%に低下することで、院内でのインフルエンザ様疾患の発生率が有意に上昇していることから、医療従事者のワクチン接種率を上昇させることの重要性を強調している。米国疾病対策センター(CDC)の推奨では、入院患者でのインフルエンザ感染拡大阻止のためには、医療従事者のワクチン接種率 60%が必要とされており、本論文よりもはるかに高い。各国の医療従事者のインフルエンザワクチン接種率は、EU 諸国(英国、フランス、ドイツ、スペイン)での接種率は 15% ~ 29%程度で、カナダ、オーストラリア、米国では30% ~ 50%程度と報告されている。コクランのメタアナリシスでは、高齢者施設でのワクチン接種率と施設内感染の発生率との間に逆相関があることも示唆されている。ワクチン株と流行株との当たり外れ、市中での流行状況などにより、これらのデータは左右される。また、医療従事者の感染への意識の高さは、接種率を上昇させ、咳エチケットや手指衛生等の感染予防対策の向上も相まって、結果的に施設内での感染拡大を阻止できる。インフルエンザシーズンでは、早期にインフルエンザ様疾患の医療従事者を発見し、就業制限を実施することも重要である。

高齢患者と医療従事者に生じたインフルエンザ A(H3N2)院内アウトブレイクの伝播経路

Routes of transmission during a nosocomial influenza A(H3N2) outbreak among geriatric patients and healthcare workers

D. Eibach*, J.-S. Casalegno, M. Bouscambert, T. Bénet, C. Regis, B. Comte, B.-A. Kim, P. Vanhems, B. Lina
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 188-193


背景
インフルエンザへの罹患は、入院中の高齢患者にとって、生命を脅かされるものである。医療従事者や他の患者、面会者によって院内で伝播するものであるが、2011 年から 2012 年にかけて、フランス・リヨンの Edouard Herriot 病院の老年病科もインフルエンザ A(H3N2)のアウトブレイクを経験した。

目的
このインフルエンザ A(H3N2)のアウトブレイク事例において、シークエンス解析を用いて伝播経路を明らかにするとともに、有効な予防策を決定すること。

方法
2012 年 2 月 19 日から 3 月 15 日の間に、老年病科の急性期病棟でインフルエンザ様症状を訴えた患者のうち、22 例が検査上インフルエンザと確認された。質問票を用いて患者および医療従事者の発生率を算出し、疫学的な関連性について解析を行った。同時に、ウイルス培養陽性検体と市中で流行していたインフルエンザの検体について、ノイラミニダーゼ遺伝子およびヘマグルチニン遺伝子の配列を決定し、クラスター解析を行うことで、同一ウイルス株が検出された患者を特定した。

結果
患者 16 例、医療従事者 6 例からウイルスが検出され、発生率はそれぞれ 24%、11%であった。院内で感染した患者は 6 例であった。シークエンス解析により、病棟の 3 つのセクションで 3 個の独立したクラスターがあったことが確認された。さらに、少なくとも 2 個のクラスターにおいて、それぞれ医療従事者 1 名が感染源であることが判明した。

結論
疫学および微生物学的解析の結果から、医療従事者から患者へのインフルエンザの伝播が確認された。今後もインフルエンザシーズンでのアウトブレイクを予防するために、ワクチン接種率の向上、隔離策の強化、および手指衛生の改善が推奨される。

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監訳者コメント
インフルエンザ流行期に、インフルエンザが病棟内で発生する事例にしばしば遭遇する。この時、考えられる経路は複数あることが多く、特定することも容易ではない。しかしながら今回の事例では、3 クラスター中 2 クラスターで医療従事者が感染源であるとみられ、医療従事者の感染予防の重要性が改めて強調された。医療従事者の感染機会を減らす努力と日常の体調管理、ワクチン接種率のさらなる向上が求められるが、超過勤務や罹患した欠勤者の代替といった現実的な問題も存在するため、流行シーズンを迎える前から発生可能性と対処法について十分に検討されるべきである。

イタリア中部の血液透析ユニット 8 室における透析用水および透析液中の真菌の存在★★

Occurrence of fungi in dialysis water and dialysate from eight haemodialysis units in central Italy

G.F. Schiavano*, L. Parlani, M. Sisti, G. Sebastianelli, G. Brandi
*University of Urbino ‘Carlo Bo’ Urbino, Italy

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 194-200


背景
透析液の真菌汚染は、特に血液透析患者では免疫系が低下しているため、治療上重大な問題をもたらすことがある。

目的
イタリア中部の地域の血液透析ユニット 8 室において、透析用水および透析液中の真菌の存在、分布、および種類について調査すること。

方法
イタリア腎臓病学会(Italian Society of Nephrology)のガイドラインに従い、1 年間にわたって血液透析回路の様々な部位から検体を採取した。真菌の分離・同定は ISTISAN method Report(2007 年 5 月および 2008 年 10 月)に従った。

結果
分析した 976 検体中 96 検体で糸状菌の増殖が、28 検体で酵母の発育が、6 検体で糸状菌・酵母両方の発育が認められた。糸状菌の菌種は多岐にわたっており、26 属(このうち種のレベルまで同定されたのは 15 種)が含まれ、中には芽胞を観察できず、形態的に菌種を決定できないもの(mycelia sterilia)もあった。これらの多くは日和見病原体として知られているものであった。クラドスポリウム(Cladosporium)属が最も多く認められ(39%)、次いでアルテルナリア(Alternaria)属、トリコフィトン(Tricophyton)属の順であった。処理水および標準透析液の真菌数はいずれも閾値未満(10 cfu/mL 未満)であり、質的にはイタリアのガイドラインに準拠したものであったが、超純粋透析液のサンプルの 10.9%は 1 種類から数種類の真菌に汚染されており、ガイドラインに違反していた。

結論
血液透析回路から種々の日和見真菌が検出されたことから、透析用水、透析液の真菌について微生物学的な分析を行い、確認する重要性が示された。

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監訳者コメント
透析液の微生物学的な安全性とその質の担保は、重要かつ普遍的な課題である。これまでにも多くの検討がなされ、国内でも「日本透析医学会:透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準 2008」や「日本臨床工学技師会:透析液清浄化ガイドライン」で透析液中の細菌数およびエンドトキシン値の厳格な管理について目標が定められている。しかしながら真菌についてはこれらでは言及がなく、国際的にも目標を定めている国はまだ少数である。今回の検討は、真菌汚染について従来とは異なった認識をもつ必要性を示している。国内でも真菌汚染に関する研究と対策が進むことを望む。

急性期病院の 8 病棟におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による空気および表面の汚染パターン

Air and surface contamination patterns of meticillin-resistant Staphylococcus aureus on eight acute hospital wards

E. Creamer*, A.C. Shore, E.C. Deasy, S. Galvin, A. Dolan, N. Walley, S. McHugh, D. Fitzgerald-Hughes, D.J. Sullivan, R. Cunney, D.C. Coleman, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 201-208


背景
病院の空気および環境表面からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が回収されることがあり、これが患者への伝播リスクとなる可能性がある。

目的
患者および環境からの集中的なサンプル採取を実施し、空気および環境表面から回収された MRSA 分離株と患者から回収された MRSA 分離株との関連について調査すること。

方法
2010 年から 2011 年に 700 床の 3 次ケア病院の 8 病棟において、患者とその環境を対象とした前向き観察研究を実施した。全病室で患者、空気、表面のサンプル採取を実施するとともに、より集中的な環境サンプリングを高度治療室(high-dependency bay)で 1 日の既定の時間に行った。DNA マイクロアレイプロファイリングと spa タイピングにより、分離株の遺伝的関連を明らかにした。

結果
MRSA が回収されたのは、患者 706 例中 30 例(4.3%)、および空気サンプル 132 件中 19 件(14.4%)であった。患者と空気サンプルの両方で MRSA が認められたのは 132 件中 9 件(6.8%)であった。高度治療室で MRSA が回収されたのは、患者 161 例中 12 例(7.4%)、空気サンプル 32 件中 8 件(25%)、および環境表面サンプル 644 件中 21 件(3.3%)であった。MRSA 陽性患者が入室していない病室の空気サンプルから MRSA が分離されたのは、132 件中 10 件(7.6%)であった。患者の人口統計学的データと、spa タイピングおよび DNA マイクロアレイプロファイリングを組み合わせた評価により 4 つの伝播クラスターの存在が示唆され、患者分離株と環境分離株との間に極めて密接な関連があると考えられた。

結論
空気サンプリングからは MRSA が高い頻度で認められ、特に高度治療室で顕著であった。環境および空気サンプリングと、患者の人口統計学的データ、spa タイピング、および DNA マイクロアレイプロファイリングとを組み合わせて評価することによって、クラスターの存在が示された。

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監訳者コメント
MRSA が空気感染する可能性のある病原体であることは CDC の環境のガイドラインでも指摘されているが、問題はその頻度であろう。そのほとんどは接触伝播による濃厚な菌量の移行に伴うものである。また、こうした常在性のある菌を全く排除することも難しいことから、床などの療養環境は定期的な低水準消毒薬入りの洗浄剤による清掃が適しており、高頻度接触部位については耐性菌に合わせて頻度や使用するケミカルを配慮する必要がある。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に対する抗菌薬による除菌療法の実施時期の改善:記述的説明

Improving the timeliness of meticillin-resistant Staphylococcus aureus antimicrobial decolonization therapy administration: a descriptive account

H.L. Brooks*, J. Hodson, S.J. Richardson, L. Stezhka, M.J. Gill, J.J. Coleman
*University Hospitals Birmingham NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 209-215


背景
患者にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌が確認された場合は、抗菌薬による適切な除菌療法を適時に実施することが重要である。Clinical Decision Support(CDS)を組み入れた Computerized Provider Order Entry(CPOE)が、その改善に寄与する可能性がある。

目的
患者の入院から MRSA 除菌のための抗菌薬療法を実施するまでの平均期間の変化を、CPOE の利用を含む、国および当院の種々の感染制御介入との関連と併せて評価すること。

方法
Prescribing Investigation and Communications System(PICS)は、1998 年に英国の大規模大学教育病院で初めて導入された CPOE システムである。当院で開発した PICS から、入院時期と MRSA 除菌のための初回抗菌薬投与の実施時期に関するデータを抽出した。2006 年 1 月から 2012 年 3 月のデータを後向きに抽出した。

結果
2006 年から 2012 年には当院および国による様々な重要な介入が実施された。特に 2007 年 12 月には、MRSA 除菌のための抗菌薬療法の自動処方システムが導入された。入院から MRSA 除菌のための抗菌薬療法が実施されるまでに要する期間には、研究期間中に 1 年あたり 15.0%の有意な減少が認められた(95%信頼区間 11.1% ~ 18.7%、P < 0.001)。

結論
入院から MRSA 除菌のための抗菌薬療法実施までの期間の短縮に対しては、CPOE システムにおける特定の項目を実施したことなどを含む、多くの因子が寄与していたと考えられる。MRSA 保菌陽性への迅速な対処によって MRSA 拡散の可能性が低下し、それにより病院内の MRSA 保菌率の減少と患者アウトカムの改善がもたらされると考えられる。

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監訳者コメント
MRSA の慢性保菌者に対する除菌療法が、本当に恒常的な除菌が効果的な割合で可能なのかどうかについても議論する必要があろう(一過性の菌量減少には貢献するだろうが)。また除菌に使用する抗菌薬の耐性化の問題も課題である。

歯学部学生におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の高い保菌率

Higher prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus among dental students

F.J. Martínez-Ruíz*, T.Y. Carrillo-Espíndola, J. Bustos-Martínez, A. Hamdan-Partida, L. Sánchez-Pérez, A.E. Acosta-Gío
*Universidad Nacional Autónoma de México, Mexico

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 216-218


歯学部学生のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌率は他学部学生と比較して高いという仮説を検証するため、患者への曝露歴が 5 年間から 6 年間の歯学部学生 100 名および他学部学生 81 名を対象として、鼻腔および咽頭の MRSA 保菌状況を PCR 法により検査した。181 名の全学生が臨床的に健康であり、抗菌薬使用者はいなかった。MRSA 保菌者は、歯学部学生(100 名中 20 名)のほうが他学部学生(81 名中 5 名)よりも有意に多かった(オッズ比 4.04、95%信頼区間 1.6 ~ 12.6、P = 0.0033)。同様に、歯学部学生の携帯電話のほうが MRSA 定着率が高かった(それぞれ 100 台中 8 台、81 台中 1 台)。パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)により、すべての MRSA 分離株を、疫学的に重要な菌株と識別することができた。これらの結果から、歯学部学生は MRSA に職業曝露していることが示唆される。

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監訳者コメント
まるで鶏と卵の水掛け論争である。

病院で使用している液体石けんのラオウルテラ・プランティコーラ(Raoultella planticola)による汚染

Contamination of liquid soap for hospital use with Raoultella planticola

L. García-San Miguel*, J.A. Sáez-Nieto, M.J. Medina, S. López Hernández, I. Sánchez-Romero, B. Ganga, Á. Asensio
*Hospital Puerta de Hierro, Spain

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 219-220


本稿では、病院で使用している液体石けんのバッチのラオウルテラ・プランティコーラ(Raoultella planticola)による汚染について報告する。本菌は、自動同定システムによってその特性を明らかにすることができないため、最初は肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)と同定された。病院環境で使用する化粧品の検査を強化する必要がある。感染リスクが極めて高い入院患者の手指衛生には抗菌性石けんの使用が推奨される。R. planticola は、自動同定システムでは誤ってクレブシエラ(Klebsiella)属菌に分類されることが多いため、本菌による感染の発生率は不明である。

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監訳者コメント
Raoultella 属菌はグラム陰性桿菌、莢膜をもつ非運動性の細菌であり、10℃で発育する特徴を有している。Raoultella 属には Klebsiella 属に分類されていたR. ornithinolyticaR. planticolaR. terrigena の3 菌種がある。R. planticola(旧名Klebsiella planticola)は水、土壌などの環境中から分離され、ヒトでは消化管分泌物、創傷、尿から分離される。4℃で発育する点を除き、一般的な性状では K. oxytoca と類似する。また新生児からの分離報告例があり、疾患との関連性があることを示す報告もある。

能動的安全装置付き針は飛散による汚染を引き起こすか?★★

Do active safety-needle devices cause spatter contamination?

M. Roff*, S. Basu, A. Adisesh
*Health and Safety Laboratory, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 86, 221-223


血液・体液への曝露は医療環境における職業上の危険である。針刺し事故による血液媒介ウイルス伝播の可能性については広く研究されているが、安全装置付き針・シリンジからの飛散による汚染を介するウイルス伝播リスクは十分に研究されていない。本報では、使用頻度が高い3種類の安全装置付き針によるウイルス伝播リスクについて調査するとともに、これによって新たに重大な危険がもたらされる可能性を提起する。このような危険を定量的に評価するため、およびシリンジの取り外しや安全装置作動の後の飛散による汚染が最も小さい安全装置付き針はどのような種類のものであるかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

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監訳者コメント
バネ構造で針を動かすときに,血液成分が飛沫する可能性を本論文は指摘している。すなわち針刺しは防ぐことができても血液曝露をゼロにはできない可能性があるのだ。報告者は蛍光剤を用いてこの実証を試みている。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.