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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

血液培養の汚染菌

Blood culture contaminants

S. Dawson*
*Great Western Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 1-10


血液培養は必須の診断ツールである。しかし、その汚染が患者のケアに影響を及ぼし、入院期間の延長、検査の増加、および不適切な抗菌薬使用をもたらすことがある。本研究の目的は、血液培養汚染率に影響を及ぼす要因に関する文献をレビューすることである。Medline および CINAHL を用いて、血液培養汚染に関する文献の包括的な検索を行った。病院や診療部門は職員を対象とした、無菌操作などの血液培養の手技に関するプロトコールを用意すべきである。培養プロセスでのいくつかの重要な要因によって汚染率が低下し得ることが、複数の研究から示されている。そのような要因には、プロトコール遵守、血管内留置カテーテルからではなく末梢静脈穿刺経路によるサンプル採取、滅菌手袋の使用、消毒薬による血液培養ボトル口の洗浄、他の血液チューブへの分注前の血液培養ボトルへの接種、採血チームによるサンプル採取、汚染率のモニタリング、採血担当者への個人レベルの汚染率データのフィードバック、および汚染が発生した採血担当者の再研修などがある。皮膚消毒が推奨されているが、アルコール含有製剤に有益性があること以外には確実なエビデンスがないため、最も効果の高い消毒薬に関しては依然として異論がある。結論として、病院は自院の血液培養汚染率の最小化を図ることを目標とすべきであり、定期的に汚染率をモニタリングし、汚染率 3%以下を目指すべきである。

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監訳者コメント
関連する資材として日本臨床微生物学会編集の「血液培養検査ガイド」(南江堂、東京、2013)があるので、参考にしていただきたい。

妊娠中のウイルス感染:医療従事者へのアドバイス

Viral infections in pregnancy: advice for healthcare workers

T.L. Chin*, A.P. MacGowan, S.K. Jacobson, M. Donati
*North Bristol NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 11-24


背景
医療従事者は、患者のケアによって感染症に曝露される可能性がある。一部の感染症では、妊娠が母親と胎児に対して特異的な問題をもたらすことがある。

目的
英国の医療従事者の妊娠中に特異的なリスクをもたらすウイルス感染、すなわちヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B 型肝炎ウイルス、C 型肝炎ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトパルボウイルス B19、サイトメガロウイルス、風疹、麻疹、エンテロウイルス、ムンプス、およびインフルエンザについて考察すること。院内伝播のエビデンス、妊娠に特有の臨床的特徴、および就業している妊娠中の医療従事者を保護するための推奨事項についても述べる。

方法
「nosocomial(院内)」、「occupational(職業)」、および「healthcare workers(医療従事者)」を含む各ウイルス感染のキーワードリストに基づいて、Medline、EMBASE、および PubMed の検索を実施した。特定した論文の引用文献リストの文献を用いて、関連情報を調査した。

結果
医療環境でこれらの種々の感染がもたらすリスクは高いとするエビデンスは、アウトブレイクを除いて弱い。その理由として、保護のための標準的な感染制御策が実施されていること、または市中曝露のリスクのほうが大きいことが考えられる。妊娠中の医療従事者に対して、両環境での防御行動についてアドバイスを与えるべきである。想定される介入としては、ワクチン接種や、曝露リスク低下のためのユニバーサルプリコーション、感染制御、および配置転換などがある。

結論
妊娠中の医療従事者を保護することは、本人、出生前ケア提供者、および雇用者の責任であり、その実現はリスク認識および曝露前後の介入によって可能となる。曝露が生じた場合、または医療従事者が感染症を発症した場合は、専門家によるアドバイスが直ちに必要である。

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監訳者コメント
論文調査による報告である。医療従事者たる者、まず妊娠を希望する女性はワクチンで予防可能な感染症については抗体価検査を受け、抗体がないか十分でない場合には事前に免疫を獲得しておくべきである。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染多発時の入念な清掃とその後の過酸化水素による汚染除去の効果

Effectiveness of deep cleaning followed by hydrogen peroxide decontamination during high Clostridium difficile infection incidence

E.L. Best*, P. Parnell, G. Thirkell, P. Verity, M. Copland, P. Else, M. Denton, R.P. Hobson, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 25-33


背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染は依然として感染制御における課題であり、環境中の芽胞による汚染や不十分な清掃によって伝播リスクの上昇が見込まれる場合には、特に問題となる。

目的
C. difficile 感染多発後に実施した、脳卒中リハビリテーション部門全体の入念な清掃と過酸化水素による汚染除去の長期的な効果を明らかにすること。

方法
スポンジ拭き取りによる広範囲に及ぶ C. difficile の環境サンプリング(各回 342 か所)を、塩素系洗浄剤を用いた入念な清掃の前後、過酸化水素による汚染除去の直後、および過酸化水素による汚染除去の 19 日後と 20 週後に実施した。C. difficile 分離菌株に対して、PCR 法によるリボタイピングおよび multi-locus variable repeat analysis(MLVA)を行った。

結果
C. difficile の回収率はベースライン時 10.8%、入念な清掃後 6.1%、過酸化水素による汚染除去の直後 0.9%、19 日後 0%、および 20 週後 3.5%であった。入念な清掃後に回収された C. difficile のリボタイプは、それに先立つ10か月間に脳卒中リハビリテーション部門で認められた C. difficile 感染症例のものと一致した。同様に、過酸化水素による汚染除去の 20 週後に陽性と判定された 12 か所中 10 か所でも、過酸化水素による汚染除去後初めての C. difficile 感染症例からの分離株と同一の C. difficile リボタイプ(002)および MLVA パターンを示した。C. difficile 感染の発生は、介入前の 20 件(脳卒中リハビリテーション部門における 10 か月間[2011 年 1 月から 10 月]の件数)から介入後には 7 件(その後の 10 か月間の件数)に減少した。

結論
塩素系洗浄剤を用いた入念な清掃後の過酸化水素による環境中の C. difficile 汚染の除去効果は、極めて高かった。長期追跡から、C. difficile 感染症状を有する患者は周囲環境を急速に再汚染する可能性があることが示された。過酸化水素による汚染除去の意義を明らかにする際には、長期的な費用対効果の評価も行うべきである。

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監訳者コメント
2剤による清掃効果と、例えば次亜塩素酸で2回行った場合の比較などもみてみたいものである。

病院廊下の真菌による空気汚染の 10 年間の調査:真菌曝露リスクを予測するための信頼できる指標は何か?

A 10-year survey of fungal aerocontamination in hospital corridors: a reliable sentinel to predict fungal exposure risk?

G. Reboux*, H. Gbaguidi-Haore, A.P. Bellanger, F. Demonmerot, K. Houdrouge, E. Deconinck, X. Bertrand, L. Millon
*University Hospital Jean Minjoz Besançon, France

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 34-40


背景
侵襲性真菌感染症は、血液内科部門に入院中の高リスク患者にとって脅威である。フランスのガイドラインは、真菌による空気汚染のモニタリングを 3 か月ごとに行うことを推奨している。Besançon 大学病院では 2002 年以降、数棟を新築するなどの拡張が進められた。その結果、環境調査が強化され、現在は週 1 回の頻度で実施されている。

目的
真菌曝露と侵襲性真菌感染症リスクの評価指標として、血液内科部門の廊下および病院内の主廊下での真菌による空気汚染の測定の意義について、後向きに評価すること。

方法
血液内科部門の廊下と病院内の主廊下のそれぞれ同位置で、10 年間にわたって週 1 回、吸引による空気サンプル採取を行い、合計 2,706 件を調査した。すべての真菌の同定を行った。日和見菌種のレベルがピーク(> 40 コロニー形成単位/m3)に到達した場合、および予防措置を計画した場合には、血液内科部門と院内衛生部門に対して組織的に警告を行った。2007 年以降、フランス衛生当局に対して侵襲性アスペルギルス症の全症例を報告しいる。Cuzick 検定、Mann-Kendall 傾向検定、自己相関、および Spearman の順位相関検定を用いてデータの統計解析を行った。

結果
10 年間のサーベイランス期間中に、病院内の主廊下でアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)のピークが 12 回認められ、血液内科部門の廊下では A. fumigatus 汚染が 1 年間で最大 6 回検出された。真菌曝露を抑制するために、換気システムと暖房の再点検、洗浄・消毒の強化、および明確な指示書の作成を行うことを決定した。

結論
A. fumigatus の検出と侵襲性アスペルギルス症との間に有意な関連は認められなかった。週 1 回の調査は、医療従事者の警戒心の向上に寄与した。それにもかかわらず、2007 年以降も 58 例の侵襲性アスペルギルス症が確認されている。

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監訳者コメント
設備は老朽化や周辺の改築工事などの影響も受けるため、アスペルギルス対策には総合的な視点が重要である。

アイルランドにおける初めての OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)アウトブレイクに関する調査

Investigation of the first outbreak of OXA-48-producing Klebsiella pneumoniae in Ireland

C. Wrenn*, D. O’Brien, D. Keating, C. Roche, L. Rose, A. Ronayne, L. Fenelon, S. Fitzgerald, B. Crowley, K. Schaffer
*St Vincent’s University Hospital & UCD School of Medicine and Medical Science, Ireland

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 41-46


背景
欧州では、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科(CPE)の検出が増加している。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は 2010 年 11 月、アイルランドの CPE 発生状況を「散発的」に分類した。

目的
アイルランドの 3 次紹介病院で、初めての OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるアウトブレイクが発生した。本事例の疫学的・分子疫学的解析について報告する。

方法
臨床検体およびスクリーニング検体から、16 株の OXA-48 産生 K. pneumoniae が検出された。これらの分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)および multi-locus sequence typing(MLST)により分析した。

結果
タイピング解析から、2 つのアウトブレイク株が病院内で蔓延していることが判明した。一方は外科の患者、もう一方は内科の患者に認められたが、「内科株」である ST13 は、すでに世界中に拡散していることが判明しているクローンであった。しかしながら「外科株」である ST221 は、OXA-48 保有株としてこれまで報告されたことがなかった株であった。

結論
外科病棟でのアウトブレイクは、厳格な感染対策を実施することによって制御に成功したが、「内科株」である OXA-48 K. pneumoniae 保菌患者の断続的な発生はその後も持続した。今回のアウトブレイクの経験は、ダブリン地域では OXA-48 K. pneumoniae が低水準ながら地域的な流行を生じていることを示していた。

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監訳者コメント
腸内細菌科の細菌がカルバペネム系に耐性を獲得する機序には、KPC や NDM-1 のほか、オキサシリナーゼ(OXA)産生があるが、OXA 中では OXA-48 が多いとされる。OXA-48 産生株は、カルバペネム系耐性であるにもかかわらず、その MIC があまり高くない場合がみられ、さらに基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生を伴っていなければ第三世代セファロスポリンに対する MIC も低い。このため薬剤感受性の結果では気づかれないまま、伝播が生じてしまう可能性がある。わが国で初めて検出されたのは 2012 年とされるが、東南アジアからの輸入例であり、OXA-48 産生 K. pneumoniae と大腸菌(Escherichia coli)を同時に有していた(Jpn J Infect Dis 2013;66:79)。本報告においては、初出例ではカルバペネマーゼ産生が疑われなかった点、最終的に封じ込めを確認できなかった点、さらに認識されないまま地域的な流行を生じているという点は、重大な課題として認識されねばならない。

患者から 24 時間以内にカルバペネマーゼ産生腸内細菌科の保菌を検出するための新規スクリーニング法

New screening method to detect carriage of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in patients within 24 hours

N.M. Hanemaaijer*, R.H.T. Nijhuis, B.J. Slotboom, E.M. Mascini, A.A. van Zwet
*Department of Medical Microbiology and Medical Immunology, Rijnstate, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 47-49


カルバペネマーゼ産生腸内細菌科(CPE)保菌患者を迅速に特定することは、病院内での CPE の侵入および伝播の予防に必須である。本稿では、入院後 24 時間以内に CPE 保菌患者を検出するための新規スクリーニング法の成績について報告する。高リスク患者の直腸および咽頭スワブを採取して一晩培養し、DNA 分離後にリアルタイム ligation-mediated PCR 法を用いて保有率が高い CPE 遺伝子(KPC、NDM、OXA-48、VIM、IMP)の検査を行った。14 か月間で 454 例のスクリーニングを実施し、6 例から CPE が検出された(保菌率 1.3%)。

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監訳者コメント
本検討は、「search and destroy」と形容されるような非常に厳格な感染予防策を実施し、国外の病院に入院歴のある患者すべてについて保菌スクリーニングを行っているオランダで行われた。CRE 検出患者は南欧やアジア、アフリカで入院歴があり、KPC、OXA-48 陽性であった。国外からの輸入の実態・頻度を明らかにし得たのは、国策として上記の体制を取っているオランダゆえのことかもしれない。迅速かつ確実な伝播予防につながったと予想するが、今後、検査でカバーできる微生物の範疇、検出能の改良、費用といった課題も有するであろう。前項のアイルランドの論文と比較して読むと、CRE の状況と対策の違いをより明確に把握できる。

ドールセラピー用の人形:患者間の交差汚染源か?

Empathy dolls: are they a source of cross-contamination between patients?

B. Subramanian*, H. Parsons, P. Finner, R. Townsend
*Sheffield Teaching Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 50-53


イングランドの教育病院の高齢者整形外科病棟でウェルシュ菌(Clostridium perfringens)の同一株による人工関節感染症患者 2 例のクラスターが認められた後に、感染制御の実施状況に関して調査が行われた。その結果、認知症患者の興奮を軽減するためにドールセラピー用の人形が用いられていることが判明した。この人形は、感染予防・制御チームへの相談なしに導入されていた。種々の温度で洗浄する前後での人形の環境培養検査を実施し、存在する微生物の種類と数が明らかになった。この検査により、当病棟でドールセラピー用の人形の最適な汚染除去戦略および人形の安全な使用に関する指針を作成できた。

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監訳者コメント
標準予防策では小児科領域で使用される玩具については洗浄・消毒しやすいものを選択し、ふわふわした布製のぬいぐるみなどの患児間での共有は避けるよう推奨されている。
近年、高齢者の認知症患者のケアに人形を用いた「ドールセラピー」が注目されている。本論文ではウェルシュ菌による人工関節感染を発症した認知症患者 2 名が同じ人形を共有していたことから、その人形の管理方法を検討したもので、80℃で 10 分間の洗浄後は微生物は検出されなかったが、65℃で 10 分間の洗浄後では微生物が残存していた(特に腸球菌属)。著者らは今後、高齢認知症患者におけるこのような玩具の使用が増加することを予想し、その際には十分に院内感染対策に留意し、マニュアルを作成するよう呼びかけている。
なお 80℃で洗浄した場合、人形の髪質が変わってしまったことがさりげなく書かれており、その後どうなったのか、若干気になる結果ではあった。

カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)による院内カンジダ血症:リスク因子、抗真菌薬感受性、および転帰

Nosocomial Candida parapsilosis candidaemia: risk factors, antifungal susceptibility and outcome

Y. Hirai*, S. Asahata, Y. Ainoda, A. Goto, T. Fujita, K. Totsuka
*Tokyo Women’s Medical University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 54-58


カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)によるカンジダ血症患者の 30 日死亡と関連するリスク因子を明らかにするために、2000 年から 2010 年の後向き解析を実施した。C. parapsilosis による院内カンジダ血症患者 51 例を解析の対象とした。血液培養由来の全分離株が、ミカファンギンおよびフルコナゾール感性であった。全死亡率は 23.5%であり、極めて重度の合併症として、心内膜炎(5.9%)および眼内炎(5.9%)が認められた。多変量解析から、死亡と関連するリスク因子は APACHE II スコア >25(オッズ比[OR]43.9)および心血管補綴材留置(人工弁または人工血管)(OR 14.6)であった。心血管補綴材を留置している C. parapsilosis によるカンジダ血症の患者に対しては、速やかな外科的除去を検討すべきである。

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監訳者コメント
近年「non-albicans Candida」と呼ばれるカンジダ属が増加している。その中で C. parapsilosis は比較的感受性が良好とされ、一般的にフルコナゾールに感性を示し、ミカファンギンにも感性を示すが、時に治療不良例がみられる。本論文は C. parapsilosis による血流感染症患者を生存群・死亡群に分けて死亡のリスクを検討したもので、特に人工弁・人工血管が留置されていた場合に死亡のリスクが高かった。カンジダ属に限らず血流感染症においては常に人工物(ペースメーカーや人工関節など)の除去は念頭に置いておかなくてはならない。

病院配水システム中の非結核性抗酸菌の 3 年間にわたるサーベイランスおよび分子的特性

Surveillance and molecular characterization of non-tuberculous mycobacteria in a hospital water distribution system over a three-year period

B. Crago*, C. Ferrato, S.J. Drews, T. Louie, H. Ceri, R.J. Turner, A. Roles, M. Louie
*University of Calgary, Canada

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 59-62


アルバータ州南部の病院で、病院配水システム中の非結核性抗酸菌のサーベイランスを 3 年間にわたって実施した。研究期間中に、非結核性抗酸菌はいずれの取水サンプルにも認められなかったが、15 か所の給水サンプル 183 件中 106 件(58%)に認められた。2 種の非結核性抗酸菌、すなわちマイコバクテリウム・ゴルドナエ(Mycobacterium gordonae)(183 件中 88 件)とマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)(183 件中 34 件)が同定され、いずれも単一クローンであることが確認された。医療施設ではこれらの影響を受けやすことから、飲用水源由来の非結核性抗酸菌が患者の健康に及ぼすと考えられる影響を最小限にするように、注意を払う必要がある。

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監訳者コメント
病院配水システムの取水側と給水側(水道蛇口側)の非結核性抗酸菌の汚染状況を 3 年間にわたって調査した結果である。取水側から非結核性抗酸菌(NTM)が検出されておらず、2 種類ともに同一クローンであったことは、末端(蛇口)から汚染が逆行性に起こり、システム全体へ汚染が広がった可能性を示唆する。さらに、手動混合水栓が自動水洗によりも有意に NTM が検出されていることから、手動水栓での NTM 汚染の危険性を示唆している。しかしながら、一旦汚染されるとバイオフィルム形成により容易に除去することは困難である。NTM による院内感染の報告はまれではあるが、本研究の結果から、異なる病棟においても同一の配水システムで複数例が発生した場合には、集団発生(定着や感染症)の可能性も念頭におかなければならないことを示唆している。

病院の医療従事者の髭における細菌の生態:横断研究

Bacterial ecology of hospital workers’ facial hair: a cross-sectional study

E. Wakeam*, R.A. Hernandez, D. Rivera Morales, S.R.G. Finlayson, M. Klompas, M.J. Zinner
*Brigham and Women’s Hospital, MA, USA

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 63-67


医療従事者の髭に院内感染病原体が存在するかどうかは不明である。男性医療従事者 408 名の顔面の細菌保菌率を、髭のあり、なしで比較した。髭のある医療従事者のほうが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(41.2%対 52.6%、P = 0.02)およびメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(2.0%対 7.0%、P = 0.01)の保菌率が低かった。グラム陰性菌の保菌率はすべての医療従事者で低値であり、髭のタイプによる保菌率の差は認められなかった。全般的に、男性医療従事者の保菌状態は髭のあり、なしで同等であった。しかし、特定の細菌種の保菌率は、髭のない職員のほうが高かった。

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監訳者コメント
髭の有無で医療従事者の顔面への細菌の保菌率を調査したもので,全体での差はなかったが、黄色ブドウ球菌とメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)だけは、髭があるほうがかえって菌数が有意に少ない結果となった。その理由として、毎日の髭剃りの動作は、少なからず皮膚表面に小さな傷をつくり、その部位にブドウ球菌類をつきやすくしているというもので、ちょうど外科手術における剃毛の場合に似ている。また、髭があると検体サンプリングが実施しにくいため、見かけ上低めにでている可能性もあるとしている。白衣やネクタイが感染源となりうるとの研究はあるが、髭と院内感染との関連性については不明で未解決である。

監訳者注:
髭のタイプ:本研究では、髭なし、顎髭、ヤギ髭、口髭、およびその他の髭に分類している。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.