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看護師の感染制御行動の主要な促進因子である汚れと嫌悪感:解釈的な定性的研究

Dirt and disgust as key drivers in nurses’ infection control behaviours: an interpretative, qualitative study

C. Jackson*, P. Griffiths
*King’s College London, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 71-76


背景
感染予防は依然として医療システムにおける重要な課題である。しかし、感染症の伝播を減少させるために、明確な方針や科学的に証明された技術を提供するための多くの取り組みが行われているにもかかわらず、医療従事者の信念や実践は常に科学的根拠と一致しているわけではない。

目的
看護師の感染予防行動を分析し、解釈する。

方法
半構造化面接による解釈的な定性的アプローチを採用した。急性期病院に勤務する正看護師 20 名を対象として面接を実施した。フレームワーク手法を用いて分析を行った。

結果
本稿は、「汚れからの保護」という主題に焦点を当てたものである。今回の知見から、感染と汚れは明確に区別されていることが示された。汚れ、特に誰のものか不明な汚れと接触することへの恐怖は、脅威の軽減のための行動の主要な促進因子であった。その患者になじんでいる場合は、必要な防御行動は減少した。これらの行動は、まず感染予防戦略の一環として現れるものであり、一義的には、初対面の際は「汚れている」とみなした患者に対する自己防衛の一形態であった。

結論
行動は、感染への合理的な対応と必ずしも一致するわけではなく、汚れへの対応である可能性がある。科学的な知識・行動の欠如への対処を意図しただけのプログラムでは、汚れに関する現在の社会的構造と汚れによって引き起こされる対応を勘案しない限り、期待した目標に到達することは困難である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
感染予防対策のコンプライアンスの低さは感染対策に従事する人々の大きな悩みであるが、本論文で明らかになったことは「自分に対する汚染→感染への恐怖」が感染対策手技の動機となっていることであり、「自分を守る」ことが優先され、科学的根拠に基づく知識による行動ではない。本来の感染対策の目的である「患者を無用な感染から守る」ことを優先的課題として感染対策が現場で実施されるようするには、現在の研修教育と訓練とは別のアプローチを行う新たなツールの開発が必要である。

監訳者注:
半構造化面接(semi-structured interview):大まかな方向性を決めたインタビューガイドに従って質問を進めていく面接方式。対話の流れに合わせて質問を変化させることかでき、柔軟にその意見を聞き取ることが可能となる(鈴木淳子:調査的面接の技法、第 2 版、ナカニシヤ出版、京都、2005)。

iPad の消毒:効果的な方法の評価

Disinfecting the iPad: evaluating effective methods

V. Howell*, A. Thoppil, M. Mariyaselvam, R. Jones, H. Young, S. Sharma, M. Blunt, P. Young
*The Queen Elizabeth Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 77-83


背景
医療環境でタブレット型コンピューターが使用される機会が徐々に増加しているが、これらが院内感染病原体を保有している可能性がある。臨床環境で使用される iPad の効果的な消毒方法については、ほとんどデータがない。

目的
アップル社の iPad に損傷を与えることなく汚染除去をするための最も効果的な方法を特定すること、および残留効果の持続時間を明らかにすることを、本研究の目的とした。

方法
iPad を微生物含有ブロス(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌[meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA]、バンコマイシン耐性腸球菌[vancomycin-resistant enterococcu;VRE]、およびクロストリジウム・ディフィシル[Clostridium difficile])で汚染させた後、臨床検査室で下記の 6 種類の消毒薬含浸ワイプを用いて iPad の消毒効果を調べた。Sani-Cloth CHG 2%※1(クロルヘキシジン 2%、アルコール 70%)、Clorox※2、Tristel※3、Trigene※4、石けんと水、および消毒薬を含浸していない布。残留活性を調べるため、消毒後の iPad を再度汚染させた。また、Sani-Cloth CHG 2%を用いて 480 回消毒した後に、盲検化した被験者が iPad の機能と外観を分析した。

結果
C. difficile を除くと、Sani-Cloth CHG 2%および Clorox の含浸ワイプは MRSA や VRE に対する効果が最も高く、アップル社が推奨する消毒薬を含浸していない布よりも有意に良好であった(P ≦ 0.001)。Sani-Cloth CHG 2%で iPad を拭き取り後 6 時間を超えても、汚染を繰り返しさらなる消毒は行わなかったにもかかわらず、高い残留抗菌効果が認められた。Sani-Cloth CHG 2%含浸ワイプを繰り返し使用しても、iPad の機能や外観は損傷を受けなかった。

結論
Sani-Cloth CHG 2%含浸ワイプは iPad の MRSA および VRE の消毒に効果的であり、残留抗菌効果があり、iPad の損傷を引き起こさない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
近年、環境整備において消毒剤含浸の環境清拭用ワイプが注目され、CHG、四級アンモニウム塩、アルコール、過酢酸、二酸化塩素など様々な消毒剤を含浸させたものが販売されている。本研究は医療現場で頻繁に使用されるようになったアップル社の iPad の消毒についての検討である。日本では四級アンモニウム塩とアルコールが主流であり、過酢酸入りのワイプもみられる。今後、日本でもこれらの環境整備用のワイプが増えてくることが予想される。

監訳者注:
※1 Sani—Cloth CHG 2%:2%クロルヘキシジングルコン酸塩に 70%イソプロピルアルコールを含むワイプで、アルコールの即効性と CHG の残存性を兼ね備えている。
※2 Clorox wipes:イソプロピルアルコールに四級アンモニウム塩を含浸させたワイプ。
※3 Tristel Sporicidal Wipe system:殺芽胞効果のある二酸化塩素を主体にした消毒剤であるが、3 種類のワイプから構成され、予備拭き取り(清浄化)、本拭き取り(消毒剤)、最終拭き取り(消毒剤の拭き取り)の 3 段階で消毒を行う。
※4 Trigene ADVANCE Wipes:①polymeric biguanide hydrochloride、②alkyl dimethyl benzyl ammonium chloride、③didecyl dimethyl ammonium çhlorideの 3 成分を含有する。①はCHG と同じビグアナイド系の殺菌消毒薬で、コンタクトレンズの殺菌洗浄剤にも使用されている。②③は四級アンモニウム塩であり、環境清拭に頻繁に使用されている。これらが混合された含浸ワイプ。

医療関連感染の研究に対する資金提供:1997 年から 2010 年の英国の研究投資に関する系統的分析

Funding healthcare-associated infection research: a systematic analysis of UK research investments, 1997-2010

M.G. Head*, J.R. Fitchett, A.H. Holmes, R. Atun
*University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 84-91


背景
医療関連感染は、英国の保健上および経済的な大きな負荷の原因となっている。英国で資金提供を受けた医療関連感染の調査研究の件数や投資額の分析は、これまで実施されていない。

目的
医療関連感染の研究のために英国の施設に提供された研究資金の額を評価するとともに、資金提供を受けた研究と医療関連感染による臨床的・公衆衛生上の負荷との関連を評価すること。

方法
感染性疾患の調査研究に対して1997 年から 2010 年の間にどのように資金が提供されたかに関する情報を入手するため、データベースとウェブサイトの系統的検索を実施した。医療関連感染に強く関連する研究を特定し、資金提供を病原体ごと、疾患ごと、および研究のタイプによって示される研究開発のバリューチェーン※※ごとに分類した。

結果
全データセットに含まれる研究は 6,165 件、投資総額は 26 億ポンドであり、このうち明確に医療関連感染の研究に対して提供された資金は 297 件、5770 万ポンドであった(総額の 2.2%、感染症の研究総数の 2.1%)。医療関連感染関連プロジェクトのうち、45 件(1030 万ポンド)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、14 件(1070 万ポンド)は Clostridium difficile、2 件(30 万ポンド)は肺炎、103 件は外科感染症(1410 万ポンド)に焦点を当てたものであった。研究への資金提供額の平均値は 194,129 ポンド(標準偏差 429,723 ポンド)、中央値は 52,684 ポンド(四分位範囲 9,168 ~ 201,658 ポンド)であった。資金提供額の範囲は 108 ポンドから 5000 万ポンドであった。

結論
医療関連感染に対する研究投資は研究期間中に徐々に増加していたが、医療関連感染の公衆衛生上、経済的、および社会的負荷を考慮すると依然として低水準であった。院内肺炎、行動介入、経済分析、および抗菌薬耐性の新興病原体に関する研究に対しては、依然として十分な資金提供がなされていない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
わが国でも医療関連感染に関する研究は、臨床上あるいは公衆衛生学上の必要性に比し非常に少ない件数にとどまっている。そして各研究は大多数が小規模なものである。一方経済的、社会的な要求に対しても応えることができているとはいえない。本検討のように医療関連感染に関する研究を研究規模、資金の面から解析し、その妥当性を議論することは、わが国の本分野における研究の方向性を定めていくうえで応用可能であり、将来にわたって極めて重要といえるであろう。

監訳者注:
研究のタイプ(type of science):本稿では、前臨床研究、臨床研究(第 I ~ III 相)、製品開発研究、およびトランスレーショナル・リサーチの 4 種類に分類している。
※※バリューチェーン(value chain):もともとは米国の経営学者マイケル・E・ポーターがその著書で、企業の競争優位性を評価するために提起した概念であり、企業活動全体を細分化し、個々の活動が有する意義やコストを精査したうえで、全体的な価値を評価するという作業の枠組みのことを指す。本稿では単に、研究の一連の流れにおいての個々の研究ステップ(すなわち、上述の「研究のタイプ」)のことを指していると思われる。

消化器手術施行患者を対象とした手術前後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)スクリーニングの意義

Value of pre- and postoperative meticillin-resistant Staphylococcus aureus screening in patients undergoing gastroenterological surgery

Y. Takahashi*, Y. Takesue, M. Uchino, H. Ikeuchi, N. Tomita, T. Hirano, J. Fujimoto
*Hospital of Hyogo College of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 92-97


背景
術後の感染予防を目的としたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の積極的サーベイランスを支持するデータに関しては、依然として異論がある。

目的
消化器外科手術施行患者を対象とした MRSA スクリーニングの効果について調査すること。

方法
2 つの消化器外科病棟(A 棟と B 棟)で、PCR 法により鼻腔内 MRSA 保菌のスクリーニングを行った。鼻腔内保菌の状態(術前保菌および術後の獲得)ごとに、術後 MRSA 感染の発生を分析した。

結果
術前の MRSA 保菌率は A 棟で 9.7%、B 棟で 4.3%であった(P = 0.009)。術後の鼻腔内 MRSA 獲得は、それぞれ 16.2%、6.0%の患者で確認された(P < 0.001)。いずれの病棟でも、術前の鼻腔内保菌の有無別にみた MRSA 手術部位感染(SSI)発生率に有意差は認められなかった。術後の鼻腔内 MRSA 獲得率が高かった A 棟では、術後の鼻腔内獲得患者の MRSA 感染率は 26.8%であり、これは術前の MRSA 保菌患者、および入院中に保菌のなかった患者と比較して有意に高値であった。術後の鼻腔内 MRSA 獲得は、両病棟で MRSA 感染に関連する独立因子であった(A 棟でのオッズ比[OR]7.192、95%信頼区間[CI]2.981 ~ 17.352、B 棟での OR 5.761、95%CI 1.429 ~ 23.220)。

結論
術前の MRSA 保菌者を対象としたスクリーニング戦略により、MRSA SSI が抑制された。術後の鼻腔内獲得は MRSA 感染に影響を及ぼす有意な因子であり、スクリーニングの効果は病棟での術後の MRSA 獲得率により異なっていた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
周術期の MRSA 感染を予防するために、MRSA の新たな伝播・保菌をいかに少なくするかは極めて重要な課題である。本検討は、新規の MRSA の獲得が術後の SSI に結びつく具体的なデータを本邦から示すことができた貴重な報告といえる。アクティブサーベイランス自体の影響や、培養法に比した PCR 法によるスクリーニングのインパクトについてもっと明らかにすることができれば、より現実的な予防法の立案が可能になるであろう。

若年小児および高齢入院患者を対象としたウイルス性胃腸炎の季節的スクリーニング:意義はあるか?

Seasonal screening for viral gastroenteritis in young children and elderly hospitalized patients: is it worthwhile?

C.L. Borrows*, P.C. Turner
Torbay Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 98-102


背景
ウイルス性胃腸炎は、特に若年小児で高頻度にみられる。成人では特に高齢者において、受診のピーク期にはアウトブレイクが発生することがある。

目的
総合病院でウイルス性胃腸炎が疑われる若年小児および高齢患者を対象とした、マルチプレックス PCR 法を用いた下痢原性ウイルスの季節的スクリーニングの意義を評価すること。

方法
2012 年の冬季に、5 歳以下の小児 200 例の糞便サンプルを用いて、マルチプレックス PCR 法によりロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、およびノロウイルスのスクリーニング、およびイムノクロマトグラフィーによるロタウイルス/アデノウイルスの同時スクリーニングを行った。また、65 歳以上の成人入院患者 195 例から検査室に提出された下痢サンプルを同様にマルチプレックス PCR 法で評価した。

結果
PCR 法により、1 種類以上の下痢原性ウイルスが小児の 56%から検出された。最も多く認められたウイルスはロタウイルスであり、サンプルの 19%から検出された。腸管アデノウイルス(下痢に関連する)はサンプルの 5%から、非腸管アデノウイルスはサンプルの 14%から検出された。アストロウイルス、ノロウイルス、サポウイルスはそれぞれ 18%、12%、10%から検出された。イムノクロマトグラフィーによるロタウイルスおよび腸管アデノウイルスの検出率はわずかに低かったが、より迅速に結果が得られた。高齢成人入院患者では、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスがそれぞれ 15%、2.5%、1%から検出された。

結論
若年小児(ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス)および症状のある高齢成人(ノロウイルス)を対象とした冬季の迅速スクリーニングは、院内のウイルス伝播の抑制に寄与すると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
抄録ではわかりにくいが、本研究で検査が行われた 200 名の小児のほとんどは下痢や嘔吐などの有症状者だったようである。本結果をもって筆者らは冬季のスクリーニングが推奨されると結論づけているが、果たしてそうだろうか?
もう少し正確にいえば、本研究は 5 歳以下および 65 歳以上の消化器症状を有する患者の便を用いて各種下痢原性ウイルスの PCR 検査を行ったものである。つまり消化管感染症が疑われる患者の原因ウイルスの検査方法に関する研究であり、その結果について感染対策上の有効性の視点から議論するのは(本研究のデータからは)いささか無理がある。
今回の結果を実臨床上に応用するには、医療経済的な見地など、もう少し様々な角度からの議論が必要であろう。「検査でわかる」ことと、「それが臨床的に有効かどうか」の間には大きな溝があり、それを飛び越えるにはそれなりのデータと議論が必要である。

超音波ガイド下中心静脈カテーテル挿入は血流感染と関連しない:前向き観察研究

No association between ultrasound-guided insertion of central venous catheters and bloodstream infection: a prospective observational study

V. Cartier*, A. Haenny, C. Inan, B. Walder, W. Zingg
*University Hospitals of Geneva, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 103-108


背景
超音波ガイド下で中心静脈カテーテル(CVC)を挿入することによって、機械的合併症が減少し、挿入に要する時間が短縮するが、CVC 関連血流感染(CABSI)に対する影響については依然として異論がある。

目的
病院において超音波ガイド下 CVC 挿入が CABSI に及ぼす影響を調査すること。

方法
大学附属の 3 次医療施設で 4 年間の前向きコホート研究を実施した。麻酔科医による非トンネル型 CVC 挿入を受けた全患者を登録した。研修を受けた感染制御看護師がカテーテルサーベイランスを実施し、感染制御医師がその確認を行った。主要評価項目は米国疾病対策センター(CDC)の定義による CABSI とした。副次的評価項目は CVC 抜去後 28 日までの全原因死とした。

結果
合計で患者 2,312 例、CVC 2,483 本を解析対象とした。超音波ガイド下 CVC 挿入件数は 844 件(34.0%)であり、研究期間中にわたって有意な増加が認められた(発生率比 1.13、95%信頼区間[CI]1.11 ~ 1.15、P < 0.001)。47 件の CABSI が特定され、全発生率は 1,000 カテーテル日あたり 2.1 件であった。超音波ガイドと CABSI との間に関連は認められなかった(ハザード比 0.69、95%CI 0.36 ~ 1.30、P = 0.252)。全原因死亡率は 11.0%(2,312 例中 253 例)であり、有意な傾向や超音波ガイドとの関連は認められなかった。

結論
超音波ガイドは CABSI または死亡率に影響を及ぼさなかった。ベースライン時の CABSI 率が高所得国の現在の標準的な水準にある病院では、超音波ガイドの利用は CABSI 予防に関して追加的な有益性をもたらさない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
外科手術では、手術時間と術後感染との間に相関がみられることが報告されている。超音波ガイド下に短時間でスムーズに挿入すれば、CABSI が減少するのではないか、というのが本研究の背景である。実はすでに超音波ガイド下の挿入により有意に CABSI が減少したというランダム化比較試験が存在する。しかしその研究ではベースラインの CABSI 発生率が 16%と極めて高かったことが問題となっている。今回の研究ではベースラインの CABSI 発生率は 1.89%と低く、それも超音波ガイド下の挿入による CABSI 発生率の有意な低下が認められなかった理由の 1 つであろう。
1 つの感染対策をとっても、その有効性は病院の状況によって異なるため、導入の是非は実際にサーベイランスを行って確認する必要がある。本研究はそのような視点の重要性をも教唆している。

リアルタイム PCR はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の臨床診断と高い相関を示す

Real-time polymerase chain reaction correlates well with clinical diagnosis of Clostridium difficile infection

N. Berry*, B. Sewell, S. Jafri, C. Puli, S. Vagia, A.M. Lewis, D. Davies, E. Rees, C.L. Ch’ng
*Singleton Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 109-114


目的
急性期病院でのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の迅速分子アッセイの臨床的有用性を明らかにすること。

方法
2011 年 3 月から 9 月に 2 つの急性期病院で C. difficile 感染が疑われた患者から得た糞便サンプルを用いて、日常的な細胞培養サイトトキシン中和法(cell culture cytotoxin neutralization assay;CCNA)、GeneXpert を用いたリアルタイム PCR 法(Cepheid Inc.、Sunnyvale、CA、USA)、および二重検査アルゴリズム(グルタミン酸脱水素酵素[GDH]/トキシン酵素免疫測定法、Premier、Launch Diagnostics、Longfield、UK)による検査を前向きに実施した。PCR 法または CCNA が陽性であるか、結果が一致しない患者については、全例を多職種チーム(治療を担当する臨床医、消化器専門医、微生物専門家、および感染制御看護師)が精査した。

結果
C. difficile 検出率は、11.7%(PCR 法)、6%(CCNA)、13.8%(GDH)であった。研究対象の糞便サンプル 1,034 件中 974 件(94.1%)では、CCNA と PCR 法の結果が一致した。89%(985 件中 886 件)で CCNA、PCR 法、GDH の結果が一致し、94.4%(985 件中 930 件)で GDH と PCR 法の結果が一致した。臨床診断を基準とした評価による PCR 法の感度は 99.1%、特異度は 98.9%、陽性的中率(PPV)は 91.9%、陰性的中率(NPV)は 99.9%であった。同一サンプルの CCNA の感度は 51%、特異度は 99.4%、PPV は 91.9%、NPV は 94.3%であった。GDH の感度は 83.8%、特異度は 94.5%、PPV は 64.7%、NPV は 97.9%であった。PCR 法では CCNA と比較して約 2 倍の患者が陽性であり(121 例対 62 例)、結果が一致しなかった患者 59 例中 54 例は、臨床的に C. difficile 感染が確認された。

結論
PCR 法を用いた C. difficile 感染の迅速診断は適時かつ正確であり、臨床診断との高い相関を示した。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
GeneXpert を用いたリアルタイム PCR 法による診断に関連する研究が増えてきている。感度が高いこと、結果が出るまでの時間が従来の方法に比べて大幅に短縮できることが利点であるが、費用も加味した評価が知りたいところである。

ドイツのリハビリテーション施設におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の鼻腔内保菌の入院時保菌率および入院中の獲得

Admission prevalence and acquisition of nasal carriage of meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) in German rehabilitation centres

R. Köck*, K. Winner, F. Schaumburg, A. Jurke, J.W. Rossen, A.W. Friedrich
*University Hospital Münster, Germany

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 115-118


この多施設共同前向き研究では、ドイツの 11 のリハビリテーション施設の患者の入退院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)鼻腔内保菌について評価した。入院時に MRSA 保菌が認められた患者は 5,896 例中 71 例(1.2%)であった。MRSA 保菌の独立関連因子は MRSA 保菌歴(オッズ比[OR]4.3、95%信頼区間[CI]1.8 ~ 10.6)、過去 6 か月以内の入院(OR 2.5、95%CI 1.2 ~ 5.2)、ブタとの接触(OR 22.5、95%CI 11.1 ~ 45.7)、および慢性の創傷があること(OR 4.7、95%CI 1.9 ~ 12.0)であった。退院時に MRSA を新規に獲得していた患者は 0.3%であった。

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監訳者コメント
この論文によれば、ドイツのリハビリテーションセンター入院時の MRSA 保有率は 1.2%だった。周辺諸国の同様の施設での保有率(7.1% ~ 14%)と比較するとかなり低い。さらに退院時に新たに MRSA 保有が判明したのが0.3%であり、高齢者リハビリテーション科の 26%よりも低かった。日本ではリハビリテーション施設入院時の MRSA 保有率はこれよりも高いと考えられ、入院中に曝露される機会も多くなる。さらに、多くの場合、急性期病院に比べて感染管理を担当する専従スタッフを含め体制が整いにくいこともあり、我々にとってもリハビリテーション施設での感染対策は大きな課題である。

臨床検査室を介さない Xpert® MRSA PCR 法による迅速診断検査の利用

Use of Xpert® MRSA PCR point-of-care testing beyond the laboratory

B.J. Parcell*, G. Phillips
*Ninewells Hospital and Medical School, NHS Tayside, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 119-121


メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)検査の所要時間短縮を図るために、整形外科の入院前外来および循環器部門で看護補助者が実施する迅速診断検査法(POCT)として PCR 法(Xpert® MRSA、Cepheid)の評価を行った。POCT の結果を通常のスワブ採取の培養結果と比較した。POCT は操作が容易であり、陰性結果が得られるまでの所要時間は著しく短縮した。感度は入院前外来で 75.0%、循環器部門で 80.0%であった。POCT 陽性・培養陰性が 27 件にみられたが、これらの患者には MRSA 感染・保菌は処置後 1 年以上認められなかった。臨床検査室を介さない MRSA 保菌の POCT 検査には、臨床検査室内で実施する方法を上回る重要な利点があり、さらなる検討を進めるべきである。

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監訳者コメント
病棟で MRSA の迅速診断を行うことの有用性を検討した論文である。PCR 法による結果と培養結果が一致したのは 97.5%(30 件)であった。結果が出るまでに要した時間は、PCR 法で約 1 時間、培養では41時間(結果陰性)から139時間(結果陽性)であった。これらの結果は、病棟での迅速診断が治療や対策に十分有用であることを示唆している。
日本では、MRSA 感染が発生すれば患者 1 人あたり 5,212 円/日のコストがかかるという報告もあり(Kobayashi H, et al. 環境感染誌 2010;25(2):111-112)、入院時からの対応には迅速診断が役立つと思われるが、PCR 法による費用も気にかかる。特に保菌の場合の対策については、入院時のリスクアセスメント結果との比較に興味がもたれる。

脊椎麻酔後のセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)による髄膜炎のアウトブレイク

Outbreak of meningitis due to Serratia marcescens after spinal anaesthesia

G. Ersoz*, M. Uguz, G. Aslan, E.S. Horasan, A. Kaya
*Mersin University, School of Medicine, Turkey

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 122-125


本稿では、帝王切開時に脊椎麻酔を受けた患者のセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)による髄膜炎のアウトブレイクについて報告する。75 床の私立病院で 2011 年 3 月 6 日から 14 日に脊椎麻酔下で帝王切開を受けた患者 46 例中 12 例が、細菌性髄膜炎と診断された。ノルアドレナリン含有 5%ブドウ糖液のプレフィルドシリンジ 4 本および輸液バッグ 1 個から採取したサンプルから S. marcescens が分離されたことから、脊椎麻酔に使用した薬剤の外因性汚染が示唆された。手術室での麻酔に関連した感染の予防戦略について考察する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
Attack rateは26%、1 日あたりの attack rate は一番高い日で 67%(9 例中 6 例)であった。注射バイアルの複数回使用、調整後の 14 日間にわたる室温保管など、明らかに薬剤調製にかかわるアウトブレイクであった。発症者 12 例が全員回復したのが救いである。

集中治療室の患者における基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生菌の修正可能な汚染源としての流し

The sink as a correctable source of extended-spectrum β-lactamase contamination for patients in the intensive care unit

I. Wolf*, P.W.M. Bergervoet, F.W. Sebens, H.L.A. van den Oever, P.H.M. Savelkoul, W.C. van der Zwet
*Laboratory for Medical Microbiology and Infection Control, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2014) 87, 126-130


当院の集中治療室(ICU)の患者に 2010 年 12 月から 2012 年 4 月に、まれではあるが基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の保菌が認められた。著者らはこれらの ESBL 産生菌が病室の流しに由来するという仮説のもとに、この問題を 20 週間にわたる毎週の患者および流しの培養により前向きに調査した。ESBL 産生菌は 13 台の流しから分離された。患者 4 例が、これまでに流しから分離された ESBL 産生菌と遺伝的に同一の ESBL 産生菌を保菌していた。このうち 1 例は ESBL 産生菌による肺炎で死亡した。自動消毒式サイフォンを ICU のすべての流しに設置することによって、流しから患者への伝播は終息した。

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監訳者コメント
流しから検出された ESBL 産生菌と患者から検出された ESBL 産生菌が遺伝子的に一致していた。すべての流しから菌は検出されたが、自動消毒装置をつけたら患者から検出されなくなった、という論文である。感染源は流しだとしても、感染経路を検討すべきでは、と疑問が残った。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.