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レーティング:[監訳者による格付け]
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病原体の不活化のための 405 nm 光を用いた技術と、環境消毒および感染制御において想定されるその役割

405 nm light technology for the inactivation of pathogens and its potential role for environmental disinfection and infection control

M. Maclean*, K. McKenzie, J.G. Anderson, G. Gettinby, S.J. MacGregor
*University of Strathclyde, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 1-11


背景
紫外線(UV)光には殺菌作用があることは古くから知られていたが、可視光である 405 nm の青紫色光に抗菌作用が発見され、環境消毒および感染制御に利用されるようになったのはごく最近のことである。

目的
405 nm 光の抗菌活性に関するレビューを行うこと、また環境汚染除去技術へのその利用、特に病院環境の消毒について述べること。

方法
関連する科学論文や報告の詳細な文献検索。

結果
原核性から真核性までの幅広い微生物種(細菌芽胞や真菌胞子などの抵抗性の形態を含む)の殺滅にかかわる 405 nm 光による光力学的不活性化プロセスのベースとなる知見として、現在、多くの科学的エビデンスが得られている。実用目的では高輝度狭帯域光環境消毒システム(HINS-light EDS)が開発されており、病院の隔離室で検証が行われている。試験の結果から、この 405 nm 光システムは、院内の病床エリアの空気および曝露表面の連続的な消毒が可能であり、これにより標準的な清掃および感染制御手順の大幅な強化が可能であることが示されている。

結論
青紫色光、特に 405 nm 光は、幅広い細菌および真菌病原体に対する強い抗菌作用を有しており、UV 光よりも殺菌効果は低いものの、この弱点は病床環境で安全かつ連続的に使用できるという特性により相殺される。病院内で実施した試験では消毒効果に関する有望な結果が得られているが、今後、医療関連感染の減少に対するこの技術の影響を十分に明らかにする必要がある。

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監訳者コメント
405 nm の青紫色光の抗菌作用について検討した論文である。光源として LED など最新のハイテクで安定的な照射ができれば、遮蔽空間内で長時間安定した効果が期待される。

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症に起因する入院期間と医療費:批評的レビュー

Hospitalization stay and costs attributable to Clostridium difficile infection: a critical review

L. Gabriel*, A. Beriot-Mathiot
*University Lyon 1, France

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 12-21


ほとんどの医療機関では、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)により入院した患者の医療費は第三者支払機関が負担するが、入院時の合併症として発生した CDI 症例の場合は、関連する医療費の全額は病院に払い戻されない。本研究の目的は、CDI に起因する病院の医療費と入院期間について批評的レビューと分類を行うこと、および CDI に関連する経済的負荷を調査することとした。包括的な文献レビューにより、CDI の結果として入院した患者の医療費と入院期間について報告している論文を選択し、CDI のみに起因する医療費と入院期間を特定するために使用している統学的手法を調べた。24 報の研究を選択した。CDI に起因する推定医療費の範囲(米ドル)は、入院を要する CDI では 6,774 ~ 10,212 ドル、院内 CDI では 2,992 ~ 29,000 ドル、分類しない場合は 2,454 ~ 12,850 ドルであった。入院期間の範囲は、それぞれ 5 ~ 13.6 日、2.7 ~ 21.3 日、2.8 ~ 17.9 日であった。CDI に起因する医療費を分類することにより、財務管理担当者は CDI 1 例あたりの医療費の予測が可能となる。このような見通しがあると、様々な財務管理担当者が CDI 予防のために投資することを奨励するような枠組みが強化されるはずであり、その結果、世界的に CDI の予防が最適に行われることになると考えられる。

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監訳者コメント
医療関連感染が病院・個人・政府の誰にとっても負の経済効果しか生まないことは明らかであり、客観的な尺度をもって予防的な対応をとることの重要性をこうしたデータは改めて知らせてくれる。

英国におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の医原性伝播リスクの管理

Managing the risk of iatrogenic transmission of Creutzfeldte-Jakob disease in the UK

V. Hall*, D. Brookes, L. Nacul, O.N. Gill, N. Connora on behalf of the CJD Incidents Panel
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 22-27


背景
英国では牛海綿状脳症(BSE)および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の出現を受けて医原性伝播が懸念されており、そのリスク管理には独自のアプローチを採用している。

目的
CJD 事例の管理、および医原性伝播の減少戦略として実施した「高リスク」者への通知について報告・考察すること。

方法
医原性 CJD の伝播、CJD インシデント委員会(CJD Incidents Panel)の役割、2012 年中旬までに報告された CJD インシデントの件数および「高リスク」者数とそれらの特性について述べる。

結果
英国の CJD 症例 77 例が医原性伝播によるものである可能性が高く、その曝露の内訳はヒト由来成長ホルモン 64 例、硬膜移植 8 例、輸血 4 例、および血漿製剤 1 例であった。委員会は伝播抑制を目的として 490 件のインシデントを調査し、遡及調査、血液・血漿製剤の回収、および外科用器具の隔離・廃棄を勧告した。さらに、委員会の勧告に基づき無症状者約 6,000 名に CJD のリスクが高いことを通知し、公衆衛生予防策に従うよう要請した。

結論
CJD 医原性伝播の低減戦略は、科学的な確実性が欠如した状況下で策定されてきた。伝播事例が少ないことは、インシデントに関連する曝露に伴う伝播リスクはごくわずかであることを示唆していると考えられ、また、CJD の潜伏期間が長いことや不顕性感染という特性を考慮すると、感染がまだ発生していない可能性も未検出である可能性も想定できる。より確実な感染率推定方法、スクリーニング検査、または外科用器具の汚染除去法の改善などの科学的な進歩によって、今後のリスク管理は変化していくと考えられる。

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監訳者コメント
CJD の患者発生の経年的な変化をみると、弧発型についてはいまだにほぼ横ばいなのに対して、変異型の症例は劇的に減少しており、国策としての取り組みの効果が現れている。CJD 患者に使用した医療器具の再生処理方法はどれも非現実的なもので、かつ、これらの処理による滅菌法に関するエビデンスの質は低いものがほとんどであることから、課題は山積している。

医学部学生に対する手指衛生の理念教育の促進因子および障壁

Facilitators and barriers around teaching concepts of hand hygiene to undergraduate medical students

R. Kaur*, H. Razee, H. Seale
*University of New South Wales, Australia

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 28-33


背景
現時点では、医学部学生に手指衛生の理念を教えるために用いられる教育法の影響および適切性を評価した文献はほとんどない。

目的
(i)手指衛生およびその遵守に影響する因子に関する主要な大学教員および医学部学生の見解について、および(ii)医科大学で実施されている手指衛生に関する現行の教育について調査すること。また、手指衛生に関する学生の知識と姿勢の改善に有用な新規教育・学習法の選択肢についても調べることとした。

方法
主要な大学教員と医学部学生を対象として、個別に入念な面接を実施した。速記録の主題分析を行った。

結果
参加者の印象は、学生は手指衛生教育を重視しておらず、また特に医学部のプログラムで学んだ他の教科と比較して面白くないであろうというものであった。教育における主要な推奨事項は、専門家を手本とすること、評価課題(assessment task)、および患者や同僚からのフィードバックであり、これらを実践することによって、手指衛生に対する医学生の姿勢の改善、さらに望むらくは遵守の改善の推進が可能になると考えられる。定期的かつ小規模なグループシナリオ研修や現場での実践的研修も提案された。医学部学生の手指衛生実践の持続を推進するために最も重要な主題は、感染制御に関する文化の変革の必要性であった。

結論
医学部学生の手指衛生行動の改善を推進するためには、評価およびシナリオ学習・教育法を検討すべきである。これらの実践を持続させるためには、役割モデルのほかに、感染制御に関する文化の変革が必要であると考えられる。

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監訳者コメント
医療従事者、特に医師の手指衛生遵守率の低さは、医学生にも影響している可能性がある。ゼンメルワイスが 1847 年に医学生の手洗いの不備で産褥熱死亡率が増えていることを指摘して以来、すでに 166 年が経過し、いまだに医学生の手指衛生行動は満足できるレベルには達していない、その原因は理論的教育をしても、その後の実習までに忘れてしまう知識不足、誤解などに加え、「お手本の欠如」は大きい。医学生は指導医の行動を見て学ぶ、いわゆる「猿まね」で臨床現場で学ぶが、彼らが必要だと思っても、指導医が手指衛生を実施していなければ、実際には不要だと思い込んでしまうのである。したがって、実習前に教えられたことと現場でのギャップを感じれば、素直になぜ?と質問するよう指導する必要がある。手指衛生については、医学部と病院の両者が医学生の教育訓練に対する責任をもつべきである。また OSCE にもこれらの手指衛生の項目を入れて、実践教育が必要である。「鉄は熱いにうちに打て!」、そして「手指衛生は若いうちにたたきこめ!」、さもないと手指衛生の遵守率改善は望めないかもしれない。

早期離床バンドル:院内肺炎発生率の低下と入院期間の短縮のための簡易な強化療法

The Early Mobility Bundle: a simple enhancement of therapy which may reduce incidence of hospital-acquired pneumonia and length of hospital stay

M. Stolbrink*, L. McGowan, H. Saman, T. Nguyen, R. Knightly, J. Sharpe, H. Reilly, S. Jones, A.M. Turner
*Liverpool School of Tropical Medicine and Hygiene, UK

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 34-39


背景
理学療法で早期離床を促進することによって、股関節骨折患者の院内肺炎発生率が低下することが示されているが、内科患者の院内肺炎発生率への影響については検討されていない。

目的
理学療法による早期離床の促進により内科病棟の患者の院内肺炎発生率が低下し、入院期間が短縮するかどうかを明らかにすること。

方法
英国・バーミンガムの病院グループの呼吸器内科と老年病内科の各病棟で「早期離床バンドル」を導入した。バンドルの構成は、対象を絞った特別な理学療法、および病棟職員との共同による活動の奨励・推進であった。バンドル実施後の院内肺炎発生率、転倒、褥瘡、入院期間、および活動レベルを、同じ病院グループのマッチさせた 2 病棟と比較した。

結果
院内肺炎発生率は介入群で有意に低く(P < 0.0001)、交絡因子を補正後も結果は同様であった(P = 0.001)。また介入群では活動レベルが高く(P = 0.04)、患者の入院期間が第 1 四分位範囲内である割合が高かった(OR 1.44、P = 0.009)。その他のアウトカムには有意差は認められなかった。

結論
早期離床バンドルは院内肺炎発生率を低下させ、内科入院患者の活動性を高める有望な手段であることが示された。

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監訳者コメント
院内肺炎の発生は多くの因子に影響されるが、その発生率をはっきりと低下させると証明できた方策は少なく、またそれを現場で徹底できるかどうかという課題も大きかった。今回,「早期離床バンドル」を導入して、理学・作業療法の強化のみならず、職員の意識(文化)を改めたこと、さらには持続可能な手法として有意な結果にまでつなげたことは、大きな評価に値すると考える。

スイスの病院における 13 年間の手術部位感染サーベイランス

Thirteen years of surgical site infection surveillance in Swiss hospitals

W. Staszewicz*, M.-C. Eisenring, V. Bettschart, S. Harbarth, N. Troillet
*Geneva University Hospitals, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 40-47


背景
手術部位感染(SSI)予防にはサーベイランスは必須の要素である。そのためのプログラムの長期的な効果を評価した研究はほとんどない。

目的
スイス西部および南部で実施された 13 年間の多施設 SSI サーベイランスプログラムから得られたデータを提示すること。

方法
全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムの方法に従って、退院後の追跡サーベイランスを実施した。SSI 発生率は調査対象手術の種類ごとに算出し、全体およびプログラムへの参加年数別に示した。SSI のリスク因子、および SSI 発生率に対するサーベイランス期間の影響を多重ロジスティック回帰により分析した。

結果
全 SSI 発生率は、結腸切除術(7,411 件)後 18.2%、虫垂切除術(6,383 件)後 6.4%、胆嚢摘出術(7,411 件)後 2.3%、ヘルニア縫合術(9,933 件)後 1.7%、股関節形成術(6,341 件)後 1.6%、膝関節形成術(3,667 件)後 1.3%であった。退院後の SSI 検出率は、結腸切除術の 21%から膝関節形成術の 94%までばらつきがあった。SSI の独立リスク因子は手術によって異なっていた。NNIS リスクインデックスにより SSI が予測できたのは消化管手術のみであった。腹腔鏡手術は、全般的にみると SSI 発生率を低下させる保護的な手技であったが、虫垂切除後の臓器・体腔感染の発生率は高かった。サーベイランスプログラムへの参加期間は、対象としたいずれの手術の SSI 発生率低下とも関連しなかった。

結論
これらのデータは、SSI 発生率に対する退院後サーベイランスの影響および腹腔鏡手術の保護的効果を確証するものである。ケースミックス補正の代替法を確立する必要がある。欧州の他のプログラムとは異なり、SSI 発生率に対するサーベイランス期間による正の影響は認められなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
スイスでの長期にわたる多施設サーベイランスの結果は、わが国での SSI の発生状況とその低下を考えるうえで非常に有用といえよう。腹腔鏡手術が SSI の発生を抑えるインパクトについても具体的に示されたが、虫垂切除後の臓器・体腔感染がむしろ増加したことは興味深い。

エタノールロックとヘパリンロックによる中心静脈カテーテル関連血流感染予防の比較:ヒックマン・デバイスを留置した血液内科成人患者のランダム化試験

Ethanol versus heparin locks for the prevention of central venous catheter-associated bloodstream infections: a randomized trial in adult haematology patients with Hickman devices

L.J. Worth*, M.A. Slavin, S. Heath, J. Szer, A.P. Grigg
*Peter MacCallum Cancer Centre, Australia

Journal of Hospital Infection (2014) 88, 48-51


血液内科の成人患者に対するエタノールロックによる中心静脈カテーテル(CVC)関連血流感染(CLABSI)予防効果は、十分に評価されていない。本研究の目的は、トンネル型 CVC 留置患者を対象として、ヘパリン加生理食塩液と 70%エタノールによる 2 時間のロックを前向きに比較することである。1,000 CVC 日あたりの CLABSI 発生率は生理食塩液群(43 例)6.0 件(95%信頼区間[CI]3.4 ~ 9.8)、エタノール群(42 例)4.1 件(95%CI 1.9 ~ 7.7)(P = 0.42)であった。エタノール群では、出口部感染 2 件および皮下トンネル・ポケット感染 1 件が認められた。トンネル型 CVC 留置血液悪性腫瘍患者に対する 70%エタノールによる予防的ロックにより、デバイス関連感染は減少しなかった。

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監訳者コメント
CLABSI の予防および治療を目的とした様々な手法が研究されている。最近のシステマティックレビュー(Mermel LA, Alang N. J Antimicrob Chemother 2014;69:2611)では、エタノールロックによるカテーテルの品質劣化や患者の全身性の副作用なども示されている。本研究では少なくとも感染予防効果においてはヘパリンロックと比較して優位性も示せなかった。上記のシステマティックレビューの結果と併せて、CVC の CLABSI 予防としてのエタノールロックの有用性が否定されつつある。

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.