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レーティング:[監訳者による格付け]
★★…是非読むことをお勧めする論文 ★…読むことをお勧めする論文

空気伝播と予防策:事実と神話

Airborne transmission and precautions: facts and myth

W.H. Seto*
*University of Hong Kong, School of Public Health, Hong Kong, SAR, China

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 225-228


空気伝播が生じるのは、エアロゾルと呼ばれる 5 μm 未満の感染性粒子が空中に排出された場合に限られる。このような伝播の予防には N95 マスクおよび陰圧隔離室が必要となるため、高額の費用がかかる。このレクチャーではまず、呼吸器ウイルス感染は空気伝播によるものであるかどうかについて、2008 年以前に発表された総説論文、外科用マスクおよび N95 マスクの比較試験、および関連する新しい実験的研究を参照し、考察を行った。しかし、インフルエンザに自然感染した被験者を用いた最近の実験的研究の大半では、曝露を受けたすべてのマネキンから否定的な結果が示された。また、これらの結果は予想外のものではないことを説明するために、人工呼吸器技師らによるモデル研究の要約を行った。次いで、世界保健機関(WHO)の依頼を受けて実施された、エアロゾルを発生させる手技に関するシステマティックレビューの要約を行った。入手可能なエビデンスからは、気管内挿管は単独またはその他の手技(心肺機能蘇生法や気管支鏡検査など)との組み合わせのいずれによっても、エアロゾルを発生させることによって伝播リスクの上昇と関連することが示された。

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監訳者コメント
レクチャーとして書かれた総説である。一番のメッセージは、「エアロゾルを発生させる介入は伝播リスクである」ことの再確認だと感じた。

感染予防・制御に関する文献にみられるトレンドは? HIS 2012 から HIS 2014 まで、およびそれ以降★★

What’s trending in the infection prevention and control literature? From HIS 2012 to HIS 2014, and beyond

J.A. Otter*
*Centre for Clinical Infection and Diagnostics Research (CIDR), Department of Infectious Diseases, King’s College London, and Guy’s and St Thomas’ Hospital NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 229-236


本稿は、2012 年後半に開催された前回の Healthcare Infection Society(HIS)総会以降の感染予防・制御に関する文献にみられるトレンドの一端を非公式に調査したものである。Googleトレンド を用いて、様々な感染制御の話題への関心の量が経時的にどのように変化したかを調べた。Google 検索でエボラはその他の話題を上回り、文献発表の急増が反映されていた。エボラ以外に本稿で取り上げる感染予防・制御に関する文献のトレンドは、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、普遍的介入と標的を定めた介入との比較、糞便細菌叢移植、全ゲノムシークエンシング、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、および環境科学に関するいくつかの話題などについてである。本総説では最後に、現在から次回 2016 年の HIS 総会までの感染予防・制御に関する文献のトレンドの予測を試みる。

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監訳者コメント
エボラウイルス感染症や MERS などの新興感染症の予防や制御、便移植、全ゲノム解析などの知見に関連する論文レビューを Google トレンドと合わせて解説した総説である。とてもよくまとめられており、わかりやすい内容になっている。

感染制御:地平線の彼方

Infection control: beyond the horizon

J. Gray*
*Birmingham Children’s Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 237-240


本稿では、感染予防・制御の革新・研究の今後の想定される方向性について考察するとともに、これらの研究で臨床的評価および費用対効果の評価を行うことの重要性について述べる。多数の広範な主題領域、例えば既存および新興感染症の危険の予防・制御、医療の提供方法の変化によりもたらされる課題、感染予防・制御に利用し得る技術の開発、新たな検査室診断技術が感染予防・制御、清掃、およびコンタミネーション除去にもたらす恩恵、ならびに感染制御の観点からの病院設計などについて、それらの研究の機運を考察する。エビデンスに基づく実践の広範かつ時宜を得た適用を推進する、頑健な経済的データが必要であることを強調する。

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多剤耐性グラム陰性菌:グローバル化の産物

Multidrug-resistant Gram-negative bacteria: a product of globalization

P.M. Hawkey*
*University of Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 241-247


この 20 年間で、世界規模の貿易や人の移動が急増している。このことは、抗菌薬耐性遺伝子の進化および動向に深刻な影響を及ぼした。世界中の人々が新興経済国で発生した耐性菌にますます曝露されている。抗菌薬耐性の領域におけるこの 20 年間の最も重要な出来事は、CTX-M 型基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)の出現と拡散であろう。アジア諸国では腸内細菌科細菌の ESBL 産生率が極めて高かったためにカルバペネム系抗菌薬が大量に使用されることになり、プラスミドを介するカルバペネム耐性が出現した。本稿では、多剤耐性グラム陰性菌の出現と拡散について概説し、3 種類の特定のカルバペネマーゼ、すなわちイミペネム・カルバペネマーゼ、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)、およびニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼに焦点を当てるとともに、抗菌薬使用制限の重要性を明らかにする。

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監訳者コメント
ESBL、KPC などによる多剤耐性グラム陰性菌の分子疫学、感染症疫学のレビューであり、知識の整理に役立つ。

フランスの大学病院における OXA-48 カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の大規模アウトブレイクの制御への取り組み

Challenges of controlling a large outbreak of OXA-48 carbapenemase-producing Klebsiella pneumoniae in a French university hospital

B. Semin-Pelletier*, L. Cazet, C. Bourigault, M.E. Juvin, D. Boutoille, F. Raffi, M. Hourmant, G. Blancho, C. Agard, J. Connault, S. Corvec, J. Caillon, E. Batard, D. Lepelletier
*Nantes University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 248-253


Nantes University Hospital における OXA-48 カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の大規模なアウトブレイクについて調査した。初発症例は渡航歴および海外での入院歴はなく、2013 年 6 月に流行株が尿サンプルから分離された時点では内科部門に 1 か月以上入院していた。週 1 回の消化管保菌のスクリーニングにより、二次症例 72 例がアウトブレイク中に検出され、2013 年の 6 月から 10 月(33 例)と 2013 年 11 月から 2014 年 8 月(39 例)の 2 相性を示した。流行株拡散の原因は感染症部門(32 例)と内科部門(26 例)が近接していること、および両部門間の職員の移動であり、腎移植部門においても感染症部門からの曝露患者 1 例の移送後に二次症例 14 例が認められた。大半の患者(90%)は保菌であり、流行株に関連する死亡はなかった。3,000 例以上の接触患者を再調査し、6,000 件の直腸スワブを実施した。初発症例の発見が遅れたため、初期の制御策ではアウトブレイクを制御できなかった。制御策の成功が不完全であった原因は、3 期間にわたるコホーティングの実施遅延、病棟間の多数の移送、および症例の頻回の再入院などであった。

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監訳者コメント
保菌者の再入院や病棟間移動といったコントロールの難しい背景で発生したアウトブレイク事例のレポートである。感染拡大の一因としてコホーティングの遅れが示されていたが、標準予防策の遵守状況が気になった。

あなたの病院での多剤耐性グラム陰性桿菌の制御について:変革への旅

Controlling multidrug-resistant Gram-negative bacilli in your hospital: a transformational journey

L.S. Munoz-Price*
*Medical College of Wisconsin, WI, USA

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 254-258


世界では過去 20 年間に多剤耐性グラム陰性菌が増大している。本稿では、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の制御を目的とした介入バンドルの実施、および効果的な制御に必要となる文化の変革に関して、著者の個人的な経験を述べる。

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腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性:大腸手術時の抗菌薬予防投与の効果にどのような影響を及ぼすか?

Antibiotic resistance in Enterobacteriaceae: what impact on the efficacy of antibiotic prophylaxis in colorectal surgery?

A. Kirby*, N. Santoni
*University of Leeds, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 259-263


1940 年代に導入された予防的抗菌薬投与は、大腸手術が比較的安全である時代をもたらした。その一部は、腸内細菌科細菌に起因する手術部位感染症(SSI)の予防によって達成されたものである。それ以来、予防投与に高頻度で用いられる抗菌薬に対する腸内細菌科細菌の耐性が、徐々に増大してきた。術前の耐性腸内細菌科細菌保菌が大腸 SSI 予防投与の効果に及ぼす影響は、もしあるとしても明らかではない。また、手術時の予防的抗菌薬投与の用量反応関係が明確にされていないため、耐性の影響を予測することは困難である。さらに、どのような耐性検査法を用いるべきかも明らかではない。結腸内の腸内細菌科細菌濃度の重要性、腸内細菌科細菌の種々の菌種が SSI を引き起こす能力、および最小発育阻止濃度や耐性機序による SSI リスクの相対的な予測能については、まだ確立していない。これらの疑問に答えるためには臨床研究が緊要である。

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抗菌薬管理プログラムと外科医の役割

Antibiotic stewardship programmes and the surgeon’s role

M. Çakmakçi*
*Anadolu Saglik Merkezi, Turkey

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 264-266


不適切な抗菌薬使用は高頻度にみられ、特に外科部門で多い。このような使用による不要な代償は、患者にとって望ましくないアウトカム、および耐性細菌の出現・拡散である。抗菌薬管理プログラムの目的は、慎重な抗菌薬処方を推進することによって抗菌薬耐性の拡散を抑制することである。一般的に、このようなプログラムが目指していることは、抗菌薬の不適切な使用の制御、薬剤選択・用量・投与経路・投与期間の最適化、臨床的治癒や感染症予防の最大化、および望ましくない影響や過剰コストの抑制である。本稿では、抗菌薬の不適切な使用の影響について考察するとともに、これに対処する方法としては抗菌薬管理が最善であろうと著者が考える理由を概説する。外科医が抗菌薬管理プログラムに関与することが、その成功のためには極めて重要である。

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医療疫学におけるデータウェアハウジングの役割

Role of data warehousing in healthcare epidemiology

D. Wyllie*, J. Davies
*John Radcliffe Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 267-270


感染症やその他の疾患に関する個人レベルのリスク因子などの、医療データの電子的保管量は増大が続いている。これらのデータは、病院、地域、および国レベルで統合することが可能である。広範囲にわたる疾患のリスク因子や転帰などの情報を含むデータソースによって、様々な疾患の効率的な疫学的分析が可能となる。その影響は、医療プロセスのモニタリングにも及ぶであろう。多様なデータソースの統合には、疫学的、実務的、および倫理的な課題がある。例えば、診断基準、転帰の定義、および確認方法は、データソースによって異なっている可能性がある。データ量が膨大な場合があり、高度な情報処理技術が必要となる。大規模集団が対象の場合に最も大きな課題になると考えられる点は、統合データベースの作成のためのインフォームドコンセントをどのように取得すればよいかであり、特に、将来的に総合データベースを作成する可能性があることを容易に明示できない場合に当てはまる。本稿では、最近のプロジェクトにおけるいくつかの成功例・失敗例について、および抗菌薬耐性モニタリングのためのデータウェアハウジングの可能性について論じる。

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監訳者コメント
活用までの速度、ボリューム、多様性、信頼性、社会的背景などの切り口で、データやその集積、さらに活用に必要な考え方を医療疫学に基づいて論じている。データが大きくなるにつれ、その活用にはより慎重になる必要があると考える。

監訳者注:
データウェアハウジング:(data warehousing):蓄積された大量の情報を効率的に共有するためのプロセス。その共有レベルには機関、地域、ネットワーク、国家など、様々な単位を想定し得る。

集中治療室(ICU)サーベイランスと ICU の電子診療システムとの統合

Integrating intensive care unit (ICU) surveillance into an ICU clinical care electronic system

J.S. Reilly*, J. McCoubrey, S. Cole, A. Khan, B. Cook
*NHS National Services Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 271-275


欧州の病院の診療部門の中では、医療関連感染症(HCAI)有病率は集中治療室(ICU)で最も高く、このため HCAI サーベイランスが優先的に実施されている。サーベイランスは効果的な感染予防・制御(IPC)プログラムの重要な要素であるが、臨床医や IPC チームの時間的な負担があまりにも大きく、質改善に従事する時間が限られる。この現状にかんがみて、各国から発表された文献を用いて電子サーベイランスの事例の調査を実施した。これらの研究からは、電子サーベイランスによってサーベイランスの妥当性が向上すること、サーベイランスに費やされる時間が短縮すること、および臨床的意思決定およびサーベイランスのための IPC 活動の改善機会がもたらされることが示唆された。スコットランドでは、ICU における HCAI サーベイランスシステムが、内部監査と診療の統合システムの一環として構築された。この技術インフラへの投資によってデータ収集の負担が軽減されたため、スコットランドの全 ICU の改善に目が向けられることになった。スコットランドの経験からは、ICU における HCAI サーベイランスを最適なものとするためには、複数の決定的に重要な項目が必要であることが示されている。それは、全国的に受け入れられる定義と方法、診療経過の追跡を容易にするための情報技術インフラへの国レベルでの投資、集中治療医によるサーベイランスの指揮、システムの信頼性を確保するためのパイロット研究および検証研究、ならびに国と地域のプログラムの戦略的統合である。これらの要素は、地域、国、および欧州レベルでのサーベイランスデータの改善に寄与しており、その結果、臨床的焦点がデータの収集プロセスではなく、データそのものに当てられるようになった。

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監訳者コメント
サーベイランスにおけるデータ収集は地道な作業であり、感染対策チームの時間的負担が大きい。電子サーベイランスを利用することで、時間と労力が節約でき、その余剰部分を実際の改善へつなげられることを本論文は示唆している。スコットランドでは、VAP の 52%、BSI の 69%が予防可能であると見積もられており、電子サーベイランスによる実体の把握と感染対策への還元は重要である。日本においては、電子カルテの普及はめざましいものの、サーベイランスの電子データ収集に関する統一されたフォーマットはない。統一されたフォーマットにより、比較できるようになることが望まれる。

長期療養施設における医療関連感染および抗菌薬の使用:HALT 調査でのアイルランドの経験

Healthcare-associated infections and antimicrobial use in long-term care facilities: the Irish experience with the HALT surveys

K. Burns*, F. Roche, S. Donlon
*Health Protection Surveillance Centre, Ireland

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 276-280


欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、欧州の住民の高齢化を受けて、欧州の長期療養施設における医療関連感染と抗菌薬の使用(healthcare-associated infection and antimicrobial use in long-term care facilities;HALT)に関する点有病率調査(PPS)を要請した。2010 年の初回調査には、アイルランドの長期療養施設 69 施設が参加した。アイルランドの長期療養施設における感染予防・制御プロファイルおよび抗菌薬管理の改善を目的とした、一連の介入を実施した。アイルランドでは 2 回目の HALT 調査を 2011 年に実施し、108 の長期療養施設が参加した。さらにアイルランドでは 2013 年に、2 回目の欧州の HALT 調査の一環として調査を実施し、190 の長期療養施設が参加した。アイルランドの HALT 調査の最新報告では、これまでの 3 回の点有病率調査のデータを取り入れ、調査の結果と、アイルランドの多職種からなる運営グループが推奨する国内での優先実施事項について論じている。欧州の 2 回の HALT に関する点有病率調査では、全入居者の約 10%がアイルランドの入居者であった。このことと、調査に参加する長期療養施設数の増加は、アイルランドの長期療養施設の医療従事者は入居者ケアの質および安全の改善に最大限の努力を投じていることを示している。

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監訳者コメント
日本はもとより、欧州(EU)においても高齢化が進み、長期療養型施設における医療関連感染対策と抗菌薬の適正使用は重要な課題である。2010 年から ECDC の HALT の PPS が開始され、EU における施設内感染の状況と抗菌薬の使用状況が把握できるようになった。日本では急性期病院において、診療報酬上の施設基準に関してこれらへの対応が必要となり、ようやく定着してきたところである。今後、高齢化の進む日本において長期療養型病床群や介護施設での医療施設内感染の状況把握と抗菌薬適正使用は重要な課題であり、将来的に必須化されるかもしれない。

神経外科手術後の脳室炎のサーベイランスおよび管理

Surveillance and management of ventriculitis following neurosurgery

H. Humphreys*, P.J. Jenks
*The Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 281-286


脳室炎は神経外科手術後の重要な合併症であり、脳室ドレナージに伴うことが多い。その発現率は、用いられた診断基準が異なることなどにより 5%未満から 20%までのばらつきがある。スタフィロコッカス(Staphylococcus)属菌は最も重要な原因菌であるが、脳脊髄液サンプルからのコアグラーゼ陰性 Staphylococcus 属菌の分離は、コンタミネーションの可能性があるので解釈には注意が必要である。脳室炎のリスク因子は、高齢、脳室ドレナージ留置期間、操作回数、および脳室内出血などである。予防戦略においては、挿入または何らかの操作時の無菌操作、皮膚の処置、予防的抗菌薬投与、および脳室ドレナージ部位の適切なドレッシングなどからなるケアバンドルの実施が益々重視されるようになっている。抗菌薬含浸脳室ドレナージの使用が増加しているが、一部の研究からはこれらが有効であることが示されているものの、他の対策が遵守されている場合に追加的な有益性をもたらすかどうかは明らかではない。広く使用されている多くの薬物は脳脊髄液に浸透せず、また原因菌の多剤耐性化が進行しているため、抗菌薬治療は困難である。高用量の薬物の静脈内と脳室内への投与の併用が、特にグラム陰性菌感染の場合に必要になることが多い。この領域の大規模試験は実施が困難であることから、予防戦略に関する情報の強化や、この重要な疾患の管理を最適なものとするためには、全国的サーベイランスの継続、および治療方法と転帰のデータの蓄積が必要である。

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監訳者コメント
脳外科手術後感染症の発生率は、国ごとの診断基準の違いもあり大きく異なる。2011 年の米国の調査では、中枢神経感染症は全医療関連感染の第 10 位、0.8%を占めていた(ちなみに、第 1 位の肺炎や手術部位感染は21.8%を占める)。髄膜炎や脳室炎の頻度は少ないものの、発症すると予後に重大な影響をもたらす。本論文は過去 10 年間の論文をもとに考察しているが、感染症の予防、治療などのマネジメントに対するエビデンスは量的、質的にも十分ではないと述べている。また、サーベイランスも不十分であることから、実体の把握と多施設による臨床データの蓄積と解析が必要である。

環境からのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の根絶方法★★

How to eradicate Clostridium difficile from the environment

F. Barbut*
*University Pierre et Marie Curie, France

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 287-295


クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)はこの 10 年で、医療関連の下痢および死亡の主要な原因となった。芽胞形成細菌の伝播は、医療従事者の手指や汚染環境を介して生じると考えられる。したがって、C. difficile 感染患者が入院している病室の環境清掃・消毒の強化が必要である。様々な学術団体がガイドラインを発表している。ガイドラインは、次亜塩素酸塩(10 分の 1 に希釈)または殺芽胞剤を用いて C. difficile 感染患者の病室の環境汚染除去を行うことを推奨している。清掃・消毒の遵守は極めて重要なポイントであり、不適切であることが多い。最近、室内消毒の新たな「非接触」法が導入されている。紫外線または過酸化水素を使用するシステムが最も広く用いられている。In vitro 研究から、担体に接種した C. difficile の芽胞の減少は、蒸気化過酸化水素法(30%過酸化水素による)では 6 log10 超、エアロゾル化過酸化水素システム(5% ~ 6%の過酸化水素)では約 4 log10 に到達するのに対して、紫外線による方法では約 2 log10 であることが示されている。C. difficile 伝播に対するこれらの装置の効果を評価した研究はほとんどない。これらの装置の主な欠点は、その病室から患者および職員が退室しなければならないため、装置の使用が患者の退院後に限られることなどである。この室内消毒のための新しい非接触法は、日常的な清掃を補完するものではあるが、代替法とはならないと考えられる。

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監訳者コメント
クロストリジウム・ディフィシル(CD)の施設内伝播に、CD による環境汚染が少なからず関与していることが示唆されている。芽胞形成菌であるため環境に長期間生存することや、強毒株 BI-NAP1 による欧米での流行は、感染予防対策における「環境整備」の重要性を強調することとなった。これまでのいくつかの報告では、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺芽胞性消毒剤を使用した用手法の環境清拭では十分に CD を除去できないとされ、「非接触」型の紫外線や過酸化水素水による病室全体を殺菌する方法が注目されている。しかしながら、その評価は十分に確立されたわけではない。

医療施設におけるノロウイルスの負荷およびアウトブレイク制御戦略★★

Burden of norovirus in healthcare facilities and strategies for outbreak control

A. Kambhampati, M. Koopmans, B.A. Lopman
*Centers for Disease Control and Prevention, GA, USA

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 296-301


ノロウイルスは、あらゆる年齢層における市中感染型急性胃腸炎の原因として、極めて高頻度にみられる。また、医療環境でのアウトブレイクの原因としても極めて頻度が高いものの 1 つであり、長期療養施設と急性期病院の両方で影響を及ぼしている。ノロウイルス胃腸炎は通常は軽症であり、治療を行わずに回復するが、医療関連感染ではしばしば抵抗力の落ちた集団に影響を及ぼし、重度の感染症や医療サービスの混乱をもたらす。世界的に、病院および住居型介護施設におけるノロウイルスアウトブレイクの大半は、genogroup II 型タイプ 4(GII.4)株が関連する。最近のデータからは、医療施設でのアウトブレイク期間中に死亡率が上昇することが示されている。院内アウトブレイクは、甚大な経済的および社会的損失をもたらし得る。現行のノロウイルス制御策は、主として一般的な感染制御の原則に基づいており、治療は対症療法的かつ非特異的である。現時点では利用可能なワクチンおよび抗ウイルス薬はないが、いずれも開発途上であり、有望な結果が得られている。

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監訳者コメント
ノロウイルスは、先進国での医療施設内(急性期および長期療養施設)で発生する急性胃腸炎の頻度の高い原因病原体である。しかしながら、診断法が限られるため、実際の発生率よりも低く報告されていることがわかっている。動物実験ではリバビリンやファビピラビルなどの抗ウイルス薬の効果が確認されているが、ヒトでのデータはない。また、現時点で細胞培養ができないという重大な足かせがあるが、ワクチン開発が行われ、ウイルス様粒子を利用した単価経鼻ワクチン接種により発生率を半減できたとの報告がある。さらに GI.1 と GII.4 の二価の注射用ワクチンが第 II 相試験を終え、有効性が確認されている。ワクチン効果の持続期間が短く、さらなるワクチン開発が期待される。本論文はウイルスの最新の事情を知るうえで有用である。

侵襲性カンジダ感染の予防:どこが改善可能か?

Preventing invasive candida infections. Where could we do better?

Philippe Eggimann*, Yok-Ai Que, Jean-Pierre Revelly, Jean-Luc Pagani
*Centre Hospitalier Universitaire Vaudois (CHUV), Switzerland

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 302-308


侵襲性カンジダ症の死亡率は高く、敗血症性ショックを生じた場合、それは 35%から 60%にのぼる。侵襲性カンジダ症の疫学および発症機序は患者の免疫状態によって異なり、免疫不全者では半数以上がカンジダ血症であるのに対して、重症患者では半数以上を非カンジダ血症性の全身性カンジダ症が占める。カンジダ血症とは対照的に、非カンジダ血症性の全身性カンジダ症は確定診断が困難であり、特に重症患者では難しい。これらの患者では最大 80%に保菌がみられるが、侵襲性感染症を発症するのは 5%から 30%のみである。保菌状態と感染症例との区別は難しく、前者から後者への進展には 7 日から 10 日を要する。粘膜表面の保菌状態から、局所浸潤、続いて侵襲性感染症を連続的に来すために、予防的抗真菌薬投与や早期の経験的抗真菌治療の有益性が最も高い重症患者を特定することは困難である。非カンジダ血症性の全身性カンジダ症に対する早期の経験的治療は、現時点では、colonization index、カンジダスコア、および予測基準(カンジダ菌保菌状態、広域スペクトル抗菌薬使用歴、および腹部手術歴などのリスク因子の組み合わせ)といったリスク評価法の陽性的中率を参考に行われている。最近のガイドラインでは、これらの評価法には限られたエビデンスしかないとされてはいるが、臨床的には広く用いられており、侵襲性カンジダ症の発症率は大幅に低下している。

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監訳者コメント
侵襲性感染症の予防に関する情報や知見は増えつつあるが、リスク因子による予知、信頼できる検査法と解釈、早期の抗真菌薬投与の有用性など、未解決の部分は少なくない。特に非カンジダ血症性の全身性カンジダ症において、これまで得られている成績とコンセンサスを総括するには、本レビューは非常に適していると思われる。

嚢胞性線維症患者における感染の疫学と現行の感染予防ガイドライン

Epidemiology of infection and current guidelines for infection prevention in cystic fibrosis patients

K. Schaffer*
*University College Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 309-313


肺の嚢胞性線維症(CF)にみられる細菌性病原体のスペクトルはこの 10 年間で拡大している。元々関与が判明している緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セパシア菌群(Burkholderia cepacia complex)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に加えて、新たにグラム陰性非発酵菌や非結核性抗酸菌が臨床的に重要になっている。入院施設および外来診察室でのエアサンプリング、および患者の咳のエアロゾル分析によって、CF の病原体が空気伝播する可能性を示すエビデンスが得られつつある。CF 患者における「マイコバクテリウム・マシリエンゼ(Mycobacterium abscessus subsp. massiliense)」のアウトブレイクが 2 事例報告され、非結核性抗酸菌の空気伝播についても疑われるようになった。新しい疫学的エビデンスを踏まえて、国際的な感染制御ガイドラインの文書が改訂された。ガイドラインでは、CF 患者入院施設を新規に計画する際の換気方式の重要性について意見が一致しており、病棟廊下および共用エリアでの空気汚染のリスクを低下させるため、入院病室と外来診察室は陰圧室にするよう考慮すべきと述べられている。さらに入院病室と肺機能検査室の換気回数に注意し、可能な限り最適なものとする必要がある。ただし病院環境で患者にマスク着用を求めるべきかどうかについては合意に至っていない。

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監訳者コメント
CF に関与する病原体の種類は様々であり、中には近年になってその位置づけがようやく明らかになってきたものもある。まだ不明の部分も多いが、微生物学的な情報に基づいて、感染制御に関しても具体的な指針を作成できるようになったといえよう。一方、CF で得られた種々の知見は、他疾患や状況においても非常に有用な情報となる。今後の研究の展開が期待される。

ベッドサイドの迅速診断検査による院内発生インフルエンザの診断、管理、および予防

Rapid bedside tests for diagnosis, management, and prevention of nosocomial influenza

M. Bouscambert*, M. Valette, B. Lina
*Hospices Civils de Lyon, France

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 314-318


インフルエンザウイルスは他の呼吸器ウイルスと同様に、ナーシングホームや一般病棟、救急部門で深刻な院内流行を引き起こす。患者、医療従事者、訪問者ともに院内発生インフルエンザの感染源になる可能性がある。インフルエンザの迅速診断検査は、感度は限られているものの実用的な価値はあると考えられ、これらの検査によって拡大予防策の早期導入や、症例に対する特異的な抗ウイルス療法の早期実施が可能になる。しかしながらこれらの検査法ではオセルタミビル耐性を検出できず、感受性検査は専門的な検査機関でしか実施されていない。耐性はまれではあるが、特に幼い子供や免疫不全者では治療中に出現することもある。免疫不全者では、耐性インフルエンザウイルスの排出が数週間にわたって持続することがあり、さらに患者間での院内伝播の散発例が報告されている。ベッドサイドの迅速診断検査には限界があるため、単独の診断ツールとしての使用には適していない。しかしこの検査は迅速、簡便で、かつ費用対効果にも優れており、その限界によって院内発生インフルエンザの検出およびその後の管理のための使用が妨げられるものではない。検査法の近年の進歩は有望なものであり、感度および特異度の改善と、抗ウイルス薬の感受性のスクリーニングが可能になると期待されている。

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監訳者コメント
迅速抗原検査は本邦ではインフルエンザの診断に多用されており、院内でインフルエンザが発生した場合の感染対策の介入、特に早期の封じ込めにも寄与している。しかしながら検査感度や検査前確率、キット間の違いに関する理解が十分とは言い難い。キットの改良・新規導入が進む中、それらの能力の評価のみならず、状況ごとの使用の妥当性をその都度、十分確認するべきであろう。

新生児の医療関連感染症の予防:改善の余地

Prevention of healthcare-associated infections in neonates: room for improvement

C. Legeay*, C. Bourigault, D. Lepelletier, J.R. Zahar
*Université d’Angers, France

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 319-323


新生児集中治療室(NICU)の乳児は免疫系が未発達であるため、感染症に極めて罹患しやすい。医療関連感染症は長期入院に関連しており、神経系の発達上の問題や死亡の重大なリスク因子である。医療関連感染症の制御を改善することは NICU における優先課題である。新生児の医療関連感染症の発生には多くの因子が寄与しており、例えば不良な手指衛生、看護師対乳児比率が低いこと、環境汚染、および不必要な抗菌薬使用などが挙げられる。予防の基本となるものは、新生児管理の改善、中心静脈カテーテルの不必要な使用の回避、抗菌薬や H2 受容体拮抗薬の使用の制限、および必要時の予防的抗真菌薬投与である。医療関連感染症の減少を目的とした質改善のための介入は、感染制御に不可欠であると考えられる。

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監訳者コメント
新生児の医療関連感染症は非常に重大かつ頻度が高いものであり、それをいかに減らすかという課題に直面したことがない施設は皆無であろう。関与する種々の因子について、複数を同時に改善していくことがより有効であることは明らかであるが、それを実行するためにはスタッフの認識・意識の共有を含め多くの工夫が必要である。これまでの常識・認識で見えていなかったことはないか、よりよい介入とは何か、常に考えていく必要があろう。

院内給水システムにおける緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa):バイオフィルム、ガイドライン、および実際の解決法

Pseudomonas aeruginosa in hospital water systems: biofilms, guidelines, and practicalities

J. Walker*, G. Moore
*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 324-327


緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、日和見病原体として振る舞い、抵抗力の下がった患者に保菌・感染を引き起こす微生物の 1 つである。院内の水は緑膿菌の伝播源となることが知られており、給水システムの汚染によるアウトブレイクも報告されている。2011/12 年の北アイルランドの子供病棟での発生もその一例であるが、新生児 4 人の死亡を直接的な契機として、英国保健省は指針(Health Technical Memorandum 04-01 補遺)を作成し、国民保健サービス(NHS)の管理者を対象に、特別ケアユニット(augmented care unit)での緑膿菌の対処法に関する勧告を行った。この指針は、現時点での専門家の意見のほか、限られてはいるが、科学的なエビデンスに基づいている。Public Health England は、実験室環境で再現・制御を行う給水テスト装置を製作し、給水システムの緑膿菌汚染のさらなる研究と、細菌の易定着部位の特定を行うこととした。これらの研究によりエビデンス基盤が強化され、さらには指針の改訂に寄与することが期待される。

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監訳者コメント
院内環境、それも水に関する緑膿菌の汚染は深刻な問題であり、いったん発生した場合、その制御は非常に困難である。各施設での個別、独自の対応を迫られることも多い。その早期発見と具体的な解決法について、感染対策担当者は普段から十分念頭に置いておく必要があるが、本レビューはその点で有用であり、さらに詳しい情報を入手するにも役立つと思われる。

感染制御チームは当局への報告のための活動指標および成績指標を用いて、いかにして自らの成績を評価し評判を高めることができるか

How infection control teams can assess their own performance and enhance their prestige using activity and outcome indicators for public reporting

P. Parneix*
*South-West France Healthcare-Associated Infection Control Centre, France

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 328-330


フランスでは 1970 年代後半に感染制御担当者が登場した。フランスの保健当局は 1995 年、感染制御チームの概念を公式に導入し、1999 年 11 月に義務化した。2000 年には、各病院に感染制御に関する機密の年次報告が義務づけられた。消費者団体の圧力により、保健省は 2004 年に当局への報告用の感染制御成績指標を導入し、その最初のものは ICALIN として知られる。感染制御に関する年次報告は病院全体の報告として意図されたものであったが、実際は感染制御チームの報告と見なされることが多かったため、感染制御チームは感染制御指標に基づく所属病院の成績に対して責任を有するようになり始めた。いくつかの感染制御チームは、自らの活動、とりわけカウンセリングは、その分量と範囲が報告に反映できていないと考えた。しかし、チームの多くは、自らの業務が少なくとも注目の対象となり、有用であることが認められたため、当局への報告には有益性があると認識した。こうして、フランスでは感染制御成績を評価するための指標の使用は、感染制御チームを支援するものとなった。指標を継続させるためには、定期的な改良が必要である。フランスで病院衛生の専門家の成績と信頼を高めるためには、彼らのコア・コンピタンスのさらなる向上への取り組みが必要である。感染制御チームは所属病院における院内感染の責任を担うべきか?「ノー」という答えは奇妙に思われるであろうが、無条件の「イエス」もまた同様であろう。

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監訳者コメント
諸外国では医療関連感染に関する様々な指標を公開する施策が積極的に行われている。このような指標の公開には賛否両論があるが、フランスでは少なくとも感染制御領域においては一定の成功を収めているようだ。今後は日本でも同様の施策が導入されると考えられる。一歩先を行く ICT はぜひ目を通しておいてはいかがだろうか。

医療施設の感染制御を支援する根本原因分析

Root cause analysis to support infection control in healthcare premises

A.-G. Venier*
*Bordeaux University Hospital, France

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 331-334


感染制御チーム(ICT)の目的は医療関連感染症(HCAI)の予防である。ICT はサーベイランスと予防を実施し、安全とケアの質を促進し、リスクの評価と管理を行う。根本原因分析によってこれらの業務を支援することができるが、ICT はこれを広く活用してはいない。本稿では、ICT が自らの日常業務を強化するためには、どのように根本原因解析を用いることができるかについて論じる。根本原因分析のための種々のツールや方法が存在している。根本原因分析の主要な目的は、HCAI をもたらした因子を特定することであるが、根本原因分析をニアミスに対して用いることもできる。通常は、チームとしての取り組みと多職種による作業が必要とされる。この分野における公表されている文書および個人的な経験から、根本原因分析を正しく利用する ICT は、より効果的な予防策を実施し、業務や共同作業の改善にあたり、チームワークを強化し、HCAI リスクを低下させていることが示されている。根本原因分析は ICT の業務に価値を付与するとともに、問題を予測して先手を打つ院内文化の発展を支援するものであるため、ICT は根本原因分析を促進すべきである。

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監訳者コメント
ビジネスパーソンのための問題解決の手法を紹介した本は世にごまんとあるが、さて感染制御ではとなると、そこにフォーカスしたものは数少ない。Root cause analysis(根本原因解析)は、問題解決手法の中でも最もメジャーな手法の 1 つであり、その方法論について 1 度は勉強しておいて損はないだろう。

景気後退が感染予防・制御に及ぼす影響

The impact of economic recession on infection prevention and control

M. O’Riordan*, F. Fitzpatrick
*Clinical Effectiveness Unit, Department of Health, Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 340-345


2007 年に始まる景気後退は、多くの欧州各国に緊縮政策と公共部門の削減をもたらした。感染予防・制御プログラムへのリソース割り当ての減少により、結核、HIV、およびワクチンによる予防が可能な感染症の予防・制御に支障が生じている。さらに、市中感染症発生率の上昇は病院業務に重大な影響を及ぼしているが、この影響の程度に関する研究は行われていない。迅速な赤字削減を重視するあまりに、感染予防・制御などの予防的サービスが軽視されていると考えられる。予防プログラムによって疾患負荷を低いレベルにまで低下させることに成功した場合は、その成功自体がプログラムの必要性に関する認識を損ないかねない。景気後退による負の影響を縮小するために必要なのは、政治指導者に対して感染・予防制御の経済的有益性に関する教育を行うこと、医療関連感染症にかかわるコストの定量的評価を強化すること、ならびに予算削減が医療・保健状況および感染予防・制御活動に及ぼす影響を評価することである。

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監訳者コメント
2015 年 5 月 20 日現在、日本の日経平均株価は 2 万円を超え、ニューヨークダウ平均株価も過去最高値を超えた。本論文で述べられている 2007 年に始まった景気後退は、いったんめどは付いているようである。ただ本論文内で述べられている「国」を「病院」に置き換え、「政治指導者」を「病院院長・理事長」に置き換えると、それぞれの ICT が感染予防・制御プログラムへのリソースを要求する際の参考になるのではないだろうか。

組織が医療関連感染症に及ぼす影響

Impact of organizations on healthcare-associated infections

E. Castro-Sánchez*, A.H. Holmes
*Imperial College London, UK

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 346-350


医療関連感染症がもたらす課題を解決するためには、生物学的因子、治療因子、および組織的因子の相互関係を含む「医療経済全体」の視点が必要である。組織特性の重要性とその影響への注目が高まりつつある。本稿では、医療関連感染症に関連する患者の安全への取り組みの成功を推進すると考えられるいくつかの主要な特性について概説するとともに、さらなる考察と研究を要する領域を明らかにする。ガイドライン類や指標が及ぼす影響についても、臨床医に対して望ましい行動の実行を維持・持続させる必要性から生じるいくつかの課題と併せて論じる。電子医療ゲームなどの新規の技術的ソリューションや、ソーシャルメディアプラットフォームの活用は、従来の患者の安全向上への取り組みを支援・強化すると考えられる。最近公表された、感染予防・制御プログラムの主要な組織的要素および指標では、多様で集学的なソリューションを統合し、患者の安全についての組織文化の強化に努める包括的アプローチの必要性が強調されている。

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監訳者コメント
耐性菌や針刺しなど日々の ICT 業務に追われていると、それだけで 1 日が終わってしまうことが多い。しかし時には「組織」のビジョンやミッションを見直し、最適化する努力をしないと、いつしか業務は破綻する。本論文は ICT のリーダーを含む「管理職」の方々にぜひお読みいただきたい 1 本である。

欧州における医療関連感染症の予防・制御:患者の視点および格差の現状に関する概説

Prevention and control of healthcare-associated infection in Europe: a review of patients’ perspectives and existing differences

S. Marschang*, G. Bernardo
*European Public Health Alliance, Belgium

Journal of Hospital Infection (2015) 89, 357-362


欧州の医療制度は、人口統計学的変化、慢性疾患の急増、および予算削減により、圧迫の度合いが増大している。しかし、拡大する抗菌薬耐性の脅威は、感染症のサーベイランス、制御、および予防の強化を必要としている。さらに、国境を越える移動の重要性が増加していることから、これらの活動を欧州全域で統合的に実施することが必要である。本稿では、こうした目標を達成し、政策レベルおよび施設レベルで医療安全への患者の関与を高めるための欧州の取り組みについて概説する。

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監訳者コメント
日本のような島国に住んでいると、EU(欧州連合)のような概念は理解が難しい。しかし国境を越えた感染対策の取り組みは、そのまま病院を超えた感染対策の取り組みに応用ができるだろう。また本論文で述べられている患者視点の感染対策に関する取り組みも、日本ではまだまだ遅れている。狭い世界に閉じこもらず、常に大海原に目を向けて仕事をしよう!

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Reproduced from the Journal of Healthcare Infection, Volume 91, © 2015 The Healthcare Infection Society, with permission from Elsevier.
Although the translation was carried out with the permission of Elsevier, the translation has not been reviewed by Elsevier prior to posting online.